JP4396525B2 - 含フッ素化合物および含フッ素重合体 - Google Patents

含フッ素化合物および含フッ素重合体 Download PDF

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含フッ素化合物、および該含フッ素化合物を重合させた新規な含フッ素重合体に関する。また本発明は、紫外光領域で高い透明性を有する新規な含フッ素重合体からなるペリクル膜およびペリクル膜用接着剤に関する。また、該ペリクルを用いた露光処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素置換された炭素−炭素二重結合を有する含フッ素ジオキソール化合物が知られている(米国特許3,865,845号明細書)および米国特許4,429,143号明細書)。またスピロ環構造を有する含フッ素ジオキソール化合物として、下式(T)で表される化合物が知られている(日本特許第3075588号公報)。
【0003】
【化1】
Figure 0004396525
【0004】
該式(T)で表される化合物が重合した重合体は、特定の溶媒に可溶であり、ガラス転移温度(以下、Tgと記す。)が高い。しかし、該重合体の熱分解開始温度が低く、Tgと熱分解開始温度が近いために、溶融成形時の温度範囲を厳密にコントロールする必要があった。また、重合体の透過率および耐久性が不充分であった。
【0005】
また主鎖に飽和環構造を有する含フッ素重合体は、非晶質性を示し透明な含フッ素重合体となりうることが知られている。このような含フッ素重合体は、透明コーティング材料または光学材料等として有用である(日本特開平3−39963号公報および日本特開平3−67262号公報)。また、主鎖に水素原子を含み、かつ、実質的に線状の含フッ素重合体(日本特開2001−330943号公報)、ペルフルオロ1,3−ジオキソール構造を含む重合体(国際公開第2001/37044号パンフレット)は、紫外領域で高い透明性を有することが知られている。また、これらの材料をペリクル用に用いることも知られている。
【0006】
ペリクルとは、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィにおいて、フォトマスクやレチクル(以下、これらをマスクという。)上に異物が乗ることによって露光時のパターン欠陥が発生するのを防ぐために、マスクのパターン上に装着される保護膜をいう。ペリクルは、通常は、枠体(フレーム)に接着剤を介して透明薄膜を取り付けた構造からなる。またペリクルは、マスク面から一定の距離をおいて設置される。
【0007】
ペリクルが使用される半導体装置や液晶表示板の製造分野では、配線や配線間隔の微細化進展にともない、フォトリソグラフィにおける光源の波長が急速に短波長化している。近年では、最小パターン寸法0.3μm以下の配線加工のために、KrFエキシマレーザーが導入されているが、その発振波長は248nmである。該波長においては、従来のニトロセルロース系の膜材料では耐久性が不充分になるため、日本特開平3−39963号公報等に記載される非結晶性のペルフルオロ重合体が膜材料として提案されている。
【0008】
一方、近年のリソグラフィーでは、最小パターン寸法0.2μm以下の配線加工が必要とされているが、これらの加工のために波長200nm以下のレーザーとして、波長193nmのフッ化アルゴンエキシマレーザー(以下、ArFエキシマレーザーという。)、波長157nmのフッ素ガスエキシマレーザー(以下、Fエキシマレーザーという。)等の使用が検討されている。
【0009】
しかし、これらのレーザーからのレーザー光は非常にエネルギーが高いため、上記米国特許3,865,845号明細書に記載される重合体では、耐久性が不充分であった。また、該米国特許明細書に記載される重合体(旭硝子社製商品名:CYTOP)は、170nm以下の光に対する光透過性や耐久性が急激に低下する性質があり、波長157nmのFエキシマレーザー光に対する透過性は著しく低くなる欠点があった。また、該重合体は170nm以上の光に対する透明性には優れるが、膜強度が不充分であり取り扱いが難しい問題があった。
【0010】
また、Fエキシマレーザー光に対応できるペリクル膜として、日本特許第3075588号公報には鎖状構造の含フッ素重合体が記載され、日本特開平3−39963号公報等にはフッ化ビニリデン等を主成分とする共重合体が記載されている。しかし、これらの重合体は157nmで透明性を有するものの、耐久性が不充分であった。
【0011】
さらに、ペリクル膜とフレームを接着する接着剤においても、レーザー光の迷光や反射光による同様な劣化問題があるため、耐久性の高い接着剤の開発が望まれてきた。
【発明の開示】
【0012】
本発明は、保護コーティング剤、フォトレジスト膜、エッチング時のマスキング剤、燃料電池用セパレーター、燃料電池用触媒固定用皮膜、およびペリクル材料等として有用な新規な重合体の提供を目的とする。また、本発明は、該重合体の原料として有用な化合物および該化合物の製造に有用な新規な中間体の提供を目的とする。また本発明は、新規な材料を用いたペリクル膜およびペリクル膜用接着剤の提供を目的とする。
【0013】
本発明者らは、特定の単位を含む重合体が200nm以下のレーザー光、好ましくは180nm以下のレーザー光(以下、これらのレーザー光を総称して短波長光という。)に対して高い透過性と耐久性を有することを見いだした。さらに、短波長光領域での透明性と耐久性にも優れることを見いだした。そして、該重合体をペリクル膜および/またはペリクル膜接着剤として用いることにより、短波長光による露光処理用のペリクルとして最適のペリクルを提供することを見いだした。
すなわち本発明は、以下の発明を提供する。
【0014】
<1>ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる、波長200nm以下の光による露光処理用のペリクルであって、該ペリクル膜および/または該接着剤が下式(A)で表される単位を含む重合体からなることを特徴とするペリクル。
ただしQは、下記の基(B)を示す。
基(B):−(CH−(ただし、aは1〜3の整数を示す)で表される基中に存在する2つの水素原子が、2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基、またはアルキレン基中の水素原子の1個以上がエーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基で置換され、かつ2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基、で連結された基。
ただし、Qにおいて、基(B)中に存在する水素原子の1個以上がフッ素原子に置換されている。
およびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子を示す。
【0015】
【化2】
Figure 0004396525
【0016】
<2>Qが、基(B)中に存在する水素原子の全てがフッ素原子に置換された基である<1>に記載のペリクル。
<3>式(A)で表される単位が、下式(A1)で表される単位である<1>に記載のペリクル。
ただし、XおよびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子であり、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。
【0017】
【化3】
Figure 0004396525
【0018】
<4>ペリクル膜が、式(A)で表される単位を必須とし、かつ、官能基を持たない重合体からなる<1>〜<3>のいずれか一項に記載のペリクル。
<5>接着剤が、式(A)で表される単位を必須とし、かつ、官能基を有する重合体からなる<1>〜<4>のいずれか一項に記載のペリクル。
<6>式(A)で表される単位を含む重合体が、−CHCH−構造を持たない重合体である<1>〜<5>のいずれか一項に記載のペリクル。
<7>フォトリソグラフィーにおける波長200nm以下の光を用いた露光処理方法において、<1>〜<6>のいずれか一項に記載のペリクルを用いることを特徴とする露光処理方法。
<8>下式(a1)で表される化合物。ただし、XおよびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子であり、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。
【0019】
【化4】
Figure 0004396525
【0020】
<9>XおよびXがフッ素原子であり、nが1であり、かつRf1およびRf2がフッ素原子である<8>に記載の化合物。
<10><8>または<9>に記載の化合物のモノマー単位を含む重合体。
<11>下式(b2)で表される化合物または下式(b3)で表される化合物。
ただし、YおよびZは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子を示し、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示し、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を示す。
【0021】
【化5】
Figure 0004396525
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本明細書においては、水素原子を有する基の水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基をポリフルオロ基と記し、該水素原子の全てがフッ素原子に置換された基をペルフルオロ基と記す。また本明細書においては、式(A)で表される重合体を重合体(A)、式(a1)で表される化合物を化合物(a1)のように記し、他の式で表される化合物および単位においても同様に記す。また以下の説明において、式(A)に関する説明は、特に記載しない限り式(a1)にも適用される。
【0023】
本発明は新規なペリクルを提供する。すなわち、ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる、波長200nm以下の光による露光処理用のペリクルであって、該ペリクル膜および/または該接着剤が下式(A)で表される単位を含む重合体からなるペリクルを提供する。以下、式(A)で表される単位を含む重合体を重合体(A)と記す。
【0024】
【化6】
Figure 0004396525
【0025】
式(A)におけるQは、下記の基(B)中に存在する水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基を示す。
基(B):−(CH−(ただし、aは1〜3の整数を示す)で表される基中に存在する2つの水素原子が、2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基、または、該2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基中の水素原子の1個以上がエーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基で置換された基、で連結された基。
【0026】
基(B)における2つの水素原子を連結する基は2個のエーテル性酸素原子を含む基が好ましく、−(CHO(CHO(CH−(ただし、b、d、およびeはそれぞれ独立に1〜2の整数を示し、(b+d+e)は3または4が好ましい。)で表される基が特に好ましい。
【0027】
Qは、基(B)中に存在する水素原子の1個以上がフッ素原子に置換された基であり、基(B)中に存在する水素原子の全てがフッ素原子に置換された基であるのが好ましい。
基(B)中に置換基が存在する場合、該基としてはアルキル基および/またはエーテル性酸素原子を含むアルキル基であり、それらの炭素数は1〜5が好ましく、特に1〜3が好ましく、とりわけ1または2が好ましい。
【0028】
基(B)において、−(CH−で表される基中に存在する2つの水素原子としては、同一の炭素原子に結合する2つの水素原子、または、隣り合う炭素原子に結合する2つの水素原子であるのが好ましく、同一の炭素原子に結合する2つの水素原子であるのが特に好ましい。さらに、該2つの水素原子が前記の基で連結することにより5員環〜7員環構造を形成するのが好ましい。
【0029】
Qの具体例としては、後述する単位(A)の具体例中に例示されうる。
およびXは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子を表す。XおよびXが、それぞれフッ素原子または塩素原子である場合には、重合体(A)の耐熱性、耐候性および耐光性が良好になる利点があるため好ましく、さらにXとXとがフッ素原子である場合には、重合体(A)の光学的性質も向上するため特に好ましい。
単位(A)としては、下記単位(A’)であるのが特に好ましい。ただし、式中のXおよびX、およびQは前記と同じ意味を示し、Qはエーテル性酸素原子を2個以上含むペルフルオロアルキレン基を示す。
【0030】
【化7】
Figure 0004396525
【0031】
単位(A)としては、下記単位が例示できる。ただし、XおよびXは、前記と同じ意味を示し、好ましい態様も同じである。
【0032】
【化8】
Figure 0004396525
【0033】
単位(A)は、下記化合物(a)を重合させてなるモノマー単位であるのが好ましく、単位(A’)は下記化合物(a’)を重合させてなるモノマー単位であるのが好ましい。同様に単位(A)として例示した単位は該単位に対応する構造の重合性モノマーを重合させてなるモノマー単位であるのが好ましい。
【0034】
【化9】
Figure 0004396525
【0035】
さらに、単位(A)は、下記化合物(a1)を重合させてなる下記モノマー単位(A1)であるのが好ましい。化合物(a1)およびモノマー単位(A1)を含む重合体は新規な化合物である。
【0036】
【化10】
Figure 0004396525
【0037】
ただし、nは1または2である。このうち、環構造を形成しやすく、環構造が安定であること、原料入手の容易性の点から、nは1が好ましい。Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、原料の入手の容易さ等の点からフッ素原子が好ましい。Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基であり、該ペルフルオロアルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよい。Rf2としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0038】
化合物(a1)の具体例としては下記化合物が挙げられ、下記化合物(a2)が好ましい。
【0039】
【化11】
Figure 0004396525
【0040】
化合物(a)は、公知の化合物に公知の反応を適用することにより製造できる化合物である。たとえば、化合物(a1)は以下の製造ルートにしたがって製造できる。ただし、下式中のn、Rf1、Rf2は前記と同じ意味を示し、YおよびZは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、または水素原子を示す。
【0041】
【化12】
Figure 0004396525
【0042】
すなわち、後述する方法等による入手できる下記化合物(b1)に、エチレンオキシドを付加する方法、または、2−クロロエタノールを付加し、つぎに塩基の存在下で脱塩化水素することによって閉環する方法、により化合物(b2)を得る。
【0043】
化合物(b1)にエチレンオキシドを付加する反応は、公知の方法(たとえば米国特許第3,324,144号記載の方法)により実施できる。たとえば、化合物(b1)とエチレンオキサイドとを、触媒(たとえば、ヨウ化カリウムおよび水からなる触媒)の存在下に反応させる方法が挙げられる。該反応の反応温度は、100℃〜150℃が好ましく、特に120℃〜130℃が好ましい。
【0044】
化合物(b1)にエチレンクロロヒドリン付加させ、つぎに閉環する反応は、たとえば米国特許2,925,424号の例3に記載の方法を採用できる。
【0045】
次に、化合物(b2)を光塩素化して化合物(b3)を得る。この光塩素化は、たとえば米国特許第2,925,424号明細書および該明細書の例9に記載の方法にしたがって実施できる。具体的には、紫外線照射下に、塩素ガスを吹き込みながら反応させる方法が挙げられる。該反応は、溶媒を存在させずに実施するのが好ましく、反応温度は0〜100℃が好ましく、特に30℃〜80℃が好ましい。
【0046】
また、化合物(b2)の光塩素化においては、塩素ガスの供給量を制御することにより、塩素化の程度の異なる化合物(b3)を得ることができる。塩素ガスの供給は、化合物(b2)の2つのメチレン基に存在する水素原子のそれぞれ1個以上が塩素化するまで継続する。
【0047】
該化合物(b3)から化合物(a1)を得る反応は、下記塩素化反応および選択的フッ素化反応の条件や反応の進行状況により分類される。
【0048】
たとえば、化合物(b3)における光塩素化が完全に進行するまで塩素ガスを供給した場合には、式(b3)におけるYおよびZが塩素原子である下記化合物(b3−Cl)が得られる。つぎに該化合物(b3−Cl)においては、選択的フッ素化を行うことにより、塩素原子であるYおよびZをフッ素化して下記化合物(b3−F)を得る。さらに該化合物(b3−F)を脱塩素化反応することにより、式(a1)におけるXおよびXがフッ素原子である化合物(a1−F)が得られる。
【0049】
また化合物(b3−Cl)の選択的フッ素化の条件によっては、YおよびZの一方のみがフッ素化され、YおよびZの一方がフッ素原子で他方が塩素原子である下記化合物(b3−FCl)のいずれか一方または両方が生成しうる。該化合物においても、化合物(b3−F)と同様の脱塩素化反応を行なうことにより式(a1)におけるXおよびXの一方がフッ素原子であり、他方が塩素原子である下記化合物(a1−FCl)が得られる。
【0050】
化合物(b3−Cl)の選択的フッ素化は、米国特許第3,865,845号明細書に記載される方法に従って実施するのが好ましい。具体的にはSbFおよびSbClを用いて、溶媒(たとえば、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン))中、または溶媒の不存在下で反応させる方法が挙げられる。該反応の反応温度は50〜200℃が好ましく、特に100℃〜150℃が好ましい。
【0051】
また、化合物(b3−Cl)においては、該化合物をそのまま脱塩素化することに式(a1)におけるXおよびXの両方が塩素原子である化合物(a1−Cl)も得られる。
【0052】
【化13】
Figure 0004396525
【0053】
また、化合物(b3)の光塩素化において、光塩素化が部分的に進行した時点で塩素ガスの供給を停止した場合には、式(b3)におけるYおよびZが水素原子である下記化合物(b3−H)が得られる。該化合物(b3−H)においては、そのまま脱塩素化反応を行なうことによりXおよびXが水素原子である化合物(a1−H)が得られる。
【0054】
【化14】
Figure 0004396525
【0055】
前記脱塩素化反応は、極性溶媒中で脱ハロゲン化剤を用いて行うことが好ましい。脱ハロゲン化剤とは原料中のハロゲン原子に作用してハロゲン原子を引き抜く作用のある反応剤をいう。このうち本発明の化合物(a1)の各製造方法においては脱塩素化剤として作用する脱ハロゲン化剤を用いる。該脱ハロゲン化剤としては、亜鉛、ナトリウム、マグネシウム、スズ、銅、鉄、またはその他の金属が好ましい。このうち、比較的低い反応温度を採用できることから、脱ハロゲン化剤としては亜鉛が好ましい。脱ハロゲン化剤は反応前に作用させる前に活性化させてもよい。活性化は活性化剤を使用して行うことが好ましい。活性化剤としてはジブロモエタン、塩酸、ヨウ素、および塩化第二水銀等が好ましい。脱塩素化の基質に対する脱ハロゲン化剤量は、2〜10倍モルが好ましく、特に5〜8倍モルが好ましい。脱塩素化反応の反応温度は40〜100℃が好ましく、特に40〜80℃が好ましい。
【0056】
また極性溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,4−ジオキサン、ジグライム、メタノール等の有機極性溶媒、または、水が好ましい。
【0057】
脱塩素化反応は、脱ハロゲン化剤と極性溶媒中に、脱塩素化の基質を滴下する方法によるのが好ましい。また反応で生成した化合物(a1)は反応蒸留により、速やかに反応系から抜き出されることが好ましい。
【0058】
前記塩素化反応およびフッ素化反応においては、生成物が塩素化の程度またはフッ素化の程度の異なる2種以上の化合物となる場合がある。この場合においては、生成物から目的とする化合物を適宜分離して、適宜必要な反応を行ってもよく、または混合物のまま次工程の反応を行ない、その後に分離してもよい。
【0059】
化合物(a1)の製造中間体である化合物(b2)および化合物(b3)は新規化合物である。化合物(b2)および化合物(b3)においては、Rf1およびRf2はフッ素原子であるのが好ましく、nは1であるのが好ましい。また化合物(b3)においてはYおよびZがそれぞれ独立に、フッ素原子または塩素原子であるのが好ましく、両方がフッ素原子であるのが好ましい。さらに化合物(b2)としては下記化合物(b20)が好ましく、化合物(b3)としては下記化合物(b30)が好ましい。
【0060】
【化15】
Figure 0004396525
【0061】
前記化合物(b2)は、後述する重合体(A1)の製造中間体として、もしくはキャパシタ等の電池やバッテリー等の電解液として、または電解液への添加剤として有用である。
【0062】
化合物(a1)製造の出発物質である化合物(b1)は、国際公開第2002/18314号パンフレットに記載される方法を用いて合成できる。たとえば、式(b1)におけるnが1でありRf1およびRf2がフッ素原子である化合物(b10)は下記製造ルートにより製造できる。
【0063】
【化16】
Figure 0004396525
【0064】
すなわち、グリセリンとホルムアルデヒドとの付加物である、グリセロール・ホルマール混合物(該混合物は、通常は化合物(b11)と化合物(b12)が平衡状態で存在する混合物である。)と式RCOF(Rは、エーテル性酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキル基を示す。)で表される化合物とのエステル化反応を行ない、つぎに液相中でフッ素化することにより化合物(b13)と化合物(b14)との混合物を得る。つぎに該混合物を熱分解することにより、化合物(b10)と化合物(b15)の混合物を得る。
【0065】
本発明においては、化合物(b10)と化合物(b15)から化合物(b10)を分離するのが好ましい。該分離は、化合物(b10)と化合物(b15)の混合物において行ってもよく、それぞれの化合物を分離しやすい化合物に変換してから分離してもよく、後者の方法によるのが好ましい。後者の方法としては、化合物(b10)と化合物(b15)の混合物に水を添加しつぎに脱水する方法が挙げられる。化合物(b10)は、水の添加によりケト基部分がC(OH)構造に変換され、つぎに脱水することにより化合物(b10)に再変換される。一方、化合物(b15)は水の添加により−COF部分が−COOH基に変換され、つぎの脱水反応では変化しない。脱水反応後の混合物を蒸留することにより、化合物(b10)が分離されて得られる。
【0066】
また、化合物(b10)以外のRf2基を有する化合物(b1)は、前記方法におけるグリセリンとホルムアルデヒドとの付加物を、グリセリンとアセトアルデヒドの付加物、または、プロパナール等のアルカナールとの付加物に変更することにより得ることができる。たとえば、グリセリンとアセトアルデヒドとの付加物を用いることで、式(b1)におけるRf2がトリフルオロメチル基である化合物(b1)が得られる。
【0067】
また、種々のトリオールを用いることにより式(b1)においてRf1が異なる種々の化合物が得られる。たとえば、トリオールとして1,2,3−ブタントリオールを用いることにより、Rf1がトリフルオロメチル基である式(b1)で表される化合物が得られる。また、1,2,4−ブタントリオールを用いることにより、nが2である式(b1)で表される化合物が得られる。
【0068】
上記方法により得た化合物(a1)等の化合物(a)は、重合性の不飽和結合を有することから、これを重合させて重合体(A)を得ることができる。該重合体(A)は、重合体の主鎖に飽和環構造を必須とする重合体である。該飽和環構造の存在によって本発明における重合体(A)は、非晶質性を示し、透明性の高い重合体となりうる。また、該環構造によって、重合体鎖に長い電子的な共役ができるのを分断する効果を有する。よって、本発明の重合体(A)は、短波長光領域においても透明な重合体になりうる。
【0069】
また、本発明の重合体(A)は特定の溶媒に可溶である。また、同時に高いTgと熱分解温度を有し、かつTgと熱分解温度との差が大きいため溶融成形が可能である。
【0070】
本発明の重合体(A)が、化合物(a1)のモノマー単位を有する重合体(A1)である場合には、重合体(A1)の主鎖に存在する飽和環構造中に2つの酸素原子が存在することから、重合体がフレキシブルになり、高温に曝された際の歪を容易に解消できるため、熱分解温度が高くなると考えられる。
【0071】
本発明の重合体(A)の分子量は、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中、30℃で測定したときの固有粘度(単位;dl/g)が0.1〜5.0に相当する分子量であるのが好ましい。該固有粘度が0.1以上であれば、該重合体(A)から得たフィルムは充分な機械強度を有する。また、該固有粘度が5.0以下である場合には、特定溶媒に対する溶解性が良好であり好ましい。より好ましい固有粘度の範囲は0.2〜3.0である。
【0072】
化合物(a)のモノマー単位を含む重合体(A)としては、化合物(a)の1種を重合させた単独重合体、化合物(a)の2種以上を重合させた共重合体、または化合物(a)と、化合物(a)と共重合性を有する他のモノマー(以下、他のモノマーと記す。)、との共重合体が好ましい。他のモノマーとしては、ラジカル重合性を有するモノマーであり、化合物(a)と共重合性を有するモノマーであれば、特に限定されない。また、他のモノマーとしては、化合物(a)以外の含フッ素モノマーであっても、フッ素原子を有しないモノマーであってもよい。
【0073】
フッ素原子を有しないモノマーとしては、炭化水素系のモノマーが挙げられる。炭化水素系モノマーとしては、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のオレフィン類、スチレン、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等を挙げられる。なかでも、オレフィン類、ビニルエーテル類等は、化合物(a1)等の化合物(a)と交互共重合性がよく、得られる含フッ素重合体は、波長200nm以下の光の透過性を大幅に向上させることができるので好ましい。
【0074】
また、他のモノマーが化合物(a)以外の含フッ素モノマーである場合には、重合性不飽和結合を有し、かつフッ素原子を有するモノマーから選択される。
【0075】
たとえば、式CFR=CRで表されるモノマー(以下、該モノマーをモノマー(k)と記す。)が挙げられる。
モノマー(k)としては、下記モノマー(k−1)〜(k−3)が好ましい。
モノマー(k−1):R、R、およびRがそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または1価の含フッ素有機基である場合のモノマー。
モノマー(k−2):RとRとが共同で2価の含フッ素有機基を形成し、Rはフッ素原子または1価含フッ素有機基であるモノマー。
モノマー(k−3):RとRとが共同して2価の含フッ素有機基を形成しかつRはフッ素原子または1価含フッ素有機基であるモノマー。
モノマー(k−1)としては、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、およびトリフルオロエチレン等の水素原子を有するフルオロオレフィン類;テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等の水素原子を有しないパーハロフルオロオレフィン類;ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;等が挙げられる。
モノマー(k−2)およびモノマー(k−3)は、不飽和結合と環構造とを併有するモノマーである。モノマー(k−2)およびモノマー(k−3)としては、下記モノマー(k−20)、下記モノマー(k−21)、および下記モノマー(k−30)が挙げられる。
【0076】
【化17】
Figure 0004396525
【0077】
ただし、R11〜R17はそれぞれ独立にフッ素原子または1価含フッ素有機基を示す。R11〜R16が1価含フッ素有機基である場合には、ペルフルオロアルキル基が好ましく、特に炭素数1または2のペルフルオロアルキル基が好ましい。また、R17が1価含フッ素有機基である場合には、ペルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルコキシ基が好ましく、特に炭素数1または2の該基が好ましい。
【0078】
他のモノマーが化合物(a)以外の含フッ素モノマーである場合の他の例としては、分子内に反応性の異なる2種類以上の重合性不飽和結合を有する含フッ素モノマー(たとえば、含フッ素ジエンモノマー等。)も挙げられ、該モノマーとしては、下記モノマー(k−4)または(k−5)が好ましい。
モノマー(k−4):式CH=CR−Q10−CR=CFで表されるモノマー(ただし、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または1価含フッ素有機基を示し、Q10は2価の含フッ素有機基を示す)。
モノマー(k−5):式CF=CR−Q11−CR10=CFで表されるモノマー(ただし、RおよびR10はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または1価の含フッ素有機基を示し、Q11は2価の含フッ素有機基を示す)。
【0079】
10およびQ11としては、炭素数1〜10のエーテル性酸素原子を有していてもよいペルフルオロアルキレン基が好ましい。エーテル性酸素原子を有する場合の酸素原子数は1個であっても2個以上であってもよく、ペルフルオロアルキレン基の一方の末端に存在していてもよく、両末端に存在していてもよく、または炭素原子間に存在していてもよい。
【0080】
10およびQ11が、それぞれペルフルオロアルキレン基である場合の炭素数は2〜6が好ましく、ペルフルオロアルキレン基の片末端または炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である場合の炭素数は1〜4が好ましく、ペルフルオロアルキレン基の両末端にエーテル性酸素原子を有する基である場合の炭素数は1〜3が好ましい。また、Q10およびQ11の鎖長(鎖長とは分岐部分を除く炭素原子と酸素原子の総数)は、2〜4であることが最も好ましい。
【0081】
10およびQ11としては、2,2−ジフルオロビニル基に結合する末端にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基、炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する炭素数2〜4以下のペルフルオロアルキレン基、およびエーテル性酸素原子を有しない炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基が好ましい。さらに好ましいQ10およびQ11は、それぞれ2,2−ジフルオロビニル基に結合する末端にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基である。
【0082】
モノマー(k−4)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CH=CHCFCFOCF=CF
CH=CHCFCFCFOCF=CF
CH=CHCFOCF=CF
CH=CHCF(CF)CFOCF=CF
CH=CHCFOCFCF=CF
CH=CHCFCClOCF=CF
CH=CFCFCFOCF=CF
CH=CFCF(CF)CFOCF=CF
モノマー(k−5)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFCFCF(CF)OCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFCFC(CFOCF=CF
CF=CFCFCFOCF=CF
CF=CHCFCFOCF=CF
CF=CHCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFCFCFCFOCF=CF
CF=CFCFOCF=CF
CF=CFCF(CF)CFOCF=CF
CF=CFCFCF(CF)OCF=CF
CF=CFOCFOCF=CF
CF=CFOC(CFOCF=CF
CF=CFCFC(CFOCF=CF
【0083】
本発明における重合体(A)は、共重合組成を変えることにより、透明性を保持したままガラス転移温度の異なる重合体にできる。また、官能基を有する他のモノマーと共重合させることにより、重合体の基材に対する密着性を改善したり架橋部位を付与できる。官能基としては、水酸基、カルボキシル基、およびスルホン酸基等の基や、該基に変換できる基等が例示できる。他のモノマーは、1種類であっても2種類以上を併用してもよい。
【0084】
本発明の重合体(A)が、非結晶性の重合性であり、かつ、溶媒への溶解性を有する重合体であるには、重合体(A)の全単位中の単位(A)の割合の下限は、10モル%が好ましく、特に20モル%が好ましく、また該単位(A)の割合の上限は100モル%が好ましい。また、該単位(A)が、化合物(a1)等の化合物(a)のモノマー単位である場合、モノマー単位(A)の全モノマー単位に対する含有量は、10モル%以上が好ましく、特に20モル%以上が好ましい。該モノマー単位の上限は100モル%であるのが好ましい。
【0085】
また、本発明の重合体(A)は短波長光領域の光に対して耐久性が高い性質を有する。該性質を示す理由は必ずしも明確ではないが、主鎖の飽和環構造のゆがみが小さいために、光を吸収しても、主鎖の開裂を引き起こしにくいためであると考えられる。
【0086】
本発明の重合体(A)は、ペリクル膜および/または接着剤として用いうる。そして、本発明はペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる、波長200nm以下の光による露光処理用のペリクルにおいて、該重合体(A)をペリクル膜および/または接着剤に用いるペリクルを提供する。また、本発明によれば、フォトリソグラフィーにおける波長200nm以下の光を用いた露光処理方法を、本発明のペリクルを用いて実施できる。
【0087】
ペリクル材料としての重合体(A)は、単位(A)を必須とする重合体(A)または、単位(A1)を必須とする重合体(A1)が好ましい。
【0088】
本発明のペリクルは、波長200nm以下の光、特にエキシマレーザー光、による露光処理において使用されるマスクおよびレチクル上にゴミが付着することによる、歩留まり低下を防止するものである。本発明のペリクルは、どのような露光処理にも応用できるが、半導体装置または液晶表示板を製造する際の一工程であるフォトリソグラフィーの露光処理において用いることが好ましい。露光処理に用いる光としては、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)に対して高度な耐久性を有し、特に波長180nm以下の光(たとえば、Fエキシマレーザー光(波長157nm)。)も使用でき好ましい。
【0089】
本発明のペリクルは、ペリクル膜と枠体とからなっており、ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されている。枠体を形成する材料は、ペリクル膜を支持できるものであれば限定されず、強度の面から金属材料が好ましく、露光処理に用いられる短波長光に対して耐性を有する金属材料であれば特に制限なく採用できる。枠体を形成する材料としては、アルミニウム、18−8ステンレス、ニッケル、合成石英、フッ化カルシウム、またはフッ化バリウム等が挙げられる。このうち、該材料としては、耐環境性、強度、および比重の観点からアルミニウム、または合成石英が好ましい。
【0090】
本発明においては、重合体(A)を、前記ペリクルにおけるペリクル膜および/または接着剤として用いる。
【0091】
このうちペリクル膜は、重合体(A)の溶液を用いて製膜することにより製造するのが好ましい。溶剤としてはフッ素原子を有する本発明の重合体(A)を溶解するものであれば特に限定されず、重合体の溶解性が高い溶剤を選択するのが好ましく、特に含フッ素有機溶剤が好ましい。
【0092】
含フッ素有機溶剤の具体例としては、つぎの例が挙げられる。
ペルフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のポリフルオロ芳香族化合物。ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロトリプロピルアミン等のポリフルオロトリアルキルアミン化合物。ペルフルオロデカリン、ペルフルオロシクロヘキサン等のポリフルオロシクロアルカン化合物。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物。ペルフルオロクタン、ペルフルオロデカン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、2H,3H−ペルフルオロペンタン、1H−ペルフルオロヘキサン等のポリフルオロアルカン類。メチルペルフルオロイソプロピルエーテル、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチル(ペルフルオロヘキシルメチル)エーテル、メチルペルフルオロクチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル等のポリフルオロエーテル類。
【0093】
重合体(A)の溶液からペリクル膜を製造する方法としては、基材上に重合体の薄膜を形成する公知の方法が採用でき、ロールコート法、キャスト法、ディップ法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、およびラングミュア・ブロジェット法等の方法が挙げられる。このうちペリクル膜は、厳密な膜厚形成が求められるため、スピンコート法を採用するのが特に好ましい。基材としては、シリコンウエハ、石英ガラス等で表面が平坦なものが好ましい。ペリクル膜の厚さは、通常は0.01〜50μmの範囲が好ましい。
【0094】
ペリクル膜に用いる重合体(A)としても、重合体(A1)が好ましい。また、重合体(A1)としては、単位(A)を必須とし、かつ、官能基を持たない重合体であるのが好ましい。さらに、重合体(A)は、−CHCH−構造を持たない重合体であるのが好ましい。該重合体(A)は、単位(a)(好ましくは、単位(a1))の1種または2種以上からなる重合体であってもよく、単位(a)と単位(a)以外の単位(以下、他の単位という。)を有する重合体であってもよく、後者であるのが好ましい。ペリクル膜としての重合体(A1)が他の単位を有する場合、膜の機械的強度および透過率の点から、重合体中の全単位に対する他の単位の割合は0.1〜60モル%が好ましく、1.0〜50モル%が特に好ましい。他の単位としては、モノマー(k−1)〜(k−5)を重合させたモノマー単位が好ましい。
【0095】
また、ペリクル膜を枠体に接着させる接着剤としては、単位(A)を含む重合体を用いるのが好ましく、特に単位(A)を含みかつ官能基を有する重合体であるのが好ましい。
【0096】
さらに、式(A)で表される単位とモノマー(k−1)のモノマー単位を必須としかつ官能基を有する共重合体、式(A)で表される単位とモノマー(k−2)および/またはモノマー(k−3)のモノマー単位を必須としかつ官能基を有する共重合体、または式(A)で表される単位とモノマー(k−4)および/またはモノマー(k−5)のモノマー単位を必須としかつ官能基を有する共重合体、であるのがとりわけ好ましい。また、接着性の重合体(A)においては、必ずしも高い透明性は要求されないことから、接着性の重合体(A)中の単位(A)の割合が少なくてもよい。たとえば、重合体中の全モノマー単位に対するモノマー単位(A)の割合は1モル%未満であってもよく、0.0001モル%以上1モル%未満であるのが好ましい。
【0097】
また、本発明の重合体(A)を、ペリクル用フレームとペリクル膜との接着剤として用いる場合、接着性向上に有効な官能基が導入された接着性の重合体(A)を用いることが好ましい。一方、ペリクル膜用の本発明における重合体(A)は光透過性の面から官能基を有しない重合体とするのが好ましい。
【0098】
接着性の重合体(A)が官能基を有する場合の官能基としては、枠体やペリクル膜に対して接着性を発現する官能基から選択され、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、およびイソシアネート基から選ばれる1種以上の基が好ましい。さらに、官能基としては、枠体材料であるアルミニウム等の金属類に対して良好な接着性を発現し、比較的低温でその効果が発現でき、かつ、保存安定性に富むことから、カルボキシル基が特に好ましい。
【0099】
接着性の重合体(A)が官能基を含む場合の官能基数は、重合体1gあたり0.001〜1ミリモルであることが好ましい。官能基の数が1ミリモル以内であれば、官能基の有する短波長光の光吸収性が、接着剤の耐久性を阻害する可能性が少なくなる。
【0100】
官能基を導入した接着性の重合体(A)は、公知の方法で合成できる(たとえば、日本特開平4−189880号公報、日本特開平4−226177号公報、日本特開平6−220232号公報。)。
【0101】
官能基の導入方法としては、(方法1)モノマー(a)を重合、または、モノマー(a)と他のモノマーを重合させた後に、重合開始剤や連鎖移動剤等に由来する重合体末端基を官能基として利用する方法、(方法2)モノマー(a)、官能基を含有しない他のモノマー、および官能基を含有する他のモノマーを共重合させる方法、または(方法3)モノマー(a)、官能基を含有しない他のモノマー、および官能基に変換しうる基を含有する他のモノマーを共重合させ、つぎに官能基に変換しうる基を官能基に変換する方法、等が挙げられる。このうち、導入操作が容易であることから方法1を採用するのが好ましい。
【0102】
カルボキシル基を導入する方法の具体例としては、アルコキシカルボニル基を有するモノマーを共重合させ、その後、共重合体中のアルコキシカルボニル基を加水分解反応によりカルボキシル基に変換する方法(方法3の例)、アルコキシルカルボニル基を末端基に有する重合体を得て、加水分解する方法(方法1の例)が挙げられる。
【0103】
また上記以外の方法として、重合体を高温処理して重合体の側鎖または末端を酸化分解せしめて、重合体中にカルボキシル基を導入する方法等も採用できる。
【0104】
また接着剤として、重合体(A)以外の重合体も用いうる。該重合体としては特に限定されず、日本特開2001−330943号公報や国際公開2001/37044号に記載される化合物が挙げられる。具体的には、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコ重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコ重合体等の主鎖に飽和脂肪族環構造を持たない重合体、フッ化ビニリデンを主成分とする共重合体等が例示できる。これらの重合体においても、方法1等の方法で、官能基を導入するのが好ましい。
【0105】
さらに、本発明においては、接着性の重合体(A)とともに、該接着性の重合体(A)の接着性向上させる目的で、シラン系、エポキシ系、チタン系、アルミニウム系等のカップリング剤等を使用してもよい。また、官能基を含有する接着性の重合体(A)を用いる場合には、該重合体を枠体上に薄くコートし、その表面に官能基を有しない場合の本発明の重合体(A)を塗布し、接着を行っても、ペリクル膜を強固に接着させうる。
【0106】
本発明における重合体(A)のうちモノマー単位(A1)を有する重合体(A1)は新規な重合体である。
【0107】
【化18】
Figure 0004396525
【0108】
式(A1)においてX、X、n、Rf1、およびRf2は、前記と同じ意味を示し、好ましい態様も同じである。XおよびXが独立に、フッ素原子または塩素原子である場合の重合体は、耐熱性、耐候性および耐光性が良好になる。特に、XおよびXがともにフッ素原子である場合には、光学的性質がさらに向上する。重合体(A1)としては、式(A1)におけるX、X、Rf1およびRf2がすべてフッ素原子であり、nが1であるモノマー単位を含む重合体が特に好ましい。
【0109】
重合体(A1)をペリクル以外の用途に用いる場合においても、該重合体(A1)は、そのままを目的とする用途に用いてもよく、他の化合物に変換して用いてもよい。またそのままを用いる場合においては、溶媒に溶解させ用いるのが好ましい。溶媒としては、含フッ素溶媒が好ましく、前記の含フッ素溶媒の他、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のペルフルオロテトラヒドロフラン誘導体;ペルフルオロトリブチルアミン等のペルフルオロアルキルアミン類;ペルフルオロシクロヘキサン等のペルフルオロシクロアルカン類(縮合環を含む);ハイドロフルオロエーテル類;ハイドロフルオロカーボン類;等が挙げられる。本発明の重合体(A)は、これらの含フッ素溶媒に可溶である。
【0110】
本発明の重合体(A)は通常のラジカル重合により得ることができる。重合方法としてはラジカル重合反応の手法を適用できる。たとえば有機または無機ラジカル開始剤、光、電離放射線または熱による重合等が挙げられる。重合の方法もバルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合を用いることができる。本重合に用いられる開始剤としては、以下の化合物が例示される。
【0111】
ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネート、イソブチリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、ビスペルフルオロブチリルペルオキシド、ペルフルオロベンゾイルペルオキシド、ビスペルフルオロt−ブチリルペルオキシド等の過酸化物またはアゾ化合物等が挙げられる。
【0112】
また、本発明の重合体(A)の分子量は従来公知の連鎖移動剤を用いることにより調節できる。該連鎖移動剤としては、たとえば、クロロホルム等のハイドロクロロカーボン類、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ジフロロクロロメタン等のハイドロフルオロカーボン類、またはスルフィド類が挙げられる。
【0113】
本発明における化合物(a1)等の化合物(a)は、比較的沸点が高く、適度な重合速度を有するため、モノマーから直接部品等を得る重合方法である、ポッティング重合または注型重合等のバルク重合法(以下、直接重合法とも記す。)を採用できる。たとえば注型重合であれば、レンズ状形成物の製造、光ファイバ用ロッドの製造、光導波路のコアまたはクラッドを直接製造できる。通常、モノマーと重合開始剤とを混合し、さらに必要に応じて他の添加剤を加え、成形型に注入する。その後、加熱硬化する熱重合法、または光硬化等の活性光線により硬化する光重合法が採用できる。
【0114】
化合物(a1)等の化合物(a)を重合した後、該重合工程中に混入した不純物を取り除くことは難しいが、モノマーの段階では、高精度ろ過等による不純物の除去が容易である。従って、直接重合法により部材・部品が製造できれば、不純物混入の機会を削減できる。従って、直接重合法を採用することによって、不純物が極めて少ない光学レンズ、光学セル、光ファイバー用母材、光導波路等の光学部材・部品が極めて高純度、高品位に作成可能である。従って、散乱が無く、透明性が良好な部材・部品が作製できる。
【0115】
直接重合法に用いられる開始剤の種類としては、特に限定されず、前記と同じ開始剤を使用できる。開始剤の添加量は一般的にはモノマーの総量に対して0.05〜5%が好ましく、特に0.1〜3%が好ましい。
【0116】
直接重合法として熱重合法を採用する場合には、初期は0〜50℃で行い、重合が進行するにつれて徐々に温度を上昇させるのが好ましく、最終的には60〜150℃まで加熱するのが好ましい。さらに、必要に応じて成形型から取り出した後、ポストキュアを行うこともできる。
【0117】
直接重合法として光重合法を採用する場合には、光増感剤、たとえばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン等をモノマーの総量に対して0.01〜5%添加して紫外線を照射することによって重合硬化させる。該光重合法において、前記重合開始剤を併用してもよい。
【0118】
本発明の重合体(A)は、直接重合法だけでなく、通常の重合法により得られた重合体も、押し出し成形、射出成形等の溶融成形や、溶液によるコーティング、キャスト、ディッピング等の加工手段を採用することが可能である。これにより本発明の重合体(A)を種々の用途に適用できる。
【0119】
たとえば、本発明における新規な重合体(A1)は、弾性率が高温下まで保持されるため、他の汎用フッ素重合体であるPTFEやPFAに比較して高温下での強度が強い性質を有する。しかも化学的安定性はPTFEやPFAと同等である。従って、各種の化学品工場や半導体工場の配管、バルブ、のぞき窓、シリコンウエハ等のケース、各種薬品槽等構造部品が直接薬品と接触するような製品に適用できる。
【0120】
さらに、本発明の重合体(A1)は熱安定性に優れるため、上記の成形物の溶融成形の際に可塑剤、熱安定剤等の添加物を必要としない。また、熱分解温度が高いため分解物が生成しにくい。これらの特徴は、本発明の重合体(A1)を食料品工業、バイオインダストリーに応用した場合、不純物の製品への混入が避けられる利点を有する。
【0121】
また、本発明の重合体(A1)は、200nm〜400nmの紫外光の透過率が90%以上でありかつ紫外線による劣化が少ない。そのため、紫外線を利用した各種の光学装置、光学部品においてレンズ、光ファイバー、光導波路等の光伝送部材として利用可能である。たとえば、波長400nm以下の青色レーザーを使用するDVD用の部品やDVD用ディスクの表面保護膜または太陽電池の表面保護膜等が例示される。
【0122】
一方、波長700〜1700nmの範囲の近赤外領域においても、高い透明性を有する。従って、光通信用の光ファイバー、光導波路等の光部品や光通信用のレーザー、フォトダイオードの保護膜またはレンズ、光部品用接着剤、光・電子部品混載導波路基板等に特に好適である。また、本発明の重合体(A1)は高いガラス転移温度を有するため、過酷な条件下においても(たとえばハンダリフロー条件もしくはエンジン周り等のような長期高温条件、またはコンピューター内部のような発熱条件下での長期使用等。)特性が劣化しにくい利点を有する。さらに、可視光においても高い透明性を有するとともに分散が少ない。従って、色収差補正用のレンズとしても利用できる。
【0123】
また、本発明の重合体(A1)は各種の薬品に対し優れた耐性を有するため、保護コーティング剤、フォトレジスト膜、エッチング時のマスキング剤、燃料電池用セパレーター、燃料電池用触媒固定用皮膜等として有用である。特に、フォトレジスト膜やエッチング時のマスキング剤として利用するときには、直接重合法のうちの光重合法を採用することで、従来のものに比べて工程を簡略化することが可能である。
【0124】
すなわち、モノマーと光重合開始剤の混合物を基材に塗布し、フォトレジスト法により所望のパターンの光を照射すると、光が照射した部分のみ重合する。その後、光が照射されず重合していない部分のモノマーを除去することにより所望のパターンを形成できる。また、紫外光の透過率も高いため、低波長用、たとえば157nmを発振するFエキシマレーザー用、または193nmを発振するArFエキシマレーザーリソグラフィー用のレジスト膜用材料としても有用である。この場合は、モノマー単独でなく、各種の光酸発生剤、レベリング剤、界面活性剤等と混合して用いることも可能である。
【0125】
本発明の重合体(A1)は屈折率が低いため、低反射加工剤としても有用である。眼鏡レンズ、光学レンズ、各種光学部材、ペリクル、ショーウインドウ、ショーケースまたは各種ディスプレー(PDP、LCD、FED、有機EL、プロジェクションTV)等の表面に本発明の重合体(A1)の皮膜を形成することによって、反射防止効果が得られる。また、本発明の化合物(a1)の単独重合体の屈折率は約1.33であり水とほぼ同じ屈折率であるため、バイオインダストリー用の保護膜、レンズ、分析機器用保護膜、または成形品としても有用である。
【0126】
さらに、本発明の重合体(A1)は低誘電率であるため、半導体素子の保護膜として用いた場合に演算速度が速くなる効果を有する。また、吸水率が低いため誘電率が湿度の影響を受け難く、半導体素子を水分から遮断する効果も高い。これらの特性を活かし、層間絶縁膜(たとえば半導体素子用、液晶表示体用、多層配線板用)、バッファーコート膜、パッシベーション膜、α線遮蔽膜、素子封止材、各種半導体用接着材(たとえばLOC用、ダイボンド用等)、高密度実装基板用層間絶縁膜、高周波素子(たとえばRF回路素子、GaAs素子、InP素子)の防湿膜、保護膜として利用できる。また、本発明の重合体(A1)は単独フィルムまたはポリイミド等の樹脂と積層したフィルムとして使用可能であり、これらは回路基板用フィルム、フィルムコンデンサ用として有用である。
【0127】
また、本発明の重合体(A1)の低表面自由エネルギー性を利用して種々の基材表面に撥水撥油性を付与することが可能である。これらの特性および他の特性をあわせることにより磁気ディスク基板、光ディスク、タッチパネルの防汚または潤滑膜、電子写真における感光および定着ドラム被覆材、ガラス窓用の各種フィルム、電線被覆材、撥インク剤(たとえば塗装用、インクジェットの吐出表面等の印刷機器用)、レジスト用反射防止膜等に使用できる。
【0128】
また、本発明の重合体を溶媒に溶解させた溶液組成物においては、溶媒として、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、ペルフルオロトリブチルアミン、ペルフルオロシクロアルカン類(縮合環を含む)、ハイドロフルオロエーテル類およびハイドロフルオロカーボン類等の基材自身を侵すことのない溶媒が採用できる。よって該溶液組成物は種々の基材にコーティングでき、しかも形成された皮膜は強靭である利点がある。
【実施例】
【0129】
以下に本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
[例1]化合物(18)と化合物(19)との混合物の合成例
【0130】
【化19】
Figure 0004396525
【0131】
ハステロイC製の2LのオートクレーブにF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF(2515g)とNaF粉末(240g)を入れた。充分に撹拌しながら反応器を冷却して、常圧で内温が30℃以下に保たれるようにゆっくりとグリセロール・ホルマール(401g)を導入した。反応により生じたHFはNaFにより、吸着除去した。グリセロール・ホルマール全量を投入後、さらに24時間撹拌した後に加圧ろ過によってNaF粉末を除去し、生成物を得た。生成物をNMRとGCにて分析した結果、化合物(18)および化合物(19)の混合物であり、混合物としての選択率は99.4%であった。未反応のグリセロール・ホルマールは検出されなかった。この生成物は精製することなく、次の反応に使用した。
【0132】
化合物(18)のH−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):3.93〜4.10(4H)、4.82(1H)、4.95(2H)。
化合物(18)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−79.0〜−80.7(4F)、−81.9〜−83.1(8F)、−84.6〜−85.6(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.7(1F)。
化合物(19)のH−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):3.74(1H)、3.93〜4.10(1H)、4.27〜4.54(3H)、4.90(1H)、5.04(1H)。
化合物(19)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−79.0〜−80.7(4F)、−81.9〜−83.1(8F)、−84.6〜−85.6(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.7(1F)。
【0133】
[例2]フッ素化反応の例
コンデンサーおよびポンプとそれにつながる循環ラインを装填した3Lのステンレス製オートクレーブにCFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF(4kg)を加え、ポンプにより内液を循環(流速300L/h)させた。ポンプの吐出側からオートクレーブの天板に渡る循環ラインの一部に熱交換器を設置し、循環する液体の温度を25℃に保った。循環ラインの途中にはステンレス製イジェクタを取り付け、循環する液体中にガスを吸引できるようにし、また、該イジェクタとポンプの間に原料供給管と、オートクレーブ中で反応した反応粗液を抜き出すための抜き出し管を取り付けた。該イジェクタを通して窒素ガスを2.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで50%に希釈したフッ素ガス(以下、50%希釈ガスと記す。)を、流速113.2NL/hで1.5時間吹き込んだ。
【0134】
つぎに、50%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、例1で得た生成物を希釈することなくそのまま原料供給管から、循環しているCFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COF中に、平均供給量約50g/hで連続供給し、合計で4800gの原料を仕込んだ。一方、反応粗液としては原料供給開始から約8時間毎に、循環ラインより約270gの量を合計で12回抜き出した。原料の供給を終了した後も1時間50%希釈フッ素ガスを供給し、さらに窒素ガスを3.5時間吹き込んだ後、オートクレーブ内液全量を抜き出し、途中抜き出し分とあわせ、合計7261gの反応粗液を回収した。
【0135】
生成物を19F−NMRで分析した結果、化合物(18)からの化合物(b13−1)の収率は57.5%、および化合物(19)からの化合物(b14−1)の収率は81%であり、該化合物以外は循環に使用したCFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COFが主な成分であることを確認した。得られた粗液はそのまま次の反応に使用した。
【0136】
【化20】
Figure 0004396525
【0137】
化合物(b13−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.8(2F)、−78.5〜−80.5(4F)、−81.9(8F)、−83.0〜−89.1(5F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−139.8(1F)、−145.5(1F)。
化合物(b14−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−54.5〜−58.3(2F)、−78.5〜−80.5(4F)、−81.9(8F)、−83.0〜−89.1(5F)、−127.9(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.5(1F)。
【0138】
[例3]液相熱分解反応による化合物(b10)の合成例
例2で得た粗液(3575.6g)をKF粉末(15.7g)とともに2L丸底フラスコに仕込み、激しく撹拌しながらオイルバスにて90℃で5時間加熱した。フラスコ上部から20℃に温度調節した冷却器および−78℃に冷却した丸底フラスコを直列に接続した。生成物は冷却した丸底フラスコに回収した。反応が進行してガスの生成が見られなくなった時点から1時間程度、100℃で加熱撹拌した後に熱分解終了とした。液状生成物(463.2g)を回収した。19F−NMRにより分析した結果、液状生成物は化合物(b10)と化合物(b15)との混合物であることを確認した。
【0139】
【化21】
Figure 0004396525
【0140】
次に、回収した丸底フラスコの内温が10℃を越えないように冷却しながらイオン交換水(95.5g)をゆっくり滴下した。全量滴下後、室温に戻して16時間撹拌を続けた。19F−NMRにより分析した結果、化合物(b10)が水和した化合物(22)、および化合物(b15)のカルボン酸フルオリド基がカルボン酸基に変換した化合物(23)の混合物であることを確認した。
【0141】
【化22】
Figure 0004396525
【0142】
19F−NMRの測定から得られた収率(内部標準:C)は、化合物(22)が化合物(b10)基準で91%、化合物(23)が化合物(b15)基準で75%であった。
化合物(b10)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−51.9(2F)、−80.6(4F)。
化合物(b15)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):25.5(1F)、−53.6(1F)、−58.4(1F)、−77.5(1F)、−88.5(1F)、−119.2(1F)。
化合物(22)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.2(2F)、−87.9(4F)。
化合物(23)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−54.0(1F)、−59.2(1F)、−79.1(1F)、−90.2(1F)、−119.5(1F)。
濃硫酸(203.2g)を500mLの丸底フラスコに仕込み、激しく撹拌しながらオイルバス中で130℃に加熱した。そこへ化合物(22)と化合物(23)の混合物(304.4g)をゆっくり滴下した。フラスコ上部から20℃に温度調節した冷却器および−78℃に冷却した丸底フラスコを直列に接続した。生成物は冷却した丸底フラスコにて回収し、全量滴下後から約1時間145℃で加熱撹拌した後に終了とした。19F−NMRにより分析した結果、回収した生成物はほぼ全て化合物(b10)であることを確認した。
【0143】
[例4]化合物(b20)の合成例
例3において化合物(b10)が回収された丸底フラスコを−78℃に冷却し、エチレンクロロヒドリン(40.5g)をゆっくり滴下した。全量滴下後、撹拌したまま室温まで昇温し、その後16時間撹拌を続けた。単蒸留によって無色透明液体(106.8g)を回収した。H−NMR、19F−NMRにより分析した結果、回収された無色透明液体はエチレンクロルヒドリンが付加した化合物(24)であることを確認した。NMRで定量(内部標準:C)した収率は83%であった。
化合物(24)のH−NMR(300.4MHz、溶媒CDCl、基準:TMS)δ(ppm):3.68(2H)、4.17(2H)。
化合物(24)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−48.4(1F)、−54.5(1F)、−82.0(1F)、−86.3(1F)。
引き続き、還流冷却機、撹拌機、滴下ロートを備えた500mLの4つ口ガラスフラスコを窒素にて充分置換した後、メタノール(160.0g)と水酸化ナトリウム(17.6g)を仕込み、水浴中で系内を冷却しながら完全に溶解させた。
その後、滴下ロートに化合物(24)(99.8g)を仕込み、フラスコ内を10℃以下に保ちながら滴下した。そのまま12時間撹拌を続け反応を完結させた後、フラスコ内の液をイオン交換水(400mL)中に加え、本液よりジクロロペンタフルオロプロパン(40g)を用いて抽出した。抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮し、減圧下にジクロロペンタフルオロプロパンを留去し82.0gの無色透明液体を得た。H−NMR、19F−NMRを用いて分析した結果、該無色透明液体は化合物(b20)であることを確認し、収率をガスクロマトグラフィーで定量したところ、84.5%であった。
【0144】
【化23】
Figure 0004396525
【0145】
化合物(b20)のH−NMR(300.4MHz、溶媒CDCl、基準:TMS)δ(ppm):4.32(4H).
化合物(b20)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.7(2F)、−86.6(4F)。
【0146】
[例5]光塩素化による化合物(b31)の合成例
【化24】
Figure 0004396525
高圧水銀灯を中心部に、側管にドライアイス還流コンデンサーおよび塩素ガス導入口、熱電対温度計を具備した2Lフラスコ内を充分に窒素置換した後、例4で合成した化合物(b20)(76g)とR−113(540g)を仕込んだ。内温を10℃にした後、水銀灯を点灯し、内温30℃にてゆっくりと塩素ガスの導入を開始した。その後、系内を昇温し45〜50℃の範囲内で一定に保った。未反応の塩素ガスはドライアイス還流コンデンサーにより系内に循環させながら反応を行った。合計90.5gの塩素を仕込み、塩素の消費がなくなった時点で反応を終了とした。
【0147】
その後、窒素にて残存塩素を除去した後、内容物を回収し、R−113をロータリーエバポレーターにて留去して無色透明液体(120g)を得た。19F−NMRにより分析した結果、該液体は化合物(b31)であることを確認した。その後、簡易蒸留装置を用いて操作圧力(15×133.322)Paで40℃〜41℃の留分(116g)を目的物として回収した。収率は99%であった。
化合物(b31)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.3(2F)、−85.9(4F)。
【0148】
[例6]部分フッ素化による化合物(b30)の合成例
【化25】
Figure 0004396525
【0149】
あらかじめ充分に乾燥した4つ口フラスコに還流冷却機、撹拌機、滴下ロート、熱電対温度計を装填し、3フッ化アンチモン(61.6g)を仕込み、室温下で真空ポンプを用いて約12時間減圧乾燥した。その後、例6で合成した化合物(b31)(100.0g)および5塩化アンチモン(18.0g)を滴下ロートより系内に滴下し、撹拌しながら加熱還流を行った。その後、還流冷却機を単蒸留装置に付け変えて系内より生成物を減圧下に留去し、無色透明の液体(87.6g)を得た。19F−NMRにより分析した結果、液状は化合物(b30)であることを確認した。NMRで定量(内部標準:C)した収率は97%であった。
化合物(b30)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−53.2(4F)、−84.2/−85.0(4F)。
【0150】
[例7]脱塩素反応による化合物(a2)の合成例
メカニカルスターラー、滴下ロート、熱電対温度計、蒸留塔を備えた500mLの4つ口ガラスフラスコに、亜鉛粉末(42.1g)、ジメチルホルムアミド(120g)を入れ、水浴中で40℃に加熱した。その後、1,2−ジブロモエタン(16.1g)を系内に滴下した。激しい発熱が終了した後、系内を55℃に調節し、化合物(b30)(77.0g)をゆっくり滴下した。反応の進行と同時に生成物が蒸留塔のトップより留出してきた。この留出と滴下のバランスをとりながら化合物(b30)を全量系内に仕込み、生成物(32.1g)を回収した。得られた生成物は無色透明の液体であり、H−NMR、19F−NMRを用いて分析した結果、該液状は化合物(a2)であることを確認し、収率をガスクロマトグラフィーで定量したところ、52%であった。また、得られた生成物のマススペクトル(CI法)を測定したところ、m/z=288に分子イオンピークが認められた。
【0151】
【化26】
Figure 0004396525
【0152】
化合物(a2)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−53.1(2F)、−87.7(4F)、−156.1(2F)。
【0153】
[例8]重合体(A2)および重合体(A3)の合成例
例7にて得た化合物(a2)(6.0g)、およびCFCFCFCFCFCFH(150g)を内容積200mLの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤として(CCOO)の3%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(0.74g)を加え、系内を再度窒素で置換した後、−10℃で80時間重合を行った。その結果、非結晶性重合体(以下、重合体A2という)(2.2g)を得た。重合体A2の19F−NMRを測定したところ、原料モノマー(化合物(a2))の不飽和結合を構成する炭素原子に結合したフッ素原子のピークは完全になくなっており、また化合物(a2)の環構造がそのまま保持されていることを確認した。
重合体A2の固有粘度[η]は、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で2.42であった。重合体A2は、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であった。
窒素中での熱重量分析による測定から重合体A2の重量減少開始温度は約400℃、10%重量減少温度は、480℃であった。また、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)に溶解して溶液を調整した後、ガラス基板上にキャストして得られたフィルムの屈折率をアッベ屈折計を用いて測定したところ1.33であった。また、DSC測定によりガラス転移温度が305℃において観測された。
つぎに、重合体A2をニッケル製オートクレーブに仕込み、窒素ガスで20%に希釈したFガスを仕込み、240℃で12時間フッ素化した。得られた重合体のIRスペクトルを測定したところ、1600cm−1〜1900cm−1に観測される末端吸収は認められなかった。重合体A2の端末をフッ素化処理して得た重合体を以下、重合体A3という。
【0154】
[例9]重合体A4の合成例
化合物(a2)(6.0g)とCH=CHCF(CF)CFOCF=CF(1.3g)、および1H−ペルフルオロヘキサン(130g)を内容積200mLの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。
重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシドの3%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(0.8g)を加え、系内を再度窒素で置換した後、20℃で60時間重合を行った。その結果、非結晶性重合体(以下、重合体A4という)(6.5g)を得た。例8と同様に、化合物(a2)の環構造が保持されていることを確認した。
重合体A4の固有粘度[η]は、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中30℃で0.31であった。重合体A4は、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であった。
窒素中での熱重量分析による測定からこの重合体の重量減少開始温度は約400℃、10%重量減少温度は、480℃であった。また、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)に溶解して溶液を調整した後、ガラス基板上にキャストして得られたフィルムの屈折率をアッベ屈折計を用いて測定したところ1.33であった。また、DSC測定からガラス転移温度が140℃において観測された。
【0155】
[例10]含フッ素重合体成形体(注型重合)の合成例
化合物(a2)(1.0g)、および重合開始剤として(CHCH(CH)OCOO)(0.01g)を直径10mmの平底パイレックス(登録商標)ガラス管に入れ、窒素ガス雰囲気中に放置した。5日後に取り出して、100℃で1昼夜真空乾燥したところ直径10mm厚さ5mmの円筒型の重合体が得られた。この円筒型重合体の光線透過率は紫外(250nm)から近赤外領域(1700nm)まで90%以上であった。
【0156】
[例11]重合体A5の製造例
化合物(a2)(4.9g)とCF=CHCF(CF)CFOCF=CF(以下、5Mモノマーと略記する。)(3.3g)、1H−ペルフルオロヘキサン(120g)および重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシドの3%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液0.8gを、あらかじめ−10℃に冷却しておいた内容積200mLの耐圧ガラス製オートクレーブに入れ、系内を窒素ガスで置換した。その後、30℃で80時間重合を行った。その結果、重合体(以下、重合体A5という)(3.9g)を得た。重合体A5のH−NMRを測定した結果、重合体A5中の全重合体単位に対する化合物(5Mモノマー)のモノマー単位の割合は10モル%であり、化合物(a2)のモノマー単位の割合は90モル%であった。また、重合体A5の19F−NMRスペクトルにおいては、不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、またスピロ環構造が保持されていることを確認した。
GPC法で測定した重合体A5のMは56000であった。また、重合体A5は、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であった。
【0157】
[例12]重合体A6の製造例
化合物(a2)(4.9g)、1H−ペルフルオロヘキサン(105g)および重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシドの3%ジクロロペンタフルオロプロパン溶液(0.95g)を、あらかじめ窒素置換し、−5℃に冷却した内容積200mLの耐圧ガラス製オートクレーブに仕込んだ。その後、フッ化ビニリデン(0.6g)を同オートクレーブに仕込んだ。その後、25℃で20時間、さらに100℃で37時間重合を行った。その結果、重合体(以下、重合体A6という)(6.7g)を得た。重合体A6のH−NMRを測定した結果、重合体A6中の全重合体単位に対するフッ化ビニリデンのモノマー単位の割合は27モル%であり、化合物(a2)のモノマー単位の割合は73モル%であった。また、重合体A6の19F−NMRスペクトルにおいては、不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、またスピロ環構造が保持されていることを確認した。
GPC法で測定した重合体A6のMは215000であった。また、重合体A6は、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であった。また、DSC法で測定した結果、Tは120℃であった。
【0158】
[例13]重合体A7からなる接着剤A7の合成例
CH=CHCFCFOCF=CF(20g)および1H−ペルフルオロヘキサン(40g)を内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド20mgを加え、系内を窒素で置換した後、0℃で24時間重合を行った。その結果、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体(以下、重合体A7という)(10g)を得た。
重合体A7の固有粘度[η]は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン中30℃で0.90であった。重合体A7のガラス転移点は90℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であり、屈折率は1.36と低かった。
また、上記重合体A7を空気中320℃で3時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体A7のIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.005ミリモル/gであった。この変性された重合体A7を以下接着剤A7という。
【0159】
[例14(比較例)]重合体Bおよび接着剤Bの製造例
1,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン(20g)および1H−ペルフルオロヘキサン(40g)を内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れた。重合開始剤としてビス(ヘプタフルオロブチリル)ペルオキシド(20mg)を加え、系内を窒素で置換した後、40℃で10時間重合を行った。その結果、主鎖に脂肪族環構造を有する含フッ素重合体(以下、重合体Bという)(15g)を得た。
重合体Bの固有粘度[η]は、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン中30℃で0.96dl/gであった。重合体Bのガラス転移点は90℃であり、室温ではタフで透明なガラス状の重合体であり、屈折率は1.36と低かった。一方、上記と同じ方法で得た重合体Bを空気中320℃で3時間熱処理した後に水中に浸漬して変性した。変性された重合体BのIRスペクトル測定によりカルボキシル基のピークが確認され、その量は0.004ミリモル/gであった。この変性された重合体Bを以下接着剤Bという。
【0160】
[例15]ペリクルの作製および評価
(例15−1)重合体A3を用いた膜の合成例
例8で合成した重合体A3(1.5g)とペルフルオロ(メチルデカリン)(98.5g)とをガラス製フラスコ中に入れて70℃にて48時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。この溶液を、研磨した石英基板上にスピンコートした。スピンコートの条件は、スピン速度500rpmにて10秒間、その後700rpmにて20秒間とした。さらに、80℃にて1時間、さらに200℃にて2時間加熱処理することにより乾燥させ、石英基板上に均一で透明な重合体A3の膜を形成させた。同様な方法を用いて、例11で合成した重合体A5、および例12で合成した重合体A6の均一で透明な膜を石英基板上に形成した。
【0161】
(例15−2)接着剤A7を接着剤および重合体A3をペリクル膜に用いたペリクルの作製例
例13で得た接着剤A7(2g)と1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(38g)とを例15−1と同様に処理して、均一な溶液を得たものを接着剤溶液Eとした。アルミニウム製枠体のペリクル膜を接着させる面に該接着剤溶液Eを塗布し、室温で2時間乾燥した。その後、120℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウム製枠体を載せて10分間加熱し、例15−1で得た石英基板上の重合体A3の膜面に、アルミニウム製枠体をフレームの接着面が接するように重ねて圧着した。さらに120℃で10分間保持して接着を完結させた。つぎに、石英基板からアルミニウム製枠体ごと重合体A3の薄膜を剥離した。その結果、アルミニウム製枠体に、重合体A3からなる膜厚約1μmの均一な自立膜が接着剤A7により接着されたペリクルを得た。同様な方法を用いて重合体A5およびA6からなる膜厚約1μmの均一な自立膜が接着剤A7により接着されたペリクルを得た。該重合体A3、A5、A6からなる膜の157nmの光の透過率はそれぞれ75%以上、80%以上、90%以上であった。
【0162】
(例15−3(比較例))重合体Bをペリクル膜、および接着剤に用いたペリクルの作製例
例14で得た接着剤B(7g)と1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(93g)とを例15−1と同様に処理して、均一な溶液を得てこれを、接着剤とする。例15−2上記と同様の方法で、該接着剤Bをアルミニウム製枠体に塗布する。
一方、例14で得た重合体Bを用いて例15−1と同様な方法により石英基板上に均一で透明な重合体Bの膜を形成させる。
つぎに例15−2と同様の方法で、石英基板表面に形成された重合体Bの膜面にアルミニウム製枠体を圧着、接着、および剥離する。その結果、アルミニウム製枠体に重合体Bからなる膜厚約1μmの均一な自立膜が接着剤Bにより接着されたペリクルを得る。該重合体Bからなる膜の157nmの光の透過率は90%以上である。
【0163】
(例15−4(実施例、比較例))ペリクルの耐久性の評価例
例15−2で得た重合体A3、A5、A6を用いたペリクル、および例15−3で得た重合体Bを用いたペリクルにおいて、157nmを発振するFエキシマレーザー光を用いて0.05mJ/cm/パルスの強度にて200Hzのサイクルで照射試験を行った。その結果、重合体A3、A5、A6を用いたペリクルにおいては、40万パルス以上で膜の透過率低下は初期に対して30%以内であり、極めて良好な耐性を示した。また、ペリクル膜は接着剤により枠体に強固に接着されており、良好な耐久性が認められる。
一方、重合体Bを用いたペリクルにおいては、4万パルス程度で膜の透過率が低下したことから、耐久性の低下が認められた。また、ペリクル膜の枠体からの剥離も認められ、耐久性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、短波長光に対して高い透過性と耐久性を有する重合体(A)が提供する。該重合体(A)はペリクル材料として有用である。
また本発明は、重合体(A)として新規な重合体(A1)を提供する。また該重合体(A1)の製造に用いうる新規なモノマーが提供される。本発明のモノマーは、容易に単独重合し、または他のラジカル重合性モノマーと共重合する。該新規な重合体(A1)は低い屈折率を有し、溶媒可溶で透明性の良好な重合体である。さらに、重合体(A1)は高いTgと高い熱分解温度を有し、かつTgと熱分解温度との差が大きいことから溶融成形が容易である。また本発明の重合体(A1)は他の含フッ素重合体が有する特性も有する。
したがって本発明の重合体(A1)あからは、ピンホール等の欠陥のない超薄膜が得られるため、コーティング材料、分離膜材料等への応用も可能である。また、低屈折率を利用して反射防止剤や光ファイバー、光導波路のコアまたはクラッド剤等の光学材料への応用も可能である。また、低誘電率で吸水性が低いため、電子材料としての応用も可能である。

Claims (11)

  1. ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる、波長200nm以下の光による露光処理用のペリクルであって、該ペリクル膜および/または該接着剤が下式(A)で表される単位を含む重合体からなることを特徴とするペリクル。
    ただしQは、下記の基(B)を示す。
    基(B):−(CH−(ただし、aは1〜3の整数を示す)で表される基中に存在する2つの水素原子が、2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基、またはアルキレン基中の水素原子の1個以上がエーテル性酸素原子を含んでいてもよいアルキル基で置換され、かつ2個以上のエーテル性酸素原子を含むアルキレン基、で連結された基。
    ただし、Qにおいて、基(B)中に存在する水素原子の1個以上がフッ素原子に置換されている。
    およびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子を示す。
    Figure 0004396525
  2. Qが基(B)中に存在する水素原子の全てがフッ素原子に置換された基である請求項1に記載のペリクル。
  3. 式(A)で表される単位が、下式(A1)で表される単位である請求項1に記載のペリクル。
    ただし、XおよびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子であり、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。
    Figure 0004396525
  4. ペリクル膜が、式(A)で表される単位を必須とし、かつ、官能基を持たない重合体からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載のペリクル。
  5. 接着剤が、式(A)で表される単位を必須とし、かつ、官能基を有する重合体からなる請求項1〜4のいずれか一項に記載のペリクル。
  6. 式(A)で表される単位を含む重合体が、−CHCH−構造を持たない重合体である請求項1〜5のいずれか一項に記載のペリクル。
  7. フォトリソグラフィーにおける波長200nm以下の光を用いた露光処理方法において、請求項1〜6のいずれか一項に記載のペリクルを用いることを特徴とする露光処理方法。
  8. 下式(a1)で表される化合物。ただし、XおよびXは独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子であり、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。
    Figure 0004396525
  9. およびXがフッ素原子であり、nが1であり、かつRf1およびRf2がフッ素原子である請求項8に記載の化合物。
  10. 請求項8または9に記載の化合物のモノマー単位を含む重合体。
  11. 下式(b2)で表される化合物または下式(b3)で表される化合物。
    ただし、YおよびZは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子または水素原子を示し、nは1または2の整数であり、Rf1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を示し、Rf2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基を示す。
    Figure 0004396525
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