JP4439074B2 - エレベータの非常停止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、エレベータの非常停止装置に係り、特に非常停止させるときのかごの減速度を軽減させた非常停止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
エレベータのブレーキ装置は、一般に電磁ブレーキが使用され、巻上機の回転軸に直結されたブレーキ車にばねでブレーキシューを押圧し、ブレーキ車の外周面とブレーキライニングとの摩擦力により回転軸を制動させてかごを停止させるようになっている。
また、ブレーキ装置を開放させるには、ブレーキコイルを付勢して磁気力によりばねに抗してブレーキシューの押圧を解き、ブレーキ車を開放するようになっている。
【0003】
ここで、上記ブレーキ装置は、通常一組装備されるが、より安全性を高めるために個別に動作し得る二組の電磁ブレーキを備えたものもあり、一般に、ダブルブレーキと称呼されている。
図5は、例えば特開平3−243576号公報に開示された従来のエレベータの制動装置で、特にダブルブレーキを示す。
即ち、巻上機1のシーブ3には主索5が捲き掛けられており、この主索5にかご6とつり合重り7が釣瓶状に吊持されている。シーブ3は回転軸4を介して電動機2に直結されており、回転軸4にはブレーキ車10が固着されている。
図6において、かご6が停止いる時は、ブレーキ制御手段41が開放されて、ブレーキコイル11b及び12bは、いずれも消勢されている。ブレーキシュー11a及び12aは、それぞればね(図示しない。)によって押圧されてブレーキ車11に圧接し、回転軸4を静止させる。
【0004】
かご6を昇降させる場合は、ブレーキ制御手段41が閉成し、ブレーキコイル11b及び12bが直流電源40によって付勢されてプランジャ11c及び12cを吸引し、ばねに抗してブレーキシュー11a及び12aを後退させてブレーキ車11を開放すると共に、電動機2が付勢されてかご6を目的階へ向けて昇降駆動する。
かご6が目的階に近付くと電動機2はかご6を減速させ、更に着床停止させると、電動機2への電源が遮断されると共に、ブレーキ制御手段41が開放されてブレーキ装置12及び13によってかご6は静止する。
なお、ブレーキコイル11b及び12bと並列に接続されたダイオード42と抵抗43の直列接続からなる回路は、開放時のブレーキ制御手段41を保護するための放電回路である。
【0005】
ところで、かご6が全負荷上昇運転しているときに、何らかの異常が発生して安全回路が作動したとすると、非常停止信号が発せられて電動機2への給電が遮断されると同時にブレーキ制御手段41が開放されてブレーキコイル11b及び12bも消勢される。このため、かご6は、かご6側とつり合重り7側との不平衡荷重、ブレーキ装置12および13による制動力及び慣性能率により決定される減速度αで急停止する。
即ち、
α=K・(TS+TL)/J (m/s2) (1)
ここで、K:巻上機1における減速比及びシーブ3の直径から決まる係数、J:慣性能率(Kg・m2)、TS:ブレーキトルク(N・m)で、非常停止トルクともいう。TL:かご6側とつり合重り7側との不平衡荷重によって決まる負荷トルク(N・m)で、
TL=K・(WL−WC) (N・m)
となる。但し、WL:かご6側の重量(N)、WC:つり合重り7側の重量(N)とする。
【0006】
ブレーキ装置12及び13の制動力の設定基準としては、安全上の観点から、1.定員以上乗り込んだ状態でもかご6を静止保持できること。
2.走行方向の負荷が負となる、いわゆる回生運転中に非常停止した場合に、終端階で突上げ又は突下げを起こさないこと。
である。
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、かご6の軽量化や回転軸4周りの低慣性能率化が進んでおり、これにより電動機2や制御装置の容量低減や省エネルギー化が図られている。
しかしながら、上記基準を満たすように制動力を設定すると、走行方向の負荷が正となる、いわゆる力行運転中に非常停止した場合に、かご6の減速度が過大となって乗客に不快感を与える、という問題があった。
【0007】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、安全上必要とされる上記設定基準1及び2に加えて、乗り心地の観点から、ブレーキ装置の制動力に上限を設定して力行運転中に非常停止した場合に、かごの減速度が過大とならないエレベータの非常停止装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るエレベータの非常停止装置は、かごとつり合重りとを釣瓶状に吊持する主索が巻き掛けられた巻上機の回転軸を複数台のブレーキ装置で制動させてかごを停止させるようにしたエレベータにおいて、非常停止信号が発せられると、かごの現在位置から運転方向前方の終端階までの残距離でかごを停止させるために必要な非常停止トルクを算出し、更に、かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクとを算出し、そのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとし、この所要制動トルクを最少台数のブレーキ装置で発生させてかごを非常停止させるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係るエレベータの非常停止装置は、かごが停止した後は、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるようにしたものである。
【0010】
請求項3に係るエレベータの非常停止装置は、平常運転でかごが目的階の着床ゾーンに到着したとき、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係るエレベータの非常停止装置は、抵抗器を有する放電回路が並列に接続されたブレーキコイルを消勢することにより複数台のブレーキ装置を作動させて、かごとつり合重りとを釣瓶状に吊持する主索が巻き掛けられた巻上機を制動させ、かごを停止させるようにしたエレベータにおいて、非常停止信号が発せられると、かごの現在位置から運転方向前方の終端階までの残距離でかごを停止させるために必要な非常停止トルクを算出し、更に、かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクも併せて算出し、そのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとし、非常停止信号が発せられると、全台数についてブレーキコイルへの電力供給を遮断すると共に、このうち所要制動トルクを発生するのに必要最少台数のブレーキ装置を選択し、放電回路の抵抗器の抵抗値を高く設定して早急に作動させてかごを非常停止させ、残余の上記ブレーキ装置の抵抗値は低く設定して作動を遅延させるようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1から図3は、この発明の実施の形態1を示す。
図1において、1は巻上機、2はこの巻上機1を駆動する電動機、3は巻上機1のシーブ、4は電動機1とシーブ3を直結する回転軸、5はシーブ3に巻き掛けられた主索、6は主索5に係止されてつり合重り7と共に釣瓶状に吊持されたかご、8は昇降路の頂部とピットに取り付けられた滑車8a及び8bに巻き掛けられ、途中かご6に係止されてたロープ8cによって駆動されてかご6の速度を検知する調速機、9は終端階である最下階である。
【0013】
10は回転軸4に固着されたブレーキ車である。11はブレーキ装置で、ブレーキ車10にばね(図示しない。)でブレーキシュー11aを押圧し、ブレーキ車10の外周面とブレーキライニングとの摩擦力によりブレーキトルクT1で回転軸4を制動させてかご6を停止させ、ブレーキコイル11bを付勢することにより、磁気力によりばねに抗してプランジャ11cを吸引してブレーキシュー11aの押圧を解き、ブレーキ車を開放してかご6を昇降可能する。
12及び13もブレーキ装置11と同様のブレーキ装置で、12a及び13aはブレーキシュー、12b及び13bはブレーキコイル、12c及び13cはプランジャで、それぞれブレーキトルクT2及びT3を発生させる。ブレーキ装置11から13は、いわゆるトリプルブレーキを構成する。
【0014】
17は調速機8に直結されて回転してかご6の移動距離に応じたパルス信号を発生するパルス発生器である。18は単位時間当りの上記パルス信号数からかご6の速度を検出するかご速度検出器、19は上記パルス信号を計数してかご6の位置を検出するかご位置検出器、20はパルス発生器17から異なるパルス信号を発生させ、両者の位相差からかご6の運転方向を検知するかご運転方向検出器である。
【0015】
21は非常停止信号によって作動してかご6の現在位置から運転方向前方の終端階9までの残距離S0を算出する残距離算出手段、22はかご6の上に取り付けられた秤装置22aによって検出されたかご6側の総重量WLに基いてつり合重り7側WCとの不平衡荷重を算出し、更にこの不平衡荷重によって回転軸4に生じる負荷トルクTLを算出する負荷トルク算出手段である。なお、かご6の位置変動による主索5の不平衡荷重も考慮される。即ち、
TL=K・(WL−WC) (N・m) (2)
但し、K:巻上機1における減速比及びシーブ3の直径から決まる係数、WL:かご6側の重量(N)、WC:つり合重り7側の重量(N)とする。
従って、WL=WLa+WLb (N) となる。
但し、WLa:かご重量(N)、WLb:かご6側ロープ重量(N)である。
また、WC=WCa+WCb (N) となる。
但し、WCa:つり合重り重量(N)、WCb:おもり7側ロープ重量(N)である。
【0016】
23はかご6を残距離S0で停止させるために必要な減速度αを算出する減速度算出手段である。即ち、
α=(V0+V12/{2×(S0−S1)} (m/S2) (3)
但し、V0:給電遮断時の初速度(m/S)、V1:給電遮断からブレーキ装置11〜13が作動する間の増速度(m/S)で、下記式で算出され。
1=K・(TL/J)・td
但し、td:給電遮断からブレーキ装置11〜13が作動するまでの時間(s)である。
0:給電遮断時の残距離(m)、S1:給電遮断からブレーキ装置11〜13が作動するまでの間の走行距離(m)で、下記式で表される。
1=∫Td{V0+K・(TL/J)・t}dt
【0017】
24は上記減速度でかご6を停止させるために必要な非常停止トルクTSを算出する非常停止トルク算出手段で、減速度算出手段による減速度αと負荷トルクTLとから、上記(1)式によって
TS=(α/K)・J−TL (N・m)
となる。
25は負荷トルクTLに抗してかご6を静止状態で保持するために必要な静止保持トルクを算出する静止保持トルク算出手段で、上記負荷トルクTLに対して安全係数を乗じた値としてもよいが、ここでは上記負荷トルクTLとする。
26は上記非常停止トルクTSと上記静止保持トルクTLのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクTとする所要制動トルク算出手段、27は上記所要制動トルクTを発生することを前提として上記ブレーキ装置11、12及び13から必要最少台数を選択してブレーキコイル11b〜13bを消勢して制動トルクを作用させてかご6を非常停止させるブレーキ制御手段である。
【0018】
図2において、271はブレーキ制御手段27の常開の出力接点で、ブレーキコイル11bを付勢する。同様に、272はブレーキコイル12bを、また、273はブレーキコイル13bをそれぞれ付勢するブレーキ制御手段27の出力接点である。
なお、出力接点271は、所要制動トルクTの大小に拘わらず、非常停止信号によって開放されてブレーキコイル11bを消勢する。
出力接点272は、所要制動トルクTがブレーキ装置11のブレーキトルクT1を上回ったときに開放されてブレーキコイル12bを消勢する。
出力接点273は、所要制動トルクTがブレーキ装置11と12の合計のブレーキトルク(T1+T2)を上回ったときに開放されてブレーキコイル13bを消勢する。
D1はダイオード、R1は抵抗で、ブレーキコイル11bと並列に接続されて放電回路を構成し、消勢時にブレーキ制御手段27の出力接点を保護するものである。ダイオードD2と抵抗R2の直列回路、及びダイオードD3と抵抗R3の直列回路も同様である。
【0019】
次に、動作について説明する。
かご6に運転指令が出されていない状態では、ブレーキ装置11〜13は、いずれもブレーキコイル11b〜13bが消勢されて制動力を発生し、かご6を所定位置に停止させている。この状態で、呼びが発生して運転指令が出されると、ブレーキ制御装置27の出力接点271〜273が閉成して、ブレーキコイル11b〜13bが付勢されて制動力が解除される。次いで、電動機2に電力が供給され、かご6は目的階へ向けて昇降駆動される。かご6が目的階に着床して停止すると、電動機2への給電が停止されると共に、ブレーキ制御手段27の出力接点271〜273が開放される。このため、ブレーキコイル11b〜13bが消勢されて、制動力が発生し、回転軸4は制止される。このようにして、呼びに応答してかご6は昇降運転を継続する。
【0020】
ところで、かご6が全速力で上昇しているときに、何らかの異常が発生して非常停止信号が発せられたとする。電動機2への給電が遮断されると共に、かご速度(V0+V1)と運転方向前方の終端階までの残距離(S0−S1)と負荷トルクTLに基いて残距離(S0−S1)でかご6を停止させるに必要な減速度αが算出され、更に、非常停止トルク算出手段24によって減速度αで減速するために必要な非常停止トルクTSが算出される。また、静止保持トルク算出手段25では、かご6を静止状態で保持するために必要な静止保持トルクTLが算出され、更に、所要制動トルク算出手段26で非常停止トルクTSと静止保持トルクTLのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクTとされる。
【0021】
上記所要制動トルクTがブレーキ装置11の制動トルクT1以下の場合は、ブレーキ制御手段27は、図3のモード1を選択して出力接点271のみを開放して、制動トルクT1でかご6を減速停止させる。
同様に、T1<T≦(T1+T2)の場合は、モード2を選択して、出力接点271と272を開放して、制動トルク(T1+T2)でかご6を減速停止させる。
更に、(T1+T2)<Tの場合は、モード3を選択して、出力接点271〜273を開放して、制動トルク(T1+T2+T3)でかご6は減速停止させる。
なお、かご6が停止したことをかご速度検出手段18によって検出された場合は、ブレーキ装置11〜13の全台数で回転軸4を制動させる。
【0022】
上記実施の形態1によれば、所要制動トルクTに応じてブレーキ装置11〜13を選択的に作動させてかご6を非常停止させるようにしたので、力行運転中に非常停止させる場合でも、かごの減速度が過大となることはない。
また、所要制動トルクTは、かご6を静止状態で保持するために必要な静止保持トルクTLを下回ることがないので、安全性は確保される。
なお、上記実施の形態1では、3台のブレーキ装置11〜13を使用するものとしたが、4台以上であってもよい。
【0023】
実施の形態2.
図4は実施の形態2を示す。この実施の形態2では、非常停止信号が発せられたならば、所要制動トルクTの大小に応じてブレーキトルクの発生時点を変動させるようにしたものである。
図中、図1から3と同符号は、同一又は同内容を示すし、270は、非常停止信号の発生と共に開放するブレーキ制御手段27の常開の出力接点、D01〜D03は各ブレーキコイル11b〜13bの放電回路が相互に干渉するのを防止するための逆流阻止用のダイオードである。
r2は抵抗R2と直列に接続された抵抗で、ブレーキコイル12bのインダクタンスL分と共に所定の時定数で放電回路を構成する。272bは抵抗R2を短絡するブレーキ制御手段27の常閉の出力接点で、出力接点270の閉成によって瞬時開放し、出力接点270の開放によって選択的に遅延して閉成して抵抗R2を短絡して抵抗r2を放電抵抗とする放電回路を形成してブレーキコイル12bによる励磁を継続させて、ブレーキ装置12の作動を遅らせる。
r3もブレーキコイル12bに対して、抵抗r2と同様の機能を有する。273bは、出力接点272bと同様の機能を有するブレーキ制御手段27の常閉の出力接点である。
【0024】
次に動作について説明する。非常停止信号が発せられた場合に、所要制動トルクTがブレーキトルクT1以下の場合は、ブレーキコイル11bは出力接点270の開放と同時に消勢されるが、出力接点272bと273bは直ちに閉成されて放電回路を構成し、ブレーキコイル12b及び13bには電流が継続して流れて作動が遅延する。このため、かご6は制動トルクT1で減速停止する。
同様に、T1<T≦(T1+T2)の場合は、図3のモード2を選択して、出力接点272bが開放のままとなり、出力接点270の開放と同時にブレーキコイル11b及び12bが消勢して、制動トルク(T1+T2)でかご6を減速停止させる。
更に、(T1+T2)<Tの場合は、モード3を選択して、出力接点272b及び273bが開放のままとなり、かご6は制動トルク(T1+T2+T3)で減速停止する。
なお、かご6が停止したことをかご速度検出手段18によって検出された場合は、ブレーキ装置11〜13の全台数で回転軸4を制動させる点は、上記実施の形態1と同様である。。
【0025】
上記実施の形態2によっても、上記実施の形態1と同様に所要制動トルクTに応じてブレーキ装置11〜13を選択的に作動させてかご6を非常停止させるようにしたので、力行運転中に非常停止させる場合でも、かご6の減速度が過大となることはない。
また、所要制動トルクTは、かご6を静止状態で保持するために必要な静止保持トルクTLを下回ることがないので、安全性は確保される。
更に、ブレーキコイル12b及び13bの放電電流で作動を遅らせるようにしたので、停電の場合でも、かご6の減速度が過大となることはない。
【0026】
【発明の効果】
この発明は上記のとおり構成されているので、以下の効果を奏する。
請求項1に係るエレベータの非常停止装置は、かごとつり合重りとを釣瓶状に吊持する主索が巻き掛けられた巻上機の回転軸を複数台のブレーキ装置で制動させてかごを停止させるようにしたエレベータにおいて、非常停止信号が発せられると、かごの現在位置から運転方向前方の終端階までの残距離でかごを停止させるために必要な非常停止トルクを算出し、更に、かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクとを算出し、そのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとし、この所要制動トルクを最少台数のブレーキ装置で発生させてかごを非常停止させるようにしたものである。
このため、力行運転中に非常停止させる場合でも、かごの減速度が過大となることはない、という効果を奏する。
また、所要制動トルクは、静止保持トルクを下回ることがないので、安全性は確保される、という効果も併せて奏する。
【0027】
請求項2に係るエレベータの非常停止装置は、かごが停止した後は、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるようにしたものである。
このため、安全性を確保することができる、という効果を奏する。
【0028】
請求項3に係るエレベータの非常停止装置は、平常運転でかごが目的階の着床ゾーンに到着したとき、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるようにしたものである。
通常運転時は、かごが停止した後にブレーキ装置が作動するので、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させても乗り心地を害することはなく、また、安全性を確保することができる、という効果を奏する。
【0029】
請求項4に係るエレベータの非常停止装置は、抵抗器を有する放電回路が並列に接続されたブレーキコイルを消勢することにより複数台のブレーキ装置を作動させて、かごとつり合重りとを釣瓶状に吊持する主索が巻き掛けられた巻上機を制動させ、かごを停止させるようにしたエレベータにおいて、非常停止信号が発せられると、かごの現在位置から運転方向前方の終端階までの残距離でかごを停止させるために必要な非常停止トルクを算出し、更に、かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクも併せて算出し、そのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとし、非常停止信号が発せられると、全台数についてブレーキコイルへの電力供給を遮断すると共に、このうち所要制動トルクを発生するのに必要最少台数のブレーキ装置を選択し、放電回路の抵抗器の抵抗値を高く設定して早急に作動させてかごを非常停止させ、残余の上記ブレーキ装置の抵抗値は低く設定して作動を遅延させるようにしたものである。
このものにあっても、上記と同様の効果を奏すると共に、特に、停電時にブレーキ装置によってかごが制止する場合でも、減速度が過大となることはない、という効果も併せて奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1におけるエレベータの非常停止装置の全体構成を示すブロック図。
【図2】 この発明の実施の形態1におけるエレベータの非常停止装置の要部の電機回路接続図。
【図3】 この発明の実施の形態1における説明用図。
【図4】 この発明の実施の形態2におけるエレベータの非常停止装置の要部の電機回路接続図。
【図5】 従来のエレベータの非常停止装置の全体構成を示すブロック図。
【図6】 従来のエレベータの非常停止装置の要部の電機回路接続図。
【符号の説明】
1 巻上器、 2 電動機、 3 シーブ、 4 回転軸、 5 主索、 6かご、 7 つり合重り、 8 調速機、 9 終端階、 10 ブレーキ車、 11 プレーキ装置、 11b プレーキコイル、 12 プレーキ装置、12b プレーキコイル、 13 プレーキ装置、 13b プレーキコイル、 17 パルス発生器。

Claims (4)

  1. かごとつり合重りとが主索に係止されて釣瓶状に吊持されたエレベータの非常停止装置において、上記主索が巻き掛けられた巻上機の回転軸を制動させて上記かごを停止させる複数台のブレーキ装置と、非常停止信号によって作動して上記かごの位置から運転方向前方の終端階までの残距離を算出する残距離算出手段と、上記かごを上記残距離で停止させるために必要な非常停止トルクを算出する非常停止トルク算出手段と、上記かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクを算出する静止保持トルク算出手段と、上記非常停止トルクと上記静止保持トルクのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとする所要制動トルク算出手段と、上記所要制動トルクを発生する限りにおいて必要最少台数の上記ブレーキ装置を選択して作動させて上記かごを非常停止させるブレーキ制御手段とからなるエレベータの非常停止装置。
  2. ブレーキ制御手段は、かごが停止した後は、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるものとした請求項1に記載のエレベータの非常停止装置。
  3. ブレーキ制御手段は、平常運転でかごが目的階の着床ゾーンに到着したとき、全台数のブレーキ装置で回転軸を静止させるものとした請求項1に記載のエレベータの非常停止装置。
  4. かごとつり合重りとが主索に係止されて釣瓶状に吊持されたエレベータの非常停止装置において、抵抗器を有する放電回路が並列に接続されたブレーキコイルが消勢されることにより作動して上記主索が巻き掛けられた巻上機の回転軸を制動させて上記かごを停止させる複数台のブレーキ装置と、非常停止信号によって作動して上記かごの位置から運転方向前方の終端階までの残距離を算出する残距離算出手段と、上記かごを上記残距離で停止させるために必要な非常停止トルクを算出する非常停止トルク算出手段と、上記かごを静止状態で保持するために必要な静止保持トルクを算出する静止保持トルク算出手段と、上記非常停止トルクと上記静止保持トルクのうちのいずれか大きい方を選択して所要制動トルクとする所要制動トルク算出手段と、上記非常停止信号によって全台数の上記ブレーキ装置の上記コイルへの電力供給を遮断し、このうち上記所要制動トルクを発生する限りにおいて必要最少台数の上記ブレーキ装置を選択し、上記放電回路の上記抵抗器の抵抗値を高く設定して早急に作動させて上記かごを非常停止させ、残余の上記ブレーキ装置の抵抗値は低く設定して作動を遅延させるブレーキ制御手段とからなるエレベータの非常停止装置。
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