JP4411514B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
このような電動パワーステアリング装置では、ステアリングホイールに加えられる操舵トルクと、電動モータからステアリング機構に与えられるアシストトルク目標値との関係を定めるアシスト特性が予め定められており、アシストマップとしてメモリに格納されている。そして、このアシストマップから操舵トルクに応じたアシストトルク目標値が読み出され、この読み出されたアシストトルク目標値に基づいて電動モータが駆動制御されるようになっている。
これらの問題は、操舵トルクに対して、より大きなアシストトルク目標値が設定されるように、アシスト特性曲線の傾斜を大きくすることによって、解決することができる。しかし、この場合には、切り込み操舵時の手応え感が損なわれるという問題がある。
ところが、上記の先願に係る構成では、切戻し前後のタイミングや保舵時の操舵負担によらずに、保舵時および戻し操舵時に適用される上記シフト量が一定であるため、操舵違和感を生じる場合がある。とくに、Uターン操舵を行う場合には、大舵角での切り込みが終わった後、わずかな時間の保舵に引き続き、すぐに戻し操舵に移ることになる。このとき、操舵の後半(ごく短時間の保舵状態から戻し操舵に移る瞬間)に、操舵負担が一瞬軽くなる現象が生じ、これが操舵違和感の原因となっている。
基本アシスト特性の修正は、この基本アシスト特性を操舵トルクの座標軸方向にシフトすることによって行われるが、そのときのシフト量が、操舵トルクの絶対値に基づいて定められる。これにより、操舵負担の大小に応じてシフト量が適切に定められるから、操舵違和感を解消して、良好な操舵フィーリングを実現できる。
また、操舵トルクの絶対値が第1しきい値以下の第1区間においては操舵トルクの絶対値の増加に伴って上限値まで増加するとともに操舵トルクの絶対値が上記第1しきい値を超える第2区間においては操舵トルクの絶対値によらずに上記上限値となる特性に従ってシフト量が設定される。これにより、とくに、第1しきい値以下の第1区間の特性により、保舵時または戻し操舵時の操舵負担に応じてシフト量が定められるから、操舵違和感の少ない良好な操舵フィーリングが得られる。
より具体的には、たとえば、操作部材による操舵速度を検出する操舵速度検出手段(23)を設け、この操舵速度検出手段によって検出される操舵速度の方向(操舵方向に等しい)および大きさに応じて、基本アシスト特性のシフト方向およびシフト量が可変設定される。たとえば、トルクセンサによって検出される操舵トルクが、右操舵方向に対して正の値をとり、左操舵方向に対して負の値をとり、基本アシスト特性において、操舵トルクの正の値に対してモータ駆動目標値の正の値が割り当てられ、負の値の操舵トルクに対しては負の値のモータ駆動目標値が設定されているものとする。また、操舵速度は、右操舵方向に対して正の値をとり、左操舵方向に対して負の値をとるものとする。
この構成によれば、基本アシスト特性のシフト量を、車速に応じて可変設定できるから、たとえば、停車時や低速走行時でのステアリング操作のように、アシスト特性の修正がさほど必要でない場合にも対応できる。
図1は、この発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の電気的構成を示すブロック図である。操作部材としてのステアリングホイール1に加えられた操舵トルクは、ステアリングシャフト2を介して、ラック軸を含むステアリング機構3に機械的に伝達される。ステアリング機構3には、電動モータMから操舵補助力が、ギヤ機構(減速機構)等の駆動力伝達機構を介して、またはダイレクトドライブ方式によって、機械的に伝達されるようになっている。
コントローラ10には、さらに、当該電動パワーステアリング装置が搭載される車両の走行速度を検出する車速センサ6の出力信号と、ステアリングホイール1の操舵角(たとえば、入力軸2Aの回転角)を検出する舵角センサ7の出力信号とが入力されている。
マイクロコンピュータ20は、プログラム処理を実行することによって実現される機能処理部であるアシストトルク目標値設定部21と、マイクロコンピュータ20内のメモリの記憶領域により構成されるアシスト特性記憶部22とを備えている。アシスト特性記憶部22は、複数の車速域のそれぞれに対して予め定めた複数の基本アシスト特性にそれぞれ対応する複数の基本アシストマップを記憶している。基本アシスト特性は、操舵トルクに対するアシストトルク目標値の基本特性を定めたものであり、複数の操舵トルクの値に対応付けて、アシストトルク目標値の基本値がアシストマップ(テーブル)の形式でアシスト特性記憶部22に記憶されている。
トルクセンサ5によって検出される操舵トルクTは、ステアリングホイール1に右方向操舵のためのトルクが加えられているときには正の値をとり、ステアリングホイール1に左方向操舵のためのトルクが加えられているときには負の値をとる。基本アシスト特性は、図2において、曲線L0で示されている。この基本アシスト特性は、操舵トルクTの正の値に対してアシストトルク目標値Taの正の値を対応付け、操舵トルクTの負の値に対してアシストトルク目標値Taの負の値を対応付けるように定められている。上述のとおり、アシスト特性記憶部22には、複数の車速域に対応した複数の基本アシストマップが記憶されているが、説明を簡単にするために、図2においては、或る車速域において適用される1つの基本アシスト特性が示されている。
この実施形態では、操舵角速度演算部23によって演算される操舵角速度ω、車速Vおよび操舵トルクTに基づいてシフト量演算部24によって演算されるシフト量ΔTだけ、基本アシスト特性を操舵トルクTの座標軸方向(正方向または負方向)にシフトさせた仮想的な修正アシスト特性(たとえば、曲線L11,L12で示す特性)に基づいて、アシストトルク目標値Taが設定されることになる。
シフト量演算部24は、操舵トルクTおよび操舵角速度ωに基づいて基本シフト量ΔTBを求め、この基本シフト量ΔTBに後述の車速ゲインGVおよびトルクゲインGTを乗じることによって、シフト量ΔT(=GV×GT×ΔTB)を求める。
図3は、操舵角速度ωに対する操舵角速度係数kωの関係を示す図である。シフト量演算部24は、たとえば図3(a)(b)に示された特性の曲線(この例では折れ線)に対応したテーブルを記憶したメモリを有している。シフト量演算部24は、操舵トルクTがT≧0のときには、図3(a)に示す特性のテーブルに従って操舵角速度係数kωを定め、操舵トルクTがT<0のときには、図3(b)に示す特性のテーブルに従って操舵角速度係数kωを定める。
図4の例では、操舵トルク絶対値|T|の範囲が、第1しきい値T1(たとえば4(Nm))、第2しきい値T2(たとえば5(Nm))および第3しきい値T3(たとえば、6(Nm)によって区切られていて、0≦|T|≦T1の区間では、操舵トルク絶対値|T|の増加に伴って上限値α(たとえば、α=0.5Nm)までリニアに増加するようにシフト基本値ΔT0が定められ、T1<|T|≦T2の区間では、操舵トルク絶対値|T|によらずにシフト基本値ΔT0=αとされ、T2<|T|≦T3の区間では、上限値αから0までリニアに減少するようにシフト基本値ΔT0が定められ、T3<|T|の区間では、操舵トルク絶対値|T|によらずにシフト基本値ΔT0=0とされている。
また、Uターン操舵時のように大きな操舵角のときには、保舵状態に移った直後の操舵トルク絶対値|T|は、T2<|T|の区間内の大きな値をとる。この状況では、操舵トルク絶対値|T|が大きいほど、基本シフト量ΔTBの絶対値が抑えられるから、操舵の後半に操舵力が一瞬軽くなるという現象を防ぐことができ、操舵違和感を解消できる。
これによって、停車時や低速走行時でのステアリング操作のように、アシスト特性の修正がさほど必要でない場合にも対応できる。
上記のようにして定められるシフト量ΔTに基づき、アシストトルク目標値Taは、基本アシスト特性を操舵トルク座標軸に沿ってシフト量ΔTだけシフトさせた仮想的な修正アシスト特性に従って定められることになる。
このようにして、基本アシスト特性をシフト量ΔTだけ操舵トルク座標軸方向に沿ってシフトさせて得られる仮想的な修正アシスト特性に従うアシストトルク目標値Taが、アシスト特性記憶部22から読み出されることになる。この読み出されたアシスト特性目標値Taに基づき、モータドライバ30が制御され、それに応じた駆動力をモータMが発生して、ステアリング機構3に与えることになる。
この実施形態では、ステップS5およびS6の処理が省かれていて、シフト基本値ΔT0は、各制御周期において検出される操舵トルクTに応じて、リアルタイムに変動することになる。これにより、保舵操舵中および切り戻し操舵中において、操舵力に応じた適切なシフト量が刻々と可変設定されるから、操舵フィーリングをさらに向上することができる。
また、上記の実施形態では、アシスト特性記憶部22に、基本アシスト特性に対応するアシストマップを記憶させておいて、このアシストマップからアシストトルク目標値Taを読み出す構成とされているが、関数演算によって、検索用操舵トルク値T*に対応したアシストトルク目標値Taを定める構成としてもよい。
さらに、上記の実施形態では、舵角センサ7が検出する操舵角を時間微分することによって操舵角速度を演算しているが、舵角センサを用いずに、電動モータMのモータ電流を求めるモータ電流検出回路の出力と、電動モータMの端子間電圧を検出する端子間電圧検出回路の出力とに基づいて、電動モータMの端子間に生じる逆起電力を求め、これに対応した操舵角速度を推定する構成を採用してもよい。
3 ステアリング機構
5 トルクセンサ
6 車速センサ
7 舵角センサ
10 コントローラ
20 マイクロコンピュータ
21 アシストトルク目標値設定部
22 アシスト特性記憶部
23 操舵角速度演算部
24 シフト量演算部
30 モータドライバ
M 電動モータ
Claims (2)
- 電動モータの駆動力をステアリング機構に伝達して操舵補助する電動パワーステアリング装置であって、
車両の操向のための操作部材に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサと、
このトルクセンサによって検出される操舵トルクに対するモータ駆動目標値の基本特性である基本アシスト特性を設定する基本アシスト特性設定手段と、
この基本アシスト特性設定手段によって設定された基本アシスト特性を操舵トルクの座標軸方向にシフトさせて得られる修正アシスト特性に従って、上記トルクセンサによって検出される操舵トルクに対応するモータ駆動目標値を設定するモータ駆動目標値設定手段と、
上記基本アシスト特性に対する上記修正アシスト特性のシフト量を、上記トルクセンサによって検出される操舵トルクの絶対値に基づいて設定するシフト量設定手段と、
上記モータ駆動目標値設定手段によって設定されたモータ駆動目標値に基づいて上記電動モータを駆動するモータ駆動手段とを含み、
上記シフト量設定手段は、上記操作部材を舵角中点から離れる方向に操作する切り込み操舵がされたときには、上記基本アシスト特性に対する上記修正アシスト特性のシフト量を零に定め、保舵状態のときおよび上記操作部材を舵角中点に向かって操作する切り戻し操舵のときには、上記基本アシスト特性に対する上記修正アシスト特性のシフト量を、上記トルクセンサによって検出される操舵トルクに対するモータ駆動目標値の絶対値が増加した修正アシスト特性が得られるとともに、操舵トルクの絶対値が第1しきい値以下の第1区間においては操舵トルクの絶対値の増加に伴って上限値まで増加するとともに操舵トルクの絶対値が上記第1しきい値を超える第2区間においては操舵トルクの絶対値によらずに上記上限値となる特性に従う値に設定するものであることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 上記シフト量設定手段は、切り込み操舵が完了して保舵状態または切り戻し操舵へと移るタイミングにおいて上記トルクセンサが検出する操舵トルクに基づいて、保舵状態のときおよび切り戻し操舵のときの上記シフト量を演算するものであることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
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