JP2000230117A - 難燃性樹脂組成物、その長繊維ペレットおよびその成形品 - Google Patents

難燃性樹脂組成物、その長繊維ペレットおよびその成形品

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高い難燃性(特にドリップ防止性)、高い
薄肉成形性、および高い導電性を兼ね備えた難燃性樹脂
組成物、およびその成形品を提供する。 【構成】 少なくとも、 (A)硫酸相対粘度ηrが2.7以下であるポリアミド
樹脂 (B)赤リン系難燃燃剤 (C)金属水酸化物系難燃剤 (D)カーボンブラック (E)炭素繊維 から構成され、UL94規格において0.8mm(1/
32インチ)厚での難燃性がV−0である難燃性樹脂組
成物およびその成形品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い難燃性(特に
ドリップ防止性)、高い薄肉成形性、および高い導電性
を兼ね備えた難燃性樹脂組成物、およびその成形品に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、樹脂の難燃化の多くは、有機ハロ
ゲン系難燃剤と酸化アンチモン系難燃助剤の組合せによ
り成されてきた。しかし近年、前記難燃剤に起因する有
毒ガスが問題とされ、非ハロゲン系難燃剤による難燃化
が強く要望されている。
【0003】非ハロゲン系難燃剤としては、窒素化合物
系難燃剤、リン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤などが
多く用いられているが、これらもそれぞれに問題を有す
る。
【0004】窒素化合物系難燃剤は、基本的に耐熱性に
劣り、300℃程度で成形する場合には発泡などが起こ
り、成形上大きな問題を有する。また、無機充填材を添
加している場合は、ドリップ促進による難燃化効果が、
逆に難燃性を大きく阻害する結果を招く。
【0005】リン系難燃剤は、優れた難燃効果を示す
が、特に低粘度樹脂に適応した場合、ドリップを抑制す
ることができず、単独では高い難燃化を達成できない。
【0006】金属水酸化物系難燃剤は、環境負荷が小さ
くクリーンな難燃剤であるが、難燃化のためには他の難
燃剤に較べて多量の添加が必要となり、力学的特性の低
下もさることながら、成形時の流動性に大きく劣り、特
に薄肉成形品の成形時には成形自体が困難となる。
【0007】これらの問題を解決するため、リン系難燃
剤と金属水酸化物系難燃剤が併用される場合がある。例
えば、特開昭63−243158号公報(先行例1)に
は赤リンと水酸化マグネシウムとを特定比にて配合し、
難燃性と耐トラッキング性を両立できた旨が記述されて
いる。
【0008】しかし先行例1では、1.5〜3mm厚の
難燃性に関しては記載されているものの、0.8mm厚
以下の薄肉成形品の難燃性に関しては一切の記述が見ら
れない。そこで本発明者らが、先行例1のポリアミド組
成物、特に鉱物質補強繊維の配合量が少ない組成物によ
る0.8mm(1/32インチ)厚の成形品でUL94
規格の難燃性を評価した結果、燃焼時のドリップにより
V−0の難燃性を達成できないことが判明した。
【0009】また、先行例1でもカーボンブラックが少
量添加されてもよい旨が記載されているが、顔料として
の着色を目的としており、カーボンブラック添加による
ドリップ防止効果に関して、一切記載が見られない。ド
リップ防止剤としてカーボンブラックを必須成分とする
本発明とは根本的に着想が異なる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来
技術の背景に鑑み、高い難燃性(特にドリップ防止
性)、高い薄肉成形性、および高い導電性を兼ね備えた
難燃性樹脂組成物、およびその成形品を提供せんとする
ものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を
解決するために、次のような手段を採用するものであ
る。即ち、本発明の難燃性樹脂組成物は、少なくとも
(A)硫酸相対粘度ηrが2.7以下であるポリアミド
樹脂、(B)赤リン系難燃剤、(C)金属水酸化物系難
燃剤、(D)カーボンブラック、および(E)炭素繊維
からなり、UL94規格において0.8mm(1/32
インチ)(本明細書では、基礎出願明細書において非S
I単位で記載された値はすべてSI単位に換算し直し
た)厚での難燃性がV−0であることを特徴とする。ま
た、本発明の難燃性成形品は、上記難燃性樹脂組成物か
ら成形されたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明は、前記課題、即ち、高い
難燃性(特にドリップ防止性)、高い薄肉成形性、およ
び高い導電性を兼ね備えた難燃性樹脂組成物について鋭
意検討し、ドリップ防止効果が小さい赤リン系難燃剤
と、成形時の流動性を大きく阻害するものの、ドリップ
防止効果を有する金属水酸化物系難燃剤と、ドリップ防
止効果と導電性付与効果を有するカーボンブラック、お
よび炭素繊維を、ある特定の割合でしてみたところ、か
かる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0013】本発明における難燃性樹脂組成物は、少な
くとも(A)硫酸相対粘度ηrが2.7以下であるポリ
アミド樹脂、(B)赤リン系難燃剤、(C)金属水酸化
物系難燃剤、(D)カーボンブラック、および(E)炭
素繊維からなり、UL94規格(Underwrite
rs Laboratories Incで考案された
米国燃焼試験法)において0.8mm(1/32イン
チ)厚での難燃性がV−0であることを特徴とする。
【0014】本発明の難燃性樹脂組成物を100重量%
とすると、各成分は、成分(B)が2〜12重量%、成
分(C)が1〜10重量%、成分(D)が0.7〜10
重量%、および成分(E)が5〜35重量%であるのが
よい。成分(B)は2重量%より少なくても、12重量
%より多くても高い難燃性が達成できない。成分(C)
は1重量%より少ない場合はドリップ防止効果に劣り、
10重量%より多い場合には成形時の流動性に劣る。成
分(D)、(E)は、上記配合量より少ない場合はドリ
ップ防止効果、および導電性付与効果に劣り、上記配合
量より多い場合には成形時の流動性に劣る。
【0015】望ましくは、成分(B)が2.5〜10重
量%、成分(C)が1.5〜9重量%、成分(D)が
0.5〜8重量%、および成分(E)が8〜32重量%
からなり、更に望ましくは、成分(B)が3〜9重量
%、成分(C)が2〜8重量%、成分(D)が1〜7重
量%、および成分(E)が10〜30重量%である。
【0016】また、上記の各成分の各重量%について、
((B)+(C)+(D))/((A)+(B)+
(C)+(D))が0.08以上であるのがよい。0.
08未満であると難燃剤の絶対量が不足し、高い難燃性
が達成できない。0.35を超えると難燃剤の絶対量が
多すぎ、成形時の流動性を阻害するだけでなく、成形品
の力学的特性も大きく損なう。
【0017】本発明における成分(A)とは、薄肉成形
品を得るために成形時の流動性に優れるものがよく、硫
酸相対粘度ηrが2.7以下であるポリアミド樹脂であ
る。より望ましくはηrが2.6以下であり、更に望ま
しくはηrが2.5以下であるポリアミド樹脂である。
ηrが2.7を超える場合は成形時の流動性に劣り、本
発明の一つの効果である成形時の流動性が有効に発現し
ない。ηrの下限は特にないが、一般的に2.0以上で
ある。ここで、硫酸相対粘度ηrは、98%硫酸で溶液
濃度が1g/100mlになるように溶かした後、25
℃の恒温槽内でオストワルド粘度計で流下速度を測定
し、98%硫酸に対する試料溶液の粘度比(流下秒数
比)で表される。
【0018】本発明で用いられるポリアミド樹脂とは、
アミノ酸、ラクタムあるいはジアミンとジカルボン酸を
主たる原料とするナイロンである。その原料の代表例と
しては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカ
ン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息
香酸などのアミノ酸、ε−アミノカプロラクタム、ω−
ラウロラクタムなどのラクタム、テトラメチレンジアミ
ン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレ
ンジアミン、ノナンメチレンジアミン、ウンデカメチレ
ンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/
2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−
メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、
パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチ
ル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シ
クロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,
5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノ
シクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミ
ノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノ
シクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピ
ペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環
族、芳香族のジアミン、およびアジピン酸、スペリン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフ
タル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−
メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナ
トリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル
酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂肪族、脂環族、
芳香族のジカルボン酸が挙げられ、本発明においては、
これらの原料から誘導されるナイロンホモポリマーまた
はコポリマーを各々単独または混合物の形で用いること
ができる。
【0019】本発明において、特に有用なポリアミド樹
脂は、200℃以上の融点を有する耐熱性や強度に優れ
たナイロン樹脂であり、具体的な例としては、ポリカプ
ロアミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミ
ド(ナイロン66)、ポリテトラメチレンアジパミド
(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナ
イロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイ
ロン612)、ポリノナンメチレンテレフタルアミド
(ナイロン9T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポ
リヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロ
ン66/6T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド
/ポリカプロアミドコポリマー(ナイロン6T/6)、
ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイ
ソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポ
リドデカミド/ポリヘキサメチレンテレフタラミドコポ
リマー(ナイロン12/6T)、ポリヘキサメチレンア
ジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ
ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン
66/6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルア
ミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー
(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタ
ルアミド/ポリ(2−メチルペンタメチレンテレフタル
アミド)コポリマー(ナイロン6T/M5T)、ポリキ
シリレンアジパミド(ナイロンXD6)およびこれらの
混合物ないし共重合体などが挙げられる。
【0020】本発明で使用するポリアミド樹脂として、
更に有用なものとしては、ナイロン6、ナイロン66、
ナイロン610、ナイロン46、ナイロン9T、ナイロ
ン6/66コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、
ナイロン9T、ナイロン6T/6コポリマー、ナイロン
66/6Tコポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマ
ー、ナイロン66/6T/6I、ナイロン12/6T、
ナイロン6T/M5Tコポリマー、ポリメタキシリレン
アジパミド(MXD6)などの例を挙げることができ
る。更に、これらのポリアミド樹脂を成形性、耐熱性、
低吸水性などの必要特性に応じて、これらの共重合体、
および2種類以上混合した樹脂も本発明で使用できる。
また、更に耐衝撃性向上などのために、上記樹脂にエラ
ストマー、もしくはゴム成分を添加した樹脂や、樹脂を
混合するときの相溶性制御などのために末端基を変性し
たり、封止した樹脂も、本発明で使用できるポリアミド
樹脂に含まれる。
【0021】本発明で使用するポリアミド樹脂として、
最も有用なものとしては、ナイロン6が挙げられる。ナ
イロン6を使用した場合、本発明の一つの効果である成
形時の流動性を更に一層高く発現することができる。
【0022】特に、ポリアミド樹脂、とりわけナイロン
6と成分(F)が混合されていると、本発明の一つの効
果である成形時の流動性をより高く発現することが出来
きる。かかる成分(F)とはフェノール系重合体であ
り、例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラッ
ク、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ナフト
ールノボラック、フェノールアラルキル、ナフトールア
ラルキル、アルキルベンゼン変性フェノール、カシュー
変性フェノール、テルペン変性フェノール、テルペン・
フェノール重合体などの例が挙げられる。フェノール系
重合体の添加量は、力学的特性・成形性の面からポリア
ミド樹脂100重量部に対して、1〜20重量部が好ま
しく、特に好ましくは3〜15重量部である。
【0023】同様に、ポリアミド樹脂、とりわけナイロ
ン6と成分(G)が混合されていても、本発明の一つの
効果である成形時の流動性をより高く発現することが出
来きる。かかる成分(G)とは液晶性樹脂であり、溶融
時に異方性を形成し得る樹脂のことを指す。液晶性樹脂
としては、液晶ポリエステル、液晶ポリエステルアミ
ド、液晶ポリカーボネート、液晶ポリエステルエラスト
マーなどの例が挙げられ、なかでも分子鎖中にエステル
結合を有するものが好ましく、特に液晶ポリエステル、
液晶ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。但
し、液晶性樹脂を混合する場合には、ポリアミド樹脂の
末端基(特にアミド基)を、例えば酸無水物などで封止
しておくのが好ましい。
【0024】本発明に好ましく使用できる液晶性樹脂は
芳香族オキシカルボニル単位としてp−ヒドロキシ安息
香酸からなる構造単位を含む液晶性ポリエステルであ
り、また、エチレンジオキシ単位を必須成分とする液晶
性ポリエステルも好ましく使用できる。さらに好ましく
は下記構造単位(I) 、(III) 、(IV)からなるポリエステ
ルあるいは(I) 、(II)、(III) 、(IV)の構造単位からな
るポリエステルであり、最も好ましいのは(I) 、(II)、
(III) 、(IV)の構造単位からなるポリエステルである。
【化1】 (ただし式中のR1
【化2】 の(a)〜(j)から選ばれた一種以上の基を示し、R
2
【化3】 の(A)〜(F)から選ばれた一種以上の基を示す。ま
た、式中Xは水素原子または塩素原子を示す。) なお、構造単位(II)および(III) の合計と構造単位(IV)
は実質的に等モルであることが望ましい。
【0025】上記構造単位(I) はp−ヒドロキシ安息香
酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4
´−ジヒドロキシビフェニル、3,3´,5,5´−テ
トラメチル−4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイ
ドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイ
ドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロ
キシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよ
び4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ば
れた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した
構造単位を、構造単位(III) はエチレングリコールから
生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イ
ソフタル酸、4,4´−ジフェニルジカルボン酸、2,
6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキ
シ)エタン−4,4´−ジカルボン酸、1,2−ビス
(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4´−ジカルボ
ン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸
から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成し
た構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【化4】 であり、R2
【化5】 であるものが特に好ましい。
【0026】上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)
の共重合比率は任意である。しかし、本発明の特性を発
揮させるためには次の共重合比率であることが好まし
い。
【0027】すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(II
I)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)
および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合
計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜93モ
ル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位
(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が
好ましく、60〜7モル%がより好ましい。また、構造
単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75
/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜
93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)お
よび(III)の合計と実質的に等モルであることが好まし
い。
【0028】一方、上記構造単位(II) を含まない場合
は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および
(III)の合計に対して40〜90モル%であることが
好ましく、60〜88モル%であることが特に好まし
く、構造単位(IV)は構造単位(III)と実質的に等モ
ルであることが好ましい。
【0029】また液晶性ポリエステルアミドとしては、
上記構造単位(I)〜(IV)以外にp−アミノフェノールか
ら生成したp−イミノフェノキシ単位を含有した異方性
溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0030】なお、上記好ましく用いることができる液
晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記
構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジ
フェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボ
ン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライ
ン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカ
ルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカ
ルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロ
キシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルス
ルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィ
ド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’
−ジヒドロキシビフェニルなどの芳香族ジオール、プロ
ピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−
ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−
シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメ
タノールなどの脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒド
ロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの
芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸
などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せ
しめることができる。
【0031】本発明で使用する液晶性樹脂は、ペンタフ
ルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能で
ある。その際、0.1g/dlの濃度で60℃で測定し
た値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜
3.0dl/gが特に好ましい。
【0032】また、本発明における液晶性樹脂の溶融粘
度は0.5〜500Pa・sが好ましく、特に1〜25
0Pa・sがより好ましい。また、流動性により優れた
組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を50Pa・
s以下とすることが好ましい。
【0033】なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10
℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で
高化式フローテスターによって測定した値である。
【0034】ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定に
おいて、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の
昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(T
m1)の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持し
た後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した
後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測され
る吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0035】液晶性樹脂の融点は、特に限定されない
が、ポリアミド樹脂への分散性の点から好ましくは34
0℃以下、より好ましくは330℃以下である。
【0036】本発明において使用する上記液晶性ポリエ
ステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエス
テルの重縮合法に準じて製造できる。
【0037】例えば、上記液晶ポリエステルの製造にお
いて、次の製造方法が好ましく挙げられる。
【0038】(1)p−アセトキシ安息香酸および4,
4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼン
などの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,
6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタ
ル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応に
よって製造する方法。
【0039】(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,
4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの
芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカル
ボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカ
ルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基
をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する
方法。
【0040】(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニル
エステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハ
イドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6
−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル
酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから
脱フェノール重縮合反応により製造する方法。
【0041】(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,
6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタ
ル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカ
ーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステル
とした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイド
ロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フ
ェノール重縮合反応により製造する方法。
【0042】(5)ポリエチレンテレフタレートなどの
ポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−
ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボ
ン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下
で(1)または(2)の方法により製造する方法。
【0043】液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒
でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネー
ト、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチ
モン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用するこ
ともできる。
【0044】本発明で用いるポリアミド樹脂、および液
晶性樹脂の配合比は、ポリアミド樹脂100重量部に対
して液晶性樹脂が0.1〜30重量部、好ましくは、
0.5〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部で
ある。ポリアミド樹脂に対し、液晶性樹脂の添加量が少
なすぎたり、多すぎたりする場合、良流動、薄肉難燃性
かつ耐衝撃性などの機械特性のバランスのとれた材料が
得られないので好ましくない。
【0045】さらに、本発明の難燃性樹脂組成物、もし
くはその成形品には、酸化防止剤および熱安定剤(たと
えばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイ
ト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たと
えばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾー
ル、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩
などの着色防止剤、滑剤、染料(たとえばニグロシンな
ど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシア
ニンなど)を含む着色剤、滑剤および離型剤(モンタン
酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、
ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレ
ンワックスなど)、導電剤あるいは着色剤としてカーボ
ンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤としては赤リン
が好ましく用いられるが他の難燃剤(例えばブロム化ポ
リスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポ
リカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよび
シアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、摺動性改
良剤(グラファイトなど)、帯電防止剤、紫外線吸収剤
などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付
与することができる。
【0046】また、更なる特性改良の必要性に応じて無
水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エ
チレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共
重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合
体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/
メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニ
ル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/
プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABS(ア
クリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、A
SA(アクリロニトリル/スチレン/アクリルゴム共重
合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/ス
チレン共重合体)などのオレフィン系共重合体、ポリエ
ステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエ
ステルエラストマーなどのエラストマーから選ばれる1
種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさら
に付与することができる。
【0047】本発明における成分(B)とは赤リン系難
燃剤である。赤リンはそのままでは不安定であり、ま
た、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を
有するので、赤リン系難燃剤としては、これを防止する
処理を施したものがよい。このような赤リンの処理方法
としては、特開平5−229806号公報に記載の赤リ
ンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が
高い破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、
赤リンに水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウム
を微量添加して赤リンの酸化を触媒的に抑制する方法、
赤リンをパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触
を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと
混合することにより安定化させる方法、赤リンをフェノ
ール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル
系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させ
る方法、赤リンを銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウム
およびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤リン
表面に金属リン化合物を析出させて安定化させる方法、
赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水
酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤リン表
面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無
電解メッキ被覆することにより安定化させる方法および
これらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤
リンの粉砕を行わずに赤リン表面に破砕面を形成させず
に赤リンを微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、
メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの
熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、
赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水
酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安定
化させる方法であり、特に好ましくは、赤リン表面に破
砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リン
をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリ
エステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安
定化させる方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、
フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で
被覆された赤リンが耐湿性の面から好ましく使用するこ
とができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で
被覆された赤リンである。
【0048】また、赤リンの平均粒径は、難燃性、力学
的特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕によ
る赤リンの化学的・物理的劣化を抑える点から、0.0
1〜35μmのものが好ましく、さらに好ましくは、
0.1〜30μmのものである。
【0049】なお赤リンの平均粒径は、一般的なレーザ
ー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能で
ある。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法がある
が、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤
リンの分散溶媒として、水を使用することができる。こ
の時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行っ
てもよい。また分散剤として、ヘキサメタリン酸ナトリ
ウムやピロリン酸ナトリウムなどのリン酸塩を使用する
ことも可能である。また分散装置として超音波バスを使
用することも可能である。
【0050】また、本発明で使用される赤リンの平均粒
径は上記のごとくであるが、赤リン中に含有される粒径
の大きな赤リン、すなわち粒径が75μm以上の赤リン
は、難燃性、力学的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著
しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤リンは分
級などにより除去することが好ましい。粒径が75μm
の赤リン含量は、難燃性、力学的特性、耐湿熱性、リサ
イクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに
好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下
である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好まし
い。
【0051】ここで赤リンに含有される粒径が75μm
の赤リン含量は、75μmのメッシュにより分級するこ
とで測定することができる。すなわち赤リン100gを
75μmのメッシュで分級した時の残さ量Z(g)よ
り、粒径が75μm以上の赤リン含量はZ/100×1
00(%)より算出することができる。
【0052】また、本発明で使用される赤リンの熱水中
で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤リン5g
に純水100mlを加え、例えばオートクレーブ中で、
121℃で100時間抽出処理し、赤リンろ過後のろ液
を250mlに希釈した抽出水の導電率を測定する)
は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキ
ング性、および表面性の点から通常0.1〜1000μ
S/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/c
m、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmであ
る。
【0053】また、本発明で使用される赤リンのホスフ
ィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤リン5gを
窒素置換した内容量500mlの例えば試験管などの容
器に入れ、1.3kPa(10mmHg)に減圧後、2
80℃で10分間加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガ
スで試験管内のガスを希釈して1.0×102kPa
(760mmHg)に戻したのちホスフィン(リン化水
素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求める。ホ
スフィン発生量(ppm)=検知管指示値(ppm)×
希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押出し、
成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品の表面
外観性、成形品による端子腐食などの点から通常100
ppm以下のものが用いられ、好ましくは50ppm以
下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0054】好ましい赤リンの市販品としては、燐化学
工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセ
ル”F5等、およびそれら相当品が挙げられる。
【0055】本発明における成分(C)とは金属水酸化
物系難燃剤である。本発明で使用される金属水酸化物系
難燃剤は、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛
などのII族の金属、およびアルミニウムなどのIII 族の
金属からなる水酸化物であり、例えば、水酸化マグネシ
ウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜
鉛、水酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらは単独
でも、混合して用いてもよい。
【0056】本発明で使用される金属水酸化物系難燃剤
として好ましくは、耐熱性に優れる水酸化マグネシウム
がよい。本発明で使用される水酸化マグネシウムは天然
型であっても、合成型であってもよいが、好ましくは平
均結晶粒径の分布範囲が小さく、成分(A)中での分散
性に優れる合成型のものがよい。水酸化マグネシウムの
平均結晶粒径は、力学的特性の低下を抑える点から、
0.2〜50μmが好ましい。更に好ましくは0.5〜
10μmであり、より好ましくは、0.7〜5μm、特
に好ましくは1〜3μmである。平均結晶粒径が0.2
μm未満である場合、ポリアミド樹脂とのコンパウンド
時の押出機へのフィード性に劣るといった製造プロセス
上での問題が生じる場合がある。また、50μmを超え
る場合は、成分(A)中での分散性に劣り、難燃性に劣
るといった問題が生じる場合がある。
【0057】水酸化マグネシウムの一次結晶粒子の形状
は、六角板状、針状のいずれでもよく、それらの混合物
であってもよい。この場合の一次結晶粒子のアスペクト
比は200以下のものが好ましい。アスペクト比が20
0を越えると、一般的に特に衝撃強度の低下を招く場合
がある。また、成形時の流動性に優れるためには、一次
結晶粒子の形状が六角板状で、特にc軸が発達した球状
に近い形状であることが好ましく、この場合の一次結晶
粒子のアスペクト比は100以下である。
【0058】水酸化マグネシウムとしては、公知の表面
処理剤で表面処理がしてあっても、無処理でもよい。表
面処理剤としては、例えば、ステアリン酸などの飽和高
級脂肪酸、オレイン酸などの不飽和高級脂肪酸、そのア
ルカリ金属塩、シランカップリング剤、アルミネートカ
ップリング剤、チタネートカップリング剤、オルトリン
酸とステアリルアルコールとのモノ、またはジエステル
であって、それらの酸、またはアルカリ金属塩などのリ
ン酸部分エステル、アミド系やウレタン系などの高極性
樹脂などが挙げられる。また、熱安定性向上のために、
フェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエ
ステル系などの熱硬化性樹脂で被覆してもよい。あるい
は、成形品の表面白化現象を抑え、耐酸性、および難燃
性を更に向上させるために、金属元素を表面に固溶させ
てもよい。金属元素としては、例えば、ニッケル、亜
鉛、鉄などが挙げられる。より好ましくは、成形中に成
分(A)と化学的反応を起こさない表面処理剤で表面処
理が施されているのがよい。化学的反応を起こす表面処
理が施されている場合、成形時の流動性に劣り、本発明
の効果を十分に発現できない。表面処理剤の表面処理量
は、水酸化マグネシウム100重量部当たり0.1〜1
0重量部が好ましい。
【0059】好ましい水酸化マグネシウムの市販品とし
ては、協和化学工業社製“キスマ5E”粉末品、粒状品
等、およびその相当品が挙げられる。
【0060】本発明における成分(D)とはカーボンブ
ラックである。本発明で使用するカーボンブラックとし
ては、少なくとも次の条件[CB1]、[CB2]のいずれか、も
しくは両方を満たすものを選択して使用するのが好まし
い。
【0061】[CB1]:ラマン散乱強度比I2/I1 が、
0.4〜0.8の範囲である。 [CB2]:ラマン散乱強度比I2/I3 が、0.4〜0.
7の範囲である。 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値 なお、前記I1、I2 、I3は、ベースライン補正後の
ラマン散乱強度についてのものである。上記ベースライ
ン補正とは、600cm-1〜2200cm-1のラマンシ
フト範囲において、ラマンスペクトルのベースラインを
直線近似し、その近似直線からの距離をラマン散乱強度
とし、測定時のベースラインの傾きを補正する操作のこ
とをいう。
【0062】かかる特定なラマンスペクトルを有するカ
ーボンブラックを使用した場合、特異的に導電性、薄肉
成形性(特に成形時の流動性)、高い力学的特性、およ
び外観品位を兼ね備えた難燃性樹脂組成物を得ることが
できるため好ましい。
【0063】かかるカーボンブラックとしては、その一
つの選択要件である条件[CB1]は、I2 /I1 が、
0.4〜0.8であるが、望ましくは0.5〜0.7
7、さらに望ましくは0.65〜0.75の範囲にある
ものを使用するのがよい。とりわけ好ましくは0.66
〜0.71の範囲である。すなわち、このI2 /I1
が、0.4〜0.8の範囲外のカーボンブラックを用い
た場合には、導電性、高い力学的特性はある程度達成で
きるものの、薄肉成形性(成形時の流動性)、外観品位
に著しく劣るものとなり、導電性と薄肉成形性と外観品
位とを兼ね備えた難燃性樹脂組成物が得られない。特
に、I2 /I1 が0.4未満であるカーボンブラック
の場合は、導電性はともかく、成形時の流動性が大きく
劣るものとなる。
【0064】また、本発明で使用するカーボンブラック
としての別の選択方法の一つである条件[CB2]は、I2
/I3 が、0.4〜0.7、好ましくは0.5〜0.
67、更に好ましくは0.56〜0.65の範囲にある
カーボンブラックを選択して使用するのがよい。とりわ
け好ましくは0.57〜0.61の範囲である。
【0065】かかるカーボンブラック、つまりI2
3 が、0.4〜0.7の範囲にあるカーボンブラッ
クと、その範囲外のカーボンブラックとの効果的な違い
は、前記方法で選択したもの場合と同様であり、該範囲
外のものは、高い導電性はある程度達成できるものの、
成形時の流動性に著しく劣り、導電性と薄肉成形性を兼
ね備えた難燃性樹脂組成物が得られない。流動性におい
て、該範囲内のものに比して、範囲外の場合には極めて
低い流動性を示す点で、更に流動性にシビアな性質を示
すカーボンブラックを選ぶことができる。
【0066】ラマンスペクトルの測定法は、レーザーラ
マン分光法により測定する。ラマンスペクトルの測定
は、樹脂に配合する前のカーボンブラックから測定して
もよいし、樹脂組成物、もしくはその成形品中からカー
ボンブラックを分離した後に測定してもよい。前者から
測定する場合は、マクロラマン(レーザースポット径が
100μm程度)、後者から測定する場合は、顕微ラマ
ン(レーザースポット径が5μm程度)にて測定を行う
のが好ましい。本発明では、JobinYvon社製R
amaonor T−64000を用いて測定を行っ
た。
【0067】成形品からのカーボンブラックの分離は、
配合物の比重差を利用して行うのがよい。かかるカーボ
ンブラックの分離手法の具体的手段の一例を以下に記述
する。
【0068】まず、樹脂成形品をカーボンブラックを侵
さずに樹脂を溶解する溶媒に浸漬し、完全に樹脂を溶解
させる。その後、5000rpmにて30分間遠心分離
を行い、更に遠心分離後の上澄み液を30000rpm
にて30分間超遠心分離を行う。超遠心分離後の上澄み
液を、PTFEフィルター(0.2μm)などで濾過す
ることによりカーボンブラックを分離する。この場合の
ラマンスペクトルの測定は、顕微ラマンにより上記分離
による回収物中の黒色微粒子部分について行うのが好ま
しい。なお、上述の分離した場合のカーボンブラックの
ラマンスペクトルは、PTFEフィルターなどのラマン
スペクトルを差し引いたものを指す。
【0069】かかるカーボンブラックは、上述の各条件
の範囲であるカーボンブラックであれば種類は特に限定
されず、例えば、ファーネスブラック(原料油を高温炉
で燃焼させて製造)、アセチレンブラック(アセチレン
ガスの発熱分解により製造)、サーマルブラック、チャ
ンネルブラック等を使用することができ、これらを2種
類以上ブレンドしたカーボンブラックでもよい。供給・
価格の面から、生産量が多く低価格であるファーネスブ
ラックが好ましい。
【0070】本発明における成分(E)とはPAN系、
ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維である。また、炭
素繊維にニッケルや銅などの金属を被覆した金属被覆炭
素繊維なども本発明で使用できる。
【0071】本発明で使用する炭素繊維としては、広角
X線回折法により測定された結晶サイズ(以下、Lcと
記す)が、1〜4nmの範囲であることが望ましい。L
cが1nm未満である場合、炭素繊維の炭化が十分では
なく、炭素繊維自体の導電性が低くなる。このことに起
因して得られた成形品の導電性が劣る場合があるため好
ましくない。一方、Lcが4nmを越える場合、炭素繊
維の炭化もしは黒鉛化は十分であり、炭素繊維自体の導
電性には優れるが、その一方で脆くなる。このことに起
因して、成形品中の繊維長さが短くなり、高い導電性が
期待できないため好ましくない。より好ましくは1.3
〜3.5nmの範囲であり、さらに好ましくは1.6〜
3nmの範囲である。とりわけ好ましくは1.8〜2.
5nmの範囲であるものがよい。なお、広角X線回折法
によるLcの測定は、日本学術振興会第117委員会、
炭素、36、p25(1963)に記載された方法で測
定した。
【0072】本発明で使用する炭素繊維としては、X線
光電子分光法により測定される炭素繊維表面の酸素
(O)と炭素(C)の原子数の比である表面官能基量
(O/C)が、0.05〜0.4の範囲にあるものが望
ましい。O/Cが0.05より小さいことは、炭素繊維
表面に樹脂との接着に寄与するような官能基が非常に少
ないことを意味している。炭素繊維と樹脂の接着性が劣
ると、成形品に高い力学特性が期待できない。逆にO/
Cが0.4より大きいことは、炭素繊維表面の酸化、も
しくはアルカリ処理などが必要以上に行われており、炭
素の結晶構造が破壊されて、炭素繊維表面に脆弱層が形
成されていることを意味している。この場合もO/Cが
低すぎる場合と同様、繊維表層付近で破壊が生じやすい
ため、成形品に高い力学的特性が期待できない。更に、
O/Cを0.05〜0.4の範囲にすることは、成形品
中の炭素繊維の分散性など、炭素繊維と樹脂との接着性
以外にも好ましい効果をもたらす。
【0073】表面官能基(O/C)は、X線光電子分光
法により次のような手順によって求められる。まず、溶
媒でサイジング剤などの樹脂を除去した炭素繊維、もし
くは炭素繊維束をカットして、銅製の試料支持台上に拡
げた状態でならべた後、光電子脱出角度を90度とし、
X線源としてMgKα1、2を用い、試料チャンバー中
を1×10-8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピー
クの補正としてC1Sの主ピークの運動エネルギー値
(K.E.)を969eVに合わせる。C1Sピーク面
積は、K.E.として958〜972eVの範囲で直線
のベースラインを引くことにより求める。O1Sピーク
面積は、K.E.として714〜726eVの範囲で直
線のベースラインを引くことにより求める。ここで表面
官能基量(O/C)とは、前記O1Sピーク面積とC1
Sピーク面積の比から、装置固有の感度補正値を用いて
原子数比として算出する。
【0074】また、本発明で使用する炭素繊維として望
ましくは、引張破断伸度は少なくとも1.5%以上の炭
素繊維がよい。引張破断伸度が1.5%未満である場
合、成形工程で繊維が切断されやすく、樹脂組成物、お
よびその成形品中の繊維長さを大きくすることができな
いため、高い力学的特性(特に衝撃強度)が達成できな
い。高い力学的特性を付与するためには、引張破断伸度
が1.5%以上、より望ましくは引張破断伸度が1.7
%以上、更に望ましくは引張破断伸度が1.9%以上の
炭素繊維を用いるのがよい。本発明で使用する炭素繊維
の引張破断伸度に上限はないが、一般的には5%未満で
ある。炭素繊維として更に望ましくは、強度と弾性率と
のバランスに優れるPAN系炭素繊維がよい。
【0075】また、本発明で使用する炭素繊維は、シラ
ンカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタ
ネートカップリング剤などで表面処理、ウレタン系樹
脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系
樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹
脂、フェノール系重合体、液晶性樹脂、アルコールまた
は水可溶性樹脂、などで集束処理されていてもよい。
【0076】本発明では、成分(E)の他にも充填材を
使用することができる。ここでいう充填材とは、力学的
特性(例えば強度、弾性率、伸度、衝撃強度、線膨張
率、熱変形温度など)、熱的特性(例えば熱膨張率、熱
伝導率など)、成形加工性(例えばスクリューへの噛
込、粘度、充填度、成形収縮、バリ、ヒケ、表面平滑性
など)、比重、異方性などの制御や、コストの低減な
ど、本発明の難燃性樹脂組成物に用途に応じた効果を付
与するために配合される。かかる充填材としては、例え
ば、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、ベントナ
イト、ゾノトライト、セピオライト、スメクタイト、モ
ンモリロナイト、ワラステナイト、シリカ、炭酸カルシ
ウム、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガ
ラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、酸
化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化錫、ポリリ
ン酸カルシウム、グラファイト、硫化亜鉛、硫酸バリウ
ム、硫酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸亜カルシウ
ム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、高分子な
どを使用できる。これらの充填材は単独でも、2種類以
上ブレンドしたものでもよい。かかる充填材の形状は粒
子状(中実、中空)、粉末状、鱗片状、フレーク状、バ
ルーン状、ウイスカ状(二次元、三次元)、繊維状、な
どの任意の形状を目的に応じて選択できる。また、かか
る充填材は天然型であっても、合成型であってもよく、
目的に応じて任意に選択できる。本発明で用いられる充
填材としては、ポリアミド樹脂との相性、力学的特性、
コスト、導電性などのバランスから、ワラステナイト、
モンモリロナイト、酸化チタン、チタン酸カリウムが好
ましい。
【0077】また、充填材の平均粒径は0.1〜100
μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.1μ
m未満である場合、本発明の効果である薄肉成形性(特
に成形時の流動性)が阻害されるといった問題だけでな
く、該構成要素[C]とのコンパウンド時の押出機への
フィード性に劣るといった製造プロセス上での問題をも
生じることがある。また、100μmを超える場合は、
該構成要素[C]中での分散性に劣り、所望の効果を得
られにくいといった問題が生じることがある。より好ま
しくは0.3〜80μmの範囲であり、更に好ましくは
0.5〜60μmの範囲である。とりわけ1〜50μm
の範囲であることが好ましい。また、充填材が繊維状で
ある場合には、アスペクト比が1.5〜250の範囲で
あることが好ましい。より好ましくは2〜200の範囲
であり、更に好ましくは3〜150の範囲である。これ
らの範囲未満であると、成形品中における分散性に劣り
やすく、さらに成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に
劣るなどの問題を生じることがある。一方、これらの範
囲を超えると、力学的特性、特に衝撃強度に劣り、所望
の力学的特性付与効果などが得られないことがある。
【0078】本発明の難燃性樹脂組成物は、該樹脂組成
物100重量%に対して、充填材が0.05〜30重量
%の範囲で配合されていることが好ましい。充填材が
0.05重量%未満であると、所望の効果(例えば力学
的特性やコスト低減など)が得られにくく、30重量%
を越えると、成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に劣
るため好ましくない。より好ましくは0.1〜20重量
%の範囲であり、更に好ましくは0.15〜10重量%
の範囲である組成がよい。
【0079】また、本発明では充填材の他にも導電性付
与剤を使用することができる。かかる導電性付与剤と
は、導電性を有しているものを指し、例えば金属(例え
ば粒子状、フレーク状、リボン状など)、金属化合物
(例えば粒子状など)、カーボン(例えば粉末状な
ど)、グラファイト(例えば鱗片状、膨張粒子状、微細
粉末状など)、そのもの自体が導電性を有する充填材
や、充填材の表面に導電体を被覆したもの、導電性高分
子などが挙げられ、これらを単独で使用しても、2種類
以上を併用してもよい。
【0080】前述の充填材に被覆される導電体とは、導
電性を有しているものを指し、例えば金属、金属化合
物、カーボンなどが挙げられるが、その中でも最も導電
性の高い金属または金属酸化物が好ましい。前記金属ま
たは金属酸化物としては、例えばニッケル、チタン、ア
ルミニウム、クロム、亜鉛、アンチモン、錫、銅、銀、
金等を単独もしくは併用することができ、前記金属は少
なくとも1層、必要に応じて複数層にて充填材に被覆さ
れるのが好ましい。
【0081】上記充填材への導電体の被覆方法について
は特に制限はないが、好ましくは電解や無電解によるメ
ッキ法、イオンプレーティング法、CVD法、PVD
法、蒸着法などにより高い密着強度で被覆されているの
が好ましい。
【0082】本発明で用いられる導電性付与剤の平均粒
径は0.5〜150μmの範囲であることが好ましい。
より好ましくは1〜100μmの範囲であり、更に好ま
しくは1.5〜50μmの範囲である。とりわけ2〜2
5μmの範囲であることが好ましい。平均粒径が0.5
μm未満では、成形品中における分散性に劣りやすく、
さらに成形時の流動性が低下し、薄肉成形性に劣るなど
の問題を生じるため好ましくない。一方、平均粒径が1
50μmを超えると、導電性付与効果に劣り、所望の導
電性付与効果が得られないため好ましくない。
【0083】本発明で用いられる導電性付与剤として
は、より高い導電性付与効果を発現するために、高い導
電性を有していることが好ましく、中でも金属、金属化
合物、グラファイトの少なくとも1種類であるのが好ま
しい。
【0084】かかる金属としては、例えばニッケル、チ
タン、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス、アルミ
ニウム、錫、鉛、アンチモン、亜鉛、カドミウム、マグ
ネシウム、タングステン、リチウム、モリブデン、ベリ
リウム、コバルト、バナジウム、マンガン、アンチモ
ン、銅、黄銅、銀、金、白金、およびこれら2種類以上
の組み合わせた合金、これらを主成分とする合金、これ
らとリンとの化合物やそれらの酸化物などが挙げられ、
これらは単独で使用しても、2種類以上を併用してもよ
い。中でも、銀、ニッケル、チタンが導電性付与効果が
大きいため好ましい。
【0085】また、かかる金属は、例えば粒子状、フレ
ーク状、リボン状などの任意の形態をとることができる
が、導電性付与効果の面から、粒子状および/またはフ
レーク状であるのが好ましい。特に粒子状である場合、
球状粉、粒状粉、樹枝状粉、片状粉、角状粉、海綿状
粉、不規則型粉などの任意の形状をとることができる
が、中でも樹枝状粉、片状粉、角状粉が導電性付与効
果、加工コスト抑制効果に優れるため好ましい。
【0086】かかるグラファイトは、鱗片状、膨張粒子
状、微細粉末状など任意の形態をとることができるが、
導電性付与効果の面から、鱗片状、微細粉末状であるの
が好ましい。
【0087】本発明の難燃性樹脂組成物は、該樹脂組成
物100重量%に対して、導電性付与剤が0.01〜1
5重量%の範囲で配合されていることが好ましい。導電
性付与剤が0.01重量%未満であると、所望の導電性
付与効果が得にくく、15重量%を越えると、成形時の
流動性が低下し、薄肉成形性に劣るだけでなく、高コス
ト・高比重となり好ましくない。より好ましくは0.0
5〜10重量%の範囲であり、更に好ましくは0.1〜
8重量%の範囲である組成がよい。
【0088】かかる充填材や導電性付与剤などは、表面
処理剤で表面処理がしてあっても、無処理でもよい。表
面処理剤としては、例えば、ステアリン酸などの飽和高
級脂肪酸、オレイン酸などの不飽和高級脂肪酸、そのア
ルカリ金属塩、オルトリン酸とステアリルアルコールと
のモノ、またはジエステルであって、それらの酸、また
はアルカリ金属塩などのリン酸部分エステルなどが挙げ
られる。また、樹脂との接着性向上のために、シランカ
ップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネー
トカップリング剤、ウレタン系、アミド系などの高極性
樹脂で被覆してもよく、集束のために、ウレタン系樹
脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系
樹脂、オレフィン系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹
脂、フェノール系樹脂、液晶性樹脂などで被覆されてい
てもよい。より好ましくは、成形中に樹脂と化学的相互
反応を起こさない表面処理剤で表面処理が施されている
のがよい。成形中に化学的相互反応を起こす表面処理が
施されている場合、成形時の流動性に劣り、本発明の効
果を十分に発現できない可能性がある。表面処理剤の表
面処理量は、充填材または導電性付与剤100重量部当
たり0.1〜10重量部が好ましく、0.5〜5重量部
がより好ましい。
【0089】また、かかる充填材などは、膨潤化剤によ
り膨潤されていてもよいし、有機化剤により有機化され
ていてもよい。膨潤化剤または有機化剤としては、イオ
ン交換などにより充填材などを膨潤化または有機化し得
るものなら特に制限はなく、具体的にはε−カプロラク
タム、12−アミノドデカン酸、12−アミノラウリン
酸、アルキルアンモニウム塩(ジメチルジアルキルアン
モニウムなど)などが挙げられる。特にポリアミド樹
脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレ
ン系樹脂、アクリル系樹脂などに膨潤化もしくは有機化
された充填材(好ましくはモンモリロナイト、マイカ、
サポナイト、ヘクトライト、セピオライト)が配合され
ていると、充填材のナノオーダーでの分散が可能とな
り、より少ない配合量で所望の特性が得られるため好ま
しい。
【0090】本発明の難燃性樹脂組成物は、更に成分
(H)として金属酸化物を含有してもよい。金属酸化物
を添加することにより、押出性、成形時の安定性や強
度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させること
ができる。かかる金属酸化物としては、例えば、酸化カ
ドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第
一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化
モリブデン、酸化スズおよび酸化チタン、ITO(イソ
ジウム・錫酸化物)、ATO(アンチモン・錫酸化物)
などが挙げられるが、なかでも酸化カドミウム、酸化第
一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどのI族および/また
はII族の金属以外の金属酸化物が好ましく、特に酸化第
一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましいが、I族およ
び/またはII族の金属酸化物であってもよい。押出性、
成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の
他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタン
が最も好ましい。
【0091】金属酸化物の添加量は力学的特性、成形性
の面からポリアミド樹脂100重量部に対して0.01
〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10
重量部である。但し、力学的特性や比重の面から、全組
成物に対しては0.01〜10重量%であることが好ま
しく、特に好ましくは0.05〜8重量%である。
【0092】本発明の難燃性成形品は、射出成形(射出
圧縮成形、ガスアシスト射出成形、インサート成形など
も含まれる)、ブロー成形、押出成形、プレス成形、ト
ランスファー成形(RTM成形、RIM成形、SCRI
MP成形など)、フィラメントワインディング成形など
によって成形されるが、最も望ましい成形法は、生産性
の高い射出成形である。
【0093】前記成形法に用いられる難燃性樹脂組成物
の形態としては、ペレット、BMC、SMC、スタンパ
ブルシート、プリプレグ(シート、ヤーンなど)などが
挙げられるが、望ましい形態はペレットであり、最も望
ましい形態は長繊維ペレットである。
【0094】本発明でいうペレットとは、成分(A)〜
(E)、および必要に応じて(F)〜(H)、その他の
成分が、所望量配合されるように、それぞれ、もしくは
幾つかの成分を必要回数だけ押出機などを用いて混練・
押出・ペレタイズ(以下、この一連の工程をコンパウン
ドと記す)したもの、あるいはそれらをドライブレンド
することによって得られたものを指す。この場合、成分
(E)は、チョップド糸であっても連続糸であってもよ
い。
【0095】本発明では、前述のペレットの中でも長繊
維ペレットの形態をとることが望ましい。本発明でいう
長繊維ペレットとは、少なくとも特公昭63−3769
4号公報に示されるような、成分(E)がペレットの長
手方向にほぼ平行に配列し、ペレット中の成分(E)の
長さがペレット長さと同一もしくはそれ以上であるペレ
ットが含まれるものを指す。この場合、少なくとも成分
(A)を含む本発明中の成分は、成分(E)の束中に含
浸されていても、成分(E)の束に被覆されていてもよ
い。
【0096】特に、少なくとも成分(A)を含む本発明
中の成分が、成分(E)の束に被覆された長繊維ペレッ
トの場合、成分(E)の束中には、被覆されている成分
(A)、あるいは被覆されている成分(A)よりも低分
子量の樹脂が予め含浸されているのが望ましい。前記の
予め含浸されている樹脂としては、水、またはアルコー
ル可溶性ポリアミド樹脂、低分子量ポリアミド樹脂、エ
ポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系重合体
(例えばフェノールノボラック、クレゾールノボラッ
ク、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ナフト
ールノボラック、フェノールアラルキル、ナフトールア
ラルキル、アルキルベンゼン変性フェノール、カシュー
変性フェノール、テルペン変性フェノール、成分(F)
など)、成分(G)などの例が挙げられる。
【0097】本発明において望ましくは、成分(A)〜
(D)、(必要に応じて成分(G)、(H))がコンパ
ウンドされたペレットと、少なくとも成分(A)が成分
(E)束に被覆され、成分(E)に予め成分(F)が含
浸されている長繊維ペレットとを、ドライブレンドした
ものがよい。特に成分(D)に関しては、成分(E)束
中に予め混合していても、成分(E)のサイジング剤中
に予め混合していても、前記の予め含浸されている樹脂
に混合されていてもよい。
【0098】前記ペレットを用いた射出成形による難燃
性成形品において、高い難燃性(特にドリップ防止
性)、高い導電性、および高い力学的特性(特に耐衝撃
性)を同時に達成するためには、本発明の難燃性成形品
中での成分(E)の長さをできるだけ高く維持すること
が有効である。
【0099】長繊維ペレット(好ましくは2〜26m
m、より好ましくは4〜15mm)を用いて成形した場
合、成形品中での成分(E)の長さを高く維持すること
ができるため、導電性や耐衝撃性の他に、特に燃焼時の
ドリップ防止性を飛躍的に改善することが できる。こ
のドリップ防止性の改善効果により、通常のペレットで
はドリップにより高い難燃性を達成できない場合でも、
長繊維ペレットを用いた場合には、UL94規格におけ
る0.8mm(1/32インチ)厚でのV−0といった
高い難燃性の達成が可能である。特に、成分(E)の配
合量が20重量%以下のような低い配合量の場合には、
通常のペレットに比べてドリップ防止性の改善効果は顕
著であり、このような範囲の配合量で長繊維ペレットを
用いることは、高い難燃性を達成するためには非常に有
効である。もちろん、導電性や、耐衝撃性の改善に関し
ても、同様にその改善効果は絶大である。
【0100】一方、成分(E)の配合量が25重量%以
上のような高い配合量の場合には、通常のペレットでも
ドリップ防止性の改善効果はある程度発現するため、高
い難燃性の達成は可能である。但し、導電性や、耐衝撃
性の改善に関しては、その効果は小さく、長繊維ペレッ
トの改善効果には及ばない。
【0101】難燃性成形品中での成分(E)の長さをで
きるだけ高く維持するためには、前述のように長繊維ペ
レットを用いて成形することの他に、成形条件、射出成
形機、および金型について最適化することも有効であ
る。成形条件に関しては、背圧が低いほど、射出速度が
遅いほど、スクリュー回転数が遅いほどが難燃性成形品
中の成分(E)の長さが長くなる傾向があり、特に背圧
は計量性が不安定にならない程度にできるだけ低く設定
するのが望ましい。望ましい背圧は0.1〜1MPa
(1〜10kg/cm2)である。射出成形機について
は、ノズル径が太いほど、スクリュー溝深さが深いほ
ど、圧縮比が低いほど、難燃性成形品中の成分(E)の
長さが長くなる傾向がある。金型については、スプルー
径、ランナー径、ゲート径を大きくするほど、難燃性成
形品中の成分(E)の長さが長くなる傾向がある。
【0102】本発明の難燃性成形品が、高い力学的特性
と、高い導電性を両立するためには、成分(E)が成形
品中で、(数式1)の値が7〜600であることが望ま
しい。 (数式1) Σ(lw×Wf) ここで、lwは難燃性成形品中に含まれる成分(E)の
重量平均繊維長(mm)、Wfは難燃性成形品中に含ま
れる成分(E)の配合率(重量%)を示し、Σは難燃性
成形品中に含有される成分(E)の種類が複数である場
合、それぞれについての括弧内の値を合計することを意
味する。
【0103】lwは、難燃性成形品から少なくとも成分
(A)を除去して、成分(E)のフィラメントのみを任
意に少なくとも400本以上抽出し、その長さを1μm
単位まで光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にて測定
して、下記の(数式2)、もしくは(数式3)を用いて
算出する。但し、Wiは長さliの成分(E)の重量、
Niは長さliの成分(E)の数とする。 (数式2) lw=Σ(Wi×li)/ΣWi (数式2)は一定直径の成分(E)に対しては、(数式
3)の様に表すことができる。 (数式3) lw=Σ(Ni×li2)/Σ(Ni×li) 本発明では、lwを測定する際の成分(A)を除去する
方法として、成分(A)のみを溶解させ、含有される成
分(E)は溶解させない溶媒などに難燃性成形品を一定
時間浸漬し、成分(A)を十分溶解させた後、濾過など
により成分(E)と分離する手法を採用した。また、難
燃性成形品を窒素雰囲気中で550℃にて約1時間程度
保持することによりよっても成分(A)を除去すること
が可能である。
【0104】(数式1)の値が7未満の成分(E)を含
有する難燃性成形品は、成形時の難燃性樹脂組成物の流
動性は良好なため成形性に優れる。また、難燃性成形品
の強度・剛性についても、含有される成分(E)の(数
式1)の値が7未満であってもWfが20重量%以上で
あれば、ある程度高い値を有することも可能である。し
かし、耐衝撃性については、含有される成分(E)の
(数式1)の値が7以下の場合は大幅に劣り、高強度・
高剛性と耐衝撃性の両立ができないといった問題を有す
る。
【0105】ところが、(数式1)の値が7以上の成分
(E)を含有する難燃性成形品は、強度・剛性について
は大幅な改善が見られないが、耐衝撃性については大幅
に改善される。また、含有される成分(E)の(数式
1)の値が600以下であれば、成形時の難燃性樹脂組
成物の流動性の低下は僅かであるため、成形時の流動性
を高く維持することが可能である。しかし、(数式1)
の値が600を超える場合には、高強度・高剛性と耐衝
撃性の両立は可能なものの、その成形時の流動性は大幅
に低下し、それと共に生産性も大きく低下する。つま
り、(数式1)の値が7〜600である成分(E)で難
燃性成形品を強化することにより、高強度・高剛性と耐
衝撃特性とを高い次元で両立させ、しかも成形性にも優
れた難燃性成形品が得られる。成分(E)の(数式1)
の値は8〜500であることが好ましい。更に好ましく
は成分(E)の(数式1)の値が10〜400である。
【0106】難燃性成形品中に含有される成分(E)の
(数式1)の値が7以上である場合でも、Wfが8〜3
2重量%、もしくはlwが0.1〜10mmである場
合、高強度・高剛性・高耐衝撃性などの力学的特性が最
も適したバランスで両立できるだけでなく、該難燃性成
形品を成形する際の成形時の流動性に特別に優れるので
望ましい。更に望ましくは、難燃性成形品中に含有され
る成分(E)の(数式1)の値が7以上である場合で
も、Wfが10〜30重量%、且つlwが0.2〜7m
mである。
【0107】また、成分(E)の平均繊維径は1〜20
μmであることが好ましく、2〜12μmであることが
より好ましく、3〜10μmであることが更に好まし
い。平均繊維径が1μm未満では、成分(A)の成分
(E)束中への含浸が困難となり、成形品中での成分
(E)の分散性に劣るなどの問題を生じる。一方、平均
繊維径が20μmを超えると、力学的特性に優れる炭素
繊維が得られず、所望の補強効果が得られない。
【0108】本発明における難燃性樹脂組成物、および
その成形品として望ましい体積固有抵抗値は、100Ω
・cm以下である。体積固有抵抗値が100Ω・cm以
上の場合、電磁波シールド材などの用途には適応しにく
く、用途が限定されるといった問題を有する。より望ま
しい体積固有抵抗値は50Ω・cmであり、更に望まし
い体積固有抵抗値は10Ω・cmである。とりわけ1Ω
・cmが望ましい。
【0109】ここでいう体積固有抵抗値とは、直方体形
状を有している試験片の導電ペーストを塗布された両端
部の電気抵抗値から、測定機器、治具などの接触抵抗値
を減じた値について、前記試験片の端部面積を乗じ、試
験片長さで除すことにより算出する。本発明では、単位
はΩ・cmを用いた。
【0110】本発明における難燃性樹脂組成物は、高い
難燃性(特にドリップ防止性)に加え、高い成形時の流
動性を兼ね備えているので、従来の難燃性成形品より肉
厚を小さくすることが可能であり、肉厚が4mm以下の
薄肉成形品として用いるのが最適である。好ましくは、
肉厚2mm以下の薄肉成形品として用いるのが本発明の
効果をより発揮できる。更に好ましくは、肉厚1.5m
m以下、特に好ましくは1.4mm以下の薄肉成形品と
して用いるのがよい。ここでいう成形品の肉厚とは、成
形品のうち、リブ部分やボス部分などの突起物などを除
いた平板部分の肉厚を指す。
【0111】本発明における難燃性成形品の用途として
は、高い難燃性、高い薄肉成形性、高い導電性、および
力学的特性が求められる電子・電気機器、OA機器、家
電機器、自動車用部材、例えばハウジングやその部品な
どが好ましい例として挙げられ、特に軽量化と電磁波シ
ールド性の要求が高い携帯用の電子・電気機器のハウジ
ングなどがとりわけ好ましい例として挙げられる。より
具体的には、大型ディスプレイ、ノート型パソコン、携
帯用電話機、PHS、PDA(電子手帳などの携帯情報
端末)、ビデオカメラ、ビデオカメラ、デジタルスチル
カメラ、携帯用ラジオカセット再生機、インバーターな
どのハウジングなどである。
【0112】また、高い導電性を有しているため、炭素
繊維の少量添加で帯電/放電防止性を付与することがで
き、それらの特性が必要とされる部材、例えばICトレ
ー、シリコンウェーハー運搬用バスケットなどへの適応
にも有用である。
【0113】
【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を制限するものではな
く、前・後記の主旨を逸脱しない範囲で変更実施するこ
とは、全て本発明の技術範囲に包含される。
【0114】得られた難燃性成形品の評価項目、および
その方法は下記の通り。
【0115】(a)難燃性(表1中ではUL94と表
記) 0.8mm(1/32インチ)厚試験片についてUL9
4試験(Underwriters Laborato
ries Incで考案された米国燃焼試験法)を行
い、その難燃性を評価した。
【0116】(b)薄肉成形性(表1中ではIPと表
記) ファンゲートにて、幅150mm×長さ150mm×厚
さ1mmの薄肉平板を射出成形する際の射出圧力で薄肉
成形性を評価した(単位はMPa)。射出圧力が低いほ
ど、薄肉成形性が高いといえる。なお射出成形は、射出
成形機J150EII−P(日本製鋼所製、型締力15
0t)を用いて、シリンダ温度290℃、金型温度70
℃にて行った。
【0117】(c)体積固有抵抗値(表1中ではVRと
表記) ファンゲートにて射出成形した幅70mm×長さ70m
m×厚さ2mmの平板中から、幅12.7mm×長さ6
0mm×厚さ2mmの試験片を、成形流動方向を長手方
向として切り出し、絶乾状態(水分率0.1%以下)で
測定に供した。まず幅×厚さ面に導電性ペースト(藤倉
化成(株)製ドータイト)を塗布し、その面を電極に圧
着し、電極間の電気抵抗値をデジタルマルチメーター
(FLUKE社製)にて測定する。前記電気抵抗値から
測定機器、治具などの接触抵抗を減じた値に、導電性ペ
ースト塗布面の面積を乗じ、次いでその値を試験片長さ
で除したものを体積固有抵抗値とした(単位はΩ・c
m)。
【0118】(d)衝撃強度(表1中ではIZODと表
記) ASTM D 256に準拠したモールドノッチ有りI
ZOD衝撃強度で評価した(単位はJ/m)。用いた試
験片の板厚は3mm厚で、絶乾状態で試験に供した。な
お射出成形は、射出成形機IS100(東芝機械製、型
締力100t)を用いて、シリンダ温度280℃、金型
温度80℃にて行った。
【0119】実施例1〜5、および比較例1〜4、6 まず、所望量の成分(A)、(C)、(D)、(F)、
(G)を2軸押出機にてコンパウンドし、難燃マスター
ペレット1を製造する。
【0120】次いで難燃マスターペレット1と成分
(A)とを所望比率にてドライブレンドしたものを1軸
押出機にて、その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中
に十分溶融混練された状態で押し出し、同時に成分
(E)束も連続して前記クロスヘッドダイ中に供給する
ことによって溶融した成分(A)などを成分(E)束中
に十分含浸させる。前記クロスヘッドダイとは、そのダ
イ中で繊維束を開繊させながら溶融樹脂などを含浸させ
る装置のことをいう。前述のようにして得られた連続し
た成分(E)束を含有した樹脂ストランドを、カッター
で7mmの長さに切断して長繊維ペレットを得る。
【0121】また、所望量の成分(A)と成分(B)と
を1軸押出機にてコンパウンドし、難燃マスターペレッ
ト2を製造する。
【0122】得られた長繊維ペレットと難燃マスターペ
レット2とを所望比率にてドライブレンドし、80℃に
て5時間以上真空中で乾燥させた後、各試験の射出成形
に供した。
【0123】成形品への各成分の配合率、および評価結
果を表1に示す。
【0124】実施例1〜5のいずれの材料も、0.8m
m(1/32インチ)厚の難燃性はV−0であった。体
積固有抵抗値が1Ω・cmよりも低く、高い電磁波シー
ルド効果が期待される。また、特に成分(F)、(G)
を加えた場合、薄肉成形性に優れた。
【0125】一方、比較例1〜4のいずれの材料も、難
燃性はV−1、もしくはV−2であり、且つ体積固有抵
抗も実施例1〜5に較べて劣っていた。特に比較例2〜
4に関しては、燃焼時間はV−0レベルであったが、綿
発火を伴うドリップが発生したためV−2判定となっ
た。つまり、ドリップ発生さえ防止することができれ
ば、V−0の難燃性を達成が可能である。また、比較例
6は、難燃性はV−0であるものの、薄肉平板が成形不
能であり、薄肉成形性に大幅に劣った。
【0126】実施例6、比較例5、7 前記難燃マスターペレット1と成分(A)とを所望比率
にてドライブレンドしたものと、チョップド糸にされた
成分(E)とを2軸押出機にて押し出し、溶融した成分
(A)などを成分(E)束中に含浸させる。前述のよう
にして得られた不連続の成分(E)のみを含有する樹脂
ストランドをカッターで5mmの長さに切断してペレッ
トを得る。
【0127】得られたペレットと前記難燃マスターペレ
ット2とを所望比率にてドライブレンドし、80℃にて
5時間以上真空中で乾燥させた後、各試験の射出成形に
供した。
【0128】成形品への各成分の配合率、および評価結
果を表1に示す。実施例6では、0.8mm(1/32
インチ)厚の難燃性はV−0であった。体積固有抵抗値
が2Ω・cmよりも低く、高い電磁波シールド効果が期
待される。また、薄肉成形性も優れていた。
【0129】一方、比較例5、7は、難燃性はV−2で
あり、且つ、体積固有抵抗も実施例6に較べて劣ってい
た。比較例5、7は、比較例2〜4と同様に燃焼時間は
V−0レベルであったが、綿発火を伴うドリップが発生
したため、V−2判定となった。
【表1】 表1における各成分は下記材料を用いた。 成分(A) N6 :ナイロン6樹脂 [ηr=2.4] N66:ナイロン66樹脂[ηr=2.8] 成分(B) RP :赤リン[燐化学工業(株)製ノーバエクセル1
40:平均粒径=約30μm、フェノール系熱硬化性樹
脂被覆、導電率=約180〜200μS/cm] 成分(C) MG :水酸化マグネシウム[協和化学工業(株)製キ
スマ5E−U:合成型、平均結晶粒径=約1.0μm、
アミド系高極性樹脂被覆、粒状品] 成分(D) CB :カーボンブラック[I2 /I1 =0.68、I
2 /I3 =0.60] 成分(E) CF1:炭素繊維[東レ(株)製トレカT700SC−
12K−50C、PAN系、平均単繊維直径=7μm、
引張破断伸度=2.1%] CF2:炭素繊維[東レ(株)製トレカT300B−1
2K−50B、PAN系、平均単繊維直径=7μm、引
張破断伸度=1.5%] 成分(F) TP :テルペン・フェノール樹脂[ヤスハラケミカル
(株)製YP90L] 成分(G) LCP:液晶ポリエステル樹脂[芳香族オキシカルボニ
ル単位42.5モル%、芳香族ジオキシ単位7.5モル
%、エチレンジオキシ単位50モル%、芳香族ジカルボ
ン酸単位57.5モル%からなる融点208℃、溶融粘
度15Pa・s]
【発明の効果】本発明によれば、高い難燃性(特にドリ
ップ防止性)、高い薄肉成形性、および高い導電性を兼
ね備えた難燃性樹脂組成物、およびその成形品を提供す
ることができる。このような難燃性樹脂組成物、および
その成形品は、特に電子機器類のハウジングなどを始
め、前記特性を必要とする幅広い産業分野に好適であ
り、その工業的な効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の難燃性樹脂組成物を構成するカーボン
ブラックの一例のラマンスペクトルである。
【符号の説明】
1 :ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。 I2 :ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極小値。 I3 :ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
散乱強度の極大値。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08K 7/06 C08K 7/06 9/04 9/04 C08L 65/00 C08L 65/00 67/00 67/00 77/12 77/12

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも(A)硫酸相対粘度ηrが
    2.7以下であるポリアミド樹脂、(B)赤リン系難燃
    剤、(C)金属水酸化物系難燃剤、(D)カーボンブラ
    ック、および(E)炭素繊維からなり、UL94規格に
    おいて0.8mm(1/32インチ)厚での難燃性がV
    −0であることを特徴とする難燃性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 全組成物を100重量%とした場合、成
    分(B)が2〜12重量%、成分(C)が1〜10重量
    %、成分(D)が0.7〜10重量%、および成分
    (E)が5〜35重量%である請求項1に記載の難燃性
    樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 請求項2の各成分の各重量%について、
    ((B)+(C)+(D))/((A)+(B)+
    (C)+(D))が0.08以上0.35以下である請
    求項1または2に記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 成分(A)がナイロン6である請求項1
    〜3のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 成分(B)がフェノール系熱硬化性樹脂
    で被覆された赤リンである請求項1〜4のいずれかに記
    載の難燃性樹脂組成物。
  6. 【請求項6】 成分(C)が水酸化マグネシウムである
    請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 【請求項7】 成分(D)が、少なくとも次の条件[CB
    1]および/または、[CB2]を満たす請求項1〜6のいず
    れかに記載の難燃性樹脂組成物。 [CB1]:ラマン散乱強度比I2/I1 が、0.4〜0.
    8の範囲である。 [CB2]:ラマン散乱強度比I2/I3 が、0.4〜0.
    7の範囲である。 I1:ラマンシフト1360cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値 I2:ラマンシフト1480cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極小値 I3:ラマンシフト1580cm-1付近に現れるラマン
    散乱強度の極大値
  8. 【請求項8】 成分(F)としてフェノール系重合体を
    さらに含有する請求項1〜7のいずれかに記載の難燃性
    樹脂組成物。
  9. 【請求項9】 成分(G)として液晶性樹脂をさらに含
    有する請求項1〜8のいずれかに記載の難燃性樹脂組成
    物。
  10. 【請求項10】 成分(H)として金属酸化物を0. 0
    1〜10重量含有する請求項1〜9のいずれかに記載の
    難燃性樹脂組成物。
  11. 【請求項11】 請求項1〜10のいずれかに記載の難
    燃性樹脂組成物よりなる長繊維ペレット。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれかに記載の難
    燃性樹脂組成物を射出成形してなる難燃性成形品。
  13. 【請求項13】 成分(E)が下記(数式1)において
    7〜600の値を有するものである請求項12に記載の
    難燃性成形品。 (数式1) Σ(lw×Wf) (ここで、lwは難燃性成形品中に含まれる成分(E)
    の重量平均繊維長(mm)、Wfは難燃性成形品中に含
    まれる成分(E)の配合率(重量%)を示し、Σは難燃
    性成形品中に含有される成分(E)の種類が複数である
    場合、それぞれについての括弧内の値を合計することを
    意味する。)
  14. 【請求項14】 体積固有抵抗値が100Ω・cm以下
    である請求項12または13に記載の難燃性成形品。
  15. 【請求項15】 肉厚が4mm以下の形状である請求項
    12〜14のいずれかに記載の難燃性成形品。
  16. 【請求項16】 電気・電子機器、OA機器、家電機
    器、自動車分野用途のハウジングまたはそれらの部品で
    ある請求項12〜15のいずれかに記載の難燃性成形
    品。
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