JP4464585B2 - 転写印刷用ベースフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非平面形状等の立体的表面を有する被転写体に対して、高精細な意匠を円滑に付することのできる転写印刷用ベースフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、三次元の立体構造物に意匠を印刷する方法の一つとして、水溶性ベースフィルムの片面に印刷層を有した複層フィルムを、その印刷層が溶剤等の活性化液の塗布により活性化された状態で印刷層を上にして、水面に浮かべて、その上方から被転写体を押し入れることにより印刷層の意匠を立体構造体に転写する方法が知られている。
【0003】
この場合、かかるベースフィルムは、水面に浮かべたときにゲル膜状の層となり、被転写体にシワやラップを生ずることなくつきまわることが要求され、そのようなベースフィルムの素材として、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが用いられており、かかるポリビニルアルコール系樹脂をベースフィルムとした転写印刷用薄膜が提案されている。
【0004】
本出願人も、かかる転写印刷用薄膜として、▲1▼特開平7−117327号公報では、平均重合度3200以上、平均ケン化度65〜95モル%の超高重合度ポリビニルアルコール系樹脂と平均重合度3200未満、平均ケン化度65〜95モル%のポリビニルアルコール系樹脂とを重量比で30:70〜70:30混合した組成物からなり、その厚さが35μm以下の膜を提案し、又、▲2▼特開平7−117328号公報では、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部にマンナン、キサンタンガムグァーガム等の天然ガム系粘質物を2〜15重量部混合した組成物からなり、その厚さが1〜50μmで、水面上での膨潤伸張率が1.35倍以下の膜を提案した。
【0005】
更に、▲3▼特公昭61−3277号公報では、平均重合度300〜3000、平均ケン化度65〜97モル%のポリビニルアルコール系樹脂より製膜され、かつ該樹脂に対して0.02〜10重量%のホウ酸又はその塩を含み厚みが0.01〜0.1mmの転写印刷用薄質膜を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、▲1▼特開平7−117327号公報に開示の薄膜では、高速での転写は可能であるが、重合度の異なるポリビニルアルコールをブレンドしているため、膨潤斑を生じ易く、又、最近の意匠の高精細化に伴ってベースフィルム上に印刷された意匠と被着体に転写印刷された意匠が異なったイメージになることがあり、▲2▼特開平7−117328号公報に開示の薄膜は、天然ガムを使用しているため、印刷面内において、部分的に精度が低下したり、あるいは再現性が低い等の問題を抱えている。
【0007】
更に、▲3▼特公昭61−3277号公報に開示の薄膜においても、最近の意匠の高精細化に伴ってベースフィルム上に印刷された意匠と被着体に転写印刷された意匠が異なったイメージになることがあり、高精細意匠を確実に転写できる印刷用ベースフィルムが望まれるところである。
そこで、本発明ではこのような背景下において、高精細な意匠を円滑に付することのできる転写印刷用ベースフィルムを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
しかるに本発明者は、かかる現況に鑑みて鋭意研究をした結果、平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と平均ケン化度70モル%以上のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有してなり、該ポリビニルアルコール系樹脂(A)と該変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有割合が98:2〜55:45(重量比)であり、ホウ素化合物(C)の含有量がポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計に対して0.02〜5重量%である転写印刷用ベースフィルムが上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
尚、本発明でいう高精細意匠とは、複数の色を用いた複雑な図柄(例えば、豹柄、木目柄、等)のことであり、転写前の意匠を精度良く被転写体に印刷することが必要であり、従来のベースフィルムでは、転写はできるものの、転写後のイメージが元の意匠よりもボケたイメージになり、クッキリ感がでなかったもので、本発明においては、かかる高精細意匠の転写が可能となったのである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に述べる。
本発明の転写印刷用ベースフィルム(以下、単にベースフィルムと称することがある)は、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有してなるものである。
【0011】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂(A)は、特に限定されることなく、ビニルエステル系化合物を重合して得られたビニルエステル系重合体をケン化して得られるものである。
【0012】
かかるビニルエステル系化合物としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が単独又は併用で用いられるが、実用上は酢酸ビニルが好適である。
【0013】
又、本発明においては、本発明の目的を阻害しない範囲において、他の単量体を共重合させることも可能で、かかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等を挙げることができる。
【0014】
重合(あるいは共重合)を行うに当たっては、特に制限はなく公知の重合方法が任意に用いられるが、通常は、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等のアルコールを溶媒とする溶液重合が実施される。勿論、乳化重合、懸濁重合も可能である。
【0015】
又、重合反応は、アゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の公知のラジカル重合触媒を用いて行われ、反応温度は35℃〜沸点(更には50〜80℃)程度の範囲から選択される。
【0016】
得られたビニルエステル系重合体をケン化するにあたっては、該重合体をアルコールに溶解してアルカリ触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコール中の共重合体の濃度は、20〜50重量%の範囲から選ばれる。
【0017】
ケン化触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができる。かかる触媒の使用量はビニルエステルに対して1〜100ミリモル当量にすればよい。尚、場合によっては、酸触媒によりケン化することも可能である。
【0018】
かくして本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂(A)が得られるのであるが、本発明ではその平均ケン化度が70〜98モル%であることが必要で、該平均ケン化度が70モル%未満では転写後のベースフィルムの溶解に長時間を要することとなり、98モル%を越えると転写開始時間の遅延や膜の溶け残りが生じることとなる。より好ましい平均ケン化度は75〜98モル%で、特に好ましい平均ケン化度は80〜98モル%である。
尚、平均ケン化度の測定方法については、JIS K 6726 3.5に準じて行われる。
【0019】
更に、本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂(A)の4重量%水溶液の平均粘度が10〜60mPa・s(20℃)であることが好ましく、特には15〜55mPa・s(20℃)、更には20〜50mPa・s(20℃)が好ましい。かかる4重量%水溶液の平均粘度が10mPa・s(20℃)未満では、ベースフィルムに意匠(パターン)を印刷するときのフィルム強度が不足して印刷斑が発生する恐れがあったり、溶解が促進され転写時間が短くなるほかに水に浮かべた時の柄が安定しないことがあり、逆に60mPa・s(20℃)を越えると被転写体への転写時に被転写体と転写印刷用フィルム(意匠が印刷されたベースフィルム)との密着性が低下して皺や剥離が発生する恐れがあったり、水面での膜の伸展は抑制できるが転写時間が遅延するほかに粘度が高く製膜が困難となり好ましくない。
尚、粘度の測定方法については、JIS K 6726 3.11.2に準じて行われる。
【0020】
本発明で用いられる変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)としては、カルボキシル基及び/又はスルホン酸基変性ポリビニルアルコール系樹脂であればよく、上記のビニルエステル系化合物と、カルボキシル基含有不飽和単量体やスルホン酸基含有不飽和単量体を共重合する以外は、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)の製造と同様に行うことができる。
【0021】
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等が挙げられ、スルホン酸基含有不飽和単量体としては、例えばエチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩等が挙げられる。
【0022】
本発明において、かかる変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の平均ケン化度は70モル%以上であることが必要で、該平均ケン化度が70モル%未満では溶解時間が遅延し該樹脂を導入する効果が得られなくなる。より好ましい平均ケン化度は75モル%以上で、特に好ましい平均ケン化度は80モル%以上である。
【0023】
更に、本発明においては、変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の4重量%水溶液の平均粘度が2〜50mPa・s(20℃)であることが好ましく、特には5〜45mPa・s(20℃)、更には10〜40mPa・s(20℃)が好ましい。かかる4重量%水溶液の平均粘度が2mPa・s(20℃)未満では、溶解が促進され転写可能時間が短くなるほか、水に浮かべた時の柄が安定しないことがあり、逆に50mPa・s(20℃)を越えると水面での膜の伸展は抑制できるが、転写開始時間が遅延するほか、製膜が困難となり好ましくない。
尚、平均ケン化度及び平均粘度の測定は、上記と同様の方法で行われる。
【0024】
又、かかる変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の変性度については、特に限定されないが、0.1〜5モル%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜4.5モル%、特に好ましくは0.5〜4モル%である。該変性度が0.1モル%未満では転写開始時間が遅延し、変性種の効果が得難く、5モル%を越えると転写後の膜の残分が多くなり好ましくない。
尚、変性基として、カルボキシル基及びスルホン酸基の2種を有する場合にはこれら2種の合計の変性度が上記範囲であればよい。
【0025】
本発明において、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)と上記変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有割合については、98:2〜55:45(重量比)であり、より好ましくは95:5〜60:40(重量比)、特に好ましくは93:7〜65:35(重量比)である。かかる含有割合が98/2を越えると転写可能時間が短くなり、水面上での伸展が大きくなり、55/45未満では転写開始は早まるが、初期の伸展が大きくなり、柄がボケてしまうこととなり、本発明の効果を発揮しない。
【0026】
本発明で用いられるホウ素化合物(C)としては、ホウ酸、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛,メタホウ酸亜鉛等)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウム等)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウム等)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウム等)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀等)、ホウ酸銅(ホウ酸第2銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅等)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウム等)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛等)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケル等)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウム等)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウム等)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第1マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガン等)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウム等)等の他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石等のホウ酸塩鉱物等が挙げられ、中でもホウ酸、ホウ砂が特に好ましい。
【0027】
かかるホウ素化合物(C)の含有量については、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計量に対して0.02〜5重量%であり、より好ましくは0.1〜3重量%、特に好ましくは0.3〜2重量%である。かかる含有量が0.02重量%未満では伸展抑制効果が少なく、転写可能時間が短くなり、5重量%を越えると粘性が強くなって流延製膜が困難となるばかりでなく、得られるベースフィルムは硬くかつ脆くなり多色印刷に適さなくなり、又、つきまわり性も悪くなり、本発明の効果を発揮しない。
尚、ホウ素化合物の添加量が少ない場合は系にアルカリを添加し、逆に多い場合は系に酸を添加するなどしてpHを調整することが必要となることがある。
【0028】
更に、本発明では必要に応じて、耐ブロッキング性及びハンドリング性の点から澱粉類を、ポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計100重量部に対して25重量部以下、特には20重量部以下、更には15重量部以下含有させることも好ましい。
かかる澱粉類としては、澱粉、化工澱粉、デキストリン等が挙げられ、中でも澱粉が好適に用いられる。
【0029】
かくして上記(A)〜(C)を含有してなる樹脂組成物を製膜して、ベースフィルムとするのであるが、かかる製膜にあたっては、特に制限されることなく、該樹脂を水溶液とした後、ロール、ドラム、エンドレスベルト等の平滑な金属面上に流延する方法や該樹脂に適宜水や後述の可塑剤を加えて押出法等の手段によって溶融成形する方法等により、ベースフィルムとなるポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。
【0030】
又、上記の製造時においては、必要に応じて、該樹脂組成物や水溶液に可塑剤(グリセリン、ジグリセリン、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリエキシエチレンドデシルフィニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル)、抗酸化剤(フェノール系、アミン系等)、安定剤(リン酸エステル類等)、着色料、香料、増量剤、消包剤、防錆剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤、更には他の水溶性高分子(ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、等)等を添加しても差し支えない。
【0031】
かかるポリビニルアルコール系フィルムの膜厚については、特に限定されないが、10〜50μm、更には15〜50μm、特には15〜45μmであることが好ましく、かかる膜厚が10μm未満ではベースフィルムに意匠を印刷するときのフィルム強度が不足して印刷斑が発生する恐れがあり、逆に50μmを越えると被転写体への転写時に被転写体と転写印刷用フィルムとの密着性が低下して皺や剥離が発生する恐れがあり好ましくない。
【0032】
得られたベースフィルムは、必要に応じて、最後に熱処理が施される。かかる熱処理は、80〜160℃(更には105〜140℃)で加熱処理が行われるもので、かかる温度が80℃未満では、結晶化度が上がらず伸展抑制効果を向上させるまではいかず、逆に160℃を越えるとベースフィルムの結晶化度が上がりすぎて転写後の水溶性が低下し、更につきまわり性の低下も招き好ましくない。
【0033】
かかる熱処理の方法としては特に制限はなく、例えば、熱ロール(カレンダーロール含む)、熱風、遠赤外線、誘電加熱等の方法により、熱処理を行うことが可能である。
【0034】
かくして得られた本発明の転写印刷用ベースフィルムは、その表面に転写用の意匠が印刷されて、転写印刷用フィルムとして実用に供されるのである。
かかる意匠としては、豹柄、木目模様、大理石模様、幾何学模様、象形模様、抽象模様、文字等、任意のパターンが挙げられる。
これら意匠は、好ましくは、非水溶性の樹脂のバインダーに染料、顔料等の着色剤を添加してなるインクを印刷して形成される。非水溶性の樹脂の例としては、硝化綿とアルキッド樹脂との混合物等が挙げられる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて更に詳しく説明する。
尚、例中に断りのない限り、「%」、「部」とあるのは、重量基準を示す。
【0036】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)、変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)、ホウ素化合物(C)として以下のものを用意した。
【0037】
[ポリビニルアルコール系樹脂(A)]
(A−1):平均ケン化度88.5モル%、4%水溶液の平均粘度45mPa・s(20℃)のポリビニルアルコール系樹脂
(A−2):平均ケン化度88.5モル%、4%水溶液の平均粘度22.5mPa・s(20℃)のポリビニルアルコール系樹脂
(A−3):平均ケン化度96モル%、4%水溶液の平均粘度21mPa・s (20℃)のポリビニルアルコール系樹脂
(A−4):平均ケン化度60モル%、4%水溶液の平均粘度20mPa・s (20℃)のポリビニルアルコール系樹脂
【0038】
[変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)]
(B−1):平均ケン化度96.5モル%、4%水溶液の平均粘度25mPa・s(20℃)、変性度2モル%のマレイン酸(ナトリウム塩型)変性ポリビニルアルコール系樹脂
(B−2):平均ケン化度93モル%、4%水溶液の平均粘度20mPa・s (20℃)、変性度2モル%のマレイン酸(ナトリウム塩型)変性ポリビニルアルコール系樹脂
(B−3):平均ケン化度99モル%、4%水溶液の平均粘度2.5mPa・s(20℃)、変性度3モル%のアリルスルホン酸(ナトリウム塩型)変性ポリビニルアルコール系樹脂
(B−4):平均ケン化度65モル%、4%水溶液の平均粘度2.5mPa・s(20℃)、変性度2モル%のマレイン酸(ナトリウム塩型)変性ポリビニルアルコール系樹脂
【0039】
[ホウ素化合物(C)]
(C−1):ホウ砂
【0040】
実施例1〜8、比較例1〜6
表1に示す如き組成の樹脂組成物及び澱粉7部を水に溶解し、15%水溶液とし、該水溶液をステンレス板に流延製膜法により温度105℃の条件でポリビニルアルコール系フィルムを得て、厚さ40μmのベースフィルムとした。
【0041】
次いで、得られたベースフィルムを100mm×100mmのサイズに切断したものに、建材用インキ[赤色染料と硫酸バリウムの混合物(70%)とアルキッド樹脂とニトロセルロースの混合物(30%)の混合物]を、バーコーターで均一に塗布した後、その中心付近に黒色の水性ペンで5mm間隔で印(ライン)を刻み、その上に剥離剤を塗布し、転写印刷用フィルムを作製した。
【0042】
上記の転写印刷用フィルム(100mm×100mm)を30℃の水が入った水槽に浮かべて、膨潤開始時間(秒)を測定した。尚、フィルムは、着水後一旦フィルム全体にシワが入り、その後シワは均質にのばされるが、そのシワが入るまでの時間を膨潤開始時間という。この時間が遅延すると転写可能時間が減少することになるため、膨潤開始時間は速いほうがよい。
【0043】
又、上記の転写印刷用フィルム(100mm×100mm)を30℃の水が入った水槽に浮かべて、60秒後に上記転写印刷用フィルム上部より垂直に、200mm/minの速度で塩化ビニル製の筒(径:1.3mm)を押し込み、該筒表面にライン柄を転写させて、その後、30℃の水を吹き付けてベースフィルムを除去し、40℃で20分間乾燥させてライン柄が転写印刷された筒を得、筒の表面に転写されたラインの間隔(距離)を測定した。尚、転写されたラインは、筒の上部ほどライン間隔が長くなるため、ライン間隔の測定は、最下部のラインとその次のラインとの間隔を測定することとした。
実施例及び比較例の測定結果を表2に示す。
【0044】
【0045】
【0046】
【発明の効果】
本発明の転写印刷用ベースフィルムは、平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と平均ケン化度70モル%以上のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有してなり、該ポリビニルアルコール系樹脂(A)と該変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有割合が98:2〜55:45(重量比)であり、ホウ素化合物(C)の含有量がポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計に対して0.02〜5重量%であるため、膨潤開始時間が良好で、かかるフィルムを用いた転写印刷用フィルムは、高精細な意匠の転写印刷を行うことができる。
Claims (4)
- 平均ケン化度70〜98モル%のポリビニルアルコール系樹脂(A)と平均ケン化度70モル%以上のカルボキシル基及び/又はスルホン酸基変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)及びホウ素化合物(C)を含有してなり、該ポリビニルアルコール系樹脂(A)と該変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の含有割合が98:2〜55:45(重量比)であり、ホウ素化合物(C)の含有量がポリビニルアルコール系樹脂(A)と変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の合計に対して0.02〜5重量%であることを特徴とする転写印刷用ベースフィルム。
- ポリビニルアルコール系樹脂(A)の4重量%水溶液の平均粘度が10〜60mPa・s(20℃)であることを特徴とする請求項1記載の転写印刷用ベースフィルム。
- 変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の4重量%水溶液の平均粘度が2〜50mPa・s(20℃)であることを特徴とする請求項1又は2記載の転写印刷用ベースフィルム。
- 変性ポリビニルアルコール系樹脂(B)の変性度が0.1〜5モル%であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の転写印刷用ベースフィルム。
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