従来から電子写真方式を利用した、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリなどの画像形成装置において、転写材上のトナー像を加熱定着する定着器として金属性円筒芯金表面に離型性層を形成し、円筒内部にハロゲンヒータを内包する熱定着ローラと、金属芯金に耐熱性ゴムからなる弾性層、その表面に加圧側離型性層を形成した加圧ローラとを加圧当接して構成される熱ローラ定着方式が用いられてきた。定着ローラの肉厚は0.7〜1.0mmが一般的であったが、近年の省電力化として熱容量が小さい肉厚が0.1〜0.3mmのものが製品化されている。
また、熱伝導効率が良く、部分加熱を可能とした特許文献1、特許文献2に記載のようなフィルム加熱方式の定着器を採用した画像形成装置が製品化されている。この定着器は、図1に示すような、加熱部材としての定着フィルムユニット100と加圧ローラ110とを加圧当接させて構成される。定着フィルムユニット100は、低熱容量の耐熱性樹脂のフィルム101c、その上に導電性プライマ層101b、更にその表面に離型性層101aを形成した定着フィルム101とその内側のセラミックヒータ102とフィルムガイド部材を兼ねるヒータホルダ103と均一加圧する為の金属製の定着ステー104により構成されている。他方、加圧ローラ110は、加圧芯金110cの上にシリコンゴム層110bとPFAチューブ層110aを形成して構成されている。
セラミックヒータ102は、図2の断面図に示すように、アルミナ等を材料とするセラミック基板102aの片面に銀パラジウム(Ag/Pd)、RuO2、Ta2N等を材質とした帯状パターンからなる通電発熱体102bが2列で形成されており、その表面は保護ガラス102cで覆われ、発熱体形成面と逆側の面には温度検知手段としてサーミスタ105が形成されている。
また、熱ローラ定着方式およびフィルム加熱方式の両者について、加熱部材が低熱容量になるにつれ、転写材である紙の熱容量に対して加熱体のセラミックヒータまたは加熱部材である定着ローラ温調温度を一定温度に制御するのに、加熱体であるハロゲンヒータやセラミックヒータ102のより緻密な電力制御が行われる必要が生じている。
特に、フィルム加熱方式は、近年の省エネルギー推進、定着器としての小型化の観点から、従来のハロゲンヒータを内包する円筒状の金属を定着ローラとして用いる熱ローラ方式に比べて熱伝達効率が高く、装置としての立ち上りも速い方式として注目され、より高速の機種にも適用されるようになってきている。
以上のような定着器を用いたプリンタ等の各種画像形成装置は、画質の向上とともに近年益々そのプリント速度の高速化が強く求められるようになっている。このため、今後、更なる高速化を実現するためには加圧ローラ及び定着フィルムの回転速度を上げるとともに、通過時間の短くなった紙に十分な熱エネルギーを供給するため、定着温度を更に高く設定したり、加圧ローラの加圧力を上げて加熱領域を広げたり、ヒータ基板や定着フィルムの材質を熱伝導性の高いものに替えたり、温調制御するためのヒータ基板への電力制御などの改良を行ったりする必要がある。
しかしながら、このような改良を進めて行くと、同時に定着部において様々な弊害が生じ易くなる。その弊害の一つとして高速化に伴い転写材の種類によって定着性および熱容量の違いが強調され、高温オフセットや定着不良が生じるという問題がある。
図3はこのような従来の装置の画像形成工程における定着工程を簡略化したフローチャートを示している。ここでは単純に転写材の種類(紙種)の設定として、通常の紙を扱う普通紙モード、通常の紙より熱容量を有する厚紙を扱う厚紙モード、通常の紙より熱容量を有しまたは表面性が粗いラフ紙を扱うラフ紙モード、特殊紙としてハガキと封筒に対応した特殊紙モードの4通りの選択を可能とした例を示している。このフローチャートにおいて、例えばハガキ(特殊紙)を選択した場合には通常の紙の定着温度Tに対してα分だけ温度を高くして定着するようになっている(S3〜S11)。プリント信号を受け取ってから(S1、S2)、各モードの定着温度に達するまでヒータを加熱し(S12、S13)、目標値に達した後は、前回転の後(S14、S15)、給紙を開始する(S16、S17)。これとともに、紙の通紙に伴って奪われる熱量に応じて低下するヒータ温度を一定に維持するため、通電力を制御して定着温度を保つように最後の紙の定着が終了するまで定温制御されるようになっている(S18〜S22)。
尚、このようなフローチャートによる定着工程の流れは上記の熱ローラ定着器においてもフィルム加熱型定着器においても基本的に同じである。但し、後者ではヒータ基板裏の温度を検知して温度制御している為、連続通紙に伴う定着全体の蓄熱効果によって加圧ローラ等のヒータ以外の部材による加熱作用が働くようになり、実際の定着ニップ部の温度がヒータの制御温度より高くなる場合が生じる(従って、厳密にはこの方式の定着器における制御温度は定着温度と称するのは適正ではなく、今後この制御温度を温調温度と称する)。この為、過剰加熱によるホットオフセット等の弊害を防止する対策として、ヒータの加熱温度を通紙枚数に従って予め定めた割合で段階的に低下させる必要があり、この時、厚紙の定着開始温度を通常の紙の定着開始温度より高くするとともに、温度を下げる通紙枚数の量も各紙の特性に応じて、個々に適正値を求めて設定している。
図4はこのように段階的に温調温度を低下させるように設計された従来の画像形成装置の各紙及び各通紙枚数における温調温度の変化を示すグラフであり、このような設定に従うことで1分間に25枚の定着速度を有するフィルム加熱型定着器が実現されている。
しかしながら、使用する紙によって熱容量が異なり、その各々に対して最適な条件を設けることは困難である為、ある範囲の平滑度や熱容量を有する紙をまとめて同一モードで定着させることで設定モードの数を制限している。そのため、特定の紙に対しては必要以上または以下の電力を用いて定着させている場合があり、高温オフセットや定着不良が起こる場合がある。このことが定着器のトナー汚染につながることもある。
この問題は基本的には速度の遅い装置においても存在するが、定着速度がある程度遅い領域では、定着時間が熱の伝播時間差に比べて大きくなるうえ、そもそも単位時間当たりに大きな熱量を必要としないので定着温度自体が低くて済み、紙の裏表の間に大きな温度勾配が生じないため、熱の伝播速度差自体が小さいということから転写材の熱容量はそれほど大きな問題ではなかった。しかし、高速化に伴ってこの問題は顕著となり、特に転写材への供給熱量不足が特に懸念されるようになった。これは定着ニップ部を通過する時間が短くなるためである。問題対策として、必要ニップ幅を得るため加熱部材と加圧部材の加圧力を上げるか、温調温度を上げるという方法がある。しかし、構成上及び安全性を考慮すると、それらの上限値が存在するため、すべての転写材について定着性に必要とされる十分な供給熱量を転写材に与えるのは難しくなってきた。
特に、特殊紙といわれるハガキや封筒は、さまざまな坪量とサイズが存在し、坪量においては普通紙に比べて重いものが多く、低熱容量の定着器において定着性を満足させるのが難しい転写材である。例えば、封筒は普通紙80〜100g/m2の坪量の転写材を重ねて構成されているため、実際の坪量は160〜200g/m2の坪量になるため、特定の定着モードでプリントを行うことになるが、サイズによっては上限の温調温度設定においても定着性を満足することができない場合も発生してくる。
その一方でコストダウン、小型化を目的としたセラミックヒータの小型化、加圧ローラの小径化も望まれているため、定着器としての低熱容量(セラミック・ヒーターの熱容量、加圧ローラの熱容量)化による上記の問題が厳しい状況になる。
上記問題解決方法の一例として、定着性を上げるため、1枚目を通紙する際、加圧ローラを暖めるため所定温調温度で所定時間だけ空回転させ、定着ニップ部に紙を突入させる方法もある。しかし、セラミックヒータ102または定着ローラの温度は安定した状態で転写材を定着ニップ部に突入させるため、ヒータ制御電力としては低い電力に制御される。この状態で熱容量の大きいハガキがニップ部に突入すると、セラミックヒータ102または定着ローラの熱量を瞬時に奪う状態になり、セラミックヒータ102の電力制御が追いつかず所定のプリント目標温度より低い温度に推移し、制御できなくなってしまう。定着性に必要温調温度を維持できないため、結果として定着不良が生じる。
このような事情は、複数枚連続でプリントする際、加圧ローラ温度を暖めるために紙間時間を延長する場合も同じである。
そのほか、転写材の熱容量に応じて、定着中の転写材搬送速度を遅くし、転写材に対して単位時間に与える熱量を変更する方法がある。例えば、特許文献3には、記録紙の厚さに応じて記録紙の走行速度を制御することにより、薄い記録紙から厚い記録紙まで良好に定着できる構成とした定着器に関する技術が開示されている。この定着器は、記録紙の厚みに応じて転写材の走行速度を制御し、その一定速度で記録紙を送る。
また、特許文献4には、記録紙が定着ローラへ突入してから定着ローラの1回転後より、定着ローラの回転速度を記録紙の通過に伴って減速する画像形成装置に関する技術が開示されている。この画像形成装置においては、定着ローラの表面温度の低下がほとんどない、記録紙が定着ローラに突入して1回転目は、定着ローラは一定速度で駆動され、記録紙の搬送が必要以上に遅れることがない。また、以降の回転速度は記録紙の通過に伴って減速されるため、定着ローラ表面の温度が低下しても、定着に必要な熱量が全面に渡ってトナー像に与えられ、良好な定着が行われる方法が開示されている。
特開昭63−313182号公報
特開平2−157878号公報
特開昭49−73141号公報
特開平8−95422号公報
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に即して説明する。
図7に、本実施の形態における画像形成装置の本発明関連主要部の概略構成を示す。この画像形成装置は、感光ドラム2、レーザ等の露光手段3、現像器4、転写ローラ5、記録材(転写材)収納箱7、給紙ローラ対8、転写ガイド板10、除電ブラシ11、定着器(定着装置)12等により構成される。現像器4は、帯電ローラ1、現像ブレード4a、現像スリーブ4b、クリーニング部21を有する。定着器12の具体的な構成については別の図で後述する。この装置は、主制御手段であるCPU30により制御される。
図8は本実施の形態で用いる定着器12の拡大図である。この定着器12は、加熱部材としての定着フィルムユニット13と加圧ローラ14とを加圧当接させて構成される。定着フィルムユニット13は、低熱容量の耐熱性樹脂のフィルム13c、その上に導電性プライマー層13b、更にその表面に離型性層13aを形成した外径φ24mm長手350mmの定着フィルム13´と、その内側に幅10.0mm、厚み1.0mmのセラミックヒータ13dと、フィルムガイド部材を兼ねるヒータホルダ13eと、均一加圧する為の金属製の定着ステー13fにより構成される。セラミックヒータ13d上には温度検知素子であるサーミスタ13gが当接する。加圧ローラ14は、加圧芯金14cの上に厚み5.4mmのシリコンゴム層14bと厚み50μmのPFAチューブ層14aを形成したものであり、製品硬度56°(アスカーC硬度計で1kg荷重)、長手320mm、外径φ25mmである。定着フィルムユニット13は、その両端部に荷重12kgfのバネで加圧ローラ14に押し付けられ、両者の間に定着ニップ部Nを形成する。この定着ニップ部の幅(通紙方向)は非通紙時に5.2mmになっている。
図14に示すように、定着器12は加圧ローラ14の加圧芯金14cに取り付けられた定着駆動ギヤ14dと接続された定着駆動手段である定着モータ23の定着モータギヤ23aにより、加圧ローラ14を回転駆動させるようになっている。
図9は転写前転写材検知センサ(第1の転写材検知センサ)22と、転写材幅検知センサ6a、6bの配置図である。通紙領域の中央の位置に転写前転写材検知センサ22が配置されている。また、通紙領域の中央の位置から75mm外側に転写材幅検知センサ6aが配置され、通紙領域の中央の位置から115mm外側に転写材幅検知センサ6bが配置される。転写材幅検知センサ6a,6bが転写材の通紙幅(加圧ローラ長手方向)を検知する転写材幅検知手段を構成する。
図10に示すように各センサはフラグ61とフォトセンサ62の組み合わせで構成される。通紙中にセンサ位置を転写材Pが通過すると、通常起立状態のフラグ61が転写材Pに押されて倒れ、通常ON状態のフォトセンサ62はフラグ61により遮光されOFFになる。
以下、本実施の形態の動作を説明する。ここでは転写材Pとして官製往復ハガキを用いる場合について説明する。
以下の実施の形態においては、画像形成装置の一例としてプロセススピード140mm/secのレーザビームプリンタについて、A4、35ppmの場合の官製往復ハガキのプリント動作について説明する。官製往復ハガキは坪量190〜200g/m2であり、熱容量の大きい転写材である。転写ポイントと定着ニップ部ポイントの距離が100mmのため、転写材の送り方向長さは148mmとした。つまり、官製ハガキと官製往復ハガキが同じ送り長さとなる。
再度図7を参照し、帯電ローラ1で感光ドラム2の表面を一様に負極性に帯電させた後、レーザ等の露光手段3により、感光ドラム2を露光した領域のみを除電して潜像を形成し、現像器4のトナーを現像ブレード4aと現像スリーブ4bの間で感光ドラムの帯電表面と同極性に摩擦帯電させ、感光ドラム2と現像スリーブ4bが対向する現像ギャップ部においてDC及びACバイアスを重畳印加して、電界の作用によりトナーを浮遊振動させつつ感光ドラムの潜像形成部に選択的に付着させた後、転写ローラ(転写手段)5と感光ドラム2で形成される転写ニップ部まで感光ドラム2の回転によって搬送させる。
画像を記録される転写材Pは、記録材収納箱7から給紙ローラ対8によって転写前搬送レジストローラ9まで搬送され、更にこの転写前搬送レジストローラ9により、転写ガイド板10を通じて予め規定された進入角度で転写ニップ部まで搬送される。転写材Pは、給紙ローラ対8から転写前搬送レジストローラ9まで搬送される間、上述した転写材幅検知センサ6a、6bと転写前転写材検知センサ22を通過し、転写材のサイズが大サイズ、中サイズ、小サイズの3段階に判断される。これにより、CPU30が転写材の幅を認識する。
転写前搬送レジストローラ9から転写ニップ部(転写ポイント)まで転写材である官製往復ハガキが搬送されるまでの間には、官製往復ハガキがこの領域に搬送されて来るまでに接触した様々な部材との摺擦により、転写材表面が帯電している可能性がある為、静電的記録を行うに際して画像を乱す要因となる。このような不要な帯電を取り除く為の除電ブラシ11が、搬送中の官製往復ハガキの背面側に接するように設けられ、接地されている。
このように搬送されてきた官製往復ハガキは転写部において感光ドラム2上のトナーを静電的に引き付けて転写材側に移動させるように、トナーと逆極性の高電圧が転写材背面の転写ローラ5に印加されて転写材の裏面にトナーを静電的に引き付けて画像を転写される。これとともに、転写材である官製往復ハガキ裏面はトナーと逆極性に帯電され、転写されたトナーを保持し続ける為の転写電荷が官製往復ハガキ裏面に付与される。
最後に、トナー画像を転写された官製往復ハガキは、定着入り口ガイド16に沿って、定着器12に突入する。転写ポイントである転写ニップ部と定着ニップ部の距離は100mmの距離がある。定着器12では熱と圧力により転写材にトナー画像が定着される。図8を参照し、官製往復ハガキは定着ニップ部Nまで搬送されると、この定着ニップ部Nで予め設定されている定着温度を保持するように加熱回転体側に設けられたサーミスタ13gの検知温度に応じて、セラミックヒータ13dの通電制御手段であるトライアック18を用いた電力制御により、定温制御されながら加熱加圧されてトナー像を転写材表面に永久固着させる。
官製往復ハガキが定着ニップ部Nを抜けると、定着ニップ部Nから22.5mmの位置に設置してある定着後転写材検知センサ(第2の転写材検知センサ)15を通過し、排紙上ガイド20と排紙下ガイド19の間を通過して排紙ローラ17によって排紙される。転写材が定着後転写材検知センサ15を通過するとき、定着後転写検知センサ15はONになる。定着ニップ部の下流位置に配置される定着後転写材検知センサ15は、加圧ローラ14の周長から固定電力出力(単に固定出力ともいう)の所定時間(0.4sec)に転写材が進む距離を差し引いた距離分、定着ニップ部下流に配置される。これは、転写材が定着ニップ部Nに進入してから加圧ローラ14が1周する期間内に当該所定時間が収まるようにするためである。この条件は次のような観点に基づいて採用したものである。すなわち、転写材の定着ニップ部通過中に後述の温度変移量Δtを測定しこの結果を直ちにヒータ制御に反映させるためには、温度変移量の測定タイミングを転写材の定着ニップ部への進入後できるだけ早い時期に設定する必要がある。一方、転写材の定着ニップ部への進入後のあまり早すぎる時点では当該転写材が加圧ローラから奪う熱を正確に把握できない。
上記のような定着後転写材検知センサ15の配置によって、転写材が加圧ローラ14から奪う熱量を測定するために定着ニップ部通過中であることを確実に検知し、かつ、加圧ローラ14の温度ムラを拾うことなく温度変移量が測定できるので、適正電力出力値の精度が向上する。なお、定着後転写検知センサ15の別の機能としては、転写前搬送レジストローラ9がONした後ある所定時間以上、定着後転写検知センサ15がOFFのままである場合、遅延JAMとしてエラーを知らせる機能もある。
一方、転写後の感光ドラム表面には+極性のトナー等の付着物がわずかに残るため、転写ニップ部を通過した後の感光ドラム表面はクリーニング部21(図7)で感光ドラム表面にカウンター当接されるクリーニングブレード21aにより付着物を掻き落とされて清掃された後、次回の画像形成に待機する。
図11に、本実施の形態における、転写材のサイズと定着工程の搬送速度テーブル51の構成例を示す。このテーブルはCPU30のメモリ(図示せず)に記憶される。このテーブルに示すように、転写前転写材検知センサ22と転写材幅検知センサ6a、6bのON/OFFの組み合わせに基づいて、転写材のサイズが決定される。例えば、官製往復ハガキの場合は、転写材幅検知センサ6bのフォトセンサがONになる以外すべてOFF状態となるため、中サイズに設定される。また、各センサは転写ポイントから上流へ所定の距離の位置、すなわち本実施の形態では55mm位置、に配置される(図7参照)。これによって、上記プロセススピードでは、転写材が各センサを通過終了した時点から0.4sec後に転写ポイントを抜けることが保証される。よって、CPU30は、転写材が転写前転写材検知センサ22または転写材幅検知センサ6aの通過終了を検知したあと、0.4sec後に転写材が転写ポイントを抜けると認識する。
また、本発明において定着工程での搬送速度は、少なくとも加圧部材の長手方向長さHと転写材幅Hpが
H/2<Hp
で表される関係を有する場合、搬送速度を第1の搬送速度からより遅い第2の搬送速度に切り換える。本実施の形態における定着工程での搬送速度は、図11に示すような搬送速度テーブル51に従って、転写材のサイズに応じて変更している。これは、図6のグラフで説明したように、転写材150g/m2以上の転写幅に応じてニップ幅の関係は転写材幅が長くなるにつれてニップ幅が減少することに対応している。よって、転写材幅検知センサ6a、6bで検知した幅に応じて、図11の搬送速度テーブル51の定着搬送速度を設定してある。すなわち、転写材幅が大きいほど定着搬送速度を遅くしている。これにより、ニップ幅が異なっても転写材の各点がそれを通過する時間が一定値(ここでは0.03sec)になる。この転写材がニップ幅を通過する一定時間は、標準速度(140mm/sec)で基準定着ニップ幅5.2mmの場合の通過時間(0.03sec)に合わせてある。但し、本実施の形態では3段階の設定であるため、各段階の速度は、その段階の中で最小定着ニップ幅に対して、通過する時間に設定した。
加圧ローラが2周目以降に搬送速度を切り替えが可能な送り長さは、加圧ローラの周長と、転写ポイントと定着ニップポイント間距離とで決まるため、178.5mm(加圧ローラ周長78.5mm、転写定着間100mm)となる。特殊紙モードとしては図12に挙げた一般のハガキ、封筒等の種類が該当する。図12以外の特殊転写材である図13に示したサイズの場合は、搬送速度切り替えポイントを加圧ローラが1周してから半周分までの間として減速できれば定着性に問題は生じることはないため、転写材が転写前転写材検知センサ22を通過終了(センサOFF)してから、0.4sec後に図11の搬送速度テーブル51に応じた速度で搬送すれば問題ない。ここでは3段階の速度としたが、ユーザが転写材幅を本体側に入力する構成であれば、細かい速度制御することも可能である。
図15−A、図15−Bのフローチャートを参照して、本実施の形態での定着制御の処理フローを説明する。この処理は、CPU30内のメモリ(図示せず)にプログラムとして記憶され、CPUがそのプログラムを読み出して実行することにより実現される。他の処理フローについても同様である。ここでは、発明において特徴的な、特殊紙である官製往復ハガキをプリント出力する場合について重点的に説明する。
プリンタ本体は、電源ON(S31)の後、プリント信号を受け取ると(S32)、指定された定着モードの判定を行い(S33〜S37)、その定着モードに応じてプリント目標温度と前回転時間を設定する(S38)。
ここでの定着モードは、(1)80g/m2以下紙種の普通紙モード、(2)81〜128g/m2で表面が平滑の紙種の厚紙モード、(3)紙の坪量に関係なく表面性の荒い紙種のラフ紙モード、(4)官製ハガキから一般のポストカード、洋形2号、洋形4号といった幅105〜256mm、送り長さ148〜236mmまで対応する特殊紙モードの4種類である。以下では特に、(4)特殊紙モードが設定された場合について具体的に説明する。生産性をあげるため、転写材の短手を送り長さとした。定着モード(1)(2)(3)は定着性に必要なプリント温調温度の違いや、プリント前回転シーケンスの有無の違いのみのため詳細説明は省略する。
プリント信号受信後、加熱体であるセラミックヒータ上に設置した温度検知素子サーミスタ13gにより、例えば55℃が検知されたとすると、図16の、CPUのメモリに記憶された温調温度設定テーブル70における特殊紙モードの第1温度領域に対応した第1プリント目標温度が設定され(S38)、加圧ローラ14が駆動すると同時に通電制御手段のトライアック18からヒータ出力100%でセラミックヒータ13dがONになる(S39)。サーミスタ13gが第1プリント目標温度に達すると、トライアック18の出力はサーミスタ検知温度と第1プリント目標温度の差に応じて(S40)、図18の、CPUのメモリに記憶された電力制御テーブル60に従って電力制御が行われる。
また、図16のプリント第1目標温度は、普通紙モード以外の定着モードにおいて、良好な定着性を満足するため必要温調温度である第2目標温度より所定温度(ここでは5℃)だけ低い温度である。ヒータが高出力のセラミックヒータ(またはハロゲンヒータ)の場合、ヒータに固定電力出力を所定時間出力し、所定時間内に変動した温度に応じて、適正定着制御電力テーブルから適正定着電力を得たとき、得られる温度が目標温調温度よりも高い温度になってしまう場合がある。このとき、固定出力後に決定される適正電力は温調温度を下げるために一時的に電力を下げることになる。特にプロセススピードの高速化に伴って、電力を下げることにより温調温度が激しく下がりやすい。この現象により定着不良を部分的に生じる。したがって、第1目標温度を第2目標温度より下げておくことにより、固定出力後の適正電力出力を極端に下げることなく温度検知手段の検知温度が所定の第2目標温度となるように加熱体への通電を制御する。
また、図22に示すグラフから分かるように、温調温度を維持するために必要な電力は、温調温度および転写材坪量に応じて異なる。
(4)特殊紙モードでは、第1プリント目標温度に達すると、所定時間(ここでは8秒間)だけ目標温度に温調し、空回転を行い、定着ヒータユニット13と加圧ローラ14の熱量を稼ぐ(S41、S42)。この空回転は前回転と呼ばれる。このとき、ヒータ出力はプリント目標温度で安定しているため、ヒータ出力値は低電力である30%以下で制御される。
8秒間が経過すると、転写材の給紙が開始される(S43)。すなわち、転写材は給紙ローラ対8によって転写前搬送レジストローラ9まで搬送される。その際、転写前転写材検知センサ22および転写幅検知センサ6a,6bで転写材が検知され、その結果に基づいて図11の搬送速度テーブル51が参照され、定着搬送速度が決定される。
転写材は、転写前搬送レジストローラ9により、転写ガイド板10を通じて予め規定された進入角度で転写ニップ部にまで搬送され、ここで感光ドラムに形成されたトナー像が転写される。転写材はさらに、定着器12の定着ニップ部まで搬送され、定着ニップ部Nに突入する(S45)。
従来、前回転温調温度でヒータ電力が低電力に安定しているところに転写材である官製往復ハガキを定着ニップ部に突入させ、温調温度220℃設定で通過し続けると、セラミックヒータ13d上のサーミスタ検知温度は急激に下がり、温調温度を当該温調温度220℃にするためヒータ出力は上昇していくが、その温度に達する前に官製往復ハガキが定着ニップ部Nを通過してしまう。
本実施の形態では、定着ニップ部Nを通過した官製往復ハガキ先端が定着後転写材検知センサ15を通過するまでは、従来と同様に第1目標温度とサーミスタ検知温度差で、図18の電力制御テーブル60に従って電力制御を行う(S46〜S49)。
定着後転写材検知センサ15を通過すると、トライアック18からセラミックヒータ13dに予め定めた固定電力出力(単に固定出力ともいう:ここでは入力電力に対する80%ON)を出力する(S50)。転写材である官製往復ハガキによって奪われる熱量を把握するために所定時間0.4sec間のうち0.1secの時点から0.4secの時点まで、つまり0.3sec間の温度変移量Δtを測定する(S51)。前回転時や複数枚プリントしたとき、定着ニップ部Nに転写材が存在していない為、ヒータ出力は低い電力で安定している。そこで、固定出力80%にしたときのトライアック18の立ち上がりを考慮して、0.1sec待ってから測定を開始する。
固定出力80%での測定結果から求められた温度変移量Δtに基づいて、図19の適正電力出力テーブル61から適正電力出力値を算出し、出力する(S52、S53)。図19の適正電力出力テーブル61は、CPUのメモリに記憶され、温度変移量Δtに応じた適正電力値を定めたデータテーブルである。図20のデータテーブル62は、転写材坪量毎の、各電力での0.4秒間の温度変移量(℃)と、これに対応する適正電力出力値(%)を実験で求めた結果を示している。本実施の形態では、個々の転写材について実際に測定した温度変移量Δtに基づいて、定着性に必要な温調温度(220℃基準)を維持するために必要な適正電力値が適正電力出力テーブル61(図19)から分かるようになっている。図21は、温調温度220℃と205℃の場合の各入力電力および転写材坪量に対応する適正電力を示している。温調温度220℃が図20のテーブル62に相当している。プリント温調温度に必要な電力は、個々に異なるため、図19の適正電力出力テーブル61から求めた出力値(適正電力値)は、温調温度220℃を基準に温調温度−5℃あたり約−3%の修正設定を行う。なお、図21のデータテーブル63による出力値に対応する実際の出力について、目標電力に対して±170W内の誤差は許容される。この程度の誤差であれば、転写材の奪う熱量に対して正常に温調温度の制御が行え、温調温度に対するオーバーシュートも小さい。
また、複数枚プリントを繰り返す場合や、プリント信号を受け取ったときのサーミスタ検知温度によって、プリント温調温度が変わる。例えば、本実施の形態の例では、複数枚のプリントを行う場合、図17の、CPUのメモリに記憶された拡張テーブル71に示すような第1温度領域に対応した温調データでプリント温調される。このとき、定着性を得るため加圧ローラ14の温度を確保するため8secの紙間時間を設定しており、各枚数に応じたプリント温調温度の必要な電力は、個々に異なるため、図19の適正電力出力テーブル61から求めた出力値は、温調温度220℃を基準に−5℃あたり−3%に設定する。
また、本実施の形態のセラミックヒータの抵抗値は部品として15.2Ω±7%程度となっており、電力を100%出力したとき、1000〜1700Wが得られる。その80%出力で、800〜1360Wのばらつきがあることになる。しかし、図22のグラフから判るように、転写材としては坪量(熱容量)が下がれば、それに応じてプリント目標温度を維持するための必要電力も下がる。また、図20のデータテーブル62から分かるように、固定出力80%で測定した温度変移量が大きいほど適正電力値も下がる。よって、転写材が定着ニップ部通過中に固定出力時の温度変化に応じて適正電力値を求めることは、転写材の坪量(熱容量)に応じて定電力制御を行うことと同じことになる。
例えば、図20、図21および図22より、官製往復ハガキのように坪量200g/m2の場合、プリント温調220℃を維持する必要電力は1000Wで、固定出力が800Wのヒータの場合、1℃の上昇しか得られないため、適正出力は100%出力の1000Wと決定されるが、固定出力が1360Wヒータの場合、7℃の上昇変化が得られるため、適正出力は60%の1020Wと決定される。また、坪量が100g/m2の場合、プリント温調温度220℃を維持する必要電力は850Wで、固定出力が800Wヒータの場合、3℃の上昇が得られるため、適正出力は85%の850Wが決定され、固定出力が1100Wヒータの場合、6℃の上昇が得られ、適正出力は70%の962Wが得られる。
なお、固定出力を80%に設定したのは、上記のように部品によって、ヒータ電力が800〜1360Wで出力されるので、転写材が定着ニップ部N通過中の温度変化が、そのヒータから出力される電力に応じて異なるように電力出力を最適化するためである。この固定出力より低かったり、高かったりすると、ヒータ電力による温度変化差がなくなってしまう場合が生じうる。
また、本実施の形態では、適正電力出力値の精度を上げる目的として、固定出力80%の出力タイミングを転写材の先端から24mmの位置、すなわち転写材先端が定着ニップ部を通過して転写材検知センサ15に達したタイミングに合わせている。これは、加圧ローラ(周長78.5mm)が転写材と接触して1周以内にサーミスタ検知温度の変移温度測定(測定距離は56mm)が終わるようにするためである。また、定着フィルム13′は熱容量がほとんどない為、温度ムラを考慮する必要がない。よって、加圧ローラの温度ムラを拾うことなく温度変移量が測定でき、適正電力出力値の精度を上げることができる。
本実施の形態のヒータは15.2Ωのため、ステップS52,S53では、図19の適正電力出力テーブル61より固定出力は80%では800Wで出力され、0.3sec間の温度変移量は1℃となり、適正電力出力は100%(1000W)に設定され、出力する。
また、定着の転写材搬送速度は、転写材が転写前転写材検知センサ22を通過終了した時点から0.4sec経過後に(S54)、図11の搬送速度テーブル51に規定されたデータに従って減速する(S55)。官製往復ハガキ先端は定着後転写材検知センサ15にかかった時、転写前転写材検知センサ22を通過終了してから0.21秒経過しているため、固定出力80%の出力終了後に官製往復ハガキは転写工程を終了していることになる。よって、適正電力出力決定後に搬送速度は減速される。ここでは、官製往復ハガキのため転写工程前に設置されている転写前転写材検知センサ22と転写材幅検知センサ6aがOFFになり、中サイズに設定され、搬送速度は119mm/sec(15%ダウン)で定着工程を搬送される。特殊紙モード(4)では定着性を重視するため、加圧ローラ温度を稼ぐのに紙間時間は8secに設定されているため印刷の生産性は6.56PPMとなる(図12「官製往復ハガキ」参照)。官製ハガキの場合、転写工程前に設置されている転写前転写材検知センサ22のみがOFFになり、搬送速度は標準速度140mm/secで定着工程を搬送され、印刷の生産性は6.62PPMとなる。4面ハガキ(送り方向200mm)の場合は適正電力出力決定後、転写ポイントを抜けていないため、標準速度で搬送される(S59)。適正電力出力決定後、0.157秒後に転写前転写材検知センサ22は転写材通過終了(ON)を検知し、先端から121.5mm(加圧ローラ1周分と半周分以下の22mm)の位置で搬送速度は図11の搬送速度テーブル51に従って減速する。
適正電力出力値が決定すると、他モード同様にプリント目標温度とサーミスタ13gの検知温度に応じて図18の電力制御テーブル60に応じて適正電力を補正していく(S56〜S58、S60〜S62)。具体的には、図19の適正電力出力テーブル61より適正電力出力が決定すると、図16の温調温度設定テーブル70より定着性に必要な温調温度であるプリント第2目標温度220℃に設定される。このように設定することで、固定出力が上限1360Wで出力された場合、定着性に必要な目標温調温度よりも大きく離れてしまうことはない。例えば、官製ハガキで固定出力が上限1360Wのとき、215℃から固定出力80%にした場合、9℃の温度上昇が得られる。固定出力80%の出力が終了したとき224℃に達し、第2プリント温調220℃で制御するため、適正電力出力値で図18の電力制御テーブル60に応じて適正電力を補正していく。また、固定出力が800Wのとき、215℃から固定出力80%にした場合、2℃の温度上昇が得られる。固定出力80%の出力が終了したとき217℃に達し、適正電力出力値で図18の電力制御テーブル60に応じて適正電力を補正していく。
以上のように適正電力出力値が高い場合においても、固定出力80%終了後に第2プリント温調に近い温度に推移している為、一時的にヒータ出力が低下するが、図19の設定データより±5%程度の電力制御が入るだけの為、転写材である官製往復ハガキの温度ムラが少なくなる。
官製往復ハガキ後端から手前8.0mm位置が定着ニップ部に突入すると(S63)、温調温度をプリント目標温度より5℃低い第1温調温度(215℃)に設定し、搬送速度も標準速度に設定する(S64)。これは転写材の後端は転写材そのものの熱容量は少ないため、加熱部材により与えられる熱量過多でカールが生じるのを防ぐためである。そのために、加熱体であるセラミックヒータの立下り時間0.02secと転写材の余白設定5.0mmが一致する時点で目標温度を215℃に設定し、搬送速度も標準速度に設定することで転写材に与える熱量を減少させる。定着性と関係ない余白部のため、画像に対しての影響はない。プリントが終了するまでステップS43に戻り、上記の処理を繰り返して実行する。プリントが終了したら、ヒータをオフして(S66)、本処理を終了する。
以上のように、転写幅に応じて定着工程の転写材搬送速度を設定することで生産性を著しく落とすことはなくなり、定着工程のみ搬送速度を切り替える構成のため、他工程の設定条件を複雑化することのない簡素な構成の定着器が得られる。ヒータ電力固定で転写材が定着ニップ部通過中のヒータ熱容量変化、つまり、セラミックヒータ13d上のサーミスタ検知温度を測定し、その結果から、適正電力出力値を求め、その電力値で所定のプリント目標温度を維持するため、電力制御することで転写材の熱容量に耐える温調温度制御ができ、且つ、安定した定着性が得られる。転写材の熱容量に応じたヒータ適正電力出力を決定し、温調温度を制御するため、高速化を狙ったセラミックヒータや加圧ローラの小型化も可能になる。
また、転写材幅検知手段は、特殊紙モードを選んだときに転写材幅を、記録材収納箱からあるいはユーザ入力によりプリンタへ知らせることを含んでもよく、この場合、上記のような転写材幅検知センサを省くことも可能で、それによりコストダウンが図れる。
本実施の形態では、プロセススピードが速い構成のフィルム加熱方式の定着器で説明したが、比較的プロセススピードが遅い定着器(例えば94mm/secの20ppmクラス)であれば、転写材による急激な温度低下が生じることはない。よって、適正電力値を求めなくとも、転写材幅による定着ニップ幅低下を補うための定着工程の搬送速度を補正すれば、十分に定着性は得られる。
複数の転写材を連続して給紙搬送して定着する際は、重なり防止のため、先行する転写材が定着ニップ部を抜けた後に後続の転写材を画像形成部に搬送するようにしてもよい。但し、画像形成スピードの低下を防ぐため、紙間を詰めることが好ましい。具体的には低速で搬送されている先行転写材の後端近傍で搬送速度が高速に切り換わったときに転写材同士が重ならないようにして搬送タイミングを制御する。好ましくは、定着搬送速度を高速に切り替えたときに先行転写材の後端と後続転写材の先端の距離は、速度切換を行わないときの紙間と同じにする。これは、データテーブルの利用または計算によって、後続転写材の給紙タイミングを調整することにより行える。そのために、定着部と画像形成部のそれぞれの搬送速度を独立制御できる搬送駆動手段を設ける。
また、ヒータ13d単体出力の電力が低電力の場合、またはヒータ発熱体の抵抗値公差が狭い場合、ヒータ固定出力の公差としても狭くなるため、温調温度設定は定着性に必要な温度のみの設定でも最適な温調温度制御は可能となる。
ところで、上記の処理シーケンスでは、転写紙が複数枚連続的に定着される際、3枚目以降になるとセラミックヒータ及び加圧ローラの温度(熱容量)が高くなり、1枚目同様のシーケンスで得られた適正電力出力値で第2プリント温調の制御を行うと、目標温調温度より高い温調制御を推移してしまう。これを防ぐため、3枚目以降の得られた図19の適正電力出力テーブル61から得られた値を−10%にした値を適正電力出力値とした。定着工程の搬送速度の切り替えタイミング及び設定は上述のとおりである。
以上の構成により、複数枚のプリント出力がおこなわれても、オーバーシュート転写材の熱容量に耐える温調温度制御ができ、且つ、安定した定着性が得られる。転写材の幅に応じた定着工程の搬送速度と転写材の熱容量に応じたヒータ適正電力出力を決定し、温調温度を制御するため、高速化を狙った、且つ、セラミックヒータや加圧ローラの小型化も可能になるため、コストダウンが図れる。また、プロセススピードを切り替えるのではなく、定着工程のみ搬送速度を切り替えるため、他工程の設定条件を複雑化することのない簡素な構成の画像形成装置となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、フィルム加熱方式を用いた定着器で説明したが、低熱容量を狙った薄肉定着ローラ方式でも本発明は有効である。ただし、適正電力出力値を得る場合、フィルム加熱方式と違い温度ムラを防ぐために加熱側のローラ(加熱部材)である定着ローラ1周内に固定出力を終了したほうが、適正電力出力値の精度があがる。上記説明で挙げた種々の具体的な数値はあくまで説明のための例示であり、本発明はそれらに限定されるものではない。