JP4419303B2 - 塗布装置および塗布方法、ならびにカラーフィルター製造装置および製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液晶ディスプレイ用カラーフィルター、光学フィルター、プラズマディスプレイ用パネルなどの製造分野において好ましく使用されるもので、詳しくは、ガラスなどの枚葉被塗布基板に、短いタクトタイムで、塗布液を塗布する塗布装置および塗布方法、ならびに、これらを用いたカラーフィルターの製造装置および製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高精度に塗布液を塗布する手段として、スリット状の吐出口を持つダイから塗布液を一定間隔離れた基材に吐出して塗布を行うダイコータ塗布があり、近年、フィルム等の連続した基材の他に、ガラス等の枚葉状基板への塗布にも適用されている。枚葉状基板への塗布は、シート状基材への連続塗布とは異なり、特開平8−182953号公報に示されるように各基板ごとの塗布以外に、基板のテーブルへの載置および排出、テーブルまたはダイの移動、さらに、塗布開始部で所定の膜厚を安定して得るために行うダイ吐出口の清掃、といった種々の処理作業が必要となる。枚葉状基板への塗布工程で生産性を向上させるには、1枚の基板の処理に要する時間(タクトタイム)を短くすれば良いが、そのためには、塗布はもちろんのこと上記の塗布以外の処理作業時間を短縮することが必要となる。
【0003】
各処理作業時間を短縮するのはあまり容易ではないので、その時間をかえないでも大幅にタクトタイムを短くできる手段の一つが、特開2000−117179号公報に開示されているものである。ここでは、ステージに連続配置した複数の基板に、間欠することなくダイコータ塗布を行うことで、各処理の作業時間に関係なく、基板1枚あたりのタクトタイムの短縮を図っている。
【0004】
また、同じ思想の手段としては、特開平10−216599号公報に開示されているものがあり、ここでは、1台のダイコータの中に複数のダイと基板を配し、それによって複数の基板に同時に塗布して基板1枚あたりのタクトタイムの短縮を実現している。
【0005】
さらに、単に、ダイコータを複数台配して、並列して基板を塗布処理することにより、基板1枚あたりのタクトタイムを短縮する手段も同じ範疇に入れることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上の従来の手段には次のような問題があって、実用に供せられていない。複数の基板をステージに連続配置して、間欠することなく連続して塗布を行う手段の場合、塗布後に基板を引き離す時に、基板間の液離れが均等に行われず、基板端部の膜厚分布が不均一になる。さらに、基板裏面へ塗布液が廻りこんで、基板を汚すという問題がある。
【0007】
次に、複数のダイで、基板に同時に塗布を行う場合、装置が大型化して装置コストが高くなる。特に、今後主流になると予想されるメータ角サイズの基板に対応させるには超大型のダイコータが必要となるが、所定の機械精度を維持させながら大型化するのは、事実上不可能である。さらに、複数のダイの塗布液充填作業や組立作業、塗布作業管理が必要となるため、人的コストも増大する。
【0008】
さらに、単に、ダイコータを複数配する手段は、ダイコータの増加台数分だけ装置コストと、メンテナンスや塗布作業に要する人的コストが増大する。
【0009】
この発明は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、1台のダイで間欠的に基板を処理する一般的なダイコータの構成で、タクトタイムを大幅に短縮することが可能な低コストの塗布装置および塗布方法、ならびにそれを用いたカラーフィルターの製造装置および製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、(1)1台の塗布装置であって、2枚の基板を塗布方向に相重ならないように保持する2箇所の基板保持位置を有するテーブルと、前記基板表面に塗布液を吐出する吐出口を有する1台の塗布器と、前記吐出口を清掃する吐出口清掃装置と、前記塗布器に塗布液を供給する塗布液供給機構と、前記塗布器を基板保持位置に保持した基板の塗布位置に移動させるとともに前記塗布液供給機構のすべてまたはその一部が配されている移動手段と、前記テーブル上に基板を載置する基板載置手段と、前記テーブル上から基板を排出する基板排出手段と、任意の基板保持位置に載置された基板に前記塗布器から塗布液を吐出して塗布する間に基板載置手段と基板排出手段によって他の基板保持位置へ塗布器の長手方向に基板を載置および/または排出させる制御手段とが、設けられたことを特徴とする塗布装置。
【0015】
(2)前記(1)に記載の塗布装置を用いて、カラーフィルターを製造することを特徴とするカラーフィルター製造装置。
【0016】
塗布液を吐出する吐出口を有する塗布器をテーブル上に保持された基板の塗布位置に移動させながら、該塗布器から塗布液を吐出することにより、基板表面に塗膜を形成する塗布方法において、前記テーブルは2枚の基板を塗布方向に相重ならずに2箇所の基板保持位置で保持できるものであり、該テーブル上の任意の基板保持位置に載置された基板に1台の塗布器より塗布液を吐出して塗膜を形成する間に、他の基板保持位置では塗布器の長手方向に基板の排出および/または基板の載置を行うことを特徴とする塗布方法。
【0020】
(4)前記(3)に記載の塗布方法を用いて、カラーフィルターを製造することを特徴とするカラーフィルター製造方法。
【0021】
上記発明に係る塗布装置、および、塗布方法によれば、1台のダイで間欠的に基板を処理する一般的な構成のダイコータで、塗布工程とそれ以外の工程を別々の位置で同時に並列処理できるので、従来よりもタクトタイムを大幅に短縮することができる。
【0022】
さらに、上記発明に係るカラーフィルターの製造装置および製造方法によれば、この発明の塗布装置、および、塗布方法を用いるので、装置・人的コストを増大させずに、高い生産性でカラーフィルターを製造することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1はこの発明の塗布装置であるダイコータの一例を示す概略斜視図であり、図2はダイコータのステージ部を塗布方向と垂直に破断したときの一例を示す断面図であり、図3はダイコータのステージ部を塗布幅方向と垂直に破断したときの一例を示す断面図であり、図4はこのダイコータに用いるダイの一例を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、ダイコータ10は、ステージ20、ダイ昇降部40、塗布液供給部60、ダイ80、移載装置200、および、これらの動作を制御するシーケンサ150から構成される。
【0026】
図1および図2によると、ステージ20には、ベース21上に基板保持台22A、22Bが並列して設置されている。ベース21上には、さらに一対のリニアスライダー23、リニアモータ24も設置されている。リニアスライダー23には支柱ベース25を介して、門型の支柱26が取り付けられており、この支柱26の中央部にあるダイ昇降部40のダイ保持材50に、ダイ80が取り付けられている。したがって、ダイ80は支柱26とともにリニアモータ24によって矢印27A、27B方向に自在に往復移動できる。
【0027】
ダイ昇降部40にはダイ保持材50を昇降させるリニアガイドとリニア駆動装置が内蔵されており、これによってダイ80を自在に昇降させることができる。
【0028】
ダイ80の下方に位置する基板保持台22A、22Bは、上面に設けられた図示しない吸着孔によって、基板300を相重ならない位置に吸着して保持することができる。基板300を吸着する手段としては、吸着孔の他、溝や、溝と吸着孔を組み合わせたものを用いても良い。
【0029】
さらに、基板保持台22A、22Bには、リフトピン28A、28Bと基板ガイドピン29A、29Bが内蔵されている。リフトピン28A、28Bは図示しないACサーボモータに連結されており、所定位置間を自在に往復して、基板300を基板保持台22A、22Bの上面で昇降させることができる。
【0030】
一方、基板ガイドピン29A、29Bは基板300の端辺に沿うように配置されているとともに、エアーシリンダーに連結されて自在に昇降できるので、基板300を基板保持台22A、22B上面の所定位置に位置決めすることができる。なお、昇降機構にはエアーシリンダーの他、モータ駆動などいかなるものを用いても良い。基板300の位置決めは、基板ガイドピン29A、29Bを突出させた状態で、基板300を支持したリフトピン28A、28Bを下降させることで行われる。
【0031】
さらに、ステージ20の近傍には塗布液供給部60が設けられている。塗布液供給部60は、塗布液を供給するタンク61、塗布液を定容量送るシリンジポンプ62の他、タンク61とシリンジポンプ62との間を連結する吸引ホース63、シリンジポンプ62とダイ80との間を連結する供給ホース64により構成される。各ホース63、64の途中には、開閉弁65A、65Bが設けられて、シリンジポンプ62と各々の開閉弁65A、65Bの動作によって、タンク61内の塗布液がダイ80に供給される。
【0032】
ここで、図2を見ると、シリンジポンプ62および開閉弁65Bは、支柱26に連結する支柱ベース25に取り付けられており、支柱26、ダイ80と同時にベース21上を往復移動できる構造となっている。これにより、ダイ80を移動させても供給ホース64は同調して移動することになって振動が発生せず、振動起因の送液量のむらが全く起こらないため、ダイ80から吐出される塗布液の量にバラツキが生ぜず、高精度な膜厚分布が得られる。
【0033】
なお、塗布液供給部60は全体を支柱ベース25に取り付けても良い。また、塗布液の定容量供給手段としては、シリンジポンプ以外に、ギアポンプ、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプの他、エアー圧送を用いても良い。
【0034】
さて、ダイ80は図4に示す断面をなしており、リップA81、スペーサ83、リップB82を組み合わせて、ボルト84で締め付けることにより、スペーサ83の厚みに等しいスリット86を形成する。また、リップA81には、リップB82と対向する面にマニホールド87が形成されて、塗布液が流入する流入口85と連結している。この流入口85に塗布液供給部60の供給ホース64が連結される。
【0035】
流入口85から流入する塗布液は、マニホールド87でダイ80の長手方向に拡がった後、スリット86を通って吐出口90から吐出されることになり、ダイ80を矢印27A、または27Bの方向に移動させながら、吐出口90から塗布液を流出すれば、基板上に塗布液を塗布できる。
【0036】
次に、図3を見ると、支柱26にはダイ80の吐出口90付近を清掃する吐出口清掃装置100も取り付けられている。吐出口清掃装置100は、清掃ユニット110、ユニット保持部材101、駆動部120から構成される。
【0037】
清掃ユニット110は、清掃具111と、これを保持する清掃具保持部材112と、液受け114から構成される。清掃具111はダイ80の吐出口90付近に密着できる形状を有し、これを吐出口90に当接させてダイ長手方向に移動させることにより、吐出口90の周辺に付着した塗布液を掻き取って除去する。掻き取られた塗布液は液受け114に溜まり、図示しない吸引装置によって、液受け114より排出される。また、清掃具111の材質は吐出口90を傷つけない高分子樹脂からなるものが好ましい。
【0038】
この清掃ユニット110の移動は、清掃ユニット110にユニット保持部材101を介して連結された駆動部120によって行われる。
【0039】
駆動部120は、支柱26に取り付けられており、ダイ80の長手方向に延びるリニアモータ121、リニアガイド122から構成されている。清掃ユニット110はリニアモータ121の制御によって、自在に往復移動できる。なお、吐出口90の清掃は、ダイ80の長手方向に清掃具111を移動させるなら、どちら側からも行うことが可能である。また、駆動部120が支柱26に取り付けられているので、ダイ80の移動中に、清掃ユニット110を動作させるといった並列作業が可能となり、タクトタイムの短縮に寄与する。
【0040】
再度、図1を参照すると、ダイコータ10の基板保持台22A、22Bへの基板300の搬入、搬出を行う移載装置200A、200Bが基板搬送方向上流側および下流側に設置されている。移載装置200A、200Bはそれぞれロボット201A、201Bと基板300の裏面を支持するハンド202A、202Bから構成されており、任意のタイミングで、基板の搬出入を行うことができる。ここで、ロボット201A、201Bは、多関節アーム型ロボットや円筒座標型ロボットなどいかなるタイプのものを用いても良い。また、ハンド202A、202Bは基板裏面を吸着保持してもよいが、基板搬送時における吸着動作時間を省略するために、吸着を用いずに単に裏面を支持するだけの方が好ましい。
【0041】
以上の装置構成によって、片方の基板保持台に保持された基板に塗布を行っている最中に、もう片方の基板保持台に基板の搬入・搬出を同時に並列処理することが可能となり、タクトタイムを大幅に短縮できる。
【0042】
次に、この発明の塗布方法の一例を図5を用いて説明する。
【0043】
まず、ダイコータにおける各作動部の原点復帰が行われると、ダイ80はスタンバイの位置(塗布開始位置P1の上方)に移動する。このとき、タンク61〜ダイ80まで塗布液がすでに充満されており、ダイを上向きにして塗布液を吐出して、ダイ内部の残留エアーを排出する、いわゆるエアー抜き作業も既に終了している。そして、基板保持台22Aの表面ではリフトピン28Aが上昇して、ハンド202Aからの基板300の載置のために待機している。ここから、以下に記載の(1)〜(5)の手順にしたがって、塗布を行う。
【0044】
(1)シーケンサ150からの信号により、移載装置200Aを作動させて、上流側の移載装置200Aのハンド202Aにより基板300を図示しない基板搬送方向の上流側装置から把持して、取り出し、次に、リフトピン28A上に載置する。なお、図示しない上流側の工程にある時に、基板300の厚さは測定されており、厚さデータもシーケンサ150に転送されている。そして、転送されたデータをもとにシーケンサ150では、基板300とダイ80の間のクリアランスがあらかじめ設定した値になる位置に、ダイ80を下降する。
【0045】
次に、リフトピン28Aを下降させて、基板300を基板ガイドピン29Aによって位置決めしながら基板保持台22Aの上面に載置する。そして、真空ポンプ等の吸引源を作動させて、吸着孔より基板300を真空吸引して、基板保持台22A上に吸着保持した後、基板ガイドピン29Aを下降して待避させる。(基板保持台22Aでの基板載置)
(2)次に、ダイ80を塗布開始位置P1まで水平移動して停止させる。これと同時に、塗布液をシリンジポンプ62からダイ80に送り込む。シリンジポンプの塗布液送り込み動作開始と同時に、シーケンサ150内のタイマーがスタートし、定められた時間の後にシーケンサ150からスタート信号が出され、ダイ80が設定された塗布速度で塗布終了位置P2へ水平移動を開始し、塗布が開始される。
【0046】
塗布終了位置P2付近のあらかじめ設定された位置までダイ80が到達すると、シリンジポンプ62を停止して、塗布液の吐出を終えた後、ダイ昇降部40を作動させてダイ80を高速で上方へ移動させる。
【0047】
一方、この塗布動作の間に、基板保持台22Bに、移載装置200Aによって別の基板を載置する。(基板保持台22Aでの塗布と、基板保持台22Bでの基板載置)
(3)基板保持台22Aでの塗布終了後、ダイ80をリニアモータ24で増速して、基板保持台22Bの塗布開始位置P3まで水平移動させる。
【0048】
その間に、基板保持台22Aでは、塗布された基板300の取出しを行う。すなわち、基板300の吸着保持を解除した後、リフトピン28によって、基板300を持ち上げ、これを下流側の移載装置200Bのハンド202Bに受け渡して、図示しない次の工程に搬出する。
【0049】
また、ダイ80の水平移動の間に、シリンジポンプ62を作動させてタンク61内の塗布液を、シリンジポンプ62側に充填するとともに、充填完了後に吐出口90にわずかに付着する程度の少量の塗布液を吐出する。そして、清掃具111を吐出口90に当接させながらダイ80の長手方向に移動させて、吐出口90を清掃する。(基板保持台22Aでの基板取出しと、ダイ80の水平移動および清掃)
(4)次に、すでに、新たな基板300が載置されている基板保持台22B上で塗布を行う。塗布は、塗布開始位置P3〜塗布終了位置P4に向かってダイ80を水平移動させながら、シリンジポンプに塗布開始位置P1〜塗布終了位置P2まで塗布した時と全く同じ動作を行わせて実行する。
【0050】
また、基板保持台22Bで塗布する間に、基板保持台22Aには上流側の移載装置200Aによって、次に塗布する基板300が載置される。(基板保持台22Bでの塗布と、基板保持台22Aでの基板載置)
(5)塗布終了位置P4で塗布が完了すれば、ダイ80を塗布開始位置P1に水平移動させ、それと同時に基板保持台22Bでは、下流側の移載装置200Bを用いて基板の取出しを行う。また、上記(3)に記載のシリンジポンプの吸引動作とダイ80の吐出口90の清掃を行う。但し、このときの清掃具111の移動方向は、上記(3)の場合と逆となる。(基板保持台22Bでの基板取出しと、ダイ80の水平移動および清掃)
上記(5)の作業が完了すれば上記(2)の動作に戻り、以降(2)〜(5)の一連の動作を繰り返すことにより、順次、基板を塗布していく。
【0051】
図6は上記の塗布方法にしたがって、基板を処理した時の一連の動作をタイムチャートにして表したものである。
【0052】
ところで、図7は特開平8−182953号公報等に示される従来のダイコータの斜視図であり、図8は図7のダイコータによって実施され一連の動作をタイムチャートにして表したものである。図7と図8より、従来のダイコータ400では、まず基板保持台402上に移載装置410が基板を載置している間にダイ403の吐出口の清掃を行う。次に、基板保持台402を移動させながら、静止しているダイ403より塗布液を吐出させて、基板に塗布を行う。塗布後は基板保持台402上の基板を移載装置411に受け渡す。基板を受け渡した後、基板保持台は最初の位置に戻り、以降同じ動作を繰り返して、基板を1枚ずつ処理していく。
【0053】
図6および図8に示す一連の動作を比較すると、本発明の塗布方法(図6)では、一定の時間内に2枚の基板を塗布できているのに対して、従来の塗布方法(図8)では、1枚の基板しか塗布できていない。したがって、本発明の塗布方法による基板1枚の処理に要する時間(タクトタイム)は、各々の動作時間は同じであっても、従来の塗布方法の1/2にできる。なお、両者ともにダイコータおよびダイは1台のみで構成されているため、装置コスト、および、塗布運転前のセットアップやメンテナンスにかかる人的コストは同じである。
【0054】
以上の実施形態では基板保持台が2台の場合について述べたが、3台以上有しても良い。
【0055】
また、本発明の別の実施態様について説明する。図9は2つの吐出口を有するダイ180を分解した状態を示す側面断面図であり、図10は基板上に塗布液を塗布するときの側面断面図である。
【0056】
図9を見ると、ダイ180はリップA181、リップB182、の間にスペーサ183A、183B、リップC193を組み合わせて、ボルト184で締め付けて、スペーサ183A、183Bに等しいスリット190A、190Bを形成する。スリット190A、190Bの先端には2つの吐出口194A、194Bが形成される。また、リップC193の先端には先端部がシャープエッジとなる切り欠き部189が設けられている。
【0057】
また、リップA181とリップB182には、リップC193と対向する面に、それぞれマニホールド191A、191Bが形成されている。このマニホールド191A、191Bは塗布液が流入する流入口185A、185Bと連結されている。さらに、各流入口185A、185Bはダイ連結ホース187A、187Bを介して、シリンジポンプ62に取り付けられている切替バルブ188に接続されている。この切替バルブ188を制御することにより、シリンジポンプ62から送られる塗布液を選択的に流入口185Aと185Bに送ることができる。このダイ180を用いた塗布は、矢印27Aの方向に移動させる時は流入口185Aから塗布液を流入し、矢印27Bの方向に移動させる時は流入口185Bから塗布液を流入して行う。
【0058】
本実施態様は、図1のダイコータ10でダイ80の吐出口先端部形状が非対称形でないと塗布できない場合に有効である。特に、ダイ180の先端部と基板300の間に形成される液溜まり192を高速でも安定させるには、液溜まりの下流側となるリップの先端をシャープエッジ形状にすると良いことが知られており、図10に示す実施例ではどちらの塗布方向27A、27Bにおいても、液溜まり192の下流側のリップ形状はシャープエッジとなるように配されているので、塗布速度の増速が可能となり、さらなるタクトタイムの短縮に有効である。
【0059】
なお、本実施態様では、ダイ180を図示しない1台の定容量送液ポンプに連結した場合について述べたが、切替バルブ188を無くして、それぞれのダイ連結ホース187A、187Bを別々のシリンジポンプ等の送液ポンプに接続しても良い。
【0060】
また、リップC193の先端形状は図9に示す切欠き部189に限らず、シャープエッジ形状であればいかなる形態でも良い。
【0061】
なお、ダイ180を用いた時の塗布方法は、塗布方向にしたがって、シリンジポンプ62からの送液先として、ダイ180の流入口185A、185Bを選択する。他は上記した塗布方法と全く同じである。
【0062】
さらにまた、本発明の別の実施態様について説明する。図11は本発明になる別の清掃ユニット130を塗布方向から見たときの概略正面図である。本実施態様では清掃ユニット130は、対向するように配された清掃具131A、131Bと、これらを保持する清掃具保持部材132A、132Bと、これらを吐出口90と離接する方向に昇降するエアーシリンダー133A、133Bと液受け134からなる。この清掃ユニット130は図2に示す清掃ユニット110のかわりに用いる。
【0063】
ここで、清掃具131Aと131Bは吐出口90と線接触する形状を有しており、吐出口90に接触させながら、135Aまたは135Bの方向に清掃ユニット130を移動させることで吐出口90の周辺に付着した塗布液を掻き取って除去する。135Aの方向に移動するときは清掃具131Aを、135Bの方向に移動するときは清掃具131Bを吐出口90に当接させる。このように、それぞれの移動方向で清掃具を最適な姿勢で吐出口90に線接触させることにより、1回の動作で確実に塗布液を除去することができる。本実施態様は図1のダイコータ10において、ダイ80の吐出口90に付着した塗布液を除去する時に、清掃具の角度等に方向性があって、1個の清掃具では1方向にしか掻き取れず、戻りの動作のためにタクトタイムが増大する場合に有効である。
【0064】
本発明が適用できる塗布液としては、粘度が1cps〜100000cps、望ましくは10cps〜50000cpsであり、ニュートニアンが塗布性から好ましいが、チキソ性を有する塗布液にも適用できる。本発明は特に、カラーフィルターの製造工程で使用するブラックマトリックス、R、G、Bの各画素用塗布液、および、レジスト液、オーバーコート剤を、枚葉塗布するスリットダイに適している。
【0065】
また、本発明が適用できる基板サイズは対角の長さが、100mm〜2000mmであり、より好ましくは500mm〜1600mmである。基板材質はガラスの他に、アルミなどの金属板、セラミック板、シリコンウェハー等でもよい。
【0066】
さらに使用する塗布条件としては、クリアランスが40〜500μm、より好ましくは80〜300μm、塗布速度が0.1m/分〜10m/分、より好ましくは0.5m/分〜6m/分、ダイのスリット幅は50〜1000μm、より好ましくは100〜600μm、塗布厚さが5〜400μm、より好ましくは20〜250μmである。
【0067】
また、本発明は、ダイコータ以外に、ダイをノズルやスプレーノズルにしたノズル塗布やスプレー塗布にも適用できる。
【0068】
【実施例】
実施例1
360×465mmで厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板上に、基板の幅方向にピッチが254μm、基板の長手方向にピッチが85μm、線幅が20μm、RGB画素数が4800(基板長手方向)×1200(基板幅方向)、対角の長さが20インチ(基板幅方向に305mm、基板長手方向に406mm)となる格子形状で、厚さが1μmとなるブラックマトリックス膜を作成した。ブラックマトリックス膜は、チタン酸窒化物を遮光材、ポリアミック酸をバインダーとして用いたものであった。
【0069】
続いてウェット洗浄によって基板上のパーティクルを除去後、ポリアミック酸をバインダー、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンと3−メチル−3−メトキシブタノールの混合物を溶媒、ピグメントレッド177を顔料にして固形分濃度10%で混合し、さらに粘度を50cpsに調整したカラーフィルター用R色の塗布液を、図1のダイコータ10で、クリアランス100μm、塗布速度3m/分の塗布条件で、20μm全面塗布した。
【0070】
ここで、ダイは1個の吐出口を有するもので、吐出口の長さが360mm、スリット幅が100μmであり、吐出口清掃装置には先端にシリコンゴム製の清掃具を1個備えたものを用いた。
【0071】
続いて、真空乾燥を80℃で20秒実施した後、上記と全く同じダイと塗布速度、クリアランスを用いて、粘度8%のレジスト液を10μm塗布後、90℃のホットプレートで10分乾燥後、露光・現像・剥離を行って、R画素部にのみ色塗膜を残した。
【0072】
同様の色塗膜の形成をG、B色についても、上記と全く同じダイと塗布条件を用いてそれぞれの色塗膜を形成した。ここでG色の塗布液には、R色の塗布液で顔料をピグメントグリーン36にして固形分濃度10%で粘度を40cpsに調整したもの、B色の塗布液には、R色の塗布液で顔料をピグメントブルー15にして固形分濃度10%で粘度を50cpsに調整したもの、を用いた。
【0073】
R、G、Bの画素膜形成後に260度のホットプレートで30分加熱して、キュアを行った。
【0074】
そして最後にITOをスパッタリングで付着させた。
【0075】
以上の工程によりカラーフィルターを連続して100枚作成した。
【0076】
ここで、R、G、B、レジストを塗布する時のタクトタイムは平均15秒であった。また、得られたカラーフィルターは、色度も基板全面にわたって均一で、品質的に申し分ないものであった。
【0077】
比較例1
本比較例では、R、G、B、レジストを塗布するダイコータとして、図7のダイコータを用いる以外は上記実施例1と全く同じ条件でカラーフィルターを製造した。ここで、R、G、B、レジストを塗布する時のタクトタイムは平均30秒となった。
【0078】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の塗布装置および塗布方法では、複数の基板保持位置の一方で塗布を行う間に、他の基板保持位置で基板の載置または排出を行うので、1台のダイコータで複数の基板をもっとも効果的に並列処理することが可能になり、タクトタイムを大幅に短縮することができる。
【0079】
また、方向性を考慮して、ダイの移動の間にダイ吐出口を清掃できるようにしたり、複数の吐出口を有するダイで塗布できるようにしたので、いかなる塗布液にも対応でき、塗布の高速化が可能となる。
【0080】
さらにまた、本発明のカラーフィルター製造装置および製造方法によれば、1台のダイコータおよびダイを用いて、短いタクトタイムで基板を処理できるので、装置・人的コストを増大させずに、高い生産性でカラーフィルターを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のダイコータを示す概略斜視図である。
【図2】この発明のダイコータを塗布方向に垂直に破断したときのステージ部断面図である。
【図3】この発明のダイコータを塗布幅方向と垂直に破断したときのステージ部断面図である。
【図4】この発明のダイを用いて塗布するときの断面図である。
【図5】この発明の塗布方法の一例を示す概略図である。
【図6】この発明の塗布方法によるタイムチャートである。
【図7】従来の発明の塗布装置を示す概略斜視図である。
【図8】従来の発明の塗布方法によるタイムチャートである。
【図9】この発明の別のダイの分解した状態えお示す側面断面図である。
【図10】この発明の別のダイを用いて塗布するときの側面断面図である。
【図11】この発明の別の清掃ユニットを示す概略正面図である。
【符号の説明】
10:ダイコータ
20:ステージ
21:ベース
22A、22B:基板保持台
23:リニアスライダー
24:リニアモータ
25:支柱ベース
26:支柱
27A、27B:塗布方向
28A、28B:リフトピン
29A、29B:基板ガイドピン
40:ダイ昇降部
50:ダイ保持材
60:塗布液供給部
61:タンク
62:シリンジポンプ
63:吸引ホース
64:供給ホース
65A、65B:開閉弁
80:ダイ
81:リップA
82:リップB
83:スペーサ
84:ボルト
85:流入口
86:スリット
87:マニホールド
90:吐出口
100:吐出口清掃装置
101:ユニット保持部材
110:清掃ユニット
111:清掃具
112:清掃具保持部材
114:液受け
120:駆動部
121:リニアモータ
122:リニアガイド
130:清掃ユニット
131A、131B:清掃具
132A、132B:清掃具保持部材
133A、133B:エアーシリンダー
134:液受け
150:シーケンサ
135A、135B:移動方向
180:ダイ
181:リップA
182:リップB
183A、183B:スペーサ
184:ボルト
185A、185B:流入口
187A、187B:ダイ連結ホース
188:切替バルブ
189:切り欠き部
190A、191B:スリット
191A、191B:マニホールド
192:液溜まり
193:リップC
194A、194B:吐出口
200、200A、200B:移載装置
201A、201B:ロボット
202A、202B:ハンド
300:基板
400:ダイコータ
402:基板保持台
403:ダイ
410、411:移載装置
P1、P3:塗布開始位置
P2、P4:塗布終了位置
Claims (4)
- 1台の塗布装置であって、2枚の基板を塗布方向に相重ならないように保持する2箇所の基板保持位置を有するテーブルと、前記基板表面に塗布液を吐出する吐出口を有する1台の塗布器と、前記吐出口を清掃する吐出口清掃装置と、前記塗布器に塗布液を供給する塗布液供給機構と、前記塗布器を基板保持位置に保持した基板の塗布位置に移動させるとともに前記塗布液供給機構のすべてまたはその一部が配されている移動手段と、前記テーブル上に基板を載置する基板載置手段と、前記テーブル上から基板を排出する基板排出手段と、任意の基板保持位置に載置された基板に前記塗布器から塗布液を吐出して塗布する間に基板載置手段と基板排出手段によって他の基板保持位置へ塗布器の長手方向に基板を載置および/または排出させる制御手段とが、設けられたことを特徴とする塗布装置。
- 請求項1に記載の塗布装置を用いて、カラーフィルターを製造することを特徴とするカラーフィルター製造装置。
- 塗布液を吐出する吐出口を有する塗布器をテーブル上に保持された基板の塗布位置に移動させながら、該塗布器から塗布液を吐出することにより、基板表面に塗膜を形成する塗布方法において、前記テーブルは2枚の基板を塗布方向に相重ならずに2箇所の基板保持位置で保持できるものであり、該テーブル上の任意の基板保持位置に載置された基板に1台の塗布器より塗布液を吐出して塗膜を形成する間に、他の基板保持位置では塗布器の長手方向に基板の排出および/または基板の載置を行うことを特徴とする塗布方法。
- 請求項3に記載の塗布方法を用いて、カラーフィルターを製造することを特徴とするカラーフィルター製造方法。
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