JP4069610B2 - 表面被覆窒化珪素質焼結体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、室温から高温までの強度特性に優れると共に破壊靱性、耐酸化性に優れた表面被覆窒化珪素質焼結体に関するものであり、特に、タービンロータ、タービンブレード、ノズル、コンバスタ、スクロール、ノズルサポート、シールリング、スプリングリング、ディフューザ、ダクト、シュラウドなどのガスタービンエンジン用部品に好適に使用される表面被覆窒化珪素質焼結体に関する。
【0002】
【従来技術】
窒化珪素質焼結体は、従来から、強度、硬度、熱的化学的安定性に優れることからエンジニアリングセラミックスとして、特に熱機関構造用材料としてその応用が進められている。このような窒化珪素質焼結体は、一般には窒化珪素粉末に対してY2O3、Al2O3あるいはMgOなどの焼結助剤を添加して焼成することにより製造されており、このような焼結助剤の使用により、高密度で高強度の特性が得られている。このような窒化珪素質焼結体は、例えばエンジン用部品として使用されているが、エンジン用部品の使用条件が高温化するにしたがい、窒化珪素焼結体の高温における強度及び耐酸化特性のさらなる改善が求められている。
【0003】
かかる要求に対して、これまで焼結助剤、粒界相及び焼成条件等の改良や、焼結体表面での酸化保護膜の形成を中心として、その改善が進められてきた。
【0004】
例えば、特開平9−183676号公報では、窒化珪素またはサイアロンを主成分とする焼結体表面を、SiO2を主体とするガラス層により被覆することにより、高温における機械的強度と耐酸化性を改善することが提案されている。
【0005】
また、最近では、窒化珪素質焼結体上に耐酸化性の良好なSiC、Al2O3、ZrO2などをCVDや溶射の手法で窒化珪素表面に保護膜をコーティングし、耐酸化性、耐エロージョン、コロージョン性を向上する試みが行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、SiO2、SiC、Al2O3、ZrO2などの表面被覆材は、耐食性あるいは耐熱性が不十分であったり、また基材である窒化珪素焼結体との熱膨張差により、使用中にクラックが発生したり、剥離する問題があった。
【0007】
また、特開平9−183676号公報のように、表面にガラス層を形成する方法では、静的な条件下での特性向上の効果はあるが、実際のエンジン中で高温高圧高速ガスに曝されるとSiO2の蒸発によりガラス層が急速に消耗してしまい、ガラス層の寿命が短く、該ガラス層が保護膜の用をなさない問題があった。
【0008】
また、本出願人は先に窒化珪素質焼結体の表面に、耐酸化特性の優れたダイシリケートやモノシリケートなどの結晶相を有する被覆層を形成することによって被覆層の剥離や亀裂の発生を防止できることを提案した。しかしながら、このような被覆層が表面に形成された窒化珪素質焼結体は、初期の耐酸化性については良好な特性を有するものの、次第に耐食性が劣化するという問題があった。
【0009】
したがって、本発明は、800〜1600℃付近の高温域において使用しても被覆層の付着力が高く、耐食性の変化の少ない被覆層を有する表面被覆窒化珪素質焼結体を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被覆層を形成しているダイシリケートやモノシリケートの結晶相の粒界に過剰なSiO2が存在した場合、かかるSiO2を介して酸素が基材である窒化珪素質焼結体中に拡散侵入し、更に粒界SiO2相が水と反応してガス化し、この結果、被覆層がポーラスになり、基材の腐食が生じやすくなり、さらには、被覆層の形成に当たって、原料混合粉末におけるSiO2と希土類元素酸化物との比率を所定の結晶相が析出するように設定したとしても、高温焼き付け処理によって被覆層の組成が変動してしまい、例えば所定の結晶相以外にYAMやアパタイトなどの窒素含有系結晶相が極微量析出してしまい、このような窒素含有系結晶相が酸化されて被覆層中にクラックが発生し、その結果、耐食性が徐々に低下するという新規知見に基づくものであり、その結果、本発明は、800〜1600℃付近の高温域において使用しても基材の窒化珪素質焼結体に対する付着力が高く、耐食性の変化の少ない被覆層を有する表面被覆窒化珪素質焼結体を提供することができる。
【0011】
即ち、本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体は、窒化珪素質焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層と、該被覆層の上に形成された保護層とから構成された表面被覆窒化珪素質焼結体において、前記被覆層はRE2Si2O7及び/又はRE2SiO5(REは希土類元素)の結晶相と、過剰SiO2を含む結晶粒界とを有し、前記結晶相を構成する結晶の平均結晶粒径が0.1μm以上であるとともに、前記被覆層中に含まれる過剰SiO2量が10モル%以下であり、前記保護層はRE 2 Si 2 O 7 及び/又はRE 2 SiO 5 (REは希土類元素)の結晶相からなり、前記保護層の気孔率が5〜30%でかつ前記被覆層の気孔率よりも大きいことを特徴とする。
【0012】
このように、被覆層中の結晶相の粒径や酸素量(過剰酸化珪素量)を制御することにより、被覆層の優れた特性を長時間に渡って維持でき、800〜1600℃付近の高温域において使用しても基材に対する被覆層の高い付着力を確保し、且つ被覆層の耐食性の経時的劣化を有効に回避することができる。また被覆層の上に、RE 2 Si 2 O 7 及び/又はRE 2 SiO 5 (REは希土類元素)の結晶相からなり、気孔率が5〜30%でかつ被覆層の気孔率よりも大きい保護層が設けられている。これにより、被覆層に発生する応力を緩和し、クラックの発生を防止できると共に、全体の厚みが厚くなるため、製品寿命を延ばすことができる。
【0013】
特に、前記被覆層の気孔率が10%以下であることが好ましい。これにより、さらに被覆層の機械的強度を向上でき、また、耐食性を向上することができる。
【0015】
また、前記基材を構成する窒化珪素質焼結体が、窒化珪素粒子の粒界に結晶相を有する焼結体であることが好ましい。これにより、窒化珪素結晶粒子の粒界が結晶化され、粒界が非晶質であるものに比べて、高温強度、クリープ特性が飛躍的に向上する。
【0016】
さらに、前記基材を構成する窒化珪素質焼結体における前記結晶相がRE2Si2O7及び/又はRE2SiO5(REは希土類元素)であることが好ましい。これにより、被覆層と基材との付着力がさらに高められ、被覆層を基材表面から一層剥離しにくくすることができる。
【0017】
さらにまた、前記基材を構成する窒化珪素質焼結体が、窒化珪素を70〜99モル%、希土類元素(RE)を酸化物換算で0.5〜10モル%、及び過剰酸素を、下記式:
SiO2/RE2O3
式中、SiO2は換算での過剰酸素量を示し、RE2O3は、酸化物換算での前記希土類元素含有量を示す、で表されるモル比が2以上でそれぞれ含有することが好ましい。これにより、基材である窒化珪素質焼結体を緻密にし、この基材(窒化珪素質焼結体)と被覆層との結合力を強固にし、高温高圧高速ガスに曝されても剥離や消耗を抑制し、耐酸化性、耐エロージョン、耐コロージョンを著しく改善することができる。
【0018】
また、前記基材を構成する窒化珪素質焼結体は、窒化珪素量、希土類元素の酸化物換算量及び過剰酸素の酸化珪素換算量の合計質量100に対して、平均粒径が1〜5μmの微小硬質粒子を50以下の質量の割合で含有することが好ましい。この構成にすることにより、窒化珪素結晶に対して微小硬質粒子は、粒成長を適度に抑制させる効果を有し、これらの結晶粒子を微細な粒子としてそれぞれ分散させることにより、通常の窒化珪素質焼結体での大きな結晶粒子の存在により破壊が生じる現象を極力低減することができ、高温強度を大きくできる。また、破壊靭性を高め、窒化珪素質焼結体のチッピングが原因となる部品の破壊現象を抑制することができる。
【0019】
特に、前記微小硬質粒子がTa、Nb、Mo又はWの珪化物及びSiCのうち少なくとも1種以上であることが好適であり、その結果、窒化珪素質焼結体の破壊靭性を顕著に向上することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体は、窒化珪素質焼結体からなる基材の表面に、希土類元素(RE)の結晶相、即ち、下記式
RE2Si2O7(ダイシリケート)
又は
RE2SiO5(モノシリケート)
で表される化合物の結晶相が形成されていることが重要である。
【0021】
このRE2Si2O7(ダイシリケート)やRE2SiO5(モノシリケート)から形成されている被覆層は、従来のSiO2、ZrO2、Al2O3、ムライト、コージェライト、YAGなどの保護膜に比べて、高温酸化性雰囲気でも非常に安定であることから、優れた耐食性が発揮される。また、融点も1600〜1800℃と高いために耐熱性に優れ、高温での寿命が長い。
【0022】
また、本発明では、前記被覆層中における前記結晶相の平均結晶粒径が、0.1μm以上、特に好適には10〜100μm、更には30〜70μmの範囲にあり、かつ前記被覆層中に含まれる過剰SiO2量が10モル%以下、特に好適には5モル%以下、更には2モル%以下、最も好ましくは1モル%以下であることが重要である。
【0023】
つまり、本発明によれば、RE2Si2O7(ダイシリケート)或いはRE2SiO5(モノシリケート)の結晶相自体が非常に優れた耐食性を有することから、被覆層は、優れた耐食性を有する。しかしながら、かかる結晶相の耐食性が良好であっても、この被覆層は多結晶体からなるものであって、その結晶粒界が存在し、この結晶粒界に、このような結晶相に寄与しない不純物的な酸素(過剰酸素)がSiO2として存在する場合、このSiO2(即ち、過剰SiO2)が水等と反応して気化し、燃焼ガスで流され、その結果粒界相が抜け落ち、被覆層が破壊されやすくなり、また、空隙となった粒界相を介して窒化珪素質焼結体が腐食されやすくなる。
【0024】
そこで、本発明によれば、この過剰酸素による粒界相の過剰SiO2量を前記範囲に低減することにより、かかる粒界相の生成を抑制できる結果、被覆層中の結晶の粒界を経由した酸素あるいは水蒸気の拡散を防止することができる。
【0025】
なお、過剰SiO2量の下限値は0であることが最も望ましいが、被覆層全体におけるSiO2量がダイシリケートやモノシリケートの化学量論組成よりも少ないと、ダイシリケートやモノシリケート以外にYAMやアパタイトなどの窒素含有系結晶相が析出する場合がある。したがって、より望ましくは、被覆層がダイシリケートのみからなる場合には、被覆層中のSiO2/RE2O3比(モル比)が1.9〜2.3にあることが好ましく、被覆層がモノシリケートのみからなる場合には0.9〜1.2であることが望ましく、更に被覆層がダイシリケートとモノシリケートとの混合結晶である場合には、SiO2/RE2O3比(モル比)が0.9〜2.3の範囲にあることが好適である。
【0026】
また、被覆層を形成する結晶の平均粒径が前記範囲よりも小さいと、破壊靭性が低下し、高速で飛来する微粒子の衝突による衝撃を受けたとき、被覆層に発生したクラックが進展しやすく、破壊が促進される。従って、被覆層のクラック発生及び剥離を防ぐため、被覆層を形成する結晶の平均粒径が0.1μm以上であることが重要である。
【0027】
本発明において、上記結晶相の構成成分である希土類元素は、周期律表第3a族元素であり、具体的にはY、Lu、Yb、Er、Dy、Ho、Sm、Tb、Sc、Gd及びTmなどが挙げられる。これらの中でも、Lu、Yb、Er、Yが好適であり、Lu、Yb、Er、Yのダイシリケート相及びモノシリケート相は、いずれも融点が高いため、優れた高温強度と耐酸化性を提供できる。また、Yは原料が入手し易く、Smは安価な点であること、並びにYb、Lu及びErは、易焼結性、高強度の点で有利である。
【0028】
さらに本発明においては、上記の被覆層の表面に保護層を設ける。この保護層は、希土類元素(RE)の結晶相、即ち、下記式RE 2 Si 2 O 7 (ダイシリケート)及び/又はRE 2 SiO 5 (REは希土類元素)で表される化合物の結晶相からなることが重要であり、さらに好適には、保護層と被覆層とが高い付着力を有するために、希土類元素として、被覆層を構成する希土類元素と同一の希土類元素を用いることが良い。
【0029】
そして、この保護層の気孔率を5〜30%、特に10〜25%とするとともに、保護層の気孔率を被覆層の気孔率よりも大きくすることが重要である。このように保護層と被覆層の気孔率を制御することにより、被覆層に発生する応力を一層緩和することができ、保護層へのクラック発生を効果的に防止することができるとともに、実質的に上記の結晶相の厚みが増えるため、被覆層の寿命を延ばすことができる。
【0030】
また、上述した被覆層は、気孔率が10%以下、特に好適には5%以下、さらには2%以下、最も好適には1%以下であるのがよい。気孔率をこのような範囲に制御することにより、被覆層は閉気孔が主となるため、被覆層の機械的強度をさらに向上するとともに、耐食性を向上することができる。
【0031】
本発明において、前記被覆層を表面に有する基材が、主相である窒化珪素結晶粒子の粒界に、結晶相を有する窒化珪素質焼結体であることが好ましい。
【0032】
即ち、基材である窒化珪素質焼結体の表面に被覆層を設けたとしても、長い期間にわたって被覆層中の粒界等を介して酸素が内部に拡散し、窒化珪素質焼結体に到達し、該焼結体が酸化されると、その機械的特性が劣化してしまうことがある。例えば、窒化珪素結晶は酸化珪素に変化し、最終的にはSiOとなって飛散してしまうため、減肉の原因となる。しかるに、窒化珪素質焼結体における窒化珪素結晶の粒界に結晶相を存在させることにより、窒化珪素結晶を酸化や腐食から保護することができ、例えば、窒化珪素質焼結体の酸化速度を遅くし、上記酸素の焼結体内部への拡散による酸化に起因する機械的特性の低下や減肉を効果的に制御し、窒化珪素質焼結体の特性を最大限に引き出すとともに、その寿命を飛躍的に延ばすことができる。
【0033】
また、窒化珪素結晶の粒界に存在する上記結晶相は、例えば希土類元素(RE)、Si(珪素)及びO(酸素)からなる結晶であることが好ましく、さらに好適には、前記被覆層と同様、化学式:RE2Si2O7或いはRE2SiO5で表されるダイシリケート相もしくはモノシリケート相であることが望ましい。即ち、このような結晶相を窒化珪素結晶粒子の粒界に存在させることにより、窒化珪素質焼結体からなる基材に対する前記被覆層の濡れ性が良好となり、粒界結晶相が基材から被覆層に連続しているので、両者の付着力が強固となり、また、基材と被覆層間の熱膨張差を低減でき、被覆層の剥がれを一層効果的に防止できる。
【0034】
本発明において、基材として用いる窒化珪素質焼結体は、主成分である窒化珪素以外に、希土類元素及び過剰酸素を含有することが好適である。
【0035】
具体的に、窒化珪素の含有量は、高温強度を十分に発現させるために、70〜99モル%、特に85〜99モル%の範囲にあることが望ましい。また、この窒化珪素中には、AlやOが固溶して、サイアロン(SIALON)を形成していても良い。
【0036】
希土類元素成分は、焼結助剤に由来するものであり、また上述した粒界結晶相の構成成分である。かかる希土類元素としては、被覆層を形成する結晶相中に存在するものと同じ物を例示することができ、焼結体基材中の希土類元素含有量は、緻密で高温強度と高温クリープに優れた窒化珪素質焼結体を得るために、酸化物換算で0.5〜10モル%が適する。特に1〜7モル%が望ましい。例えば、希土類元素含有量が、上記範囲よりも少ないと、焼結性が低下し、緻密な窒化珪素質焼結体からなる基材をえることが困難となり、また、上記範囲よりも多量に希土類元素を含有する場合には、高温強度及び高温クリープの特性が劣化する傾向がある。
【0037】
また、過剰酸素とは、主としてSiO2として存在するものであり、窒化珪素質焼結体中の全酸素量より、希土類元素の酸化物に使用する酸素量を差し引いた酸素量を意味する。本発明において、この過剰酸素量は、下記式:
SiO2/RE2O3
式中SiO2は、SiO2換算での過剰酸素量(モル)を示し、
RE2O3は、酸化物換算での前記希土類元素含有量(モル)を示す、
で表されるモル比が2以上、特に2〜3.5、更には2.1〜2.7の範囲にあることが望ましい。即ち、このような量で過剰酸素を含むことにより、酸化及び腐食に対する耐性の高いダイシリケート相やモノシリケート相を粒界に形成することができる。例えば、過剰酸素量が上記範囲よりも少ないと、このような結晶相を粒界に析出することが難しい。
【0038】
本発明において、基材として使用される窒化珪素質焼結体は、上述した成分以外に、平均粒径が1〜5μmの微小硬質粒子を含有していても良い。この微小硬質粒子としては、例えば、Ta、Nb、Mo、Wの珪化物及びSiCから選ばれる少なくとも1種を用いることができ、これらの微小硬質粒子と窒化珪素主結晶の適度な熱膨張差により発生する残留応力により、クラックの進展を阻止し、破壊靭性を改善し、且つ高温強度を高めることができる。このような微小硬質粒子は、通常窒化珪素量、希土類元素の酸化物換算量及び過剰酸素量(酸化珪素換算量)の合計質量100当たり、50以下の質量、特に1〜40の質量の割合で用いることが好ましい。この微小硬質粒子の平均粒径が上記の範囲外であったり、或いはその使用量が上記範囲よりも少ないと、クラックの進展を阻止することによる破壊靭性の改善や高温強度向上効果が不満足なものとなる。
【0039】
また、本発明において、焼結体基材中には、Al、Mg、Ca、Fe等の金属成分を含むことがあるが、これらの金属は、低融点の酸化物を形成して粒界の結晶化を阻害するとともに高温強度を劣化させるため、酸化物換算量で1モル%以下、特に0.5モル%以下、さらに望ましくは0.1モル%以下に制御することがよい。
【0040】
次に、本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体の製造方法について説明する。本発明によれば、基材を製造し、次いで該基材表面に上述した被覆層を形成し、次いで該被覆層の表面に上述した保護層を形成することにより表面被覆窒化珪素質焼結体が製造される。
【0041】
まず、基材の出発原料として、窒化珪素粉末と希土類元素(周期律表第3a族元素)の酸化物(RE2O3)粉末との混合粉末が使用されるが、この混合粉末には、必要により、粒界結晶相を析出させるためのSiO2粉末や前述した微小硬質粒子が混合される。
【0042】
窒化珪素粉末は、α型、β型のいずれでも使用することができ、その粒径は0.4〜1.2μm、陽イオン不純物量は1質量%以下、特に0.5質量%以下、不純物酸素量が0.5〜2質量%が適当であり、直接窒化法、イミド分解法などのいずれの製法によるものであってもかまわない。また、サイアロン粉末を用いることもできる。
【0043】
また、RE2O3粉末やSiO2粉末の代わりに、RE2O3とSiO2との複合酸化物の粉末を使用することもできるし、窒化珪素とRE2O3とSiO2との化合物粉末を用いることもできる。
【0044】
上記粉末を調合するにあたっては、上述した基材の組成を満足するように、各粉末の混合比率が調整される。例えば、過剰酸素量が所定のSiO2/RE2O3モル比を満足するためには、窒化珪素中に不可避に含まれる酸素あるいは製造過程で吸着される酸素分等をSiO2分として考慮して、Lu2O3などの希土類酸化物量やSiO2粉末の添加量を調整する。
【0045】
所定の割合で各粉末を秤量し、振動ミル、回転ミル、バレルミルなどで十分に混合した後、得られた混合粉末を所望の成形手段、例えば、金型プレス、鋳込み成形、排泥成形、押し出し成形、射出成形、冷間静水圧プレス等により任意の形状に成形し、この成形体を焼成することにより、本発明で使用する基材を得ることができる。
【0046】
焼成は、通常、窒素ガスによる加圧下で行われ、焼成温度は、1800〜2000℃の範囲が適当である。このような条件での焼成によって、相対密度が98%以上に緻密化した焼結体を得ることができる。焼成温度が2000℃を越えると窒化珪素結晶が粒成長し、強度劣化を引き起こす恐れがあり、焼成温度が1800℃よりも低いと、緻密化が困難になることがある。
【0047】
また、この焼成後に、熱間静水圧焼成(HIP)法で処理し、さらに緻密化することができる。さらに、上記の焼成後の冷却過程で徐冷するか、または焼結体を1000〜1700℃で熱処理することにより粒界の結晶化を図り特性のさらなる改善を行うことが出来る。また、場合によっては、ガラスカプセル熱間静水圧プレス(HIP)法あるいはガラス浴熱間静水圧プレス(HIP)法により焼結体を得ることも可能である。
【0048】
また、高い寸法精度が要求される場合には、窒化珪素粉末の一部をSi粉末に置き換えて成形体を作製し、これを窒素含有雰囲気中、800〜1500℃で熱処理しSi3N4に変換して成形体密度を高めたうえで、前述した焼成条件で焼成することにより、焼成時の収縮を小さくすることが出来る。
【0049】
次に、上記のようにして得られた基材の表面に、前述した希土類元素のモノシリケート相或いはダイシリケート相からなる被覆層を形成する。
【0050】
この被覆層の形成は、蒸着法、CVD法、スパッタ法等の薄膜形成法、溶射法、スラリー塗布法を用いて行うことができるが、本発明では、被覆層中の過剰SiO2量が厳密に制御されていなければならない。従って、溶射法、スラリー塗布法が望ましく、さらには簡単に形成できる点でスラリーディップ法が望ましい。
【0051】
例えば、SiO2とRE2O3との複合混合粉末、或いはSiO2とRE2O3との混合粉末を用い、こられの粉末中の過剰SiO2量を所定の範囲に調整し、その粉末のスラリーを調製する。このスラリーを、上記で製造された基材表面に塗布法、即ち、スプレーによりスラリーを吹き付けるか、或いはディッピング法により焼結体表面にスラリーを均一に塗布し、次いで熱処理することにより、目的とする結晶相からなる被覆層を形成することができる。
【0052】
熱処理温度は、用いるRE2O3の種類にもよるが、一般的には、1300〜1800℃、特に1400〜1750℃の温度とするのが良い。
熱処理温度が上記範囲よりも低いと、所望の結晶相を析出させることが困難となり、或いは得られる被覆層には、気孔が多数残存し、この被覆層が基材の保護膜としての用をなさない。また、熱処理温度が上記範囲よりも高いと、SiO2が揮散してしまい、所定の結晶相を析出することができず、また、粘性が低くなりすぎ、被覆層が形成されにくくなってしまう。
【0053】
熱処理雰囲気は、酸化性雰囲気、或いは窒素、Arなどの不活性雰囲気であればよいが、例えば、1300℃以上もの高温下で窒素或いはAr雰囲気で熱処理する場合、SiO2が揮散してしまい、被覆層の組成が大きく変動してしまう恐れがある。従って、この場合には、被覆層の組成を出発組成と実質的に同一にする上で、高温熱処理時の雰囲気にSiOガスを発生させておくことが望ましい。このSiOガスを発生させるためには、Si/SiO2の混合粉末を熱処理炉内に配置しておけばよい。
【0054】
なお、原料として用いるSiO2粉末及びRE2O3粉末等は、いずれも純度99.9%以上であることが望ましい。また、被覆層の過剰SiO2を低減し、耐食性の変化の少ない被覆層を実現するため、混合粉末等の組成は、SiO2/RE2O3モル比を1.9〜3.0、特に2.0〜2.5、さらには2.1〜2.3に設定することが好ましい。
【0055】
また、上述したスラリーを、焼結体基材の製造工程で作成された成形体表面に、上記と同様の方法で均一塗布し、これを焼成することにより、基材と表面被覆層とを同時に形成させることも可能である。
【0056】
次いで、この被覆層の表面に、さらに保護層を形成する。保護層は、被覆層を作製する場合と同様の方法で、被覆層の表面に上述のスラリーを塗布し、次いで熱処理することにより、目的とする結晶相からなる保護層を形成することができる。
【0057】
熱処理温度は、用いるRE2O3の種類にもよるが、一般的には、1200〜1700℃、特に1300〜1600℃の温度とするのが良い。そして、保護層の気孔率が5〜30%、且つ保護層の気孔率が被覆層の気孔率よりも大きくなるように熱処理時間を調整する。
【0058】
このようにして得られる本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体は、被覆層と焼結体基材との付着力が高く、優れた耐酸化性、耐コロージョン性、耐エロージョン性、機械的特性を示し、例えば800〜1500℃付近の高温域において長時間使用されるエンジン用部品として、極めて有用である。さらには、保護層を設けることにより、被覆層に発生する応力を緩和し、クラックの発生を防止できると共に、全体の厚みを厚くすることができ、製品寿命を延ばすことができる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体について行なった実験例を順に説明するものとし、まず表面に被覆層を設けた窒化珪素質焼結体の実験例について説明する。
基材の原料粉末として、下記の窒化珪素粉末、希土類元素酸化物粉末及び酸化珪素粉末を用いた。
窒化珪素粉末:
BET比表面積;9m2/g
窒化珪素のα率;99%
酸素量;1.1質量%
Al、Mg、Ca、Feなどの陽イオン金属不純物量;30ppm以下
希土類元素酸化物(RE2O3)粉末:
RE;Yb
純度;99%
平均粒径;1.5μm
酸化珪素粉末:
純度;99.9%
平均粒径;2μm
上記の窒化珪素粉末89.5モル%と、RE2O3粉末3モル%と、酸化珪素粉末7.5モル%とからなる混合粉末を調合し、バインダー及び溶媒のメタノールを添加し、窒化珪素ボールを用いて50時間回転ミルで混合粉砕し、スラリーを調製した。
【0060】
得られたスラリーを、乾燥後、298MPaの圧力でラバープレス成形し、直径60mm、厚み20mmの形状の成形体を作製した。
【0061】
この成形体を、表1に示す焼成方法及び焼成条件にて焼成し、基材を得た。いずれの基材にも、粒界にRE2Si2O7(ダイシリケート)の結晶相が析出していた。
【0062】
なお、表1で示す焼成方法において、「G」は、ガス圧焼成(GPS)を示し、「H」は、ガラス浴熱間静水圧プレス(HIP)による焼成を示し、「G+H」は、1900℃でガス圧焼成を行った後、1700℃、窒素圧196MPaで1時間HIP焼成したことを示す(焼成のトータル時間は10時間)。
【0063】
なお、表1中の基材中のSiO2量は、基材を粉砕し、化学分析によって全酸素量を求め、添加した希土類酸化物中の酸素量を除いた酸素量をSiO2換算して算出した値である。
【0064】
次に、表1に示す条件で、RE2O3(RE=Lu)粉末とSiO2粉末との混合粉末を、それぞれメタノールに分散させてスラリーを作製し、スプレーによって前記で得られた基材表面に、厚みが120μmとなるように均一に塗布した。次いで乾燥した後、窒素雰囲気中、Si/SiO2混合粉末が配置された炉内で、表1に示す条件で熱処理し、表面被覆窒化珪素質焼結体を得た(試料No.1〜12)。
【0065】
なお、Lu2O3粉末は、純度96%、平均粒径1.5μmのものを用いた。
【0066】
さらに、比較のため、上記混合粉末の代わりに、SiO2粉末、ZrO2粉末又はAl2O3粉末を使用し、上記と同様にして表面被覆窒化珪素質焼結体を得た(試料No.13〜16)。
【0067】
得られた焼結体について、以下の方法で各種特性等を測定し、その結果を表1に示した。
【0068】
気孔率:
アルキメデス法により算出した。
【0069】
結晶の平均粒径(被覆層):
走査電子顕微鏡(SEM)観察写真から粒子の長径と短径の平均値を平均粒子とし、50個の粒子の平均値として算出した。
【0070】
強度:
試料の焼結体を、3×4×40mmの形状に切断後、研磨し、JIS−R1601に基づいて、室温及び1500℃(表1においてHTで示す)での4点曲げ抗折強度を測定して評価した。なお、測定は、それぞれ、10個の試料について行い、その平均値を表1に示した。
【0071】
破壊靭性:
JIS−R1607に基づいて、ビッカース圧痕を用いる方法で測定した。
【0072】
酸化重量増:
耐酸化特性を示す尺度として、試料の焼結体を1500℃の大気中に100時間保持した後の酸化質量増を測定した。
【0073】
減肉量:
試料の焼結体を1200℃、圧力0.4MPa、ガス流速50m/sのガス気流中に100時間曝し、その減肉量を測定した。
【0074】
結晶の同定:
基材の粒界相の結晶及び被覆層の結晶を、X線回折測定により同定した。表1において、モノシリケート相をRS、ダイシリケート相をR2Sで示した。
【0075】
【表1】
【0076】
試料No.1〜3、6〜12は、室温強度が800MPa以上、高温強度(HT)が540MPa以上、破壊靭性が5.8MPa・m1/2以上、酸化質量増が0.03mg/cm2以下、減肉量が10μm以下であった。
【0077】
一方、被覆層がモノシリケートやダイシリケートで形成されていない本発明の範囲外のNo.13〜16は、減肉量が200μm以上と大きく、耐腐食性が著しく劣っている。
【0078】
また、過剰SiO 2 量が13モル%と大きく、本発明の範囲外のNo.4は、減肉量が300μm以上と大きく、耐腐食性が著しく劣っている。
【0079】
さらに、被覆層の結晶相の平均粒径が0.05μmと小さく、本発明の範囲外のNo.5は、室温強度が720MPa、高温強度(HT)が490MPa、破壊靭性が5.1MPa・m1/2と機械特性に劣り、クラックの発生しやすいものであった。
次いで、上述した実験例で用いたものと同じ窒化珪素粉末及び酸化珪素粉末を使用し、これらの粉末に、表2に示すように、Si粉末或いは平均粒径1.5μmの各種の希土類酸化物粉末を混合し、上述した実験例と同様にしてスラリーの調製、乾燥及び成形を行い、直径60mm、厚み20mmの成形体を作製し、表面に被覆層を設けた他の窒化珪素質焼結体について実験を行なった。
【0080】
得られた成形体をGPSにて窒素中1900℃で10時間焼成し、基材を得た。
【0081】
次に、RE2O3(REは表2に示す)粉末とSiO2粉末との混合粉末をメタノールに分散させてスラリーを作製し、スプレーによって上記基材の表面に均一に塗布した(厚み:120μm)。次いで、乾燥後、1500〜1700℃で熱処理し、表面に被覆層を設けた窒化珪素質焼結体を得た(試料No.17〜45)。
【0082】
得られた焼結体を上述の実験例と同様の方法で評価し、その結果を表2に示した。なお、基材の相対比重はアルキメデス法により算出した。
【0083】
【表2】
【0084】
被覆層がYb2Si2O7からなり、基材の組成を変えた試料No.17〜27は、室温強度が760MPa以上、高温強度(HT)が530MPa以上、破壊靭性が5.8MPa・m1/2以上、酸化増量が0.03mg/cm2以下、減肉量が5μm以下であった。
【0085】
また、希土類酸化物としてLu2O3を用いて基材が作製された試料No.28〜35は、室温強度が810MPa以上、高温強度(HT)が600MPa以上、破壊靭性が6.0MPa・m1/2以上、酸化増量が0.03mg/cm2以下、減肉量が4μm以下であった。
【0086】
さらに、被覆層の組成が種々異なる試料No.36〜45は、室温強度が790MPa以上、高温強度(HT)が500MPa以上、破壊靭性が5.8MPa・m1/2以上、酸化増量が0.03mg/cm2以下、減肉量が5μm以下であった。
【0087】
特に、基材中の希土類元素と同じ元素を用いて被覆層を形成した試料No.30及び39は、室温強度が850MPa以上、高温強度(HT)が550MPa以上、破壊靭性が6.3MPa・m1/2以上と機械特性に優れ、剥離しにくく、クラックの発生しにくいものであった。
次に、微小硬質粒子を含む他の窒化珪素質焼結体について実験を行なった。上述した実験例で用いた窒化珪素粉末89.5モル%に対し、下記のLu2O3粉末3モル%及び酸化珪素粉末7.5モル%を混合して混合粉末を調製した。
希土類元素酸化物(RE2O3)粉末:
RE;Lu
純度;99%
平均粒径;1.5μm
酸化珪素粉末:
純度;99%
平均粒径;2μm
上記の混合粉末100質量部に、炭化珪素粉末(純度;99%、平均粒径;0.8μm)及び珪化物粉末(純度;99%、平均粒径;1.4μm)を、表3に示す割合で加え、上述した実験例と同様にして窒化珪素質焼結体を作製し(試料No.46〜54)、同様に評価を行った。その結果を表3に示す。
【0088】
上記焼結体では、何れも基材中の粒界相及び被覆層はRE2O3・2SiO2(ダイシリケート)からなっていた。
【0089】
【表3】
【0090】
SiCを1〜50質量部が添加されている試料No.46〜50は、室温強度が760MPa以上、高温強度(HT)が570MPa以上、破壊靭性が6.5MPa・m1/2以上と機械特性に優れ、剥離しにくく、クラックの発生しにくいものであった。
【0091】
また、金属珪化物が添加されている試料No.51〜54は、室温強度が790MPa以上、高温強度(HT)が580MPa以上、破壊靭性が7.0MPa・m1/2以上と機械特性に優れ、剥離しにくく、クラックの発生しにくいものであった。
次に、被覆層の表面に保護層を設けた本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体を作製して実験を行なった。上述した実験例で用いた窒化珪素粉末89.5モル%に対し、上述した実験例で用いたYb2O3粉末又はLu2O3粉末3モル%及び酸化珪素粉末7.5モル%を混合して混合粉末を調製し、上述した実験例と同様にしてスラリーの調製、乾燥、成形を行い、得られた成形体をGPSにて窒素中1900℃で焼成し、基材を得た。
【0092】
次に、RE2O3(REは表4に示す)粉末とSiO2粉末との混合粉末をSiO2/RE2O3モル比が2になるように調製し、上述した実験例と同様にしてスラリーの調製、基材への塗布を行い、1700℃で熱処理して被覆層を作製した。
【0093】
さらに、RE2O3(REは表4に示す)粉末とSiO2粉末との混合粉末をSiO2/RE2O3モル比が2になるように調製し、上記被覆層の作製と同様にして、保護層を作製し、本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体を作製した。なお、熱処理温度は1500℃で1時間行った。
【0094】
得られた焼結体を上述した実験例と同様の方法で評価し、その結果を表4に示した。
【0095】
【表4】
【0096】
本発明の試料No.55〜60は、室温強度が800MPa以上、高温強度(HT)が570MPa以上、破壊靭性が6.0MPa・m1/2以上と機械特性に優れ、剥離しにくく、クラックの発生しにくいものであった。
【0097】
【発明の効果】
本発明の表面被覆窒化珪素質焼結体は、被覆層と焼結体基材との付着力が高く、優れた耐酸化性、耐コロージョン性、耐エロージョン性、機械的特性を示し、例えば800〜1500℃付近の高温域において長時間使用されるエンジン用部品として、好適に用いることができる。さらに、保護層を設けることにより、被覆層に発生する応力を緩和し、クラックの発生を防止できると共に、全体の厚みを厚くすることができ、製品寿命を延ばすことができる。
Claims (7)
- 窒化珪素質焼結体からなる基材と、該基材表面に形成された被覆層と、該被覆層の上に形成された保護層とから構成された表面被覆窒化珪素質焼結体において、前記被覆層はRE2Si2O7及び/又はRE2SiO5(REは希土類元素)の結晶相と、過剰SiO2を含む結晶粒界とを有し、前記結晶相を構成する結晶の平均結晶粒径が0.1μm以上であるとともに、前記被覆層中に含まれる過剰SiO2量が10モル%以下であり、前記保護層はRE 2 Si 2 O 7 及び/又はRE 2 SiO 5 (REは希土類元素)の結晶相からなり、前記保護層の気孔率が5〜30%でかつ前記被覆層の気孔率よりも大きいことを特徴とする表面被覆窒化珪素質焼結体。
- 前記被覆層の気孔率が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の表面被覆窒化珪素焼結体。
- 前記基材を構成する窒化珪素質焼結体が、窒化珪素粒子の粒界に結晶相を有する焼結体であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面被覆窒化珪素質焼結体。
- 前記基材を構成する窒化珪素質焼結体における前記結晶相がRE2Si2O7及び/又はRE2SiO5(REは希土類元素)であることを特徴とする請求項3記載の表面被覆窒化珪素質焼結体。
- 前記基材を構成する窒化珪素質焼結体が、窒化珪素を70〜99モル%、希土類元素(RE)を酸化物換算で0.5〜10モル%、及び過剰酸素を、下記式:
SiO2/RE2O3
式中、SiO2は換算での過剰酸素量を示し、
RE2O3は、酸化物換算での前記希土類元素含有量を示す、
で表されるモル比が2以上でそれぞれ含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面被覆窒化珪素質焼結体。 - 前記基材を構成する窒化珪素質焼結体は、窒化珪素量、希土類元素の酸化物換算量及び過剰酸素の酸化珪素換算量の合計質量100に対して、平均粒径が1〜5μmの微小硬質粒子を50以下の質量の割合で含有することを特徴とする請求項5記載の表面被覆窒化珪素質焼結体。
- 前記微小硬質粒子がTa、Nb、Mo又はWの珪化物及びSiCのうち少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項6記載の表面被覆窒化珪素質焼結体。
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