JP4818553B2 - ビニルアルコール系重合体組成物 - Google Patents

ビニルアルコール系重合体組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低吸湿性でありながら水溶性に優れ、かつ耐酸・アルカリ性、生分解性、耐熱性、界面活性に優れるビニルアルコール系重合体組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
分子内にビニルアルコール単位を有するビニルアルコール系重合体の代表的なものとしては、ポリビニルアルコール(以下「PVA」と略記することがある)が知られている。PVAは造膜性、透明性および強度に優れていることから、紙用改質剤、紙、木材および無機物などの接着剤、経糸糊剤、フィルム、シートなどに幅広く使用されている。さらにビニルエステル部を部分的にけん化した部分けん化PVAは、高い界面活性能を有し、ビニル化合物の懸濁重合用分散剤または分散助剤、乳化重合用分散剤として用いられている。
【0003】
近年、農薬、洗濯用洗剤、漂白剤、トイレタリー製品、工業用薬品をはじめとする各種薬品類の使用方法として、それら薬品類を一定量づつ水溶性フィルムにより密封包装して(ユニット包装)、使用時にその包装形態のまま水中に投入し、内容物を包装フィルムごと水に溶解または分散させて使用する方法が行われるようになっている。従来より水溶性フィルムとしては、ポリビニルアルコール系フィルムがよく用いられている。PVAはけん化度が高くなるに従って結晶性が増し、結晶部分は冷水には溶解しなくなるため、ユニット包装用などの冷水溶解性フィルム用途には、完全けん化タイプと言われるけん化度の高いPVAではなく、無変性の部分けん化PVAが用いられてきた。この無変性の部分けん化PVAを用いた水溶性フィルムは、冷水や温水に易溶であり、機械的強度が優れるなどの特徴を有している。しかしながら、従来の無変性の部分けん化PVAフィルムは、フィルムを作成した当初は充分な冷水溶解性が得られるが、長期保存した場合、その間に徐々に結晶が成長するため、冷水溶解性が低下するという問題点を有している。さらに、酸性またはアルカリ性の物質を包装すると、保存中に部分けん化PVAフィルム中に存在する残存酢酸基のけん化が起こり、結晶化が進んでフィルムが不溶化するため、近年必要とされている要求性能を満たしていない。
【0004】
このような問題を解決するものとして、変性PVAからなる性質が改善された水溶性フィルムが提案されており、例えばカルボキシ変性PVA(「水溶性高分子の応用と市場」、第266〜277頁、シーエムシー、1984年発行)、オキシアルキレン基、スルホン酸基およびカチオン性基の少なくとも一種を含有するPVA(特開昭63−168437号公報)、2−ピロリドン環含有PVA(特開平2−124945号公報)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、カルボン酸基、スルホン酸基やカチオン性基などのイオン性基を導入した変性PVAは、変性量の増大に伴い生分解性が低下する傾向がある。また、2−ピロリドン環含有PVAは優れた生分解性を示すが、2−ピロリドン環含有単量体がノニオン性単量体であるため、冷水溶解性が充分ではない。これを解決するために変性量を増やすことにより改良が試みられているが、吸湿性が高くなり、得られるフィルムの強度は弱く、生分解性、冷水溶解性、強度などの実物性を同時に満足する水溶性フィルムは得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はそのフィルムが低吸湿性であるため、その強度を保ちながら冷水溶解性に優れ、かつ耐酸・アルカリ性、生分解性、耐熱性、界面活性に優れるビニルアルコール系重合体組成物を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者はかかる現状に鑑み鋭意検討した結果、カプロラクタム基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対してアルカリ金属塩(B)を0.05〜0.5重量部有するビニルアルコール系重合体組成物であって、該カプロラクタム基を有する単量体が、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタムおよびN−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1種であるビニルアルコール系重合体組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、ビニルアルコール系重合体の分子内にビニルアルコール単位、およびカプロラクタム基を有する単量体単位を有することが必要である。
また本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、ビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対して、アルカリ金属塩(B)を0.05〜0.5重量部有することが必要である。
【0009】
カプロラクタム基を有する単量体単位としては、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタムなどが挙げられるが、中でも単量体の入手のしやすさ、冷水溶解性の点からN−ビニル−2−カプロラクタムが好ましい。
【0010】
本発明のビニルアルコール系重合体組成物におけるカプロラクタム基を有する単量体単位の含有量については、該ビニルアルコール系重合体組成物が水溶性、もしくは水分散性である範囲内であればよく、特に制限はないが、その好適な含有量は以下の通りである。
本発明のビニルアルコール系重合体組成物を水溶性フィルムとして使用する場合、カプロラクタム基を有する単量体単位の含有量は1〜10モル%が好ましく、2〜8モル%がより好ましい。含有量が1モル%未満の場合には得られるフィルムの冷水溶解性が充分ではない。一方、含有量が10モル%を越える場合には、生分解性が低下する。なお、本発明において冷水とは0℃〜40℃の水を意味する。
本発明のビニルアルコール系重合体組成物をビニルエステル系単量体などの乳化重合用分散安定剤として使用する場合、カプロラクタム基を有する単量体単位の含有量は1〜30モル%が好ましく、2〜20モル%がより好ましい。含有量が1モル%未満の場合には界面活性の向上の程度が低い。一方、含有量が30モル%を越える場合には、該ビニルアルコール系重合体組成物を乳化重合用分散安定剤に用いて製造されるビニル化合物系エマルジョンから得られる皮膜の耐水性が低下する。
【0011】
本発明におけるビニルアルコール系重合体(A)のけん化度についても特に制限はなく、完全けん化でも部分けん化でもよいが、その好適量は以下の通りである。
本発明のビニルアルコール系重合体組成物を水溶性フィルムとして使用する場合、ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度は、得られるフィルムの強度、腰、製袋性の点から82〜99.5モル%であり、84〜99.2モル%がより好ましく、85〜99.0モル%が特に好ましい。けん化度はJIS K6726記載の方法により測定される。けん化度が82モル%より小さいと、高湿下で吸湿してフィルムの腰が無くなり形態安定性が低下する場合がある。一方、けん化度が99.5モル%よりも大きいものは工業的に安定に製造することができず、製膜も安定に行うことができない。
本発明のビニルアルコール系重合体組成物をビニルエステル系単量体などの乳化重合用分散安定剤として使用する場合、ビニルアルコール系重合体(A)のけん化度は、界面活性能の点から40〜99.4モル%が好ましく、50〜99.0モル%がより好ましく、60〜98.5モル%が特に好ましい。
【0012】
本発明におけるビニルアルコール系重合体(A)の粘度平均重合度(以下「重合度」と略記)は、100から8000が好ましく、200から5000がより好ましく、250から3500が特に好ましい。重合度が100未満または8000を超える場合には、ビニルアルコール系重合体の工業的な製造が難しい。
【0013】
本発明におけるビニルアルコール系重合体(A)の製法としては、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とカプロラクタム基を有する単量体を共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールまたはジメチルスルホキシドなどの溶液中でけん化する方法などの公知な方法が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニルなどが挙げられ、これらの中でも工業的にビニルアルコール系重合体を得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
【0014】
本発明におけるビニルアルコール系重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでもよい。そのような単量体単位としては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテルなどのヒドロキシ基含有のビニルエーテル類;アリルアセテート;プロピルアリルエーテルなどのアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン類;酢酸イソプロペニル;3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オールなどのヒドロキシ基含有のα−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などに由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミンなどに由来するカチオン基を有する単量体などを共重合して得られる単量体単位が挙げられる。これらの単量体単位の含有量は、使用される目的や用途などによって異なるが通常5モル%以下、好ましくは2モル%以下である。
【0015】
本発明におけるビニルアルコール系重合体(A)は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体をカプロラクタム基を有する単量体と共重合し、得られた重合体をけん化することにより得られる末端変性物でもよい。
【0016】
ビニルエステル系単量体とカプロラクタム基を有する単量体との共重合の方法としては塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒で重合する塊状重合法またはアルコールなどの溶媒中で重合する溶液重合法が通常採用され、高重合度のものを得る場合には、乳化重合が好適に採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系開始剤、または過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
【0017】
ビニルエステル系単量体とカプロラクタム基を有する単量体との共重合物は、アルコール、場合によっては含水アルコールに溶解した状態でけん化される。けん化反応に使用されるアルコールとしては、メタノール、エタノールなどの低級アルコールが挙げられ、メタノールが特に好適に使用される。けん化反応に使用されるアルコールには、40重量%以下であれば、アセトン、酢酸メチルエステル、ベンゼンなどの溶剤を含有していてもよい。けん化反応に用いられる触媒としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ触媒や硫酸、塩酸、p−トルエンスルホン酸などの酸触媒が用いられる。けん化反応の条件は、ビニルエステル系重合体の構造や目的とするビニルアルコール系重合体のけん化度によって適宜調整されるが、通常、触媒/ビニルエステル系単量体単位のモル比が0.001〜5.0、反応温度が20〜180℃、反応時間が0.1〜20時間の範囲で実施される。けん化方法としてはバッチ法や連続法などの公知の方法が適用可能である。得られたビニルアルコール系重合体はバッチ法や連続法など公知の方法で洗浄後、乾燥される。乾燥の方法としては加熱乾燥、真空乾燥などの公知の方法が適用可能であるが、通常温度60〜150℃、乾燥時間1〜20時間の範囲で実施される。
【0018】
本発明のビニルアルコール系重合体組成物におけるアルカリ金属塩(B)の含有量はビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対して0.05〜0.5重量部であり、0.08〜0.48重量部がより好ましく、0.1〜0.45重量部が特に好ましい。アルカリ金属塩の含有割合が0.05重量部未満の場合には、該ビニルアルコール系重合体組成物の水溶性が低下する。また0.5重量部より多い場合には熱安定性が低下する。
アルカリ金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0019】
本発明において、特定量のアルカリ金属塩(B)をビニルアルコール系重合体(A)に含有させる方法は特に限定されず、ビニルアルコール系重合体を合成した後にアルカリ金属塩を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてけん化するに際し、けん化触媒としてアルカリ金属イオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりビニルアルコール系重合体中にアルカリ金属塩を配合し、けん化して得られたビニルアルコール系重合体を洗浄液で洗浄することにより、ビニルアルコール系重合体中に含まれるアルカリ金属塩含量を制御する方法などが挙げられるが、後者の方法が好ましい。
なお、アルカリ金属塩の含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0020】
けん化して得られたビニルアルコール系重合体の洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチルなどの酢酸エステル、ヘキサン、水などが挙げられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。
洗浄液の量としては、ビニルアルコール系重合体組成物中のアルカリ金属塩(B)の含有割合が上記好適範囲を満足するように設定されるが、通常、ビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対して、300〜10000重量部が好ましく、500〜5000重量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、30〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。洗浄方法としてはバッチ法や連続法などの公知の方法が適用可能である。
【0021】
本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、そのフィルムが冷水に対する溶解性が優れているのみならず、酸性物質およびアルカリ性物質に対して安定であり、またフィルムの吸湿性が低いためにフィルムの強度に優れており、さらに優れた生分解性を示すことから、特に農薬や洗剤などの包装用水溶性フィルムに好ましく用いられる。
【0022】
また本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、優れた水溶性かつ高い界面活性を示すことから、分散安定性が顕著に優れた分散安定剤として有用である。さらに、本発明のビニルアルコール系重合体組成物は界面活性剤、紙用コーティング剤、紙用内添剤、顔料バインダーなどの紙用改質剤、木材、紙、アルミ箔および無機物などの接着剤、不織布バインダー、塗料、経糸糊剤、繊維加工剤、ポリエステルなどの疎水性繊維の糊剤、シート、ボトルならびに繊維などの各種用途に好適に使用できる。
【0023】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中「部」および「%」は、特に断らない限り「重量部」および「重量%」をそれぞれ意味する。
【0024】
ビニルアルコール系重合体中のカプロラクタム基含有単量体単位、ビニルエステル単位、ビニルアルコール単位およびその他のコモノマー単位の含有量は、500MHzH−NMRにより定量した。H−NMR測定時の溶媒は重水素化ジメチルスルホキシドを用いた。またアルカリ金属塩含有量は原子吸光法により求めた。
ビニルアルコール系重合体組成物の酸・塩基に対する安定性評価、ビニルアルコール系重合体組成物からなるフィルムの各種特性の測定および評価、生分解性評価、熱安定性評価および水溶液の表面張力の測定は以下の方法により行った。
【0025】
(1)酸・塩基に対する安定性評価方法
0.2N塩酸水溶液161mL、および0.2N塩化カリウム水溶液125mLを、500mLのメスフラスコを用いて蒸留水により500mLに定容することによりpH1.2の緩衝溶液を調製した。また、グリシン3.75g、塩化ナトリウム2.92gを蒸留水により500mLに定容後、その溶液に0.1N水酸化ナトリウム水溶液を75mL加えることによりpH9の緩衝溶液を調製した。それぞれの緩衝溶液500mLに対してビニルアルコール系重合体組成物0.5gを溶解し、40℃で24時間放置した。ビニルアルコール系重合体組成物溶液の電導度が5μS/cm以下となるまで透析した後、その溶液をポリエステルフィルム上に流延して室温で乾燥し、ビニルアルコール系重合体中のビニルエステル単位、ビニルアルコール単位およびその他のコモノマー単位の含有量を500MHzH−NMRにより定量した。H−NMR測定時の溶媒は重水素化ジメチルスルホキシドを用いた。その評価結果を下記の記号で示す。
○:ビニルエステル単位、ビニルアルコール単位およびその他のコモノマー単位の含有量に変化は無い
×:ビニルエステル単位、ビニルアルコール単位およびその他のコモノマー単位の含有量に変化有り
【0026】
(2)フィルムの水溶性の測定方法
20℃の恒温バスにマグネティックスターラーを設置する。1リットルの蒸留水を入れた1リットルのガラスビーカーを上記の恒温バスに入れ、5cmの回転子を用いて250rpmで撹拌を行う。ビーカー内の蒸留水が20℃になった後、水溶性の測定を開始する。
フィルムを40×40mmの正方形に切り、これをスライドマウントにはさみ、20℃の撹拌している水中に浸漬してフィルムの溶解状態を観察し、フィルムが完全に溶解するまでの時間(秒数)を測定した。なお、フィルムの厚さが40μmとは異なるフィルムを用いる場合には、下記の式(1)に従ってフィルムの厚さ40μmの値に換算する。
【0027】
溶解時間(秒)=(40/フィルムの厚み(μm))×溶解時間(秒) (1)
【0028】
(3)フィルムの平衡含水率の測定方法
フィルムを、20℃、65%RHの雰囲気のもとで1週間調湿した後、105℃で12時間乾燥する。乾燥前と乾燥後の重量を測定し、下記の式(2)に従ってフィルムの含水率を算出する。
【0029】
フィルムの含水率(%)=(乾燥前重量(g)−乾燥後重量(g))×100/乾燥前重量(g) (2)
【0030】
(4)ヤング率、強度の測定方法
幅10mmのフィルムを、20℃、65%RHの条件下、1週間調湿した後、オートグラフで引張り試験を行った。チャック間隔は50mm、引張り速度は500mm/minであった。
【0031】
(5)生分解性の測定
ISO14851に準じて行った。
【0032】
(6)熱安定性の評価
ビニルアルコール系重合体組成物を200℃で10分間放置し、目視により重合体組成物の色相の変化を観察、評価した。
【0033】
(7)水溶液の表面張力の測定方法
ビニルアルコール系重合体組成物の0.3%水溶液を調製して、温度20℃の条件下、60分間静置した後、ウィルヘルミー法(プレート法)により表面張力を測定した。
【0034】
実施例1
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を取り付けた6Lの反応器に、酢酸ビニル単量体2310g、メタノール690g、N−ビニル−ε−カプロラクタム69.6gを仕込み、窒素ガスを30分バブリングして脱気した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.0gを添加し重合を開始した。N−ビニル−ε−カプロラクタムの35%メタノール溶液を酢酸ビニル単量体とのモル比率が一定になるように逐次添加しながら重合を行い、3時間後に冷却して重合を停止した。このときの固形分濃度は31%であり、N−ビニル−ε−カプロラクタムの35%メタノール溶液の添加量は141mLであった。次いで30℃減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニル単量体の除去を行い、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度33%)を得た。次に、メタノールを加えて濃度を30%に調整したポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液333gに,40℃の条件下で、水酸化ナトリウムの濃度10%メタノール溶液13.9g(水酸化ナトリウム/該共重合体中の酢酸ビニル単位のモル比が0.03)を添加してけん化した。ゲル状生成物析出後、生成物を粉砕し、メタノール500g、水酸化ナトリウムメタノール溶液(10%)250gを添加して70℃で3時間加熱した。得られた白色物質に酢酸メチル1500gを添加し、70℃で1時間加熱し、未反応の水酸化ナトリウムを中和した。さらに1500gのメタノール中、70℃、1時間の加熱洗浄を3回繰り返した後、65℃で12時間加熱乾燥し、目的のビニルアルコール系重合体組成物を得た。得られたビニルアルコール系重合体のけん化度は99.9モル%であり、アルカリ金属塩含量はビニルアルコール系重合体100重量部に対して0.45重量部であった。またH−NMR測定から求めたN−ビニル−ε−カプロラクタム単量体単位の変性量は4.5モル%であり、粘度平均重合度を定法のJIS K6726に準じて測定したところ1760であった。得られたビニルアルコール系重合体組成物の酸・塩基に対する安定性試験を行ったところ、試験後もN−ビニル−ε−カプロラクタム単量体単位、ビニルエステル単位、ビニルアルコール単位それぞれの含有量に変化は無く、酸・塩基に対して安定であった。
【0035】
実施例2
表1に示す重合条件に変更したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系重合体組成物を得た。ビニルアルコール系重合体組成物の基本構造および物性評価結果を表2および表5に示す。
【0036】
実施例3
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管および温度計を取り付けた6Lの反応器に、酢酸ビニル単量体2040g、メタノール960g、N−ビニル−ε−カプロラクタムの61.4gを仕込み、窒素ガスを30分バブリングして脱気した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.0gを添加し重合を開始した。N−ビニル−ε−カプロラクタムの35%メタノール溶液を酢酸ビニル単量体とのモル比率が一定になるように逐次添加しながら重合を行い、3.5時間後に冷却して重合を停止した。このときの固形分濃度は34%であり、N−ビニル−ε−カプロラクタムの35%メタノール溶液の添加量は156mLであった。次いで30℃減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニル単量体の除去を行い、ポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液(濃度33%)を得た。次に、メタノールを加えて濃度を30%に調整したポリ酢酸ビニル共重合体のメタノール溶液333gに、40℃の条件下で、水酸化ナトリウムの濃度10%メタノール溶液13.9g(水酸化ナトリウム/該共重合体中の酢酸ビニル単位のモル比が0.03)を添加してけん化した。ゲル状生成物析出後、生成物を粉砕し、水酸化ナトリウムのメタノール溶液添加から、1時間後に酢酸メチル1500gを添加し、70℃で1時間加熱することにより未反応の水酸化ナトリウムを中和した。1500gのメタノール中、70℃で1時間の加熱を2回繰り返した後、65℃で12時間加熱乾燥し目的のビニルアルコール系重合体組成物を得た。得られたビニルアルコール系重合体のけん化度は98.4モル%であった。このビニルアルコール系重合体組成物の熱安定性試験において該組成物の色相に変化は無く白色のままであり、また水溶液の表面張力を測定したところ54.3×10−5N/cmであった。
【0037】
得られたビニルアルコール系重合体組成物の均一な5%水溶液(含水率95%)を作成し、ポリエステルフィルム上に流延して室温で乾燥した後、ポリエステルフィルムから剥離することにより、厚さ40μmのフィルムを得た。得られたフィルムに100℃で10分間熱処理を行った。このフィルムの水溶性を測定したところ20℃水中での完全溶解時間は140秒であった。また、20℃、65%RHに調湿して平衡含水率を測定したところ16.2%であった。また、20℃、65%RHに調湿してヤング率の測定を行ったところ、ヤング率は2.9kg/mm、強度は4.2kg/mmであった。またISO14851に準じた方法で生分解性を評価したところ、生分解率は82%であった。
【0038】
得られたビニルアルコール系重合体組成物1gにメタノール10gを加え、60℃に加温してビニルアルコール系重合体を膨潤させた後、NaOHのメタノール溶液(10%濃度)5gを加えて60℃で3時間撹拌したものについて、メタノールソックスレー抽出を3日間実施し、次いで乾燥してビニルアルコール系重合体の精製物を得た。該重合体のH−NMR測定から求めたN−ビニル−ε−カプロラクタム単量体単位の変性量は4.5モル%であった。また、該重合体の粘度平均重合度を定法のJIS K6726に準じて測定したところ1310であった。
【0039】
実施例4〜11
表1に示す重合条件に変更したこと以外は実施例3と同様にしてビニルアルコール系重合体組成物を得た。ビニルアルコール系重合体の基本構造および該重合体組成物の物性評価結果を表2および表5〜9に示す。
【0040】
比較例1〜2
表3に示す重合条件に変更したこと以外は実施例1と同様にしてビニルアルコール系重合体組成物を得た。ビニルアルコール系重合体の基本構造および該重合体組成物の物性評価結果を表4および表5に示す。
【0041】
比較例3〜11
表3に示す重合条件に変更したこと以外は実施例3と同様にしてビニルアルコール系重合体組成物を得た。ビニルアルコール系重合体の基本構造および該重合体組成物の物性評価結果を表4および表5〜9に示す。
【0042】
比較例12
実施例3と同様にしてビニルアルコール系重合体を合成し、アルカリ金属塩の含量がビニルアルコール系重合体100重量部に対して1.0重量部となるように酢酸ナトリウムを添加した。ビニルアルコール系重合体の基本構造および該重合体組成物の物性評価結果を表4および表8に示す。
【0043】
比較例13
実施例3と同様にしてビニルアルコール系重合体を合成し、さらにメタノールソックスレー抽出を2日間実施し、次いで乾燥することにより目的のビニルアルコール系重合体組成物を得た。ビニルアルコール系重合体の基本構造および該重合体組成物の物性評価結果を表4および表6に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0004818553
【0045】
【表2】
Figure 0004818553
【0046】
【表3】
Figure 0004818553
【0047】
【表4】
Figure 0004818553
【0048】
【表5】
Figure 0004818553
【0049】
【表6】
Figure 0004818553
【0050】
【表7】
Figure 0004818553
【0051】
【表8】
Figure 0004818553
【0052】
【表9】
Figure 0004818553
【0053】
【発明の効果】
本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、そのフィルムが冷水に対する溶解性が優れているのみならず、酸性物質およびアルカリ性物質に対して安定であり、またフィルムの吸湿性が低いためにフィルムの強度に優れており、さらに良好であることから、特に農薬や洗剤などの包装用水溶性フィルムに好ましく用いられる。
また本発明のビニルアルコール系重合体組成物は、優れた水溶性かつ高い界面活性を示すことから、分散安定性が顕著に優れた分散安定剤として有用である。さらに、本発明のビニルアルコール系重合体組成物は界面活性剤、紙用コーティング剤、紙用内添剤および顔料バインダーなどの紙用改質剤、木材、紙、アルミ箔および無機物などの接着剤、不織布バインダー、塗料、経糸糊剤、繊維加工剤、ポリエステルなどの疎水性繊維の糊剤、シート、ボトルならびに繊維などの各種用途に好適に使用できる。

Claims (3)

  1. カプロラクタム基を有する単量体単位を含有するビニルアルコール系重合体(A)100重量部に対してアルカリ金属塩(B)を0.05〜0.5重量部有することを特徴とするビニルアルコール系重合体組成物であって、該カプロラクタム基を有する単量体が、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタムおよびN−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1種であるビニルアルコール系重合体組成物
  2. カプロラクタム基を有する単量体がN−ビニル−2−カプロラクタムである請求項1記載のビニルアルコール系重合体組成物。
  3. カプロラクタム基を有する単量体単位の含有量が1〜30モル%である、請求項1または2記載のビニルアルコール系重合体組成物。
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