JP4395900B2 - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性、耐衝撃性、表面外観、熱安定性および薄肉難燃性が改良された熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多くのポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂は、その優れた諸特性を生かし、射出成形材料として機械機構部品、電気電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されつつある。一方、成形品への要求が技術の進歩と共に高くなり、より複雑形状のものが要求され、そのため流動性向上が望まれるようになってきた。
【0003】
そこで分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、熱可塑性樹脂の流動性および機械特性を向上させるために数々のアロイ化技術が検討されている。末端基濃度を規定したLCPの例として特開平2−16150号公報がある。また、熱可塑性樹脂とのアロイが数々検討されており、例えばPOLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1991,Vol.31,No.6やJournal of applied Polymer Science,Vol.62,(1996)などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2−16150号公報のようにカルボキシル末端を増加させたものを用いても衝撃強度が向上せず、逆に成形加工時の熱安定性が悪くなる。
【0005】
また、上記文献記載の液晶ポリエステルでは、多量に液晶性樹脂を添加した場合には、確かに流動性が向上するものの熱可塑性樹脂の従来の特性を損なう。また、相溶性を上げすぎた場合、熱可塑性樹脂と反応が起こるためと推察されるが、衝撃性の低下は抑制されるものの、熱可塑性樹脂と混ざりすぎ流動性向上効果が発現しないことがわかった。よって本発明は、上述の問題を解消し、従来の熱可塑性樹脂の加工温度で加工可能であり、かつ熱可塑性樹脂の従来の特性を損なうことなく、新規に良流動、高衝撃、熱安定性、得られた成形物の良表面外観などの特性を付加した熱可塑性樹脂組成物の取得を課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)99.5〜70重量%とエステル結合を有する液晶性樹脂であって、アセチル末端基濃度が55×10-6当量/g以上80×10- 6 当量/g以下であり、液晶性樹脂の融点+10℃の条件で、ずり速度1000(1/秒)で測定される溶融粘度が16Pa・s以上20Pa・s以下の液晶性樹脂(B)0.5〜30重量%とからなる熱可塑性樹脂組成物、
(2)液晶性樹脂(B)が下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶ポリエステルであり、構造単位(I)および(II)の合計が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)と構造単位(II)および(III)の合計とが等モルである上記(1)記載の熱可塑性樹脂組成物、
【化5】
(ただし式中のR1は
【化6】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化7】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
(3)液晶性樹脂が、液晶性樹脂の原料モノマーの全水酸基量に対して、1.10〜1.11倍過剰量の無水酢酸を用いて、100〜250℃で5時間反応させるアシル化工程を経て得られたものである上記(1)または(2)記載の熱可塑性樹脂組成物、
(4)(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して充填材を0.5〜300重量部をさらに含有してなる上記(1)〜(3)のいずれかに記載の強化熱可塑性樹脂組成物、
(5)(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して導電率が0.1〜1000μS/cmである赤リン(ただし、導電率は赤リン5gに純水100mLを加え、121℃で100時間抽出処理し、赤リンをろ過した後ろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率とする。)および/または下記一般式(1)で表される燐酸エステル0.1〜30重量部を配合せしめてなる上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物、
【化8】
(上記式中、R3〜R10は、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基およびアントリル基から選ばれた芳香族基を表す。また、Yは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。またnは0以上の整数である。またk、mはそれぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは0以上2以下の整数である。)。
(6)スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)の一部もしくは全部、または液晶性樹脂(B)の一部もしくは全部または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部と赤燐および/またはリン酸エステルを一旦溶融混練して実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき赤燐および/またはリン酸エステル配合量よりも濃度の高い樹脂組成物を作製した後、上記(5)記載の熱可塑性樹脂組成物を製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法、および
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であって、該成形品が板状あるいは箱形でかつ厚み1.2mm以下の薄肉部を成形品全表面積に対して10%以上有することを特徴とする成形品を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる(A)の熱可塑性樹脂としてはスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上のものである。
【0009】
スチレン系樹脂はスチレン及び/またはその誘導体から生成した単位を含有するものである。
【0010】
スチレン、その誘導体(これらを総称して芳香族ビニル系単量体と称する場合がある)から生成した単位の具体例としては、下記構造単位のものが挙げられる。
【0011】
【化9】
R12〜R16は、水素、塩素等のハロゲン、炭素数1〜10の脂肪族基、芳香族基、脂環式、スルホニル基、ニトロ基などの基を示し、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
R12〜R16の具体例としては、水素、塩素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、フェニル、ベンジル、メチルベンジル、クロルメチル、シアノメチル、シアノメトキシ、エトキシ、フェノキシ、ニトロなどの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
スチレン、その誘導体の好ましい例として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなどが挙げられるが、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらを併用することもできる。
【0014】
スチレン系樹脂としては、スチレン系(共)重合体、ゴム強化スチレン(共)重合体が挙げられる。スチレン系(共)重合体としては芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上を重合した重合体、芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合可能な単量体の1種または2種以上を共重合した共重合体が挙げられる。ゴム強化スチレン(共)重合体としては、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上をグラフト重合したゴム強化グラフト重合体、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体の1種または2種以上とそれと共重合可能な単量体の1種または2種以上をグラフト共重合したグラフト共重合体が挙げられる。
【0015】
上記芳香族ビニル系単量体と共重合可能な単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニルなどが挙げられる。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられるが、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0017】
上記ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)などのジエン系ゴム、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系ゴムおよびエチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)などのポリオレフィン系ゴムが挙げられ、なかでもポリブタジエン、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)が好ましく用いられる。
【0018】
好ましいゴム強化スチレン系(共)重合体を更に詳しく説明すると、ゴム状重合体(a)に芳香族ビニル化合物(b)から選ばれる少なくとも一種、またはそれと共単量体であるメタクリル酸エステル(c)およびシアン化ビニル化合物(d)から選ばれる少なくとも1種とがグラフト重合したグラフト(共)重合体(重合体(i))に芳香族ビニル化合物(b)、メタクリル酸エステル(c)等から選ばれる少なくとも1種のビニル化合物とシアン化ビニル化合物(d)が重合した共重合体(重合体(ii))を配合した樹脂である。
【0019】
重合体(i)として、上記(a)に上記(b)ならびに上記(c)および/または(d)とグラフト重合する場合、ゴム状重合体(a)の共重合量は5〜80重量%が好適である。グラフト成分中、芳香族ビニル化合物(b)、メタクリル酸エステル(c)などから選ばれるビニル化合物の1種または2種以上の合計が50〜97重量%であり、シアン化ビニル化合物(d)が3〜50重量%が好ましい。
【0020】
重合体(i)の重合方法は特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合および塊状−懸濁重合などの公知の方法を用いることができる。
【0021】
一方、重合体(ii)中のシアン化ビニル化合物(d)の共重合量としては3〜50重量%が適当である。
【0022】
重合体(ii)の重合方法は特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合および塊状−懸濁重合などの公知の方法を用いることができる。
【0023】
ゴム状重合体を共重合させたスチレン系樹脂は重合体(i)を必須成分とし、重合体(ii)を任意の割合で配合して用いることができる。
【0024】
本発明において好ましいスチレン系樹脂としては、PS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、HIPS(高衝撃ポリスチレン)等のゴム強化スチレン系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などのゴム強化(共)重合体等が挙げられ、なかでも特にPS(ポリスチレン)等のスチレン系重合体、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)等のスチレン系共重合体、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体が好ましい。
【0025】
ポリカーボネート系樹脂は、カーボネート結合を有し、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる熱可塑性樹脂であり、該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、メチレンクロライド中1.0g/dlの濃度で20℃で測定した対数粘度が0.2〜3.0dl/g、特に0.3〜1.5dl/gの範囲ものが好ましく用いられる。ここで二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0026】
ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記構造単位で表される熱可塑性樹脂であり、クロロホルム中、30℃で測定した固有粘度が0.01〜0.80dl/gの重合体が好ましく用いられる。
【0027】
【化10】
R17〜R19 は、水素、ハロゲン、炭素数1〜10の脂肪族基、芳香族基、脂環式、スルホニル基、ニトロ基などの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
R17〜R19 の具体例としては、水素、塩素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、アリル、ブチル、フェニル、ベンジル、メチルベンジル、クロルメチル、シアノメチル、シアノメトキシ、エトキシ、フェノキシ、ニトロなどの基が挙げられ、これらはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
具体的には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、2,6−ジメチルフェノール/2,4,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体などが挙げられる。
【0030】
また、(A)熱可塑性樹脂は2種以上を併用してもよく、具体的には、ABSとポリカーボネートの組合せ、ポリフェニレンエーテルとポリスチレンまたは耐衝撃ポリスチレンなどの組合せの例を好ましく挙げることができる。また、その他特性例えば耐薬品性等を付与するために熱可塑性樹脂(A)の一部(通常、(A)成分の70重量%以下、好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50%以下)を結晶性の熱可塑性樹脂に置き換えることも可能である。このような結晶性の熱可塑性樹脂としては例えばポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、具体的には、ポリカーボネートとポリブチレンテレフタレートの併用、ポリカーボネートとポリエチレンテレフタレートの併用、ポリフェニレンエーテルとナイロン6の併用、ポリフェニレンエーテルとナイロン66の併用などが挙げられる。
【0031】
本発明の液晶性樹脂(B)とは、溶融時に異方性を形成し得るポリマーであって、エステル結合を有するものであり、かつアセチル末端基濃度が55×10-6当量/g以上80×10- 6 当量/g以下のものである。
【0032】
液晶性樹脂としては例えば、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミド、液晶ポリカーボネート、液晶ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、特に液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。
【0033】
上記液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドとしては、エステル結合を有する異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0034】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0035】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0036】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの好ましい例としては、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルなどが挙げられる。なかでも特に(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルが好ましい。
【0037】
【化11】
(ただし式中のR1は
【化12】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化13】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【化14】
であり、R2が
【化15】
であるものが特に好ましい。
【0038】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(III)、(IV)および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0039】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜90モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜10モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0040】
一方、上記構造単位(II) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(III)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0041】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0042】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0043】
本発明で使用する液晶性樹脂(B)は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能である。その際、0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜3.0dl/gが特に好ましい。
【0044】
また、本発明における液晶性樹脂(B)の溶融粘度は、16Pa・s以上20Pa・s以下である。これにより、流動性により優れた組成物が得られる。
【0045】
この溶融粘度は液晶性樹脂の融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0046】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0047】
液晶性樹脂の融点は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂への分散性の点から好ましくは330℃以下、より好ましくは320℃以下である。
【0048】
本発明において使用する上記液晶性樹脂の基本的な製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0049】
例えば、上記液晶ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0050】
(1)p−ヒドロキシ安息香酸などオキシカルボニル単位形成性単量体を除く成分のみから得られたポリエステルとp−アセトキシ安息香酸とを乾燥窒素気流下で加熱溶融し、アシドリシス反応によって共重合ポリエステルフラグメントを生成させ、次いで減圧し増粘させる方法。
【0051】
(2)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
【0052】
(3)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
【0053】
(4)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0054】
(5)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0055】
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(2)または(3)の方法により製造する方法。
【0056】
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0057】
本発明において、液晶性樹脂(B)のアセチル末端基濃度が55×10-6当量/g以上80×10- 6 当量/g以下であることが必須であるが、かかるアセチル末端基濃度の液晶性樹脂とするために好ましい方法としては(1)〜(6)の方法で重合体を得る場合にアシル化剤のモル当量(原料モノマー中のヒドロキシ基量(モル)に対するアシル化剤のヒドロキシ基をアシル化可能な官能基の量(モル)の比)が1.06以上となるようにアシル化剤を存在させる方法が挙げられる。
【0058】
アシル化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸なぞが挙げられるが、なかでも無水酢酸が反応性の点で好ましく用いられる。
【0059】
アシル化剤のモル当量(原料モノマー中のヒドロキシ基量(モル)に対するアシル化剤のヒドロキシ基をアシル化可能な官能基の量(モル)の比)がさらに好ましくは、1.10〜1.11とすることが好ましい。
【0060】
アシル化剤を添加する場合は、重縮合に先立ち、アシル化反応を行うことが好ましい。アシル化反応は窒素気流下、100〜250℃で5時間行うことが好ましい。
【0061】
本発明で用いる液晶性樹脂は、アセチル末端基濃度が55×10-6当量/g以上80×10- 6 当量/g以下となることが必須である。アセチル末端基濃度が少なすぎると、熱可塑性樹脂(A)の改良剤としての効果が発揮されない。また、上限は液晶性樹脂の加工時の熱安定性から80×10-6当量/g以下である。
【0062】
本発明の液晶性樹脂のアセチル末端基濃度の測定方法は特に限定されないが、例えば、試料250mgをNMR試料管にはかりとり、溶媒(テトラクロルエタン−d2/ペンタフルオロフェノール=4ml/5g)を2.5ml加え、加温(70〜90℃)溶解し、観測周波数599.9MHzのNMR装置を用いて測定を行う。
【0063】
本発明で用いるスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)の配合比は(A)と(B)の合計に対し、(A)99.5〜70重量%、(B)0.5〜30重量%であり、好ましくは(A)97〜75重量%、(B)3〜25重量%であり、より好ましくは(A)95〜80重量%、(B)5〜20重量%である。
【0064】
液晶性樹脂(B)が少なすぎる場合、本発明の効果、特に流動性が発揮されず、液晶性樹脂が多すぎる場合、特に成形時に樹脂が会合するウエルド部の強度が低下し、好ましくない。
【0065】
本発明において熱可塑性樹脂組成物に薄肉難燃性などの特性を付与するために赤リンおよび/または下記一般式(1)で表される燐酸エステルを使用することができる。
【0066】
本発明で使用される赤リンは、そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するので、これを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。このような赤リンの処理方法としては、特開平5−229806号公報に記載の如く赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンに水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤リンの酸化を触媒的に抑制する方法、赤リンをパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤リンを銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤リン表面に金属リン化合物を析出させて安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤リン表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤リンの粉砕を行わずに赤リン表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、などで被覆することにより安定化させる方法であり、特に好ましくは、赤リンの粉砕を行わず、表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法あるいはこれらの両者を組み合わせた方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンが耐湿性の面から好ましく使用することができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンである。
【0067】
なお、本発明において用いる赤燐として好ましい赤燐である未粉砕赤燐は、破砕面を形成させずに製造された赤燐を指す。
【0068】
また樹脂に配合される前の赤リンの平均粒径は、難燃性、機械特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕による赤燐の化学的・物理的劣化を抑える点から35〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、30〜0.1μmのものである。
【0069】
なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤リンの分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0070】
また本発明で使用される赤リンの平均粒径は上記のごとくであるが、赤リン中に含有される粒径の大きな赤リン、すなわち粒径が75μm以上の赤リンは、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤リンは分級とうにより除去することが好ましい。粒径が75μm以上の赤リン含量は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好ましい。
【0071】
ここで赤リンに含有される粒径が75μm以上の赤リン含量は、75μmのメッシュにより分級することで測定することができる。すなわち赤リン100gを75μmのメッシュで分級した時の残さ量A(g)より、粒径が75μm以上の赤リン含量はA/100×100(%)より算出することができる。
【0072】
また、本発明で使用される赤リン(B)の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤リン5gに純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、121℃で100時間抽出処理し、赤リンろ過後のろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性、およびリサイクル性の点から0.1〜1000μS/cmが好ましく、より好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0073】
このような好ましい赤リンの市販品としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5が挙げられる。
【0074】
本発明に使用される燐酸エステルとは、下記式(1)で表されるものである。
【0075】
【化16】
【0076】
まず前記式(1)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は難燃性の点から40以下が好ましい。
【0077】
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0078】
また前記式(1)の式中、R3〜R10は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0079】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基およびアントリル基から選ばれた芳香族基を表す。
【0080】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0081】
このような燐酸エステルとしては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、この中で特に好ましくはPX−200である。
【0082】
本発明において赤燐および燐酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。
【0083】
上記赤燐および/または燐酸エステルの添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜20重量部である。なかでも4〜15重量部が、特に好ましい。
【0084】
赤燐の添加量が本発明の範囲より多すぎたり、少なすぎた場合、添加による難燃性付与効果が小さくなる傾向にあり、かえって燃焼促進剤として働く、または機械物性が低下する傾向がある。
【0085】
燐酸エステルの添加量が本発明の範囲より多すぎる場合、機械物性の低下およびガス発生による噛み込み不良あるいはガス焼け等が発生し、少なすぎる場合、添加による難燃性の付与効果が小さくなる傾向にある。
【0086】
また、赤燐を添加した場合、難燃性の他に成形時の熱安定性が向上するなどの効果も同時に発現し、燐酸エステルを添加した場合には、流動性がさらに向上する。
【0087】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はさらに赤燐の安定剤として金属酸化物を添加することにより、押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させることができる。このような金属酸化物の具体例としては、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどが挙げられるが、なかでも酸化カドミウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどのI族および/またはII族の金属以外の金属酸化物が好ましく、特に酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましいが、I族および/またはII族の金属酸化物であってもよい。押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタンが最も好ましい。
【0088】
金属酸化物の添加量は機械物性、成形性の面からスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)と液晶性樹脂(B)との合計100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0089】
本発明において熱可塑性樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために充填材を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状など非繊維状の充填材を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填材が挙げられる。上記充填材中、ガラス繊維、炭素繊維が好ましく使用される。また、ガラス繊維および炭素繊維の種類は、一般に樹脂の強化用に用いるものなら特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。炭素繊維では特にPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
【0090】
また、上記の充填材は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填材はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0091】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0092】
上記の充填材の添加量は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0093】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤としては赤燐および/または燐酸エステルが好ましく用いられるが他の難燃剤(例えばブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂)、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0094】
また、更なる特性改良の必要性に応じて無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0095】
本発明の熱可塑性樹脂組成物はさらに燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制剤としてフェノール系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂を用いてさらに難燃性を付与することができる。特にフッ素系樹脂がその効果を好ましく発揮する。そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
【0096】
上記の落下(ドリップ)抑制剤の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜25重量部が好ましく、中でもフッ素系樹脂を用いる場合には、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0097】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。例えば、熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)成分、および必要であれば任意成分として赤燐および/またはリン酸エステルなどその他の必要な添加剤および充填材を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製される。また、赤燐および/または燐酸エステルを配合する場合には、いわゆる赤燐および/または燐酸エステルのマスターチップをあらかじめ作製して製造することが好ましい。具体的には、ハンドリング性や生産性の面から、熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)の一部(例えば(A)の一部もしくは全部、、(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部)を一旦溶融混練して実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき赤燐および/またはリン酸エステル添加量よりも濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りの熱可塑性樹脂(A)もしくは液晶性樹脂(B)成分中に赤燐および/またはリン酸エステル濃度の高い樹脂組成物(D)およびその他の任意に用いることができる添加剤および充填材を溶融混練することにより調製される。
【0098】
あるいは熱可塑性樹脂(A)の一部もしくは全部、液晶性樹脂(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部と赤燐およびその他の任意に用いることができる添加剤を一旦溶融混練して、実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき赤燐および/またはリン酸エステル添加量よりも濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りの熱可塑性樹脂(A)もしくは液晶性樹脂(B)成分中および赤燐および/またはリン酸エステル添加量よりも濃度の高い樹脂組成物(D)の段階で添加した任意に用いることができる添加剤以外の添加剤および充填材を溶融混練することにより調製される。
【0099】
上記のように実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき赤燐および/またはリン酸エステル添加量よりも濃度の高い樹脂組成物(D)を製造する段階で、その他の任意に用いることができる添加剤を配合する場合、これらの任意に用いることができる添加剤はあらかじめ赤燐および/またはリン酸エステルと混合しておくことが好ましい。
【0100】
特に任意に用いることができる添加剤の中でも、赤燐の安定剤として使用される金属酸化物、特に酸化チタンを添加する場合、酸化チタンは赤燐の高濃度品を製造する段階で配合することが好ましく、さらにあらかじめ赤燐と酸化チタンをヘンシェルミキサー等の機械的な混合装置を用いて混合しておくと、赤燐の安定性、赤燐の分散性や得られる樹脂組成物の非着色性を向上することができる。
【0101】
赤燐および/またはリン酸エステル高濃度品(D)としては、(1)熱可塑性樹脂(A)のみからなる赤燐高濃度品、(2)液晶性樹脂(B)のみからなる赤燐高濃度品、(3)熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)からなる赤燐高濃度品のいずれも、本効果を発現する。好ましくは液晶性樹脂(B)のみからなる赤燐高濃度品を用いたものが熱可塑性樹脂組成物中での赤燐の分散性が高く、薄肉難燃性、耐熱性が向上する。
【0102】
このような赤燐および/またはリン酸エステル高濃度品(D)の熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)の配合量は、赤燐および/またはリン酸エステル高濃度品の製造時の製造性の面、分散性の面、および最終的に得られる樹脂組成物の難燃性、機械物性、成形性、耐熱性の面から、熱可塑性樹脂(A)および液晶性樹脂(B)100重量部に対して、0.5〜200重量部が好ましく、さらに好ましくは1〜180重量部、より好ましくは1〜150重量部である。
【0103】
熱可塑性樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
【0104】
かくして得られる熱可塑性樹脂組成物は、流動性、薄肉難燃性および耐衝撃性に優れた組成物であるが、特に薄肉難燃性においては、多くの場合、1/32インチ厚でもUL−94規格V−0を達成することが可能である。
【0105】
また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、容器パイプなどに加工することができ、なかでも射出成形品用途に特に好適であり、各種機械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適である。特にその優れた流動性を生かし、薄肉部を有する成形品(例えば板状成形品あるいは箱形成形品)、特に1.2mm以下の薄肉部を有する成形品に好ましく適用できる。具体的には厚みが1.2mm以下の部分を成形品の全表面積に対して、10%以上有する成形品、より好ましくは1.2mm以下の部分を15%以上有する成形品に、さらに好ましくは1.0mm以下の部分を10%以上有する成形品に有効である。また、成形方法としては射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましい。
【0106】
かくして得られる成形品は、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、用紙用分離爪、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、パワーシートギアハウジング、イグニッションコイル用部品、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。各種ケース、スイッチ、ボビン、コネクター、ソケット類コネクターおよび携帯電話用ハウジング等の筐体およびパソコンハウジング等、各種機器の筐体(ハウジング)として特に有用であり、なかでも成形品全体の10%以上の1.0mm以下の薄肉部を有する筐体として極めて有用である。
【0107】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0108】
参考例1(LCP1)
p−ヒドロキシ安息香酸901重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸884重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜300℃で1.5時間反応させた後、280℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに1時間反応させ重縮合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位72.5モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位27.5モル当量からなるアセチル末端基濃度55×10-6当量/g、融点256℃、16Pa・s(266℃、オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))の液晶性樹脂が得られた。
【0109】
参考例2(LCP2)
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸969重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜325℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに1時間反応させ重縮合を行った重合を行った。芳香族オキシカルボニル単位80モル%、芳香族ジオキシ単位7.5モル%、エチレンジオキシ単位12.5モル%、芳香族ジカルボン酸単位20モル%からなるアセチル末端基濃度80×10-6当量/g、融点314℃、20Pa・s(324℃、オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
【0110】
参考例3(LCP3)
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸899重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜325℃で1.5時間反応させた後、325℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに3時間反応させ重縮合を行った重合を行った。芳香族オキシカルボニル単位80モル%、芳香族ジオキシ単位7.5モル%、エチレンジオキシ単位12.5モル%、芳香族ジカルボン酸単位20モル%からなるアセチル末端基濃度15×10-6当量/g、融点314℃、20Pa・s(324℃、オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
【0111】
参考例4(LCP4)
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部、2,6−ヒドロキシナフトエ酸457重量部及び無水酢酸872重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、100〜250℃で5時間、250〜300℃で1.5時間反応させた後、300℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、さらに1時間反応させ重縮合を行った重合を行った。芳香族オキシカルボニル単位100モル%からなるアセチル末端基濃度15×10-6当量/g、融点283℃、18Pa・s(293℃、オリフィス0.5φ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
【0112】
各評価については、次に述べる方法にしたがって測定した。
【0113】
(1)流動性
下記成形機を用いて、シリンダー中で10分間滞留させ、射出速度99%、射出圧力500kgf/cm2の条件で0.8mm厚×12.7mm巾の試験片の流動長(棒流動長)を測定した。
【0114】
(2)耐衝撃性
下記成形機を用いて、1/4”Izod衝撃試験(ノッチ付)を成形し、ASTM D256に従い評価した。
【0115】
(3)表面外観
下記成形機を用いて表1に示す温度で5点ピンゲートの箱形成形品(1.0mm厚、そとのり寸法70mm×70mm×高さ20mm)
を成形し、樹脂の会合部(ウエルド部の盛り上がりを目視で観察した。評価は、○:表面が平らなもの、×:盛り上がりのあるものとした。
【0116】
(4)難燃性評価
UL−94に従い、1/32インチ試験片の難燃性評価を行った。
【0117】
実施例1〜7、比較例1〜9
表1に示した割合で熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)およびガラス繊維(9μm径、3mm長)をドライブレンドし、30mmφの2軸押出機を用いて表1の温度で溶融混練してペレットとした。次いでこのペレットを東芝IS55EPN射出成形機(東芝機械(株)製)に供し、シリンダー温度および金型温度を表1の温度条件で各評価項目ごとの方法で試験片を成形した。
【0118】
表1からも明らかなように本発明の組成物は比較例に比べ、優れた流動性および滞留による流動性低下がなく、かつ成形品の樹脂会合部(ウエルド部)が目立たず表面外観が良好で、また、得られた成形品は衝撃性が高いため、薄肉部を有する成形品を取得する場合に非常に優れていることがわかる。
【0119】
【表1】
【0120】
実施例8〜11、参考例5〜7
LCP2の100重量部に対して赤燐(ノーバエクセル140)を100重量部ドライブレンドし、30mmφの2軸押出機を用いて液晶性ポリエステルの融点+15℃で溶融混練して赤燐高濃度品(D1)を得た。また、上記方法と同様にLCP1で赤燐高濃度品(D2)を得た。
【0121】
次いで表2に示した割合で熱可塑性樹脂(A)、液晶性樹脂(B)、赤燐高濃度品(D1、D2)または燐酸エステル(大八化学社製(レゾルシン型ビスホスフェート”PX−200”)とポリテトラフルオロエチレン(三井デュポンフロロケミカル社製“テフロン6J”)、ガラス繊維(9μm径、3mm長)をドライブレンドし、30mmφの2軸押出機を用いて表2の温度で溶融混練してペレットとした。次いでこのペレットを東芝IS55EPN射出成形機(東芝機械(株)製)に供し、シリンダー温度および金型温度を表1の温度条件で各評価項目ごとの方法で試験片を成形した。
【0122】
表2から赤燐または燐酸エステルを添加することで本組成物に新たに薄肉難燃性に優れ、特性低下も参考例に比べほとんどないことがわかる。
【0123】
【表2】
【0124】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた流動性、耐衝撃性、表面外観、熱安定性および薄肉難燃性が得られることから、これらの特性が要求される電機・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車などその他各種用途に好適な材料である。
Claims (7)
- スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)99.5〜70重量%とエステル結合を有する液晶性樹脂であって、アセチル末端基濃度が55×10-6当量/g以上80×10- 6 当量/g以下であり、液晶性樹脂の融点+10℃の条件で、ずり速度1000(1/秒)で測定される溶融粘度が16Pa・s以上20Pa・s以下の液晶性樹脂(B)0.5〜30重量%とからなる熱可塑性樹脂組成物。
- 液晶性樹脂(B)が下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶ポリエステルであり、構造単位(I)および(II)の合計が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%、構造単位(III)が構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%であり、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]が75/25〜95/5であり、構造単位(IV)と構造単位(II)および(III)の合計とが等モルである請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 液晶性樹脂が、液晶性樹脂の原料モノマーの全水酸基量に対して、1.10〜1.11倍過剰量の無水酢酸を用いて、100〜250℃で5時間反応させるアシル化工程を経て得られたものである請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して充填材を0.5〜300重量部をさらに含有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の強化熱可塑性樹脂組成物。
- (A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して導電率が0.1〜1000μS/cmである赤リン(ただし、導電率は赤リン5gに純水100mLを加え、121℃で100時間抽出処理し、赤リンをろ過した後ろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率とする。)および/または下記一般式(1)で表される燐酸エステル0.1〜30重量部を配合せしめてなる請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリフェニレンエーテル系樹脂から選ばれた1種以上の熱可塑性樹脂(A)の一部もしくは全部、または液晶性樹脂(B)の一部もしくは全部または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部と赤燐および/またはリン酸エステルを一旦溶融混練して実際に熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき赤燐および/またはリン酸エステル配合量よりも濃度の高い樹脂組成物を作製した後、請求項5記載の熱可塑性樹脂組成物を製造することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品であって、該成形品が板状あるいは箱形でかつ厚み1.2mm以下の薄肉部を成形品全表面積に対して10%以上有することを特徴とする成形品。
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