以下、本発明の信号検出回路について具体化した実施形態を図1乃至図8に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明の第1実施形態を図1および図3を用いて説明する。図1に示す本発明の信号検出回路4は増幅部1、比較部2、出力部3を備える。増幅部1には差動増幅器10および11が備えられる。差動増幅器10には差動入力信号(データプラス信号DPおよびデータマイナス信号DM)が入力される。差動増幅器10の非反転入力端子にはデータプラス信号DPが入力され、反転入力端子にはデータマイナス信号DMが入力される。そして差動増幅器10からは、差動増幅された差動出力信号(増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDM)が出力される。また差動増幅器11の非反転入力端子には高基準電圧RHが入力され、反転入力端子には低基準電圧RLが入力される。そして差動増幅器11からは、差動増幅された増幅高基準電圧GRHおよび増幅低基準電圧GRLが出力される。
比較部2には3入力1出力の比較器12および13が備えられる。比較器12の非反転入力端子には増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMが入力され、反転入力端子には増幅高基準電圧GRHが入力される。そして比較器12からは比較結果信号CPHが出力される。比較器13の非反転入力端子には増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMが入力され、反転入力端子には増幅低基準電圧GRLが入力される。そして比較器13からは比較結果信号CPLが出力される。
出力部3には信号変換部16と積分演算部17とが備えられる。信号変換部16には2段のインバータからなるバッファ18と1段のインバータからなるバッファ19とが備えられ、各バッファの出力端はオアゲート20に接続される。バッファ18に入力された比較結果信号CPHは、波形整形された上でロジック信号LGHとして出力され、バッファ19に入力された比較結果信号CPLは波形整形され反転された上でロジック信号LGLとして出力される。ロジック信号LGH、LGLはオアゲート20に入力され、オアゲート20からは比較信号COMPが出力される。比較信号COMPは積分演算部17へ入力され、積分演算部17からは検出信号HS_ENV_OUTが出力される。
検出信号HS_ENV_OUTは信号検出の報知に用いられる信号である。そして例えばUSB2.0規格のバストランシーバにおいてはSquelch信号として用いられ、当該Squelch信号がローレベル時は有効な信号の入力があり、ハイレベル時は有効な信号の入力がないことがUSBレシーバに認識される。
信号検出回路4の動作を説明する。比較器12からは、増幅データプラス信号GDPと増幅データマイナス信号GDMとの少なくとも一方が増幅高基準電圧GRHよりも高い期間において、ハイレベルの比較結果信号CPHが出力される。また比較器13からは、増幅データプラス信号GDPと増幅データマイナス信号GDMとの少なくとも一方が増幅低基準電圧GRLよりも低い期間において、ローレベルの比較結果信号CPLが出力される。比較結果信号CPHおよび比較結果信号CPLは信号変換部16へ入力される。信号変換部16に備えられるバッファ18、19では、アナログ的な波形を有する比較結果信号
CPHおよびCPLが波形整形されて、ロジック信号LGHおよびLGLとされる。オアゲート20に入力されたロジック信号LGHおよびLGLが合成され、オアゲート20からは比較信号COMPが出力される。積分演算部17では比較信号COMPの積分によりノイズが除去され、積分演算部17からは検出信号HS_ENV_OUTが出力される。
図1を具体的な回路構成例で示した図を図2に示す。増幅部1に備えられる差動増幅器10と差動増幅器11とは、同サイズのトランジスタを有する同一の回路構成で構成されている。差動増幅器10および差動増幅器11は、トランジスタM1及びトランジスタM6にバイアスBI1が与えられることにより駆動する。
差動増幅器10はPMOSトランジスタM1乃至M3、NMOSトランジスタM4およびM5を備える。トランジスタM1のソースは電源VDDへ接続され、トランジスタM1のドレインはトランジスタM2およびM3のソースに共通に接続される。トランジスタM4、M5のドレインはそれぞれノードN1、N2を介してトランジスタM2、M3のドレインに接続される。トランジスタM4、M5のソースは共に電源VSSへ接続される。トランジスタM2のゲートにはデータマイナス信号DMが入力され、トランジスタM3のゲートにはデータプラス信号DPが入力される。トランジスタM4のゲートはノードN1に接続され、トランジスタM5のゲートはノードN2に接続される。ノードN1およびN2は比較部2の比較器12および13の両者に接続される。トランジスタM1にバイアスBI1が与えられることにより、差動増幅器10では差動増幅動作が行われ、データプラス信号DPとデータマイナス信号DMとの差電圧が差動増幅される。そしてノードN1からは増幅データプラス信号GDP、ノードN2からは増幅データマイナス信号GDMがそれぞれ出力される。
また差動増幅器11は、差動増幅器10のトランジスタM1乃至M5と全く同じサイズのトランジスタM6乃至M10から構成され、回路構成も同一である。よってここでは説明を省略する。トランジスタM7のゲートには低基準電圧RLが入力され、トランジスタM8のゲートには高基準電圧RHが入力される。ノードN3およびN4は比較部2の比較器12および13の両者に接続される。トランジスタM6にバイアスBI1が与えられることにより、差動増幅器11では差動増幅動作が行われ、高基準電圧RHと低基準電圧RLとの差電圧が差動増幅される。そしてノードN3からは増幅高基準電圧GRH、ノードN2からは増幅低基準電圧GRLがそれぞれ出力される。
比較器12はPMOSトランジスタM11およびM12、NMOSトランジスタM13乃至M16を備える。トランジスタM11およびM12のソースは電源VDDへ接続される。トランジスタM11のドレインはノードN5を介してトランジスタM13およびM14のドレインに共通に接続される。またトランジスタM12のドレインはノードN6を介してトランジスタM15のドレインに接続される。なおトランジスタM13乃至M15は同一サイズであり同一特性を有するトランジスタである。トランジスタM16のドレインはトランジスタM13乃至M15のソースに共通に接続され、トランジスタM16のソースは電源VSSに接続される。トランジスタM13のゲートには増幅データマイナス信号GDMが入力され、トランジスタM14のゲートには増幅データプラス信号GDPが入力され、トランジスタM15のゲートには増幅高基準電圧GRHが入力される。ノードN5がトランジスタM11およびM12のゲートに共通に接続されることで、トランジスタM11およびM12でカレントミラー回路による能動負荷が構成される。ノードN6はバッファ18に接続され、ノードN6の電圧は比較結果信号CPHとしてバッファ18に入力される。トランジスタM16にバイアスBI2が与えられることにより、比較器12では比較動作が行われる。なお、トランジスタM13およびM14への信号入力は逆も可能であり、トランジスタM13のゲートには増幅データプラス信号GDPが入力され、トランジスタM14のゲートには増幅データマイナス信号GDMが入力されるとしてもよい。
比較器13は、PMOSトランジスタM17乃至M20、NMOSトランジスタM21、M22を備える。トランジスタM17のソースは電源VDDへ接続され、ドレインはトランジスタM18乃至20のソースに共通に接続される。トランジスタM18、M19のドレインは共通にノードN7を介してトランジスタM21のドレインに接続される。トランジスタM20のドレインはノードN8を介してトランジスタM22のドレインに接続される。トランジスタM21、M22のソースは共に電源VSSへ接続される。トランジスタM18のゲートには増幅データプラス信号GDPが入力され、トランジスタM19のゲートには増幅データマイナス信号GDMが入力され、トランジスタM20のゲートには増幅低基準電圧GRLが入力される。なおトランジスタM18乃至M20は同一サイズであり同一特性を有するトランジスタである。ノードN7がトランジスタM21およびM22のゲートに共通に接続されることでカレントミラー回路による能動負荷が構成される。ノードN8はバッファ19に接続され、ノードN8の電圧は比較結果信号CPLとしてバッファ19に入力される。トランジスタM17にバイアスBI3が与えられることにより、比較器13では比較動作が行われる。なお、トランジスタM18およびM19への信号入力は逆も可能であり、トランジスタM18のゲートには増幅データマイナス信号GDMが入力され、トランジスタM19のゲートには増幅データプラス信号GDPが入力されるとしてもよい。
出力部3には信号変換部16と積分演算部17とが備えられる。信号変換部16において、バッファ18とバッファ19との出力端がオアゲート20の入力端に接続される。バッファ18、19からはロジック信号LGH、LGLが出力される。オアゲート20の出力端は出力部3のトランジスタM30に接続され、オアゲート20から出力された比較信号COMPはトランジスタM30のゲートに入力される。
積分演算部17は積分回路21、シュミットトリガ回路22およびインバータ23を備える。積分回路21において、トランジスタM30のドレインはノードN10および定電流源CC1を介して電源VDDへ接続され、電流が電源VDDからトランジスタM30方向へ流れる。またトランジスタM30のソースは定電流源CC2を介して電源VSSへ接続され、電流がトランジスタM30から電源VSS方向へ流れる。ノードN10はノードN11と接続される。ノードN11はコンデンサCN1を介して電源VDDへ接続されると共に、コンデンサCN2を介して電源VSSへ接続される。ノードN11の電圧は積分比較信号COMPNとされ、シュミットトリガ回路22に入力される。シュミットトリガ回路22はインバータ部24に分流用のPMOSトランジスタM28とNMOSトランジスタM29とを備える構成を有する。トランジスタM28とM29とで分流部が構成される。シュミットトリガ回路22の出力信号はインバータ23へ入力され、インバータ23からは検出信号HS_ENV_OUTが出力される。なおシュミットトリガ回路22はヒステリシスバッファ部の一例である。
図3のタイミングチャートを用いて図2の本発明に係る信号検出回路の動作を説明する。図3(A)に示すように、差動入力信号であるデータプラス信号DPおよびデータマイナス信号DMは、トランジスタM3およびM2(図2)のゲートに入力される。また高基準電圧RHおよびグランドレベルの低基準電圧RLがトランジスタM8およびM7のゲートに入力される。ここで差動入力信号の振幅値(|DP−DM|)と差動基準電圧の差電圧値(|RH−RL|)との比較を直接行い、差動入力信号の振幅値のほうが差動基準電圧の差電圧値よりも大きい場合には差動入力信号の入力ありと判断することもできる。例えばUSB2.0の規格に準じた信号検出回路を構成する場合に、差動入力信号の振幅値|DP−DM|の規格値≧150mVである場合には、差動基準電圧の差電圧値|RH−RL|<150mVの値に設定すれば、USB2.0規格に準じた差動入力信号の信号検出を行うことができる。しかし差動入力信号や差動基準電圧の電圧レベルが変動する場合においても、安定して比較動作を行うことができるようにするため、以下に説明するような信号検出動作が行われる。
時間T1において、信号検出回路4にデータプラス信号DPおよびデータマイナス信号DMが入力開始されると、データプラス信号DPとデータマイナス信号DMとは差動増幅器10によって差動増幅され、図3(B)に示すように中央電圧値CVに対して対称な波形を有する増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMが得られる。また高基準電圧RHおよび低基準電圧RLは差動増幅器11によって差動増幅され、図3(B)に示すように、中央電圧値CVに対して対称な増幅高基準電圧GRHおよび増幅低基準電圧GRLとされる。ここで差動増幅器10と差動増幅器11とは全く同じサイズのトランジスタから構成され、同一の回路構成を有する増幅器であるため、増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMの中央値と、増幅高基準電圧GRHおよび増幅低基準電圧GRLの中央値とは同一の中央電圧値CVとされる。すなわち差動入力信号および差動基準電圧を同一構成の増幅器でそれぞれ差動増幅することにより、当該差動入力信号や差動基準電圧の入力レベルが変動する場合においても、両者の中央電圧値CVを揃えることができるため、確実に比較動作・信号検出動作を行うことが可能となる。
そして比較器12において増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMの電圧値と増幅高基準電圧GRHとの比較が、また比較器13において増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMの電圧値と増幅低基準電圧GRLとの比較がそれぞれ行われる。図3(C)に示すように比較器12からは、増幅データプラス信号GDPが増幅高基準電圧GRHよりも高い期間(矢印Y1)、および増幅データマイナス信号GDMが増幅高基準電圧GRHよりも高い期間(矢印Y2)においてハイレベルの比較結果信号CPHが出力される。すなわち増幅データプラス信号GDPと増幅データマイナス信号GDMとの少なくとも一方が増幅高基準電圧GRHよりも高い期間には、ハイレベルの比較結果信号CPHがノードN6を介して比較器12から出力される。
また比較器13からは、増幅データプラス信号GDPが増幅低基準電圧GRLよりも低い期間(矢印Y3)、および増幅データマイナス信号GDMが比較結果信号CPLよりも低い期間(矢印Y4)においてローレベルの比較結果信号CPLが出力される。すなわち増幅データプラス信号GDPと増幅データマイナス信号GDMとの少なくとも一方が増幅低基準電圧GRLよりも低い期間には、ローレベルの比較結果信号CPLがノードN8を介して比較器13から出力される。
比較結果信号CPHおよび比較結果信号CPLは信号変換部16へ入力される。信号変換部16に備えられるバッファ18、19では、アナログ的な波形を有する比較結果信号CPHおよびCPL(図3(C))が波形整形されて、ロジック信号LGHおよびLGL(図3(D))とされる。ロジック信号LGHおよびLGLはオアゲート20に入力され信号が合成される。そしてオアゲート20からは比較信号COMPが出力される(図3(E))。比較信号COMPでは、増幅データプラス信号GDPおよび増幅データマイナス信号GDMとのクロスポイントの部分に対応して(矢印Y5)、信号レベルがローレベルへ変化している領域AA1が多数存在する。これらの領域はノイズとなる。比較信号COMPは出力部3の積分回路21に備えられるNMOSトランジスタM30のゲートへ入力される。
積分回路21では比較信号COMPの積分が行われ、ノイズ除去動作が行われる。積分回路21において定電流源CC2が定電流源CC1よりも大きい電流を流す場合を説明する。入力される比較信号COMPがハイレベルの期間は、NMOSトランジスタM30が導通状態とされるため電源VDDから定電流源CC1、ノードN10、定電流源CC2を介して電源VSSへの電流パスが形成される。このとき定電流源CC2の電流の方が大きいため、コンデンサCN1は充電、CN2は放電状態とされ、ノードN11の電圧はローレベルに維持される。一方、入力される比較信号COMPがローレベルの期間は、NMOSトランジスタM30が非導通状態とされるため電源VDDから定電流源CC1、ノードN10、ノードN11、コンデンサCN2、電源VSSへの電流パスが形成される。よってコンデンサCN1は放電状態、CN2は充電状態とされノードN11の電圧が上昇するが、このときコンデンサCN1、CN2の容量を調整し時定数を最適化することにより、次にNMOSトランジスタM30が導通状態とされるまでの間、ノードN11を論理的ローレベルに維持させることができる。ノードN11の電圧値は積分比較信号COMPNとして出力される。これにより図3(F)に示すように、差動入力信号のクロスポイントの影響による電圧変動の影響を受けず、論理的ローレベルが維持された積分比較信号COMPNを得ることが可能となる。すなわち積分回路21では、入力信号に短い時間でパルス状に発生するノイズ信号を除去するローパスフィルタの動作が行われる。
積分比較信号COMPNはシュミットトリガ回路22に入力される。シュミットトリガ回路22はヒステリシス特性を有し、積分比較信号COMPNのノイズの影響を除去して雑音余裕度を増加させるための回路である。ローレベルの積分比較信号COMPNがシュミットトリガ回路22に入力されている場合を説明する。この場合インバータ部24のノードN12からはハイレベルに反転された信号が出力され、またNMOSトランジスタM29は導通状態とされて分流電流が流れている状態である。このときトランジスタM29に流れる分流によりスレッショルドレベルが押し上げられ、不感帯が広くなっており、当該スレッショルドレベル以下のノイズ信号が積分比較信号COMPNに発生してもシュミットトリガ回路22の出力信号は反転されないため、雑音余裕度が増加する。同様にしてハイレベルの積分比較信号COMPNがシュミットトリガ回路22に入力されている場合には、PMOSトランジスタM28に流れる分流によりスレッショルドレベルが押し下げられることで不感帯が広くされ、雑音余裕度が増加する。シュミットトリガ回路22の出力信号はインバータ23へ入力される。インバータ23からはシュミットトリガ回路22からの出力が反転された検出信号HS_ENV_OUTが出力される(図3(G))。
以上により第1実施形態の回路構成によれば、従来の比較部が比較結果信号を得るためにギルバートセル回路104と比較回路105との2段の差動増幅器を用いていたのに比して、本発明の比較部2では12および比較器13からなる1段の比較器で比較結果信号を得ることが可能であるため、回路構成を簡易化することができる。また従来の比較部102が備えるギルバートセル回路104は、図11に示したようにカレントミラー等のトランジスタの対称性を要する回路が多数備えられるため、トランジスタ性能ばらつきの影響を受けやすく、性能が低下しやすい傾向があるが、本発明の比較部2は、図2の比較器12、13に示すように従来の回路に比して対称性を必要とするトランジスタ数が少なく簡素な回路構成を備えている。よってトランジスタ性能ばらつきの影響を受けにくくなるとともに、本信号検出回路の歩留まりを向上させることが可能となる。
また従来の信号検出回路の比較部102に備えられるギルバートセル回路104(図11)では、差動電圧を電流に変換して加算した後に電圧に再変換する構成を有しているため、電圧と電流との変換に時間がかかるため速度が出ず、高周波の差動入力信号に対応できないおそれがある。これに比して本発明の比較部2(図1)では、電流加算を行うことなく比較動作が行われるため動作速度の確保が可能であり、高速度・高周波数の差動入力信号に対応することが可能となる。よってUSB2.0規格のハイスピードモード(480Mbps)転送などに代表される高速差動入力信号の送受信に対して、入力信号電圧の振幅を正確に検知でき、入力信号の有無を検出することが可能となる。
また入力段である増幅部1において、全く同じサイズのトランジスタから構成され、同一の回路構成を有する差動増幅器を用いて差動入力信号と差動基準電圧とを差動増幅することにより、差動増幅後の中央電圧値を揃えることができる。よってデータプラス信号DPおよびデータマイナス信号DMの電圧レベルが変動する場合や、低基準電圧RLおよび高基準電圧RHの電圧レベルが変動する場合においても、信号検出動作を安定して行うことが可能となる。
また積分演算部17において比較信号COMPの積分が行われ、ノイズが除去されることにより、差動入力信号のクロスポイントの影響による電圧変動によっても論理的ローレベルが維持された積分比較信号COMPNを得ることが可能となり、ノイズに強い安定した信号検出動作を行うことが可能となる。
本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態は、図2に示す本発明の信号検出回路4において、差動増幅器10および11に代えて、制御信号生成回路31を備えたレールトゥレールアンプ30(図4)を用いた形態である。レールトゥレールアンプ30は、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧の変動に関わらず出力電圧Vout1、Vout2のゲインを一定とすることができるアンプである。なおレールトゥレールアンプ30の入力信号Vin1、Vin2としては、データプラス信号DPとデータマイナス信号DM、または高基準電圧RHと低基準電圧RLとが入力される。また出力電圧Vout1、Vout2として、増幅データプラス信号GDPと増幅データマイナス信号GDM、または増幅高基準電圧GRHと増幅低基準電圧GRLとが出力される。
以下、レールトゥレールアンプ30の回路構成を詳細に説明する。レールトゥレールアンプ30は差動増幅部29と制御信号生成回路31とを備える。差動増幅部29の回路構成を説明する。トランジスタM31、M32のソースにはトランジスタM36のドレインが接続される。トランジスタM36のソースには電源VSSが供給される。トランジスタM33、M34のソースは共にトランジスタM35のドレインに接続される。トランジスタM35のソースは電源VDDに接続される。トランジスタM33のドレインはトランジスタM40のドレイン及びゲートに接続され、トランジスタM40のソースは電源VSSに接続される。トランジスタM35、M36は定電流源の動作を行う。また、トランジスタM34のドレインはトランジスタM42のドレイン及びゲートに接続され、トランジスタM42のソースは電源VSSに接続される。トランジスタM40のゲートには、NMOSトランジスタM41のゲートが接続される。トランジスタM41のソースは電源VSSに接続される。トランジスタM41のドレインは出力トランジスタM44のゲートに接続されるとともに、ノードN20を介してドレインに接続される。また、トランジスタM44のドレインはトランジスタM31のドレインに接続され、ソースは電源VDDに接続される。トランジスタM42のゲートには、トランジスタM43のゲートが接続される。トランジスタM43のソースは電源VSSに接続される。トランジスタM43のドレインは出力トランジスタM45のゲートに接続されるとともに、ノードN21を介してドレインに接続される。また、トランジスタM45のドレインはトランジスタM32のドレインに接続され、ソースは電源VDDに接続される。トランジスタM46はトランジスタM40に対し並列に接続され、トランジスタM47はトランジスタM42に対し並列に接続される。トランジスタM46、M47のゲートには、制御信号生成回路31で生成される制御信号CL3、CL4が入力される。トランジスタM41の動作電流Inm1がトランジスタM44に流れ、トランジスタM43の動作電流Inm2がトランジスタM45に流れる。そして、ノードN20、N21からそれぞれ出力電圧Vout1、Vout2が出力される。なおトランジスタM31とM32とで第1差動対が、トランジスタM33とM34とで第2差動対が、トランジスタM40乃至M45によって電流合成部が、トランジスタM46、M47と制御信号生成回路31とで電流相殺回路が構成される。
制御信号生成回路31の回路構成を説明する。NMOSトランジスタM48、M49のソースはトランジスタM37のドレインに接続される。トランジスタM37のソースには電源VSSが供給される。トランジスタM37は定電流源の動作を行う。トランジスタM48のゲートには入力信号Vin1が入力され、トランジスタM49のゲートには入力信号Vin2が入力される。トランジスタM48のドレインは、PMOSトランジスタM50のドレイン及びゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM52のゲートに接続される。またトランジスタM49のドレインは、PMOSトランジスタM51のドレイン及びゲートに接続されるとともに、PMOSトランジスタM54のゲートに接続される。トランジスタM50乃至M54のソースは電源VDDに接続される。トランジスタM52のドレインはNMOSトランジスタM53のドレイン及びゲートに接続され、トランジスタM54のドレインは、NMOSトランジスタM55のドレイン及びゲートに接続される。トランジスタM53およびM55のソースは電源VSSに接続される。またトランジスタM53およびM55のゲートは、トランジスタM46およびM47のゲートにそれぞれ接続される。トランジスタM53およびM55のゲート電圧が、制御信号CL3およびCL4としてトランジスタM46およびM47のゲートに入力される。
レールトゥレールアンプ30の動作を説明する。トランジスタM48とM31とは同一サイズで形成され、電流源として動作するトランジスタM36とM37とを流れる電流値は同一である。よってトランジスタM48とM31とのゲートに入力信号Vin1が印加されると、トランジスタM48とトランジスタM31とには同一の大きさの動作電流Inr1と動作電流In1とが流れる。またトランジスタM50およびM52によってカレントミラー回路が構成されるため、トランジスタM52の動作に基づいて、トランジスタM48と同一の動作電流Inr1がトランジスタM53に流れる。そしてさらにトランジスタM53とM46とによってカレントミラー回路が構成されるため、トランジスタM46に動作電流Inr1に等しい動作電流Inc1が流れる。また同様にして、入力信号Vin2に基づいてトランジスタM49に動作電流Inr2が流れると、トランジスタM51とM54とのカレントミラー動作およびトランジスタM55とM47とのカレントミラー動作によって、動作電流Inr2に等しい動作電流Inc2がトランジスタM47に流れる。
入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDDと電源VSSとの中間レベルである場合を説明する。この場合、入力差動対であるトランジスタM31およびM32、トランジスタM33およびM34、トランジスタM48およびM49はそれぞれ飽和状態で動作し、動作電流In1およびIn2、動作電流Ip1およびIp2、動作電流Inr1およびInr2が流れる。そしてトランジスタM46およびM47には、動作電流Inr1およびInr2と等しい動作電流Inc1およびInc2が上述したカレントミラー動作によって流れる。
トランジスタM40、M42には動作電流(Ip1−Inc1)、(Ip2−Inc2)が流れるが、動作電流Ip1、Ip2と動作電流Inc1、Inc2とはほぼ同等であるため、これらの動作電流はほとんど流れない。するとカレントミラー動作によって、トランジスタM41、M43にも動作電流Inm1、Inm2がほとんど流れない状態とされる。すなわち電流相殺回路(トランジスタM46、M47、制御信号生成回路31)の制御信号生成回路31で生成された動作電流Inr1、Inr2によって、動作電流Ip1、Ip2を相殺することができる。よって電流合成部(トランジスタM40乃至M45)において動作電流Ip2、Ip1が出力電流Io1、Io2に合成されることがない。この結果、電流相殺回路によって電流合成部の動作がキャンセルされ、出力電流Io1、Io2は動作電流In1、In2とされる。
一方、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDD、電源VSSの中間レベルより高く、PMOSトランジスタM33、M34が非飽和領域で動作する場合を説明する。このときトランジスタM33、M34には動作電流Ip1、Ip2が流れないため、トランジスタM41、M43にも動作電流Inm1、Inm2が流れない。すなわち電流相殺回路(トランジスタM46、M47、制御信号生成回路31)、電流合成部(トランジスタM40乃至M45)は動作しない。この結果、出力電流Io1、Io2は動作電流In1、In2とされる。
また一方、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDD、電源VSSの中間レベルより低く、NMOSトランジスタM31、M32、M48、M49が非飽和領域で動作する場合を説明する。このとき動作電流Inr1、Inr2が流れないため動作電流Inc1、Inc2も流れない。しかしPMOSトランジスタM33、M34は飽和領域で動作し、動作電流Ip1、Ip2が流れる。するとカレントミラー動作によってトランジスタM41、M43に、動作電流Ip1、Ip2と同等の動作電流Inm1、Inm2が流れる。そしてNMOSトランジスタM31、M32は非飽和領域で動作していることから、出力電流Io1、Io2は動作電流Inm1、Inm2と同等とされる。すなわち電流相殺回路(トランジスタM46、M47と制御信号生成回路31)は動作しないが、電流合成部(トランジスタM40乃至M45)が動作することで、出力電流Io1、Io2は動作電流Ip1、Ip2とされる。
ここで比較として従来のレールトゥレールアンプを考える。従来のレールトゥレールアンプとしては、図4の回路において制御信号生成回路31およびトランジスタM46、M47を省略した構成が挙げられる。このような従来のレールトゥレールアンプにおいて、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベルより低い場合には、NMOSトランジスタM31、M32が非飽和領域で動作し、出力電流Io1、Io2は動作電流Ip1、Ip2とほぼ等しくされる。また入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベルより高い場合には、PMOSトランジスタM33、M34が非飽和領域で動作し、出力電流Io1、Io2は動作電流In1、In2とほぼ等しくされる。しかし入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベル近傍である場合には、トランジスタM31、M32、M33、M34は全て飽和領域に維持され、出力電流Io1は動作電流In1とInm1(すなわちIp1)との和とされ、出力電流Io2は動作電流In2とInm2(すなわちIp2)との和とされてしまう。よって入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベルの場合と、高レベルおよび低レベルの場合とで、出力電流Io1、Io2の値が変動する。すると出力電圧Vout1、Vout2のゲインが変動することになるため問題である。
しかし本発明で用いる図4のレールトゥレールアンプ30では、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベルである場合には、トランジスタM33、M34を流れる動作電流Ip1、Ip2は、制御信号生成回路31によって生成された動作電流Inc1、Inc2によって相殺されるため、出力電流Io1、Io2は動作電流In1、In2とほぼ等しくされる。よって入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が電源VDDと電源VSSとの中間レベルの場合と、高レベルおよび低レベルの場合とで、出力電流Io1、Io2の値が大きく変動することが防止され、出力電圧Vout1、Vout2のゲインの変動が抑えられる。以上より本発明のレールトゥレールアンプ30によって、入力信号Vin1、Vin2の電圧の変動に関わらず、出力電圧Vout1、Vout2のゲインを一定とすることができるため、安定した信号検出を行うことが可能となる。
本発明の第3実施形態を図5乃至図7を用いて説明する。第3実施形態は、出力部3の回路に変更を加えた実施形態である。第1の具体例として用いられる積分演算部17aを図5に示す。積分演算部17aは補数変換器40、加減算器41、フリップフロップ42、比較器43を備える。補数変換器40には比較信号COMPが入力される。補数変換器40から出力された補数データHDは加減算器41に入力され、加減算器41からは加減算データADが出力される。フリップフロップ42には、加減算データADおよびクロック信号CLKが入力され、加減算データADがラッチデータLDとしてラッチされる。フリップフロップ42から出力されたラッチデータLDは、加減算器41へ入力されフィードバック回路が構成される。比較器43にはラッチデータLDおよびリファレンス値Refが入力される。比較器43からは検出信号HS_ENV_OUTが出力される。
補数変換器40では、比較信号COMPを、4ビットで表現された2の補数に変換する動作が行われる。比較信号COMPが所定の周期でサンプリングされ、ハイ/ローレベルが判断される。ハイレベルの比較信号COMPは10進数の“+1”に該当し、 “+1”が2進数の4ビット表現における2の補数“1111”に変換される。またローレベルの比較信号COMPは10進数の“−1”に該当し、 “−1”が2進数の4ビット表現における2の補数“0001”に変換される。変換後のデータは補数データHDとして補数変換器40から出力される。
加減算器41では、補数変換器40から出力された補数データHDと、フリップフロップ42からフィードバックされたラッチデータLDとが加減算される。なお補数データHDおよびラッチデータLDは2の補数であるため、加算処理によって加算と減算の両者を行うことができる。フィードバックにより累積的に補数データHDの“+1” と“−1”とが加算されて加減算データADとされる。よって加減算データADの正負は、補数データHDの“+1” と“−1”との割合で定まる。すなわち比較信号COMPにおいてハイレベルの割合が高いほど加減算データADは正の方向へ大きくなり、ローレベルの割合が高いほど加減算データADは負の方向へ大きくなる。
フリップフロップ42では、更新された加減算データADが加減算器41から入力されるたびに、クロック信号CLKに応じて、該加減算データADをラッチする動作が行われる。ラッチされたデータはラッチデータLDとして加減算器41へフィードバックされると共に、比較器43へ入力される。
比較器43ではラッチデータLDとリファレンス値Refとの比較が行われる。例えばリファレンス値Refが“0”の場合には、ラッチデータLDが0以上の値である場合にはローレベルの信号が比較器43から出力され、ラッチデータLDが0より小さい値である場合にはハイレベルの信号が比較器43から出力される。ここで例として、差動入力信号のクロスポイントの影響を受けたパルス状のノイズ信号である領域AA1(図3(E))を多数有する比較信号COMPが、積分演算部17aに入力された場合を説明する。図3(E)の比較信号COMPは、領域AA1のようなローレベル期間に比して、ハイレベル期間の割合が高い信号である。よって加減算器41に入力される補数データHDは、“+1”の方が “−1”よりも多いため、フィードバックによりラッチデータLDは正の方向へ大きくなる。すると常に0以上のラッチデータLDが比較器43に入力され、比較器43からは常にローレベルの信号が出力される。すなわち比較器43からは、クロスポイントの影響による電圧変動の影響による電圧変動の影響を受けず、論理的ローレベルが維持された検出信号HS_ENV_OUTが出力される。同様にして、加減算器41に入力される補数データHDが“+1”の方が “−1”よりも少ないときには、比較器43からは論理的ハイレベルが維持された検出信号HS_ENV_OUTが出力される。これにより、積分演算部17aの回路によって積分動作を行うことにより、差動入力信号に短い時間でパルス状に発生するノイズ信号を除去するローパスフィルタの動作を行うことができ、差動入力信号のクロスポイントによる電圧変動の影響を排除することが可能であることが分かる。
なお、補数変換器40で変換される2の補数は4ビットに限られない。ビット数を大きくするほど、ラッチデータLDの桁上がりによる最上位ビットの符号反転が発生しにくくなる利点がある。そして例えば、桁上がりによる最上位ビットの符号反転防止処理を所定周期ごとに行うような場合においては、ビット数を大きくするほど処理周期を延ばせる利点がある。またリファレンス値Refは“0”に限られず、回路の規格に合わせて設定することができる。例えばリファレンス値Refを負の方向の値に大きく設定するほど、補数データHDでの“−1”の割合が高くなる場合(入力信号に対するノイズの割合が増加する場合)でも、当該ノイズの影響を受けにくくすることが可能である。
第2の具体例として、積分演算部17bを図6に示す。積分演算部17bにはDフリップフロップFF0乃至FF7、オアゲート50およびインバータ51が備えられる。DフリップフロップFF0乃至FF7には、比較信号COMPおよび8相のクロック信号CLK0乃至CLK7が入力される。DフリップフロップFF0乃至FF7の出力端は全てオアゲート50の入力端に接続される。オアゲート50から出力された積分比較信号COMPN2はインバータ51に入力され、インバータ51からは検出信号HS_ENV_OUTが出力される。
図7のタイミングチャートを用いて積分演算部17bの動作を説明する。比較信号COMPの期間LL1およびLL2は、差動入力信号のクロスポイントの影響により、信号がローレベルとなる期間である。なお図7の比較信号COMPは、クロスポイントの影響を最も受けるワーストケースの場合の波形である。DフリップフロップFF0乃至FF7は、クロック信号CLK0乃至CLK7の立ち上がりエッジで比較信号COMPを取り込み、取り込んだ信号を出力する。期間LL1にはクロック信号CLK6、CLK7、CLK0の立ち上がりエッジが存在するため(矢印Y10、Y11)、DフリップフロップFF6、FF7、FF0にはローレベルの比較信号COMPが取り込まれて出力される。一方、クロック信号CLK1乃至CLK5の立ち上がりエッジではハイレベルの比較信号COMPが取り込まれて出力される。そしてオアゲート50(図6)で、DフリップフロップFF0乃至FF7からの出力信号の論理和がとられることにより、出力期間TC6、TC7、TC0においてDフリップフロップFF6、FF7、FF0から出力されたローレベルの信号の影響は打ち消される。よって比較信号COMPにおける期間LL1および期間LL2のローレベル信号の影響は、オアゲート50で打ち消され、その影響が積分比較信号COMPN2に現れることが防止される。そして積分比較信号COMPN2はインバータ51に入力され反転された上で、インバータ51から検出信号HS_ENV_OUTとして出力される。
よって積分演算部17bを備えることにより、期間LL1、LL2のような差動入力信号のクロスポイントの影響による電圧変動の影響を受けず、論理的ローレベルが維持された検出信号HS_ENV_OUTを得ることが可能となる。
よって以上より、本発明の信号検出回路および信号検出方法によれば、入力される差動入力信号や差動基準電圧の電圧レベルが変動する場合であっても、それぞれ差動増幅することで、比較部2で両者を比較する時点では中央電圧値CVが揃った状態で比較動作を行うことができるため、入力時の入力レベルの変動の影響を排除することができる。よって安定・確実に信号検出動作を行うことが可能となる。
また比較部2において、比較器12と比較器13とのうちの一方の比較器を備える場合においても、比較動作を行い差動入力信号の有無を検出することができるため、この場合は比較部2の回路の簡易化を図ることができる利点がある。
またギルバートセル回路に代表される従来の回路が、差動増幅器と比較器との2段構成を必要としたのに比して、本発明の比較部2では、比較器12と比較器13とを備える1段の回路構成で比較・検出動作が可能であるため、回路構成を簡易化することができる。よってトランジスタの対称性を要する回路を減少させることができるため、トランジスタの性能ばらつきの影響を受けにくくなり、本信号検出回路4の歩留まりを向上させることが可能となる。
また本発明の回路では、電流加算を介さないことや、回路構成段数を減少させることで動作速度を確保できるため、高速度・高周波数の差動入力信号に対応することが可能となる。よってUSB2.0規格に準じた高速度の差動入力信号の有無を検出することができ、USB2.0規格に対応したデータレシーバ等を作成することが可能となる。
また第2実施形態において、レールトゥレールアンプ30を備えることにより、第1差動対(トランジスタM31とM32)と第2差動対(トランジスタM33とM34)とが共に動作状態の場合であっても、電流相殺回路(トランジスタM46、M47、制御信号生成回路31)により出力電流Io1、Io2の増加を防止できる。よって、差動入力信号および差動基準電圧の入力レベルに関わらず、差動増幅器10および差動増幅器11のゲインを一定とすることができるため、安定した信号検出を行うことが可能となる。またレールトゥレールアンプ30を備える差動増幅器10および差動増幅器11は、差動入力信号および差動基準電圧のレベルが変動する場合にも対応して差動増幅を行うことができる。また差動増幅器10への信号入力レベルが高く差動増幅器11への信号入力レベルが低い場合、逆に差動増幅器10への信号入力レベルが低く差動増幅器11への信号入力レベルが高い場合にも対応して差動増幅を行うことができる。これにより、様々な差動入力信号および差動基準電圧の入力信号レベルに対しても差動増幅動作を行うことが可能となるため、信号検出動作を確実に行うことが可能となる。
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。増幅部1に備えられた差動入力信号用の差動増幅器10と、差動基準電圧用の差動増幅器11との2つの差動増幅器は、第2実施形態に示すようにN型の制御信号生成回路31を備えたレールトゥレールアンプ30で構成される場合があるとしたが、これに限られない。例えばP型の制御信号生成回路31pを備えたレールトゥレールアンプ30p(図8)によって、差動増幅器10および11が構成されてもよい。
ここでP型の制御信号生成回路を備えたレールトゥレールアンプ30pについて図8を用いて説明する。レールトゥレールアンプ30pは、図4におけるN型の制御信号生成回路31を備えるレールトゥレールアンプ30に代えて、P型の制御信号生成回路31pを備える構成を有する。P型の制御信号生成回路31p(図8)は、N型の制御信号生成回路31(図4)の回路において、各トランジスタの電源VDDから電源VSSまでの接続順および各トランジスタの極性を反転させた構成を有する。また差動出力部32p(図8)は、差動出力部32(図4)の電源への接続およびトランジスタの極性が反転されて電源VSSへ接続されている構成を有し、また相殺部33p(図8)は、相殺部33(図4)の電源への接続およびトランジスタの極性が反転されて電源VDDへ接続されている構成を有する。またその他の構成についてはレールトゥレールアンプ30(図4)と同様であるため説明を省略する。
レールトゥレールアンプ30pの動作を説明する。なお詳細な動作についてはレールトゥレールアンプ30(図4)と同様なため省略する。入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDD、電源VSSの中間レベルになって、入力差動対であるトランジスタM31、M32及びトランジスタM33、M34が飽和状態で動作するとき、トランジスタM68、M69も飽和状態で動作して動作電流Ipr1、Ipr2が流れる。そしてカレントミラー動作によって、動作電流Ipr1、Ipr2と等しい動作電流Ipc1、Ipc2がトランジスタM66、M67に流れる。すると出力電圧Vout1、Vout2を生成するトランジスタM64、M65には、トランジスタM33、M34に流れる動作電流Ip1、Ip2のみが出力電流Io1、Io2として流れる。また、相補信号である入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDD、電源VSSの中間レベルより低下すると、出力電圧Vout1、Vout2を生成するトランジスタM64、M65には、トランジスタM33、M34に流れる動作電流Ip1、Ip2のみが出力電流Io1、Io2として流れる。一方、入力信号Vin1、Vin2の中心電圧が、電源VDD、電源VSSの中間レベルより上昇して、トランジスタM33、M34、M68、M69が非飽和領域で動作するとき、トランジスタM31、M32は飽和領域で動作する。そしてトランジスタM64、M65には、トランジスタM31、M32に流れる動作電流In1、In2に相当する電流のみが出力電流Io1、Io2として流れる。これにより、レールトゥレールアンプ30pを用いれば、入力信号Vin1、Vin2の電圧の変動に関わらず、出力電圧Vout1、Vout2のゲインを一定とすることができるため、安定した信号検出を行うことが可能となる。
また第1実施形態において、図2に示す増幅部1に変えて、図9に示す変形した増幅部1aを用いる場合を説明する。増幅部1aには差動増幅器10aおよび11aが備えられる。差動増幅器10aは、第1実施形態における差動増幅器10に、補助増幅部10bおよび10cが追加された構成である。補助増幅部10bにおいて、トランジスタM71のソースは電源VDDへ接続され、ゲートおよびドレインはノードN1aに接続される。補助増幅トランジスタM73のソースは電源VSSへ接続され、ドレインはノードN1aに接続される。ノードN1aの電圧値は強化増幅データプラス信号AGDPとして出力される。また補助増幅部10bと同様にして補助増幅部10cには、トランジスタM72、補助増幅トランジスタM74が備えられ、ノードN2aの電圧値が強化増幅データマイナス信号AGDMとして出力される。そして補助増幅部10bおよび10cのトランジスタM73、M74のトランジスタのサイズは、差動増幅器10のトランジスタM4、M5のサイズに比して大きいものが用いられる。なおトランジスタM71、M72は補助増幅トランジスタM73、M74に流れる増幅電流を電圧に変換する電圧変換部として働く。
また差動増幅器10aの構成と同様にして、差動増幅器11aは、差動増幅器11に補助増幅部11bおよび11cが追加された構成を備える。補助増幅部11bにはトランジスタM75、トランジスタM77が備えられ、ノードN3aの電圧値が強化増幅高基準電圧AGRHとして出力される。補助増幅部11cにはトランジスタM76、トランジスタM78が備えられ、ノードN4aの電圧値が強化増幅低基準電圧AGRLとして出力される。そして補助増幅部11bおよび11cのトランジスタM77、M78のトランジスタのサイズは、差動増幅器11のトランジスタM9、M10のサイズに比して大きいものが用いられる。
動作を説明する。差動増幅器10と補助増幅部10bとの組み合わせに注目すると、差動増幅器10の差動対に備えられる負荷トランジスタであるトランジスタM4と、補助増幅トランジスタM73とによって、電流増幅を図ったカレントミラー回路が構成されている。補助増幅トランジスタM73のサイズはトランジスタM4のサイズより大きく設定されているため、トランジスタM4を流れる電流に比して、補助増幅トランジスタM73に流れる電流が大きくされる。そして増幅された電流がトランジスタM71で電流から電圧に変換され、ノードN1aからは強化増幅データプラス信号AGDPが出力される。また同様にして差動増幅器10と補助増幅部10cとの組み合わせに注目すると、差動増幅器10の差動対に備えられる負荷トランジスタであるトランジスタM5と、補助増幅トランジスタM74とによってカレントミラー回路が構成され、補助増幅トランジスタM74のサイズはトランジスタM5より大きく設定されているため、トランジスタM5を流れる電
流に比して、補助増幅トランジスタM74に流れる電流が大きくされる。そしてトランジスタM72で電流は電圧に変換され、ノードN2aからは強化増幅データマイナス信号AGDMが出力される。これにより、差動増幅器10によって差動増幅された信号を、さらに補助増幅部10b、10cを介して増幅して、強化増幅データプラス信号AGDPおよび強化増幅データマイナス信号AGDMとして出力することが可能となる。
また同様にして、差動増幅器11、補助増幅部11bおよび補助増幅部11cとの組み合わせにおいても、トランジスタM9を流れる電流に比してトランジスタM77に流れる電流が大きくされ、トランジスタM10を流れる電流に比してトランジスタM78に流れる電流が大きくされる。これにより、差動増幅器11によって増幅された信号をさらに増幅することが可能となり、強化増幅高基準電圧AGRH、強化増幅低基準電圧AGRLが、それぞれノードN3a、N4aから出力される。
そして、強化増幅データプラス信号AGDP、強化増幅データマイナス信号AGDM、強化増幅高基準電圧AGRH、強化増幅低基準電圧AGRLは次段の比較部2(図2)へ入力され、比較動作が行われる。比較器12では、第1実施形態における増幅高基準電圧GRHと増幅データプラス信号GDP、増幅データマイナス信号GDMとの比較に代わって、強化増幅高基準電圧AGRHと強化増幅データプラス信号AGDP、強化増幅データマイナス信号AGDMとの比較が行われる。するとより増幅されている信号同士を比較することになり、両者の差電圧値が大きくされるため、信号比較動作がより確実により速く行うことが可能とされる。また同様にして比較器13では、強化増幅低基準電圧AGRLと強化増幅データプラス信号AGDP、強化増幅データマイナス信号AGDMとの比較が行われ、両者の差電圧値が大きくなるため、信号比較動作がより確実により速く行うことが可能とされる。これにより、信号検出回路4における信号検出動作の確実性および応答性をより向上させることが可能となる。
また第1実施形態では差動増幅器10、11はともにPMOSトランジスタの差動対を備えるP型の差動増幅器で構成されるとしたが、これに限られない。例えば差動入力信号や差動基準電圧の入力信号レベルが電源VDDと電源VSSとの中間レベルに対して高いときは、増幅部1の差動増幅器10および11がともにN型の差動増幅器で構成される構成としてもよい。これにより、差動入力信号および差動基準電圧の入力信号レベルの高低に応じて、差動増幅器を変更することで対応することができ、増幅部1における差動増幅動作を確実に行うことが可能となる。
また比較部2に備えられた2つの比較器12および13は、第1実施形態の図2において、比較器12にN型比較器、比較器13にP型比較器が用いられる場合を説明したが、これに限られない。比較部2の比較器12および比較器13は、N型比較器とP型比較器との任意の組み合わせで構成されてもよいことは言うまでもない。この場合、比較部2でのN型比較器とP型比較器との組み合わせは、増幅部1から入力される入力信号の入力レベルによって定められる。例えば比較部2に入力される増幅データプラス信号GDP、増幅データマイナス信号GDM、増幅高基準電圧GRH、増幅低基準電圧GRLの入力信号のレベルが電源電圧の中間レベルに対して全体的に低い場合には、比較器12および13にはP型比較器を使用し、逆に入力信号のレベルが全体的に高い場合には比較器12および13にはN型比較器を使用すればよい。また比較部2への入力信号のレベルが電源VDDと電源VSSとの中間レベル近傍の場合には、比較器12にN型比較器、比較器13にP型比較器を使用すればよい。
以上により、増幅部1に入力される差動入力信号および差動基準電圧の入力信号レベルに応じて増幅部1に備えられる差動増幅器の種類を変更し、さらに増幅部1から比較部2へ入力される入力信号レベルに応じて比較器12および13の導電型を対応させることにより、様々な差動入力信号および差動基準電圧の入力信号レベルに対しても信号検出動作を確実に行える信号検出回路を構成することが可能となる。そして増幅部1の差動増幅器10および11に適用される差動増幅器は次の4種類(N型差動増幅器、P型差動増幅器、N型の制御信号生成回路31を備えるレールトゥレールアンプ30、P型の制御信号生成回路31pを備えるレールトゥレールアンプ30p)から選択が可能であり、比較部2の比較器12および13に適用される比較器は、増幅部1の出力レベルに応じて次の4種類の組み合わせ(比較器12および13が、N−N型比較器、P−P型比較器、P−N型比較器、N−P型比較器で構成される)から選択が可能である。よって増幅部1と比較部2との回路構成の組み合わせは全16通り存在し、この組み合わせから最適なものを選択することが可能である。
また第1実施形態の図2において、比較部2には比較器12と13との2つの比較器が備えられるとしたが、この形態に限られず、少なくともいずれか一方の比較器が比較部2に備えられればよい。例えば比較部2には比較器12のみが備えられ、比較器12の出力はバッファ18を介してロジック信号LGHとして出力され、当該ロジック信号LGHが積分演算部17で演算されて検出信号HS_ENV_OUTが得られる構成としても信号検出回路を構成することが可能である。また逆に、比較部2には比較器13のみが備えられ、ロジック信号LGHが積分演算部17で演算されて検出信号HS_ENV_OUTが得られる構成としても信号検出回路を構成することが可能である。これにより、比較部2の回路構成を簡略化することや、信号を合成するためのオアゲート20を省略することが可能となり、回路面積の縮小化を図ることができる。
また第1実施形態において低基準電圧RLはグランドレベルであるとしたが、これに限られず、所定の電圧値とされていてもよい。
なおトランジスタM15は第1トランジスタの一例、トランジスタM13およびM14は第2および第3トランジスタの一例、トランジスタM20は第4トランジスタの一例、トランジスタM18およびM19は第5および第6トランジスタの一例、オアゲート20は論理和演算部の一例、インバータ部24は否定演算部の一例である。