以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係る光拡散シートを示す模式的平面図及び模式的断面図、図2(a)及び(b)は図1の光拡散シートとは異なる形態に係る光拡散シートを示す模式的平面図及び模式的断面図、図3〜図5は図1及び図2の光拡散シートとは異なる形態に係る光拡散シートを示す模式的断面図である。
図1の光拡散シート1は、基材層2と、この基材層2の表面に積層された光拡散層3とを備えている。当該光拡散シート1は、基材層2の表面の中央部に光拡散層3が積層されていない方形の非積層部4を有している。
基材層2は、光線を透過させる必要があるので透明、特に無色透明の合成樹脂から形成されている。かかる基材層2に用いられる合成樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロースアセテート、耐候性塩化ビニル等が挙げられる。中でも、透明性に優れ、強度が高いポリエチレンテレフタレートが好ましく、撓み性能が改善されたポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
基材層2の厚み(平均厚み)は、特には限定されないが、好ましくは10μm以上250μm以下、特に好ましくは20μm以上188μm以下とされる。基材層2の厚みが上記範囲未満であると、光拡散層3を形成するための樹脂組成物を塗工した際にカールが発生しやすくなってしまう、取扱いが困難になる等の不都合が発生する。逆に、基材層2の厚みが上記範囲を超えると、液晶表示装置の輝度が低下してしまうことがあり、またバックライトユニットの厚みが大きくなって液晶表示装置の薄型化の要求に反することにもなる。
光拡散層3は、バインダー5と、このバインダー5中に含有する光拡散剤6とを備えている。このように光拡散層3中に光拡散剤6を含有することによって、光拡散層3を裏側から表側に透過する光線を均一に拡散させることができる。また、光拡散剤6によって光拡散層3の表面に微細な凹凸が略均一に形成されている。このように光拡散シート1表面に形成される微細な凹凸のレンズ的屈折作用により、光線をより良く拡散させることができる。なお、光拡散層3の平均厚みは、特には限定されないが、例えば1μm以上30μm以下程度とされている。
光拡散剤6は、光線を拡散させる性質を有する粒子であり、無機フィラーと有機フィラーに大別される。無機フィラーとしては、具体的にはシリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫化バリウム、マグネシウムシリケート、又はこれらの混合物を用いることができる。有機フィラーの具体的な材料としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等を用いることができる。中でも、透明性が高いアクリル樹脂が好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましい。
光拡散剤6の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば球状、針状、棒状、立方状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられ、中でも光拡散性に優れる球状のビーズが好ましい。
光拡散剤6の平均粒子径の下限としては、1μm、特に2μm、さらに5μmが好ましい。一方、光拡散剤6の平均粒子径の上限としては、50μm、特に20μm、さらに15μmが好ましい。光拡散剤6の平均粒子径が上記範囲未満であると、光拡散剤6によって形成される光拡散層3表面の凹凸が小さくなり、光拡散シートとして必要な光拡散性を満たさないおそれがある。逆に、光拡散剤6の平均粒子径が上記範囲を越えると、光拡散シート1の厚さが増大し、かつ、均一な拡散が困難になる。
光拡散剤6の配合量(バインダー5の形成材料であるポリマー組成物中の基材ポリマー100部に対する固形分換算の配合量)の下限としては10部、特に20部、さらに50部が好ましく、この配合量の上限としては500部、特に300部、さらに200部が好ましい。これは、光拡散剤6の配合量が上記範囲未満であると、光拡散性が不十分となってしまい、一方、光拡散剤6の配合量が上記範囲を越えると光拡散剤6を固定する効果が低下することからである。なお、プリズムシートの表面側に配設される所謂上用光拡散シートの場合、高い光拡散性を必要とされないため、光拡散剤6の配合量としては10部以上40部以下、特に10部以上30部以下が好ましい。
バインダー5は、基材ポリマーを含むポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。このバインダー5によって基材層2表面に光拡散剤6が略等密度に配置固定される。なお、このバインダー5を形成するためのポリマー組成物は、基材ポリマーの他に例えば微小無機充填剤、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、光安定化剤等が適宜配合されてもよい。
上記基材ポリマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、紫外線硬化型樹脂等が挙げられ、これらのポリマーを1種又は2種以上混合して使用することができる。特に、上記基材ポリマーとしては、加工性が高く、塗工等の手段で容易に光拡散層3を形成することができるポリオールが好ましい。また、バインダー5に用いられる基材ポリマー自体は、光線の透過性を高める観点から透明が好ましく、無色透明が特に好ましい。
上記ポリオールとしては、例えば水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールや、水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールなどが挙げられ、これらを単体で又は2種以上混合して使用することができる。
水酸基含有不飽和単量体としては、(a)例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アリルアルコール、ホモアリルアルコール、ケイヒアルコール、クロトニルアルコール等の水酸基含有不飽和単量体、(b)例えばエチレングリコール、エチレンオキサイド、プロピレングリコール、プロピレンオキサイド、ブチレングリコール、ブチレンオキサイド、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルデカノエート、プラクセルFM−1(ダイセル化学工業株式会社製)等の2価アルコール又はエポキシ化合物と、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸との反応で得られる水酸基含有不飽和単量体などが挙げられる。これらの水酸基含有不飽和単量体から選択される1種又は2種以上を重合してポリオールを製造することができる。
また、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、1−メチルスチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、酢酸アリル、アジピン酸ジアリル、イタコン酸ジアリル、マレイン酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エチレン、プロピレン、イソプレン等から選択される1種又は2種以上のエチレン性不飽和単量体と、上記(a)及び(b)から選択される水酸基含有不飽和単量体とを重合してポリオールを製造することもできる。
水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られるポリオールの数平均分子量は1000以上500000以下であり、好ましくは5000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールは、(c)例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ハイドロキノンビス(ヒドロキシエチルエーテル)、トリス(ヒドロキシエチル)イソシヌレート、キシリレングリコール等の多価アルコールと、(d)例えばマレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、トリメット酸、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸とを、プロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール中の水酸基数が前記多塩基酸のカルボキシル基数よりも多い条件で反応させて製造することができる。
かかる水酸基過剰の条件で得られるポリエステルポリオールの数平均分子量は500以上300000以下であり、好ましくは2000以上100000以下である。また、その水酸基価は5以上300以下、好ましくは10以上200以下、さらに好ましくは20以上150以下である。
当該ポリマー組成物の基材ポリマーとして用いられるポリオールとしては、上記ポリエステルポリオール、及び、上記水酸基含有不飽和単量体を含む単量体成分を重合して得られ、かつ、(メタ)アクリル単位等を有するアクリルポリオールが好ましい。かかるポリエステルポリオール又はアクリルポリオールを基材ポリマーとするバインダー5は耐候性が高く、光拡散層3の黄変等を抑制することができる。なお、このポリエステルポリオールとアクリルポリオールのいずれか一方を使用してもよく、両方を使用してもよい。
なお、上記ポリエステルポリオール及びアクリルポリオール中の水酸基の個数は、1分子当たり2個以上であれば特に限定されないが、固形分中の水酸基価が10以下であると架橋点数が減少し、耐溶剤性、耐水性、耐熱性、表面硬度等の被膜物性が低下する傾向がある。
バインダー5を形成するポリマー組成物中には微小無機充填剤を含有するとよい。このバインダー5中に微小無機充填剤を含有することで、光拡散層3ひいては光拡散シート1の耐熱性が向上する。この微小無機充填剤を構成する無機物としては、特に限定されるものではなく、無機酸化物が好ましい。この無機酸化物は、金属元素が主に酸素原子との結合を介して3次元のネットワークを構成した種々の含酸素金属化合物と定義される。また無機酸化物を構成する金属元素としては、例えば元素周期律表第2族〜第6族から選ばれる元素が好ましく、元素周期律表第3族〜第5族から選ばれる元素がさらに好ましい。特に、Si、Al、Ti及びZrから選択される元素が好ましく、金属元素がSiであるコロイダルシリカが、耐熱性向上効果及び均一分散性の面で微小無機充填剤として最も好ましい。また、微小無機充填剤の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状等の任意の粒子形状でよく、特に限定されない。
微小無機充填剤の平均粒子径の下限としては、5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。一方、微小無機充填剤の平均粒子径の上限としては50nmが好ましく、25nmが特に好ましい。これは、微小無機充填剤の平均粒子径が上記範囲未満では、微小無機充填剤の表面エネルギーが高くなり、凝集等が起こりやすくなるためであり、逆に、平均粒子径が上記範囲を超えると、短波長の影響で白濁し、光拡散シート1の透明性を完全に維持することができなくなることからである。
微小無機充填剤の基材ポリマー100部に対する配合量(無機物成分のみの配合量)の下限としては固形分換算で5部が好ましく、50部が特に好ましい。一方、微小無機充填剤の上記配合量の上限としては500部が好ましく、200部がより好ましく、100部が特に好ましい。これは、微小無機充填剤の配合量が上記範囲未満であると、光拡散シート1の耐熱性を十分に発現することができなくなってしまうおそれがあり、逆に、配合量が上記範囲を越えると、ポリマー組成物中への配合が困難になり、光拡散層3の光線透過率が低下するおそれがあることからである。
上記微小無機充填剤としては、その表面に有機ポリマーが固定されたものを用いるとよい。このように有機ポリマー固定微小無機充填剤を用いることで、バインダー5中での分散性やバインダー5との親和性の向上が図られる。この有機ポリマーについては、その分子量、形状、組成、官能基の有無等に関して特に限定はなく、任意の有機ポリマーを使用することができる。また有機ポリマーの形状については、直鎖状、分枝状、架橋構造等の任意の形状のものを使用することができる。
上記有機ポリマーを構成する具体的な樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体やアミノ基、エポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基で一部変性した樹脂等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル−ポリエステル系樹脂等の(メタ)アクリル単位を含む有機ポリマーを必須成分とするものが被膜形成能を有し好適である。他方、上記ポリマー組成物の基材ポリマーと相溶性を有する樹脂が好ましく、従ってポリマー組成物に含まれる基材ポリマーと同じ組成であるものが最も好ましい。
なお、微小無機充填剤は、微粒子内に有機ポリマーを包含していてもよい。このことにより、微小無機充填剤のコアである無機物に適度な軟度および靱性を付与することができる。
上記有機ポリマーにはアルコキシ基を含有するものを用いるとよく、その含有量としては有機ポリマーを固定した微小無機充填剤1g当たり0.01mmol以上50mmol以下が好ましい。かかるアルコキシ基により、バインダー5を構成するマトリックス樹脂との親和性や、バインダー5中での分散性を向上させることができる。
上記アルコキシ基は、微粒子骨格を形成する金属元素に結合したRO基を示す。このRは置換されていてもよいアルキル基であり、微粒子中のRO基は同一であっても異なっていてもよい。Rの具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル等が挙げられる。微小無機充填剤を構成する金属と同一の金属アルコキシ基を用いるのが好ましく、微小無機充填剤がコロイダルシリカである場合には、シリコンを金属とするアルコキシ基を用いるのが好ましい。
有機ポリマーを固定した微小無機充填剤中の有機ポリマーの含有率については、特に制限されるものではないが、微小無機充填剤を基準にして0.5質量%以上50質量%以下が好ましい。
微小無機充填剤に固定する上記有機ポリマーとして水酸基を有するものを用い、バインダー5を構成するポリマー組成物中に水酸基と反応するような官能基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物およびアミノプラスト樹脂から選ばれる少なくとも1種のものを含有するとよい。これにより、微小無機充填剤とバインダー5のマトリックス樹脂とが架橋構造で結合され、保存安定性、耐汚染性、可撓性、耐候性、保存安定性等が良好になり、さらに得られる被膜が光沢を有するものとなる。
上記多官能イソシアネート化合物としては、脂肪族、脂環族、芳香族及びその他の多官能イソシアネート化合物やこれらの変性化合物を挙げることができる。この多官能イソシアネート化合物の具体例としては、例えばトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体等の3量体等;これらの多官能イソシアネート類とプロパンジオール、ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールとの反応により生成される2個以上のイソシアネート基が残存する化合物;これらの多官能イソシアネート化合物をエタノール、ヘキサノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール性水酸基を有する化合物、アセトオキシム、メチルエチルケトキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、γ−カプロラクタム等のラクタム類等のブロック剤で封鎖したブロックド多官能イソシアネート化合物などを挙げることができる。なお、上記多官能イソシアネート化合物は1種又は2種以上混合して使用することができる。中でも、被膜の黄変色を防止するために、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性多官能イソシアネート化合物が好ましい。
上記メラミン化合物としては、例えばジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、イソブチルエーテル型メラミン、n−ブチルエーテル型メラミン、ブチル化ベンゾグアナミン等を挙げることができる。
上記アミノプラスト樹脂としては、例えばアルキルエーテル化メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられ、これらのアミノプラスト樹脂の単体又は2種以上の混合物もしくは共縮合物を使用できる。このアルキルエーテル化メラミン樹脂とは、アミノトリアジンをメチロール化し、シクロヘキサノールまたは炭素数1〜6のアルカノールでアルキルエーテル化して得られるものであり、ブチルエーテル化メラミン樹脂、メチルエーテル化メラミン樹脂、メチルブチル混合メラミン樹脂が代表的なものである。また、硬化を促進させるためのスルホン酸系触媒、たとえば、パラトルエンスルホン酸およびそのアミン塩等を使用することができる。
上記基材ポリマーとしてはシクロアルキル基を有するポリオールが好ましい。このように、バインダー5を構成する基材ポリマーとしてのポリオール中にシクロアルキル基を導入することで、バインダー5の撥水性、耐水性等の疎水性が高くなり、高温高湿条件下での当該光拡散シート1の耐撓み性、寸法安定性等が改善される。また、光拡散層3の耐候性、硬度、肉持感、耐溶剤性等の塗膜基本性能が向上する。さらに、表面に有機ポリマーが固定された微小無機充填剤との親和性及び微小無機充填剤の均一分散性がさらに良好になる。
上記シクロアルキル基としては特に限定されず、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロペンタデシル基、シクロヘキサデシル基、シクロヘプタデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
上記シクロアルキル基を有するポリオールは、シクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体を共重合することで得られる。このシクロアルキル基を有する重合性不飽和単量体とは、シクロアルキル基を分子内に少なくとも1つ有する重合性不飽和単量体である。この重合性不飽和単量体としては特に限定されず、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、ポリマー組成物中には硬化剤としてイソシアネートを含有するとよい。このようにポリマー組成物中にイソシアネート硬化剤を含有することで、より一層強固な架橋構造となり、光拡散層3の被膜物性がさらに向上する。このイソシアネートとしては上記多官能イソシアネート化合物と同様の物質が用いられる。中でも、被膜の黄変色を防止する脂肪族系イソシアネートが好ましい。
特に、基材ポリマーとしてポリオールを用いる場合、ポリマー組成物中に配合する硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、イソフロンジイソシアネート及びキシレンジイソシアネートのいずれか1種もしくは2種以上混合して用いるとよい。これらの硬化剤を用いると、ポリマー組成物の硬化反応速度が大きくなるため、帯電防止剤として微小無機充填剤の分散安定性に寄与するカチオン系のものを使用しても、カチオン系帯電防止剤による硬化反応速度の低下を十分補うことができる。また、かかるポリマー組成物の硬化反応速度の向上はバインダー中への微小無機充填剤の均一分散性に寄与する。その結果、当該光拡散シートは熱、紫外線等による撓みや黄変を格段に抑制することができる。
さらに、ポリマー組成物中に帯電防止剤を混練するとよい。このように帯電防止剤が混練されたポリマー組成物からバインダー5を形成することで、当該光拡散シート1に帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。また、帯電防止剤を表面にコーティングすると表面のベタツキや汚濁が生じてしまうが、このようにポリマー組成物中に混練することでかかる弊害は低減される。この帯電防止剤としては、特に限定されるものではなく、例えばアルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩等のアニオン系帯電防止剤、第四アンモニウム塩、イミダゾリン化合物等のカチオン系帯電防止剤、ポリエチレングリコール系、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアリン酸エステル、エタノールアミド類等のノニオン系帯電防止剤、ポリアクリル酸等の高分子系帯電防止剤などが用いられる。中でも、帯電防止効果が比較的大きいカチオン系帯電防止剤が好ましく、少量の添加で帯電防止効果が奏される。
次に、当該光拡散シート1の製造方法について説明する。当該光拡散シート1の製造方法としては、(a)バインダー5を構成するポリマー組成物に光拡散剤6を混合することで光拡散層用組成物を製造する工程と、(b)この光拡散層用組成物を基材層2の表面に積層し、硬化させることで光拡散層3を形成する工程とを有する。
この光拡散層用組成物の積層手段としては、方形の非積層部4を有する光拡散層3が形成できれば特に限定されるものではなく種々の公知の方法が採用されるが、特に印刷が好ましい。かかる印刷によれば、基材層2表面の任意の領域に光拡散層3を積層し、任意領域に任意形状の非積層部4を容易かつ確実に形成することができる。この印刷としては、特に限定されず、例えば(a)網目版印刷、感光性樹脂版印刷等の凸版印刷、(b)ダイレクト平版印刷等の平版印刷、(c)グラビア印刷、エッチング印刷等の凹版印刷、(d)スクリーン印刷等の孔版印刷などが採用される。中でも、凹版印刷及び孔版印刷が好ましく、光拡散機能を発現するために所定の厚さが要求される光拡散層3を容易に形成することができる。特に、光拡散剤6等を含有する光拡散層形成用樹脂組成物の積層に適し、製造性に優れるスクリーン印刷が特に好ましい。
当該光拡散シート1は、光拡散層3中に含有する光拡散剤6の界面での反射や屈折及び光拡散層3表面に形成される微細凹凸での屈折により、非積層部4以外の領域で高い光拡散機能を有し、この光拡散機能に起因して法線方向側への屈折機能を有している。また当該光拡散シート1は、光拡散機能のない非積層部4を有し、中央部の所定方形領域が透明とされていることから、裏面側に存在する別の表示機構を視認させるよう構成された特殊な液晶表示装置に好適に使用することができ、裏面側に存在する別の表示機構の画像がぼやけてしまう不都合を防止することができる。
非積層部4領域におけるヘイズ値としては、20%以下が好ましく、15%以下が特に好ましい。一方、非積層部4以外の領域におけるヘイズ値としては、当該光拡散シート1の用途により適宜選択されるが、具体的には30%以上が好ましく、50%以上が特に好ましい。このように非積層部4領域のヘイズ値を20%以下とすることで、上記特殊な液晶表示装置の透明領域において、裏面側に存在する別の表示機構の視認性をより向上することができる。一方、非積層部4以外の領域のヘイズ値を30%以上とすることで、当該光拡散シート1の光拡散機能を高め、例えばバックライトユニットにおいてランプから出射した光線を略均一に分散し、法線方向側へ向けることができる。
図2の光拡散シート11は、基材層2と、この基材層2の表面に積層された光拡散層3とを備えている。この基材層2及び光拡散層3のバインダー5並びに光拡散剤6は、上記光拡散シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。従って、当該光拡散シート11も、優れた光拡散機能を有している。
当該光拡散シート11は、バックライトユニットにおいて組み付けのために使用され、光拡散機能が不要な外縁部に非積層部12を有している。そのため、当該光拡散シート11は、光拡散層3が外縁部に存在することに起因するバリやゴミなどの発生を防止することができる。
図3の光拡散シート21は、基材層2と、この基材層2の表面に積層された光拡散層3と、基材層2の裏面に積層される紫外線吸収層22とを備えている。この紫外線吸収層22は、透過光線の紫外線をカットする機能を有している。基材層2及び光拡散層3は、上記光拡散シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。従って、当該光拡散シート21も、中央部の方形の非積層部4を介して裏面側に存する別の表示機構の良好な視認性を有し、非積層部4以外の領域では優れた光拡散機能を有している。
当該光拡散シート21は、紫外線吸収層22を備えることで、透過光線の紫外線をカットする機能を有している。そのため、当該光拡散シート21は、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。特に、中央部に非積層部4を有する光拡散シートの場合、紫外線をある程度カットする機能を有する光拡散層3が存在しないため、非積層部4を介してバックライトユニットからの紫外線が液晶層に入射し、液晶層の劣化を招来するおそれがあるが、当該光拡散シート21によれば紫外線吸収層22の紫外線吸収機能によってかかる不都合を防止することができる。また当該光拡散シート21は、紫外線吸収剤が基材ポリマー中に含有し、保護されているため、保存運搬時、バックライトユニットの組み付け作業時又は使用時における紫外線吸収剤の損耗等を防止できる。
当該光拡散シート21における非積層部4領域における波長350nm以下の光線透過率としては30%以下が好ましく、25%以下が特に好ましい。このように非積層部4領域における波長350nm以下の光線透過率を上記範囲とすることで、バックライトユニットのランプから発せられる紫外線をカットし、液晶層の破壊を効果的に防止することができる。
紫外線吸収層22は、基材ポリマーと、この基材ポリマー中に含有する紫外線吸収剤とを有している。なお、この紫外線吸収層22の厚みは特には限定されないが、例えば3μm以上30μm以下程度とされている。
この基材ポリマーに用いる材料としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂等を用いることができる。また、この基材ポリマー中には、上記のポリマーの他、例えば可塑剤、安定化剤、劣化防止剤、分散剤、帯電防止剤等が配合されてもよい。この基材ポリマーは、光線透過性の観点から透明とされており、無色透明が好ましい。
紫外線吸収層22に含まれる紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収し、効率よく熱エネルギーに変換できるもので、かつ、光に対して安定な化合物であれば特に限定されるものではなく公知のものを使用することができる。中でも、紫外線吸収機能が高く、上記基材ポリマーとの相溶性が良好で、基材ポリマー中に安定して存在するサリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びシアノアクリレート系紫外線吸収剤が好ましく、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。また、紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマー(例えば、(株)日本触媒の「ユーダブルUV」シリーズなど)も好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、基材ポリマーとの相溶性が高く、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。なお、紫外線吸収層22は、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを基材ポリマーとすることも可能である。また、この紫外線吸収基が結合されたポリマーを基材ポリマーとし、さらにこの基材ポリマー中に紫外線吸収剤を含有することも可能であり、紫外線吸収層22の紫外線吸収機能をより向上させることができる。
上記紫外線吸収剤の基材ポリマーに対する含有量の下限としては0.1質量%、特に1質量%、さらに3質量%が好ましく、紫外線吸収剤の上記含有量の上限としては10質量%、特に8質量%、さらに5質量%が好ましい。これは、紫外線吸収層を構成する基材ポリマーに対して紫外線吸収剤の配合量が上記下限より小さいと、光拡散シート21の紫外線吸収機能を効果的に奏することができないためであり、逆に、紫外線吸収剤の配合量が上記上限を超えると、基材ポリマーに悪影響を及ぼし、紫外線吸収層22の強度、耐久性等の低下をもたらすことからである。
また、紫外線吸収層22は、紫外線安定剤を含有する基材ポリマー又は分子鎖に紫外線安定基が結合した基材ポリマーから形成することも可能である。この紫外線安定剤又は紫外線安定基により、紫外線で発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、紫外線吸収層ひいては当該光拡散シートの紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。この紫外線安定剤又は紫外線安定基としては、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤又はヒンダードアミン系紫外線安定基が好適に用いられる。なお、紫外線吸収層は、この紫外線安定剤又は紫外線安定基と上記紫外線吸収剤又は紫外線安定基とを併有することも可能であり、この併有により紫外線による劣化防止及び耐候性が格段に向上する。
次に、当該光拡散シート21の製造方法について説明する。当該光拡散シート21の製造方法としては、(a)バインダー5を構成するポリマー組成物に光拡散剤6を混合することで光拡散層用組成物を製造する工程と、(b)この光拡散層用組成物を基材層2の表面に積層し、硬化させることで光拡散層3を形成する工程と、(c)基材層2の裏面に紫外線吸収層用組成物を塗工することで紫外線吸収層22を積層する工程とを有する。
図4の光拡散シート31は、基材層2と、この基材層2の表面に積層された光拡散層3と、基材層2の裏面に積層される紫外線吸収層22と、紫外線吸収層22の裏面に積層されるスティッキング防止層32とを備えている。この基材層2及び光拡散層3は上記光拡散シート1と同様であり、紫外線吸収層22は上記光拡散シート21と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。従って、当該光拡散シート31も、非積層部4以外の領域での優れた光拡散機能を有し、さらに中央部の方形の非積層部4を介して裏面側に存する別の表示機構の良好な視認性を有し、加えて紫外線吸収層22の紫外線吸収機能によってバックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線による液晶層の破壊を効果的に防止する機能を有している。
スティッキング防止層32は、バインダー33と、このバインダー33中に分散するビーズ34とを備えている。このバインダー33も、上記光拡散層3のバインダー5と同様のポリマー組成物を架橋硬化させることで形成される。また、ビーズ34の材料としては光拡散層3の光拡散剤6と同様のものが用いられる。なお、このスティッキング防止層32の厚み(ビーズ34が存在しない部分でのバインダー33部分の厚み)は特には限定されないが、例えば1μm以上10μm以下程度とされている。
このビーズ34の配合量は比較的少量とされ、ビーズ34は互いに離間してバインダー33中に分散し、ビーズ34の多くはその下端がバインダー33からごく少量突出している。そのため、この光拡散シート31を導光板と積層すると、突出したビーズ34の下端が導光板等の表面に当接し、光拡散シート31の裏面の全面が導光板等と当接することがない。これにより、光拡散シート31と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
次に、光拡散シート31の製造方法を説明する。当該光拡散シート31の製造方法は、(a)バインダー5を構成するポリマー組成物に光拡散剤6を混合することで光拡散層用組成物を製造する工程と、(b)この光拡散層用組成物を基材層2の表面に積層し、硬化させることで光拡散層3を形成する工程と、(c)基材層2の裏面に紫外線吸収層用組成物を塗工することで紫外線吸収層22を積層する工程と、(d)バインダー33を構成するポリマー組成物にビーズ34を混合することでスティッキング防止層用組成物を製造する工程と、(e)このスティッキング防止層用組成物を基材層2の裏面に塗工することでスティッキング防止層32を積層する工程とを有する。
図5の光拡散シート41は、基材層2と、この基材層2の表面に積層された光拡散層3と、基材層2の裏面に積層されるスティッキング防止層42とを備えている。この基材層2及び光拡散層3は上記光拡散シート1と同様であるため、同一番号を付して説明を省略する。従って、当該光拡散シート31も、中央部の方形の非積層部4を介して裏面側に存する別の表示機構の良好な視認性を有し、非積層部4以外の領域での優れた光拡散機能を有している。
このスティッキング防止層42は、バインダー43と、このバインダー43中に分散するビーズ44とを備えている。このバインダー43は、上記紫外線吸収層22と同様の組成物(つまり、基材ポリマー及び紫外線吸収剤(及び/又は紫外線安定剤)を含有する組成物若しくは紫外線吸収基(及び/又は紫外線安定基)を有するポリマーを基材ポリマーとする組成物)を架橋硬化させることで形成される。従って、当該光拡散シート41も、スティッキング防止層42が紫外線吸収機能を有しており、バックライトユニットのランプから発せられる微量の紫外線による液晶層の破壊を効果的に防止することができる。なお、このビーズ44及びその配合量等は上記スティッキング防止層32と同様であり、光拡散シート41と導光板等とのスティッキングが防止され、液晶表示装置の画面の輝度ムラが抑えられる。
従って、ランプ、導光板、光拡散シート、プリズムシート等を備え、ランプから発せられる光線を分散させて表面側に導く液晶表示装置用のバックライトユニットにおいて、この光拡散シートとして外縁部に非積層部12を有する光拡散シート11を用いると、バックライトユニットへの組み付けに使用される外縁部に光拡散層が存在しないため、光拡散層が外縁部に存在することに起因するバリやゴミなどの発生を防止することができる。また、当該バックライトユニットにおいて、光拡散シートとして中央部に非積層部4を有する光拡散シート1、21、31及び41を用いると、画面の一部分を透明とし、裏面側に存在する別の表示機構を視認させるよう構成された液晶表示装置に好適に使用することができる。さらに、紫外線吸収機能を有する光拡散シート21、31及び41を用いると、バックライトユニットのランプから発せられる紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができ、特に透明領域を有して液晶層の紫外線破壊のおそれがある特殊な液晶表示装置に好適に使用される。
なお、本発明の光拡散シートは上記実施形態に限定されるものではなく、例えば紫外線吸収層22や紫外線吸収剤を含有するスティッキング防止層42を備えず、又はこれらの手段と共に基材層2中に紫外線吸収剤を含有することも可能であり、同様にバックライトユニットのランプから発せられる紫外線をカットし、紫外線による液晶層の破壊を防止することができる。
また、帯電防止剤に関しては、上記光拡散層3のバインダー5中に含有する手段に替え又は当該手段と共に、帯電防止剤を含有する帯電防止層を積層することも可能であり、スティッキング防止層32、42のバインダー33、43中に帯電防止剤を含有することも可能である。これらの手段によっても、当該光拡散シートに帯電防止効果が発現され、ゴミを吸い寄せたり、プリズムシート等との重ね合わせが困難になる等の静電気の帯電により発生する不都合を防止することができる。
さらに、非積層部の形状及び領域としては、上記形態に限定されず、液晶表示装置の特性に適合させて適宜選択することができる。例えば、光拡散性があまり必要のない領域に網目状(又はその逆の網状)に設けることや、非積層部の境界にグラデーションを設けて境界線をぼやかすことも可能である。