以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図7に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって舗装された駅のプラットホームを示す斜視図であり、図2は舗装層の一部を拡大した断面図であり、図3は目地型枠部材を含む舗装層の一部を示した拡大断面図であり、図4は下地層形成工程から墨出し工程までを示す説明図であり、図5は目地型枠配置工程を示す説明であり、図6は養生被覆工程を示す説明図であり、図7は第一養生除去工程から第二養生除去工程を示した説明図である。
本例の舗装方法によって舗装された駅のプラットホーム1(以下、単に「ホーム1」と云う)は、主に図1に示すように、基盤層2の表面上に区画形成された複数の舗装層3とを具備して構成されている。舗装層3は、点字ブロック4や、列車乗降口に対する高さ基準点としての笠石5などが敷設されていない部分の床面を舗装するものであり、複数の横目地6と、横目地6に対して略垂直な方向に形成された縦目地7とで碁盤目状に区画されている。なお、説明の便宜上、ホーム1の長尺方向Xに平行な方向を横方向(横目地6)、これに垂直な方向Yを縦方向(縦目地7)としている。
舗装層3は、図2の断面図に示すように、下地層8と、目地層9と、表層材10と、保護層11とを備えている。下地層8は、基盤層2上の凹凸を埋め合わせて平滑にするものであり、アスファルトコンクリートやセメントコンクリート等公知のコンクリートが選択可能であるが、本実施形態においては、樹脂モルタルが適用されている。なお、コンクリートとは、結合材と骨材とを主に混合したものである。また、樹脂モルタルとは、結合材として合成樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたコンクリートの一種であり、水及びセメントを結合材とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。下地層8に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン、及びメチルメタクリレートモノマー(以下、単に「MMA樹脂」と云う)等を主成分とする樹脂が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウム、及び雲母が例示できる。
目地層9は、横目地6及び縦目地7(以下、単に「目地部」と云う)の色を表現する層に該当し、本実施形態においては樹脂モルタルが適用されている。目地層9に配合されている骨材及び結合材としては、下地層8に例示したものが適用できるが、さらに、目地部の色を表現するための顔料が配合されている。
表層材10は、舗装層3を主に構成する層であり、本実施形態においては、下地層8及び目地層9と同様に樹脂モルタルが適用されている。なお、表層材10に配合されている結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル系樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材10には、さらに、表層材10の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、当該MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材10には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
本例における表層材10に配合されている骨材としては、下地層8または目地層9と同様のものが例示できるが、本実施形態においては、粉末状のセルベンを特に配合している。セルベンとは、食器などの陶磁器廃材を細かく砕いて不純物を取り除いたものであり、焼成によって白色に着色された所謂カラーセラミックスの一種である。このように、白色系のセラミックスを骨材に適用することで、樹脂の黄変などが起き難く、且つ天然石の白色御影石によく似た高級感のある風合いを再現することができる。また、白色系セラミックスに加え、黒色系のセラミックスを添加することによって、表層材10の色味(グレースケール)を自由に変更することができる。
保護層11は、表層材10の表面及び目地部を被覆する層であり、下地層8、目地層9、及び表層材10と同様に、MMA樹脂を結合材とするMMA樹脂モルタルが適用されている。なお、本例の保護層11は透過性を有しており、表層材10の表面に、奥行きのある高級な質感を付与している。また、保護層11には、紫外線による表層材10の変質・劣化を低減するための紫外線吸収剤がさらに配合されている。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、二酸化チタン、及び酸化亜鉛等が例示でき、紫外線を吸収(または遮蔽)する機能を有するものであれば、特に限定されるものではない。
一方、本実施形態の舗装方法では、目地部を形成する方法として、第一部材13及び第二部材14から構成される目地型枠部材12が用いられる。目地型枠部材12は、図3(a)及び(b)に示すように、剥離テープ15と、粘着層16と、発泡層17と、保護テープ18とを具備している。剥離テープ15は、ゴミなどが粘着層16に付着して粘着力が低下することを防止するものであり、切断・折り曲げ・剥離作業などを阻害しない程度の柔らかさを持つシート状物質であれば、材質は特に限定されるものではない。粘着層16は、発泡層17を目地層9に対して貼着させて固定するものであり、発泡層17の裏面側に形成されている。材質としては、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等、公知の粘着手段が適用される。
発泡層17は、内部に多数の空隙を有し、粘着層16を介して目地層9上に貼着され、表層材10を区画する部材である。材質としては、多数の空隙を有するものであれば如何なるものであっても良く、発泡性ポリウレタン系樹脂、発泡性ポリエチレン系樹脂、グラスウール等が例示できる。保護テープ18は、発泡層17の表層側(保護テープ18が貼着されている側)から表層材10などが空隙内へと浸透し、固着することを防止するものであり、発泡層17の表層側に形成されている。材質としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート(所謂PET)など、比較的薄手で透湿性の低いものが適用される。なお、剥離テープ15、粘着層16、発泡層17、及び保護テープ18はほぼ等しい表面形状を有している。
第一部材13は、図3(a)に示すように、厚みが約2mm、幅が約10mmの棒状の目地型枠部材12であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送され、所定の長さに切断される。そして、目地層9上に貼着されることで機能するものである(詳細は後述する)。なお、第一部材13の厚みとしては、この数値に限定されるものでは無いが、舗装層3に必要とされる厚み(主に表層材10の厚み)と略等しくなるよう選定される。また、第一部材13の幅は、縦目地6または横目地7に必要とされる幅と略等しくなるよう選定される。
第二部材14は、図3(b)に示すように、厚みが約1.5mm、幅が約10mmの棒状の目地型枠部材12であり、第一部材13と同様に、適宜の長さのものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送され、所定の長さに切断される。そして、目地層9上に貼着されることで機能するものである。なお、第二部材14の厚みとしては、この数値に限定されるものでは無いが、少なくとも第一部材13よりは薄手に構成されている。具体的には、詳細は後述する第三養生部材23の厚み分だけ第一部材13の厚みより薄く(第一部材13:2.0mm、第三養生部材23:0.5mm)、約1.5mm程度の厚みで構成されている。第二部材14の幅は、第一部材13と略等しく構成されている。
また、本発明の舗装方法では、非塗布領域25(詳細は後述する。以下同じ)を被覆する部材として、図6に示すような養生部材19を使用している。養生部材19は、全体として薄手で可撓性を有するシート状物質であり、非塗布領域25に固定するための粘着物質を裏面に具備して構成されている。より具体的には、第一養生部材A20及び第一養生部材B21と、第二養生部材22と、第三養生部材23とを具備して構成されている。ここで、「第一養生部材A20」及び「第一養生部材B21」が、本発明の第一養生部材に該当する。
第一養生部材A20及び第一養生部材B21は、主に後述する表層材塗布工程において発生した余剰分の樹脂モルタル(余剰物K1:図7(a)参照)による汚染から塗布領域24を保護するものであり、シート状の合成樹脂シートや布、紙等から構成されている。第一養生部材A20及び第一養生部材B21は、詳細には図6(c),(d)に示すように、幅(ホーム1の長尺方向X側の長さ)が約1m、長さ(方向Y側の長さ)がホーム幅と略等しい5m程度の大きさであり、幅方向に対向する端部側の裏面に、夫々粘着物質26a、26bが具備されている。
第二養生部材22は、主に目地型枠除去工程及び表層材ケレン工程(共に後述する)において発生する余剰物K2(図7(c)参照)による汚染から非塗布領域25を保護する部材であり、シート状の合成樹脂シートや布、紙等から構成されている。第二養生部材22の形状としては、余剰物K2による非塗布領域25の汚染を保護できるものであれば特に限定されるものではないが、本例においては、非塗布領域25、点字ブロック4、及びその周辺の舗装層をくまなく被覆できるように、図6(b)に示すような多角形状の養生部材19を適用している。また、図示は省略したが、裏面には一部(または全部)に粘着物質が具備されており、非塗布領域25の表面に対して接着して固定できるよう構成されている。
第三養生部材23は、主に第二部材14の表面に貼着することで、第二部材14を目地層9上に強固に固定する働きを有する部材であり、例えば公知の布テープのような、比較的幅が狭く強力な粘着力を有する部材で構成されている。具体的には図6(a)及び図7(a)に示すように、第二部材14よりも多少広い幅(20mm程度)を有する部材であり、裏面には、目地型枠部材12が目地層9上に固定される力よりも強い粘着力を有する粘着物質が具備されている。
続いて、本発明の舗装方法について説明する。本発明の舗装方法は、八つの工程、すなわち、「目地層形成工程」、「目地型枠配置工程」、「養生被覆工程」、「表層材塗布工程」、「第一養生除去工程」、「目地型枠除去工程」、「表層材ケレン工程」、及び「第二養生除去工程」に大別することができる。
まず、施工領域を特定し、養生を行う(下地養生工程)。具体的には、舗装する基盤層2を特定し、基盤層2上にある塵、ゴミ、埃などを、掃除機などで除去する。基盤層2としては、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォーム等が挙げられるが、本例では特に駅のプラットホーム(ホーム1)を例示している。そして、基盤層2周辺にある既設の舗装層や配置物(ベンチ、自動販売機、ゴミ箱、電柱等)をビニールシートで覆って固定し、以下に続く下地研磨工程において発生する土埃などが配置物等に降りかからないようにする。続いて、下地研磨工程では、基盤層2表面を公知の研磨機を用いて削り、下地層8が密着しやすいように平坦にする。そして、平坦になった基盤層2表面を箒など掃き、削り出された細かい土埃などを基盤層2上より取り除く。そして、前述のビニールシートを取り除き、さらに残った細かい汚れ等を公知の集塵機で取り除いて、基盤層2を下地層8が塗布可能な状態へと仕上げる。
次に、図4に示すように、平坦になった基盤層2に対して、下地層8及び目地層9を形成する(下地層形成工程)。具体的には、まず、基盤層2の周囲(点字ブロック4及び笠石5を含む)をビニールシート等で覆い、テープで固定する(下地再養生工程:図略)。そして、MMA樹脂及び骨材を配合して樹脂モルタルを作成し、基盤層2上に塗布する。これにより、基盤層2上に残存する細かな凹凸が埋め合わされ、平滑な表面形状を有する下地層8が形成される。なお、樹脂モルタルを基盤層2上に塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばローラーや刷毛、鏝など適宜の工具を用いる。また、本例では、既設の舗装面(基盤層2)の表面を削り、樹脂モルタルで下地層8を形成する場合を例示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、下地層8を形成しないものであっても良いし、下地層8の表面に、さらに別途の中間層を形成するものであっても良い。
続いて、「目地層形成工程」では、下地層8の表面に、目地層9を形成する。すなわち、MMA樹脂、顔料、及び骨材を配合して着色された樹脂モルタルを作成し、この樹脂モルタルを下地層8の表面に一様に塗布する。この際、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いて、レベリング(施工する面の水平出し)をすると、より好ましい。目地層9は、後述する「目地型枠剥離工程」において目地型枠部材12が剥離された後に、舗装層3を俯瞰した状態で目地部から見える層であり、表層材10の色とは対照的な色(例えば、表層材10が白ベースであれば、黒色や茶色等)に着色することが望ましい。また、顔料を配合せず、自然な色合いをそのまま利用する構成とすることも当然可能である。
次に、目地層9の表面に、目地型枠部材12(図3等参照)を配置する位置だしラインを描画する(墨出し工程)。具体的には、まず、公知の測量器やレーザー墨出し装置を用いて、所定の目地模様を形成するための位置だしをする。そして、糸車に収められた細くて丈夫な糸を墨汁に浸し、前述の位置だしに沿って当該目地模様状に糸を配置する。この状態で、糸を爪先で弾くと、目地層9上に糸が衝突して付着していた墨が落ち、目地層9上に図4に示すような所望の目地模様の下書き27が出来上がる。
そして、「第一目地型枠配置工程」では、塗布領域24(後述する)の目地層9上に描かれた下書き27に沿って、目地型枠部材12を配設する。詳細には図5に示すように、下書き27で示される碁盤目状の目地模様のうち、ホーム1の長尺方向X(図1参照)に垂直な方向Yに沿って、縦目地7(図1参照)を形成する目地型枠部材12を配置する。具体的には、粘着層16に貼着されている剥離テープ15を剥がし、粘着層16を下書き27に沿って押し付けて、目地層9上に貼着させていく(剥離テープ15、粘着層16、及び発泡層17に関しては図3参照。以下同じ)。続いて、後述する表層材塗布工程において、表層材10を塗布する塗布領域24の形状に沿った所定の長さ(例えば、塗布領域20の表面積が5m×1.2mであれば、約5m等)で切断する。この時、塗布領域24と非塗布領域25(表層材塗布工程において、表層材10を塗布しない領域)との境界部に位置する方向Yの下書き27上には、第二部材14を配置し、それ以外の方向Y上の下書き27上には、第一部材13を配置する。こうして、縦目地7を形成する目地型枠部材12(以下、単に「縦目地部材」と云う)が配置される。
そして、同様にして、ホーム1の長尺方向Xの下書き27上に、横目地6を形成する第一部材13を配置する。そして、施工領域20の形状に沿って、所定の長さ(前述の例では1.2m)で切断する。さらに、縦目地部材との重複部をカッターなどで切除し、目地層9上に隙間無く貼着させる。こうして、横目地6を形成する第一部材13(以下、単に「横目地部材」と云う)が配置される。ここで、横目地部材には、目地型枠部材12のうち第一部材13が適用されているため、横目地部材と、縦目地部材のうちの第二部材14との間には、一点鎖線円部に拡大して示すような段差部が形成されている。
次に、「養生被覆工程」に移行する。養生被覆工程では、まず、図6(a)に示すように、塗布領域24と非塗布領域25との境界部、すなわち第二部材14の主に表面に、第三養生部材23を貼着させる。そして、図6(b)に示すように、非塗布領域25、点字ブロック4及びその周辺部を第二養生部材22でくまなく被覆する。この時、第二養生部材22の端面は、図7(a)に示すように、第三養生部材23の端面に重複しないように配置する。ここで、第二養生部材22と第三養生部材23との端面が、互いに重複しないように配置された状態が、本発明の「平面視にて重複しないよう配設」された状態に該当する。なお、本例においては、図6に示すように、塗布領域24と非塗布領域25とを4マス毎(ホーム1の長尺方向Xに対して)に交互に配置している。
続いて、第一養生部材A20の、粘着物質26aが付着している側の端面を、塗布領域24と非塗布領域25との境界部付近に沿って貼着させていく。第一養生部材A20の配設位置としては、当該境界部付近であれば特に限定されるものではなく、第二部材14の表面であっても良いし、図7(a)に示すように第三養生部材23の表面のみに配設されても良い。但し、少なくとも第三養生部材23に対して重複する位置であり、且つ塗布領域24にかからない(塗布領域24を被覆しない)位置であると、より好ましい。何故ならば、第三養生部材23に対して重複しない位置に配設すると、第二養生部材22と第三養生部材23との隙間より樹脂モルタルが侵入し、塗布領域24の表面を汚染する虞が生じるからである。また、塗布領域24にかかるまで被覆させると、表層材塗布工程において第一養生部材A20(または第一養生部材B21)が邪魔になって表層材10が所望の形で形成できない虞が生じる。従って、本例のように配設することがより好ましい。
ところで、第一養生部材A20は、幅が約1m程度で構成されている。ここで、目地型枠部材12によって形成された本例の目地模様は、碁盤目状の一マスが約300mm程度で構成されており、塗布領域24と非塗布領域25とは、約4マス毎(ホーム1の長尺方向Xに対して)に交互に形成されている。つまり、上述のように、第一養生部材A20の一端側を、塗布領域24と非塗布領域25との境界部付近に沿って貼着させていくと、図6(d)に示すように、これに対抗する他端側が200mm程度被覆されない状態で残される((4マス1200mm)−(第一養生部材A20の幅1000mm))。このような状態で、当該他端側の、塗布領域24と非塗布領域25との境界部付近に沿って、第一養生部材B21の粘着物質26bを貼着させ配設していく。これにより、非塗布領域25の表面が、第一養生部材A20及び第一養生部材B21によってくまなく被覆される。なお、第一養生部材B21の配設位置、特に粘着物質26b側の端面の配設位置は、図7(a)の一点鎖線円部に示すように、第一養生部材A20の配設位置に倣ったものとする。こうして、「養生被覆工程」が完成する。
次に、MMA樹脂、ワックス、骨材、及び硬化剤を配合し、MMA樹脂モルタルを作成する(表層材配合工程)。まず、小型の撹拌装置(公知のミキサー等)の中に、白色系カラーセラミックスを320kg、及び黒色系カラーセラミックスを80kg投入する。黒色系カラーセラミックスについては、より具体的には、黒色ベース骨材が71.5%、グレー補色骨材が23.75%、及びベージュ補色骨材が4.75%の配合比率に基づいて、黒色ベース骨材を57.2kg、グレー補色骨材を19kg、及びベージュ補色骨材を3.8kg投入する。そして、投入された各種骨材をまんべんなく撹拌し、本例における骨材400kgを作成する。
次に、バケツなどの容器内にMMA樹脂を5kg投入する。そして、当該MMA樹脂の中に、硬化剤75g(MMA樹脂の質量に対して1.5%)を投入する。ここで、投入する硬化剤の量は前述に限定されるものではなく、基盤層2の温度及びMMA樹脂の温度に応じて適宜変更可能である。そして、硬化剤の投入されたMMA樹脂の中に、前述で作成した骨材のうち11.2kgを投入し、撹拌する。撹拌時間は、おおよそ45秒〜55秒程度が望ましい。こうして、表層材10が作成される。なお、必要とされる表層材10がもっと多量である場合は、前述の配合にしたがって逐次追加分を作成していく。
そして、「第一表層材塗布工程」では、作成された表層材10を目地層9上に塗布していく。さらに、縦目地部材と横目地部材とで構成されるマス目内に充填された表層材10の表面を、塗布領域24の中央部から周縁部(つまり非塗布領域25の方)に向かって鏝などの適宜の工具で撫でて押し延べていき、第一部材13の厚みと同じ高さになるように均す。ここで、塗布領域24と非塗布領域25との境界部(第二部材14の配設付近)には、中央部から押し延べられた余剰分の樹脂モルタルが集まってくる。また、作業者が樹脂モルタルを押し延べる力も加わるので、第一部材13の端面よりも比較的強い力が第二部材14の端面に加えられる。しかし、本例によれば、強い粘着力を有する第三養生部材23によって第二部材14が固定されているため、余剰分の樹脂モルタルが押し付けられたとしても、第二部材14の配設位置が動くことが無い。すなわち、所望の目地模様が美しく形成された表層材10が提供できる。また、塗布領域21と非塗布領域22との境界部には、第一部材13よりも厚みの薄い第二部材14が配設されているが、前述したように、第二部材14の表面に第三養生部材23が重ね合わされているため、これら部材の厚みが重畳されて、第一部材13の厚みと略等しくなっている。従って、第一部材13及び第二部材14の表面側を擦るように均していく事で、自然と第一部材13の厚みと略等しい、均一な表面高さを持つ表層材10が形成できる。
そして、表層材10の表面が乾燥するまで待機する。なお、施工時間を短縮するために、公知の乾燥手段、例えばドライヤーなどを用いて表面を乾燥させても良いが、本実施形態の表層材10には結合材としてMMA樹脂が適用され、さらにMMA樹脂の硬化を促進させる硬化促進剤が添加されている。また、前述のワックスの膜がMMA樹脂の硬化を促進することにより、特段の手段を用いずとも迅速に硬化反応が進行する。
次に、「第一養生除去工程」に移行する。第一養生除去工程では、図7(a),(b)に示すように、第一表層材塗布工程の際に飛散した余剰分の樹脂モルタルや、埃やゴミなどの余剰物K1によって汚染された第一養生部材A20及び第一養生部材B21を、非塗布領域25より除去する。このとき、第一養生部材A20及び第一養生部材B21は、一端側は粘着物質26a及び粘着物質26bによって固定されているものの、これに対向する他端側は特段固定されていない。従って、当該固定されていない他端側より第一養生部材A20(または第一養生部材B21)を丸めていき、最後に固定されている側(粘着物資26a,26b側)を非塗布領域25より剥離して除去すると良い。
続いて、「第一目地型枠除去工程」に移行する。図7(c)に示すように、第三養生部材23を表層材10上より剥がし取り、第二部材14を目地層9上より除去する。また、目地部より第一部材13を抉り出し、目地層9上より除去する。この時、目地型枠部材12の切片などの余剰物K2が発生し、塗布領域24や非塗布領域25上に飛散する場合が考え得る。しかし、少なくとも非塗布領域25上に飛散した余剰物K2は、第二養生部材22上に堆積するのみであり、非塗布領域25の表層材10の表面を汚染することが無い。
次に、「第一表層材ケレン工程」に移行する。本工程では、図7(d)に示すように、塗布領域24の表層材10表面に堆積した余剰物K2や、目地部に残存した目地型枠部材12の切片などのゴミ(余剰物K2)を夫々の表面から削り出し、第二養生部材22の表面上に集塵する。削り出す方法としては、公知のグラインダーや研削器などの電動工具、またはノミやスクレイパーなどの手動工具などを用いて表層材10上及び目地部の目地層9上に付着した余剰物K2をこそぎ落とす方法などが採用される。こうして、表層材10
及び目地部の目地層10上を滑らかで平滑な状態にする。そして、こそぎ落とした余剰物K2を、小型の箒などで掃き出して第二養生部材22上に集塵する。
続いて、「第二養生除去工程」では、図7(d)及び図7(e)に示すように、第二養生部材22を塗布領域24より除去する。そして、表層材10の表面及び目地部に保護層12を塗布し、乾燥させる(第一保護層形成工程)。このようにして、塗布領域24の舗装層3が完成する。
続いて、「第一目地型枠配置工程」〜「第一保護層形成工程」において、非塗布領域25であった部位に、舗装層3を形成する。具体的には、上述までの工程において塗布領域24であった部位を非塗布領域25とし(つまり、塗布領域24と非塗布領域25とを入れ替えて)、「第二目地型枠配置工程」、「養生被覆工程」、「第二表層材塗布工程」、「第一養生除去工程」、「第二目地型枠除去工程」、「第二表層材ケレン工程」、「第二養生除去工程」、及び「第二保護層形成工程」を行う。なお、「第二目地型枠配置工程」、「第二表層材塗布工程」、「第二目地型枠除去工程」、「第二表層材ケレン工程」、及び「第二保護層形成工程」に関しては、「第一目地型枠配置工程」、「第一表層材塗布工程」、「第一目地型枠除去工程」、「第一表層材ケレン工程」、及び「第一保護層形成工程」に夫々準ずるため説明を簡略化する。このようにして、全ての舗装層3が完成する。
このように、本例の舗装方法によれば、第一養生部材A20、第一養生部材B21、第二養生部材22、及び第三養生部材23から構成される複数枚の養生部材19を用いる方法であるため、表層材塗布工程と目地型枠除去工程との間に養生被覆工程を行う必要がない。従って、表層材10と目地型枠部材12とが固着する前に、迅速に目地型枠除去工程を進めることができ、より完成度の高い舗装層3を提供できる。また、迅速に表層材ケレン工程に移行できることから、表層材10と余剰物K1,K2とが固着する虞も少なく、施工のやり直しが発生し難い経済的な舗装方法を提供できる。さらに、表層材塗布工程と目地型枠除去工程との間ではなく、表層材を塗布する前に養生被覆工程を行うことから、表層材ケレン作業と養生被覆作業とを並行して行うような必要がなく、比較的少人数でも完成度の高い舗装層3を形成できるため、より効率的で経済的な舗装方法を提供できる。
また、本例の舗装方法によれば、第一養生部材を第一養生部材A20と第一養生部材B21との二枚で構成している。そして、夫々の大きさを、塗布領域24の幅1200mmよりも狭い1000mm(約1m)で構成している。これにより、より作業性に優れる舗装方法が実現できる。この点を簡単に説明する。例えば、幅1200mmの第一養生部材を一枚構成で適用した場合を考える。この場合、表層材10が塗布領域24表面に飛散しないように、幅方向の両端側(図6の粘着物質26a,26bの配設位置)を固定する必要が生じる。そこで、採り得る方法としては、第一養生部材を幅方向にピンと張り、当該両端側を同時に貼り付けながら方向Y側に進んでいく方法と、先に一端側(例えば図6の粘着物質26aの側)を貼着させ、その後に他端側に向かって第一養生部材を広げていって他端側(同図の粘着物質26bの側)を貼着させていく方法とが考えられる。しかし、前者の方法は、互いの貼着位置をこまめに調節することが難しく(一方を引っ張ると、他方も引きずられて動いてしまう)、所望の位置に配設することが比較的難しい。また、後者の方法を採用した場合は、前者の問題は解決できるものの、最後に他端側を貼着させる場合に、作業者が足場にする作業スペースが無くなってしまう。つまり、塗布領域24上に作業者が侵入して第一養生部材を貼着させる必要が生じてしまう。この時、塗布領域24上にゴミや汚れが落ちたり、せっかく配置した目地型枠部材12の配設位置がずれたりすると、舗装層3の完成度が落ちてしまうだけでなく、再舗装の必要が生じる場合もあった。
これに対し、本例の舗装方法によれば、第一養生部材A20及び第一養生部材B21の幅が1000mm程度に設定されているため、当該他端側に200mm程度の作業スペースが生じる。これにより、塗布領域24に侵入することなく養生被覆工程を行うことができるから、より完成度の高い舗装層3を提供できる。また、第一養生除去工程においても、両端側が固定されている場合は、剥離すると同時に第一養生部材上の余剰物が塗布領域24内に飛散する虞があるが、本例の舗装方法によれば、固定されていない側の他端側を丸めていくことでスムーズに除去作業を行うことができるため、極めて作業性が良い。これにより、より迅速に、且つ完成度の高い舗装方法を提供できる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、下地層9、目地層10、表層材11、及び保護層12にMMA樹脂モルタルを用いるものを例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、エポキシ性樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、及びビニルエステル系樹脂などを用いた樹脂モルタルであっても構わない。
また、上記実施形態では、塗布領域24と非塗布領域25とが交互に配設された場合を例示したが、この構成に限定されるものではない。施工領域の全面を塗布領域24とする方法であっても当然構わない。また、第一部材13と第二部材14との二種類の部材を有する目地型枠部材12を例示したが、表層材10の厚みと略等しい(つまり第一部材13のみの)目地型枠部材を用いても良い。但し、本例のような構成及び方法を採用することで、より平滑で色むらの無い、完成度の高い舗装層3を提供できる。
さらに、上記実施形態において、第一保護層形成工程及び/または第二保護層形成工程の前に、さらに保護層用の養生工程を具備しても良い。これにより、施工領域以外(例えば、既設の構造物や点字ブロック4、笠石5等)に保護層が飛散することを防止することができるため、より好適である。
また、上記実施形態では、「目地型枠配置工程」の後に「養生被覆工程」を行う場合を例示したが、「養生被覆工程」の後に「目地型枠配置工程」を行っても良い。また、塗布領域24の目地層9上のみに目地型枠部材12を配置する方法を示したが、施工領域全面に目地型枠部材12を配置し、その後に「養生被覆工程」(非塗布領域25のみを被覆する)を行っても良い。要するに、非塗布領域25を養生部材19で被覆した後に、「表層材塗布工程」を行うものであれば、如何なる方法であっても良い。
また、上記実施形態では、第一養生部材A20、第一養生部材B21、第二養生部材22、及び第三養生部材23を重ね合わせて配置する方法を例示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、予め複数枚に重ねあわされた養生部材19を用いて、一度に貼着させて配設する方法であっても良い。この方法によれば、養生被覆工程を極めて簡略化できるため、より好適である。