ところで、上述のような樹脂モルタルを用いた塗り床工法において、天然の御影石を用いた舗装方法の舗装層に近い風合いを表現するためには、自然石である黒色系の雲母を骨材として適用する方法などが考え得る。しかし、骨材に雲母を適用した場合は、樹脂と骨材とを混ぜ合わせて樹脂モルタルを作製する際に、骨材の粒子同士がぶつかり合う等して雲母が砕けてしまうことが多かった。これにより、雲母の粉砕片(微粒子)が多く発生してしまい、当該微粒子が樹脂モルタルを黄変させ意匠性を低下させるという問題があった。また、前述の微粒子の発生量を完全にコントロールすることは極めて難しく、樹脂と骨材とを混ぜ合わせる回数や路面温度などによって、施工面の表面に浮上してくる微粒子の量、つまり風合いや色合いに顕著なばらつきを招来しやすいという問題があった。
一方、骨材として、焼成着色された黒色系セラミックスを適用した場合は、セラミックスが比較的硬い素材であるため容易には砕けることが無く、前述の微粒子に起因する黄変や色むらの問題は解決するかに思われる。しかし、人工的に着色されたセラミックスを用いて、天然の御影石の持つ自然な(規則性の無いアトランダムな)模様を再現することは極めて困難であり、単調で人工的な(安っぽい)風合いになりやすいという問題が生じていた。
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、御影石の自然で高級な風合いを表現することができる舗装方法の提供を課題とする。
本発明に係る舗装方法は、「平滑な下地層を形成する下地層塗布工程と、前記下地層の表面に対して目地型枠部材を貼着する目地型枠貼着工程と、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂及び骨材を含有する樹脂モルタルからなる表層材を配合する表層材配合工程と、前記下地層の表面に、前記目地型枠部材の厚みと同じになるように、前記表層材を塗布する表層材塗布工程と、前記表層材の表面が略硬化した状態で、前記目地型枠部材を剥離する目地型枠剥離工程とを具備する舗装方法であって、前記骨材は、粒径が0.7mm以上,1.4mm以下である焼成された白色系セラミックスを主成分とする第一骨材と、粒径が0.3mm以上,0.6mm以下である焼成された白色系セラミックスを主成分とする第二骨材と、粒径が0.6mm以上,1.2mm以下である焼成された黒色系セラミックスを主成分とする第三骨材とからなり、前記骨材中における前記第一骨材の配合比率が30%以上,40%以下、前記第二骨材の配合比率が40%以上,50%以下、前記第三骨材の配合比率が15%以上,25%以下である」ものである。
ここで、「平滑な」とは、施工面上に存在する比較的小さな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面形状を形成する状態を示す。また、「略硬化した状態」とは、表層材が完全に硬化した状態のみならず、硬化途中の過程(所謂半硬化状態)も含む状態である。また、「樹脂モルタル」とは、結合材である樹脂の中に、粒径が5mm以下の骨材を混合し、硬化剤を用いて硬化させるコンクリートの一種である。また、「セラミックス」とは、人工的に作られた無機質固体材料を示し、例えばセルベン、ジルコニア、アルミナ、チタン酸アルミニウム、及びコージェライト等が例示できる。さらに、「白色系セラミックス」及び「黒色系セラミックス」とは、焼成によって着色した所謂カラーセラミックス(カラーサンド)を用いて、白色または黒色を表現したものが例示できる。
従って、本発明の舗装方法によれば、天然の御影石の特徴である黒色の斑点模様を表現する第三骨材は、比較的硬度が高く欠け難いセラミックスを主成分としているため、表層材配合工程において撹拌しても、砕けて微粒子を発生させることが無い。従って、微粒子に起因する樹脂の黄変の問題、すなわち表層材の表面上に微粒子が浮上して光を乱反射させることにより、樹脂が黄変して見えるという問題を回避することが可能となる。また、比較的粒径の大きい白色系セラミックスの第一骨材と、黒色系セラミックスの第三骨材とで天然の御影石の持つアトランダムで自然な斑点模様がリアルに実現可能である。また、第一骨材に含まれる比較的粒径の大きい白色系セラミックスによって、表層材のワーカビリティ(施工性)が低下することが懸念されるが、本発明によれば、第一骨材よりも粒径の小さい第二骨材がさらに配合されているから、施工性の低下を効果的に抑制することが可能となる。
また、本発明の舗装方法によると、施工性の低下が効果的に抑制されており塗布しやすいことから、塗布時間を短縮することができる。さらに、本発明では、MMA樹脂を結合材とする樹脂モルタルを適用しているから、一般的な水和性セメントを用いる場合に比べて硬化に要する時間も短くて済み、施工全体に要する時間を極めて短縮することができる。
本発明の舗装方法によれば、第一骨材、第二骨材、及び第三骨材の配合比率が上記に示した範囲内で設定されている。ここで、第一骨材の配合比率が30%未満であると、表層材の表面にゴツゴツとした白い模様が現れ難くなり、御影石の持つ自然な風合いを再現することが難しくなる。また、第一骨材の配合比率が40%を超えると、ゴツゴツとした第一骨材に鏝などの塗布工具がひっかかりやすくなって樹脂モルタルの施工性が劣化するため、施工時間が長大化すると共に、舗装層表面が大幅に凸凹して歩行性が悪化する。つまり、本発明の範囲内に設定することで、御影石の持つ自然な風合いに近づけつつ施工性の低下を抑制することができる。
一方、第二骨材を配合すると、第一骨材の配合によって低下しがちな樹脂モルタルの施工性を向上させることができる。ここで、第二骨材の配合比率が40%未満であると、施工性、つまり、塗布作業における工具(鏝)の滑りを良くする効果が低くなり、十分な施工性の向上を図る事ができない。また、第二骨材の配合比率が50%を超えると、第一骨材の持つ風合いから遠ざかってしまい、のっぺりとした単調な白の基調となる。つまり、本発明の範囲内に設定することで、第一骨材の配合による施工性の低下を効果的に抑制することができるとともに、御影石の持つ自然な風合いに近づけることができるため効果的である。
第三骨材は、主に表層材の黒色の基調をコントロールするものであり、配合比率が15%未満であると、白くなりすぎて御影石の黒色の斑点模様が目立たなくなる。これに対し、第三骨材の配合比率が25%を超えると、黒味の強い沈んだ風合いとなる。つまり、第一骨材、第二骨材、及び第三骨材の配合比率を本発明の範囲内に設定することで、暗くなりすぎず且つ御影石の自然な黒色の斑点模様を再現した舗装層を提供することができる。
本発明の舗装方法によれば、第一骨材、第二骨材、及び第三骨材の主成分であるセラミックスの粒径が、上記に示した範囲内で設定されている。ここで、第一骨材の主成分であるセラミックスの粒径が0.7mm未満であった場合は、天然の御影石の持つ規則性の無いアトランダムな模様を再現し難くなり、単調でのっぺりとした風合いになる。これに対し、第一骨材の主成分であるセラミックスの粒径が1.4mmを超える場合は、施工性が低下することに加え、仕上がりの舗装層上に凹凸が生じやすく歩行性が低下する恐れがある。つまり、第一骨材の主成分であるセラミックスの粒径を、上記に示した範囲内に設定することで、天然の御影石の持つ規則性の無いアトランダムな模様に近づけつつ歩行性を損なわない舗装層が提供できる。
一方、第二骨材の主成分であるセラミックスの粒径が0.3mm未満であった場合は、粒子が細かすぎるため第二骨材や第三骨材とうまく混ざり合わず、また比重が軽くなりすぎることによりその多くの成分が表層材の表面上に浮いてしまう。これにより、光を乱反射させて樹脂を黄変させる恐れがあり、好適では無い。これに対し、第二骨材の主成分であるセラミックスの粒径が0.6mmを超えた場合は、十分な施工性の向上を図る事ができないため好適ではない。つまり、本発明の範囲内に設定することで、樹脂を黄変させることなく十分な施工性の向上を図る事ができるため好適である。
第三骨材の主成分であるセラミックスの粒径が、上記の範囲に設定されている場合は、第一骨材及び第二骨材との混ざりが良く、且つ天然の御影石の持つ黒色の斑点模様をリアルに再現することができる。つまり、第一骨材、第二骨材、及び第三骨材の粒径を本発明の範囲内に設定することで、天然の御影石の風合いにより近づけることができ、且つ施工性が良好で黄変しない舗装層を提供できる。
ところで、MMA樹脂は、極めて硬化時間が早いという特徴を有する材料である。例えば、塗り床工法に用いられる他の合成樹脂として、水性系エポキシ樹脂が例示できるが、この材料を用いた場合は、歩行可能な程度に硬化するまでに三日〜一週間程度の時間を要する。これに対し、MMA樹脂を適用した場合は、硬化剤を投入してから歩行可能な程度に硬化するまでに要する時間は、約1時間程度である。そして、このような迅速な硬化時間を実現するためには、投入する硬化剤の量は樹脂の質量に対して3%以上である場合が一般的であるとされていた。しかし、明るい白を基調とした舗装層においては、表層材に表面に浮上する硬化剤の色が強調され、樹脂を黄変させることが懸念された。
この問題に鑑み、本発明の舗装方法において、「前記表層材配合工程では、前記樹脂モルタルに硬化剤がさらに配合され、該樹脂モルタルにおける該硬化剤の配合比率が1.0%以上,1.5%以下である」ものとすることができる。
従って、本発明の舗装方法によれば、樹脂モルタルに投入される硬化剤の量が上記の値に設定されている。より詳細には、硬化剤の配合比率が1.0%未満であった場合は、MMA樹脂が硬化せず、舗装層としての使用に耐えない。一方、硬化剤の配合比率が1.5%を超える場合は、硬化後に樹脂を黄変させる可能性が高く、天然の御影石の持つ明るい白の模様を再現できない恐れがある。つまり、硬化剤の配合比率を上記の値に設定することで、樹脂モルタルを十分に硬化させ、且つ意匠性を損なうことの無い舗装層が提供できる。
このように、本発明の舗装方法によれば、骨材に黒色系のセラミックスを適用することにより、樹脂の黄変が無い舗装層が提供できる。また、第一骨材と、第一骨材よりも粒径の小さい第二骨材とを配合することにより、施工性が良好な樹脂モルタルを提供できる。さらに、比較的粒径の大きい第一骨材と、第三骨材とを配合することにより、天然の御影石の持つ自然な風合いをリアルに再現できる舗装層が提供できる。また、施工性が良好なことから、表層材の塗布作業に係る施工時間を短縮できるとともに、表層材をムラ無く均一に塗布することができ、意匠性の高い舗装層を簡易に提供できる。
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図6に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって形成された舗装層を示す斜視図であり、図2は舗装層の断面を模式的に表した断面模式図であり、図3は目地型枠部材の拡大断面図であり、図4は墨出し工程及び目地型枠貼着工程を示す説明図であり、図5は表層材塗布工程を示す説明図であり、図6は目地型枠剥離工程を示す説明図である。
本実施形態の舗装方法によって作成された舗装層1は、図1及び図2に示すように、地面などの施工面2上に碁盤目状に区画形成された複数のタイル模様部3と、複数のタイル模様部3を互いに区分けして目地模様を表現する目地部4とを具備している。タイル模様部3は、より詳細には図2に示すように、下地層5と、目地層6と、表層材7と、保護膜8とを備えている。
下地層5は、施工面2の凹凸を埋め合わせて平滑にするものであり、アスファルトコンクリートやセメントコンクリート等公知のコンクリートが選択可能であるが、本実施形態においては、樹脂モルタルが適用されている。なお、コンクリートとは、結合材と骨材とを主に混合したものである。また、樹脂モルタルとは、結合材として合成樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたコンクリートの一種であり、水及びセメントを結合剤とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。下地層5に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン、及びメチルメタクリレートモノマー(以下、単に「MMA樹脂」と云う)等を主成分とする樹脂が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。
目地層6は、目地部4の色を表現する層に該当し、本実施形態においては樹脂モルタルが適用されている。目地層6に配合されている骨材及び結合材としては、下地層5に例示したものが適用できるが、さらに、目地部4の色を表現するための顔料が配合されている。
表層材7は、タイル模様部3を主に構成する層であり、本実施形態においては、下地層5及び目地層6と同様に樹脂モルタルが適用されている。なお、表層材7に配合されている結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル系樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材7には、さらに、表層材7の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、当該MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
本実施形態における表層材7に配合されている骨材は、白色系セラミックスを主成分とする第一骨材と、第一骨材より粒径が小さい白色系セラミックスを主成分とする第二骨材と、黒色系セラミックスを主成分とする第三骨材とを含有している。第一骨材及び第二骨材の主成分である白色系セラミックスとしては、セルベン、ジルコニア、アルミナ、チタン酸アルミニウム、及びコージェライト等が例示できるが、本例においては特にセルベンを適用している。セルベンとは、食器などの陶磁器廃材を細かく砕いて不純物を取り除いたものであり、焼成によって白色に着色された所謂カラーセラミックスの一種である。なお、第一骨材と第二骨材とは、本例のように同じセラミックス材料を適用しても良いし、別個のセラミックス材料を夫々に適用しても構わない。また、第一骨材の主成分である白色系セラミックスの粒径は、本例では0.7mm以上、1.4mm以下である。一方、第二骨材の主成分である白色系セラミックスの粒径は、0.3mm以上、0.6mm以下である。
第三骨材は、主に表層材7の黒の基調をコントロールするものであり、第一骨材及び第二骨材と同様に、焼成によって着色されたセルベンを主成分とする骨材である。特に、本例では、第三骨材を、黒を表現するための黒色ベース骨材と、補色となる灰色のグレー補色骨材と、同じく補色となるベージュのベージュ補色骨材とを混ぜ合わせることで構成しており、より天然の御影石に近い風合いを実現している。具体的には、黒色ベース骨材を71.5%、グレー補色骨材を23.75%、及びベージュ補色骨材を4.75%の配合比率で混ぜ合わせて構成している。また、主成分である黒色系セラミックスの粒径は、本例では0.6mm以上、1.2mm以下である。
保護膜8は、表面材7の表面及び目地部4を被覆する層であり、透過性を有する樹脂であれば如何なるものであっても良いが、例えばアクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂が例示できる。また、公知の着色剤、紫外線吸収剤、または/及び光安定剤等を添加し、表層材7の紫外線による黄変を防止する構成としても構わない。
一方、本発明の舗装方法では、目地部4を形成する方法として、図3に示すような目地型枠部材9が用いられる。目地型枠部材9は、剥離テープ10と、粘着層11と、発泡層12と、保護テープ13とを具備するものである。剥離テープ10は、ゴミなどが粘着層11に付着して粘着力が低下することを防止するものであり、切断・折り曲げ・剥離作業などを阻害しない程度の柔らかさを持つシート状物質であれば、材質は特に限定されるものではない。粘着層11は、発泡層12を目地層6に対して貼着させて固定するものであり、発泡層12の裏面側に形成されている。材質としては、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等、公知の粘着手段が適用される。
発泡層12は、内部に多数の空隙Kを有し、粘着層11を介して目地層6上に貼着され、表層材7を区画する部材である。材質としては、多数の空隙Kを有するものであれば如何なるものであっても良く、発泡性ポリウレタン系樹脂、発泡性ポリエチレン系樹脂、グラスウール等が例示できる。保護テープ13は、発泡層12の表層側(保護テープ13が貼着されている側)から表層材7などが空隙K内へと浸透し、固着することを防止するものであり、発泡層12の表層側に形成されている。材質としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート(所謂PET)など、比較的薄手で透湿性の低いものが適用される。
なお、剥離テープ10、粘着層11、発泡層12、及び保護テープ13はほぼ等しい表面形状を有している。そして、目地型枠部材9は、厚みが約2mm、幅が約10mmの帯状の物体であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送され、所定の長さに切断され、目地層6上に貼着されることで機能するものである(詳細は後述する)。
続いて、本発明の舗装方法について説明する。本発明の舗装方法は、五つの工程、すなわち、「下地層塗布工程」、「目地型枠貼着工程」、「表層材配合工程」、「表層材塗布工程」、及び「目地型枠剥離工程」に大別することができる。
まず、施工領域を特定し、養生を行う(養生工程)。具体的には、舗装する領域面(以下、「施工面2」とする)を特定し、施工面2上にある塵、ゴミ、埃などを、掃除機などで除去する。施工面2としては、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォーム等が例示できる。そして、施工面2周辺にある既設の舗装層や配置物(ベンチ、自動販売機、ゴミ箱、電柱等)をビニールシートで覆って固定し、以下に続く下地研磨工程において発生する土埃などが配置物等に降りかからないようにする(所謂「養生」をする)。続いて、下地研磨工程では、施工面2表面を公知の研磨機を用いて削り、下地層5が密着しやすいように平坦にする。そして、平坦になった施工面2表面を箒など掃き、削り出された細かい土埃などを施工面2上より取り除く。そして、前述のビニールシートを取り除き、さらに残った細かい汚れ等を公知の集塵機で取り除いて、施工面2を下地層5が塗布可能な状態へと仕上げる。
次に、「下地層塗布工程」では、図2に示すように、平坦になった施工面2に対して、下地層5及び目地層6を形成する。具体的には、まず、施工面2の周囲をビニールシート15で覆い、テープ16などで固定する(再養生工程:図4参照)。そして、MMA樹脂及び骨材を配合して樹脂モルタルを作成し、施工面2上に塗布する。これにより、施工面2上に残存する細かな凹凸が埋め合わされ、平滑な表面形状を有する下地層5が形成される。なお、樹脂モルタルを施工面2上に塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばローラーや刷毛、鏝など適宜の工具を用いる。
続いて、下地層5の表面に、目地層6を形成する(目地層塗布工程)。すなわち、MMA樹脂、顔料、及び骨材を配合して着色された樹脂モルタルを作成し、この樹脂モルタルを下地層5の表面に一様に塗布する。この際、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いて、レベリング(施工する面の水平出し)をすると、より好ましい。目地層6は、後述する「目地型枠剥離工程」において目地型枠部材9が剥離された後に、舗装層1を俯瞰した状態で複数のタイル模様部3間から見える層であり、表層材7の色とは対照的な色を着色することが望ましい。また、顔料を配合せず、自然な色合いをそのまま利用する構成とすることも当然可能である。
次に、「目地型枠貼着工程」では、目地層6の表面に目地型枠部材9(図3参照。以下同じ。)を貼着する。具体的には、まず、公知の測量器やレーザー墨出し装置を用いて、所定の目地模様を形成するための位置だしをする。そして、糸車に収められた細くて丈夫な糸を墨汁に浸し、前述の位置だしに沿って当該目地模様上に糸を配置する。この状態で、糸を爪先で弾くと、目地層6上に糸が衝突して付着していた墨が落ち、目地層6上に目地模様の下書き14(図4参照)が出来上がる。
そして、下書き14に沿って目地型枠部材9を配設する。詳細には図4に示すように、下書き14で示される碁盤目状の目地模様のうち、所定の一方向(以下、縦方向とする)に目地型枠部材9を配置する。そして、粘着層11に貼着されている剥離テープ10を剥がし、粘着層11を下書き14上に押し付けて目地層6上に貼着させていく。そして、施工面2の形状に沿った所定の長さ(例えば、施工面2の表面積が5m×3mであれば、約5m等)で切断する。こうして、縦方向の目地型枠部材9(以下、単に「縦部材」と云う)が配設される。続いて、下書き14で示される碁盤目状の目地模様のうち、縦方向に直交する方向(以下、横方向とする)に目地型枠部材9を配置する。そして、縦方向と同様にして剥離テープ10を剥がし、粘着層11を目地層6上に貼着させる。次に、所定の長さ(前述の例では、約3m)で切断する。横方向の目地型枠部材9(以下、単に「横部材」と云う)が配設される。この際、横部材は、縦部材と交差する部位を切除し、隣接する縦部材の所定の間隔(例えば、300mm角のタイル模様部3を作成する場合であれば、300mm)に切り出しておくと、縦部材と横部材との交差部に隙間ができ難くなるため、より好適である。このようにして、目地層6上に、縦部材と横部材とで碁盤目状の目地模様の目地型枠部材9が配設される。なお、粘着層11から剥離テープ10を剥がす工程と、所定の長さに切断して縦部材または横部材を配設する工程との順番は、上記に限られるものではなく、逆であっても良いし、同時進行であっても良い。
続いて、「表層材配合工程」では、MMA樹脂、ワックス、骨材、及び硬化剤を配合し、MMA樹脂モルタルを作成する。まず、第一骨材、第二骨材、及び第三骨材を用いて本例における骨材を作成する。小型の撹拌装置(公知のミキサー等)の中に、第一骨材を120kg、第二骨材を200kg、及び第三骨材を80kg投入する。第三骨材については、より具体的には、黒色ベース骨材が71.5%、グレー補色骨材が23.75%、及びベージュ補色骨材が4.75%の配合比率に基づいて、黒色ベース骨材を57.2kg、グレー補色骨材を19kg、及びベージュ補色骨材を3.8kg投入する。そして、投入された各種骨材をまんべんなく撹拌し、本例における骨材400kgを作成する。
次に、バケツなどの容器内にMMA樹脂を5kg投入する。そして、当該MMA樹脂の中に、硬化剤75g(MMA樹脂の質量に対して1.5%)を投入する。ここで、投入する硬化剤の量は前述に限定されるものではなく、施工面2の温度及びMMA樹脂の温度に応じて適宜変更可能であるが、本例では、施工面2及びMMA樹脂の温度が25℃の場合を例示している。前記温度の条件下においては、硬化剤の投入量を1.5%とすることで、十分に硬化し且つMMA樹脂が黄変しないため効果的である。なお、施工面2及びMMA樹脂の温度が37℃を超えると、MMA樹脂に含まれるワックスと硬化剤とが化学反応を起し、MMA樹脂と硬化剤との重合反応を阻害する。これにより、MMA樹脂が硬化しなくなるため、施工を中止することが好ましい。
そして、硬化剤の投入されたMMA樹脂の中に、前述で作成した骨材のうち11.2kgを投入すると共に、撹拌する。撹拌時間は、おおよそ45秒〜55秒程度が望ましい。撹拌時間をこれ以下とすると、MMA樹脂と骨材とがまんべんなく混ざり合わず、表層材7の色むらの一因となる。また、撹拌時間を前述以上とすると、撹拌という運動エネルギーを付加することによってMMA樹脂の温度が増大するため、ワックスと硬化剤との化学反応による樹脂の黄変の問題が生じる恐れがある。従って、本例のように、撹拌時間をおおよそ45秒〜55秒程度とすることが望ましい。こうして、表層材7が作成される。なお、必要とされる表層材7がもっと多量である場合は、前述の配合にしたがって逐次追加分を作成していく。
そして、「表層材塗布工程」では、図5に示すように、作成された表層材7を目地層6上に塗布していく。さらに、充填された樹脂モルタルの表面を鏝20などで撫でて平らにしていき、目地型枠部材9の厚みと同じ高さになるように均す。こうして、タイル模様部3を有する表層材7が形成される。ここで、表層材7にはワックスが配合されていることにより、MMA樹脂により比重の軽いワックスが表層材7の表面付近に浮上し、膜を形成する。このため、表層材7の内部が大気の酸素から遮断され、MMA樹脂の重合反応が酸素によって阻害されないため硬化が迅速に進行する。
そして、表層材7の表面H(図2参照。以下同じ)が乾燥するまで待機する。なお、施工時間を短縮するために、公知の乾燥手段、例えばドライヤーなどを用いて表面Hを乾燥させても良いが、本実施形態の表層材7には結合材としてMMA樹脂が適用され、さらにMMA樹脂の硬化を促進させる硬化促進剤が添加されている。また、前述のワックスの膜がMMA樹脂の硬化を促進することにより、特段の手段を用いずとも迅速に硬化反応が進行する。ここで、「表面H」が、本発明の「表層材の表面」に該当する。
表面Hが乾燥した段階で、目地型枠部材9を目地層6上より剥離する(「目地型枠剥離工程」)。より詳細には、図6に示すように、タイル模様部3の隙間から目地型枠部材9を抉り出し、目地層6の表面から剥離していく。ここで、表層材7に配合されているワックスは、MMA樹脂より比重が軽いため表層材7の表面H付近に集中的に膜を形成し、目地部4には膜を形成し難い。また、発泡層12の空隙Kに含まれる酸素によって、発泡層12と接触している部位(すなわち目地部4)の表層材7の重合反応が阻害され、比較的硬化し難い状態となっている。従って、目地部4の表層材7と発泡層12とが固着し難く、目地型枠部材9を極めてスムーズに剥離することが可能である。なお、表層材8の表面Hのみが硬化し、目地部4に位置する端面部は柔らかい前述した状態が、本発明の「略硬化した状態」に該当する。
そして、目地部4に付着した表層材7のバリや、表面Hに付着したゴミをスクレイパー等で取り除き、箒で施工面2外へと掃き出す。そして、テープ16及びビニールシート15を除去する(表層材ケレン工程、養生除去工程)。
次に、保護膜塗布工程では、表層材7の表面H及び目地部4(図2参照)に保護膜8を塗布する。詳細には、まず、保護膜8を、施工面2の表面積に応じて小分けする。例えば、施工面2の表面積が約100m2の場合は、保護膜8の塗布領域を30m2毎に区分けし(30m2×3+10m2)、当該塗布領域を被膜するのに十分な量の保護膜8を其々小分けして作成する。保護膜8を塗布する際、ローラー、刷毛、鏝、スプレーガンなど適宜の工具を利用するが、これら工具に付着した保護膜8の量が変化することにより、一回の塗り初めから塗り終わりまでに、保護膜8の膜厚が変化することが懸念される。これにより、表層材7の色の見え方が変化して色むらの原因になる恐れがあるが、本例のように、保護膜8を小分けしてこまめに塗布していくことにより、一回の塗り初めから塗り終わりまでに生じる保護膜8の膜厚変化を小さくすることができ、色むらの無い舗装層1が提供できる。
ところで、前述の舗装方法において、骨材の最適な粒径及び配合比率を例示したが、以下に、その根拠となる実験結果を示す。表1は、第一骨材の粒径の対応表であり、表2は本実験結果の一例である。
本発明の実施形態における表層材2の骨材の最適な配合比率及び粒径を決定するために、以下の条件で実験を行った。すなわち、従来例や他の実験例を参考にして、所定の配合比率を設定する。次に、当該配合比率に基づいて、全体(第一骨材+第二骨材+第三骨材)の重量が400kgとなるように、各骨材の投入量を決定する。そして、小型の撹拌装置(公知のミキサー等)の中に、前記投入量に基づいた量の第二骨材、第一骨材、第三骨材を前述の順に投入していき、全体が良く混ざり合うまで撹拌する。こうして作成された骨材と、樹脂及び硬化剤とを混合して樹脂モルタルを作成し、所定の舗装面に塗布して(以下、「塗布実験」と云う)、施工性と意匠性とを評価する。ここで、「施工性」とは、当該樹脂モルタルの塗りやすさを示し、「意匠性」とは、天然の御影石の持つ色合いや風合い(天然の御影石の斑点模様に似ているか否か)を評価した結果を示す。
まず、実験1では、従来例(例えば、特願2005−105792号)を参考にして、舗装層1の主たる黒の基調を決定する第三骨材の配合比率を、骨材全体の質量の20%とした。そして、第一骨材Aと第二骨材とを等分に設定(40%づつ)し、塗布実験を行った。その結果、意匠性は従来例と遜色ないものの、施工性が極めて悪く、改良が必要であると判断した(表2参照)。
上記を踏まえ、実験2では、第一骨材Aの最適な配合比率を探るべく、第一骨材Aの配合比率を増大させ、第二骨材の配合比率を減少させて塗布実験を行った。その結果、意匠性については特に大きな変化は見られないものの、施工性はさらに悪化し、さらなる改良が必要であると判断した(表2参照)。
実験1及び実験2より、第一骨材Aの配合比率を増大させると施工性が悪化するという示唆が得られたため、この事実を確認するべく、実験3では、第一骨材Aの配合比率を実験2よりさらに増大させると共に第二骨材の配合比率を減少させ、塗布実験を行った。その結果、施工性がさらに悪化したことに加え、第一骨材Aの持つ凹凸が表層材の表面にまで突出し、舗装面がでこぼことして歩行性が悪化した。従って、施工性を改善するために、第一骨材Aの配合比率を減少させ、第二骨材の配合比率を増大させるべきであるとの結論に達した(表2参照)。
そこで、実験4では、実験1よりも第一骨材Aの配合比率を減少させ、第二骨材の配合比率を増大させて塗布実験を行った。その結果、施工性は大きく改善されたものの、第一骨材Aの持つゴツゴツとした質感が損なわれ、第二骨材の持つのっぺりとした人工的な印象の白色が強く現れる結果となり、意匠性の改善が必要であると判断した(表2参照)。
実験5では、上記を踏まえ、施工性の改善に寄与する第二骨材の配合比率を維持しつつ、且つ天然の御影石の持つ風合いに近づける方法を模索した。その結果、第一骨材Aよりも粒径の大きい第二骨材B(表1参照)を適用することで、第二骨材の持つのっぺりとした印象を払拭できるのでないかとの推測を立て、実験5に係る塗布実験を行った。その結果、実験4における良好な施工性が損なわれないことが確認できた。また、第一骨材Bの持つゴツゴツとした質感と第三骨材の黒色とのコントラストによって、天然の御影石に極めて近い斑点模様を実現できることも確認できた。こうして、第一骨材と第二骨材との配合比率、及び第一骨材の粒径の最適な値が決定された(表2参照)。
次に、第三骨材の配合比率を探るべく、幾つかの塗布実験を行った。詳細には、図示は省略するが、第一骨材Bの配合比率を固定させ、第二骨材及び第三骨材との配合比率を増減させ、施工性及び意匠性の評価を行った。さらに、第二骨材の配合比率を固定した状態で、第一骨材B及び第三骨材との配合比率を増減させ、施工性及び意匠性の評価を行った。その結果、骨材中における第一骨材Bの配合比率が30%以上、40%以下、第二骨材の配合比率が40%以上、50%以下、第三骨材の配合比率が15%以上、25%以下と設定すると、良好な施工性と意匠性とを両立できるとの結論に達した。また、各骨材の粒径は、第一骨材が0.7mm以上、1.4mm以下、第二骨材が0.3mm以上、0.6mm以下、第三骨材が0.6mm以上、1.2mm以下が良好であるとの実証も得た。
以上のように、本例の舗装方法によれば、天然の御影石の持つ白黒の斑点模様のうち、白色を再現する骨材として、第一骨材及び第二骨材の少なくとも二種類の骨材を適用している。従って、第一骨材によって良好な意匠性(再現性)を実現しつつ、且つ第二骨材によって施工性の悪化を効果的に低減することができる。特に、第一骨材及び第二骨材の配合比率を、第一骨材が30%以上、40%以下、第二骨材の配合比率を40%以上、50%以下とし、粒径を、第一骨材が0.7mm以上、1.4mm以下、第二骨材が0.3mm以上、0.6mm以下とした場合は、極めて優れた施工性と、天然の御影石に近い風合いとを実現することができる。また、人工トナーのような着色料を添加することなく、骨材の持つ色合いのみで白色を表現していることから、より天然の御影石に近い自然な風合いを実現できる。
また、御影石の黒色斑点模様を再現する骨材として、比較的硬い黒色系のカラーセラミックスを適用しているから、表層材7の配合(撹拌作業)時に砕けて微粒子を発生させる恐れがなく、樹脂モルタルの黄変にかかる問題を回避することが可能である。さらに、第三骨材の配合比率を15%以上、25%以下と設定し、且つ粒径を0.6mm以上、1.2mm以下とした場合は、樹脂モルタルの黄変の問題を回避しつつ、明るい白色系の舗装層1を提供できるため、好適である。
また、本例の舗装方法によれば、硬化剤の配合比率がMMA樹脂の質量に対して1.0%以上、1.5%以下に設定されているため、MMA樹脂の黄変を防ぎ、且つ十分な硬化性を得ることができる。さらに、本例の保護膜8には、紫外線吸収剤が配合されているため、表層材7が強烈な紫外線に晒され難く、より黄変し難い舗装層1を提供できる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、MMA樹脂、骨材、及び硬化剤を配合することによって作成される表層材7を例示したが、この方法に限定されるものではなく、さらに公知の揺変剤を配合する表層材7としても良い。ここで、揺変剤とは、所謂垂れ止め剤であり、目地型枠剥離工程において目地型枠部材9を剥離した際の、表層材7の型崩れを防止する機能を有する。揺変剤としては、例えばケミベストのような、化学繊維を細かく砕いたものなどが例示できる。ただし、揺変剤を配合すると、表層材7の施工性が悪化するため、本例のように、MMA樹脂、骨材、及び硬化剤のみを配合するとより施工がスムーズで好適である。
また、上記実施形態では、目地型枠貼着工程の後に表層材配合工程を行うものを例示したが、この方法に限定されるものではなく、目地型枠貼着工程と表層材配合工程とを同時に行うものであっても構わない。但し、一般的に、MMA樹脂の可使用時間は15分程度と極めて短いため、表層材配合工程が終了した段階で、少なくとも目地型枠部材9の貼着が終了していることが望ましい。
また、上記実施形態では、明るい白色系の御影石の風合いを再現する配合比率として、上記の値に設定する場合を例示したが、少なくとも第一骨材、第二骨材、及び第三骨材を使用するものであれば、これ以外の配合比率も当然可能である。例えば、第一骨材の配合比率を20%、第二骨材の配合比率を30%、及び第三骨材の配合比率を50%とすると、比較的落ち着いた黒味の強い舗装層1が提供できる。
さらに、上記実施形態では、棒状の目地型枠部材9を用いて碁盤目状の目地模様を形成する場合を例示したが、この方法に限定されるものではない。すなわち、予め格子状に組み立てられた別途の型枠部材を用いても良いし、碁盤目状ではなく、他の幾何学模様を表現する目地型枠部材を用いても良い。また、目地部4を具備しない、平坦な舗装層1にも当然適用が可能である。但し、本例のように、碁盤目状の目地部4を有する舗装層1とすると、目地部4を伝って水が流れるため水捌けが良く、駅のプラットフォームや公園の広場などにも好適に使用され得る。さらに、棒状の目地型枠部材9を用いることによって、施工面2の湾曲や傾斜の形状に応じて自由に目地模様を変更できるため、比較的簡易に意匠性の高い舗装層1を提供できる。