JP3623022B2 - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動式パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、応答性の良さや小型軽量化が可能であるといった利点から、電動式パワーステアリング装置が注目されるようになってきた。こうした電動式パワーステアリング装置においては、そのままでは従前の油圧式パワーステアリング装置におけるような自然なヒステリシス特性が得られず、運転者の操舵フィーリングや制御の安定性の点で油圧式に劣る面があった。
【0003】
このため、従来、クラッチ制御によってヒステリシス特性を与えたり(特開昭61−202973号公報)、インダクタンスによる阻止電流を戻り操作状態のときには別回路に流すようにしてヒステリシス特性を与えて(特公平4−57543号公報)、操舵フィーリングの改善を狙った提案がなされてきた。
【0004】
しかし、これら従来の技術では、ヒステリシス特性が一律にしか得られず、操舵フィーリングの改善は未だ十分とはいえなかった。
そこで、本発明は、電動式パワーステアリング装置における操舵フィーリングを油圧式パワーステアリング装置により一層近づけることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段、発明の実施の形態及び発明の効果】
本発明の電動式パワーステアリング装置は、基準とする操舵速度における、操舵系の入力トルクに応じたアシストトルク指令値を演算する指令値演算部と、
前記基準とする操舵速度と実際の操舵速度との差に基づいて、前記指令値演算部が演算したアシストトルク値を補正する指令値補正部と、
前記指令値補正部にて補正されたアシストトルク指令値に基づいてモータ駆動回路へ通電し、電動モータによる操舵アシスト力を発生させるアシスト力発生手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
この電動式パワーステアリング装置によれば、入力トルクが同一であっても操舵速度が異なればアシストトルク指令値が異なった値とされる。この場合、前記アシストトルク指令値は、操舵速度が速いほど小さい値とされる
【0008】
以上の様な本発明によれば、油圧式パワーステアリング装置におけると同様に、自然な操舵フィーリングを達成することができるとともに、様々なヒステリシス特性を持たせるために新たに記憶すべき情報が増えず、装置構成を複雑化したり記憶容量を増大させたりする必要がない
なお、操舵速度は、ハンドルに速度センサを設けておいて直接検出するようにしてもよいし、ラック軸のストローク速度から検出するようにしてもよい。
【0009】
【実施例】
以下、本発明を適用した電動式パワーステアリング装置の実施例について説明する。
実施例の電動式パワーステアリング装置では、図1に示すように、タイヤ1,1とタイロッド3,3を介して両端を連結されたラック軸5に、ラック歯7とスクリュー溝9とを設けてある。ラック歯7には操舵軸11の下端に設けられたピニオン歯車13を噛み合わせ、マニュアルステアリングを可能にしている。また、スクリュー溝9には、これを取り囲む様にラック軸5と同軸的にステッピングモータ15を取り付け、両者の間にボール17を介在させてアシスト用のボールスクリューを構成している。
【0010】
このステッピングモータ15は、電子制御装置(ECU)30によって駆動制御される。ECU30には、操舵軸11に取り付けられて入力トルクの大きさを検出するトルクセンサ21、ステッピングモータ15のポジションを検出するポジションセンサ23及び車速センサ25からの検出信号が入力される。ECU30は、これら検出信号に基づいて、アシストトルク指令値を演算し、この指令値に従って、ステッピングモータ15に対してバッテリ27からの駆動電力を供給する。
【0011】
トルクセンサ21は、操舵軸上部と下部とを連結するトーションバーのねじれによって生じる歪の大きさに対応するアナログ信号を出力するものである。ポジションセンサ23は、ステッピングモータ15に装着されたレゾルバであり、ステッピングモータ15の位相角に対応する波形信号を出力するものである。車速センサ25は、スピードメータケーブル用の出力軸が1回転する毎に1パルスの信号を出力するものである。
【0012】
ステッピングモータ15は、VR型の4相励磁方式のものであり、その駆動回路の概略を示すと、図2の様に構成される。
第1相と第3相、第2相と第4相がそれぞれグループに分けられている。そして、各グループについてバッテリ27の正側とを結ぶコモンラインが設けられ、そこにそれぞれ1個ずつのMOS型FET(QA,QB)が配置されている。また、各相は独立ラインでバッテリ27の負側と接続され、そこに各1個のMOS型FET(Q1〜Q4)が配置されている。なお、駆動回路内には、リカバリー用として、ダイオードDA,DB,D1〜D4が配置されている。
【0013】
この駆動回路により、左操舵及び右操舵に対して、それぞれ定められている順番に各相を励磁し、左右へのアシスト力を発生する様になっている。
ECU30は、その果たす役割に着目してブロック図に表すと図3の様になる。
【0014】
まず、入力部40として、トルクセンサ21からの検出信号を入力し、これを入力トルクデータに換算するための入力トルク換算部41と、車速センサ25からの車速パルス信号を入力し、これを車速データに換算するための車速換算部42と、ポジションセンサ23からの波形信号を入力し、これを位相角に換算する位相角換算部43とを備えている。
【0015】
演算部50には、入力トルクデータと車速データに基づいてアシストトルク指令値を演算する指令値演算部51と、位相角の変化に基づいてステッピングモータの回転角速度を演算する角速度演算部52と、モータの回転角速度と車速とからラック軸5のストローク速度を演算するストローク速度演算部53と、このストローク速度に基づいてアシストトルク指令値を補正するための指令値補正部54と、位相角に回転角速度を加味して位相角を補正する位相角補正部55と、アシストトルク指令値に基づいて駆動電流値を算出すると共に、入力トルクの正負により操舵方向を特定して励磁順を決定し、補正された位相角に基づいて励磁相を特定する励磁相&電流値演算部56とを備えている。
【0016】
指令値演算部51が実行する演算は、従来公知のものと同じであり、入力トルクに比例したアシストルク指令値を算出する。
角速度演算部52は、前回演算タイミングにおける位相角と今回演算された位相角との差分からモータ回転角速度を算出する。そして、位相角補正部55は、今回検出された位相角に、このモータ回転角速度を加味して、次の演算タイミングまでの位相角の変化を予測するのである。
【0017】
ストローク速度演算部53は、角速度に対して減速比を考慮してストローク速度sを算出する。このストローク速度は、操舵速度に比例する。
指令値補正部54は、下記式に従ってアシストトルク指令値を補正する。
【0018】
【数1】
=a ×[1−{(s−smax )/smax }・K]
ここで、
:補正後のアシストトルク指令値
:指令値演算部51により算出されたアシストトルク指令値
:実際のストローク速度
max :最高ストローク速度
K :係数
である。
【0019】
このアシストトルク指令値を算出する処理の内容をフローチャートで表すと、図4に示すようになる。まず、入力部40から操舵トルクT 、車速V を入力し、アシストトルク指令値a を求める(S10,S20)。そして、ストローク速度s を入力し、上記式に基づいて操舵速度を考慮したアシストトルク指令値a を算出する(S30,S40)。
【0020】
具体例で説明すると、図5(A)に示すように、まず、入力トルクT に対する最高操舵速度時のアシストトルク指令値a が、スマイル曲線A に基づいて算出される。次に、実際の操舵速度に対応したアシストトルク指令値a が得られる。このa は、図中点線で示すように当該操舵速度におけるスマイル曲線A が描けるとすると、その上の点である。操舵速度がさらに遅くてsx2であるなら、図示の様に、アシストトルク指令値はさらに大きな値ax2に補正される。即ち、さらに遅い操舵速度sx2に対して想定されるスマイル曲線Ax2上の点がアシストトルク指令値として決定されるのである。
【0021】
この結果、同図(B)に示す様に、急操舵後にハンドルを戻すときのヒステリシス幅h1に対し、操舵速度が遅い場合のヒステリシス幅h2の方が小さいものとなり、油圧式パワーステアリングにおけるような自然な操舵フィーリングが得られる。
【0022】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々なる態様に変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の電動式パワーステアリング装置の全体を示す構成図である。
【図2】実施例におけるステッピングモータ駆動回路の回路構成図である。
【図3】実施例におけるECUの機能ブロック図である。
【図4】実施例における処理内容を示すフローチャートである。
【図5】実施例の作用を例示するグラフである。
【符号の説明】
1・・・タイヤ、3・・・タイロッド、5・・・ラック軸、7・・・ラック歯、9・・・スクリュー溝、11・・・操舵軸、13・・・ピニオン歯車、15・・・ステッピングモータ、17・・・ボール、21・・・トルクセンサ、23・・・ポジションセンサ、25・・・車速センサ、27・・・バッテリ、28・・・オン抵抗検出センサ、29・・・温度センサ、30・・・ECU、41・・・入力トルク換算部、42・・・車速換算部、43・・・位相角換算部、51・・・指令値演算部、52・・・角速度演算部、53・・・ストローク速度演算部、54・・・指令値補正部、55・・・位相角補正部、56・・・位相角&電流値演算部。

Claims (3)

  1. 基準とする操舵速度における、操舵系の入力トルクに応じたアシストトルク指令値を演算する指令値演算部と、
    前記基準とする操舵速度と実際の操舵速度との差に基づいて、前記指令値演算部が演算したアシストトルク値を補正する指令値補正部と、
    前記指令値補正部にて補正されたアシストトルク指令値に基づいてモータ駆動回路へ通電し、電動モータによる操舵アシスト力を発生させるアシスト力発生手段と、
    を備えることを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
  2. 請求項1記載の電動式パワーステアリング装置において、前記アシストトルク指令値は、操舵速度が速いほど小さい値とされることを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
  3. 請求項2に記載の電動式パワーステアリング装置において、
    前記指令値演算部は、基準とする操舵速度として最高操舵速度時における操舵系の入力トルクに応じたアシストトルク値を演算することを特徴とする電動式パワーステアリング装置。
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