JP4405001B2 - 自動二輪車におけるエンジン支持構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車体フレームに設けられて該車体フレームから下方に突出する左右一対のハンガ部に、エンジンの上部に設けられて前記両ハンガ部間に介在するボス部が、前記両ハンガ部および前記ボス部に挿通される通しボルトを介して支持され、後輪を軸支するリヤスイングアームの前端部が前記エンジンに揺動可能に支承され、前記エンジンの動力を前記後輪に伝達するチェーン伝動手段が、前記エンジンの左右いずれか一側に配置される自動二輪車に関し、特にエンジンの支持構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
このような自動二輪車は、たとえば特開平10−115226号公報等で既に知られており、エンジンを車体フレームの強度部材として機能させるようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、通しボルトを両ハンガ部およびボス部に単純に挿通させるだけでは、通しボルトの軸線に沿う方向での前記ボス部の幅の精度、ならびに両ハンガ部間の間隔の精度によっては、ボス部および両ハンガ部間に間隙が生じて車体フレームおよびエンジンの一体化が図れない。そこで、特公平5−33195号公報および特許第2587815号公報で開示されるように、両ハンガ部の一方に、通しボルトの一端側の拡径頭部を挿通せしめる挿通孔と、該挿通孔の内面に通じて下方に開放するすり割りとを設けておき、前記拡径頭部をボス部に直接当接させたり、ボス部および拡径頭部間にスペーサを介在させたりすることで、通しボルトの軸線に沿う方向での通しボルトの前記ボス部との相対位置を規制した状態で、前記すり割りの幅を狭めて前記挿通孔を縮径することにより拡径頭部を一方のハンガ部に挟圧保持するようにして、車体フレームおよびエンジンの一体化を図るようにしたものもある。
【0004】
ところで、エンジンの動力をチェーン伝動手段で後輪に伝達するようにした自動二輪車では、該チェーン伝動手段が配置される側でエンジンから車体フレームのハンガ部に作用する上下方向の荷重は、エンジンに関して前記チェーン伝動手段とは反対側でエンジンから車体フレームのハンガ部に作用する上下方向の荷重よりも大となるものであり、前記すり割りが設けられるハンガ部が、チェーン伝動手段と同一側に配置されていると、エンジンの支持強度に悪影響が及ぶ可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、エンジンを車体フレームの強度部材として有効に機能させるべく車体フレームおよびエンジンの一体化を図るとともに、チェーン伝動手段の配置に伴なう悪影響がエンジンの支持強度に及ぶことを回避した自動二輪車におけるエンジン支持構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、車体フレームが、エンジンをそのエンジン上部でのみ支持する前部フレームと、この前部フレームの後端に連なり後上がりに傾斜してシートを支持する後部フレームとより構成され、前記前部フレームが、ヘッドパイプと、そのヘッドパイプから後下りに各々延びる左右一対のメインフレームと、その両メインフレームの後端間を連結すべく鋳造で一体成形されたブラケットとにより構成され、前記両メインフレームの下部には、エンジン前部の上端部両側をそれぞれ支持するエンジン支持部材が固着され、前記ブラケットの下面には、下方に突出する左右一対のハンガ部が継ぎ目無く一体に形成され、その両ハンガ部には、エンジンの後部上面に設けられて前記両ハンガ部間に介在するボス部が、前記両ハンガ部および前記ボス部に挿通される通しボルトを介して支持され、後輪を軸支するリヤスイングアームの前端部が、前記車体フレームを介さずに前記エンジンに揺動可能に支承され、前記エンジンの動力を前記後輪に伝達するチェーン伝動手段が、該エンジン側の駆動スプロケットと、後輪に固定される被動スプロケットと、その両スプロケットに巻掛けられるチェーンとを有して前記エンジンの左右いずれか一側に配置され、前記通しボルトの軸線が車両側面視で、前記駆動スプロケットの前端及び後端をそれぞれ通る鉛直線に挟まれた領域内に位置している自動二輪車におけるエンジン支持構造であって、前記両ハンガ部のうち車体中心線に関して前記チェーン伝動手段とは反対側に配置される一方のハンガ部には、前記通しボルトの一端側の拡径頭部を挿通せしめる挿通孔と、該挿通孔の内面に通じて下方に開放するすり割りとが設けられ、前記通しボルトが該通しボルトの軸線に沿う方向での前記ボス部との相対位置を規制されて前記両ハンガ部および前記ボス部に挿通された状態で前記すり割りの幅を狭めて前記挿通孔を縮径する締付ボルトが、前記一方のハンガ部に螺合されることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、両ハンガ部の一方に、通しボルトの拡径頭部を挿通せしめる挿通孔およびすり割りが設けられ、通しボルトがエンジンのボス部との相対位置を規制されて両ハンガ部および前記ボス部に挿通された状態で前記すり割りの幅を狭めるように前記締付ボルトを締付けることで、前記挿通孔の縮径により拡径頭部が一方のハンガ部に挟圧、保持されるので、通しボルトの軸線に沿う方向でのボス部の幅の精度ならびに両ハンガ部間の間隔の精度にかかわらず、車体フレーム(特に前部フレーム)およびエンジンの一体化を図ってエンジンを車体フレームの強度部材として有効に機能させることができる。しかもすり割りが設けられるハンガ部が、車体中心線に関してチェーン伝動手段とは反対側に配置されるので、チェーン伝動手段の配置に起因して比較的大きな荷重が前記すり割りの部分に作用することを回避することができ、チェーン伝動手段の配置に伴なう悪影響がエンジンの支持強度に及ぶことがない。またエンジンの上部が、前部フレームにおける左右のメインフレーム(エンジン支持部材)およびブラケットで支持されるので、前部フレームは、従来必要としたダウンチューブを不要として、一対のメインフレームと、単一の鋳造品であるブラケットとを備えればよく、従って、部品点数の低減および前部フレームの軽量化を図りつつ、前部フレームをコンパクトに構成することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に示す本発明の一実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図5は本発明の一実施例を示すものであり、図1は自動二輪車の側面図、図2はエンジンの一部および前部フレームの拡大側面図、図3は図2の3矢視図、図4は図2の4−4線に沿うメインフレームの断面図、図5は図2の5−5線断面図である。
【0010】
先ず図1において、この自動二輪車の車体フレームFは、エンジンEが搭載される前部フレーム11と、該前部フレーム11の後端部に結合される後部フレーム12とで構成されるものであり、前部フレーム11が前端に備えるヘッドパイプ13には、前輪WFを軸支するフロントフォーク18が操向可能に支承され、フロントフォーク18の上端にはバーハンドル19が連結される。
【0011】
前部フレーム11には、車体フレームFの幅方向に複数気筒たとえば4気筒を並列配置した多気筒のエンジンEが支持される。該エンジンEにおけるクランクケース20の後部にはアーム支持部材21が支持されており、後輪WRを軸支するリヤスイングアーム22の前端部が、前記アーム支持部材21に支軸23を介して揺動可能に支持される。またアーム支持部材21およびリヤスイングアーム22間にはリンク機構24が設けられ、このリンク機構24と、前部フレーム11の後部との間にリヤクッションユニット25が設けられる。
【0012】
前記エンジンEに内蔵された変速機の出力軸26からの動力は、チェーン伝動手段27を介して後輪WRに伝達されるものであり、該チェーン伝動手段27は、前記出力軸26に固定される駆動スプロケット28と、後輪WRに固定される被動スプロケット29と、それらのスプロケット28,29に巻掛けられる無端状のチェーン30とで構成され、自動二輪車の進行方向前方を向いた状態でエンジンEの左側に配置される。
【0013】
エンジンEの上方には、前部フレーム11および後部フレーム12の前部で支持される燃料タンク31が配置され、この燃料タンク31およびエンジンE間にエアクリーナ32が、またエンジンEの前方にラジエータ33が配置される。
【0014】
エンジンEのシリンダヘッド34に接続される複数たとえば4本の排気管35,35…は、エンジンEの前方側からエンジンEの下方を経て後輪WRの右側に延出されるものであり、後輪WRの右側に配置された排気マフラー36に接続される。
【0015】
後部フレーム12は、前部フレーム11の後端から後上がりに延びる左右一対のリヤステー37…と、それらのリヤステー37…の上方で前部フレーム11の後端から後上がりに延びてリヤステー37…の後端に結合される左右一対のシートレール38…とを備え、ライダーを座乗させるためのメインシート39が燃料タンク31の後方でシートレール38…に支持され、同乗者を乗せるためのピリオンシート40が前記メインシート39から後方に離れた位置でシートレール38…に支持される。
【0016】
前部フレーム11におけるヘッドパイプ13の前方は、合成樹脂から成るフロントカウル42で覆われ、車体の前部両側が、前記フロントカウル42に連なる合成樹脂製のセンターカウル43で覆われ、排気管35,35…のうちエンジンEの下方に配置される部分を両側から覆う合成樹脂製のロアカウル44が前記センターカウル43に連設される。またフロントカウル42における上部の左右両側部には、後方確認用のミラー45…が取付けられる。
【0017】
後部フレーム12には、後輪WRの上方を覆うリヤフェンダー46が取付けられており、前輪WFの上方を覆うフロントフェンダー47はフロントフォーク18に取付けられる。また後部フレーム12およびリヤフェンダー46の大部分はリヤカウル48で覆われる。
【0018】
図2〜図4において、前部フレーム11は、ヘッドパイプ13と、該ヘッドパイプ13から後下りに延びる左右一対のメインフレーム14,14と、両メインフレーム14,14の後端間を連結するブラケット15とで構成されるものであり、両メインフレーム14,14の前部間には、エアクリーナ32を支持するための支持ステー51が設けられ、該支持ステー51は、両メインフレーム14,14を補強するクロスメンバーとしての機能も果す。
【0019】
メインフレーム14は、たとえばアウミニウム合金の鋳塊を従来公知の押出し成形方法により、中空の角形断面を有するように成形されるものであり、該メインフレーム14の両内側面には、該メインフレーム14内を上下に複数たとえば4つに区画するリブ52,53,54が一体に設けられる。
【0020】
ところで両メインフレーム14,14の下部間には、エンジンEの上端部であるヘッドカバー55およびシリンダヘッド34の一部が配置されるものであり、両メインフレーム14,14は、その押出し成形時に、前記ヘッドカバー55およびシリンダヘッド34の両側でほぼ垂直となる下半部14a,14aと、該下半部14a,14aの上端から車体中心線C側に屈曲した上半部14b,14bとから成る横断面形状を有するように成形される。
【0021】
また両メインフレーム14,14には、その押出し成形完了後にベンディング加工が施され、両メインフレーム14,14は、その長手方向中間部が外側方に凸に彎曲するように形成される。
【0022】
左側のメインフレーム14の長手方向中間部下面にはエンジン支持部材57が、また右側のメインフレーム14の長手方向中間部下面にはエンジン支持部材58がそれぞれ溶接される。しかも両メインフレーム14,14の後方下部には、エンジンEとの干渉を避けるために、前記各リブ52〜54のうち最下方のリブ54を最下部とするような切欠き部56…が設けられており、その切欠き部56…によりリブ54の後端上方には開口部が形成されることになるのであるが、メインフレーム14,14に溶接される上記エンジン支持部材57,58で前記開口部がそれぞれ閉じられる。
【0023】
前記エンジン支持部材57,58はエンジンEの上端部の両側に配置されており、エンジンEにおけるヘッドカバー55およびシリンダヘッド34が、前記エンジン支持部材57,58にそれぞれ締結、支持される。
【0024】
ブラケット15は、後輪WRを軸支するリヤスイングアーム22の前端部の上方に配置されて前記両メインフレーム14,14の後端にそれぞれ溶接される一対のフレーム側部15a,15aと、両フレーム側部15a,15a間を連結する単一のクロスパイプ部15bとを一体に有して、アルミニウム合金等により鋳造成形される。
【0025】
前部フレーム11の後端部すなわち前記ブラケット15における両フレーム側部15a,15aには、後部フレーム12における両シートレール38…の前端部を締結するための被取付け板部61,61が上方に突出するようにして一体に設けられるとともに、前記後部フレーム12における両リヤステー37…の前端部を締結するための被取付け板部62,62が後方に突出するようにして一体に設けられる。
【0026】
また前記ブラケット15におけるクロスパイプ部15bには、リヤクッションユニット25の上端部を連結するための一対の連結板部63,63が後方に突出するようにして一体に設けられる。
【0027】
図5において、前記ブラケット15におけるフレーム側部15a,15aの下部には、車体中心線Cの両側に配置される左右一対のハンガ部64,65が下方に突出して一体に設けられる。一方、エンジンEのクランクケース20における後部側上部には、前記両ハンガ部64,65間に介在するようにしてボス部20aが一体に設けられており、該ボス部20aは、軸方向に比較的長い拡径頭部70aを一端側に有して両ハンガ部64,65および前記ボス部20aに挿通される通しボルト70を介して車体フレームFに支持される。
【0028】
前記体中心線Cに関してチェーン伝動手段27が配置される側(この実施例では車体中心線Cの左側)のハンガ部64には、通しボルト70の他端に螺合されるナット74を軸線まわりに回転不能として嵌合せしめる外方側の嵌合孔66と、該嵌合孔66よりも小径である挿通孔67とが、通しボルト70の他端部を挿通せしめるべく同軸に設けられる。
【0029】
また前記体中心線Cに関してチェーン伝動手段27が配置される側と反対側(この実施例では車体中心線Cの右側)のハンガ部65には、挿通ボルト70の一端側の拡径頭部70aを挿通せしめる挿通孔68が前記嵌合孔66および挿通孔67と同軸に設けられるとともに、該挿通孔68の内面に通じて下方に開放するすり割り69が設けられる。
【0030】
前記ハンガ部65には、すり割り69の幅を狭めて前記挿通孔68を縮径し得る締付ボルト73が螺合されており、この締付ボルト73を締付けることで、挿通ボルト70の拡径頭部70aをハンガ部65に挟圧、保持することが可能である。
【0031】
さらに前記ボス部20aには、前記嵌合孔66および挿通孔67,68と同軸である挿通孔75が設けられており、ボス部20aおよびハンガ部64間には、挿通ボルト70を挿通させる円筒状のスペーサ71が介装される。挿通ボルト70は、ハンガ部66側から挿通孔68,75、スペーサ71、挿通孔67,66に挿通されるものであり、拡径頭部70aは、挿通孔68に挿通されるが挿通孔75には挿通不能となる外径を有するように形成される。而してハンガ部65の挿通孔68に嵌合される拡径頭部70aがボス部20aに当接するまでナット74を締付けると、該挿通ボルト70の前記ボス部20aに対する軸方向位置が規制されることになる。
【0032】
次にこの実施例の作用について説明すると、車体フレームFを後部フレーム12と共働して構成する前部フレーム11は、前輪WFを操向可能に支承するヘッドパイプ13と、該ヘッドパイプ13から後下りに延びる左右一対のメインフレーム14,14と、両メインフレーム14,14の後端間を連結するブラケット15とを備えるものであり、ブラケット15は、両メインフレーム14,14の後端にそれぞれ溶接される一対のフレーム側部15a,15aと、両フレーム側部15a,15a間を連結する単一のクロスパイプ部15bとを一体に有して鋳造成形される。しかも両メインフレーム14,14および両フレーム側部15a,15aにエンジンEの上部が支持され、後輪WRを軸支するリヤスイングアーム22の前端部が両フレーム側部15a,15aの下方でエンジンEに揺動可能に支持されている。
【0033】
すなわちエンジンEの上部が、メインフレーム14,14およびブラケット15で支持されるので、車体フレームFのうち前部フレーム11が、従来必要としたダウンチューブを不要として、一対のメインフレーム14,14と、一対のフレーム側部15a,15aおよび単一のクロスパイプ部15bを一体に有する鋳造品であるブラケット15とを備えればよく、部品点数の低減および前部フレーム11の軽量化を図りつつ、前部フレーム11をコンパクトに構成することができる。しかも両フレーム側部15a,15a間をクロスパイプ部15bで連結するための溶接工程は不要であり、従来必要としたダウンチューブの連結作業も不要であるので、前部フレーム11の組立作業工数を低減することが可能である。さらに後輪WRを軸支するリヤスイングアーム22の前端部がエンジンEに揺動可能に支持され、このリヤスイングアーム22の前端部の上方にフレーム側部15a,15aが配置されるので、両フレーム側部15a,15aおよびクロスパイプ部15bを一体に有するブラケット15を、比較的小型の金型で鋳造することが可能であり、鋳造コストも抑えることができる。
【0034】
またメインフレーム14は、エンジンEの上端部の両側でほぼ垂直となる下半部14aと、該下半部14aの上端から車体中心線C側に屈曲した上半部14bとから成る横断面形状を有して、押出し成形されるものであるので、メインフレーム14の上半部14bが車体中心線C側に傾斜することになる。したがってエンジンEの上端部を配置するスペースを左右のメインフレーム14,14の下部間に確保しつつ、両メインフレーム14,14の上部間の幅を狭くすることで車体のコンパクト化を図ることが可能である。しかもメインフレーム14が押出し成形されるものであるので、押出し成形時にメインフレーム14の横断面形状は長手方向全長にわたって同一であり、メインフレーム14の剛性が低下することはない。
【0035】
さらに車体フレームFにおけるブラケット15に設けられて該ブラケット15から下方に突出する左右一対のハンガ部64,65のうち、車体中心線Cに関してチェーン伝動手段27とは反対側に配置されるハンガ部65には、通しボルト70の一端側の拡径頭部70aを挿通せしめる挿通孔68と、該挿通孔68の内面に通じて下方に開放するすり割り69とが設けられるとともに、すり割り69の幅を狭めて前記挿通孔68を縮径する締付ボルト73が螺合されている。しかもハンガ64および前記ボス部20a間にはスペーサ71が介装され、通しボルト70は、その軸線に沿う方向でのボス部20aとの相対位置を規制されて両ハンガ部64,65およびボス部20aに挿通される。
【0036】
したがって、通しボルト70がエンジンEにおけるクランクケース20のボス部20aとの相対位置を規制されて両ハンガ部64,65および前記ボス部20aに挿通された状態で、前記すり割り69の幅を狭めるように締付ボルト73を締付けることで、前記挿通孔68の縮径により拡径頭部70aがハンガ部65に挟圧、保持されることになる。この結果、通しボルト70の軸線に沿う方向でのボス部20aの幅の精度ならびに両ハンガ部64,65間の間隔の精度にかかわらず、車体フレームFおよびエンジンEの一体化を図ってエンジンEを車体フレームFの強度部材として有効に機能させることができる。しかもすり割り69が設けられるハンガ部65が、車体中心線Cに関してチェーン伝動手段27とは反対側に配置されるので、チェーン伝動手段27の配置に起因して比較的大きな荷重が前記すり割り69の部分に作用することを回避することができ、チェーン伝動手段27の配置に伴なう悪影響がエンジンEの支持強度に及ぶことはない。
【0037】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0038】
たとえば上記実施例では、エンジンEのボス部20aとハンガ部64との間にスペーサ71を介装し、ボス部20aに拡径頭部70aを当接させることでボス部20aに対する通しボルト70の軸方向相対位置を規制するようにしたが、ハンガ部64にボス部20aを当接させた状態で拡径頭部70aをボス部20aに当接させることで、ボス部20aに対する通しボルト70の軸方向相対位置を規制するようにしてもよい。
【0039】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、車体フレームの前部フレームのうち鋳造品からなるブラケットの下面より継ぎ目無く一体に突出する左右一対のハンガ部の一方に、通しボルトの拡径頭部を挿通せしめる挿通孔およびすり割りが設けられ、通しボルトがエンジンのボス部との相対位置を規制されて両ハンガ部およびボス部に挿通された状態で前記すり割りの幅を狭めるように締付ボルトを締付けることで拡径頭部が一方のハンガ部に挟圧、保持されるので、通しボルトの軸線に沿う方向でのボス部の幅の精度ならびに両ハンガ部間の間隔の精度にかかわらず、車体フレーム(特に前部フレーム)およびエンジンの一体化を図ってエンジンを車体フレームの強度部材として有効に機能させることができる。しかもすり割りが設けられるハンガ部が、車体中心線に関してチェーン伝動手段とは反対側に配置されるので、チェーン伝動手段の配置に起因して比較的大きな荷重が前記すり割りの部分に作用しないようにし、チェーン伝動手段の配置に伴なう悪影響がエンジンの支持強度に及ぶことを回避することができる。
【0040】
また車体フレームの前部フレームが、左右のメインフレーム(エンジン支持部材)およびブラケットでエンジン上部を支持するので、前部フレームは、従来必要としたダウンチューブを不要として、一対のメインフレームと、単一の鋳造品であるブラケットとを備えればよく、従って、部品点数の低減および前部フレームの軽量化を図りつつ、前部フレームをコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 自動二輪車の側面図である。
【図2】 エンジンの一部および前部フレームの拡大側面図である。
【図3】 図2の3矢視図である。
【図4】 図2の4−4線に沿うメインフレームの断面図である。
【図5】 図2の5−5線断面図である。
【符号の説明】
11・・・前部フレーム
12・・・後部フレーム
13・・・ヘッドパイプ
14・・・メインフレーム
15・・・ブラケット
20a・・ボス部
22・・・リヤスイングアーム
27・・・チェーン伝動手段
28・・・駆動スプロケット
29・・・被動スプロケット
30・・・チェーン
57,58・・エンジン支持部材
64,65・・・ハンガ部
68・・・挿通孔
69・・・すり割り
70・・・通しボルト
70a・・拡径頭部
73・・・締付ボルト
C・・・・車体中心線
E・・・・エンジン
F・・・・車体フレーム
WR・・・後輪
Claims (1)
- 車体フレーム(F)が、エンジン(E)をそのエンジン(E)上部でのみ支持する前部フレーム(11)と、この前部フレームの後端に連なり後上がりに傾斜してシート(39,40)を支持する後部フレーム(12)とより構成され、前記前部フレーム(11)が、ヘッドパイプ(13)と、そのヘッドパイプ(13)から後下りに各々延びる左右一対のメインフレーム(14)と、その両メインフレーム(14)の後端間を連結すべく鋳造で一体成形されたブラケット(15)とにより構成され、前記両メインフレーム(14)の下部には、エンジン(E)前部の上端部両側をそれぞれ支持するエンジン支持部材(57,58)が固着され、前記ブラケット(15)の下面には、下方に突出する左右一対のハンガ部(64,65)が継ぎ目無く一体に形成され、その両ハンガ部(64,65)には、エンジン(E)の後部上面に設けられて前記両ハンガ部(64,65)間に介在するボス部(20a)が、前記両ハンガ部(64,65)および前記ボス部(20a)に挿通される通しボルト(70)を介して支持され、後輪(WR)を軸支するリヤスイングアーム(22)の前端部が、前記車体フレーム(F)を介さずに前記エンジン(E)に揺動可能に支承され、前記エンジン(E)の動力を前記後輪(WR)に伝達するチェーン伝動手段(27)が、該エンジン(E)側の駆動スプロケット(28)と、後輪(WR)に固定される被動スプロケット(29)と、その両スプロケット(28,29)に巻掛けられるチェーン(30)とを有して前記エンジン(E)の左右いずれか一側に配置され、前記通しボルト(70)の軸線が車両側面視で、前記駆動スプロケット(28)の前端及び後端をそれぞれ通る鉛直線に挟まれた領域内に位置している自動二輪車におけるエンジン支持構造であって、
前記両ハンガ部(64,65)のうち車体中心線(C)に関して前記チェーン伝動手段(27)とは反対側に配置される一方のハンガ部(65)には、前記通しボルト(70)の一端側の拡径頭部(70a)を挿通せしめる挿通孔(68)と、該挿通孔(68)の内面に通じて下方に開放するすり割り(69)とが設けられ、前記通しボルト(70)が該通しボルト(70)の軸線に沿う方向での前記ボス部(20a)との相対位置を規制されて前記両ハンガ部(64,65)および前記ボス部(20a)に挿通された状態で前記すり割り(69)の幅を狭めて前記挿通孔(68)を縮径する締付ボルト(73)が、前記一方のハンガ部(65)に螺合されることを特徴とする、自動二輪車におけるエンジン支持構造。
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