《実施例1》
[画像形成装置]
図2は本実施例における画像形成装置100の概略構成を示す模式的断面図である。この画像形成装置100は電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンタである。このプリンタ100はホストコンピュータ等のデータ出力装置200からエンジンコントローラ114に入力したプリントジョブ(提供情報)に対応したプリント動作(画像形成動作)を実行して記録材Pにトナー像を形成した画像形成物を出力する。
プリントジョブは画像データ、使用する記録材の種類等に関する情報、レイアウト、枚数、部数、後処理等のプリント条件が付加されたプリント指示のことである。記録材Pは画像形成装置によりトナー像(現像剤像)が形成され得るシート状の記録媒体である。例えば、普通紙、樹脂シート、光沢紙、葉書、封筒、ラベル、転写材シート、エレクトロファックスシート、静電記録紙、OHPシート、印刷用紙、フォーマット紙等が含まれる。以下、記録材Pを記録紙或いは紙と記す。エンジンコントローラ114はプリンタ100の各種作像機器を統括的に制御してプリント動作を実行する。
プリンタ100において、記録紙Pにトナー像(トナー画像)を形成する画像形成部100Aは、トナー像を形成するための像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、ドラムと記す)101を有する。ドラム101は矢印Aの時計方向に所定の周速度(プロセススピード)にて回転駆動される。更に画像形成部100Aはこのドラム101に作用する電子写真プロセス機器としての帯電ローラ102、露光装置(レーザースキャナ)115、現像装置104、転写ローラ108、クリーニング装置110を有する。
露光装置115において、103は露光光としてのレーザー光である。現像装置104において、Tは現像剤としてのトナー、106はトナーtを担持した現像スリーブである。クリーニング装置110において、109は、クリーニングブレードである。以上の画像形成部100Aの作像のための動作は周知であるので詳細な説明は割愛する。
給紙カセット(記録材収容部)107に収容(収納)された記録紙Pは給紙ローラ112によって1枚ずつ取り出され、経路Bを通り、途中で先端がレジストローラ対113に受け止められて斜行矯正される。レジストローラ対113はその記録紙Pをドラム101と転写ローラ108との当接部である転写ニップ部においてドラム面に形成されているトナー像の先端部と記録紙先端部とが所定に同期するように転写ニップ部に向けて所定の制御タイミングにて送り出す。これにより、転写ニップ部においてドラム101側のトナー像が記録紙P側に電気的作用により順次に転写されていく。
転写ニップ部を通った記録紙Pはドラム面から分離されて定着装置(画像加熱装置)111に導入され、加圧・加熱されて、担持している未定着トナー像が記録紙上(記録材上)に固着像として定着される。定着装置111を出た画像定着済みの記録紙Pはフェイスアップ(FU)排紙が選択されていれば、経路Cを通り、印字面が上になってFUトレイ116に排出される。また、フェイスダウン(FD)排紙が選択されていれば、経路Dを通り、印字面が下になってFDトレイ117に排出される。
[定着装置]
図3は定着装置111の要部の概略構成を示す模式的断面図である。以下の説明において、定着装置111及び定着装置を構成する部材に関し、長手方向とは記録紙の搬送路面において記録紙の搬送方向と直交する方向である、短手方向とは記録紙の搬送路面において記録紙の搬送方向と平行な方向である。幅とは短手方向の寸法である。記録紙に関し、幅とは記録紙の面において記録紙の搬送方向と直交する方向の寸法である。上流側と下流側は記録紙搬送方向に関して上流側と下流側である。
この定着装置111は、加圧ローラ(加圧部材)302を回転駆動し、定着フィルム(定着ベルト:定着部材)303を加圧ローラ302の搬送力により回転させる、フィルム(ベルト)加熱方式、加圧ローラ駆動方式の所謂テンションレスタイプの装置である。
この定着装置Fは、大別して、駆動回転体である加圧ローラ302と、定着フィルム(エンドレスベルト:以下、フィルムと記す)303を備えたフィルムユニット310と、これらを収容している装置フレーム(装置筐体)311を有する。一対の回転体としての加圧ローラ302とフィルム302との圧接によりニップ部(定着ニップ部)Nが形成される。加圧ローラ302はフィルム302と協働してニップ部Nを形成する回転体である。
フィルム302は記録紙Pに形成された未定着トナー像tと接して加熱部材の熱を伝熱して加熱する伝熱部材である。ニップ部Nは未定着トナー像tを担持した記録紙Pを挟持搬送してトナー像tを熱と圧力で固着像として定着する部分である。taは定着後のトナー像を示している。
307は二ップ部Nよりも下流側でニップ部Nの記録紙出口部の近傍に配設された記録紙センサ(シートセンサ:出口センサ)であり、ニップ部Nを出た記録紙の先端到達を検知し、また後端通過を検知する。その検知信号が制御部(CPU)203に入力する。制御部203はその入力信号に基づいて記録紙Pがニップ部Nで挟持搬送されていること、ニップ部Nを抜けたことを検知する。
(1)加圧ローラ
加圧ローラ302は弾性ローラであり、芯金302aにシリコーンゴム・フッ素ゴム等の弾性層302bを設けて硬度を下げたものである。表面性及びトナーtに対する離型性を向上させるため、弾性層302bの外周面にPTFE、PFA、FEP等のフッ素樹脂層を設けても良い。
加圧ローラ302は定着フレーム311の長手方向の一端側と他端側の側板間(側板は不図示)に芯金302aの一端部と他端部がそれぞれ軸受部材を介して回転可能に保持されて配設されている。加圧ローラ302は駆動回転体として、制御部203で制御されるモータ(駆動源)Mの駆動力が駆動伝達機構部(不図示)を介して伝達されて矢印Yの反時計方向に所定の周速度にて回転駆動される。
(2)フィルムユニット
フィルムユニット310は、フィルム303、加熱部材としてのヒータ305、加熱部材保持部材としてのヒータホルダ(以下、ホルダと記す)304、支持ステー308、一端側と他端側のフランジ部材(不図示)等による組立体である。
フィルム303は伝熱部材として低熱容量化を図り、クイックスタート性を向上させるために、膜厚は400μm以下、好ましくは30〜80μm程度の耐熱素材たるPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする無端帯状体(エンドレスベルト)である。
フィルム303は単層構造あるいは複層構造等を使用できる。複層構造としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等やSUS、ニッケル等の金属材を主成分とするベース層としての無端帯状体の外周面に、弾性層として厚みが300μmのシリコーンゴム層を形成する。更に弾性層上には離形層として厚みが約20μmのPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする離型層としての無端帯状体を被覆するという複層構造等が挙げられる。
本実施例では、厚みが約30μmのベース層としてのニッケル合金から成る円筒形状の部材を用いている。更に、ベース層上には弾性層として厚みが約300μmのシリコーンゴム層を形成し、更に弾性層の上には離形層として厚みが約20μmのフッ素樹脂チューブを被覆している直径25mm、総厚み350μmの無端帯状フィルムを用いた。
ヒータ305としてはセラミックヒータを用いている。このヒータ305については(4)項で詳述する。ホルダ304には高耐熱性の樹脂等が用いられる。ホルダ304は外面の短手方向中央部に長手方向に沿って設けられた溝部を有し、この溝部にヒータ305が嵌め込まれて固定保持されている。
ステー308はホルダ304の内側に配設されてホルダ304をバックアップする補強部材である。即ち、ステー308はホルダ304を介してヒータ305を支持する部材である。ステー308は大きな荷重をかけられても撓みにくい材質であることが望ましく、本実施例においては横断面コの字形あるいはUの字形のSUS304(ステンレス鋼)型材を使用している。
ヒータ305、ホルダ304、ステー308はフィルム303の幅(長さ)方向に長い部材であり、フィルム303は上記のヒータ305、ホルダ304、ステー308の組立体に対してルーズに、つまり無張力に外嵌めされている。即ちフィルム303はヒータ305を内包している。
フィルム303内のステー308の両端部はそれぞれフィルム303の一端部と他端部から外側に突出している。このステー308の一端側と他端側の外方突出部に対してそれぞれフィルムユニットの端末部材としての一端側と他端側のフランジ部材が嵌着されている。これらのフランジ部材はフィルムユニット310におけるフィルム303の長手方向の移動(スラスト移動)、および周方向の形状を規制している。フランジ部材には耐熱性の樹脂等が用いられ、本実施例ではPPS(ポリフェニレンサルファイド)を使用している。
フィルムユニット310は加圧ローラ302に対してヒータ305の側を対向させて実質平行に配列して一端側と他端側のフランジ部材をそれぞれ定着フレーム311の一端側と他端側の側板に設けたスライドスリット部に係合させて配置されている。そして、一端側と他端側のフランジ部材がそれぞれ加圧機構(不図示)の加圧バネの付勢力で加圧ローラの軸線方向に向って押圧されている。これにより、ステー308、ホルダ304を介してヒータ305がフィルム304を挟んで加圧ローラ302に対して弾性層302bの弾性に抗して圧接される。
本実施例においてフィルムユニット310に対する加圧力は一端側が約156.8N(16kgf)、総加圧力が約313.3N(32kgf)である。その加圧力によりフィルム303と加圧ローラ302間には記録紙の搬送方向に関して所定幅のニップ部Nが形成される。プリンタ100のスタンバイ時においては、加圧機構は圧解除機構(不図示)により加圧力が解除されてヒータ305と加圧ローラ302との圧接が解除(若しくは圧接力が低減化)されている。即ち、ニップ部Nの形成が実質解除された状態に保持される。
(3)定着動作
制御部203はプリントジョブの実行シーケンスにおける所定の制御タイミングにおいて、圧解除状態の加圧機構を加圧動作させてフィルム303と加圧ローラ302と間にニップ部Nを形成させる。そして、制御部203はモータMを起動させて加圧ローラ302を矢印Yの反時計方向に所定の周速度で回転駆動する。
加圧ローラ302が回転駆動されることで、ニップ部Nにおける加圧ローラ302の表面とフィルム303の表面との摩擦力によりフィルム303に回転力が作用する。そのため、フィルム303は内周面がヒータ305と密着して摺動しながらホルダ304の外周を矢印Xの時計方向に加圧ローラ302の周速度と略同じ周速度をもって従動回転する。ホルダ304は横断面が半円弧形状であり、フィルム303の回転軌道を規制する機能を備えている。
また、加圧ローラ302の回転駆動と共に、ヒータ305に対して制御部203で制御されるトライアック(給電部)200から給電路(不図示)を介して電力供給される。これによりヒータ305が急峻に昇温する。ヒータ23の温度は後述するように所定の目標温度(定着温度)に立ち上げられて温調される。
そして、加圧ローラ302が回転駆動され、ヒータ305が所定の目標温度に立ち上げられて温調されている状態において、画像形成部100A側から未定着トナー像tが形成された記録紙Pが定着装置111に送られてニップ部Nに導入される。記録紙Pはニップ部Nで挟持搬送されていく過程においてヒータ305の熱がフィルム303を介して付与される。未定着トナー像tはヒータ305の熱によって溶融され、且つニップ部Nにかかっている圧力によって記録紙Pに固着像taとして定着される。
(4)ヒータの構成と電力供給制御
図4は本実施例におけるヒータ305の構成説明図である。(a)はヒータ表面側の一部切り欠きの模式図、(b)は裏面側の模式図、(c)は(b)における(c)−(c)線矢視の拡大横断面模式図である。ヒータ305は所謂セラミックヒータであり、通電により急峻な温度立ち上がり特を示す低熱容量の横長の面状加熱体である。ヒータ305は、細長いヒータ基板305aと、その一面側(表面側:ヒータ305のフィルム303との摺動面側)に長手に沿って形成された発熱体305cを有する。
ヒータ基板305aは、アルミナ(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等の良熱伝導性セラミックスを主成分とする。本実施例では、長さ350mm、幅9mm、厚み1mmの窒化アルミニウム(熱伝導率:100W/(m・K)の細長板材をヒータ基板(セラミック基板)305aとしている。
発熱体305cはTaSiO2、AgPd、Ta2N、RuO2又はニクロム等の電気抵抗材料をスクリーン印刷により塗工・焼成した抵抗発熱体(通電発熱層)である。本実施例では、長さ300mm、幅2mm、厚み20μmの平行2条の発熱体305cを間隔0.5mmで形成している。平行2条の発熱体305cの一端部は互いにヒータ基板面に印刷された導電材料305dで電気的に直列に繋がれている。また、平行2条の発熱体305cの他端側はそれぞれヒータ基板面に印刷された導電材料の電極305e・305fに電気的に導通している。
また、ヒータ基板305aの上記一面側はフィルム303との摺動等からの保護のために電極305e・305fの部分は除いて発熱体305cと導電材料305dをカバーするようにガラス又はフッ素樹脂等を主成分とする保護層305bでコートされている。
また、ヒータ基板305aの他面側(裏面側:ヒータ305のフィルム303との非摺動面側)にはヒータ305の温度を検知する感温素子301(温度検知体:以下、サーミスタと記す)を有する。本実施例においては、第1と第2の2つのサーミスタ301a・301bを有する。第1のサーミスタ301aは、ヒータ温調用の温度検知体として、発熱体305cの長手中央部に対応する位置に配置されている。第2のサーミスタ301aは、記録紙の重送検知用の温度検知体として、第1のサーミスタ301aからヒータ基板305aの他端側に115mm離れた位置に配置されている。
ヒータ305はホルダ304の外面の短手方向中央部に長手方向に沿って設けられた溝部にヒータ表面側(ヒータ基板305aの発熱体305cを形成した一面側)を外向きにして嵌め込まれて固定保持されている。発熱体305cはトライアック200から電極305e・305fを介して電力が供給されることで全長領域が発熱する。この発熱体305cの発熱により発熱体305cの全長領域に対応するヒータ部分が加熱される。
本実施例のプリンタ100において記録紙Pの搬送は所謂中央基準搬送である。即ち、装置に使用可能な大小どのような幅の記録紙もその幅方向の中央部が装置の中央基準搬送線(記録材搬送中心)を通るように給送される。図3の(a)において、Oはその中央基準搬送線(仮想線)である。
Wmaxは装置に使用される最大幅サイズの記録紙の通過領域幅である。本実施例においてはA3縦(297mm)の通過領域幅であり、発熱体305cの長さ300mmはこのWmaxに対応させてある。Wminは装置に使用可能な最小幅サイズの記録紙の通過領域幅(最小通過領域の幅)である。第1のサーミスタ301aは中央基準搬送線Oの位置にほぼ対応している。
ヒータ305への電力供給制御について図5に基づいて説明する。図5は商用電源201からヒータ305の発熱体305cへの電力供給経路を示す模式的ブロック図である。発熱体305cはトライアック200を介して商用電源201から電力供給を受けるようになっており、商用電源201から発熱体305cへの電力供給は、制御部(電力供給制御手段)たる中央処理装置203(以下、CPUと略称する)により制御されている。
発熱体305cの発熱に伴うヒータ305の温度情報はヒータ305の最小幅サイズの記録紙の通過領域幅Wminの幅内に配置された第1のサーミスタ301aによるアナログ情報がA/D変換回路202によりデジタル情報に変換される。そのデジタル情報がCPU203に入力される。CPU203は、この入力された温度情報と所定の目標温度(定着温度)とを比較する。そして、その差分から、トライアック200を介して、商用電源201から発熱体305cへの供給電力をPID制御し、ヒータ305の通紙領域の温度が所定の目標温度になるように温調する。
CPU203はヒータ305の温度情報を所定周期毎に監視し、所定周期毎に発熱体305cへの供給電力を補正する。本実施例にあっては、所定周期期間において、商用電源201から出力される交流電源の半波毎に商用電源201から発熱体305cへの電力供給に供されるか否かを選択する波数制御を採用している。所定周期に亘る商用電源201から発熱体305cへの供給電力量の調節は、波数制御の他に、商用電源201から出力される交流電源の半波毎に、位相範囲を決定する位相制御もある。
第1のサーミスタ301aは定着装置111の加熱処理開始(立ち上げ)からプリントジョブの記録紙の画像定着工程において、ヒータ305を目標温度に維持するためのヒータ温調用の温度検知体である。そのため、この第1のサーミスタ301aはヒータ305の最小幅サイズの記録紙の通過領域幅Wminの幅内に位置させてあり、本実施例では中央基準搬送線Oの位置にほぼ対応している。
即ち、第1のサーミスタ301aは定着装置111に記録材が導入された際のニップ部Nにおける通紙部(記録紙の通過部領域)に対応する温度を検出する。制御部203はこの、第1のサーミスタ301aによって検知された温度に基づいてニップ部Nにおける通紙部の温度が所定の目標温度に維持されるようにトライアック200からヒータ305への電力供給を制御する。
(5)記録紙の重送検知と装置制御
第2のサーミスタ301bは、記録紙の重送を検知するための温度検知体であり、第2のサーミスタ301bによるアナログ情報がA/D変換回路202によりデジタル情報に変換されてCPU203に入力される。CPU203は、この入力されたヒータ305の温度情報に基づき重送検知制御を行う。
第2のサーミスタ301bは、ニップ部Nに記録紙Pが通過中の所定時間内におけるヒータ305の検知温度傾きΔT(検知温度の経時変化の傾き(勾配))を検知するための温度検知体である。そのため、最小幅サイズの記録紙の通過領域幅Wminの領域外で、かつ発熱体305cの発熱領域内に配置されている。
即ち、第2のサーミスタ301bは定着装置111に記録紙が導入された際のニップ部Nにおける非通紙部(記録紙の非通過部領域)に対応する温度を検出する。制御部203はこの第2のサーミスタ301aによって検知された検知温度及び検知温度の経時変化の傾き(勾配)に応じて、本実施例においてはトライアック200からヒータ305への電力供給を停止させるように制御する。
具体的には、後述するフローチャートのように、制御部203は、第2のサーミスタ301aによって検知された検知温度及び検知温度の経時変化の傾き(勾配)に応じて、ヒータ305への通電を強制的にOFF(オフ)にする温度の設定を変更(制御)する。検知温度の経時変化の傾き(勾配)とは、より具体的には、単位時間当たりの検知温度の温度上昇率である。
そして、第2のサーミスタ301aによる検知温度が設定された温度(強制OFF温度)になるまでの間は、ヒータ305への通電を許容してヒータ305の目標温度になるように温調する。第2のサーミスタ301aによる検知温度が設定された温度(強制OFF温度)になったことに応じて、ヒータ305の通電をOFFにする。
上記のように第2のサーミスタ301bによるアナログ情報がA/D変換回路202によりデジタル情報に変換されてCPU203に入力される。ここで、CPU203は再びデジタル情報をアナログ情報に変換してから、アナログ情報によって検知温度傾きΔTを計算する構成にすると、デジタル情報によって検知温度傾きΔTを計算する構成よりも誤差が少ない。これは、アナログ情報とデジタル情報は比例関係では無いためである。
第2のサーミスタ301bで検知した検知温度傾きΔTと、検知温度Tにより、CPU203は重送紙と判断し、制御を変更する。すなわち、CPU203は、重送検知部として機能する。具体的な検知方法の一例は、後述するフローチャートの通りである。CPU203が制御を変更するとき、メモリ204に格納された情報を元に、CPU203は制御を変更する。重送検知部による検知結果に応じて制御部はヒータ305への通電をOFFする温度を制御する。
本制御を図1のフローチャートを用いて説明する。始めに、CPU203からプリント命令が発令する(ステップS01)。プリント命令を受け取った画像形成装置は、記録紙Pを給紙する(ステップS02)。続いて、本体各部は前記説明したように動作して、レジストローラ113から給紙された記録紙Pに転写ニップ部にてトナー像が転写される(ステップS03)。
転写像を載せた記録紙Pは、定着装置111の定着ニップ部Nに突入する(ステップS04)。記録紙Pが定着ニップ部に突入したことをCPU203が判断するためには、定着装置111に入口センサが付いていれば、入口センサの信号を使えばよい。定着装置111に入口センサが付いていなければ、搬送距離を搬送速度で割り算すれば、記録紙Pが定着ニップ部に突入したことを判断できる。
本実施例では、CPU203は記録紙Pが定着にニップ部Nに突入した時点から0.1[s]後毎に第2のサーミスタ301bの温度を読み込んでいる。CPU203は記録紙Pが定着ニップ部Nに突入したときの第2のサーミスタ301bの温度T0を読み込む(ステップS05)。そしてn[s]後(すなわち、ステップS05から0.1sec後)にCPU203は第2のサーミスタ301bの温度Tnを読み込む(ステップS06)。さらにn+1[s]後(即ち、ステップS06から0.1sec後)、CPU203は第2のサーミスタ301bの温度Tn+1を読み込む(ステップS07)。
尚、n、n+1は符号であり、第2のサーミスタ301bの温度を読み込む間隔を1secに限定するものではない。
検知温度傾きを検知するので、ΔTn+1=Tn+1―TnをCPU203は計算をする(ステップS08)。もちろん、CPU203は初期の温度傾きΔT1=T1―T0も計算を行う。
CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα1(所定の第1の温度差閾値)より大きく、かつ、温度Tn+1がβ1(所定の第1の温度閾値)より高いかを判断する(ステップS09)。判断した結果正しければ、CPU203はヒータ強制OFF温度をToff1[℃]に設定する(ステップS10)。判断が正しくなければ、ステップ11に移行する。
ヒータ強制OFF温度制御とは、第2のサーミスタ301bがヒータ強制OFF温度を検知すると、ヒータ305に対する電力の投入をゼロにする制御のことである。
ステップ11では、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα2(所定の第2の温度差閾値:α2<α1)より大きく、かつ、温度Tn+1がβ2(所定の第2の温度閾値:β2>β1)より高いかを判断する(ステップS11)。判断した結果正しければ、CPU203はヒータ強制OFF温度をToff2[℃](>Toff1[℃])に設定する(ステップS12)。判断が正しくなければ、CPU203はヒータ強制OFF温度をToff3[℃](>Toff2[℃])に設定する(ステップS13)。
ここで、ステップS11〜S12のいずれかにて設定されたヒータ強制OFF温度は、CPU203に内蔵されるメモリ(尚、CPU203とは別のメモリでもよい。)に記憶される。
次にCPU203が記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けたかを判断する(ステップS14)。
CPU203は、1枚の記録紙Pが定着ニップ部Nを通過する間は、その間に設定されたヒータ強制OFF温度の中で一番低い温度を実際のヒータ強制OFF温度として、ヒータを強制OFFするか否かを判定する。
すなわち、記録紙Pの後端が抜けていなければ、CPU203はヒータ強制OFF温度を次のように採用する。その記録紙Pの先端が定着ニップ部Nに突入してからステップS14の判定を行うまでの間に設定されたヒータ強制OFF温度(Toff1、Toff2、Toff3)の内、一番低い温度を実際のヒータ強制OFF温度として採用する(ステップS15)。
尚、ステップS05〜S15、S18〜20に示すように、記録紙Pの先端が定着ニップ部Nに到達してから後端が抜けるまでの間に、検知温度傾きに基づくヒータ強制OFF温度の判定は繰り返し行われる。即ち、CPU203は、0.1秒毎の第2のサーミスタ301を読み込み、都度ヒータ強制OFF温度の設定を行う。
そして、例えば、この間にステップS09〜S13で設定されたヒータ強制OFF温度Toff1、Toff2であった場合は次の通りである。すなわち、当該記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるまでの間、ステップS15により、実際のヒータ強制OFF温度はToff1(S10)に設定され続けることになる(ステップS15)。
次に、CPU203は、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、ステップS15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えているか否かを判定する(ステップS18)。直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、S15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えていたら、ヒータ305に対する電力の投入をゼロにし(ヒータの強制OFF)(ステップS19)、ステップS20に移行する。
一方、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、S15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えていなければ、CPU203は、ヒータ305に電力を投入しながら温度調整を続け、ステップS20に移行する。
そして、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1をTnとおく(ステップS20)。そして、直前のステップS07で第2のサーミスタ301bの検知温度を読み込んでから0.1秒後に再び第2のサーミスタ301bの検知温度Tn+1を読み込む(ステップS07)。即ち、CPU203は、0.1sec毎に第2のサーミスタ301bの温度を読み込みながら、検知温度傾きを検知し続ける。
記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けていれば、ヒータ強制OFF温度をデフォルトのToff3[℃]に設定する(ステップS016)。ステップS17で、複数枚のプリントジョブ(JOB)であり、次の記録紙Pが定着ニップ部Nに来るのかをCPU203が判断する。次の記録紙Pが定着ニップ部Nに来るならば、ステップS04に戻る。即ち、強制OFF温度に達したことに伴い、ヒータ305への通電がOFFされた場合にも、ジョブが終了していなければ、画像形成動作は続行される。
1枚目が重送紙であり、その次の紙が重送紙でない可能性があるので、ステップS16において、ヒータ強制OFF温度をToff3[℃]に戻した。ステップS17でジョブが終了であれば、本制御は終了となる。
本制御のパラメータn、α1、α2、β1、β2、Toff1、Toff2、Toff3を以下の表1にまとめる。
n=0.1[s]、α1=7[℃/0.1s]、α2=5[℃/0.1s]、β1=240[℃]、β2=250[℃]、Toff1=260[℃]、Toff2=270[℃]、Toff3=285[℃]とした。
検知温度傾きαの値が大きいと、検知温度βが低い状態からヒータ強制OFFを変更しないといけないので、上記のように設定した。
本実施例で説明した具体的な値は、一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、坪量が105[g/m^2]と300[g/m^2]紙で本制御を発動させる検知温度傾きの閾値を変更しても良い。坪量が大きいほど、定着ニップ部Nにおいてフィルムユニット310の端部が加圧ローラ302から浮きやすくなる。そのため坪量が大きいほど、検知温度傾きが高い値で本制御を発動させても良い。
さらに、坪量、紙幅に応じて、検知温度の閾値を変更しても良い。
また、記録紙先端が定着ニップ部Nを通過する際の検知温度に応じて、検知温度傾きの閾値を変更しても良い。記録紙先端が定着ニップ部Nを通過する際の温度高いと、エラー発令までの温度差が小さいので、検知温度傾きが低くても、本制御を発動しても良い。
図6に示したタイミングチャートを使って、本制御を説明する。図6の(a)は定着NIP−ON(オン)信号である。記録紙Pが定着ニップ部Nにある場合は、1となり、定着ニップ部Nにないときは0となる。(b)は検知温度である。これは、常に第2のサーミスタ301bの温度を検知している。(c)は検知温度傾きである。これは、図1のフローチャートに示したように、記録紙Pが定着ニップ部中にいるときのみ、検知温度傾きを計算している。(d)はヒータ強制OFF温度である。デフォルトは285[℃]設定となっている。
(c)の検知温度傾きが5[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が250[℃]より高いとヒータ強制OFF温度を270[℃]に変更する。(c)の検知温度傾きが7[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が240[℃]より高いとヒータ強制OFF温度を260[℃]に変更する。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるたびに、ヒータ強制OFF温度はデフォルトの285[℃]に戻している。
本制御では、一度ヒータ強制OFF条件を変更すると、通紙している記録紙が定着ニップ部を抜けるまで、その設定を継続している。それは、重送紙が定着ニップ部を抜けるまでは、検知温度が上がり続けるのを防止しているためである。
本実施例では、ヒータ強制OFF温度の設定を、検知温度傾きを段階的に区切って段階的(例えば、285[℃]⇒270[℃])に変更をしていたが、検知温度傾きの量に応じて、連続的に変更しても良い。例えば、検知温度傾きが1[℃/0.1s]変わるごとに、ヒータ強制OFF温度を1[℃]ずつ下げても良い。
次に本実施例の効果について、図7を用いて説明する。図7においてa、bはLGLサイズ(216mm×356mm:縦送り)、坪量105[g/m^2]の4枚重送紙を通紙した場合の非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bの温度推移である。cは上記LGLサイズ記録紙の1枚の通常紙を通紙した場合のサーミスタの温度推移である。尚、aは、従来例として、検知温度傾きに関係なく強制OFF温度を一律285℃にした例である。ここで、通常紙とは、重送されずに1枚で搬送されている記録紙、という意味である。
aに示したように、重送紙を従来例の制御で通紙していると、ヒータ強制OFF温度は285[℃]設定であるので、サーミスタ検知温度が285[℃]を検知するまで、発熱体305cに電力を印加し続ける。その結果、サーミスタ検知温度が285[℃]を検知して、発熱体に電力を投入しなくなっても、定着装置(サーミスタ、発熱体など)に蓄熱している熱の影響と、重送紙のため定着ニップ部の長手の端部が浮いてしまう。そのため、熱が加圧ローラ302側へ逃げずに、第2のサーミスタ301bの検知温度が297[℃]のエラー検知温度まで上昇してしまい、エラーが発令してしまう。
一方、bに示したように重送紙を本実施例の制御で通紙すると、第2のサーミスタ301bの検知温度傾きが6[℃/0.1s]なので、ヒータ強制OFF温度を270[℃]に変更する。サーミスタ検知温度が、ヒータ強制OFF温度を超えたら、ヒータをOFFする(投入電力を0)にしている。
その為、定着装置(サーミスタ、発熱体など)に蓄熱している熱の影響と、重送紙であってもエラー検知温度の297[℃]まで、サーミスタ検知温度がいかずに、エラーが発令させることはない。
また、cに示した通常紙の場合は、検知温度傾きが低いので、ヒータ強制OFF温度が285[℃]であっても、エラー温度の297[℃]まで到達することはない。
通常紙を流している場合、検知温度傾きは高くならない。重送紙を流した場合、定着ニップ部の長手端部が浮くので、検知温度傾きは高くなる。
また、通常紙を流している場合は、非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bは、エラー検知温度近傍まで行くことはない。
そのため、検知温度傾きと検知温度で制御を変更する。これにより、仕様内の記録紙を流した場合において、誤検知を防止でき、エラー温度まで一気に昇温しにくい場合には、高温(例えば、285℃)になるまでヒータ305の通電を強制的にOFFすることがない。これによって、通常時に定着ニップ部の温度が低下してしまうのを抑制することができる。
また、検知温度傾きと検知温度で制御を変更することにより、例えば重送紙のように、仕様外の厚みのある記録紙が流された場合には、より早い段階(例えば、270℃)でヒータ305の通電を強制的にOFFすることができる。これにより、エラーの発生を防止することができる。
その結果、定着装置の構成部材の破損や劣化が生じる恐れがあるエラー温度までヒータ305が昇温するのを抑制することができる。
本実施例では非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bに対しての説明を行ったが、さらに第1のサーミスタ301aに対しても同様の制御を行ってもよい。このような構成にすれば、たとえば、ユーザーが片側に記録紙を寄せてセットして通紙し、中央に配置している第1のサーミスタ301aが非通紙部領域になった場合でも、誤検知を防止し、重送紙が流されたときに高温エラーの発生を防止することができる。
また、万が一、エラー温度まで昇温した場合、画像形成装置が高温エラーで止まってしまい、サービスマン等により高温エラーの状態が解除されるまでの間、ユーザーが画像形成装置を使用できなくなる。すなわち、エラー温度は、サービスマン等によってエラーが解除されるまで制御部によって画像形成動作の実行が禁止される温度である。
したがって、本制御により、高温エラーの発生を抑制することができる。よって、高温エラーが生じたことにより、ユーザーがエラー解消のためにサービスマンコールをする頻度を削減することができる。よって、ユーザーの生産性が損なわれてしまう恐れを低減することができる。
本実施例においては、1本のヒータを例にしているが、ヒータは複数本であっても構わない。例えば、メインヒータ(主に長手中央部を加熱し、端部は弱めに加熱)とサブヒータ(主に長手端部を加熱し、中央部は弱めに加熱)を使う場合である。このような例の場合も、上記の「ヒータ強制OFF」とはメインヒータとサブヒータの両方をOFFすることを指す。
トライアック200からヒータ305への電力供給を停止させる制御の為の非通紙部(通過部領域)に対応する温度は、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度及び検知温度の傾きに応じて複数設けることが出来る。また、使用される記録紙の紙種(種類)に応じて、トライアッツク200からヒータ305への電力供給を停止させる制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。
また、導入された記録紙の先端がニップ部Nを通過する際の第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度に応じて、トライアッツク200からヒータ305への電力供給を停止させる制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。
《実施例2》
本実施例では、実施例1のヒータ305のヒータ強制OFF制御に加えて、さらにヒータ305に供給する最大電力量を減少させる制御を組み合わせる。これにより、重送紙が流されたときにエラーの発生をより確実に防止することができる。
[画像形成装置と定着装置]
本実施例2において画像形成装置の構成と定着装置の構成は実施例1における画像形成装置および定着装置と同一の為、再度の説明を省略する。
[記録紙の重送検知と装置制御]
本実施例2における制御を図8のフローチャートを用いて説明する。図8においてステップS01〜S9の制御は実施例1における図1のフローチャートのステップS01〜S9の制御と同じであるから再度の説明は省略する。
ステップS09において、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα1より大きく、かつ、温度Tn+1がβ1より高いかを判断する。判断した結果正しければ、CPU203は、ヒータ強制OFF温度Toff1、最大使用可能電力値Wmax1[w]に設定する(ステップS10)。判断が正しくなければ、ステップS11に移行する。
ヒータ強制OFF温度制御とは、実施例1で説明したように、第2のサーミスタ301bがヒータ強制OFF温度を検知すると、電力の投入をゼロにする制御のことである。
ステップS11では、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα2(<α1)より大きく、かつ、温度Tn+1がβ2(>β1)より高いかを判断する(ステップS11)。判断した結果正しければ、CPU203はヒータ強制OFF温度Toff2(>Toff1)、最大使用可能電力値Wmax2[w](>max1[w])に設定する(ステップS12)。判断が正しくなければ、CPU203はヒータ強制OFF温度Toff3(>Toff2)、最大使用可能電力値Wmax3[w](>max2[w])に設定する(ステップS13)。
次にCPU203が記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けたかを判断する(ステップS14)。
CPU203は、1枚の記録紙Pが定着ニップ部Nを通過する間は、その間に設定されたヒータ強制OFF温度の中で一番低い温度を実際のヒータ強制OFF温度として、ヒータを強制OFFするか否かを判定する。すなわち、記録紙Pの後端が抜けていなければ、CPU203はヒータ強制OFF温度を次のように採用する。記録紙先端がニップ部Nに突入してからS14の判定を行うまでの間に設定されたヒータ強制OFF温度ヒータ強制OFF温度(Toff1、Toff2、Toff3)の内、一番低い温度を実際のヒータ強制OFF温度として採用する(ステップS15)。
また、CPU203は、その記録紙Pの先端が定着ニップ部Nに突入してからステップS14の判定を行うまでの間に設定された最大使用可能電力値のうち、一番低い最大使用可能電力値を実際の最大使用可能電力値に設定する(ステップS15)。
CPU203は、1枚の記録紙Pが定着ニップ部Nを通過する間は、その間に設定された最大使用可能電力値の中で一番低い最大使用可能電力値を、実際の最大使用可能電力値とする。すなわち、記録紙Pの後端が抜けていなければ、CPU203は次のように最大使用可能電力値として採用する。その記録紙Pの先端が定着ニップ部Nに突入してからステップS14の判定を行うまでの間に設定された最大使用可能電力値(Wmax1、Wmax2、Wmax3)の内、一番低い最大使用可能電力値を実際の最大使用可能電力値として採用する。
例えば記録紙Pの後端が抜ける前に、S09〜S13で設定された最大使用可能電力値Wmax1、Wmax2であった場合は次の通りである。すなわち、当該記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるまでの間、ステップS15により、実際の最大使用可能電力値はWmax1(S10)に設定され続けることになる(ステップS15)。CPU203は、ステップS15で設定された最大使用可能電力値の範囲内でハロゲンヒータ305Aへの電力供給を制御する。
次に、CPU203は、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、ステップS15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えているか否かを判定する(ステップS18)。直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、S15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えていたら、ヒータ305に対する電力の投入をゼロにし(ヒータの強制OFF)(ステップS19)、ステップS20に移行する。
一方、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1が、S15で設定した実際のヒータ強制OFF温度を超えていなければ、CPU203は、ヒータ305に最大使用可能電力の範囲で温度調整を続け、ステップS20に移行する。
そして、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1をTnとおく(ステップS20)。そして、直前のステップS07で第2のサーミスタ301bの検知温度を読み込んでから0.1秒後に再び第2のサーミスタ301bの検知温度Tn+1を読み込む(ステップS07)。即ち、CPU203は、0.1sec毎に第2のサーミスタ301bの温度を読み込みながら、検知温度傾きを検知し続ける。
記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けていれば、ヒータ強制OFF温度をデフォルトのToff3[℃]、最大使用可能電力値をデフォルトのWmax3[W]に設定する(ステップS016)。ステップS17で、複数枚のプリントジョブ(JOB)であり、次の記録紙が定着ニップ部Nに来るのかをCPU203が判断する。次の記録紙が定着ニップ部Nに来るならば、ステップS04に戻る。
1枚目が重送紙であり、その次の紙が重送紙でない可能性があるので、ステップS16において、ヒータ強制OFF温度をデフォルトのToff3[℃]、最大使用可能電力値をデフォルトのWmax3に戻した。
ステップS17でジョブが終了であれば、本制御は終了となる。
本制御のパラメータn、α1、α2、β1、β2、Toff1、Toff2、Toff3、Wmax1、Wmax2、Wmax3を以下の表2にまとめる。
n=0.1[s]、α1=7[℃/0.1s]、α2=5[℃/0.1s]、β1=240[℃]、β2=250[℃]、Toff1=260[℃]、Toff2=270[℃]、Toff3=285[℃]とした。Wmax1=700[W]、Wmax2=900[W]、Wmax3=1200[W]とした。
検知温度傾きαの値が大きいと、検知温度βが低い状態からヒータ強制OFF、最大使用可能電力値を変更しないといけないので、上記のように設定した。
本実施例では上記のパラメータを用いたが、製品仕様により、上記バラメータは適宜変更しても良い。
例えば、坪量が105[g/m^2]と300[g/m^2]紙で本制御を発動させる検知温度傾きの閾値を変更しても良い。坪量が大きいほど、定着ニップ部Nにおいてフィルムユニット310の端部が加圧ローラ302の端部が浮きやすくなる。そのため坪量が大きいほど、検知温度傾きが高い値で本制御を発動させても良い。さらに、坪量、紙幅に応じて、検知温度の閾値を変更しても良い。
また、記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の検知温度に応じて、検知温度傾きの閾値を変更しても良い。記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の温度高いと、エラー発令までの温度差が小さいので、検知温度傾きが低くても、本制御を発動しても良い。
図9に示したタイミングチャートを使って、本制御を説明する。図9の(a)、(b)、(c)は実施例1の図6のタイミングチャートにおける(a)、(b)、(c)と同じであるから再度の説明は省略する。(d)はヒータ強制OFF温度である。デフォルトは285[℃]設定となっている。(e)は最大使用可能電力値である。デフォルトは1200[w]設定となっている。
(c)の検知温度傾きが5[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が250[℃]より高いとヒータ強制OFF温度を270[℃]、最大使用可能電力値を900[w]に変更する。(c)の検知温度傾きが7[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が240[℃]より高いとヒータ強制OFF温度を260[℃]、最大使用可能電力値を900[w]に変更する。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるたびに、ヒータ強制OFF温度を285[℃]、最大使用可能電力値はデフォルトの1200[w]に戻している。
即ち、制御部は、温度上昇率に応じて、ヒータへの通電をオフにするまでの間のヒータへの投入電力の上限値を制限する。或いは制御部は、検知温度と温度上昇率に応じて、ヒータへの通電をオフにするまでの間のヒータへの投入電力の上限値を制限する。
本制御では、一度制御を変更すると、通紙している記録紙が定着ニップ部Nを抜けるまで、その設定を継続している。それは、重送紙が定着ニップ部Nを抜けるまでは、検知温度が上がり続けるのを防止しているためである。
本定着装置は、12半波を1周期として、波数制御でヒータを制御している。ヒータへの通電を半波単位で切り替えて制御を行っている。例えば、12半波(半波の数が12個)中ずっとヒータをONしていた場合、投入電力は1200[w]となる。
本実施例では、検知温度傾き、検知温度に応じて、ヒータをONできる波数を制御している事となる。例えば最大使用可能電力Wmaxが1200[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大12個までとなる。最大使用可能電力Wmaxが900[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大9個までとなるように制御を変更している。最大使用可能電力Wmaxが700[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大7個までとなるように制御を変更している。
本実施例では、ヒータ強制OFF温度、最大使用可能電力Wmaxを、所定の条件を満たすと段階的(285[℃]⇒270[℃]、1200[w]⇒900[w])に変更をしていたが、検知温度傾きに量に応じて、連続的に変更しても良い。例えば、検知温度傾きが1[℃/0.1s]変わるごとに、ヒータ強制OFF温度を1[℃]低下、最大使用可能電力Wmaxを100[W]ずつ下げても良い。
本制御を実施することにより、重送紙と判断されれば、ヒータ強制OFF温度、最大使用可能電力値を変更するので、エラー温度の297[℃]にサーミスタ検知温度がいかずに、エラーが発令されることはない。一方通常紙を流した場合は、高温領域で、高い温度傾きを検知することはないので、本制御を発動することなく、問題ない。
検知温度傾きと、検知温度で制御を変更することにより、実施例1と同様の効果を得ることができる。具体的には、仕様内の記録紙を流した場合において、誤検知を防止し、重送紙が流されたときにエラーの発生を防止することができる。
その結果、定着装置111の構成部材の破損や劣化が生じる恐れがあるエラー温度までヒータ305が昇温するのを抑制することができる。
本実施例では非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bに対しての説明を行ったが、さらに第1のサーミスタ301aに対しても同様の制御を行ってもよい。このような構成にすれば、たとえば、ユーザーが片側に記録紙を寄せてセットして通紙し、中央に配置している第1のサーミスタ301aが非通紙部領域になった場合でも、誤検知を防止し、重送紙が流されたときに高温エラーの発生を防止することができる。
また、万が一、エラー温度まで昇温した場合、画像形成装置が高温エラーで止まってしまい、サービスマン等により高温エラーの状態が解除されるまでの間、ユーザーが画像形成装置を使用できなくなる。すなわち、エラー温度は、サービスマン等によってエラーが解除されるまで制御部によって画像形成動作の実行が禁止される温度である。
したがって、本制御により、高温エラーの発生を抑制することができる。よって、高温エラーが生じたことにより、ユーザーがエラー解消のためにサービスマンコールをする頻度を削減することができる。よって、ユーザーの生産性が損なわれてしまう恐れを低減することができる。
トライアック200からヒータ305への電力供給の最大値を変更する制御の為の非通紙部(非通過部領域)に対応する温度は、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度及び検知温度の経時変化の傾きに応じて複数設けることができる。また、使用される記録紙の紙種(種類)に応じて、トライアック200からヒータ305への電力供給の最大値を変更する制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。
また、導入された記録紙の先端がニップ部Nを通過する際の第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度に応じて、トライアック200からヒータ305への電力供給の最大値を変更する制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。また、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度の傾きが所定値以下になるように、トライアック200からヒータ305への電力供給の最大値を変更することが出来る。
《参考例》
本参考例においては、制御部203は、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度及び検知温度の経時変化の傾きに応じてトライアック200からヒータへの電力供給の最大値を変更する。
[画像形成装置]
本参考例において画像形成装置の構成は実施例1の図2のプリンタと同一の為、再度の説明を省略する。
[定着装置]
(1)装置構成
図10は本参考例における定着装置111の要部の概略構成を示す模式的断面図である。この定着装置111も実施例1における定着装置111と同様にフィルム(ベルト)加熱方式、加圧ローラ駆動方式の所謂テンションレスタイプの装置である。実施例1における定着装置111と異なる点は、加熱部材としてハロゲンヒータ(ハロゲンランプ)305Aを用い、温度検知素子である第1と第2のサーミスタ301a・301bはフィルム303の内面温度を検知する構成にある。以下、主としてこの異なる構成点を説明し、共通する構成部材や部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。
フィルムユニット310において、円筒状のフィルム303の内空部にはフィルム幅方向に長い棒状のハロゲンヒータ305Aが、その一端側と他端側の端部がそれぞれフィルムユニット310の一端側と他端側のフランジ部材間に支持されて配設されている。また、ハロゲンヒータ305Aとステー308との間にはハロゲンヒータ305Aの長手に沿って長い輻射熱反射鏡312がステー308に固定して配設されている。
313はフィルムユニット310に具備させているニップ形成部材であり、摺動部材313aと保持部材313bから成っている。摺動部材313aと保持部材313bはそれぞれ実施例1の定着装置111におけるヒータ303及びホルダ304に相当している部材である。ステー308はこのニップ形成部材313の内側に配設されてニップ形成部材313をバックアップする。ニップ形成部材313を構成している摺動部材313a及び保持部材313bは耐熱性樹脂等の断熱性部材である。
省エネルギーの観点からステー308への熱伝導の少ない材料を用いるのが望ましく、例えば、耐熱ガラスや、ポリカーボネート、液晶ポリマー等の耐熱性樹脂が用いられる。
ニップ形成部材313の摺動部材313aはフィルムユニット310が加圧ローラ302に加圧されてフィルム303と加圧ローラ302との間にニップ部Nが形成された状態において、ニップ部Nにおけるフィルム内面に対応して位置している。フィルム303の通紙部領域の温度を検知する温調用の温度検知体である第1のサーミスタ310aと、記録紙の重送を検知するための温度検知体である第2のサーミスタ301bは本参考例においてはニップ形成部材313の摺動部材313aに配設してある。
図11はその配設形態を示している。摺動部材313aには、その長手方向の中央部とそこから摺動部材313aの他端側に115mm離れた位置とにそれぞれ第1と第2の切り込み穴313c・313dが形成されている。第1の切り込み穴313cに第1のサーミスタ301aが、第2の切り込み穴313dに第2のサーミスタ301bが嵌め込まれている。第1のサーミスタ301aとニップ形成部材313の保持部材313bとの間および第2のサーミスタ301aとニップ形成部材313の保持部材313bとの間にはそれぞれバネ(不図示)を介在させてある。
フィルムユニット310が加圧機構により加圧ローラ302に加圧されてフィルム303と加圧ローラ302との間にニップ部Nが形成された状態において、第1と第2のサーミスタ301a・301bはそれぞれバネの付勢力を受ける。そのため、第1と第2のサーミスタ301a・301bはニップ部Nにおけるフィルム内面に対して弾性的に接触してそれぞれベルト303の内面の温度を検知する機能を担っている。
(3)定着動作
制御部203はプリントジョブの実行シーケンスにおける所定の制御タイミングにおいて、実施例1の定着装置111と同様に、圧解除状態の加圧機構を加圧動作させてフィルム303と加圧ローラ302と間にニップ部Nを形成させる。そして、制御部203はモータMを起動させて加圧ローラ302を矢印Yの反時計方向に所定の周速度で回転駆動する。
加圧ローラ302が回転駆動されることで、ニップ部Nにおける加圧ローラ302の表面とフィルム303の表面との摩擦力によりフィルム303に回転力が作用する。そのため、フィルム303は内周面がニップ形成部材313の摺動部材313aと密着して摺動しながらニップ形成部材313の外周を矢印Xの時計方向に加圧ローラ302の周速度と略同じ周速度をもって従動回転する。ニップ形成部材313の横断面が半円弧形状であり、フィルム303の回転軌道を規制する機能を備えている。
また、加圧ローラ302が回転駆動と共に、ハロゲンヒータ305Aに対して制御部203で制御される給電部205から給電路(不図示)を介して電力供給される。これによりハロゲンヒータ305Aが有効発熱幅の全域に渡って点灯する。その点灯によりハロゲンヒータ305Aが発する輻射熱の直接光および反射鏡312を反射した反射光がフィルム303の内面に対して主として周方向の角度αの範囲において照射される。これにより、回転しているフィルム303の全周部が加熱される。
ハロゲンヒータ305Aの輻射熱による加熱温度がフィルム303の最小幅サイズの記録紙の通過領域幅Wmin内に配置された第1のサーミスタ301aにより検知されてその検知温度情報がCPU203に入力する。CPU203は、このサーミスタ301aの検出温度情報に基づいてフィルム表面温度が所定の目標温度(定着温度)になるようにフィルム内面温度で調整を行う。即ち、CPU203は、給電部205からハロゲンヒータ305Aへの電力供給を後述するように波数制御にて制御してフィルム表面温度が所定の目標温度になるようにする。
そして、加圧ローラ302が回転駆動され、ハロゲンヒータ305Aによりフィルム303の表面温度が所定の目標温度に立ち上げられて温調されている状態において、未定着トナー像tが形成された記録紙Pが定着装置111のニップ部Nに導入される。記録紙Pはニップ部Nで挟持搬送される過程においてフィルム303の熱が付与される。未定着トナー像tはフィルム303の熱によって溶融され、且つニップ部Nにかかっている圧力によって記録紙Pに固着トナー像として定着される。
(6)記録紙の重送検知と装置制御
本参考例における制御を図12のフローチャートを用いて説明する。図12においてステップS01〜S09の制御は実施例1における図1のフローチャートのステップS01〜S09の制御と同じであるから再度の説明は省略する。
ステップS09において、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα1より大きく、かつ、温度Tn+1がβ1より高いかを判断する。判断した結果正しければ、CPU203は最大使用可能電力値Wmax1[w]に設定する(ステップS10)。判断が正しくなければ、ステップS11に移行する。
ステップS11では、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα2(<α1)より大きく、かつ、温度Tn+1がβ2(>β2)より高いかを判断する(ステップS11)。判断した結果、正しければ、CPU203は最大使用可能電力値Wmax2[w](>Wmax1)に設定する(ステップS12)。判断が正しくなければ、CPU203は最大使用可能電力値Wmax3[w]](>Wmax2)に設定する(ステップS13)。
次にCPU203が記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けたかを判断する(ステップS14)。
CPU203は、1枚の記録紙Pが定着ニップ部Nを通過する間は、その間に設定された最大使用可能電力値の中で一番低い最大使用可能電力値を、実際の最大使用可能電力値とする。すなわち、記録紙Pの後端が抜けていなければ、CPU203は次のように最大使用可能電力値として採用する。その記録紙Pの先端が定着ニップ部Nに突入してからステップS14の判定を行うまでの間に設定された最大使用可能電力値(Wmax1、Wmax2、Wmax3)の内、一番低い最大使用可能電力値を実際の最大使用可能電力値として採用する。
例えば記録紙Pの後端が抜ける前に、S09〜S13で設定された最大使用可能電力値Wmax1、Wmax2であった場合は次の通りである。すなわち、当該記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるまでの間、ステップS15により、実際の最大使用可能電力値はWmax1(S10)に設定され続けることになる(ステップS15)。CPU203は、ステップS15で設定された最大使用可能電力値の範囲内でハロゲンヒータ305Aへの電力供給を制御する。
そして、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1をTnとおく(ステップS18)。そして、直前のステップS07で第2のサーミスタ301bの検知温度を読み込んでから0.1秒後に再び第2のサーミスタ301bの検知温度Tn+1を読み込む(ステップS07)。即ち、CPU203は、0.1sec毎に第2のサーミスタ301bの温度を読み込みながら、検知温度傾きを検知し続ける。
記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けていれば、最大使用可能電力値をデフォルトのWmax3[W]に設定する(ステップS16)。ステップS17で、複数枚のプリントジョブ(JOB)であり、次の記録紙が定着ニップ部Nに来るのかをCPU203が判断する。次の記録紙が定着ニップ部Nに来るならば、ステップS04に戻る。
1枚目が重送紙であり、その次の紙が重送紙でない可能性があるので、ステップS16において、最大使用可能電力値をデフォルトのWmax3に戻した。
ステップS17でジョブが終了であれば、本制御は終了となる。
本制御のパラメータn、α1、α2、β1、β2、Wmax1、Wmax2、Wmax3を以下の表3にまとめる。
n=0.1[s]、α1=7[℃/0.1s]、α2=5[℃/0.1s]、β1=240[℃]、β2=250[℃]、Wmax1=700[W]、Wmax2=900[W]、Wmax3=1200[W]とした。
検知温度傾きαの値が大きいと、検知温度βが低い状態から最大使用可能電力値を変更しないといけないので、上記のように設定した。
本参考例では上記のパラメータを用いたが、製品仕様により、上記バラメータは適宜変更しても良い。
例えば、坪量が105[g/m^2]と300[g/m^2]紙で本制御を発動させる検知温度傾きの閾値を変更しても良い。
坪量が大きいほど、定着ニップ部Nにおいてフィルムユニット310の端部が加圧ローラ302の端部が浮きやすくなる。そのため坪量が大きいほど、検知温度傾きが高い値で本制御を発動させても良い。さらに、坪量、紙幅に応じて、検知温度の閾値を変更しても良い。
また、記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の検知温度に応じて、検知温度傾きの閾値を変更しても良い。記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の温度が高いと、エラー発令までの温度差が小さいので、検知温度傾きが低くても、本制御を発動しても良い。
図13に示したタイミングチャートを使って、本制御を説明する。図13の(a)、(b)、(c)は実施例1の図6のタイミングチャートにおける(a)、(b)、(c)と同じであるから再度の説明は省略する。図13の(d)は最大使用可能電力値である。デフォルトは1200[w]設定となっている。
(c)の検知温度傾きが5[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が250[℃]より高いと最大使用可能電力値を900[w]に変更する。(c)の検知温度傾きが7[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が240[℃]より高いと最大使用可能電力値を900[w]に変更する。また、記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるたびに、最大使用可能電力値はデフォルトの1200[w]に戻している。
本制御では、一度最大使用可能電力値を変更すると、通紙している記録紙が定着ニップ部Nを抜けるまで、その設定を継続している。それは、重送紙が定着ニップ部Nを抜けるまでは、検知温度が上がり続けるのを防止しているためである。
本定着装置は、12半波を1周期として、波数制御でヒータを制御している。ヒータへの通電を半波単位で切り替えて制御を行っている。例えば、12半波(半波の数が12個)中ずっとヒータをONしていた場合、投入電力は1200[w]となる。
本参考例では、検知温度傾き、検知温度に応じて、ヒータをONできる波数を制御している事となる。例えば最大使用可能電力Wmaxが1200[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大12個までとなる。最大使用可能電力Wmaxが900[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大9個までとなるように制御を変更している。最大使用可能電力Wmaxが700[w]の場合、ヒータをONできる波数は最大7個までとなるように制御を変更している。
本参考例では、最大使用可能電力Wmaxを、所定の条件を満たすと段階的(1200[w]⇒900[w])に変更をしていたが、検知温度傾きに量に応じて、連続的に変更しても良い。例えば、検知温度傾きが1[℃/0.1s]変わるごとに、最大使用可能電力Wmaxを100[W]ずつ下げても良い。本制御を実施することにより、重送紙と判断されれば、最大使用可能電力値を変更するので、エラー温度の297[℃]にサーミスタ検知温度がいかずに、エラーが発令される頻度を低減させることができる。
本参考例においても、重送紙が搬送された場合に、エラーが発令される頻度を低減させることができるが、ヒータをOFFにしない場合には、たとえば通紙部の温度を上げるために、最大使用可能電力でヒータをONにし続けてしまう恐れがある。したがって、上述の実施例1、2の方がより好ましい構成である。
本参考例では非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bに対しての説明を行ったが、さらに第1のサーミスタ301aに対しても同様の制御を行ってもよい。このような構成にすれば、たとえば、ユーザーが片側に記録紙を寄せてセットして通紙し、中央に配置している第1のサーミスタ301aが非通紙部領域になった場合でも、同様の効果を得ることができる。
トライアック200からヒータ305Aへの電力供給の最大値を変更する制御の為の非通紙部(非通過部領域)に対応する温度は、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度及び検知温度の経時変化の傾きに応じて複数設けることができる。また、使用される記録紙の紙種(種類)に応じて、トライアック200からヒータ305Aへの電力供給の最大値を変更する制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。
また、導入された記録紙の先端がニップ部Nを通過する際の第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度に応じて、トライアック200からヒータ305Aへの電力供給の最大値を変更する制御の為の検知温度の傾きの設定値を変えることが出来る。また、第2のサーミスタ301bによって検知された検知温度の傾きが所定値以下になるように、トライアック200からヒータ305Aへの電力供給の最大値を変更することが出来る。
《実施例3》
本実施例3は、検知温度傾きが一定になるように、最大使用可能電力を変更していく実施例である。
[画像形成装置と定着装置]
本実施例3において画像形成装置の構成と定着装置の構成は実施例1における画像形成装置および定着装置と同一の為、再度の説明を省略する。
[記録紙の重送検知と装置制御]
本実施例3における制御を図14のフローチャートを用いて説明する。図14においてステップS01〜S9の制御は実施例1における図1のフローチャートのステップS01〜S9の制御と同じであるから再度の説明は省略する。
ステップS09において、CPU203は検知温度傾き(温度差)ΔTn+1がα1より大きく、かつ、温度Tn+1がβ1より高いかを判断する。判断した結果正しければ、CPU203は、検知温度傾きがα1以下になるように、最大使用可能電力値Wmax[n+1]=Wmax[n]−50[w]に設定する(ステップS10)。判断が正しくなければ、最大使用可能電力値Wmax[n+1]を1つまえの最大使用可能電力値Wmax[n]を引き継ぐ(ステップ11)。
次にCPU203が記録紙Pの後端が定着ニップ部Nを抜けたかを判断する(ステップS12)。記録紙の後端が抜けていなければ、直前のステップS07で読み込んだサーミスタ検知温度Tn+1をTnとおく(ステップS15)。そして、直前のステップS07で第2のサーミスタ301bの検知温度を読み込んでから0.1秒後に再び第2のサーミスタ301bの検知温度Tn+1を読み込む(ステップS07)。即ち、CPU203は、0.1sec毎に第2のサーミスタ301bの温度を読み込みながら、検知温度傾きを検知し続ける。
記録紙の後端が抜けていれば、最大使用可能電力値Wmax[0]をデフォルト設定の最大使用可能電力Wmax(ini)に設定を戻す(ステップS13)。
ステップS14において、複数枚のJOBであり、次の記録紙が定着ニップ部Nに来るのかをCPU203が判断し、次の記録紙が定着ニップ部Nに来るならば、ステップS04に戻る。
1枚目が重送紙であり、その次の紙が重送紙でない可能性があるので、ステップS13において、最大使用可能電力値Wmax[0]をデフォルト設定の最大使用可能電力Wmax(ini)に戻した。
ステップS14でジョブが終了であれば、本制御は終了となる。
本制御のパラメータn、α1、β1、Wmax(ini)は以下である。n=0.1[s]、α1=5[℃/0.1s]、β1=250[℃]、Wmax(ini)=1200[W]。
本実施例では上記のパラメータを用いたが、製品仕様により、上記バラメータは適宜変更しても良い。
例えば、坪量が105[g/m^2]と300[g/m^2]紙で本制御を発動させる検知温度傾きの閾値を変更しても良い。坪量が大きいほど、定着ニップ部Nにおいてフィルムユニット310の端部が加圧ローラ302の端部が浮きやすくなる。そのため坪量が大きいほど、検知温度傾きが高い値で本制御を発動させても良い。さらに、坪量、紙幅に応じて、検知温度の閾値を変更しても良い。
また、記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の検知温度に応じて、検知温度傾きの閾値を変更しても良い。記録材先端が定着ニップ部Nを通過する際の温度高いと、エラー発令までの温度差が小さいので、検知温度傾きが低くても、本制御を発動しても良い。
図15に示したタイミングチャートを使って、本制御を説明する。(a)は定着NIP−ON信号である。記録紙Pが定着ニップ部Nにある場合は、1となり、定着ニップ部Nにないときは0となる。(b)は検知温度である。これは、常に第2のサーミスタ301bの温度を検知している。(c)は検知温度傾きである。これは、図14のフローチャートに示したように、記録紙Pが定着ニップ部N中にいるときのみ、検知温度傾きを計算している。(d)は最大使用可能電力値である。デフォルトは1200[w]設定となっている。
(c)の検知温度傾きが5[℃/0.1s]より大きく、かつ、(b)の検知温度が250[℃]より高いと最大使用可能電力値をデフォルトの1200[w]から50[w]ずつ低下させて、検知温度傾きが5[℃/0.1s]以下になるように変更する。
記録紙Pが定着ニップ部Nを抜けるたびに、最大使用可能電力値はデフォルトの1200[w]に戻している。
本実施例では、最大使用可能電力Wmaxを、所定の条件を満たすと50[w]ずつ段階的に低下させたが、検知温度傾きに量に応じて、連続的に変更しても良い。本制御を実施することにより、重送紙と判断されれば、制御を変更するので、エラー温度の297[℃]にサーミスタ検知温度がいかずに、エラーが発令されることはない。一方通常紙を流した場合は、高温領域で、高い温度傾きを検知することはないので、本制御を発動することなく、問題ない。
検知温度傾きと、検知温度で制御を変更することにより、他の実施例と同様の効果を得ることができる。具体的には、仕様内の記録紙を流した場合において、誤検知を防止し、重送紙が流されたときにエラーの発生を防止することができる。
その結果、定着装置111の構成部材の破損、または劣化を確実に防止できる装置、又はこの装置を備える画像形成装置を提供することが出来る。
本実施例では非通紙部領域に配置してある第2のサーミスタ301bに対しての説明を行った。ユーザーが片側に記録紙を寄せてセットして通紙し、中央に配置している第1のサーミスタが非通紙部領域になった場合でも、非通紙部領域に配置している第2のサーミスタ301bと同じ様に制御を行う。そのため、誤検知を防止し、重送紙が流されたときに高温エラーの発生を防止することができる。
また、万が一、エラー温度まで昇温した場合、画像形成装置が高温エラーで止まってしまい、サービスマン等により高温エラーの状態が解除されるまでの間、ユーザーが画像形成装置を使用できなくなる。すなわち、エラー温度は、サービスマン等によってエラーが解除されるまで制御部によって画像形成動作の実行が禁止される温度である。
したがって、本制御により、高温エラーの発生を抑制することができる。よって、高温エラーが生じたことにより、ユーザーがエラー解消のためにサービスマンコールをする頻度を削減することができる。よって、ユーザーの生産性が損なわれてしまう恐れを低減することができる。
《その他の実施例》
(1)以上の実施例1、2では、ヒータ305の温度を検知する第2のサーミスタ301bの検知温度及びその単位時間当たりの温度上昇率に基づき、ヒータ強制OFF温度の設定を変更する場合を例に説明した。
しかしながら、フィルム303の長手方向において、最小幅サイズの記録紙の通過領域幅Wminよりも外側且つ最大通過領域幅Wmaxの内側において、フィルム303の温度を検知する温度センサ(検知部)を設ける。そして、このセンサの温度に基づいて、上述の各実施例の制御を行う構成としてもよい。この温度センサは、例えば、フィルム303の内面に当接するサーミスタである。
(2)以上、本発明の実施例について説明したが、各実施例で例示した寸法・条件等の数値は一例であって、この数値に限定されるものではない。本発明を適用できる範囲において、数値は適宜選択できる。また、本発明を適用できる範囲において実施例に記載の構成を適宜変更してもよい。例えばローラ定着方式、IH定着方式の定着装置を使用して実施例の様な制御を行っても良い。
(3)実施例1におけるフィルム303は、ヒータ305によってその内面を支持され、加圧ローラ302によって駆動される構成に限られない。例えば、フィルム303は、複数のローラに架け渡されてこれらの複数のローラのいずれかによって駆動されるユニット方式であってもよい。しかしながら、低熱容量化の観点から実施例1〜2のような構成が望ましい。
(4)フィルム303とニップ部Nを形成するものは、ローラ302のようなローラ部材には限られない。例えば、複数のローラにベルトを架け渡した加圧ベルトユニットを用いてもよい。
(5)定着装置111として記録紙上に形成された未定着トナー像tを加熱して定着する装置を例にして説明したがこれに限られない。例えば、記録紙に仮定着されたトナー像を加熱し再定着することにより画像のグロス(光沢度)を増大させる装置(この場合も定着装置と呼ぶことにする)であってもよい。即ち、例えば、半定着済みのトナー画像を記録紙Pに定着させる装置や、定着済みの画像に対して加熱処理を施す装置であってもよい。したがって、画像形成装置に搭載される定着装置111は、例えば、画像の光沢や表面性を調節する表面加熱装置であってもよい。
(6)プリンタ1を例に説明した画像形成装置は、モノクロの画像を形成する画像形成装置に限られず、カラーの画像を形成する画像形成装置でもよい。また画像形成装置は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。
(7)以上の説明では、便宜上、記録材(シート)Pの扱いを、通紙、給紙、排紙、通紙部、非通紙部など紙に纏わる用語を用いて説明するが記録材は紙に限定されるものではない。記録材Pは、画像形成装置によってトナー像が形成され得るシート状の記録媒体(メディア)である。例えば、定型あるいは不定型の普通紙、薄紙、厚紙、上質紙、コート紙、封筒、葉書、シール、樹脂シート、OHPシート、印刷用紙、フォーマット紙等が挙げられる。