以下に本発明を詳細に説明する。本明細書の全体にわたり、対象物の個数は、特に言及しない限り、1個または2個以上であり得ることが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
本発明のソフトビスケットは、ビスケット生地を焼成して得られるビスケットであり、(1)生地の総タンパク質含有量は5.2重量%以上10.5重量%未満でかつグルテン系タンパク質含有量が2.4重量%以上であるか、または(2)生地の総タンパク質含有量は10.5重量%以上20重量%以下でかつグルテン系タンパク質含有量が0.8重量%以上であり、ここで、グルテン系タンパク質が、活性グルテンを形成し得るタンパク質および活性グルテンであり、該生地の油脂含有量が15重量%以上である。
ここで、重量%は、得られるビスケットの重量を100とし、それに対する重量比として計算される。従って、生地の配合のうち、ビスケットを焼成する際に失われる水分の量は、計算の基準に含めない。
本明細書中では、ソフトビスケットとは、小麦粉などのグルテン系タンパク質含有材料を主原料として、油脂、糖類、必要に応じて呈味原料、食品添加物、乳製品、卵製品などの原料を加えて混合して生地を調製した後、ロータリーモールダー、ワイヤーカッター、デポジッター、ステンシルモールダー、ソフトカッティングなどによって生地中のグルテン形成が抑制された状態で生地を成型し、焼成して得られる、軟らかく、サクサクとした軽い食感を有するビスケットをいう。ソフトビスケットの生地の配合、および製法等については、いわゆるビスケットの規約に制限されない。風味的にも特に制限はない。
1つの実施形態では、本発明のソフトビスケットの生地の総タンパク質含有量は、好ましくは約5.2重量%以上であり、より好ましくは約6重量%以上である。上限については、好ましくは約10.5重量%未満であり、より好ましくは約9重量%未満である。総タンパク質含有量が多すぎると、生地が硬くなりすぎ、焼成後のビスケットの食感が硬くなりすぎる場合がある。総タンパク質含有量が少なすぎると、ビスケット生地の成型性が悪くなる場合がある。この実施形態において、本発明のソフトビスケット生地のグルテン系タンパク質含有量は、約2.4重量%以上であり、より好ましくは約3.0重量%以上であり、より好ましくは約3.5重量%以上であり、さらに好ましくは約4.0重量%以上である。グルテン系タンパク質は、タンパク質の一種であるので、当然、グルテン系タンパク質含有量は総タンパク質含有量を超えない。この実施形態において、本発明のソフトビスケットの生地のグルテン系タンパク質含有量は、好ましくは約9重量%以下、より好ましくは約8.5重量%以下、さらに好ましくは約8重量%以下、いっそう好ましくは約7重量%以下であり、特に好ましくは約6重量%以下であり、最も好ましくは約4.2重量%以下である。グルテン系タンパク質含有量が多すぎると、生地の弾力が出すぎてソフトビスケットの製法では成型できない場合がある。グルテン系タンパク質含有量が少なすぎると、ビスケット生地の成型性が悪くなる場合がある。一般に、ソフトビスケットの生地の中に、非グルテン系タンパク質をほとんど含まない場合、生地のグルテン系タンパク質量が、約5重量%〜約9重量%であると、ソフトビスケットの製法でも、ハードビスケットの製法でもビスケットを製造することができる。このグルテン系タンパク質量のときに製造されるハードビスケットは、牛乳とのなじみが悪く、シリアル食品として適さない。しかし、このグルテン系タンパク質量のときに製造されるソフトビスケットは、牛乳とのなじみもよく、かつ牛乳耐性もあり、シリアル食品として極めて良好な特性を有する。
別の実施形態では、本発明のソフトビスケットの生地の総タンパク質含有量は、約10.5重量%以上約20重量%未満であり、より好ましくは約11重量%以上約18重量%未満であり、さらに好ましくは約12重量%以上約17重量%未満である。総タンパク質含有量が多すぎると、生地が硬くなりすぎ、焼成後のビスケットの食感が硬くなりすぎる場合がある。総タンパク質含有量が少なすぎると、ビスケット生地の成型性が悪くなる場合がある。この実施形態において、本発明のソフトビスケット生地のグルテン系タンパク質含有量は、約0.8重量%以上であり、より好ましくは約1.5重量%以上であり、さらに好ましくは約1.8重量%以上である。グルテン系タンパク質は、タンパク質の一種であるので、当然、グルテン系タンパク質含有量は総タンパク質含有量を超えない。この実施形態において、本発明のソフトビスケットのグルテン系タンパク質含有量は、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下、さらに好ましくは約6重量%以下、特に好ましくは約5重量%以下であり、最も好ましくは約4.2重量%以下である。グルテン系タンパク質含有量が多すぎると、上記と同様に、生地の弾力が出すぎてソフトビスケットの製法では成型できない場合があり、成型できたとしても焼成後のビスケットの食感が硬くなりすぎる場合がある。グルテン系タンパク質含有量が少なすぎると、ビスケット生地の成型性が悪くなる場合がある。
さらに別の実施形態では、ソフトビスケットの生地中のグルテン系タンパク質含有量をx重量%とし、グルテン系タンパク質以外の他のタンパク質の含有量をy重量%とした場合、3x+yは、好ましくは16以上21以下であり、より好ましくは16.5以上20.5以下であり、さらにより好ましくは17以上20以下であり、最も好ましくは17.5以上19.5以下である。この実施形態の中でも特に好ましい実施形態では、yの下限は、1であり、さらに好ましくは2であり、さらにより好ましくは3であり、特に好ましくは4であり、格別好ましくは5であり、最も好ましくは6であり、yの上限は17であり、さらに好ましくは16であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは14である。
一般に、ソフトビスケットの生地の中に、非グルテン系タンパク質を含む場合、ソフトビスケットの生地中のグルテン系タンパク質含有量をx重量%とし、グルテン系タンパク質以外の他のタンパク質の含有量をy重量%としたとき、「式:α=3x+y」で計算される数値αが適切な範囲内であると、ソフトビスケットの製法でも、ハードビスケットの製法でもビスケットを製造することができる。しかし、このような配合で製造されるハードビスケットは、牛乳とのなじみが悪く、シリアル食品として適さない。そしてこのような配合で製造されるソフトビスケットは、牛乳とのなじみもよく、かつ牛乳耐性もあり、シリアル食品として極めて良好な特性を有する。ハードビスケットとソフトビスケットとでそのような顕著な性能の相違が存在する理論的なメカニズムは必ずしも明確ではないが、ハードビスケットの場合には生地におけるグルテンの生成が過度になるために適切な牛乳との親和性が得られないことが可能性として考えられる。
なお別の実施形態では、ソフトビスケットの生地中のグルテン系タンパク質含有量をx重量%とし、グルテン系タンパク質以外の他のタンパク質の含有量をy重量%とした場合、4x+yは、好ましくは19以上27以下であり、より好ましくは19.5以上25以下であり、さらにより好ましくは20以上24以下であり、最も好ましくは20.5以上23以下である。この実施形態の中でも特に好ましい実施形態では、yの下限は、1であり、さらに好ましくは2であり、さらにより好ましくは3であり、特に好ましくは4であり、格別好ましくは5であり、最も好ましくは6であり、yの上限は17であり、さらに好ましくは16であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは14である。
一般に、ソフトビスケットの生地の中に、非グルテン系タンパク質を含む場合、ソフトビスケットの生地中のグルテン系タンパク質含有量をx重量%とし、グルテン系タンパク質以外の他のタンパク質の含有量をy重量%としたとき、「式β=4x+y」で計算される数値βが適切な範囲内であると、ソフトビスケットの製法でも、ハードビスケットの製法でもビスケットを製造することができる。このときに製造されるハードビスケットは、牛乳とのなじみが悪く、シリアル食品として適さない。しかし、このときに製造されるソフトビスケットは、牛乳とのなじみもよく、かつ牛乳耐性もあり、シリアル食品として極めて良好な特性を有する。
ソフトビスケットの生地中の総タンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量は、ソフトビスケットを製造するために用いられる種々の材料中のタンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量、ならびにそれら種々の材料の使用量を適切に選択することによって調整され得る。
ソフトビスケットの生地中の「総タンパク質含有量」および「グルテン系タンパク質含有量」は、ソフトビスケットの生地を実際に当該分野で公知の分析方法によって分析して決定してもよく、簡便には、ソフトビスケットの製造に用いる材料に含まれるタンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量、グリアジン含有量またはグルテニン含有量に基づいて決定してもよい。
<本発明のソフトビスケットの生地の材料>
(1.グルテン系タンパク質含有材料)
本発明のソフトビスケットの製造に用いる生地は、グルテン系タンパク質含有材料を原料として製造され得る。本明細書中では、「グルテン系タンパク質」とは、水を加えて捏ねるなどの方法により活性グルテンとなり得るタンパク質と活性グルテンとを合わせて、「グルテン系タンパク質」という。「活性グルテン」とは、粘弾性を有し、熱などによって変性していないグルテンをいう。「グルテン系タンパク質含有材料」とは、水を加えて捏ねるなどの方法により活性グルテンを生成する材料をいう。
小麦粉中には、約6.5重量%〜約15重量%の小麦タンパク質が含まれる。小麦タンパク質のうちの約80重量%〜約88重量%がグリアジンとグルテニンとである。グリアジンとグルテニンとが、水を加えて捏ねるなどの方法により活性グルテンとなる。小麦粉から得られるグルテン系タンパク質の量は、当該分野で公知の方法によって測定され得る。例えば具体的には、小麦粉を水に加えて混合して得た生地を多量の水で洗い、澱粉と水溶性成分を除くとガム状の物質が得られる。次いで得られたガム状の物質の乾物の重量を測ることによって、グルテン系タンパク質量が測定される。また別の方法として、小麦粉を水、食塩水、70v/v%エタノール、0.1N酢酸で順次抽出することで、グルテンの成分であるグリアジンとグルテニンとを分離する方法が知られており、この方法を用いることによって、グルテン系タンパク質量が測定される。なお、グルテン系タンパク質は小麦以外の穀物にはほとんど存在しない。
グルテン系タンパク質含有材料の例としては、小麦粉が挙げられる。小麦粉は、原料となる小麦の種類によって、強力粉、準強力粉、中力粉、および薄力粉に分けられる。強力粉は、硬質小麦から製造される。準強力粉は、硬質小麦から製造される。中力粉は、中間質小麦から製造される。薄力粉は、軟質小麦から製造される。強力粉、準強力粉、中力粉、および薄力粉はまた、タンパク質含量との密接な関係がある。強力粉は、通常、タンパク質含量が11.5重量%以上であり、好ましくは、11.5重量%〜15.0重量%である。準強力粉は、通常、タンパク質含量が11.5重量%以上であり、好ましくは、11.5重量%〜13.5重量%である。中力粉は、通常、タンパク質含量が8.0重量%以上であり、好ましくは、8.0重量%〜10.0重量%である。薄力粉は、通常、タンパク質含量が9.5重量%以下であり、好ましくは、6.5重量%〜9.5重量%である。本発明で用いられるグルテン系タンパク質含有材料は、物性の観点からは、強力粉、準強力粉および中力粉が好ましく、強力粉および準強力粉がより好ましく、そして強力粉が最も好ましい。もちろん、薄力粉を用いることも可能であるが、その場合は、グルテン系タンパク質以外のタンパク質を添加することが好ましい。また、これらの種々の小麦粉を任意の比率で適宜混合して用いることも可能であり、特定の実施形態では、強力粉と薄力粉とを混合して用いることが好ましい。
本発明でグルテン系タンパク質含有材料として使用する強力粉の好ましいタンパク質含量は、13.0重量%以上14.5重量%以下である。本発明でグルテン系タンパク質含有材料として使用する準強力粉の好ましいタンパク質含量は、11.5重量%以上13.0重量%未満である。本発明でグルテン系タンパク質含有材料として使用する中力粉の好ましいタンパク質含量は、8.0重量%以上11.5重量%未満である。本発明でグルテン系タンパク質含有材料として使用する薄力粉の好ましいタンパク質含量は、6.5重量%以上8.0重量%未満である。
小麦粉は、1種類のみが用いられてもよいし、2種類以上が組み合わされて用いられてもよい。好ましくは、2種類を組み合わせて用いられる。
小麦粉は、当該分野で周知の方法によって、小麦の穀粒から製造され得る。例えば、小麦の穀粒を臼で挽き、ふるい分けすることによって小麦粉を製造し得る。
ソフトビスケットの生地を製造するために用いられるグルテン系タンパク質含有材料の量は、当業者により適宜決定され得る。ソフトビスケットの生地を製造するために用いられるグルテン系タンパク質含有材料の量は、ソフトビスケット中の目的とするグルテン量に応じて決定され得る。グルテン系タンパク質含有材料の量は、小麦粉と水分と油脂との配合量の比率によって変動するとはいえ、非グルテン系タンパク質を含まない場合、生地の成型性の観点からは、ソフトビスケットの原料の合計量の好ましくは約15重量%〜約70重量%、より好ましくは約20重量%〜約65重量%、さらに好ましくは約25重量%〜約60重量%であり、最も好ましくは約30重量%〜約55重量%である。非グルテン系タンパク質を含む場合、グルテン系タンパク質含有材料の量は、生地の成形性の観点から、ソフトビスケットの原料の合計量の好ましくは約10重量%〜約65重量%、より好ましくは約15重量%〜約60重量%、さらに好ましくは約20重量%〜約55重量%であり、最も好ましくは約25重量%〜約50重量%である。もちろん、非グルテン系タンパク質を含む材料の量に応じて、グルテン系タンパク質含有材料の量は変動し得る。グルテン系タンパク質含有材料の量が少なすぎると生地のつながりが悪くなる場合がある。グルテン系タンパク質含有材料の量が多すぎると生地の流動性が悪くなる場合がある。
なお、生地を製造した後にグルテン系タンパク質量を測定してさらにグルテン系タンパク質量を調整することは煩雑であるので、グルテン系タンパク質含有材料の配合量を調整することにより生地中のグルテン系タンパク質量を制御することが好ましい。
(2.非グルテン系タンパク質)
本発明のソフトビスケットの生地の原料としては、非グルテン系タンパク質を含有する材料も用いられ得る。本明細書中では、「非グルテン系タンパク質」とは、水を加えて捏ねるなどの方法により活性グルテンにならないタンパク質をいう。すなわち、活性グルテンならびに結合して活性グルテンとなるタンパク質(例えば、グリアジンおよびグルテニン)以外のタンパク質をいう。従って、グルテンが熱などにより変性されて活性グルテンとしての性質を示すことができなくなった場合には、その変性されたグルテンは、グルテン系タンパク質ではなく、非グルテン系タンパク質に分類される。
非グルテン系タンパク質を含む材料の例としては、豆類、穀物、動物由来材料などが挙げられる。非グルテン系タンパク質は、栄養的に有益なタンパク質であることが好ましく、例えば、アミノ酸スコアが高いことが好ましい。アミノ酸スコアとは、ある特定のタンパク質の栄養価を評価する指標である。アミノ酸スコアは、そのタンパク質に含まれる必須アミノ酸の中で割合として最も不足している必須アミノ酸を第一制限アミノ酸とし、この第一制限アミノ酸が人間の体の必要量に対してどのくらいの割合になるか、すなわち、
によって計算される。アミノ酸スコアは100に近いほど好ましい。例えば、大豆タンパク質ならびに、ゼラチンなどの特定のタンパク質以外の、動物由来の種々のタンパク質(例えば、牛乳タンパク質(例えば、カゼイン、ホエイタンパク質など)、卵由来のタンパク質(卵白タンパク質、卵黄タンパク質、全卵タンパク質など))はアミノ酸スコアがグルテンよりも高いので、本発明のソフトビスケットは、これらのタンパク質を含むことが好ましい。グルテン以外のタンパク質は好ましくは、小麦以外に由来するタンパク質である。小麦以外に由来するタンパク質は、好ましくは、小麦以外の穀物由来タンパク質、大豆タンパク質または牛乳タンパク質である。
小麦以外の穀物由来のタンパク質の例としては、プロラミンおよびグルテリンが挙げられる。プロラミンは、植物に含まれる水不溶性タンパク質の総称であり、グルテリンは、植物に含まれ、希酸または希アルカリに溶けるタンパク質の総称である。穀物は一般的に、約10重量%のタンパク質を含む。穀物由来のタンパク質においては、プロラミンおよびグルテリンが主成分である。小麦のグルテリンは、グルテニンと呼ばれる。穀物由来のタンパク質においては一般に、リジンが制限アミノ酸である。小麦、大麦およびライ麦の総タンパク質のうち、プロラミンが約40重量%〜約50重量%を占め、グルテリンが約35重量%〜約40重量%を占めている。麦類のプロラミンは、グルテンおよびプロリンを多く含んでいる。麦類のプロラミンは、その由来する麦類によって、それぞれ、グリアジン、ホルダイン、セカリンと呼ばれる。トウモロコシおよびモロコシの総タンパク質のうち、プロラミンが約50重量%〜約60重量%を占め、グルテリンが約35重量%〜約40重量%を占める。トウモロコシ由来のプロラミンはゼインと呼ばれ、分子量によって6つにさらに分類される。イネはプロラミンをあまり含まず、グルテリンが総タンパク質のうちの約80重量%近くを占める。オーツ麦では、グロブリンが総タンパク質のうちの約70重量%〜80重量%を占める。オーツ麦のグロブリンは、豆類タンパク質の主成分であるグロブリンと類似している。小麦以外の穀物由来のタンパク質を含む材料の例としては、大麦、ライ麦、イネ、トウモロコシなどの種子の粉砕物(すなわち、穀粉)が挙げられる。穀物とは、本明細書中では、イネ科に属する植物種またはその種子をいう。穀物の概念には、豆類は含まれない。穀物の例としては、米、大麦、ライ麦、トウモロコシ、ソバ、アワ、キビ、ハトムギ、ヒエが挙げられる。穀物は、例えば、米粉、大麦粉、ライ麦粉、ソバ粉、コーンフラワー、コーングルテンミール、あわ粉、きび粉、はと麦粉、ひえ粉などとして配合され得る。なお、コーングルテンミールは、呼称の中に「グルテン」とあるが、実際はグルテンを含まない。コーングルテンミールは、非常に安価であるので、コスト的に有利である。
大豆タンパク質は、人体に対するその効果が米国食品医薬品局(FDA)によって認められており、1日約25g以上摂取すると心臓動脈系の疾患によいとされている。大豆タンパク質は、大豆種子に含まれる複数のタンパク質の総称であり、その主成分は、グリシニン(7Sグロブリンとも呼ばれる)ならびにα−コングリシニン、β−コングリシニンおよびγ−コングリシニン(これらは11Sグロブリンとも呼ばれる)である。これらの各種グリシニンは、全体として、大豆タンパク質の約50%を占める。グリシニンは、血清コレステロール値低下能を有するとされている。大豆タンパク質は、例えば、大豆粉末、豆乳粉末、おからパウダー、脱脂大豆粉末などとして配合され得る。大豆粉末は、乾燥大豆をまるごと粉末にしたものである。大豆粉末は通常、約30重量%〜約40重量%の大豆タンパク質を含む。豆乳粉末は、大豆もしくは脱脂大豆を水抽出して得られた豆乳を乾燥させたものである。豆乳粉末は通常、約55重量%〜約65重量%の大豆タンパク質を含む。おからパウダーは、豆腐を作る際に副産物として生じるおからを乾燥して粉末化したものである。おからパウダーは通常、約15重量%〜約25重量%の大豆タンパク質を含む。脱脂大豆粉末は、脱脂大豆を粉末化したものである。脱脂大豆粉末は通常、約40重量%〜約50重量%の大豆タンパク質を含む。
牛乳には約12〜14重量%の固形分が含まれ、そのうち約25〜30重量%がタンパク質、すなわち牛乳タンパク質である。牛乳タンパク質は、カゼインとホエイタンパク質とに大別される。カゼインは、牛乳を乳酸菌で発酵させたり、牛乳に酵素または酸を加えることによって沈殿するタンパク質成分である。ホエイタンパク質は、牛乳を乳酸菌で発酵させたり、牛乳に酵素または酸を加えたときに得られる上澄み液(ホエイという)に含まれるタンパク質成分である。カゼインは牛乳タンパク質のうち、約80重量%を占め、αs−カゼイン(約46重量%)、β−カゼイン(約34重量%)、κ−カゼイン(約12重量%)などから構成される。ホエイタンパク質は牛乳タンパク質のうち、約20重量%を占め、その主成分は、β−ラクトグロブリン(約50重量%)、α−ラクトアルブミン(約25重量%)であり、その他には血清アルブミン、免疫グロブリン、ラクトフェリンなどが含まれる。牛乳は通常、約3重量%〜約4.2重量%の牛乳タンパク質を含む。ホエイパウダーは、通常、約10重量%〜約15重量%のホエイタンパク質を含む。脱脂粉乳は、通常、約30重量%〜約40重量%の牛乳タンパク質を含む。牛乳タンパク質はカゼインとして添加されてもよく、ホエイタンパク質として添加されてもよく、またそれらの混合物として添加されてもよい。また、牛乳タンパク質は好ましくは、カゼイン、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、ホエイプロテイン、タンパク質濃縮ホエイパウダー、またはホエイタンパク質精製物(例えば、β−ラクトグロブリン精製物、α−ラクトアルブミン精製物または血清アルブミン精製物)として添加され、より好ましくは、カゼイン、加糖れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダーまたはホエイパウダーとして添加される。ホエイタンパク質は特に、大豆タンパク質よりもさらに優れたアミノ酸スコアを有するという点で好ましい。なお、これらの牛乳タンパク質とほぼ同等の性能または利点を発揮しさえすれば、牛乳タンパク質の代わりに他の動物由来の乳タンパク質を用いてもよい。
他の用いられ得る動物由来材料の例としては、牛、豚、鶏などの肉または卵に由来する動物性タンパク質の精製物および抽出物が挙げられる。動物由来材料が卵である場合、動物由来材料は、生卵、生卵白、生卵黄、乾燥全卵、乾燥卵白、乾燥卵黄などの、格別精製が施されていない材料であってもよい。動物由来材料は好ましくは乾燥全卵、乾燥卵白、乾燥卵黄またはゼラチンである。
本明細書中では、「小麦以外に由来するタンパク質」とは、小麦以外の植物、動物または微生物に由来するタンパク質をいう。
非グルテン系タンパク質を含む材料の配合量は、ソフトビスケットの生地中に配合しようとする、非グルテン系タンパク質の量に応じて適切に設定され得る。ソフトビスケットの生地中の非グルテン系タンパク質の所望される含有量は、上記の総タンパク質量の範囲内でグルテン系タンパク質の量を考慮して適切に設定される。好ましくは、約0.1重量%〜約18重量%であり、より好ましくは約1重量%〜約17重量%であり、より好ましくは約5重量%〜約16重量%である。好ましくは、ソフトビスケットの生地中の非グルテン系タンパク質として小麦以外に由来するタンパク質を含み、さらにより好ましくは、小麦以外の穀物由来タンパク質、大豆タンパク質またはホエイタンパク質を含む。本発明のソフトビスケットの生地中の、小麦以外に由来するタンパク質の含有量の合計は、好ましくは、約0.1重量%〜約15重量%である。本発明のソフトビスケットの生地中の、小麦以外の穀物由来タンパク質、大豆タンパク質およびホエイタンパク質の含有量の合計は、好ましくは、約0.1重量%〜約15重量%である。
非グルテン系タンパク質を含む材料として例えば、大豆粉末を用いる場合、大豆粉末の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約5重量%〜約50重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約15重量%〜約30重量%である。例えば、豆乳粉末を用いる場合、豆乳粉末の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約5重量%〜約50重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約15重量%〜約30重量%である。また、他の大豆タンパク質含有材料(例えば、脱脂大豆粉末)についても、同様の配合量で用いられ得る。複数種の大豆タンパク質含有材料を混合して使用する場合、複数種の大豆タンパク質含有材料の合計量が上記と同じ配合量の範囲に入るのであれば、どのような混合比で用いてもよい。例えば、ホエイパウダーを用いる場合、ホエイパウダーの配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約5重量%〜約50重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約15重量%〜約30重量%である。非グルテン系タンパク質を含む材料の配合量が多すぎる場合、これらの材料に特有の風味または臭いがしたり、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成型性が低下するといった問題が生じやすい。
本発明者らの研究によれば、ビスケットの牛乳耐性および牛乳とのなじみやすさなどの性能への寄与率の観点から考察すると、グルテン系タンパク質は、非グルテン系タンパク質のおよそ3倍から4倍の寄与率を有すると考えられる。従って、グルテン系タンパク質の配合量の3〜4倍と、非グルテン系タンパク質の配合量とを足し合わせて得られる数値が、ビスケットの牛乳耐性などの性能の重要な尺度となり得る。
具体的には、ソフトビスケットの生地中のグルテン系タンパク質含有量をx重量%とし、非グルテン系タンパク質の含有量をy重量%とした場合、計算式:
α = 3x+y
で計算される値(以下、便宜上「α値」という)、および
β = 4x+y
で計算される値(以下、便宜上「β値」という)が重要な尺度となり得る。
上記α値は、好ましくは16以上21以下であり、より好ましくは16.5以上20.5以下であり、さらにより好ましくは17以上20以下であり、最も好ましくは17.5以上19.5以下である。α値が大きすぎる場合には、ビスケットの牛乳とのなじみが低下しやすく、逆に、α値が小さすぎる場合には、ビスケットが牛乳中で形状を維持できる時間が短くなりやすい。このように好ましい範囲にα値が制御される実施形態において、yの下限は、好ましくは1であり、より好ましくは2であり、さらにより好ましくは3であり、特に好ましくは4であり、格別好ましくは5であり、最も好ましくは6である。yの上限は好ましくは17であり、より好ましくは16であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは14である。
上記β値は、好ましくは19以上27以下であり、より好ましくは19.5以上25以下であり、さらにより好ましくは20以上24以下であり、最も好ましくは20.5以上23以下である。α値が大きすぎる場合には、ビスケットの牛乳とのなじみが低下しやすく、逆に、α値が小さすぎる場合には、ビスケットが牛乳中で形状を維持できる時間が短くなりやすい。このように好ましい範囲にβ値が制御される実施形態において、yの下限は、好ましくは1であり、より好ましくは2であり、さらに好ましくは3であり、特に好ましくは4であり、格別好ましくは5であり、最も好ましくは6である。yの上限は好ましくは17であり、さらに好ましくは16であり、特に好ましくは15であり、最も好ましくは14である。
(3.油脂)
本発明のソフトビスケットの生地の原料としては、油脂も用いられ得る。本明細書中では、「油脂」とは、植物油脂、動物油脂およびそれらの加工品をいう。油脂としては、当該分野で市販される任意の油脂が使用され得る。油脂の例としては、ショートニング、マーガリン、バター、ラード、コーン油、オリーブオイル、綿実油、ナタネ油、ダイズ油、ヤシ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、サラダオイル、粉末油脂等の各種植物性および動物性の油脂が挙げられる。得られるソフトビスケットの風味および口溶けを向上させるために、必要に応じて1種、又は2種以上の油脂を選択して用いることができる。
油脂の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量のうちの、好ましくは約16重量%以上であり、より好ましくは約17重量%以上であり、さらに好ましくは約18重量%以上であり、さらにより好ましくは約19重量%以上であり、特に好ましくは約20重量%以上である。上限については、好ましくは約50重量%以下であり、より好ましくは約40重量%以下であり、さらに好ましくは約30重量%以下である。従来のソフトビスケットは、ハードビスケットよりも油脂配合量を多くすることが一般的であるが、本発明においては良好なソフトビスケットが得られる限り、必ずしも油脂配合量を多くしなければならない訳ではない。油脂の配合量が多すぎる場合、生地がゆるくなりすぎて成型性が低下したり、焼成後の形状がだれてしまったりといった問題が生じ易い。油脂の配合量が少なすぎる場合は、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成型性が低下したり、口溶けが悪かったり、粉っぽい風味が感じられたり、火通りが悪く焼成に長時間を要したりする可能性がある。通常、得られるソフトビスケットの食感は、油脂量が多いほどサクサクした軽い方向となる。得られるソフトビスケットの目的とする食感に応じて、油脂の配合量を設定することができる。
(4.糖類)
本発明のソフトビスケットの生地の原料としては、糖類もまた用いられ得る。本明細書中では、「糖類」とは、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコールおよび水飴をいう。本明細書中では、糖類の範疇には、三糖以上の澱粉分解物(例えば、デキストリン)および水溶性食物繊維(例えば、ポリデキストロース)などの甘味を呈さない多糖類は含まれない。糖類としては、当該分野で市販される任意の糖類が使用され得る。糖類の例としては、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、マルチトール、パラチニット;水飴などが挙げられる。目的とするソフトビスケットの甘味の程度、食感、焼色、膨化程度に伴う形状等を調整するために、必要に応じて1種、又は2種以上の糖類を選択して用いることができる。低甘味の糖類を選択して用いることにより、得られるソフトビスケットの食感および膨化程度を調整することが可能である。
糖類の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約5重量%〜約40重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約30重量%であり、さらに好ましくは約15重量%〜約25重量%である。糖類の配合量が多すぎる場合、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成型性が低下したり、焼成後の形状がだれてしまったりといった問題が生じやすい。糖類の配合量が少なすぎる場合は、粉っぽい風味が感じられたり、火通りが悪く焼成に長時間を要したり、焼成する際にバンド等への付着が悪く、そり等の形状変化が生じる可能性がある。
(5.食物繊維含有材料)
本発明のソフトビスケットの生地の原料としては、食物繊維含有材料も用いられ得る。本明細書中では、「食物繊維含有材料」とは、食物繊維を含有する食品材料をいう。「食物繊維」とは、食物中に含まれる繊維状物質をいい、食物繊維は、人間の消化酵素によって消化されない。食物繊維は、任意の食物繊維であり得、従って、食物繊維含有材料も任意の食物繊維含有材料であり得る。好ましくは、食物繊維含有材料は、食物繊維を約2重量%以上含み、より好ましくは約3重量%以上含み、さらに好ましくは約4重量%以上含み、特に好ましくは約5重量%以上含む。食物繊維含有材料中の食物繊維の量に上限はなく、任意に設定され得る。食物繊維含有材料は、純粋な食物繊維(すなわち、100%食物繊維)であってもよい。食物繊維含有材料中の食物繊維の量の上限は、例えば、約95重量%以下であり得、約90重量%以下であり得、約80重量%以下であり得、約70重量%以下であり得、約60重量%以下であり得、約50重量%以下であり得、約40重量%以下であり得、約30重量%以下であり得、約20重量%以下であり得、そして約10重量%以下であり得る。
食物繊維は、水への溶解のしやすさによって、水溶性食物繊維と水不溶性食物繊維とに分けられ得る。水溶性食物繊維の例としては、ポリデキストロース、イヌリン、難消化性デキストリン、ペクチン、グアーガムなどが挙げられる。水不溶性食物繊維の例としては、セルロース、リグニン、キチン、キトサンなどが挙げられる。
食物繊維は、人工的に製造されたものであっても、食物繊維を含有する材料から食物繊維画分を精製または濃縮したものであっても、食品形態そのままのものであってもよい。人工的に製造された食物繊維の例としては、ポリデキストロース、難消化性デキストリン、結晶セルロースなどが挙げられる。
食物繊維を含有する材料から食物繊維画分を精製または濃縮されることによって得られる食物繊維の例としては、イヌリン、ペクチン、グアーガム、リグニン、キチン、キトサン、セルロースなどが挙げられる。イヌリンを含む材料の例としては、キクイモ、ゴボウなどが挙げられる。ペクチンを含む材料の例としては、柑橘類などの各種果実が挙げられる。グアーガムを含む材料の例としては、マメ科植物であるグアーの種子が挙げられる。リグニンを含む材料の例としては、ココア、豆類、ふすまなどが挙げられる。キチンまたはキトサンを含む材料の例としては、カニ、エビなどの甲羅が挙げられる。セルロースを含む材料の例としては、おからパウダー、ふすま、大豆、ゴボウなどが挙げられる。ふすまは、穀粒を粉砕して穀粉を採った後に残る残渣であるが、ふすまは好ましくは、小麦ふすま、大麦ふすま、ライ麦ふすま、オーツ麦ふすまであり、より好ましくは小麦ふすまである。
食品形態そのままのものの例としては、野菜、果実、ココアパウダーなどが挙げられる。
食物繊維含有材料の配合量は、ソフトビスケットの生地中に配合しようとする、食物繊維の量に応じて適切に設定され得る。本発明のソフトビスケットの生地は、好ましくは、約1重量%〜約20重量%の、より好ましくは約2重量%〜約15重量%の、さらに好ましくは約5重量%〜約10重量%の、水不溶性食物繊維を含む。水不溶性食物繊維は、ソフトビスケットを牛乳中に浸漬した場合であっても水をほとんど吸収せず、膨潤もしないので、好ましい。本発明のソフトビスケットの生地中の水溶性食物繊維の含有量は、好ましくは約10重量%以下であり、より好ましくは約8重量%以下であり、さらにより好ましくは約6重量%以下であり、特に好ましくは約4重量%以下であり、最も好ましくは約3重量%以下である。水溶性食物繊維は、ソフトビスケットを牛乳中に浸漬した場合に水分を吸って膨潤し、ソフトビスケットを崩れやすくするので、余り多量に添加しないことが好ましい。
食物繊維含有材料として例えば、小麦ふすまを用いる場合、小麦ふすまは通常、約3重量%の水溶性食物繊維および約30重量%の水不溶性食物繊維を含むので、小麦ふすまの配合量は、ソフトビスケットの原料の合計量の、代表的には約5重量%〜約50重量%であり、より好ましくは約10重量%〜約40重量%であり、さらに好ましくは約15重量%〜約30重量%である。例えば、セルロース(100%純品)を用いる場合、セルロースの配合量は、ソフトビスケットの原料の合計量の、代表的には約1重量%〜約20重量%であり、より好ましくは約3重量%〜約15重量%であり、さらに好ましくは約5重量%〜約10重量%である。例えば、ポリデキストロースを用いる場合、ポリデキストロースの配合量は、ソフトビスケットの原料の合計量の、代表的には約0.1重量%〜約10重量%であり、より好ましくは約0.5重量%〜約5重量%であり、さらに好ましくは約1重量%〜約2重量%である。食物繊維含有材料の配合量が多すぎる場合、これらの材料に特有の風味または臭いがしたり、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成型性が低下するといった問題が生じやすい。
(6.他の材料)
最近の健康志向に合わせるため、本発明のソフトビスケットの生地の原料としてはまた、ビタミン、ミネラルといった栄養機能成分、ペプチド、ポリフェノール等の生理機能成分もまた用いられ得る。
ビタミン、ミネラル等の栄養機能成分は、現代人の食生活で不足しがちであるので、原料として使用すると、得られるソフトビスケットは、シリアル食品としてより好適なものとなる。ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンEおよび葉酸が挙げられる。本発明のソフトビスケットの原料としては、これらのビタミンのうちの少なくとも1種を用いることが好ましく、少なくとも2種を用いることがより好ましく、少なくとも3種を用いることがさらに好ましく、少なくとも4種を用いることがなお好ましく、少なくとも5種を用いることがとりわけ好ましく、少なくとも6種を用いることが特に好ましく、少なくとも7種を用いることが最も好ましい。ミネラルの例としては、カルシウム、鉄、亜鉛およびマグネシウムが挙げられる。本発明のソフトビスケットの原料としては、カルシウムまたは鉄を用いることが好ましく、カルシウムおよび鉄を用いることがさらに好ましい。カルシウムは、通常、カルシウム塩の形状でまたはカルシウム塩を多量に含む物質として用いられる。カルシウム塩の例としては、未焼成カルシウム、骨未焼成カルシウムが挙げられる。未焼成カルシウムの例としては、貝殻未焼成カルシウム、サンゴ未焼成カルシウム、真珠層未焼成カルシウム、卵殻未焼成カルシウム、ミルクカルシウムが挙げられる。卵殻カルシウムを用いることが好ましい。鉄は、通常、塩の形態で用いられる。鉄塩の例としては、塩化第二鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、グルコン酸第一鉄、三二酸化鉄、鉄クロロフィリンナトリウム、乳酸鉄、ピロリン酸第二鉄が挙げられる。ピロリン酸第二鉄を用いることが好ましい。
本発明のソフトビスケットの原料としては、通常ソフトビスケットの原料として用いられ得る、他の任意の原料もまた用いられ得る。このような他の材料の例としては、呈味原料、膨脹剤、乳化剤、クエン酸等の酸味料、香料等の添加物が挙げられる。
本発明でいう「呈味原料」とは、得られるソフトビスケットに特定の味を付与する目的で添加される食品素材をいう。呈味原料の例としては、ピーナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、カシューナッツ、栗、ごま等の種実類;チョコチップなどの菓子類;ニンジン、トマト、オニオン等の野菜類;イチゴ、オレンジ、レーズン、リンゴ、キウイ、パイナップル、梅、バナナ等の果実類;青海苔、昆布、わかめ等の藻類;コーヒー、紅茶、ココア、ビール、ワイン等の嗜好飲料類;食塩、コンソメ、醤油、ソース、カレー粉、こしょう、シナモン等の調味料香辛料類等が挙げられる。呈味原料の形態は、生、乾燥品、ペースト、ピューレ、粉末、塊状等の任意の形態であってよい。ソフトビスケットに目的とする風味を付与するために、必要に応じて1種、又は2種以上の呈味原料を選択して用いることができる。
呈味原料の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約0.1重量%〜約30重量%であり、より好ましくは約0.5重量%〜約20重量%であり、さらに好ましくは約1重量%〜約15重量%である。呈味原料の配合量が多すぎる場合、生地のまとまりまたは伸展性が悪く成型性が低下するといった問題が生じやすい。
本明細書では、「膨脹剤」とは、膨化菓子を膨化させる目的で添加される物質をいう。膨脹剤の例としては、例えば重曹、重炭安、ベーキングパウダー等が挙げられる。得られるソフトビスケットの膨化程度および食感を調整する目的で、必要に応じて1種、又は2種以上の膨脹剤を選択して用いることができる。本発明のソフトビスケットの場合、膨脹剤を必ずしも配合しなくて良いが、さらに膨化を大きくしたい場合、食感をより軽くしたい場合等、目的とする膨化程度、食感に応じて配合量を設定することができる。膨脹剤の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約3重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約1重量%である。膨脹剤の配合量が多すぎる場合、ソフトビスケットの生地に苦味を感じる場合がある。
乳化剤の例としては、例えば、レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。得られるソフトビスケットの食感を調整する場合、および成型時の油脂分離を抑制する等の目的で、必要に応じて1種、又は2種以上の乳化剤を選択して用いることができる。乳化剤の種類およびHLBによって多少異なるが、通常、乳化剤の配合量が多いほど、得られるソフトビスケットの食感は軽いサクサクとした方向となるため、ソフトビスケットの食感がガリガリして硬すぎる場合等、目的とする食感に応じて配合量を設定することができる。乳化剤の配合量は、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約1重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%である。乳化剤の配合量が多すぎる場合、ソフトビスケットに苦味を感じる場合がある。
本明細書では、「酸味料」とは、ソフトビスケットに酸味を付与する目的で添加される物質をいう。酸味料としては、当該分野で用いられ得る任意の酸味料が用いられ得る。目的とする酸味の程度に応じて酸味料の配合量を設定することができる。酸味料の配合量は好ましくは、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約1重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約0.5重量%である。酸味剤の配合量が多すぎる場合、ソフトビスケットに過度の酸味を感じる場合がある。
本明細書では、「香料」とは、ソフトビスケットに香りを付与する目的で添加される物質をいう。香料としては、当該分野で用いられ得る任意の香料が用いられ得る。目的とする香りに応じて香料の配合量を設定することができる。香料の配合量は好ましくは、ソフトビスケットの生地の原料の合計量の、代表的には約0.01重量%〜約5重量%であり、より好ましくは約0.05重量%〜約2重量%であり、さらに好ましくは約0.1重量%〜約1重量%である。香料の配合量が多すぎる場合、ソフトビスケットに苦味を感じる場合がある。
<本発明のソフトビスケットの製造方法>
従来技術においては、一般に、ソフトビスケットとは、薄力粉のみを用いるビスケットのことを意味すると説明定義される場合もあるが、本明細書においては、そのような従来技術の定義には拘束されず、上記ソフトビスケットの製造方法により製造される任意のビスケットをソフトビスケットという。
上記ソフトビスケットの製造方法で製造可能な配合としては、中力粉または強力粉が多すぎず、生地の粘弾性が上がり過ぎないことが必要である。生地の粘弾性は例えば、後述する実施例と同程度にするべきである。
本発明のソフトビスケットは、グルテン系タンパク質含有材料、油脂、糖類および他の材料を混合して上述したビスケット生地を得る工程、ロータリーモールダー、ワイヤーカッター、デポジッター、ステンシルモールダーまたはソフトカッティングによって該ビスケット生地を成型する工程、および該成型されたビスケット生地を焼成してソフトビスケットを得る工程を包含する方法によって製造される。
この方法ではまず、グルテン系タンパク質含有材料、油脂、糖類および他の材料に、必要な場合水を加えて混合し、ビスケット生地を作る。水の配合量は、生地を適切な状態にする目的で、呈味原料由来の水分量とは別に添加する量をいう。すなわち、牛乳、生卵等の水分量の多い呈味原料を多く配合する場合は、別途水を配合する必要がない場合がある。チーズパウダー、ココアパウダー等の水分量の少ない呈味原料を多く配合する場合は、水の配合量が増加する。水の配合量が多すぎる場合、生地がべたついて成型性が低下したり、焼成時のだれが大きかったり、必要以上に膨化したり、目的とする形状または食感が得られないといった問題が生じやすい。水の配合量が少なすぎる場合は、生地のまとまりまたは伸展性が悪くなって成型性が低下したり、口溶けが悪かったり、粉っぽい風味が生じたりという問題が生じやすい。
次いで、ロータリーモールダー、ワイヤーカッター、デポジッター、ステンシルモールダーまたはソフトカッティングによってこのビスケット生地が成型される。
ロータリーモールダーによる成型方法は、代表的には、ビスケット型が設けられている回転ロールと、このロールと逆向きに回転してこのロールと生地を介して接するロールとの間にビスケット生地が供給されることによってビスケット生地が型込めされ、型込め後の回転ロールとコンベヤベルトなどの移送手段とを接触させることによって、型込めされたビスケット生地がこの移送手段に剥がしとられ、成型されたビスケット生地が得られる方法である。ロータリーモールダーは、ロータリーモールド方式ともいわれる。回転ロールに設けられるビスケット型は、任意の形状であり得るが、好ましくは、型から抜けやすいデザイン、サイズおよび厚みである。型から抜けやすいデザインの例としては、円形、三角形、四角形、ハート形、菊花形、桜形などの比較的単純な形状が挙げられる。
ワイヤーカッターによる成型方法は、口金などから押し出した生地を細い糸状の金属で切断することにより種々の形状を得る方法である。ワイヤーカッターは、ワイヤーカット方式ともいわれる。ワイヤーカッターで連続的に成型生地を得るためには、生地がぼそぼそではなく適度な柔らかさを有していることと、ワイヤーで切った成型生地の厚みが一定以上あることが必要となる。食物繊維またはタンパク質を大量に強化すると、生地がぼそぼそになってしまったり、または硬くなりすぎて、ワイヤーカットでは連続的に成型出来なくなる場合がある。このような場合、油脂を大量に配合することによって成型可能となるので、他の方法によって成型する場合と比較して油脂の量を増加させることが好ましい。
デポジッターによる成型方法は、絞り口金などからビスケット生地を吐出させ、バンド、展板などの上で直接成型する方法である。デポジッターは、絞り出し方式ともいわれる。
ステンシルモールダーによる成型方法は、バンド上で生地を擦り込みながら成形するもので、水分の多い生地しか使用出来ない。ステンシルモールダーには外側と内側に2つの円筒があり、外側は目的の形状の穴が開いた円筒であり、内側にも一部穴が開いている。外側モルダ−型の入口側に生地を対流させて流しこむ。外側が回転して型が下に来たときに、外側の穴と内側の穴がつながって空気が入り、生地がバンド上に落ち、目的の成型生地が得られるという方式である。ステンシルモールダーはステンシル方式、もしくは擦り込み方式などともいわれる。
ソフトカッティング法は、ソフトに調製されたビスケット生地を折りたたむことなく、そのまま展延してカッターで抜いて成型する方法である。
本発明の方法においては、ソフトビスケットの製法として特にロータリーモールダーに限られるものではなく、ワイヤーカット、絞り出し、ステンシルモールダー、ソフトカッティングなどの任意の方法を用い得る。多量の食物繊維または有益なタンパク質を配合し、さらに多すぎず少なすぎない適度な油脂量を配合しながら、牛乳耐性を持つビスケットを生産性を維持しながら作るには、ロータリーモールダーが最も好適である。
本発明の方法において、ロータリーモールダー、ワイヤーカッター、デポジッター、ステンシルモールダーまたはソフトカッティングのいずれを用いて成型する場合であっても、本発明のソフトビスケットの形状としては、任意の形状を選択することができる。例えば、薄い板状、円錐状、棒状、球状などにすることができる。好ましくは、薄い板状である。より好ましくは、平坦面の形状が、円形、三角形、四角形、ハート形、菊花形、桜形などの比較的単純な形状である。
ソフトビスケットが薄い板状に焼成されると、食べやすく、火通りが良く、複雑な形状に比べて成型ストレスがかかりにくく、生地を大きく傷めない(生地を傷めると、焼成後のだれやソフトすぎる食感の原因となる)ので、ソフトビスケットの生地は、薄い板状に成型されることが好ましい。薄い板状に成型する場合、焼成後のソフトビスケットの厚み(好ましくは、最も厚い部分の厚み)が好ましくは約2mm〜約20mm、より好ましくは約2.5mm〜約18mm、さらに好ましくは約3mm〜約15mm、特に好ましくは約4mm〜約12mmになるように成型することが好ましい。
次いで、この成型されたビスケット生地は、当該分野で公知の任意の焼成条件および任意の方法で焼成されて、本発明のソフトビスケットが得られる。焼成のためには、例えば固定オーブン、連続オーブン、ダイレクトオーブン、熱風循環オーブン等いずれも使用可能である。成型済み生地は、必要に応じて、スチールベルト、ヘビーメッシュ、ライトメッシュ等を任意に用いて焼成され得る。焼成時間は従来のビスケット同様、成型済み生地の大きさによって異なるが、通常120〜300℃の範囲において3〜30分である。焼成後、ソフトビスケットの中に多量の水分が残存していると、ソフトビスケットの食感がねちゃつく、口溶けが悪い、粉っぽい等の状態になることがある。そのため、製品が焦げない範囲で充分に水分を飛散させることが重要である。
なお、本明細書中では、「水分量」とは、ソフトビスケットに含まれる水分の、ソフトビスケット全体の重量に対する割合をいう。例えば、100gのソフトビスケット中に1gの水分が含まれている場合、そのソフトビスケットの水分量は約1重量%である。水分量の測定方法は、当業者に公知である。例えば、赤外水分計を用い、まず、粉砕したソフトビスケットの重量を測定し、次いで粉砕したソフトビスケットを105℃にて10分間保持し、10分間保持後のソフトビスケットの重量を測定し、保持前と比較して10分間の保持後に減少した重量から水分量を決定し得る。焼成直後のソフトビスケット中の水分量は、好ましくは約5重量%以下、より好ましくは約3重量%以下、さらに好ましくは約2重量%以下、特に好ましくは約1重量%以下である。焼成直後のソフトビスケット中の水分量が多すぎる場合、得られるソフトビスケットの食感が柔らかすぎたり、口溶けが悪かったりといった場合がある。
また、焼成後、ソフトビスケットは空気中の水分を吸収する場合がある。保存吸湿後の水分が多すぎる場合、ソフトビスケットの食感が湿ったような食感となりやすい。そのため、焼成後のソフトビスケットは、空気中の水分を吸収しにくい形態で保存されることが好ましい。例えば、焼成後のソフトビスケットは、密閉されて保存されることが好ましい。また密閉保存する場合、吸湿剤とともに保存、または不活性ガス(例えば、窒素)などを充填した密閉容器中に保存等してもよい。ただし、本発明のソフトビスケットは、水分を吸収しすぎない限り、開放された容器中で保存されてもよい。
本明細書中においては、喫食のために包装が解かれ、牛乳などの液体に浸漬していない状態のソフトビスケットの水分量を、ソフトビスケットの水分量という。焼成直後に喫食する場合は、焼成直後のソフトビスケットの水分量を、ソフトビスケットの水分量という。焼成した後、一定期間、保存した後、喫食する場合には、上述したようなさまざまな方法で保存された後、保存状態が解かれ、牛乳などの液体に浸漬していない状態のソフトビスケットの水分量を、ソフトビスケットの水分量という。
<本発明のソフトビスケットを含む食品>
本発明の食品は、本発明のソフトビスケットと流動性乳製品とを含む。流動性乳製品とは、約20℃で流動可能な乳製品をいう。流動性乳製品の例としては、牛乳、加工乳、ヨーグルトなどの発酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料などが挙げられる。本発明の食品は、本発明のソフトビスケットと流動性乳製品とを混合することによって得られる。本発明の食品においては、本発明のソフトビスケットと流動性乳製品とは均一に混ざっていてもよく、混ざっていなくてもよい。本発明のソフトビスケットの上に流動性乳製品をかけた状態であっても、流動性乳製品の上に本発明のソフトビスケットをかけた状態であってもよい。本発明の食品において、本発明のソフトビスケットと流動性乳製品とは、任意の比率で存在し得る。好ましくは、本発明のソフトビスケットと流動性乳製品との比率(本発明のソフトビスケットの体積:流動性乳製品の体積)は、1:約0.1〜約10であり、より好ましくは1:約0.2〜約5であり、さらに好ましくは1:約0.5〜1である。
<本発明のソフトビスケットの喫食方法>
本発明のソフトビスケットは、そのまま喫食してもよく、上記のような流動性乳製品と混合してから喫食してもよい。
本発明のソフトビスケットは、牛乳耐性を有しかつ牛乳との適度な馴染みを有する。本明細書中では、「牛乳耐性を有する」とは、牛乳に5分間浸漬させた場合、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分(一般的には中央部)に牛乳が染み込んでいない部分が存在することをいう。なお、「浸漬させる」とは、ソフトビスケット全体が牛乳中に沈んでいる場合だけでなく、ソフトビスケットが牛乳の表面に浮かんでいる場合も包含し、ソフトビスケットと牛乳とが持続して接触していればよい。好ましくは、本発明のソフトビスケットは、厚さが約3mm〜約5mm程度であっても、牛乳に5分間浸漬させた後に、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分に牛乳が染み込んでいない部分が存在し、より好ましくは10分間浸漬させた後に、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分に、牛乳が染み込んでいない部分が存在する。好ましくは、牛乳に5分間浸漬させた後の、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の、牛乳が染み込んでいない部分の厚さは、ソフトビスケットの厚さの約5分の1以上であり、より好ましくは約4分の1以上であり、さらに好ましくは約3分の1以上であり、最も好ましくは約2分の1以上である。本発明のソフトビスケットが牛乳耐性を有するか否かは、本発明のソフトビスケットを牛乳に浸漬し、所定の時間(例えば、5分間)の経過後にソフトビスケットを牛乳から取り出し、このソフトビスケットを割って、ソフトビスケット中への牛乳の染み込み具合を確認することによって判定できる。ソフトビスケット中に牛乳が染み込んでいる部分と染み込んでいない部分とを見分けるのは、当業者であれば容易に実施し得る。ソフトビスケットの牛乳耐性を判定する際の牛乳の温度は、任意の温度であり得るが、好ましくは約1℃以上80℃以下であり、より好ましくは約1℃以上40℃以下であり、さらに好ましくは約1℃以上30℃以下であり、特に好ましくは約5℃以上20℃以下であり、最も好ましくは約10℃以上約15℃以下である。本明細書中では、「適度な馴染みを有する」とは、牛乳に5分間浸漬させた後に、ソフトビスケットの外縁部に牛乳が染み込んで牛乳と一体感を有する部分が存在することをいう。
以下の実施例および比較例によって本発明を例示するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
以下の実施例および比較例において、以下の材料は、それぞれ、以下から購入した以下の商品名のものを用いた:薄力粉、市販の薄力粉;強力粉、市販の強力粉;豆乳粉末、不二製油製のソヤフィット2000;おからパウダー、(株)みすずコーポレーション製のビーンフラワー#300;ホエイタンパク質、日本新薬(株)社製のエンラクトMM(この商品は、ホエイタンパク質を78.4重量%含む);コーングルテンミール、加藤化学(株)製のグルテンミールイエロー;粉糖、市販の上白糖を微粉砕したもの;ショートニング、植物性の市販品;結晶セルロース、旭化成社製のアビセルFD101;ポリデキストロース、ダニスコ社製のライテスIII;食塩、日本たばこ(株)製の食塩;膨脹剤、市販品の炭酸アンモニウム。
使用した薄力粉、強力粉、豆乳粉末、おからパウダー、ホエイタンパク質およびコーングルテンミール中の総タンパク質含有量を、平成11年4月26日衛新第13号にて定められた窒素定量換算法によって測定したところ、それぞれ、8.3重量%、12.1重量%、58.9重量%、20.7重量%、78.4重量%および62.9重量%であった。使用した材料のうち、これら以外の材料は、タンパク質を含まない。使用した薄力粉および強力粉中のグルテン系タンパク質含有量を、小麦粉ドウを水洗してグルテン以外のタンパク質成分を除去することによってグルテン系タンパク質を取り出す方法によって分析した。すなわち、小麦粉1重量部に対して水を約0.6〜0.7重量部を加え、捏ねて塊を作った後に、この塊を密閉容器もしくは水中で30分ねかした後、水中で澱粉乳が出なくなるまで揉み洗いし、弾力のある塊を得た。この水洗後に得られた弾力のある塊について、固形分量およびタンパク質含量を分析(分析方法は前述)し、その値をグルテン系タンパク質含有量とした。その結果、それぞれ、7.1重量%および10.3重量%であった。使用した材料のうち、これら以外の材料は、グルテン系タンパク質を含まない。
使用した薄力粉、強力粉、豆乳粉末、おからパウダー、ホエイタンパク質、コーングルテンミール、セルロースおよびポリデキストロース中の総食物繊維含有量を平成11年4月26日衛新第13号にて定められた酵素−重量法および酵素−HPLC法によって測定した。詳細には、酵素−重量法によって不溶性食物繊維量および高分子量の水溶性水溶性食物繊維量を測定し、そして酵素−HPLC法によって低分子量の水溶性食物繊維量を測定し、このようにして得られた不溶性食物繊維量と高分子量の水溶性水溶性食物繊維量と低分子量の水溶性食物繊維量との総和を総食物繊維含有量とした。その結果、それぞれ、2.5重量%、2.7重量%、11.3重量%、47.2重量%、0重量%、1.0重量%、97.1重量%および52.5量%であった。使用した材料のうち、これら以外の材料は、食物繊維を含まない。また、このようにして酵素−重量法によって測定された、これらの材料中の不溶性食物繊維含有量は、それぞれ、2.5重量%、2.7重量%、1.6重量%、45.7重量%、0重量%、0重量%、97.1重量%および0重量%であった。使用した材料のうち、これら以外の材料は、不溶性食物繊維を含まない。
(実施例1:強力粉および大豆タンパク質を使用し、ロータリーモールダーで成型したソフトビスケット)
グルテン系タンパク質含有材料として、ソフトビスケットの常法であるシュガーバッター法を用い、表1の重量割合でショートニングと粉糖でクリームを作り、その後強力粉、大豆粉、セルロースを加えて軽く混合した後、ポリデキストロース、食塩および膨脹剤を水に溶解したものを徐々に加えて、ビスケット生地を得た。得られた生地は、通常のソフトビスケットの生地と同程度の、粘弾性の少ない状態であった。ビスケット生地をロータリーモールダー(椎野工業所(株)製;商品名 FB−800型)で直径22mm、厚さ3.5mmのコイン状に成型し、固定オーブンを用いて180℃で8分間焼成し残存水分量1重量%にした。得られたソフトビスケットは直径25mm、厚さ4.5mmの、中央部が周辺部よりも若干隆起したコイン状を呈していた。そのビスケットの切断面には、ハードビスケットに見られるような層状構造はなく、また、そのまま食したときの食感は通常のソフトビスケットと同様の、サクサクとショートネスに富んだ食感であり、口溶けも良好であったので、一般にいうソフトビスケットに分類されると判断された。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量と、各材料の使用量とから、得られたソフトビスケットの総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を算出した。結果を表2に示す。
(比較例1:薄力粉および大豆タンパク質を使用し、ロータリーモールダーで成型したソフトビスケット)
強力粉の代わりに薄力粉を使用したこと以外は実施例1と同様にしてソフトビスケットを得た。使用した材料の配合を表1に示す。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を、実施例1と同様にして算出した。結果を表2に示す。強力粉の代わりに薄力粉を使用したため、ソフトビスケット中の総タンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中の総タンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量と比較してかなり少なかった。
(比較例2A:強力粉および大豆タンパク質を使用し、ソフトビスケットの製法でのビスケット製造テスト)
強力粉の配合量を増やし、ショートニングの配合量を減らしたこと以外は、実施例1と同様にして、ソフトビスケットを製造しようと試みた。しかし、生地の弾性が強すぎ、ロータリーモールダーで成型することができず、ソフトビスケットを製造することができなかった。
(比較例2B:強力粉および大豆タンパク質を使用し、ハードビスケットの製法で成型したハードビスケット)
強力粉の配合量を増やし、ショートニングの配合量を減らし、ハードビスケットの常法に従って、表1の重量割合で強力粉と大豆粉、セルロースにポリデキストロース、食塩および膨脹剤、砂糖を水に溶解したものを加えてよく混合した後、ショートニングを加えて混合し、ビスケット生地を得た。そしてロータリーモールダーを使用せずにラミネーターを使用して積層し、生地を厚さ3.5mmに圧延した後、レシプロカッターでスタンピングにより直径25mmのコイン状に切り出して成型し、焼成中に生地が過度に膨らまないように生地に小さな穴を複数開けたこと以外は実施例1と同様の条件で焼成してハードビスケットを得た。ラミネーターで積層後圧延された生地は、通常のハードビスケットの生地と同程度に、粘弾性のある状態であった。得られたハードビスケットは、表面に複数の穴を有し、表面に穴があることを除けば、表面はほぼ平滑であり、割ると、組織が層状のほぼ規則的な状態になっており、従来のハードビスケットと同様の外観を呈していた。そしてそのビスケットをそのまま食した際の食感は、通常のハードビスケットと同様の、硬い食感であった。使用した材料の配合を表1に示す。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を、実施例1と同様にして算出した。結果を表2に示す。強力粉の配合量を増やしたため、ハードビスケット中の総タンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中の総タンパク質含有量およびグルテン系タンパク質含有量と比較してかなり多かった。
(実施例2:薄力粉および大豆タンパク質を使用し、ロータリーモールダーで成型したソフトビスケット)
強力粉の代わりに薄力粉を使用し、薄力粉の配合量を減らし、豆乳粉末の配合量を増やしたこと以外は実施例1と同様にしてソフトビスケットを得た。ビスケットの生地は、通常のソフトビスケットの生地と同程度の、粘弾性の少ない状態であった。焼成して得られたビスケットをそのまま食した際の食感は、通常のソフトビスケットと同様のサクサクした食感であった。また、ビスケットは、切断面には、ハードビスケットに見られるような層状構造はなく、また、食感は通常のソフトビスケットと同様の、サクサクとショートネスに富んだ食感であり、口溶けも良好であったので、一般にいうソフトビスケットに分類されると判断された。使用した材料の配合を表1に示す。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を、実施例1と同様にして算出した。結果を表2に示す。強力粉の代わりに薄力粉を使用したが、豆乳粉末の配合量を増やしたため、得られたソフトビスケット中の総タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中の総タンパク質含有量よりも多く、そして得られたソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量と比較して少なかった。
(実施例3:薄力粉およびホエイタンパク質を使用し、ロータリーモールダーで成型したソフトビスケット)
豆乳粉末の代わりにホエイタンパク質を使用したこと以外は実施例2と同様にしてソフトビスケットを得た。また、ビスケットは、切断面には、ハードビスケットに見られるような層状構造はなく、また、食感は通常のソフトビスケットと同様の、サクサクとショートネスに富んだ食感であり、口溶けも良好であったので、一般にいうソフトビスケットに分類されると判断された。使用した材料の配合を表1に示す。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を、実施例1と同様にして算出した。結果を表2に示す。強力粉の代わりに薄力粉を使用したが、ホエイタンパク質の配合量を増やしたため、得られたソフトビスケット中の総タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中の総タンパク質含有量よりも多く、そして得られたソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量と比較して少なかった。
(実施例4:薄力粉および穀物由来のタンパク質を使用し、ロータリーモールダーで成型したソフトビスケット)
豆乳粉末の代わりに穀物由来のタンパク質を使用したこと以外は実施例2と同様にしてソフトビスケットを得た。ビスケットの生地は、通常のソフトビスケットの生地と同程度の、粘弾性の少ない状態であった。焼成して得られたビスケットをそのまま食した際の食感は、通常のソフトビスケットと同様のサクサクした食感であった。また、ビスケットは、切断面には、ハードビスケットに見られるような層状構造はなく、また、食感は通常のソフトビスケットと同様の、サクサクとショートネスに富んだ食感であり、口溶けも良好であったので、一般にいうソフトビスケットに分類されると判断された。使用した材料の配合を表1に示す。
使用した各材料に含まれる総タンパク質含有量、小麦由来タンパク質含有量、グルテン系タンパク質含有量および食物繊維量を、実施例1と同様にして算出した。結果を表2に示す。強力粉の代わりに薄力粉を使用したが、穀物由来のタンパク質の配合量を増やしたため、得られたソフトビスケット中の総タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中の総タンパク質含有量よりも多く、そして得られたソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量は、実施例1のソフトビスケット中のグルテン系タンパク質含有量と比較して少なかった。
(実施例および比較例のビスケットの評価)
実施例1〜4および比較例1〜3のビスケットのそのままでの食感を、5人の熟練した製菓業従事者によって官能評価した。これらのビスケット(100重量部)に牛乳(400重量部)をかけて放置し、5分後(浸漬5分後という)および10分後(浸漬10分後という)にビスケットを取り出し、ビスケットを割り、断面を観察することによって、これらのビスケットへの牛乳の染み込み具合を確認した。これらのビスケットに牛乳をかけたとき、いずれのビスケットも、牛乳の表面付近に浮かんでいたがそのまま放置した。また、浸漬5分後および10分後のソフトビスケットの食感を、5人の熟練した製菓業従事者によって官能評価した。
結果を以下の表3に示す。
実施例1のソフトビスケットは、そのまま食べても、牛乳に浸漬しても、良好な風味、食感を示した。牛乳に浸漬して10分間たっても、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の中央部までは牛乳が染み込んでいなかった。このことから、実施例1のソフトビスケットは、通常のビスケットとしてもシリアル食品としても優良な品質を持つことが示された。
比較例1のソフトビスケットは、そのまま食べた場合は良好な風味、食感を示したが、牛乳に浸漬した場合は短時間で型崩れし、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の中央部まで牛乳が染み込んでいた。このことから、比較例1のソフトビスケットは、シリアル食品としては適していないことが示された。
比較例2Bのハードビスケットは、そのまま食べた場合は、風味は問題なかったが、食感がかなり硬いものとなった。また、シート状にするのはかなり困難であり、製造効率が極めて低かった。牛乳に浸漬した場合、ハードビスケットと牛乳とのなじみが極めて悪く、一体感がなく、別のものを食べているようであった。このことから、ハードビスケットは、シリアル食品としては適していないことが示された。
実施例2のソフトビスケットは、そのまま食べても、牛乳に浸漬しても良好な風味、食感を示した。牛乳に浸漬して10分間たっても、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の中央部までは牛乳が染み込んでいなかった。このことから、通常のビスケットとしてもシリアル食品としても優良な品質を持つことを示した。
実施例3のソフトビスケットは、そのまま食べても、牛乳に浸漬しても良好な風味、食感を示した。牛乳に浸漬して10分間たっても、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の中央部までは牛乳が染み込んでいなかった。このことから、通常のビスケットとしてもシリアル食品としても優良な品質を持つことを示した。
実施例4のソフトビスケットは、そのまま食べても、牛乳に浸漬しても良好な風味、食感を示した。牛乳に浸漬して10分間たっても、ソフトビスケットの厚みの一番厚い部分の中央部までは牛乳が染み込んでいなかった。このことから、通常のビスケットとしてもシリアル食品としても優良な品質を持つことを示した。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。