JP4463358B2 - 接着剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着剤に関する。更に詳しくは特定のビニルアルコール系重合体および無機充填剤を主成分とする水系接着剤であり、取扱いが容易で、溶液の粘度安定性および耐水接着力に優れた接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、接着剤、特に紙用接着剤としては澱粉、カゼイン、ゼラチン、グアーガム、アラビアガム、アルギン酸ソーダ類などの天然糊剤、またCMC、酸化澱粉、メチルセルロースなどの加工天然糊剤、またアクリルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、SBRラテックスなどの合成樹脂系エマルジョンや各種ゴムラテックスなど、またビニルアルコール系重合体(以下「PVA」と略記する)を主成分とした接着剤などが単独または、これらの組み合わせとして広く用いられている。
【0003】
しかし、天然糊剤やその加工糊剤では接着力不足や接着剤溶液の粘度安定性に欠けることや腐敗するなどの問題があり、更にまた品質の一定したものが長期にわたり得られないなどの欠点がある。一方、エマルジョンやラテックスは接着力には優れているものの、機械安定性に欠ける、初期タック特にウエットタックが不足するとか、耐クリープ性に劣る、さらには表面の皮張りが激しいなどの問題点を多く抱えているものが多い。一方、PVA系の接着剤はコスト的に安価で優れた初期タック性、平衡接着力、接着力の経時安定性が良いなどの特性を有し、板紙の接着、段ボールの接着、紙管の接着、襖や壁紙などに広く使用されており、バランスの取れた接着剤として賞用されている。
【0004】
しかしながらPVA系の接着剤においても、塗工中に接着剤が増粘現象を起こすとか、多くの泡をかみ込むなど、塗工上の障害となる場合があるだけで無く、近年は特にコストダウンや生産性の向上を目指して、ますます接着剤の紙への高速塗工性が強く求められてきている。また、近年、耐水接着性が要求されてきている。
【0005】
これらの問題点の中でも、特に高速塗工性を改良する試みはなされている。例えば、特開平03−075650では、ビニルエステル系重合体を酸けん化して得られるPVAを用いる試みがなされ、また、例えば特開平04−239085では、特定の金属塩を含有する接着剤が提案されている。これらの接着剤は、高速塗工性や初期接着力は改善されるものの、依然として、溶液の安定性や耐水接着性に問題があり、工業的に十分満足するものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術の欠点を解消するために創案されたものであり、取扱いが容易で、溶液の粘度安定性および耐水接着性に優れた接着剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレン単位を2〜19モル%含有し、粘度平均重合度200〜2000、けん化度90〜99.99モル%、1,2−グリコール結合を1.2〜2.5モル%含有し、かつ、カルボキシル基およびラクトン環を合計量で0.02〜0.4モル%含有するビニルアルコール系重合体(a)および無機充填剤(b)を主成分とする接着剤を提供することによって達成された。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の接着剤に用いるPVAは、エチレン単位を2〜19モル%含有することが必須であるが、2.5〜15モル%が好ましく、3〜13モル%がさらに好ましく、3.5〜10モル%がより好ましい。エチレン単位が2モル%に満たない場合には、溶液の粘度安定性や耐水接着性の向上効果が得られない。また、19モル%を越える場合には、PVAの特徴である水溶性が損なわれる場合があり好ましくない。
【0009】
本発明に用いるPVA中のエチレン単位の含有量は、該PVAの前駆体であるエチレン含有ポリビニルエステルのプロトンNMRから求めた。すなわち、得られたポリビニルエステルをn−ヘキサン/アセトンで再沈精製を3回以上十分に行った後、80℃減圧乾燥を3日間して分析用のポリビニルエステルを作成した。該ポリマーをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定した。ビニルエステルの主鎖メチンに由来するピーク(4.7〜5.2ppm)とエチレン、ビニルエステルおよび第3成分の主鎖メチレンに由来するピーク(0.8〜1.6ppm)を用いてエチレンの含有量を算出した。
【0010】
本発明に用いるPVAのけん化度は、90〜99.99モル%が好ましく、93〜99.7モル%がより好ましく、94〜99.5モル%がさらに好ましく、95〜99.0モル%がさらに好ましい。けん化度が90モル%より小さい場合は、特徴である耐水接着性のレベルが十分発現しない場合があり、99.99モル%より大きい場合には溶液の粘度安定性の改良効果が発現しない場合があるので好ましくない。
【0011】
また、本発明に使用するPVAの粘度平均重合度(以下重合度と略記する)は200〜2000が必須であり、250〜1950が好ましく、300〜1900がより好ましく、350〜1800がさらに好ましい。重合度が200未満の場合には、耐水接着性のみならず、塗工方法、被着体によっては接着力そのものが十分でない時がある。また、重合度が2000を越えて大きい場合には、接着剤組成、塗工方法にもよるが、溶液の粘度が高くなりすぎて取扱性が十分でない場合がある。
【0012】
本発明に用いるPVA中のカルボキシル基およびラクトン環の含有量は0.02〜0.4モル%であり、0.022〜0.37モル%が好ましく、0.024〜0.33モル%がより好ましく、0.025〜0.3モル%が特に好ましい。本発明におけるカルボキシル基はそのアルカリ金属塩を包含し、アルカリ金属としてはカリウム、ナトリウムなどがあげられる。
カルボキシル基およびラクトン環の含有量が0.02モル%未満の場合には、水溶液の低温での粘度安定性や高濃度水溶液の粘度安定性が低下し本発明の意図する接着剤とならない場合がある。一方、カルボキシル基およびラクトン環の含有量が0.4モル%を超える場合には、耐水接着力が低下するため好ましくない。
【0013】
さらに本発明に用いるPVAが下記の式(I)を満足するカルボキシル基およびラクトン環の含有量である場合に、本発明の効果は著しく高くなることを見出した。
−1.94×10-5×P+0.044 ≦含有量≦−1.39×10-4×P+0.42 (I)
{ここで、含有量(単位:モル%)はカルボキシル基およびラクトン環の含有量を表し、Pはビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度を表す。}
【0014】
エチレン単位を特定量有しかつカルボキシル基およびラクトン環を有するビニルアルコール系重合体の製法としては、▲1▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とカルボキシル基およびラクトン環を生成する能力を有する単量体とを共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法、▲2▼メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのカルボキシル基を含有するチオール化合物の存在下で、ビニルエステル系単量体を重合した後それをけん化する方法、▲3▼酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する際に、ビニルエステル系単量体およびビニルエステル系重合体のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐ビニルエステル系重合体を得た後にけん化する方法、▲4▼エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をカルボキシル基を有するチオール化合物と反応させた後けん化する方法、▲5▼PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのアセタール化反応による方法などが挙げられる。
【0015】
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でもPVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
本発明のカルボキシル基およびラクトン環を生成する能力を有する単量体としては、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0016】
PVA系重合体のカルボキシル基およびラクトン環の含有量はプロトンNMRのピークから求めることができる。けん化度99.95モル%以上に完全にけん化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間して分析用のPVAを作成した。
上記▲1▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アクリル酸、アクリル酸エステル類、アクリルアミドおよびアクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖メチンに由来するピーク(2.0ppm)を用いて、メタクリル酸、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミドおよびメタクリルアミド誘導体の単量体は、主鎖に直結するメチル基に由来するピーク(0.6〜1.1ppm)を用いて、常法により含有量を算出した。フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体は、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解後トリフルオロ酢酸を数滴加え、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。定量は4.6〜5.2ppmに帰属されるラクトン環のメチンピークを用いて常法により含有量を算出した。
▲2▼および▲4▼の場合、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8ppm)を用いて含有量を算出した。
▲1▼の場合、作成した分析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定した。末端のカルボキシル基もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピーク(下記の化1および化2)は2.2ppm(積分値A)および2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端のラクトン環のメチレン由来ピークは(下記の化3)は2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値D)に帰属し、下記の式(II)でカルボキシル基およびラクトン環の含有量を算出する。ここで△は変性量(モル%)を表す。
カルボキシル基およびラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×(100−△)/(100×D) (II)
【0017】
【化1】
【0018】
【化2】
【0019】
【化3】
【0020】
▲5▼の場合、作成した分析用PVAをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて60℃で測定した。アセタール部分のメチンに由来するピーク4.8〜5.2ppm(下記の化4)を用いて、常法により含有量を算出した。
【0021】
【化4】
【0022】
さらに、本発明に用いるPVAは、含有する1,2−グリコール結合が特定の範囲の場合に溶液の粘度安定性および耐水接着性が向上する。その範囲としては、1.2〜2.5モル%であり、1.3〜2.3モル%がより好ましい。1.2モル%に満たない場合は、溶液の粘度安定性が低下する場合があり、2.5モル%を越えると耐水接着性が低下する場合がある。
PVA中の1,2−グリコール結合量はプロトンNMRから求めることができる。具体的には、けん化度99.99モル%以上にけん化した後、十分メタノール洗浄を行い、90℃で2日間減圧乾燥したPVAをDMSO−d6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えた試料を500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)を用いて80℃で測定する。
【0023】
PVA中の全てのビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.2〜4.0ppm(積分値A)に、1,2−グリコール結合の1つのメチン由来ピークは3.25ppm(積分値B)にそれぞれ帰属されることから、次式により1,2−グリコール結合量を算出できる。
1,2−グリコール結合量(モル%)=B/A×100
【0024】
本発明に用いるPVAは、ビニルエステル系単量体とエチレンとの共重合物をけん化することで得られる。ビニルエステル系重合体とエチレンとの共重合の方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の重合方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいは低級アルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用され、高重合度のものを得る場合には、乳化重合法が採用される。溶液重合時に溶媒として使用される低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられ、一般にはメチルアルコールが採用される。共重合に使用される開始剤としては、例えば、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、−30〜150℃の範囲が適当である。
本発明に用いるPVAは、上記共重合によって得られたビニルエステル系重合体をアルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化するなど公知の方法により得られる。
【0025】
本発明に用いるPVAは、本発明の効果を損なわない範囲であれば、ビニルアルコール単位、エチレン、ビニルエステル単位および前述のカルボキシル基およびラクトン環を生成する能力を有する単量体以外の単量体単位を含有していてもよい。そのような例としては、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体単位であり、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニルアミド類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、使用される目的や用途等によって異なるが通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。
【0026】
本発明のビニルアルコール系重合体は、前述のカルボキシル基を有すメルカプタンを除く2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプトなどのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を、エチレンと共重合し、それをけん化することによって得られる末端変性物でもよい。
【0027】
一方、本発明の接着剤に用いる無機充填剤(b)としては、特に限定されるものではなく、被着体、塗工機、要求性能などに応じ適宜選択されるが、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフェライトまたはセリサイトなどのクレー、重質、軽質、または表面処理された炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、石膏類、タルク、酸化チタンなどから選ばれた1種または2種以上の混合物を使用することができる。なかでもクレーを用いる場合が多い。これらの無機充填剤(b)はPVAとの組み合わせで接着剤にした場合、ブロッキングしたり底へ沈降したりすることなく均一なスラリー溶液を与えることが必要であり、平均粒径が10μm以下、さらには8μm以下、より多くは5μm以下での粉体であることが多い。
【0028】
また、該PVA(a)100重量部に対して、無機充填剤(b)が20重量部〜500重量部が好適であり、さらに好ましくは50重量部〜300重量部である。無機充填剤(b)が20重量部未満である場合には、初期接着力の発現が遅く、平衡接着力の低下やせん断応力や耐クリープ性などにも悪い結果与える場合があり、また、500重量部を越えて多量に配合した場合には、接着剤の流動性の悪化や溶液中で無機充填剤が沈降しやすくなることや接着力の低下につながる場合がある。
【0029】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、他の添加剤を加えても何らさしつかいない。これらの例としては、ポリリン酸ソーダやヘキサメタリン酸ソーダなどのリン酸化合物の金属塩や水ガラスなどの無機物の分散剤、ポリアクリル酸およびその塩、アルギン酸ソーダ、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合物などのアニオン性高分子化合物とその金属塩、高級アルコールのエチレンオキサイド付加物、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体などのノニオン界面活性剤などが挙げられ、これらを併用することにより、流動性がより一層改良される。また、必要に応じて、カルボキシメチルセルロースやポリエチレンオキサイド、各種消泡剤、防腐剤、防黴剤、着色顔料、消臭剤、香料なども添加することができる。また、接着力の改善のために硼酸、硼砂、グリセリンやエチレングリコールなどの多価アルコールの硼酸エステルなどの水溶性硼素化合物を添加することもできる。また、場合によっては、澱粉、カゼイン、ゼラチン、グアーガム、アラビアガム、アルギン酸ソーダ類などの天然糊剤、またCMC、酸化澱粉、メチルセルロースなどの加工天然糊剤、またアクリルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、SBRラテックスなどの合成樹脂系エマルジョンや各種ゴムラテックスなどを併用することができる。さらに、本発明の効果を損なわない範囲であれば、これまで公知のPVAを併用しても差し支えない。
【0030】
また、本発明の接着剤は水系の接着剤であるが、凍結防止剤や接着剤層に柔軟性を付与するために、メチルアルコール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、セルソルブ類などの有機溶剤類を添加してもよい。
【0031】
これらの接着剤の調整方法としては、まずPVA、無機充填剤、必要に応じて他の添加剤を予め混合したものを撹拌しながら水中に投入するか、または添加剤、無機充填剤、PVAを逐次撹拌しながら水に投入してスラリー液を調整してもよい。接着剤の調整はバッチ方式あるいは連続方式のどちらでもよく、ジェットクッカーや調整槽で、このスラリー液に蒸気を直接吹き込む加熱方式、あるいはジャケットによる間接加熱方式のような任意の加熱方式によって加熱溶解し調整すればよい。
【0032】
調整された本発明の接着剤は各用途によって粘度は任意に選ぶ事ができるが、その貼り合わせ温度での粘度は、B型粘度で100〜8000mPa・Sが多く用いられる。また、その際の固形分濃度は、5〜50重量%である場合が多い。
【0033】
本発明の接着剤は、溶液の粘度安定性、高速塗工性および初期接着力に優れることから、従来PVA系の接着剤を使用していた公知の用途の接着剤として好適に使用できる。これらの用途としては、板紙の接着、段ボールの接着、紙管の接着、襖や壁紙などの紙用接着剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0034】
【実施例】
さらに本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお以下で、「部」および「%」は特にことわりのない限り「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味する。また以下の記述で粘度とは、特にことわりのない限り、東京計器製のB型粘度計を用いて、ローター回転数30rpmで測定した値である。
【0035】
重合体1〜6
公知の重合方法により合成した。得られた重合体1〜6を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
重合体a〜f
公知の重合方法により合成した。得られた重合体a〜fを表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
無機充填剤
使用した無機充填剤を以下に示す。
【0040】
実施例1
表1に示した重合体1を32部および無機充填剤2を68部それぞれ粉体同士よくブレンドし、撹拌している常温水中に投入し、外部より95℃まで加熱溶解して、以下に示す評価を実施した。結果を表4に示す。
(粘度安定性)
固形分濃度23.1%に調整した接着剤溶液の20℃で粘度測定したところ1210mPa・Sであった。この接着剤溶液を5℃まで冷却し、5℃になった時点での粘度(初期粘度)と3日間放置後の粘度を測定し、増粘倍率(3日後粘度/初期粘度)から以下の基準で判定した。結果を表3に示す。
○;3.0倍未満
△;3.0倍以上であるがゲル化に至らないもの(流動性を有するもの)
×;3日後までにゲル化
【0041】
(耐水接着性)
固形分濃度25.2%に調整した接着剤溶液を、平バー(50μmおよび75μm)を用いてクラフト紙に塗工直後に、クラフト紙を張り合わせて20℃65%RH条件下で24時間養生した後、20℃水中に24時間浸漬させた。浸漬後のクラフト紙−クラフト紙接着部分を剥離し、その状況から以下の基準で判定した。結果を表3に示す。
◎;材破する
○;部分的に材破する
△;接着しているが界面剥離する
×;剥離する前に自然剥離している
【0042】
実施例2〜6
実施例1と同様に評価した。結果を表3に示す。
【0043】
比較例1〜6
実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3の結果から分かるように、従来の完全けん化PVA(けん化度98モル%近辺)は、耐水接着性には優れるものの、粘度安定性が悪く(比較例1および2)、逆に部分けん化PVA(けん化度88モル%近辺)は、粘度安定性には優れるもの耐水接着性が悪い(比較例2)。また、エチレン単位を有するPVAでもカルボキシル基およびラクトン環の含有量が多い場合(比較例4)や1,2−グリコール結合量が多い場合(比較例6)、あるいは、けん化度が低い場合(比較例5)には耐水接着性が悪化する。
これに対して、本発明の接着剤では、粘度安定性および耐水接着性を同時に満足することから明らかに優れており、工業的にも有用である。
【0046】
【発明の効果】
本発明の接着剤は、従来のPVA系接着剤では達成できなかった、粘度安定性および耐水接着性のいずれも同時満足するものである。従って、接着剤溶液の粘度安定性(保存安定性)が良好なため、年間を通じて使用できるほか、従来のよりも耐水接着性が優れることから、特に、これまで実用できなかった耐水接着性が必要とされる用途に応用できる。
Claims (3)
- エチレン単位を2〜19モル%含有し、粘度平均重合度200〜2000、けん化度90〜99.99モル%、1,2−グリコール結合を1.2〜2.5モル%含有し、かつ、カルボキシル基およびラクトン環を合計量で0.02〜0.4モル%含有するビニルアルコール系重合体(a)および無機充填剤(b)を必須成分とする接着剤。
- ビニルアルコール系重合体(a)100重量部に対して、無機充填剤(b)が20重量部〜500重量部である請求項1に記載の接着剤。
- 無機充填剤(b)が、クレーである請求項1または2に記載の接着剤。
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