JP4389312B2 - 繊維強化樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流動性、耐衝撃性、そり変形性、電磁シールド性および薄肉難燃性に優れた繊維強化樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートをはじめとする熱可塑性樹脂は、その優れた諸特性を生かし、射出成形材料として機械機構部品、電気電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されつつある。一方、成形品への要求が技術の進歩と共に高くなり、より複雑形状のものが要求され、そのため流動性向上が望まれるようになってきた。
【0003】
そこで分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、熱可塑性樹脂の流動性および機械特性を向上させるために数々のアロイ化技術が検討されている。末端基濃度を規定したポリカーボネートの例として特開平6−200129号公報がある。また、熱可塑性樹脂とのアロイが数々検討されており、例えばPOLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1991,Vol.31,No.6やJournal of applied Polymer Science,Vol.62,(1996)などがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、充填材を添加するにあたり、特開平6−200129号公報のようにポリカーボネートの末端基をコントロールしたものを用いても確かに流動性は若干向上するものの、衝撃強度が改良されず、単純にブレンドしただけでは、そり変形性が改良されない。また、上記文献記載の液晶ポリエステルを用いて検討を行った場合、単純にブレンドした場合には、やはり上記公報と同様の結果が得られ、耐衝撃性、そり性等が改良されない。また、衝撃強度を始めとする特性を改良するために相溶化剤等を用いた場合、熱可塑性樹脂と反応が起こるためと推察されるが、衝撃性の低下は抑制されるものの、熱可塑性樹脂と混ざりすぎ流動性向上効果あるいは高い電磁波シールド性が発現しないことがわかった。また、単純にブレンドしたアロイ材では成形時のそりやバリなどの発生のため、狭い成形条件で成形しなければならず、また得られた成形品のバリ取りなど2次加工が必要となり、筐体(ハウジング)などの薄肉で大型の成形品用途では使用が限定されてしまう。
【0005】
よって本発明は、上述の問題を解消し、従来のポリカーボネート樹脂の加工温度で加工可能であり、かつポリカーボネート樹脂の従来の特性を損なうことなく、耐衝撃性、そり変形性、電磁シールド性および薄肉難燃性に優れた繊維強化樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は(1)ポリカーボネート樹脂(A)99.5〜70重量%と液晶性樹脂(B)0.5〜30重量%からなる樹脂組成物100重量部および炭素繊維5〜300重量部からなる繊維強化樹脂組成物であって該組成物中の炭素繊維の60%以上が繊維長0.15〜6mmの範囲にある繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、2軸押出機を用い、樹脂原料フィーダーからポリカーボネート樹脂(A)と液晶性樹脂(B)と共に供給し、炭素繊維を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する繊維強化樹脂組成物の製造方法、および(2)液晶性樹脂(B)が、下記構造単位(I)、(II)、(III)からなる液晶性ポリエステルである上記(1)記載の繊維強化樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【0007】
【化5】
【0008】
(ただし式中のR1は
【0009】
【化6】
【0010】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0011】
【化7】
【0012】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)としては、カーボネート結合を有し、芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂が挙げられ、該芳香族ホモまたはコポリカーボネート樹脂は、メチレンクロライド中1.0g/dlの濃度で20℃で測定した対数粘度が0.2〜3.0dl/g、特に0.3〜1.5dl/gの範囲ものが好ましく用いられる。ここで二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0016】
ポリカーボネートの末端基量については特に規定されないが、本発明の効果をより発現させるためには、フェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)が1/20以下であるポリカーボネート樹脂を用いることが好ましく、より好ましくは1/40以下であり、さらに好ましくは1/70以下である。
【0017】
ポリカーボネート樹脂の末端基の測定は、例えば、ポリカーボネート樹脂を酢酸酸性塩化メチレンに溶解し、四塩化チタンを加え、生成した赤色錯体を546nmで測光定量して行える。
【0018】
また、ポリカーボネート(A)はその他の特性を付与させるためにその一部(通常、(A)成分の70重量%以下、好ましくは60重量%以下、特に好ましくは50重量%以下)を結晶性の熱可塑性樹脂に置き換えることが可能であり、具体的には、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂が挙げられる。
【0019】
本発明の液晶性樹脂(B)とは、例えば、異方性溶融相を形成し得る樹脂であり、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミド、液晶性ポリカーボネート、液晶性ポリエステルエラストマーなどが挙げられ、特に液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドなどが好ましく用いられる。
【0020】
上記液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドとしては、異方性溶融相を形成し得るポリエステル、ポリエステルアミドであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、脂肪族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステル、あるいは、上記構造単位と芳香族イミノカルボニル単位、芳香族ジイミノ単位、芳香族イミノオキシ単位などから選ばれた構造単位からなり、かつ異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルアミドなどが挙げられる。
【0021】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、脂肪族ジオキシ単位としてエチレングリコール、プロピレングリコールなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位、芳香族イミノオキシ単位としては、例えば、4−アミノフェノールなどから生成した構造単位が挙げられる。
【0022】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの好ましい例としては、構造単位(I)、(II)、(III)からなる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドである。
【0023】
【化9】
【0024】
(ただし式中のR1は
【0025】
【化10】
【0026】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0027】
【化11】
【0028】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位またはエチレングリコール、プロピレングリコールなどから選択された一種以上の脂肪族ジヒドロキシ化合物を、構造単位(III)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0029】
【化12】
【0030】
であり、R2が
【0031】
【化13】
【0032】
であるものが特に好ましい。
【0033】
本発明の液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(II)、(III)からなる共重合体であるが、その共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0034】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜90モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜10モル%がより好ましい。また、構造単位(I)の(II)に対するモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(III)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0035】
ここで実質的に等モルとは、末端を除くポリマー主鎖を構成するユニットが等モルであるが、末端を構成するユニットとしては必ずしも等モルとは限らないことを意味する。
【0036】
また液晶性ポリエステルアミドとしては、上記構造単位(I)〜(III)以外にp−アミノフェノールから生成したp−イミノフェノキシ単位、p−アミノ安息香酸から生成したp−アミノカルボキシ単位を含有した異方性溶融相を形成するポリエステルアミドが好ましい。
【0037】
上記好ましく用いることができる液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルアミドは、上記構造単位(I)〜(III)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0038】
本発明で使用する液晶性樹脂(B)は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能である。その際、0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜10.0dl/gが特に好ましい。
【0039】
また、本発明における液晶性樹脂(B)の溶融粘度は0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜150Pa・sがより好ましい。また、流動性により優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を100Pa・s以下とすることが好ましい。
【0040】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0041】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマーを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0042】
液晶性樹脂の融点は、特に限定されないが、ポリカーボネート樹脂への分散性の点から好ましくは340℃以下、より好ましくは330℃以下である。下限については250℃以上が好ましい。さらに好ましくは285〜330℃である。
【0043】
本発明において使用する上記液晶性樹脂の基本的な製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0044】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−ヒドロキシ安息香酸などオキシカルボニル単位形成性単量体を除く成分のみから得られたポリエステルとp−アセトキシ安息香酸とを乾燥窒素気流下で加熱溶融し、アシドリシス反応によって共重合ポリエステルフラグメントを生成させ、次いで減圧し増粘させることによって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(2)または(3)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0045】
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0046】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)と液晶性樹脂(B)の配合比は(A)と(B)の合計に対し、(A)99.5〜30重量%、(B)0.5〜70重量%、好ましくは(A)97〜75重量%、(B)3〜25重量%、より好ましくは(A)95〜80重量%、(B)5〜20重量%である。
【0047】
液晶性樹脂(B)が少なすぎる場合、本発明の効果、特に流動性が発揮されず、液晶性樹脂が多すぎる場合、特に機械特性の異方性や成形時に樹脂が会合するウエルド部の強度が低下し、好ましくない。
【0048】
本発明に用いる炭素繊維は、PAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができるが、成形時などの繊維折損を抑えるため高強度・高伸度タイプのものを用いることが望ましい。強度が低いものは脆く、コンパウンド、成形時の繊維折損で繊維長が極めて短くなってしまい、結果として補強効果、導電性など、また難燃化処方を施した場合、液滴の落下(ドリップ)により難燃化効果などの特性を得にくくなる。
【0049】
また、本発明における繊維強化樹脂組成物中の炭素繊維は、その60%以上が0.15〜6mmの範囲に制御されているような繊維長分布を有することが必須であり、好ましい繊維長分布としては制御されるべき繊維長の範囲が0.15〜3mm、より好ましくは0.15〜2mmのものであり、その含有量としては好ましくは、70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。上記の特定の範囲に繊維長分布が制御されることにより、流動性、耐衝撃性のバランスが得られ、また成形品の電磁波シールド性が優れるからである。繊維長分布が上記範囲より短すぎると樹脂の強度ばかりでなく、衝撃性、電磁波シールド性などが低下し、一方長すぎる場合には、流動性が低下し、得られた成形品の表面外観、また流動性がするため成形品末端まで樹脂を流すために高い圧力をかけるためにバリなどの成形不良が発生が懸念される。上記繊維長分布は、少なくとも成形に供する前の繊維強化樹脂組成物(例えばペレットの状態)での範囲であり、かかる繊維強化樹脂組成物を成形した成形品においてもかかる範囲であることが望ましい。
【0050】
特にこれらの特性を得ることのできるPAN系炭素繊維がより望ましい。
【0051】
本発明において上記炭素繊維の添加量は組成物の流動性、耐衝撃性の点から、ポリカーボネート(A)および液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物((A)成分と(B)成分の合計)100重量部に対して5〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは25〜100重量部である。
【0052】
組成物中の炭素繊維の繊維長分布の測定方法は、例えば、組成物約5gをるつぼ中で550℃×7時間処理し灰化した後、残存した充填剤のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された充填剤の繊維長を測定する。測定は500本行い、繊維長分布を求める。炭素繊維の繊維長を求める際には灰化条件を誤ると繊維そのものが酸化、燃焼してしまう場合があるので注意が必要であり、窒素雰囲気下で灰化することが望ましい。用いる繊維強化樹脂組成物の樹脂成分が可溶の場合には、溶媒を用いて組成物を溶かし繊維を取り出して繊維長を測定することもできる。
【0053】
また、繊維強化樹脂組成物の機械強度その他の特性を付与するために必要に応じて炭素繊維以外の充填剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状など非繊維状の充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。
【0054】
また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0055】
上記の充填剤の添加量はポリカーボネート(A)および液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物((A)成分と(B)成分の合計)100重量部に対し0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜250重量部、より好ましくは20〜150重量部である。
【0056】
本発明において繊維強化樹脂組成物に薄肉難燃性などの特性を付与するために赤リンおよび/または下記一般式(1)で表される燐酸エステルを使用することができる。
【0057】
本発明で使用される赤リンは、そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するので、これを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。このような赤リンの処理方法としては、特開平5−229806号公報に記載の如く赤リンの粉砕を行わず、赤リン表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンに水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤リンの酸化を触媒的に抑制する方法、赤リンをパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤リンを銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤リン表面に金属リン化合物を析出させて安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤リン表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤リンの粉砕を行わずに赤リン表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤リンを水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、などで被覆することにより安定化させる方法であり、特に好ましくは、赤リンの粉砕を行わず、表面に破砕面を形成させずに赤リンを微粒子化する方法、赤リンをフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法あるいはこれらの両者を組み合わせた方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンが耐湿性の面から好ましく使用することができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤リンである。
【0058】
なお、本発明において用いる赤燐として好ましい赤燐である未粉砕赤燐は、破砕面を形成させずに製造された赤燐を指す。
【0059】
また樹脂に配合される前の赤リンの平均粒径は、難燃性、機械特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕による赤燐の化学的・物理的劣化を抑える点から35〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、30〜0.1μmのものである。
【0060】
なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤リンの分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤リン表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0061】
また本発明で使用される赤リンの平均粒径は上記のごとくであるが、赤リン中に含有される粒径の大きな赤リン、すなわち粒径が75μm以上の赤リンは、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤リンは分級とうにより除去することが好ましい。粒径が75μm以上の赤リン含量は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好ましい。
【0062】
ここで赤リンに含有される粒径が75μm以上の赤リン含量は、75μmのメッシュにより分級することで測定することができる。すなわち赤リン100gを75μmのメッシュで分級した時の残さ量A(g)より、粒径が75μm以上の赤リン含量は(A/100)×100(%)より算出することができる。
【0063】
また、本発明で使用される赤リン(B)の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤リン5gに純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、121℃で100時間抽出処理し、赤リンろ過後のろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性、およびリサイクル性の点から通常0.1〜1000μS/cmが好ましく、より好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0064】
このような好ましい赤リンの市販品としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5が挙げられる。
【0065】
本発明に使用される燐酸エステルとは、下記式(1)で表されるものである。
【0066】
【化14】
【0067】
まず前記式(1)で表される難燃剤の構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数であり、好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜5である。上限は難燃性の点から40以下が好ましい。
【0068】
またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0069】
また前記式(1)の式中、R3〜R10は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0070】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なる芳香族基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換された芳香族基を表す。かかる芳香族基としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、インデン骨格、アントラセン骨格を有する芳香族基が挙げられなかでもベンゼン骨格、あるいはナフタレン骨格を有するものが好ましい。これらはハロゲンを含有しない有機残基(好ましくは炭素数1〜8の有機残基)で置換されていてもよく、置換基の数にも特に制限はないが、1〜3個であることが好ましい。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などの芳香族基が挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0071】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0072】
このような燐酸エステルとしては、大八化学社製PX−200、PX−201、PX−130、CR−733S、TPP、CR−741、CR747、TCP、TXP、CDPから選ばれる1種または2種以上が使用することができ、好ましくはPX−200、TPP、CR−733S、CR−741、CR747から選ばれる1種または2種以上、特に好ましくはPX−200、CR−733S、CR−741を使用することができるが、この中で特に好ましくはPX−200である。
【0073】
本発明において赤燐および燐酸エステルのいずれか1種、または2種以上の混合物であってもよい。
【0074】
上記赤燐および/または燐酸エステルの添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、に100重量部に対して0.1〜30重量部、好ましくは0.1〜25重量部、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは2〜20重量部である。なかでも4〜15重量部が、特に好ましい。
【0075】
赤燐の添加量が本発明の範囲より少なすぎた場合、添加による難燃性付与効果が小さくなり、多すぎる場合、かえって燃焼促進剤として働く、または機械物性が低下する傾向にある。
【0076】
燐酸エステルの添加量が本発明の範囲より多すぎる場合、機械物性の低下およびガス発生による噛み込み不良あるいはガス焼け等が発生しやすくなる傾向にあり、少なすぎる場合、添加による難燃性付与効果が小さい。
【0077】
また、赤燐を添加した場合、難燃性の他に成形時の熱安定性が向上するなどの効果も同時に発現し、燐酸エステルを添加した場合には、流動性がさらに向上する。
【0078】
本発明の繊維強化樹脂組成物はさらに赤燐の安定剤として金属酸化物を添加することにより、押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させることができる。このような金属酸化物の具体例としては、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどが挙げられるが、なかでも酸化カドミウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどのI族および/またはII族の金属以外の金属酸化物が好ましく、特に酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましいが、I族および/またはII族の金属酸化物であってもよい。押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタンが最も好ましい。
【0079】
金属酸化物の添加量は機械物性、成形性の面からポリカーボネート樹脂(A)と液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物((A)成分と(B)成分の合計)100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0080】
本発明の繊維強化樹脂組成物の電磁波シールド性をさらに向上させるために導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーを使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、導電性フィラーとして、通常樹脂の導電化に用いられる導電性フィラーであれば特に制限は無く、その具体例としては、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機フィラー、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボンなどが挙げられる。
【0081】
金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。
【0082】
金属繊維の金属種の具体例としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、黄銅などが例示できる。
【0083】
かかる金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属繊維はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0084】
金属酸化物の具体例としてはSnO2(アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)、ZnO(アルミニウムドープ)などが例示でき、これらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0085】
導電性物質で被覆された無機フィラーにおける導電性物質の具体例としてはアルミニウム、ニッケル、銀、カーボン、SnO2(アンチモンドープ)、In2O3(アンチモンドープ)などが例示できる。また被覆される無機フィラーとしては、マイカ、ガラスビーズ、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、ホウ酸アルミニウムウィスカー、酸化亜鉛系ウィスカー、酸化チタン酸系ウィスカー、炭化珪素ウィスカーなどが例示できる。被覆方法としては真空蒸着法、スパッタリング法、無電解メッキ法、焼き付け法などが挙げられる。またこれらはチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。
【0086】
カーボン粉末はその原料、製造法からアセチレンブラック、ガスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラックなどに分類される。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、その原料、製造法は特に限定されないが、アセチレンブラック、ファーネスブラックが特に好適に用いられる。またカーボン粉末は、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分などの特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。本発明で用いることのできるカーボン粉末は、これら特性に特に制限は無いが、強度、電気伝導度のバランスの点から、平均粒径が500nm以下、特に5〜100nm、更には10〜70nmが好ましい。また表面積(BET法)は10m2 /g以上、更には30m2 /g以上が好まし。またDBP給油量は50ml/100g以上、特に100ml/100g以上が好ましい。また灰分は0.5%以下、特に0.3%以下が好ましい。
【0087】
かかるカーボン粉末はチタネート系、アルミ系、シラン系などの表面処理剤で表面処理を施されていても良い。また溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0088】
得られる成形品は、しばしば表面の平滑性が求められる。かかる観点から、本発明で用いられる導電性フィラーは、高いアスペクト比を有する繊維状フィラーよりも、粉状、粒状、板状、鱗片状、或いは樹脂組成物中の長さ/直径比が200以下の繊維状のいずれかの形態であることが好ましい。
【0089】
本発明で用いられる導電性ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレンなどが例示できる。
【0090】
上記導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーは、2種以上を併用して用いても良い。かかる導電性フィラー、導電性ポリマーの中で、特にカーボンブラックが強度、コスト的に特に好適に用いられる。
【0091】
本発明で用いられる導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーの含有量は、用いる導電性フィラー及び/又は導電性ポリマーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性と流動性、機械的強度などとのバランスの点から、(a)成分と(b)成分の合計100重量部に対し、1〜250重量部、好ましくは3〜100重量部の範囲が好ましく選択される。
【0092】
またさらに、本発明の繊維強化樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤としては赤燐および/または燐酸エステルが好ましく用いられるが他の難燃剤(例えばブロム化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂)、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0093】
また、更なる特性改良の必要性に応じて無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0094】
本発明の繊維強化樹脂組成物はさらに燃焼時の液滴の落下(ドリップ)抑制剤としてフェノール系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂を用いてさらに難燃性を付与することができる。特にフッ素系樹脂がその効果を好ましく発揮する。そのようなフッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、(ヘキサフルオロプロピレン/プロピレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライド、(ビニリデンフルオライド/エチレン)共重合体などが挙げられるが、中でもポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル)共重合体、(テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体、ポリビニリデンフルオライドが好ましく、特にポリテトラフルオロエチレン、(テトラフルオロエチレン/エチレン)共重合体が好ましい。
【0095】
上記の落下(ドリップ)抑制剤の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜25重量部が好ましく、中でもフッ素系樹脂を用いる場合には、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。
【0096】
本発明の繊維強化樹脂組成物の製造方法は、溶融混練において、好ましい炭素繊維の繊維長分布を実現するためには、2軸押出機で溶融混練する場合に樹脂原料フィーダーからポリカーボネート樹脂と液晶性樹脂と共に供給し、炭素繊維を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給して炭素繊維の受けるせん断履歴を制御する方法である。
【0107】
繊維強化樹脂組成物を製造するに際し、サイドフィーダー付の2軸押出機で180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができる。
【0108】
かくして得られる繊維強化樹脂組成物は、流動性、耐衝撃性およびソリ変形性、電磁波シールド性に優れた組成物であるが、特に薄肉難燃性においては、多くの場合、1/32インチ(0.8mm)厚でもUL−94規格V−0を達成することが可能である。
【0109】
また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、フィルム、容器パイプなどのあらゆる形状の成形物品とすることができる。なかでも射出成形品用途に特に好適であり、各種機械機構部品、電気電子部品または自動車部品に好適である。特にその優れた流動性を生かし、薄肉部を有する成形品(例えば板状成形品あるいは箱形成形品)、特に1.2mm以下の薄肉部を有する成形品に好ましく適用できる。具体的には厚みが1.2mm以下の部分を成形品の全表面積に対して、10%以上有する成形品、より好ましくは1.2mm以下の部分を15%以上有する成形品に、さらに好ましくは1.0mm以下の部分を10%以上有する成形品に有効である。また、成形方法としては射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましい。
【0110】
かくして得られる成形品は、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEDランプ、コネクター、ソケット、用紙用分離爪、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ部品、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、ICベーキングトレー、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受、などの各種軸受、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキバット磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、パワーシートギアハウジング、イグニッションコイル用部品、点火装置ケースなどの自動車・車両関連部品、その他各種用途に有用である。特に各種ケース、スイッチ、ボビン、コネクター、ソケット類コネクターおよび携帯電話用ハウジング等の筐体およびパソコンハウジング等、各種機器の筐体(ハウジング)などの薄肉部を有する成形品である場合に特に有用であり、なかでも成形品の表面積全体の10%以上の1.2mm以下の薄肉部を有する成形品である場合に極めて有用である。
【0111】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
参考例1(LCP1)
p−ヒドロキシ安息香酸932重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル419重量部、ナフタレンジカルボン酸292重量部、テレフタル酸150重量部及び無水酢酸1263重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。芳香族オキシカルボニル単位75モル当量、芳香族ジオキシ単位25モル当量、芳香族ジカルボン酸単位25モル当量からなる融点313℃、22Pa・s(323℃、オリフィス0.5mm径×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
参考例2(LCP2)
p−ヒドロキシ安息香酸746重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル168重量部、ヒドロキノン99重量部、2,6−ナフタレンジカルボン酸117重量部、テレフタル酸209重量部及び無水酢酸808kgを攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位60モル当量、芳香族ジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点337℃、24Pa・s(347℃、オリフィス0.5mmφ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
参考例3(LCP3)
p−ヒドロキシ安息香酸995重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸969重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重縮合を行った。芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、13Pa・s(324℃、オリフィス0.5mmφ×10mm、ずり速度1,000(1/秒))のペレットを得た。
【0112】
各評価については、次に述べる方法にしたがって測定した。
(1)流動性
下記成形機を用いて、射出速度99%の条件で1.2mm厚×150mm×150mmの角板の最低充填圧力(MPa)を測定した。
(2)耐衝撃性
下記成形機を用いて5点ピンゲートの箱形成形品(1.0mm厚、外法寸法70mm×130mm×高さ20mm)を成形し、箱の中に500gの重りを入れ、箱形成形品が破壊する高さを測定した。
(3)そり変形性(平面部)
1.0mm厚、外法寸法120mm×120mm×高さ20mmの8点ゲート箱形成形品を最低充填圧力+0.3MPaで成形し、角板の中心部のへこみを測定した。
(4)そり変形性(壁部)
1.0mm厚、外法寸法30mm×30mm×高さ30mmの壁部1点ゲート箱形成形品を最低充填圧力+0.98MPaで成形し、ゲート側壁部と反ゲート側壁部の内ぞり量を測定した。
(5)電磁波シールド性
150mm×150mm×1mm厚の角板を射出成形し、得られた成形品を用いてアドバンテスト法に基づいて電界波についてシールド性の測定をおこなった。具体的には(株)アドバンテスト製シールド材評価器TR17301Aとスペクトルアナライザを用い、プローブアンテナを用いることにより、この平板に電磁波を透過させた際の減衰率を、10〜1000MHzの周波数帯域で測定し、測定チャートより周波数300MHzでの電界シールド性を読みとった。
(6)難燃性評価
UL−94に従い、1/32インチ(0.8mm)厚試験片の難燃性評価を行った。
(7)繊維長分布
ペレット約5gをるつぼ中で550℃×7時間処理し灰化した後、残存した充填剤のうちから100mgを採取し、100ccの石鹸水中に分散させる。ついで、分散液をスポイトを用いて1〜2滴スライドガラス上に置き、顕微鏡下に観察して、写真撮影する。写真に撮影された充填剤の繊維長を測定する。測定は500本行い、繊維長分布を求めた。
【0113】
実施例1〜6、比較例1〜6
TEX−30型2軸押出機(日本製鋼所製)を用いてポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製))に表1に示した割合で、液晶性樹脂(B)をドライブレンドし、樹脂フィーダーより供給し、PAN系炭素繊維(6mm長)を樹脂フィーダー(比較例6)あるいは重量式サイドフィーダー(実施例1〜6、比較例1〜5)を用いて添加し、表1に示した押出機温度をシリンダー温度として溶融混練し、ペレットとした。次いでこのペレットをJSW150EII−P(日本製鋼所製)に供し、表1に記載した成形温度をシリンダー温度とし、金型温度90℃の温度条件で各評価項目ごとの方法で試験片を成形した。
【0114】
表1からも明らかなように本発明の組成物は比較例に比べ、優れた流動性および耐衝撃性が良好で、かつ成形品のそり変形性低減および高い電磁波シールド性を有することから、薄肉部を有する成形品特にハウジング用途の成形品を取得する場合に非常に優れていることがわかる。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例7〜9、比較例7、8、参考例4、5
LCP1の100重量部に対して赤燐(ノーバエクセル140)を100重量部ドライブレンドし、30mmφの2軸押出機を用いて液晶性ポリエステルの融点+15℃で溶融混練して赤燐高濃度品(D1)を得た。また、上記方法と同様にLCP2で赤燐高濃度品(D2)を得た。
【0117】
次いでポリカーボネート樹脂に表2に示した割合で液晶性樹脂(B)、赤燐高濃度品(D1、D2)または燐酸エステル(大八化学社製(レゾルシン型ビスホスフェート”PX−200”)とポリテトラフルオロエチレン(三井デュポンフロロケミカル社製“テフロン6J”)、炭素繊維(6mm長)を実施例1と同様の方法で溶融混練ペレットとした。次いでこのペレットをJSW150EII−P(日本製鋼所製)に供し、シリンダー温度表2の温度で、金型温度90℃の温度条件で各評価項目ごとの方法で試験片を成形した。
【0118】
表2から赤燐または燐酸エステルを添加することで本組成物に新たに薄肉難燃性に優れ、特性低下も参考例に比べ、ほとんどないことがわかる。
【0119】
【表2】
【0120】
【発明の効果】
本発明の繊維強化樹脂組成物は、優れた流動性、耐衝撃性、低そり変形性、電磁波シールド性および薄肉難燃性が得られることから、これらの特性が要求される電機・電子関連機器、精密機械関連機器、事務用機器、自動車などその他各種用途、特にハウジング用途に好適な材料である。
Claims (2)
- ポリカーボネート樹脂(A)99.5〜70重量%と液晶性樹脂(B)0.5〜30重量%からなる樹脂組成物100重量部および炭素繊維5〜300重量部からなる繊維強化樹脂組成物であって該組成物中の炭素繊維の60%以上が繊維長0.15〜6mmの範囲にある繊維強化樹脂組成物の製造方法であって、2軸押出機を用い、樹脂原料フィーダーからポリカーボネート樹脂(A)と液晶性樹脂(B)と共に供給し、炭素繊維を押出機の先端部分のサイドフィーダーから供給する繊維強化樹脂組成物の製造方法。
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