JP4392580B2 - 水系樹脂組成物、これを含む水系塗料、その塗料を用いた塗膜、その塗料を用いた塗装金属板 - Google Patents

水系樹脂組成物、これを含む水系塗料、その塗料を用いた塗膜、その塗料を用いた塗装金属板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は下記構造式(1)を有し、分子鎖中のカルボキシル基を塩基性化合物で中和することで水分散化できるポリエステル樹脂とフェノール樹脂含む水系塗料樹脂組成物、及びこれを塗布した塗装金属板であって、硬化性、加工性、耐レトルト性、抽出性(衛生性)に優れ、特に缶用塗料に好適な水系塗料樹脂組成物に関する。
【0002】
【化2】
Figure 0004392580
【0003】
(構造式(1)において、それぞれの略号は、RはH、またはアルキル、またはアリール基を表わし、Xは水酸基、あるいはカルボキシル基(カルボン酸無水物を含む)を少なくとも1つ以上有する有機セグメントを表わし、nは1〜3を表わす。)
【0004】
【従来の技術】
従来、缶塗料の中で内面塗料としてはエポキシ樹脂を主剤としてものが多く使用されている。その中で水系のエポキシ−アクリル塗料は、自然環境の保護、及び作業環境の改善のために溶剤系の塗料に置き換わり缶内面塗料として多く用いられるようになっている。エポキシ−アクリル樹脂は水系化後の安定性も良好であり、缶内面に塗装された後の加工性、耐レトルト性、抽出性(衛生性)に優れているとされてきた。
【0005】
しかし、エポキシ−アクリル塗料の原料であるビスフェノール−Aは外因子内分泌撹乱物質(環境ホルモン)である可能性が示唆されるようになり、近年特に食品分野において缶の内面塗料へのビスフェノール−Aの使用を避ける要求が高まっている。そのため、ビスフェノール−Aを用いない水系塗料の開発が望まれているが、いまだ十分に好適な塗料組成物は得られていない。
【0006】
ビスフェノール−Aの含まれない塗料としてポリエステル樹脂を用いたものが良く知られている。例えばジカルボン酸、グリコール、ポリカルボン酸一無水物などでポリエステル樹脂の解重合、または開環付加反応を行い分子末端のカルボキシル基変性を行い、さらにこれを塩基性化合物で分子内に有するカルボキシル基を中和することで水分散し、アミノ樹脂、保護コロイドを含有する水系塗料樹脂組成物が提案されている(たとえば、特許文献1〜5参照)。
【0007】
これらの塗料は硬化性、加工性に優れるものの、一般にアミノ樹脂は衛生性に乏しく、特にメラミン−ホルムアルデヒド樹脂は耐レトルト性に乏しい。また、この耐レトルト性を改良するために疎水性のアミノ樹脂(ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂など)を使用することも可能であるが、これら特許公報に記載の方法で得られたポリエステル樹脂はカルボキシル基が分子末端に偏在しているため、分散安定性が良くない。したがって塗料の安定化を図るため保護コロイドを使用する必要があるが、この保護コロイドが耐レトルト性、衛生性を低下させるという問題がある。また、分散安定性が良くないために缶内面塗料としてスプレー塗装した際にスプレーノズルの目詰まりや塗装後のタレを生じるという問題もある。
【0008】
またポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂を組み合わせた塗料により、硬化性、加工性、耐レトルト性、衛生性を改善した塗料が提案されている(例えば特許文献6参照)。しかしながら、該公報にあるレゾール型フェノール樹脂は一部ではあるがアルキルエーテル化されているため水分散性に乏しく、これを水中にて分散安定化させるにはやはり保護コロイドや界面活性剤等の使用が必要となり、耐レトルト性の低下の原因となる。さらには該公報記載のフェノール樹脂を使用することで従来のフェノール樹脂よりポリエステル樹脂との硬化性を高めることは可能であるが、アミノ樹脂とポリエステル樹脂、或いはフェノール樹脂とエポキシ樹脂の組み合わせよりなる塗料の硬化性に比べるとまだ改良の余地があり、実際耐レトルト性が不十分となるケースがある。また、該公報にはこれらを水系塗料として使用する内容について具体的方法、事例は示されていない。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−296100号公報([0026]〜[0028]等)
【特許文献2】
特開平11−61035号公報([0017]等)
【特許文献3】
特開平11−124542号公報([0018]、[0019]等)
【特許文献4】
特開平11−236529号公報([0018]、[0019]等)
【特許文献5】
特開2000−26709号公報([0026]、[0027]等)
【特許文献6】
特開平11−315251号公報([特許請求の範囲]等)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記の問題点を解決すべく、ビスフェノール−Aなどの環境ホルモンを含有せず、硬化性、加工性、耐レトルト性、衛生性、スプレー塗装性、水分散性に優れた、缶内面塗装用として好適な水系樹脂組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者はこれら水系缶内面塗料の問題点のうち、特に上記した従来技術では達成されていない水系ポリエステルを使用しての硬化性、加工性、耐レトルト性、衛生性を満足すべく鋭意検討した結果、分子鎖内に下記構造式(1)を導入し、かつカルボキシル基修飾を行ったポリエステル樹脂を使用することで、疎水性樹脂、特にレゾール型フェノール樹脂を安定に水分散化することができ、さらにはレゾール型フェノール樹脂との硬化性を格段に高め、上記した問題を解決し本発明に到達した。即ち本発明は以下の水系樹脂組成物、これを含む水系塗料、その塗料を用いた塗膜、その塗料を用いた塗装金属板である。
【0012】
(1) (A)成分として、分子鎖内および/または分子鎖末端に下記構造式(1)を有し、分子鎖中にカルボキシル基を有し、該樹脂酸価が150〜800eq/106gであり、数平均分子量が5000〜100000であるポリエステル樹脂と、
(B)成分として、フェノール樹脂と、
(C)成分として、塩基性化合物と、
(D)成分として、水、あるいは、水および有機溶剤と、
を含有する水系樹脂組成物。
【化3】
Figure 0004392580
(構造式(1)において、それぞれの略号は、RはH、またはアルキル、またはアリール基を表わし、Xは水酸基、あるいはカルボキシル基(カルボン酸無水物を含む)を少なくとも1つ以上有する有機セグメントを表わし、nは1〜3を表わす。)
【0013】
(2) (B)フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂であることを特徴とする(1)に記載の水系樹脂組成物。
【0014】
(3) (B)フェノール樹脂は、3官能以上のフェノール化合物を50重量%以上含有するフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとの共重合体であることを特徴とする(2)に記載の水系樹脂組成物。
【0015】
(4) (B)フェノール樹脂は、アルコキシジメチル基を芳香族1核当たり平均して1つ以上有することを特徴とする(3)に記載の水系樹脂組成物。
【0016】
(5) (A)ポリエステル樹脂と(B)フェノール樹脂が下式の範囲内で含有することを特徴とする(1)に記載の水系塗料樹脂組成物。
(A)/(B)=99/1〜50/50 [重量比]
【0017】
(6) (A)ポリエステル樹脂の酸価に対して、(C)塩基性化合物を0.5〜1.5当量含有することを特徴とする(1)に記載の水系樹脂組成物。
【0018】
(7) (A)ポリエステル樹脂と(B)フェノール樹脂あわせて100重量部に対して、酸触媒を0.01〜3重量部含有することを特徴とする(1)に記載の水系樹脂組成物。
【0019】
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の水系樹脂組成物を含む水系塗料。
【0020】
(9) (8)に記載の水系塗料を用いた塗膜。
【0021】
(10) (8)に記載の水系塗料を用いた塗装金属板。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の水系塗料樹脂組成物等に関して更に詳細に説明する。
【0023】
本発明の(A)ポリエステル樹脂は、分子鎖内、および/または分子鎖末端に下記構造式(1)を有する。構造式(1)は(A)ポリエステル樹脂中に0.5モル%以上共重合されることが好ましい。更に好ましくは1モル%以上である。構造式(1)の構造がない場合は特に好ましく用いられるレゾール型フェノール樹脂との硬化性が十分でない場合がある。なお、構造式(1)に由来するフェノール性OH基は後述する樹脂酸価としては加算されない。
【0024】
【化4】
Figure 0004392580
【0025】
(構造式(1)において、それぞれの略号は、RはH、またはアルキル、またはアリール基を表わし、Xは水酸基、あるいはカルボキシル基(カルボン酸無水物を含む)を少なくとも1つ以上有する有機セグメントを表わし、nは1〜3を表わす。)
【0026】
通常、ポリエステル樹脂とレゾール型フェノール樹脂との架橋反応としてはポリエステル樹脂の末端OH基とレゾ−ル型フェノール樹脂のメチロール基、および/またはアルコキシメチル基との間での縮合反応が考えられる。これに加えて分子鎖内、および/または分子末端に構造式(1)を導入した(A)ポリステル樹脂はこの構造式(1)部分と(B)成分のレゾール型フェノール樹脂との間で縮合(架橋)反応が起こると考えられる。この反応は通常レゾール型フェノール樹脂同士で起こる親電子置換(縮合)反応と同様と推測している。
【0027】
構造式(1)を(A)ポリエステル樹脂に形成する成分としては、例えばジフェノール酸(4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−ペンタン酸)、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸、m−ヒドロキシフェニル酢酸、o−ヒドロキシフェニル酢酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、m−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、o−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ドロキシフェネチルアルコール、m−ヒドロキシフェネチルアルコール、o−ヒドロキシフェネチルアルコール、4−ヒドロキシフェニルピルビン酸、4−ヒドロキシメチル安息香酸、ホモバニリン酸、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3−ヒドロキシイソフタル酸、ビスフェノール−Aのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール−Fのアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。この中で好ましくはジフェノール酸、p−ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p−ヒドロキシフェニル酢酸である。
【0028】
これらをポリエステル樹脂に導入する方法としては、例えばカルボキシル基、またはヒドロキシル基(フェノール性のOH基を除く)を有するものについては重縮合によって、無水酸基を有するものについては重縮合、或いは重縮合終了後に分子鎖末端に開環付加反応によって導入することができるがこれらの方法で導入することには限定されない。
【0029】
(A)ポリエステル樹脂に使用されるカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、テルペン−マレイン酸付加体などの不飽和ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(無水)トリメリト酸、(無水)ピロメリト酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を選択し使用できる。
【0030】
(A)ポリエステル樹脂に使用されるポリアルコール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、4−プロピル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール等の脂肪族グリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のエーテルグリコール類、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカングリコール類、水素添加ビスフェノール類等の脂環族ポリアルコール等、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリアルコール等が挙げることができ、これらの中から1種、又はそれ以上を選び使用できる。
【0031】
(A)ポリエステル樹脂は、分子鎖中にカルボキシル基を有し、150〜800eq/106gの酸価を有するものが望ましい。ここで、分子鎖中にカルボキシル基を有するとは、ポリエステルの分子末端に存在するものおよび/またはポリエステルの分子鎖にペンダント状にカルボキシル基が存在するものを意味し、水分散性や塗膜の加工性を考慮すると後者が好ましい。
【0032】
酸価が150eq/106g未満だと水分散したときの安定性が得られない場合がある。好ましくは180eq/106g以上である。酸価が800eq/106gを超えると耐レトルト性が得られない場合がある。好ましくは500eq/106g以下である。
【0033】
ポリエステルの分子鎖中にカルボキシル基を導入する方法としては、カルボン酸無水物の開環付加反応により導入する方法が挙げられる。
カルボン酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水トリメリト酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等の一無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリト酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、2,2’,3,3’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられ、これらより1種、または2種以上を選択し使用できる。
【0034】
カルボン酸無水物を付加し、(A)成分のポリエステル樹脂を得る酸付加反応としては、例えば(1)カルボン酸無水物を付加する前のポリエステル樹脂が目標の分子量(Mn=5,000〜100,000)に達した直後、溶融している状態(150〜280℃)に前記したカルボン酸無水物を必要量添加する方法、(2)ポリエステル樹脂が目標の分子量未満(Mn<5,000)の段階でカルボン酸無水物を添加し、窒素雰囲気下で分子量を目標まで上げる方法、(3)酸を付加していないポリエステル樹脂とカルボン酸無水物を溶融押し出し装置で混練し、酸付加する方法などが挙げられ、いずれの方法でも本発明の樹脂は得られる。
【0035】
本発明に使用される(A)成分のポリエステル樹脂の数平均分子量は5,000〜100,000が好ましく、より好ましくは8,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、また、より好ましくは50,000以下、さらに好ましくは30,000以下である。数平均分子量が5,000未満であると塗膜が脆くなり、加工性や耐レトルト性に劣ったりすることがあり、100,000を越えると塗装作業性が低下する場合がある。また、好ましいガラス転移温度(Tg)は0〜120℃、より好ましくは10〜100℃、更に好ましくは30〜100℃である。ガラス転移温度が0℃未満であると耐レトルト性が劣ることがある。特にフレーバー性を必要とする内容物には50℃以上のTgが望ましい。Tgが120℃を超えると加工性や塗装作業性が低下したりする場合がある。なお、ここで言う数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したものであり、ガラス転移温度(Tg)とは示差熱分析(DSC)によって測定したものである。
【0036】
本発明の水系塗料組成物は(A)成分のポリエステル樹脂と(B)成分のフェノール樹脂から構成されており、好ましくは(B)成分はレゾール型フェノール樹脂である。
(B)成分のレゾール型フェノール樹脂としては、例えばo−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール等の2官能のフェノール化合物、フェノール、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノール、ビスフェノール−A、ビスフェノール−F等の3官能以上のフェノール化合物が挙げられる。これらフェノール化合物はホルマリン、パラホルムアルデヒドまたはトリオキサン等からメチロール化され、得られたメチロール基は芳香族1核当たり1.0個以上が望ましい。メチロール化した後、このメチロール基をアルコキシメチル化し、このアルコキシメチル基は芳香族1核あたり、平均して1個以上有することが望ましい。その中でも硬化性を更に高めるには3官能以上のフェノール化合物を50重量%以上含有するフェノール成分を原料とすることが望ましい。アルコキシメチル化する際に使用されるアルコールとしては炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールであり、好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができ、より好ましくはn−ブタノールである。また、アルコキシメチル化する際にはリン酸などの触媒を使用しても良い。
【0037】
本発明の水系塗料樹脂組成物には前記した(A)成分のポリエステル樹脂と(B)成分のフェノール樹脂が下式範囲内で含有することが好ましい。(B)成分のフェノール樹脂が下式範囲内より少ない場合は加工性、耐レトルト性が劣る場合がある。また下式範囲内より多い場合は、塗膜の可撓性が著しく失われるため加工性が低下する場合がある。
(A)/(B)=99/1〜50/50 [重量比]
【0038】
本発明の(B)成分のフェノール樹脂に加え使用できる任意の架橋剤としてはアミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられるが、衛生面よりアミノ樹脂が特に好ましい。これらの架橋剤は塗膜の性能を低下させない程度に配合し使用できる。
【0039】
上記のアミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド、などのアミノ成分と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒドなどのアルデヒド成分との反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。このメチロール化アミノ樹脂のメチロール基を炭素原子数1〜6のアルコールによってエーテル化したものも上記アミノ樹脂に含まれる。これらの内、単独或いは併用して使用できる。衛生上、メラミン、ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂が好ましく、更に好ましくは耐レトルト性、抽出性に優れるベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂である。
【0040】
ベンゾグアナミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化ベンゾグアナミン樹脂のメチロール基を一部又は全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。上記、ブチルアルコールとしてはイソブチルアルコール、n−ブチルアルコールが好ましい。
【0041】
メラミンを使用したアミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を一部又は全部を、メチルアルコールによってエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールによってブチルエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、或いはメチルアルコールとブチルアルコールとの両者によってエーテル化したメチルエーテル、ブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂が好ましい。
【0042】
本発明の缶用塗料組成物には硬化触媒として酸触媒を全樹脂分((A)成分のポリエステル樹脂と(B)成分のフェノール樹脂を併せたもの)に対して0.01〜3重量%を含有してもよい。酸触媒を含有することで、架橋反応が促進され、より緻密な架橋が焼付温度180〜300℃で焼付時間15秒〜10分で得られる。好ましくは、短時間焼付としては270℃×20〜60秒程度、低温焼付としては200℃×3〜10分である。酸触媒が0.01重量%未満だと、硬化促進性が低く、また3重量%を超えると塗膜の耐水性が低下し、耐レトルト性が低下することがある。酸触媒としては例えば硫酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、樟脳スルホン酸、リン酸及びこれらをアミンブロック(アミンを添加し一部中和している)したもの等が挙げられ、これらの中から1種、又は2種以上を併用することができるが、樹脂との相容性、衛生性の面からドデシルベンゼンスルホン酸、及びこの中和物が好ましい。
【0043】
また、本発明の缶塗料用樹脂組成物には潤滑剤を含有することができ、(A)成分のポリエステル樹脂100重量部に対し0.1〜10重量部が好ましい。これは製缶時の塗膜の傷付きを抑制したり、成形加工時の塗膜の滑りを向上させる効果がある。特にDI加工、DRD加工時に効果がある。使用する潤滑剤は、例えばポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、及びシリコン系化合物等を挙げることができる。潤滑剤は1種、または2種以上を混合し使用できる。
【0044】
本発明の水系塗料樹脂組成物には用途に合わせた酸化チタン、シリカなどの公知の無機顔料、リン酸およびそのエステル化物、有機スズ化合物等の硬化触媒、表面平滑剤、消泡剤、分散剤、潤滑剤等の公知の添加剤を配合することができる。
【0045】
本発明の水系樹脂組成物は、前記した(A)成分のポリエステル樹脂と(B)成分のフェノール樹脂の樹脂分を(C)塩基性化合物存在下で(D)水、或いは水/有機溶剤中に分散されたものが好ましい。(C)塩基性化合物としては塗膜形成時の焼付で揮散する化合物が好ましく、アンモニアおよび/または沸点が250℃以下の有機アミン化合物等を使用する。好ましくは、例えばトリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン等を挙げることが出来る。これら塩基性化合物は(A)成分のポリエステル樹脂の酸価に対して、少なくとも部分中和し得る量を必要とし、具体的には酸価に対して0.5〜1.5当量を添加することが望ましい。0.5当量未満だと水への分散化の効果が低く、1.5当量を超えるとポリエステル樹脂水分散体が著しく増粘したり、ポリエステルが加水分解を起こす可能性がある。
【0046】
本発明の水系塗料樹脂組成物は水、或いは水/有機溶剤中に分散されていることが望ましい。製膜性や塗膜の乾燥性、再溶解性、分散安定性を保つためには、好ましくは有機溶剤を使用した方が良い。この有機溶剤は(A)成分のポリエステル樹脂の可塑効果があり、かつ両親媒性を有するものが好ましく、例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、等の環状エーテル類、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、アセト酢酸エチル等を例示することが出来る。
【0047】
本発明の水系塗料樹脂組成物を得るには方法として、例えば、これら溶剤のうち、1種、または2種以上を選択し、(A)成分のポリエステル樹脂を加熱溶解する。次に前記した(B)成分のフェノール樹脂、塩基性化合物を攪拌しながら必要量加え、次いで水を加える。このとき水は(A)成分のポリエステル樹脂を溶解しているワニス温度付近に温めたものを使用しても良い。水を加えると相転移が生じ水分散体となる。またこれより必要に応じ、(A)成分のポリエステル樹脂を溶解する際に使用した溶剤を加熱留去、或いは減圧留去する。好ましくは(B)成分のフェノール樹脂が溶剤留去中の熱での縮合を抑えるためにも100℃以下での減圧留去が望ましい。より好ましくは80℃以下の減圧留去である。この場合、有機溶剤を全量留去すれば完全水系樹脂組成物を得られるが、分散体の安定性、成膜性などから有機溶剤を3〜20%含有させることが望ましい。
または(A)成分のポリエステル樹脂を粉砕し、これに(B)成分のフェノール樹脂、塩基性化合物、前記した溶剤を必要量仕込み、これを加熱分散することでも本発明の水系塗料樹脂組成物を得ることも可能である。この場合も加熱温度は100℃以下とすることが望ましい。
好ましくは前者の分散方法を行うことで安定した水系分散体を得ることが出来る。
【0048】
本発明の缶塗料樹脂組成物には塗膜の可撓性、密着性付与などの改質を目的としたその他の樹脂を使用できる。その他の樹脂としてはエチレン−重合性不飽和カルボン酸共重合体、及びエチレン−重合性カルボン酸共重合体アイオノマー、非水系ポリエステル樹脂を挙げることができ、これらから選ばれる少なくとも1種以上の樹脂を配合することにより効果的の塗膜の可撓性、密着性を付与できる。
これら樹脂は(A)ポリエステル樹脂を加熱溶解する際に一緒に溶解し、次いで前記した水分散化の方法を採ることで水分散体を得ることが出来る。
【0049】
本発明の缶用塗料組成物は飲料缶、食品用缶、その蓋、キャップ等に用いることができる金属板であればいずれへも、その内外面に塗装し使用でき、例えばブリキ板、ティンフリースティール、アルミ等を挙げることができる。これらの金属板にはあらかじめリン酸処理、クロム酸クロメート処理、リン酸クロメート処理、その他の防錆処理剤などの防食、塗膜の密着性向上を目的とした表面処理を施したものを使用しても良い。
【0050】
本発明の塗料組成物はロールコーター塗装、スプレー塗装などの公知の塗装方法によって塗装し、本発明の塗装金属板を得ることができる。塗装膜厚は特に限定されるものではないが、乾燥膜厚で3〜18μm、更には3〜10μmの範囲であることが好ましい。塗膜の焼付条件は通常、100〜300℃の範囲で5秒〜30分の程度であり、更には150〜270℃の範囲で、30秒〜15分の程度である事が好ましい。
【0051】
【実施例】
以下実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。実施例において単に部とあるものは重量部を示す。
各測定項目は以下の方法に従った。
【0052】
(1)ポリエステル樹脂の組成、及びフェノール樹脂のメチロール基とアルコキシメチル基の定量
500MHzの核磁気共鳴スペクトル装置を用い、ポリエステル樹脂の酸成分、アルコール成分のモル比、及びフェノール樹脂のメチロール基とアルコキシメチル基の定量を行った。
【0053】
(2)ポリエステル樹脂とフェノール樹脂の数平均分子量の測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって標準ポリスチレンの検量線を用いて測定した。溶媒はテトラヒドロフランを用いた。
【0054】
(3)ポリエステル樹脂の還元粘度測定
ポリエステル樹脂0.10gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6/4)の混合溶媒25mlに溶かし、30℃で測定した。
【0055】
(4)ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃/分の昇温速度で測定した。樹脂5mgをアルミニウムパンに取り、蓋をして強くクリンプした。
【0056】
(5)酸価の測定
ポリエステル0.2gを20mlのクロロホルムに溶解し、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定し、樹脂106g当りの当量(eq/106g)を求めた。
【0057】
評価項目
(6)テストピースの作成
塗料組成物を金属板(アルミ材:#5052、70mm×150mm×0.5mm、ブリキ材:70mm×150mm×0.22mm)にバーコーターで膜厚が4〜8μmになるように塗装し、硬化焼き付けを行い、これを試験片とした。焼付条件は270℃(到達温度)×30秒とした。(短時間焼付においても十分な硬化性が得られることを示すため。)
【0058】
(7)硬化性
アルミ試験片の塗装面にMEK(メチルエチルケトン)を浸したフェルトを当て、これに荷重0.5kgをかけながら往復させる。その際、素地に達した回数から硬化の程度を判断した。
◎:優 良 (>20回)
○:良 好 (20〜10回)
△:やや硬化不足(5〜10回)
×:未硬化 (<5回)
【0059】
(8)加工性1
アルミ試験片と同じ厚さの金属板を1枚挟み180度方向に折り返し、万力を使用折り曲げる。この曲げ加工部を1%NaCl水溶液に浸漬したスポンジに接触させ5.5Vの電圧をかけたときの通電値により評価した。通電値が小さい方(≦1.5mA)が良好である。
【0060】
(9)加工性2
ブリキ試験片と同じ厚さの金属板を180℃方向に甘く折り返す。これに同じ板厚の金属板を1枚挟み、この曲げ部分を40cmの高さから1kgのおもり(ブロック状)を落とし、折り曲げる。この曲げ加工部を1%NaCl水溶液に浸漬したスポンジに接触させ5.5Vの電圧をかけたときの通電値により評価した。通電値が小さい方(≦1.5mA)が良好である。
【0061】
(10)耐レトルト性
アルミ試験片を立ててステンレスカップに入れ、これにイオン交換水を試験片の半分の高さまで注ぐ。これを圧力釜の中に設置し、125℃×30分のレトルト処理を行う。処理後の評価は水中部分と蒸気部分とで行い、それぞれ白化の度合いを目視で以下のように判定する。
◎:良好 ○:わずかに白化はあるがブリスターは無し
△:若干白化、または若干のブリスターあり
×:著しい白化、または著しいブリスターあり
【0062】
(11)耐酸加工性
試験片をクエン酸1wt%を含む水溶液に浸し、125℃×30分処理した後、これを(7)と同じ方法で加工性を評価、判断した。
【0063】
(12)抽出性
(10)に示したレトルト試験後の抽出液を過マンガンカリウムによる滴定により、塗膜からの有機物の抽出量を定量した。数値の少ない方が良好である。
【0064】
本発明のポリエステル樹脂の合成
エステル交換法による合成例(a)
ジメチルテレフタレート120部、ジメチルイソフタレート280部、トリメリト酸4部、2−メチル−1,3−プロパンジオール260部、1,4−シクロヘキサンジメタノール180部、チタンテトラブトキシド0.2部(またはジブチルスズオキシド0.2部)を2Lフラスコに仕込み、4時間かけて220℃まで徐々に昇温しメタノールを留出させながらエステル交換を行なった。所定量のメタノールが留出した後、ジフェノール酸12部を添加し、220℃で30分攪拌した。ついで、30分かけて10mmHgまで減圧初期重合を行なうとともに温度を255℃まで昇温し、更にこのまま1mmHg以下で90分間後期重合を行なった。目標分子量に達したらこれを窒素雰囲気下で220℃に冷却した。次いでエチレングリコールビストリメリテート二無水物10部、無水トリメリト酸10部を相次いで投入し、窒素雰囲気下、200〜230℃、1時間攪拌を継続した。これを取り出し本発明のポリエステル樹脂(a)を得た。
【0065】
直接重合法による合成例(a)
テレフタル酸105部、イソフタル酸240部、2−メチル−1,3−プロパンジオール190部、1,4−シクロヘキサンジメタノール235、チタンテトラブトキシド0.2部(またはジブチルスズオキシド0.2部)を2Lの四つ口フラスコに仕込み、4時間かけて235℃まで徐々に昇温し、水を留出させエステル化を行った。所定量の水を流出させた後、ジフェノール酸12部を添加し、220℃で30分攪拌した。30分かけて10mmHgまで初期減圧重合を行うと共に温度を255℃まで昇温し、さらにこのまま1mmHg以下で100分間後期重合を行った。目標分子量に達したらこれを窒素雰囲気下220℃に冷却した。次いでエチレングリコールビストリメリテート二無水物10部、無水トリメリト酸10部を相次いで投入し、窒素雰囲気下、200〜230℃、1時間攪拌を継続した。これを取り出し本発明のポリエステル樹脂(a)を得た。
それぞれエステル交換法、及び直接重合法で得られた樹脂(a)の性能には差異はなく、組成と特性値は表1に示す。
【0066】
合成例 (b)〜(e)
合成例(a)のエステル交換法、または直接重合法にて、樹脂組成が表1に示されるような本発明のポリエステル樹脂(b)〜(e)を得た。
【0067】
【表1】
Figure 0004392580
*1:1,4−シクロヘキサンジメタノール
*2:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
*3:ビスフェノール−Aのエチレンオキシド2モル付加体、ポリアルコールとして仕込む
*4:エチレングリコールビストリメリテート二無水物(新日本理化(株)社製)
【0068】
比較合成例 (f)〜(i)
合成例(a)と同様にして、樹脂組成が表2に示されるような比較例ポリエステル樹脂(f)〜(i)を得た。
【0069】
【表2】
Figure 0004392580
*1:1,4−シクロヘキサンジメタノール
*2:エチレングリコールビストリメリテート二無水物(新日本理化(株)社製)
*3:構造式(1)で示される成分を有する化合物
【0070】
合成例(j)レゾール型フェノール樹脂の合成
m−クレゾール100部、37%ホルマリン水溶液180部、及び水酸化ナトリウム1部を加え、60℃で3時間反応させた後、減圧下50℃で1時間脱水した。ついでn−ブタノール100部を加え、110〜120℃で4時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液を濾過して、固形分約50%のm−クレゾール系のレゾール型フェノール樹脂架橋剤(j)を得た。合成配合を表3に示す。
【0071】
その他のレゾール型フェノール樹脂
その他のレゾール型フェノール樹脂として合成例(j)と同様にして(k)〜(n)を得た。合成配合を表3に示す。
【0072】
【表3】
Figure 0004392580
略号:m−CS=m−クレゾール
p−CS=p−クレゾール
Xyl=3,5−キシレノール
Ph=フェノール
【0073】
実施例 (1)
ポリエステル樹脂(a)100部、メチルエチルケトン80g、n−ブチルセロソルブ20gを1Lの四つ口フラスコに入れ、これを75℃で溶解する。次いで、N,N−ジメチルアミノエタノール2.5部、レゾール型フェノール樹脂(j)35部、イソプロパノール40部を順次投入し、70℃で均一化する。次に水を200g投入し、相転化を行なう。
70℃にした後、フラスコに減圧蒸留装置(ト字管、コンデンサー、溶剤トラップ、真空ポンプなど)を装着し、これを減圧下で溶剤留去していく。投入したメチルエチルケトン、イソプロパノールを留去し終えたらこれを冷却し、固形分36%の水系分散体を得た。この分散体30部にキャタリスト602(固形分5%としたもの)を0.6部加え本発明の水系塗料用樹脂組成物(1)とした。これを前述した方法により塗布、焼付を行い本発明の塗装金属板のテストピースを得た。
【0074】
実施例(2)、(5)、参考例(3)、(4)、(6)、(7)
実施例(1)と同様にして本発明の塗料樹脂組成物(2)、(5)、参考例(3)、(4)、(6)、(7)を得た後、同じく前述した方法により塗布、焼付を行い本発明の塗装金属板のテストピースを得た。配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
Figure 0004392580
【0076】
比較例 (8)〜(12)
実施例(1)と同様にして、比較例の塗料樹脂組成物(8)〜(12)を得た後、同じく前述した方法により塗布、焼付を行い比較例のテストピースを得た。
配合組成、並びにテストピースを評価した結果を表5に示す。
尚、比較例(8)は本発明の(A)ポリエステル樹脂をアミノ樹脂で硬化した場合を再現したものである。
【0077】
【表5】
Figure 0004392580
*1:メチルエーテル化ベンゾグアナミン樹脂(三井サイテック(株)製)
*2:アミン中和型ドデシルベンゼンスルホン酸(三井サイテック(株)製)
【0078】
表4〜5で明らかなように、本発明の水系塗料用樹脂組成物を塗布した金属板はその硬化性、加工性(1と2)、耐レトルト性、耐酸加工性、抽出性に優れている。
【0079】
【発明の効果】
食品や飲料缶内面に塗装される塗料はその性質から毒性がなく、廃棄、リサイクル時にも汚染物質の排出もなく、製缶の加工、レトルト処理の蒸気、熱、内容物の塩、酸に耐えるものでなければならない。また近年はエポキシ−フェノール系塗料など外因子内分泌撹乱物質(環境ホルモン)とされるビスフェノール化合物を含む塗料の代替化も望まれている。本発明の水系塗料樹脂組成物は、優れた加工性とフェノール樹脂との硬化性に富む構造を分子内に有する水系ポリエステル樹脂とフェノール樹脂からなり、あらゆる硬化条件に対応でき加工性、耐レトルト性、抽出性に優れ、上記した内分泌攪乱物質の含有、排出がなく、特に缶内面塗料に好適である。

Claims (9)

  1. (A)成分として、分子鎖末端に下記構造式(1)を有し、該構造式(1)を形成する成分が、ジフェノール酸(4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−ペンタン酸)であり、分子鎖中にカルボキシル基を有し、該樹脂酸価が150〜800eq/10gであり、数平均分子量が5000〜100000であるポリエステル樹脂と、
    (B)成分として、レゾール型フェノール樹脂と、
    (C)成分として、塩基性化合物と、
    (D)成分として、水、あるいは、水および有機溶剤と、
    を含有し、(A)ポリエステル樹脂と(B)フェノール樹脂を下式、
    (A)/(B)=99/1〜50/50[重量比]
    の範囲内で含有する水系塗料樹脂組成物。
    Figure 0004392580
    (構造式(1)において、それぞれの略号は、RはHを表わし、Xは水酸基あるいはカルボキシル基(カルボン酸無水物を含む)を少なくとも1つ以上有する有機セグメントを表わし、nは1を表わす。)
  2. (B)フェノール樹脂が、3官能性以上のフェノール化合物を50重量%以上含有するフェノール化合物と、ホルムアルデヒドとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水系樹脂組成物。
  3. (B)フェノール樹脂が、アルコキシメチル基を芳香族1核当たり平均して1つ以上有することを特徴とする請求項1または2に記載の水系樹脂組成物。
  4. (A)ポリエステル樹脂の酸価に対して、(C)塩基性化合物を0.5〜1.5当量含有することを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の水系樹脂組成物。
  5. (A)ポリエステル樹脂と(B)フェノール樹脂あわせて100重量部に対して、酸触媒を0.01〜3重量部含有することを特徴とする請求項1〜いずれかに記載の水系樹脂組成物。
  6. (A)ポリエステル樹脂に含有される前記カルボキシル基が、ポリエステルの分子末端、および/またはポリエステルの分子鎖にペンダント状に存在するものである請求項1〜いずれかに記載の水系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の水系樹脂組成物を含む水系塗料。
  8. 請求項に記載の水系塗料を用いた塗膜。
  9. 請求項に記載の水系塗料を用いた塗装金属板。
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