半導体デバイスの製造プロセスにおいて、露光マスクを形成する場合、角形のマスク基板にレジスト液を塗布し、フォトマスクを用いてそのレジスト膜を露光し、更に現像することによって所望のレジストパターンを作製することが行われている。マスク基板上へのレジスト液の塗布はスピンコーティングにより行われるが、表面張力の影響などで基板周縁部におけるレジスト液の盛り上がりを避けることが出来ない。このため、現像時に周縁部のレジスト膜が完全には除去されずに残存することになり、その後の基板の搬送工程中にその残存したレジストが剥がれ、パーティクルの原因となる。
そこで基板表面にレジスト液などを塗布した後、基板のパターン形成領域の外側における縁部の不要な塗布膜を除去する処理が行われている。この塗布膜の除去処理においてはユーザからデバイスの形成が行われる基板の被処理面をできるだけ広くとりたいという要請があるため、除去する塗布膜の幅をできるだけ小さく、例えば周縁の1mm程度の幅の塗布膜を除去することが検討されている。
特許文献1にはそのような基板の周縁のレジスト膜の除去を行うための塗布膜除去装置について記載されている。図14はこの塗布膜除去装置の概略について示したものであり、この装置の構成について簡単に説明する。図中11は、その表面にレジスト膜が形成された、角型の基板Mを保持する載置台である。
図中13は昇降自在かつ鉛直軸周りに回転自在な受け渡しステージである。図中14は基板Mに並行するように敷設されたガイドレールである。図中15は、支持部15aを介してガイドレール14に接続されたノズル部であり、不図示の駆動部によりこのガイドレール14に沿って移動可能になっている。ノズル部15は、図15(a)に示すように上片部15a、下片部15b、壁部15cからなるコ字型のブロックとして構成され、シンナーを吐出するシンナー供給ノズル16と、パージガスとしてN2(窒素)ガスを吐出するパージガス供給ノズル17と、吸引管18とを備えている。なお図中16a,17aは各供給ノズル16,17の吐出口であり、18aは吸引管18の吸引口である。なお図14中19は助走ステージであり、ガイドレール14に直交し、載置台11に載置された基板Mの対向する両辺に近接するように夫々設けられている。この助走ステージ19は、基板Mの位置を規制する役割と、後述するようにノズル部15がレジスト膜の除去を行いながら基板Mの辺部から角部に移動した際における当該ノズル部15と基板Mとの間に形成される気流の変化を抑える役割を有する。
このような塗布膜除去装置によって基板Mの周縁部のレジスト膜が除去される工程について説明する。不図示の搬送機構により基板Mが受け渡しステージ13を介して載置台11に受け渡されると2つの前記ノズル部15が、上片部15aと下片部15bとの間に基板Mの縁部を挟んだ状態で基板Mの一端側から他端側へ往復しながら前記供給ノズル16,17を介してシンナー及びN2ガスを基板Mに吐出すると同時に、余剰のシンナー及びシンナーにより溶解して基板Mから剥離されたレジスト膜10を吸引口18aから吸引して、除去することで基板Mの対向する辺の縁部の不要なレジスト膜10が夫々当該基板Mの辺に沿って除去される。その後受け渡しステージ13が上昇後90度鉛直軸周りに回転して、レジスト膜10が除去された辺が夫々助走ステージ19に並行するように基板Mが載置台11に載置される。続いて既述のようにノズル部15が移動して処理を受けていない辺の縁部のレジスト膜の除去処理が行われて処理が完了する。
なお特許文献2にもこの特許文献1に類似した構成を有する塗布膜除去装置について示されている
しかしこれらの特許文献に示されるような装置を用いてレジスト膜の除去を行う場合は基板Mと各吐出口16a,17a及び吸引口18aとの距離を精密に調整する必要があり、例えば0.05mm程度の精度で調整することが必要になる場合がある。基板Mと各吐出口16a,17a及び吸引口18aとの距離が適切に調整されていない場合はパージガスの吐出及び吸引口18aによる吸引によって基板Mとノズル部15との間に形成される気流が乱れ、シンナー及び溶解したレジストがミストとなって飛散してパーティクルとして基板Mに付着したり、デバイスが形成される基板Mの被処理面のレジスト膜を溶解させたりしてしまうおそれがある。
その他にも気流が乱れた場合は、図15(b)に示すように溶解され基板Mから剥離したレジスト膜(レジスト液)10の端部がばたつき、そのばたついた勢いにより当該レジスト膜10の端部が基板Mの内側に向けて反転し(図15(c))、剥離してないレジスト膜10の上に乗り上げてしまい、塗布膜の除去処理後も図15(d)に示すようにこの乗り上げた部分が残ることにより、既述のようにこの乗り上げた部分が、基板Mの搬送工程においてパーティクルとなるおそれがある。またこの乗り上げた部分が、内側に向かうほど基板Mの有効な被処理面は小さくなり、既述の被処理面を広く取りたいというユーザの要請に応えられなくなる懸念がある。
ところで基板の大きさについてはそのロット毎に若干の誤差がある場合があり、また各基板は完全な平面構造を持たず歪んでいる場合もある。これらの基板の大きさの誤差や基板の歪みなどが原因で、基板Mを載置台11に載置する際に基板Mが助走ステージ19へ乗り上げて正常な処理が行われなくなることを防ぐために基板Mが載置台11に載置された際に各助走ステージ19とそれに向かい合う基板の辺との間に夫々0.5mm程度の隙間が設けられるように助走ステージ19の位置を調整することが必要になる場合がある。しかし既述のようなレジスト膜除去処理を行う際にノズル部15が基板Mの辺部から角部へ移動すると、基板Mとノズル部15との間に形成されている気流がこの隙間の影響を受けて乱れることにより、この基板Mの角部において既述のシンナー及びレジストの溶解物のミスト化や剥離したレジスト膜の乗り上げがより起こりやすくなるおそれがある。
特開2004−363565号公報(段落0042〜段落0051、図1)
特開2005−108978号公報(段落0024〜段落0050、図3、図12〜図15)
本発明の塗布膜除去装置が組み込まれた塗布膜形成システムの全体構成についてはじめに簡単に述べておく。図1は塗布膜形成システムの一例を示す平面図であって、図2は、その概略斜視図である。図中B1は、例えば5枚の角形基板例えば矩形のマスク基板Mが収納されたキャリアCを搬入出するためのキャリアブロックであり、このキャリアブロックB1は、前記キャリアCを載置するキャリア載置部20と受け渡し手段21とを備えている。
前記マスク基板Mは、例えば露光マスクを形成するためのガラス基板であり、例えば一辺の長さが152±0.4mmの正方形であって、厚さが6.35mmに設定されている。前記受け渡し手段21は、キャリアCから基板Mを取り出し、取り出した基板MをキャリアブロックB1の奥側に設けられている処理部B2へと受け渡すように、左右、前後に移動自在、昇降自在、鉛直軸周りに回動自在に構成されている。
処理部B2の中央には主搬送手段22が設けられており、これを取り囲むように例えばキャリアブロックB1から奥を見て例えば右側には塗布ユニット23及び現像ユニット24、左側には洗浄ユニット25、手前側、奥側には加熱・冷却系のユニットなどを多段に積み重ねた棚ユニットU1、U2がそれぞれ配置されている。塗布ユニット23は、基板Mにレジスト液を塗布する処理を行うユニット、現像ユニット24は、露光後の基板Mに現像液を液盛りして所定時間そのままの状態にして現像処理を行うユニット、洗浄ユニット25はレジスト液を塗布する前に基板Mを洗浄するためのユニットである。
前記棚ユニットU1、U2は、複数のユニットが積み上げられて構成され、例えば図2に示すように、塗布膜除去装置3や、加熱ユニット26、冷却ユニット27の他、基板Mの受け渡しユニット28等が上下に割り当てられている。前記主搬送手段22は、昇降自在、進退自在及び鉛直軸回りに回動自在に構成され、棚ユニットU1、U2及び塗布ユニット23、現像ユニット24並びに洗浄ユニット25の間で基板Mを搬送する役割を持っている。ただし、図2では便宜上受け渡し手段21及び主搬送手段22が描いていない。
前記処理部B2はインターフェイス部B3を介して露光装置B4と接続されている。インターフェイス部B3は受け渡し手段29を備えており、この受け渡し手段29は、例えば昇降自在、左右、前後移動自在かつ鉛直軸回りに回動自在に構成され、前記処理ブロックB2と露光装置B4の間で基板Mの受け渡しを行うようになっている。
このような塗布膜形成装置における基板Mの流れについて述べておくと、まず外部からキャリアCがキャリア載置部20に搬入され、受け渡し手段21によりこのキャリアC内から基板Mが取り出される。基板Mは、受け渡し手段21から棚ユニットU1の受け渡しユニット28を介して主搬送手段に受け渡され、所定のユニットに順次搬送される。例えば洗浄ユニット25にて所定の洗浄処理が行われ、熱処理ユニットの一つとして加熱処理が行われた後、冷却ユニット27にて所定の温度に調整され、塗布ユニット23にて塗布膜の成分が溶剤に溶解された塗布液であるレジスト液の塗布処理が行われる。
続いて基板Mは塗布膜除去装置3にて、基板Mの縁部に付着している不要なレジスト膜が除去される。ここで基板Mの縁部とは、例えば基板Mのパターン形成領域の外側の周縁領域及び基板端面を言う。この後、基板Mは、加熱ユニット26の一つにて、所定温度に加熱されてプリベーク処理が行われた後、冷却ユニット27の一つにて所定の温度に調整され、次いで主搬送手段22により棚ユニットU2の受け渡しユニット28を介してインターフェイス部B3の受け渡し手段29に受け渡され、この受け渡し手段29により露光装置B4に搬送されて、所定の露光処理が行われる。この後基板Mは、インターフェイス部B3を介して処理部B2に搬送され、加熱ユニット26の一つにて所定の温度に加熱されて、ポストエクスポージャーベーク処理が行われる。次いで冷却ユニット27にて所定の温度まで冷却されて温度調整された後、現像ユニット24にて現像液が液盛りされ、所定の現像処理が行われる。こうして所定の回路パターンが形成された基板Mは主搬送手段22、キャリアブロックB1の受け渡し手段21を介して、例えば元のキャリアC内に戻される。
続いて、本発明の塗布膜除去装置3について図3〜図4に基づき説明する。図3は塗布膜除去装置の平面図であり、図4は、塗布膜除去装置3の一部を示す分解斜視図である。塗布膜除去装置3は、前記主搬送手段22との間で基板Mの受け渡しを行って、塗布膜除去装置3内部に搬入出する受け渡しチャック31と、受け渡しチャック31により基板Mが載置される載置台4と、載置台4に接続された膜除去補助部5と、塗布膜除去の際に溶剤を基板Mに供給するとともに余剰の溶剤及び溶解物を吸引除去する2つのノズル部6とから主に構成されている。なお図4において2つのノズル部6のうち1つは便宜上記載を省略している。
受け渡しチャック31は、例えば基板Mを載置保持するチャック本体32を備えており、このチャック本体32は、例えば平面視十字型に構成されている。チャック本体32の中央下部にはチャック本体32を支持する支持軸33が接続され、この支持軸33の下部には駆動部34が接続されており、チャック本体32は、この駆動部34により支持軸33を介して昇降自在、鉛直軸回りに回動自在に構成されている。
基板保持部である載置台4は、4つの基台41を備えており、これらの4つの基台41において、例えばそのうちの2つずつが前後方向(図3中Y軸方向)に間隔をおいて対向し、それら対向した組が夫々左右方向(図3中X軸方向)に沿って間隔をおくように設けられている。各基台41の上面には基板Mの高さ位置を調節するためのギャップピン(プロキシミティ)42が設けられている。図5に示すように基板Mの縁部が、これら各ギャップピン42上に載置されることによって当該基板Mは、水平に支持されるようになっている。なお図中43は、各基台41の下部に設けられ、これらの基台41を支持する支持部材である。
塗布膜除去装置3の側方から例えばY軸方向に基板Mが搬入される際には、図5に示すように受け渡しチャック31のチャック本体32の上面に基板Mが載置された後、チャック本体32を下降させて基板Mを載置台4上面に受け渡して載置することができるように、受け渡しチャック31と載置台4とが平面的に干渉しない構造になっている。また塗布膜除去装置3から基板Mが搬出される際にはチャック本体32が上昇して載置台4に載置されていた基板Mを受け取り更に上昇することで、この塗布膜除去装置3から基板Mを離脱させて次工程に移ることができるようになっている。またチャック本体32が上昇した際に、このチャック本体32を鉛直軸回りに回動させることで、基板Mを回動させて基板Mの塗布膜が除去される辺を変えることができるようになっている。
次に膜除去補助部5について説明する。この膜除去補助部5は、助走ステージ51と溶剤引込板52とにより構成されており、例えば載置台4に載置された基板Mに近接し、当該基板Mの側方全体を囲うように四角形の一体型枠材として形成され、載置台4に載置された基板Mの位置のずれを抑える位置決め部材としての役割を有している。図6をも参照して説明すると助走ステージ51は、例えば基板Mと略同じ厚さを持った板状の1対の部材からなり、互いに前後方向(図3中Y軸方向)に向き合うようにして載置台4に水平に支持されており、当該載置台4に載置された基板Mと略同じ高さに位置している。
各助走ステージ51の両端部は例えば夫々拡幅され、平面視矩形状の助走部51aが形成されている。この助走部51aは、基板Mの角部に近接して設けられ、基板Mの角部の状態を辺部の状態に近似させることにより、後述する塗布膜除去処理においてノズル部6が基板Mの辺部から角部に移動した際における当該基板Mとノズル部6との間に形成される気流の変化を抑える役割を有する。図3中にl1で示す一方の助走ステージの助走部51aから他方の助走ステージ51の助走部51aまでの距離は、既述のように基板Mの大きさがばらついた場合や基板Mが歪んでいる場合に基板を載置台4に載置する際に当該基板Mが助走部51aに乗り上げてしまうことを防ぐため基板Mの辺の長さよりも若干大きく、例えば153mm程度になるように各助走ステージ51は載置台4の基台41上に設けられている。なお各助走部51aの幅は、例えば後述するノズル部6の基体61の幅よりも若干長くなるように形成されている。
各助走部51aの基板Mの角部に面する側面には例えば吸引口53が開口しており、この吸引口53は例えば助走部51aの内部に設けられた吸引管54の一端に開口している。吸引管54の他端は例えば助走部51aの外部へと伸長し、バルブV1を介して例えば真空ポンプからなる吸引機構55に接続されており、塗布膜の除去を行う際にバルブV1を開いて吸引口53から吸引を行うことによってこの基板Mの角部と助走ステージ51との間を毛細管現象によって滲んだ溶剤が除去され、この溶剤の乾燥により発生するパーティクルが基板Mに付着することが抑えられるようになっている。
溶剤引込板52は溶剤引込部材として設けられており、例えば5mm程度の厚さを持った1対の平板状の部材により構成されている。これら溶剤引込板52は互いに左右方向(X軸方向)に向き合うようにして例えば前記助走ステージ51の側端面に水平に、載置台4に載置された基板Mと略同じ高さに位置するように接続されている。この溶剤引込板52の表面は、ノズル部6から吐出される溶剤及び塗布膜の溶解物が溶剤の表面張力によって付着できるように親水性の材質を用いて構成されることが好ましく、例えばステンレス、セラミックスなどにより構成されることが好ましい。
続けて塗布膜除去手段であるノズル部6について図7をも参照しながら説明する。各ノズル部6は側面視コ字状の基体61を備えており、基体61は、上片部61a、下片部61b、壁部61cとから構成されている。上片部61a及び下片部61bには夫々基板Mの縁部の上面及び下面に向けて基板Mの塗布膜を溶解する溶剤例えばシンナーを吐出する溶剤供給ノズル62が各片部61a、61bに2つずつ設けられており、溶剤供給ノズル62は例えば各片部61a,61bに夫々ノズル部6の進行方向(図3中Y軸方向)に沿って間隔をおいて設けられている。なお図中62aは溶剤供給ノズル62の吐出口である。各溶剤供給ノズル62は溶剤供給管62bを介して溶剤供給源であるシンナータンク62cに接続されている。シンナータンク62cの気相部分には圧送用ガス供給管62dの一端が接続され、また圧送用ガス供給管62dの他端はバルブV2を介して空気供給源62eに接続されている。前記バルブV2を開くとシンナータンク62cに空気供給源62eから空気が流入し、各溶剤供給ノズル62にシンナーが圧送され、各供給ノズル62の吐出口62aから基板Mの縁部に向けてシンナーが吐出されるようになっている。
また上片部61a及び下片部61bには夫々パージガスとしてN2ガスを基板Mの縁部に供給し、余剰のシンナーや溶解した塗布膜を壁部61c側に向けて吹き飛ばすための例えばガス供給ノズル63が2つずつ設けられており、壁部61cに向かう側を基端側とすると、例えば前記各溶剤吐出口63aの先端側に各ガス供給ノズル63の吐出口63aが開口している。各ガス供給ノズル63はガス供給管63bを介してN2ガス供給源63cに接続されている。なお図中V3はガス供給管63bに介設されたバルブであり、このバルブV3が開かれるとガス供給源63cからガス供給管63bに供給されたN2ガスが、ガス供給ノズル63に流通し、そのN2ガスが吐出口63aから吐出されるようになっている。
壁部61cの基板Mに向かう面の例えば中央部には吸引口64が開口しており、この吸引口64には吸引管64aの一端が接続されている。吸引管64aの他端はバルブV4を介して真空ポンプなどからなる吸引機構64bに接続されている。塗布膜除去処理が行われる際に前記バルブV4を開くと吸引口64から基体62の各片部61a,61b及び壁部61cに囲まれる空間が排気され、基板Mから溶解され、剥離された塗布膜や余剰のシンナーが当該吸引口64から吸引されて除去されるようになっている。
図3及び図6に示すように基体61の下部には当該基体61を支持する支持部65が設けられている。また例えば膜除去補助部5の左右両側には溶剤引込板52に並行するようにガイドレール66及び駆動ベルト67が夫々設けられており、前記支持部65は基体61を伴ってこのガイドレール66を摺動自在に装着されている。また駆動ベルト67は支持部65に固定され、駆動プーリ68aと従動プーリ68bとにより掛け回されている。駆動プーリ68aは例えばモータを含んだ駆動部69により回転して、当該駆動プーリ68aの動きに合わせて駆動ベルト67が循環することにより図6及び図7に示すようにノズル部6の基体61は、その上片部61aと下辺部61bとの間に溶剤引込板52及び基板Mの縁部を挟んだ状態で一方側の助走ステージ51から他方側の助走ステージ51へ溶剤引込板52に沿って前後方向に移動できるようになっている。これらプーリ68a,69b、駆動ベルト67及び前記駆動部69は請求の範囲で言う移動機構を構成している。なお図4及び図6においては便宜上駆動ベルト67の記載は省略している。
なお図7中に示す上片部61aと下片部61bとの距離h1は、例えば7mm〜7.5mmである。また溶剤引込板52から基体61の壁部61cとの距離l2は、基板Mの縁部のレジスト膜の剥離幅に応じて適宜調節される。つまり所望の剥離幅が小さくなるほど基板Mの外側に溶剤を供給するためにl2は大きくなるが例えば1mm〜4mmに設定される。また基板Mと溶剤引込板52との距離l3は、例えば0.2mm〜1.5mm程度となるように基板Mは載置台4に載置される。なお溶剤引込部材が基板に対してこのような距離に設けられているときに、溶剤引込部材は基板に近接しているという。
またこの塗布膜除去装置3は不図示の制御部を備えており、この制御部は、例えばコンピュータからなるプログラム格納部を有しており、プログラム格納部には後述するような塗布膜除去装置の作用、つまり駆動部69を介するノズル部5の移動や各バルブV1〜V4の開閉動作、受け渡しチャック31の昇降などが実施されるように命令が組まれた例えばソフトウエアからなるプログラムが格納される。そして前記プログラムがこの制御部に読み出されることにより当該制御部はこの塗布膜除去処理装置の作用を制御する。なおこのプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードなどの記録媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
続いてこの塗布膜除去装置3の作用について図8を参照しながら説明する。受け渡し手段21により当該塗布膜除去装置3に基板Mが搬送されると受け渡しチャック31のチャック本体32が上昇して基板Mの裏面を支持する。例えば受け渡し手段21が退避した後、チャック本体32が下降して載置台4に基板Mが水平に載置される。チャック本体32は基板Mを載置台4上に載置した後に塗布膜除去装置3の動作に支障のない位置まで更に下降する。その後、左右に対向する2辺の縁部のレジスト膜を例えば同時に除去するために駆動部69により2つのノズル部6が、図3に一点鎖線で示す待機位置から夫々ガイドレール66に沿って基板Mに向けて例えば予め設定された所定の速度で前進する。
そして、移動した各ノズル部6が例えば手前側の助走ステージ61を通過し、各ノズル部6の基体61の上片部61aと下片部61bとの間に形成される空間内に基板Mの縁部が進入するとバルブV2〜V4が例えば略同時に開かれて各溶剤供給ノズル62の吐出口62aからシンナーが、各ガス供給ノズル63の吐出口63aからN2ガスが夫々基板Mの縁部のレジスト膜100を除去する箇所に吐出され、それと略同時に吸引口64によって前記上片部61aと下片部61bとの間の空間の排気が行われる(図8(a))。
また例えば前記シンナーの吐出が開始されるのと略同時に助走ステージ51側のバルブV1が開かれ、吸引口53(図3、4参照)から基板Mと助走ステージ51との間を毛細管現象によって滲んだシンナーが除去される。
吐出されたシンナーにより溶解した基板Mの縁部のレジスト膜(レジスト液)100及び余剰のシンナーは、例えばガス供給ノズル63からのN2ガスの吐出及び吸引口64からの吸引により上片部61aと下片部61bとの間に形成される気流に乗って基板Mから吸引口64に向かう途中、溶剤引込板52に接触して、シンナーの表面張力により溶剤引込板52に引込まれる。引込まれたシンナー及びレジスト膜は引込板52表面を伝わって吸引口64内に向かい、その後引込板52から離れて吸引口64内に吸引されて除去される(図8(b)、(c)))。
そして各ノズル部6が移動してレジスト膜100の除去が行われる際に上片部61aと下片部61bとの間に形成される気流が乱れて、図9(a)に示すように基板Mの端部において溶解して剥離したレジスト膜(レジスト液)100の端部がばたつくとそのレジスト膜100の端部は、基板Mに近接している溶剤引込板52に接触し、シンナーの表面張力により溶剤引込板52に引込まれて(図9(b))、その後吸引口64に吸引されて除去される(図9(c))。
また図10(a)に示すように前記気流が乱れて基板Mの縁部に溶解したレジスト膜100及びシンナーによるミストが発生すると、そのミスト粒子101は、基板Mに近接している溶剤引込板52及び溶剤引込板52と基板Mとの間に形成される溶解物の液膜に付着し、シンナーの表面張力によって前記溶剤引込板52及び前記液膜に引込まれ(図10(b)、(c))、その後吸引口64により吸引されて除去される。
このように基板Mの縁部のレジスト膜100を除去しながら各ノズル部6は、奥側の助走ステージ51に向けて前進し、奥側の基板Mの角部を通過すると今度は手前側の助走ステージ51に向けて後退し、同様の処理を繰り返す。
こうして基板Mの縁部のレジスト膜100を除去しながら各ノズル部6が、往復動作して、例えば複数回往復動作して基板Mの角部を通過すると、バルブV2〜V4が閉じられ各溶剤吐出口62からのシンナーの吐出、各ガス吐出口63からのN2ガスの吐出及び各吸引口64からの吸引が停止する(図8(c))。またシンナーの吐出の停止に若干送れてバルブV1が閉じられて吸引口53からの吸引が停止して左右に対向する最初の2辺の縁部のレジスト膜100の除去が完了する。
各ノズル部6がさらに後退して待機位置に戻ると続いて塗布膜除去装置3の下方に位置していた受け渡しチャック31のチャック本体32が上昇して基板Mを持ち上げる。次いでチャック本体32が鉛直軸回りに回動するように駆動部34を駆動させ、基板Mを90度回動させる。これにより、基板Mの縁部のレジスト膜100が除去されていない残り2辺がノズル部6の進行方向を向くように位置するようになる。次いでチャック本体32を下降させて載置台4上に基板Mを載置して、前述した方法により残り2辺の基板Mの縁部のレジスト膜100を除去することで、基板Mのすべての縁部の塗布膜除去を完了するようになっている。
このような塗布膜除去装置3によれば、基板Mの辺の縁部にシンナーを供給すると共に余剰のシンナーとシンナーにより溶解した塗布膜とを吸引除去するノズル部6と、このノズル部6によりシンナーが吐出される辺に近接し、当該辺に沿うように、ノズル部6により吸引されたシンナー及びレジスト膜の溶解物が、吸引口に入り除去される前に一旦引込まれる溶剤引込板52と、が設けられ、駆動部69によってノズル部6は溶剤引込板52及びシンナーが吐出される辺に沿って移動するように構成される。従って吸引口64による吸引とガス供給口63aからのN2ガスの吐出により基板Mとノズル部6との間に形成される気流が乱れることによって、溶解されて剥離したレジスト膜が基板Mの縁部をばたついたり、シンナー及びレジスト膜の溶解物によるミストが発生したりしても、それらのばたついたレジスト膜やミストは基板Mに近接する溶剤引込板52及び基板Mと溶剤引込板52との間に形成される液膜に付着して、表面張力によりそれら溶剤引込板52及び液膜に引込まれる。その結果として、前記レジスト膜のばたつきが抑えられることによりそのレジスト膜が基板Mへ乗り上げることが抑えられるとともに前記ミストが基板Mの周囲に飛散して基板Mに付着することが抑えられる。従って基板Mへのパーティクルの付着を抑えることができる。
なお前記塗布膜除去装置3の膜除去補助部としては既述の膜除去補助部5のように構成することに限らず例えば図11(a)(b)に示すように構成してもよい。この図11に示した塗布膜除去装置30の膜除去補助部50における助走ステージ56の左右方向の長さは既述の塗布膜除去装置3の助走ステージ51よりも若干短く例えば基板Mの各辺と略同じ長さに構成されている。またこの膜除去補助部50の溶剤引込板57は例えばその両端部の下方に設けられた支持部材58を介して載置台4に載置された基板Mと並行し、前記助走ステージ56と間隔をおくように設けられている。この図11の塗布膜除去装置30はそのような違いを除いて既述の塗布膜除去装置3と同様に構成されている。
ただしこの図11の塗布膜除去装置30における膜除去補助部50のように助走ステージ51と溶剤引込板52との間に隙間が設けられた構造とするよりも、塗布膜除去装置3の膜除去補助部5のように処理を受ける基板Mの側面全周が助走ステージ51及び溶剤引込板52により囲まれた構造とする方が、当該基板Mの角部における状態を当該基板Mの辺部における状態に近似させることができる。具体的に述べると、膜除去補助部5においては、載置台4に載置された基板Mの角部付近に膜除去補助部50に設けられるような隙間がないため、この隙間により当該基板Mの角部の周囲に形成される気流が影響を受けることがない。従って塗布膜を除去するためにノズル部6が基板Mの辺部から角部へ移動する際における当該ノズル部6と基板Mとの間に形成される気流の変化を抑えることができるので、当該角部において既述のようなレジスト膜の乗り上げやミストの発生が抑えられるため好ましい効果が得られる。
なお溶剤引込部材としては既述の溶剤引込板52のように平板構造のものを用いることに限らず、例えば図12(a)に示すように内側(基板側)に向かうほど薄くなるような構造を持つ溶剤引込板71を用いてもよく、また図12(b)に示すように助走ステージ51に水平に接続された支持板72の内側の側壁から内側へ向けて例えば多数の棒状の突起(突部)73が、ノズル部6の移動方向に沿って間隔をおいて設けられた構造のものを溶剤引込部材として用いてもよい。なお溶剤引込部材としては板状のものに限らず例えばワイヤ状のものを用いてもよい。
また図13(a)に示すように溶剤引込部材を構成してもよい。この図13(a)の溶剤引込部材である溶剤引込板81は、前記ノズル部6の吸引口64を第1の吸引口とした場合に、その内側の側壁にこの引込板81の長さ方向に沿って開口した第2の吸引口であるスリット82を備えており、このスリット82は、溶剤引込板81の内部に設けられた吸引路83に連通している。吸引路83は、その一端がこの溶剤引込板81に接続された吸引管84に連通しており、吸引管84の他端はバルブV5を介して吸引機構85に接続されている。そしてバルブV5を開くとこの吸引機構85により吸引管84及び吸引路83を介してスリット82から後述するように溶剤及び塗布膜の溶解物が吸引される。なおこの溶剤引込板81の表面は、例えば既述の溶剤引込板52の表面を構成する各材質により構成されている。
このような溶剤引込板81を備えた塗布膜除去装置を用いて基板Mの縁部の塗布膜を除去する場合、既述の塗布膜除去装置3と略同様の手順で処理を行うが、例えばノズル部6が基板Mへ移動してバルブV2〜V4が開かれると、それと略同時にバルブV5も開かれる。そして図13(b)に示すように溶解したレジスト膜及び余剰のシンナーは、スリット82から吸引されて、吸引路83に流入して除去され、またこのとき例えば引込板81の上部及び下部に引込まれて、スリット82内に吸引されなかったものは、ノズル部6の吸引口64に入り除去される。そして例えばノズル部6が基板Mの辺に沿って複数回往復動作した後、バルブV2〜V4が閉じられると、それと略同時にバルブV5も閉じられてスリット82からの吸引が停止する。
この溶剤引込板81は基板Mの辺に近接しているため基板Mの縁部にシンナーが供給されると、この溶剤引込板81のスリット82によりすぐさまそのシンナー及び溶解したレジスト膜を吸引、除去できるのでより確実に基板Mの縁部へのレジスト膜の乗り上げやミストの飛散を抑えることができる。
なお第2の吸引口としてはスリット状に構成されることに限らず、例えば多数の小孔が引込板81の内側の側壁に沿って間隔をおくように配列された構成であってもよい。またスリット82は溶剤引込板81の上部及び下部に開口していてもよい。