JP4422044B2 - 耐火物 - Google Patents

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本発明は、製造過程において高温での焼成を必要とするセラミックス製品やセラミック粉体等を焼成する際に、それら被焼成物を載置したり収容したりするために使用される耐火物に関する。
製造過程において高温での焼成を必要とする電子部品等のセラミックス製品の焼成や、粉体合成におけるセラミック粉体の高温焼成には、焼成が行われている間、それら被焼成物を載置したり収容したりするための耐火物が必要となる。このような目的で使用される耐火物は、高温環境下における機械的強度に加え、被焼成物との反応性が低く、焼成時に被焼成物と化学反応を起こさないような化学的安定性が求められる。これら要求される特性を単一の材料で実現するのは非常に困難であるため、通常は、SiC等の機械的強度に優れた材質からなる基材の表面に、Al23やZrO2等の化学的安定性が高い材質からなる皮膜をコーティングした層構造の耐火物が使用されている。
しかしながら、例えばSiC質の基材の表面にAl23やZrO2の皮膜を直接コーティングすると、基材と皮膜との熱膨張差が主な原因となって、短期間の使用で皮膜に亀裂が生じたり、皮膜が剥離するなどの不具合が生じやすい。
そこで、基材と表面の皮膜との間に、両者の中間の熱膨張率を有するような中間層を形成して、基材と表面の皮膜との熱膨張差による応力を緩和し、前記のような不具合を解消した耐火物も開発されている。例えば、特許文献1には、3Al23・2SiO2に外率で3〜20重量%のAlを混合した原料を、SiC質の基材の表面に溶射して中間層を形成し、更にその表面にAl23を溶射して表層を形成した耐火物(焼成用道具材)が開示されている。また、特許文献2には、SiC質の基材の表面に、金属Si、Si窒化物及びSi酸化物を組み合わせたSi系サーメットからなる中間層を形成し、更にその表面にZrO2含有セラミックスからなる表層を形成した耐火物(SiC質部材)が開示されている。
特開平11−314984号公報 特開2003−313077号公報
しかし、特許文献1や特許文献2に開示された耐火物における中間層には、溶射による中間層形成の際に基材に対する付着力を向上させる等の目的で、Alや金属Siが化合物ではなく単体の状態で混合されているため、これら特許文献に記載の耐火物は、基本的に、中間層に含まれるAlやSiの融点を超えるような温度領域では使用することができない。すなわち、中間層にAlを含む特許文献1に記載の耐火物は660℃程度が、また、中間層に金属Siを含む特許文献2に記載の耐火物は1400℃程度がそれぞれ使用限界温度ということになる。更に、特許文献1に記載の耐火物は、中間層に3Al23・2SiO2のような酸化物系の原料を使用しているため熱膨張率が大きく、基材から剥離しやすい。
セラミックス部品の焼成などでは、1400℃以上の温度での焼成を要する場合も多く、そのような用途には特許文献1や特許文献2に記載の耐火物のような使用限界温度が低いものは使用できないため、従来は全体がAl23やZrO2からなる耐火物を使用してきたが、機械的強度が不十分で破損しやすいという欠点があり、前記のような層構造の耐火物を、1400℃以上の温度領域での焼成にも対応できるようにすることが強く望まれている。
本発明は、このような従来の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、基材、中間層及び表層を有する層構造の耐火物であって、1400℃以上の温度領域でも使用可能なものを提供することにある。
本発明によれば、セラミックスからなる基材の表面に、中間層としてケイ素化合物又はケイ素化合物とセラミックス粉体との混合物からなる皮膜を形成し、更にその表面に、表層として前記基材とは組成の異なるセラミックスからなる皮膜を形成してなる耐火物、が提供される。
本発明の耐火物は、基材と表層と間に形成される中間層に、金属Siを化合物の形態で含ませたことにより、1400℃以上の温度領域でも使用することができる。
前記のとおり、本発明の耐火物は、セラミックスからなる基材の表面に、中間層としてケイ素化合物又はケイ素化合物とセラミックス粉体との混合物からなる皮膜を形成し、更にその表面に、表層として前記基材とは組成の異なるセラミックスからなる皮膜を形成してなるものであり、特にその特徴的な構成として、中間層を構成する金属Siが化合物の形態で含まれている。
このように、中間層を構成する金属Siを単体ではなく、より融点の高いケイ素化合物の形態で使用することにより、前記従来の層構造の耐火物では使用困難であった1400℃以上の温度領域においても、当該中間層を介した基材と表層との良好な密着性を維持することが可能となる。
本発明において、中間層を構成するケイ素化合物としては、TiSi2、ZrSi2、TaSi2、NbSi2、CrSi2、WSi2及びMoSi2よりなる群から選ばれる1種以上のケイ素化合物が好ましい。これらのケイ素化合物は、下表に示すように何れも金属Siの融点を超える高い融点を有する。
Figure 0004422044
なお、中間層は、このようなケイ素化合物のみで構成された皮膜であってもよいが、ケイ素化合物とセラミックス粉体との混合物からなる皮膜とすることもできる。この場合のセラミックス粉体の種類は特に限定されるものではなく、基材や表層の材質等を考慮して適宜決定すればよいが、耐熱性や密着性、あるいは溶射等による皮膜形成の容易さ等の観点から、Al23、SiO2、SiC、Si34及びTiBよりなる群から選ばれる1種以上のセラミックスの粉体を使用することが好ましい。中間層におけるセラミックス粉体の比率としては、70質量%以下が好ましく、50質量%以下が更に好ましい。セラミックス粉体の比率が70質量%を超えると、基材に対して十分な密着性を得ることが難しくなる。
基材の材質としては、1400℃以上の耐熱性を有するセラミックスであることが好ましい。本発明の耐火物が1400℃以上の温度領域で使用可能なものであるためには、中間層だけでなく、基材も1400℃以上の耐熱性を有する必要があるからである。ここで、「1400℃以上の耐熱性を有する」とは、具体的には、1400℃以上の温度で変形などの支障を生じることなく工業的に使用できるものであることを意味する。
このような耐熱性を持ったセラミックスとしては、例えば、酸化物系セラミックスでは、Al23、3Al23・2SiO2等が、非酸化物系セラミックスでは、SiC、窒化珪素結合SiC(SiC−Si34)、再結晶SiC等が好ましいものとして挙げられる。なお、SiC−Si34とは、SiCを主相とし、Si34を副相として含むセラミックスである。基材の表面は、中間層との密着性を向上させるため、必要に応じて、サンドブラスト等により適当な表面粗さに粗面化してもよい。
表層は、基材とは組成の異なるセラミックスからなる皮膜であり、具体的な組成(材質)は、この表層と接することになる被焼成体の材質を考慮した上で決定される。すなわち、被焼成体との反応性が低く、被焼成体と接した状態で焼成が行われても、被焼成体とほとんど反応しないようなものを選択する。例えば、Al23、MgO、ZrO2、スピネル等は、化学的安定性が高く、種々の被焼成体に対して反応性が低いため好適に使用できる。
基材の表面に中間層となる皮膜を形成する方法は特に限定されるものではなく、例えば、溶射やスプレーコートにより形成することができるが、密着性や皮膜形成の容易さといった観点から、特に溶射により形成することが好ましい。なお、中間層は、その表面粗さが、1〜20μm(Ra)であることが好ましい。中間層の表面粗さが1μm未満であったり、20μmを超えていたりする場合には、その表面に形成される表層の密着性が不十分となり、剥離しやすくなる。中間層の表面粗さは、中間層に使用する原料の粒度や、溶射等により中間層を形成する際の、原料の吹き付け条件等により制御することができる。中間層の表面に表層となる皮膜を形成する方法についても特に限定されるものではなく、中間層と同様に溶射やスプレーコート等により形成することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜35、比較例1及び2)
基材、中間層及び表層の材質、中間層及び表層の形成方法、並びに中間層の表面粗さが、各々表2〜6に示すものである耐火物を作製し、耐剥離性の評価を行った。基材は、その材質がSiC−Si34であるものについては、平均粒径100μmのSiC粒子に対してSiを15質量%添加し、スリップキャスティングにて成形した後、窒素雰囲気中において1400℃で8時間保持して焼成することより得た。材質が常圧焼結SiCである基材は、従来公知の一般的な製法により得られたSiC含有量が98%で、かさ密度が3.15g/cm3、3点曲げ強さ(室温)が400MPa程度のものである。また、材質が再結晶SiCである基材は、従来公知の一般的な製法により得られた気孔率が30%程度のものである。何れの基材も、中間層を形成する前に、サンドブラストにより適当な表面粗さになるよう粗面化処理を施した。
中間層及び表層の形成方法は、溶射によるものについては、大気中のプラズマジェットに原料粉末を供給し、加熱溶融したものを吹き付けて、皮膜を形成した。また、スプレーコートによるものについては、原料をスラリー状態にして吹き付けた後、それを焼き付けて皮膜を形成した。皮膜の厚さは、中間層が50〜70μm、表層が100〜150μmとなるようにした。
中間層の表面粗さ(Ra)は、主に使用原料の粒度又は原料吹き付け条件により制御した。ただし、表面粗さが1μm未満のものについては、中間層の形成後に、その表面に研磨加工を施して、所定の表面粗さを得た。
耐剥離性の評価は、耐火物を大気中1450℃で2時間保持後、室温まで冷却するという加熱冷却サイクルを複数回繰り返し実施し、表層の剥離が生じるまでの回数を調べるという方法で行った。表層が1回で剥離したものを「×」、2〜5回の繰り返しで剥離したものを「△」、6〜9回の繰り返しで剥離したものを「○」、10回繰り返して剥離しなかったものを「◎」とした。
Figure 0004422044
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Figure 0004422044
Figure 0004422044
Figure 0004422044
表2及び3に示す結果から、中間層に金属Siを化合物の形態で含む実施例1〜10は、中間層に金属SiやAlを単体として含む比較例1及び2に比して、耐剥離性に優れることがわかる。また、表4に示す結果から、中間層の表面粗さが1〜20μmの範囲にある実施例11〜14は、中間層の表面粗さが20μmを超える実施例15や1μm未満の実施例16に比して、より良好な耐剥離性を有することがわかる。また、表5に示す結果から、中間層がケイ素化合物とセラミックス粉体との混合物からなる皮膜である場合、セラミック粉体の比率が70質量%以下である実施例17〜19及び21〜23は、当該比率が70質量%を超える実施例20に比して、より良好な耐剥離性を有することがわかる。更に、表6に示す結果から、ケイ素化合物の中でも特に高い融点を有するものの1つであるMoSi2を適度な量のセラミックス粉体を混合して中間層となる皮膜の形成に用いた場合、種々のセラミック粉体との組み合わせにおいて優れた耐剥離性を発揮することがわかる。更にまた、表7に示す結果から、金属Siを化合物の形態で含む中間層は、この種の層構造の耐火物において一般的に使用される様々な基材や表層の材質に対して、優れた耐剥離性を発揮することがわかる。
本発明は、1400℃以上の温度領域での焼成を必要とするセラミック製品やセラミック粉体等を焼成する際に、それら被焼成物を載置したり収容したりするための耐火物として好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. Al 2 3 、3Al 2 3 ・2SiO 2 、SiC、窒化珪素結合SiC(SiC−Si 3 4 )及び再結晶SiCよりなる群から選ばれるセラミックスからなる基材の表面に、中間層として、TiSi2、ZrSi2、TaSi2、NbSi2、CrSi2、WSi2及びMoSi2よりなる群から選ばれる1種以上のケイ素化合物と、Al23、SiO2及びTiBよりなる群から選ばれる1種以上のセラミックス粉体との混合物からなる皮膜を形成し、更にその表面に、表層として、Al 2 3 、MgO、ZrO 2 及びスピネルよりなる群から選ばれる、前記基材とは組成の異なるセラミックスからなる皮膜を形成してなる耐火物。
  2. 前記基材が、1400℃以上の耐熱性を有するものである請求項1に記載の耐火物。
  3. 前記中間層における前記セラミック粉体の比率が70質量%以下である請求項1又は2に記載の耐火物。
  4. 前記中間層が溶射により形成されたものである請求項1ないし3の何れか一項に記載の耐火物。
  5. 前記中間層の表面粗さが1〜20μm(Ra)である請求項1ないし4の何れか一項に記載の耐火物。
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