以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、本発明に係るアイドルストップ付き車両について説明する。
図1に示すように、この車両1は、車体前部のエンジンルーム内にエンジン2が横方向に配置され、該エンジン2の出力が自動変速機3、差動装置4、車軸5a,5bを介して左右の前輪6a,6bに伝達されるように構成されたFF(フロントエンジン・フロントドライブ)タイプの車両である。また、この車両1は、燃費の向上や、環境汚染物質あるいは二酸化炭素の排出低減、及び騒音の抑制等を図るために、停車中等、後述する所定の条件が満たされたときにエンジン2を停止させる機能、いわゆるアイドルストップ機能を有するアイドルストップ付き車両であり、エンジンルーム内には、アイドルストップ時にエンジン2の始動用バッテリ7から電力供給を受けて作動し、電動モータ8a及びポンプ8b等からなる電動オイルポンプ8が配置されている。また、車室内には、アクセルペダル9やブレーキペダル10等が配置されている。また、図示しないが、ブレーキペダル10に連なるブレーキ系統には、エンジン2の吸入負圧を利用して運転者の制動操作を助勢するブレーキブースタが設けられている。
次に、上記自動変速機3について図2を用いて詳しく説明する。
図2に示すように、この自動変速機3は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、該コンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構として隣接配置された第1、第2遊星歯車機構30,40と、これらの遊星歯車機構30,40でなる動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56とを有し、これらによりDレンジにおける1〜4速、Sレンジにおける1〜3速及びLレンジにおける1〜2速と、Rレンジにおける後退速とが得られるようになっている。
上記トルクコンバータ20は、エンジン2の出力軸2aに連結されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向して配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との間に介設され、かつ、変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース21とタービン23との間に設けられ、該ケース21を介してエンジン2の出力軸2aとタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とで構成されている。そして、上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して遊星歯車機構30,40側に出力されるようになっている。
ここで、このトルクコンバータ20の反エンジン側には、該トルクコンバータ20のケース21を介してエンジン2に駆動されるエンジン駆動式のオイルポンプ12が配置されている。
一方、上記第1、第2遊星歯車機構30,40は、いずれも、サンギヤ31,41と、このサンギヤ31,41に噛み合った複数のピニオン32…32,42…42と、これらのピニオン32…32,42…42を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン32…32,42…42に噛み合ったリングギヤ34,44とで構成されている。
そして、上記タービンシャフト27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、同じくタービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が、また、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ53がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する2−4ブレーキ54が備えられている。
さらに、第1遊星歯車機構30のリングギヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43とが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のリングギヤ44とが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。
そして、この出力ギヤ13が、中間伝動機構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギヤ62に噛み合わされていると共に、該アイドルシャフト61上の第2中間ギヤ63と差動装置4の入力ギヤ71とが噛み合わされて、上記出力ギヤ13の回転が差動装置4のデフケース72に入力され、該差動装置4を介して左右の車軸5a,5bが駆動されるようになっている。
ここで、上記各クラッチやブレーキ等の摩擦要素51〜55の油圧供給状態及びワンウェイクラッチ56の作動状態と変速段との関係をまとめると、表1に示すようになる。ここで、この表1における○印は、摩擦要素51〜55においては作動油圧が供給されている状態であることを意味し、ワンウェイクラッチ56においてはロック状態であることを意味する。なお、摩擦要素51〜55のうち、フォワードクラッチ51、3−4クラッチ53、ローリバースブレーキ55、リバースクラッチ52は単一の油圧室を有し、該油圧室に作動油圧が供給されているときに当該摩擦要素が締結される。また、バンドブレーキでなる2−4ブレーキ54は、作動油圧が供給される油圧室として締結室54aと解放室54bとを有し、締結室54aのみに作動油圧が供給されているときに当該2−4ブレーキ54が締結され、解放室54bのみに作動油圧が供給されているとき、両室54a,54bとも作動油圧が供給されていないとき、及び両室54a,54bとも作動圧が供給されているときに、2−4ブレーキ54が解放されるようになっている。また、ワンウェイクラッチ56は、前進時(正駆動時)においては、1速でロック状態、2速〜4速でフリー状態となる。したがって、2速〜4速での逆駆動時においては、ワンウェイクラッチ56がロック状態となり、車軸5a,5bの車両後退方向回転がロックされる。
次に、上記自動変速機3が搭載されたアイドルストップ付き車両1のアイドルストップ制御について、詳しく説明する。なお、既に説明したもの(エンジン2、自動変速機3等)については、同一の符号を用いる。
まず、本発明に関連する第1の関連例について説明すると、図3に示すように、当該アイドルストップ付き車両1には、アイドルストップ制御を行う制御回路100が備えられており、該制御回路100は、車両1の速度を検出する車速センサ101からの信号と、アクセルペダル9の踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ102からの信号と、ブレーキペダル10が踏み込まれたときにオンとなるブレーキスイッチ103からの信号と、上記エンジン始動用バッテリ7の出力電圧を検出するバッテリ電圧検出手段104からの信号と、エンジン2の冷却水温を検出するエンジン水温検出手段105からの信号と、自動変速機3の油圧制御系(下記変速制御用アクチュエータ111…111等を含む油圧回路、及びこれらを制御する電気回路)の故障を検出するAT変速故障手段106からの信号とを入力する。
そして、制御回路100は、これらのスイッチやセンサからの信号に基いてアイドルストップ制御を実行し、上記変速機3の変速制御用アクチュエータ111…111(変速用ソレノイドバルブ等)と、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8と、エンジン2の燃料噴射弁121…121及び点火プラグ122…122とに制御信号を出力する。ここで、このバッテリ駆動式の電動オイルポンプ8は、前述したように、アイドルストップ時(エンジン停止中)に作動停止状態となるエンジン駆動式のオイルポンプ12に代わり、エンジン2の始動用バッテリ7から電力供給を受けて作動し、変速機3の摩擦要素51…55に作動油圧を供給する。また、制御回路100は、上記油圧制御系の故障時は、上記アクチュエータ111…111を全てOFFにし、変速段を3速に制御する。
なお、上記制御回路100等はエンジン及び変速機の制御装置の一部を記載したものであり、該制御装置の他の部分により、上記車速センサ101からの信号、アクセル開度センサ102からの信号等に基づく通常の変速制御やエンジン制御等が別途行われる(後述する本発明に係る実施の形態、第2の関連例において同じ)。その場合、本第1の関連例においては、減速中は停車時に1速となるようにシフトダウン制御される。
次に、制御回路100による制御を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、ステップS1で、上記センサやスイッチからの各検出値を入力したうえで、ステップS2で、アイドルストップ中か否かを判定する。その結果、アイドルストップ中でない場合(NO)は、ステップS3で、アイドルストップ禁止条件が成立しているか否かを判定する。ここで、このアイドルストップ禁止条件としては、バッテリ電圧検出手段104で検出されたエンジン始動用バッテリ7の出力電圧が所定電圧以下であること、エンジン水温検出手段105で検出されたエンジン2の冷却水温が所定水温以下であること、AT変速故障検出手段106で自動変速機3の油圧制御系の故障が検出されたこと、前回のアイドルストップ時からの経過時間が予め定められた基準時間未満であることが設定されており、これらのうちいずれか1つでも成立すれば、アイドルストップ禁止条件が成立したと判定する。ここで、バッテリ電圧検出手段104で検出されたエンジン始動用バッテリ7の出力電圧が所定電圧以下であることを条件としているのは、該出力電圧が所定電圧以下である場合、エンジン2の始動性が低下しているため、出来る限りエンジン2を停止させないのが好ましいことによる。また、エンジン水温検出手段105で検出されたエンジン2の冷却水温が所定水温以下であることを条件としているのは、低温下ではエンジン始動の際の燃料消費量が増加するだけでなく、エンジン2の始動性が低下するため、エンジン2を停止させないのが好ましいこと、また、エンジン2が十分に温まらないうちに頻繁に起動停止を繰り返すと、例えば排気通路上に触媒装置が設けられているような場合に該触媒装置がエンジン2からの冷たい排気ガスにより劣化する虞があり、エンジン2を停止させないのが好ましいことによる。また、AT変速故障検出手段106で自動変速機3の油圧制御系の故障が検出されたことを条件としているのは、油圧制御系の故障時は、変速段が3速に制御されることとなるが、この3速は、上記表1に示すように作動油圧を供給すべき摩擦要素の箇所が最も多い変速段で、摩擦要素を作動させる作動油圧量が最も多くなるため、この変速段にあるときにアイドルストップを行うと、電動ポンプ8を駆動するためにバッテリ7の電力が大量に消費されることとなり、エンジン2の再始動に悪影響を与える虞があることによる。また、前回のアイドルストップ時からの経過時間が基準時間未満であることを条件としているのは、例えば、渋滞時に頻繁にアイドルストップが生じて乗員に不快感を与えるのを防止すると共に、アイドルストップにより抜けた負圧がブレーキブースタに再度蓄積される時間を確保することを目的としている。
なお、以上の4つの条件は一例であり、他の条件を付加してもよく、または、これらのうちのいずれか1つあるいは2つあるいは3つを選択して設けてもよい。
そして、このステップS3で、アイドルストップ禁止条件が成立したと判定した場合(YES)は、アイドルストップを実行することなくそのままリターンする。一方、アイドルストップ禁止条件が成立していないと判定した場合(NO)は、ステップS4で、車速がゼロ(車速が所定車速以下、ほぼゼロも含む)であり、かつブレーキスイッチ103がオンであるか否か、つまりエンジン2の自動停止条件が満足されているか否かを判定し、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンする。なお、ステップS3の判定がYESでリターンしたとき、及びステップS4の判定がNOでリターンしたときには、停車中の場合は、変速段は停車時の1速の状態に維持され、停車中でない場合は、通常走行制御での変速段に制御される。一方、上記ステップS4で満足されている場合(YES)は、ステップS5で、エンジン2を自動停止する。すなわち、燃料噴射弁121…121による燃料供給及び点火プラグ122…122による火花点火を停止する。なお、このとき、変速段は、通常の変速マップに従って変速された結果、1速となっている。
次いで、ステップS6で、変速段を1速から2速に制御する。すなわち、変速制御用アクチュエータ111…111を制御して、フォワードクラッチ51の油圧室及び2−4ブレーキ54の締結室54aに作動油圧を供給し、フォワードクラッチ51及び2−4ブレーキ54を締結状態とさせる。なお、このとき、エンジン2の自動停止に伴い、エンジン駆動式のオイルポンプ12は停止状態となって作動油圧の生成が停止するため、制御回路100は、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8を作動させる。
これに対し、上記ステップS2で、アイドルストップ中である場合(YES)は、ステップS7で、ブレーキがオフ操作されたか否か、すなわちブレーキスイッチ103がオフとなったか否か、及び車速が所定車速より大きいか否か、つまりエンジン2の再始動条件が満足されているか否かを判定する。ここで、車速が所定車速より大きくなったときとは、例えば、ブレーキペダル10の踏み込みの緩みや、ブレーキペダル10は踏み込んでいるものの、背景技術で説明したようなブレーキ液圧の低下により、下り坂等で車両1が前進し始めた場合等である。この条件を付加したのは、エンジン2の吸入負圧を利用して運転者の制動操作を助勢するブレーキブースタ内の負圧を、エンジン2を再始動させることにより回復させ、これにより同じ踏力でもより大きなブレーキ圧(ブレーキ力)を発生させて、車両の前方への移動を阻止することを目的としている。
そして、ステップS7で、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンし、満足されている場合(YES)は、ステップS8で、エンジン2を再始動する。すなわち、燃料噴射弁121…121による燃料供給及び点火プラグ122…122による火花点火を再開する。また、このエンジン2の再始動に伴い、エンジン駆動式のオイルポンプ12がエンジン2で再駆動されて該ポンプ12による作動油圧の生成が再開するため、制御回路100は、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8の作動を停止させる。
次いで、ステップS9で、アクセル開度が所定開度より大きいか否かを判定する。その結果、アクセル開度が所定開度より大きい場合(YES)、つまり乗員が急発進を望んでいる場合は、大きな加速力が得られるように、ステップS10で、変速段を2速から1速に制御する。すなわち、変速制御用アクチュエータ111…111を制御して、フォワードクラッチ51の油圧室に作動油圧を供給し、フォワードクラッチ51を締結状態とさせる。
一方、ステップS9でアクセル開度が所定開度以下の場合(NO)、つまり乗員が緩発進を望んでいる場合は、ステップS11で、2速を維持する。なお、2速の状態は、変速マップに基づく2−3シフトアップ変速が生じるまで維持される。
次に、第1の関連例に係るアイドルストップ制御の作用について説明する。
いま、例えば、車両がDレンジの4速で走行しているものとする。そのとき、乗員によりブレーキペダル10が踏み込まれると、徐々に車速が低下すると共に、変速段が変速マップに従って4速→3速→2速→1速というように低速段側に制御される。また、ブレーキペダル10の踏み込みによりブレーキスイッチ103がONとなっている。そして、車速がゼロとなると、車速がゼロとなったときからのブレーキスイッチ103のONの継続時間のカウントが開始する。そして、アイドルストップ禁止条件が成立していなければ、該継続時間が所定時間に達すると、エンジン2の自動停止条件が満たされてエンジン2が自動停止されると共に、変速段が1速から2速に制御される。
そして、このアイドルストップ中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されてブレーキスイッチ103がOFFとなると、エンジン2の再始動条件が満たされ、エンジン2が再始動される。また、アクセル開度が所定開度より大きいときは、2速から1速に変速され、アクセル開度が所定開度以下のときは、2速が維持される。
以上のように、第1の関連例によれば、アイドルストップ禁止条件(第3の所定条件)が満たされておらず、エンジン2の自動停止が行われたときは、自動変速機3の変速段が2速(所定変速段)に制御され、アイドルストップ禁止条件(第3の所定条件)が満たされて、エンジン2の自動停止が行われないときは、1速(最低速段)に制御されるから、不必要に変速段が2速(所定変速段)に制御されることがなくなって、車両1の発進性を損なうことがなくなると共に、車両1の後退が防止されることとなる。
また、例えば下り坂等でエンジン自動停止通にアイドルストップ中にブレーキ圧の低下により車両1が前方に移動し始めて車速が所定車速以上となると、エンジン2が再始動されるので、ブレーキ負圧が復活し(ブレーキブースタ内の絶対圧は小さくなる)、これにより同じ踏力でもブレーキ圧(ブレーキ力)が増大し、車両1の前方への移動が阻止されることとなる。
次に、本発明に係る実施の形態について説明する。なお、制御装置の構成は、前述した第1の関連例の図3に示すものと同一であり、その説明は省略する。
本発明の実施の形態に係るアイドルストップ制御は、図5に示すフローチャートに従って行われる。
まず、ステップT1で、上記センサやスイッチからの各検出値を入力したうえで、ステップT2で、アイドルストップ中か否かを判定する。その結果、アイドルストップ中でない場合(NO)は、ステップT3で、車速がゼロか否か、すなわち車両1が停車しているか否かを判定し、車速がゼロでない場合(NO)は、ステップT4で、車両1が減速中か否かを判定する。その結果、減速中でない場合(NO)は、そのままリターンし、減速中の場合(YES)は、ステップT5で、アイドルストップ禁止条件が成立しているか否かを判定する。なお、このアイドルストップ禁止条件は、第1の関連例のステップS3で説明したものと同様である。
そして、このステップT5で、アイドルストップ禁止条件が成立したと判定した場合(YES)は、ステップT6で、図6に示す変速マップ、具体的には減速により車速がゼロとなったときに変速段が1速となる変速特性とされた変速マップを採用し、該変速特性に従って変速段の制御を行って、リターンする。一方、ステップT5でアイドルストップ禁止条件が成立していないと判定した場合(NO)は、ステップT7で、図7に示す変速マップ、具体的には減速により車速がゼロとなったときに2速となる変速特性とされた変速マップを採用し、該変速特性に従って変速段の制御を行う。ここで、図7に示す変速マップは、図6に示す一般的な変速マップから2→1ダウンシフトラインを削除したものであり、この図7の変速マップによれば、アップシフトは図6に示す特性と同様に行われ、ダウンシフトは2速までとなる。
次いで、ステップT8で、車速がゼロ(車速が所定車速以下、ほぼゼロも含む)であり、かつブレーキスイッチ103がオンであるか否か、つまりエンジン2の自動停止条件が満足されているか否かを判定する。その結果、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンし、満足されている場合(YES)は、ステップT9で、エンジン2を自動停止する。すなわち、燃料噴射弁121…121による燃料供給及び点火プラグ122…122による火花点火を停止する。
一方、上記ステップT3で、車速がゼロの場合(YES)は、ステップT10で、現在の変速段が1速か否かを判定し、1速の場合(YES)はそのままリターンし、1速でない場合(NO)は上記ステップT8以後を実行する。
これに対し、上記ステップT2で、アイドルストップ中である場合(YES)は、ステップT11以降で、第1の関連例のステップS7以降と同様の制御を行う。すなわち、ステップT11で、エンジン2の再始動条件が満足されているか否かを判定し、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンし、満足されている場合(YES)は、ステップT12で、エンジン2を再始動する。次いで、ステップT13で、アクセル開度が所定開度より大きいか否かを判定し、アクセル開度が所定開度より大きい場合(YES)は、ステップT14で、変速段を2速から1速に制御し、アクセル開度が所定開度以下の場合(NO)は、ステップT15で、2速を維持するのである。
次に、本発明の実施の形態に係るアイドルストップ制御の作用について説明する。
いま、例えば、車両がDレンジの4速で走行しているものとする。そのとき、乗員によりブレーキペダル10が踏み込まれると、減速して徐々に車速が低下するが、この減速中、アイドルストップ禁止条件が成立しているか否かにより、異なったシフトダウン制御が行われることとなる。
すなわち、まず、アイドルストップ禁止条件が成立している場合について説明すると、この場合、上記変速マップとして図6に示すマップ(車速がゼロとなったとき(すなわち停車時)に1速となるマップ)が採用され、該変速マップに従って変速段が4速→3速→2速→1速とシフトダウン制御される。また、アイドルストップ禁止条件が成立しているので、停車中に、エンジン2が自動停止されることはない。
これに対し、減速中、アイドルストップ禁止条件が成立していないときは、上記変速マップとして図7に示すマップ(車速がゼロとなったとき(すなわち停車時)に2速となるマップ)が採用され、該変速マップに従って変速段が4速→3速→2速とシフトダウン制御される。つまり、1速までシフトダウンされることはない。そして、ブレーキペダル10の踏み込みによりブレーキスイッチ103がONとなっている状態で車速がゼロとなると(停車すると)、車速がゼロとなったときからのブレーキスイッチ103のONの継続時間のカウントが開始し、該継続時間が所定時間に達すると、エンジン2の自動停止条件が満たされてエンジン2が自動停止される。
そして、このアイドルストップ中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されてブレーキスイッチ103がOFFとなると、エンジン2の再始動条件が満たされ、エンジン2が再始動される。また、アクセル開度が所定開度より大きいときは、変速段が2速から1速に制御され、アクセル開度が所定開度以下のときは、2速に維持される。
以上のように、本発明の実施の形態によれば、第1の関連例で説明した作用効果に加え、アイドルストップ禁止条件が満たされていない状態での減速中に変速段をシフトダウンするときは、停車時に2速(所定変速段)となるように制御される、すなわち1速(最低速段)にまではシフトダウンされないから、エンジン2の自動停止時に、変速段を1速から2速(所定変速段)に制御する必要がなく、この結果、ショックを感じやすい停車中に変速ショックが発生することがない。
次に、本発明に関連する第2の関連例について説明する。
すなわち、図8に示すように、第2の関連例に係るアイドルストップ付き車両1には、アイドルストップ制御を行う制御回路200が備えられており、該制御回路200は、第1の関連例と同様の車速センサ201、アクセル開度センサ202、ブレーキスイッチ203、バッテリ電圧検出手段204、エンジン水温検出手段205 、及びAT変速故障検出手段206からの信号に加え、後方移動検出手段207からの信号を入力する。ここで、この後方移動検出手段207としては、例えば、車両後方物との間の距離を検出する距離センサ(例えば超音波センサ、電波センサ、カメラ等)を用いればよい。また、車速センサ201で検出された車速、車輪速、車輪回転角がゼロでなくなったこと等に基づいて後方移動を検出して行ってもよい。
制御回路200は、これらのスイッチやセンサからの信号に基いてアイドルストップ制御を実行し、変速機3の変速制御用アクチュエータ111…111(変速用ソレノイドバルブ等)と、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8と、エンジン2の燃料噴射弁121…121及び点火プラグ122…122とに制御信号を出力する。なお、その他の構成は、第1の関連例と同様であり、説明は省略する。また、本第2の関連例においては、減速中は停車時に1速となるようにシフトダウン制御される。
この第2の関連例に係るアイドルストップ制御は、図9に示すフローチャートに従って行われる。
まず、ステップU1で、上記センサやスイッチからの各検出値を入力したうえで、ステップU2で、アイドルストップ中か否かを判定する。その結果、アイドルストップ中でない場合(NO)は、ステップU3で、アイドルストップ禁止条件が成立しているか否かを判定する。なお、このアイドルストップ禁止条件は、第1の関連例のステップS3で説明したものと同様である。
そして、このステップU3で、アイドルストップ禁止条件が成立したと判定した場合(YES)は、アイドルストップを実行することなくそのままリターンする。一方、アイドルストップ禁止条件が成立していないと判定した場合(NO)は、ステップU4で、車速がゼロ(車速が所定車速以下、ほぼゼロも含む)であり、かつブレーキスイッチ203がオンであるか否か、つまりエンジン2の自動停止条件が満足されているか否かを判定する。その結果、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンする。なお、ステップU3の判定がYESでリターンしたとき、及びステップU4の判定がNOでリターンしたときには、停車中の場合は、変速段は停車時の1速の状態に維持され、停車中でない場合は、通常走行制御での変速段に制御される。一方、上記ステップU4で満足されている場合(YES)は、ステップU5で、エンジン2を自動停止する。すなわち、燃料噴射弁121…121による燃料供給及び点火プラグ122…122による火花点火を停止する。なお、このとき、エンジン2の自動停止に伴い、エンジン駆動式のオイルポンプ12は停止状態となって作動油圧の生成が停止するため、制御回路200は、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8を作動させる。また、このとき、変速段は、通常の変速マップに従って制御され、1速となっている。
これに対し、上記ステップU2で、アイドルストップ中である場合(YES)は、ステップU6で、現在の変速段が1速か否かを判定する。その結果、1速の場合(YES)は、ステップU7で、ブレーキがオフ操作されたか否か、すなわちブレーキスイッチ203がオフとなったか否か、及び車速が所定車速より大きいか否か、つまりエンジン2の再始動条件が満足されているか否かを判定する。
そして、ステップU7で、満足されている場合(YES)は、ステップU8で、エンジン2を再始動する。すなわち、燃料噴射弁121…121による燃料供給及び点火プラグ122…122による火花点火を再開する。また、このエンジン2の再始動に伴い、エンジン駆動式のオイルポンプ12がエンジン2で再駆動されて該ポンプ12による作動油圧の生成が再開するため、制御回路200は、バッテリ駆動式の電動オイルポンプ8の作動を停止させる。
これに対し、ステップU7で満足されていない場合(NO)は、ステップU9で、後方移動検出手段207からの信号に基づいて車両の後方移動が生じているか否かを判定し、生じていない場合(NO)は、そのままリターンし、生じている場合(YES)は、ステップU10で、変速段を1速から2速に制御する。すなわち、変速制御用アクチュエータ111…111を制御して、フォワードクラッチ51の油圧室及び2−4ブレーキ54の締結室54aに作動油圧を供給し、フォワードクラッチ51及び2−4ブレーキ54を締結状態とさせる。
他方、上記ステップU6で、現在の変速段が1速でないと判断された場合(NO)、つまり、上記ステップU10で変速段の1速から2速への制御が行われた後は、ステップU11以降で、第1の関連例のステップS7以降と同一の制御を行う。すなわち、ステップU11で、エンジン2の再始動条件が満足されているか否かを判定し、満足されていない場合(NO)は、そのままリターンし、満足されている場合(YES)は、ステップU12で、エンジン2を再始動する。次いで、ステップU13で、アクセル開度が所定開度より大きいか否かを判定し、アクセル開度が所定開度より大きい場合(YES)は、ステップU14で、変速段を2速から1速に制御し、アクセル開度が所定開度以下の場合(NO)は、ステップU15で、2速を維持するのである
次に、第2の関連例に係るアイドルストップ制御の作用について説明する。
いま、例えば、車両がDレンジの4速で走行しているものとする。そのとき、乗員によりブレーキペダル10が踏み込まれると、徐々に車速が低下すると共に、変速段が変速マップに従って4速→3速→2速→1速というように低速段側に制御される。また、ブレーキペダル10の踏み込みによりブレーキスイッチ203がONとなっている。そして、車速がゼロとなると、車速がゼロとなったときからのブレーキスイッチ203のONの継続時間のカウントが開始する。そして、アイドルストップ禁止条件が成立していなければ、該継続時間が所定時間に達すると、エンジン2の自動停止条件が満たされてエンジン2が自動停止される。なお、このとき、変速段は、上記シフトダウンにより1速になっている。
そして、アイドルストップ中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されてブレーキスイッチ203がOFFとなると、エンジン2の再始動条件が満たされ、エンジン2が再始動される。
これに対し、アイドルストップ中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されていないのに、前述のブレーキ液圧の低下等により、車両に後退が生じたことが検出されると、変速段が1速から車両の後退を阻止可能な2速に制御され、これ以上の後退が阻止される。そして、2速で停車中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されてブレーキスイッチ203がOFFとなると、エンジン2が再始動されると共に、乗員によりアクセルペダル9が踏み込まれると、そのアクセル開度が所定開度より大きいときは、変速段が2速から1速に制御され、アクセル開度が所定開度以下のときは、2速に維持されることとなる。
他方、下り坂で停車しているものとすると、アイドルストップ中に、乗員によるブレーキペダル10の踏み込みが解除されていないのに、前述のブレーキ液圧の低下等により、車両に前進が生じたことが、車速が所定車速よりも大きくなったことから検出されると、エンジン2の再始動条件が満たされ、エンジン2が再始動される。
以上のように、第2の関連例によれば、停車時は変速段が1速(最低速段)に制御されると共に、エンジン2の自動停止中に後方移動検出手段207により検出された車両1の後方移動距離が所定距離以上であるときは、変速段が1速(最低速段)から2速(所定変速段)に制御されるから、不必要に変速段が2速(所定変速段)に制御されることがなくなって、車両1の発進性を損なうことがなくなると共に、車両1がそれ以上後退するのが防止されることとなる。
また、例えば下り坂等でエンジン自動停止通にアイドルストップ中にブレーキ圧の低下により車両1が前方に移動し始めて車速が所定車速以上となると、エンジン2が再始動されるので、ブレーキ負圧が復活し(ブレーキブースタ内の絶対圧は小さくなる)、これにより同じ踏力でもブレーキ圧(ブレーキ力)が増大し、車両1の前方への移動が阻止されることとなる。