ところで、「剥離工程」において、縦部材62を下地層65上より剥離する場合は、作業者が施工領域の外側から縦部材62の一端部を抉り出して引っ張っていくことで、他端部までを一気に剥離することができる。つまり、作業者が施工領域内の表層材の上面に侵入する必要がないため、表層材が完全に硬化する前、すなわちある程度の柔らかさを残した状態で剥離工程を行うことができ、比較的スムーズに剥離作業を進めることができる。
これに対し、横部材63を下地層65上より剥離する場合は、一本の横部材64ではなく横部材63a,63bのように分断して構成されているため、施工領域の比較的内部側に位置する横部材63を剥離するためには、施工領域内の表層材の上面に侵入し、剥離工程を行う必要があった。そこで、作業者が表層材の上面に体重をかけても、表層材の表面に傷が付いたり歪んだりすることが無い程度に、十分に表層材が硬化するまで待機する必要があるが、このように表層材の硬化が進行すると、横部材63と表層材とが固着して剥離し難くなり、剥離作業に要する時間と手間が増大するという問題があった。また、表層材と横部材63とが固着することにより、剥離工程において横部材63が千切れて目地部に残存する恐れもあり、意匠性が低下するという問題があった。
また、施工領域の上方に作業スペースとしての足場を組み、この足場の上から横部材63を剥離するという方法も考え得る。これによれば、表層材の上面に侵入することなく剥離工程を進めることができる為、表層材が柔らかい状態で横部材63を剥離することが可能となるが、係る足場の設置作業には時間とお金がかかり、経済的ではなかった。
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、目地型枠部材の剥離作業に要する作業者の負担を軽減し、且つ意匠性及び経済性に優れる舗装層を作成できる舗装方法の提供を課題とする。
本発明に係る舗装方法は、「所定の一方向に略平行に形成された複数の縦目地模様と、該縦目地模様に対して略直交する方向に形成された複数の横目地模様とで構成された、碁盤目状の目地模様を具備する舗装層を形成する舗装方法であって、平滑な下地層を形成する下地層塗布工程と、前記下地層の表面に、前記縦目地模様のガイドラインとなる縦目地下書きライン、及び前記横目地模様のガイドラインとなる横目地下書きラインを描画する下書きライン描画工程と、前記縦目地下書きラインに沿って、棒状の縦目地型枠部材を前記下地層の表面に貼着する縦目地型枠貼着工程と、前記縦目地型枠部材のうち、前記縦目地下書きラインと前記横目地下書きラインとの交差部の上面に位置する部位に、前記縦目地型枠部材の表面と前記下地層の表面との間に生じる段差を埋め合わせて緩やかにする傾斜面を形成するスロープ部材を取り付けるスロープ部材取り付け工程と、前記縦目地型枠部材と略等しい厚みを呈する棒状の横目地型枠部材を、前記横目地下書きラインに沿って、前記下地層の表面及び前記スロープ部材の表面に分断することなく貼着する横目地型枠貼着工程と、前記下地層の表面に、前記縦目地型枠部材及び前記横目地型枠部材の厚みと略等しくなるように、液状の表層材を塗布する表層材塗布工程と、前記表層材の表面が略硬化した状態で、前記横目地型枠部材を、前記下地層の表面より剥離する横目地型枠剥離工程と、前記横目地型枠剥離工程の後に、前記下地層の表面より前記縦目地型枠部材を剥離する縦目地型枠剥離工程とを具備することを特徴とする」ものである。
ここで、「平滑な」とは、施工面上に存在する比較的小さな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面形状を形成する状態を示す。また、「棒状」とは、適宜の厚みと幅を有し、且つ直線状を呈する物体の形状を示し、例えば、略2mmの厚みと10mmの幅を有する帯状の縦(横)目地型枠部材が挙げられる。さらに、「緩やかにする」とは、下地層の表面から縦目地型枠部材の表面に向かって、傾斜角度が90度以下となるようなスロープ状の傾斜面を形成する状態を示す。
また、「傾斜面を形成する」とは、縦目地型枠部材(以下「縦部材」と云う)と横目地型枠部材と(以下「横部材」と云う)の交差部において、縦部材の端面が下地層に対して為す角度を90度以下の緩やかな角度となるように形成する状態であれば、如何なるものであっても良い。例えば、平滑な傾斜面であっても良いし、円弧状や逆円弧状のように湾曲した形状など、特に限定されるものではない。また、「分断することなく」とは、横部材を、隣接する縦部材の内寸に合わせて分断することなく、施工領域(表層材を塗布した領域)の一方の端部側から他端側までの連続した一本として形成する状態を示す。
従って、本発明の舗装方法によれば、スロープ部材取り付け工程を具備していることにより、縦部材の端面と下地層とが為す角度が緩やかになる。これにより、横部材が、縦部材の厚みによる段差(下地層の表面に対して縦部材の厚みが生じさせる段差)を乗り越える際に、当該スロープ部材によって段差の傾斜が緩やかになっているので、この傾斜に沿って貼着されていくことで、下地層との間に隙間を生じさせずに貼着することができる。従って、横部材を、隣接する縦部材の内寸に合わせて分断することなく、施工領域の一方の端部側から他端側までの連続した一本の横部材として形成することができる。また、横部材を分断する必要が無いことにより、表層材を塗布した後、施工領域の外側から横部材の一端部を抉り出して引っ張っていき、他端部までを一気に剥離することで、作業者が当該表層材の表面に侵入せずに横部材を剥離することができる。よって、表層材が完全に硬化する前の、比較的柔らかい状態のうちに、横目地型枠剥離工程を行うことができる。
ところで、上記の舗装方法によれば、スロープ部材の形態や材質は、傾斜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば孔のような空洞部や隙間を有する部材を用いて傾斜面を形成した場合には、当該孔や隙間等に液状の表層材が入り込み、そのまま硬化することで、スロープ部材と表層材とが固着するという問題である。これにより、スロープ部材を剥離する際に、固着した部位が千切れたり、表層材に引っ掛かった状態で引っ張られることで表層材の形を崩れさせ、碁盤目状の目地模様が変形して意匠性が損なわれる可能性がある。
以上の問題に鑑み、本発明の舗装方法において、「前記スロープ部材取り付け工程は、前記傾斜面を発生させると共に、前記下地層と前記横目地型枠部材との間に生じる隙間を充填し、前記縦目地型枠部材の長手方向に対して左右両端側に一対で配設される充填部材と、該充填部材を連結すると共に、前記縦目地型枠部材と前記横目地型枠部材との間に介装される介装部材とを具備するスロープ部材を、前記縦目地型枠部材に取り付ける」ものとすることができる。
従って、本発明の舗装方法によれば、スロープ部材に備えられた充填部材によって、下地層と横部材とが隙間なく充填されるため、表層材が当該隙間に入り込んで固着することが無い。従って、下地層より剥離する際に、スロープ部材が千切れて目地部に残存したり、強引に剥離することで区画形成された表層材の形状を変形させる恐れが無く、より確実に意匠性の高い舗装層を提供できる。また、本発明の舗装方法によれば、充填部材が、縦部材の長手方向に対して左右両端側に一対で具備されていることにより、一度の取り付け作業で、左右両端側の傾斜面を一度に形成することができる。さらに、介装部材によって当該一対の充填部材が連結されていることにより、スロープ部材を取り外す作業も、左右両側の一対を一度で行えるため、極めて効率的である。これにより、当該取り付け及び取り外し作業に係る作業者の負担を軽減し、迅速且つ効率的な舗装方法を提供できる。
また、上記の舗装方法において、「前記介装部材は、前記縦目地型枠部材及び前記横目地型枠部材よりも厚みが薄いシート状を呈する」ものとすることができる。
従って、本発明の舗装方法によれば、介装部材の厚みが薄いことにより、縦部材と横部材との交差部における段差(下地層の表面から、縦部材、介装部材、及び横部材の厚みを重畳した段差)を軽減することができる。これにより、表層材塗布工程において、目地型枠部材の厚みに合わせて表層材の表面を平滑にする際に、当該段差に鏝などの塗布工具がひっかかって、塗布作業が阻害される恐れが軽減し、円滑に当該平滑作業を進めることができ効果的である。
また、本発明の舗装方法において、「前記横目地型枠部材は発泡層を具備し、前記表層材は、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂を結合材に用いた樹脂モルタルから構成されている」ものとすることができる。
従って、本発明の舗装方法によれば、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を結合材とする樹脂モルタルを表層材として適用するため、硬化剤を加えることによって、常温で重合反応が進行し、比較的迅速に硬化する。これにより、施工時間を短縮することができ、効果的である。また、横部材が発泡層を具備していることにより、横部材と接触する部位の表層材、つまり目地部に位置する表層材は、発泡層内の空隙に含まれる酸素によって重合反応が阻害され、表層材の内部等に比べてゆっくりと硬化反応が進行する。これにより、表層材が比較的柔らかい状態(硬化が進行し難い状態)において剥離することができ、表層材と横部材とが固着し難いため、よりスムーズ且つ迅速に横部材を剥離することができるという顕著な作用効果を奏する。
このように、本発明の舗装方法によれば、隣接する縦部材の内寸に合わせて横部材を分断することなく、施工領域の一方の端部側から他端側までを連続した一本の横部材として形成することができるため、係る分断作業に必要とされる時間及び手間が不要となる。さらに、横目地型枠剥離工程において、分断された横部材をひとつひとつ抉り出していく作業も不要となることから、剥離作業に必要とされる手間及び時間を削減でき、効率的な舗装方法を提供できる。また、横目地型枠剥離工程を迅速に進めることができることから、比較的表層材が柔らかい状態のうちに横部材を剥離することが可能となり、横部材と表層材との固着を低減することができる。よって、当該固着に起因する、横部材の千切れ・残存、横部材の強引な抉り出しによる目地部の変形などの問題を回避することが可能となり、簡易に意匠性の高い舗装層を提供することができる。
さらに、本発明の舗装方法によれば、横部材を分断する必要が無いことにより、作業者が施工領域内の表層材の表面に侵入せずに横部材を剥離することができるため、剥離作業のための足場を組むような必要が無く、経済的な舗装方法を提供できる。また、迅速に横部材を剥離できることにより、横目地型枠剥離工程から縦目地型枠剥離工程への移行時間を短縮することが可能となり、表層材が柔らかいうちに縦部材を剥離する工程へと移行できる。よって、表層材と縦部材とが固着し難いため、縦目地型枠剥離工程に要する時間と手間を削減し、より効率的な舗装方法を提供できる。
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図10に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって形成された舗装層を示す斜視図であり、図2は舗装層の断面を模式的に表した断面模式図であり、図3は目地型枠部材の拡大断面図であり、図4はスロープ部材を示す斜視図であり、図5は下書きライン描画工程を示す説明図であり、図6は縦目地型枠貼着工程を示す説明図であり、図7はスロープ部材取り付け工程、及び横目地型枠貼着工程を示す説明図であり、図8は表層材塗布工程を示す説明図であり、図9及び図10は目地型枠剥離工程を示す説明図である。
本実施形態の舗装方法によって作成された舗装層1は、図1及び図2に示すように、コンクリート等の基盤層2上に、碁盤目状に区画形成された複数のタイル模様部3を有する舗装層1を形成するものであり、具体的には、所定の一方向に略平行に形成された複数の縦目地4aと、縦目地4aに対して略直交する方向に形成された複数の横目地4bとで構成された目地部4によって、複数のタイル模様部3が形成されているものである。舗装層1は、より詳細には図2に示すように、平滑層5、目地層6、表層材7、及び保護層8を備えている。なお、縦目地4a及び横目地4bが、本発明の「縦目地模様」及び「横目地模様」に夫々該当する。
平滑層5は、基盤層2上に存在する小さな凹凸を埋め合わせて平滑にするものであり、アスファルトコンクリートやセメントコンクリート等公知のコンクリートが適用可能であるが、本例においては樹脂モルタルが適用されている。なお、コンクリートとは、結合材と骨材とを主に配合した混合物を示し、樹脂モルタルとは、結合材として樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の比較的細かな骨材のみを用いたコンクリートの一種を示す。樹脂モルタルは、水及びセメントを結合材とする一般的な水和性セメントコンクリートに比べ、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性など優れた性質を有するものである。平滑層5に用いられる結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン、及びMMA樹脂等が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、雲母、または炭酸バリウムが挙げられる。
目地層6は、目地部4の色を表現する層に該当し、本例においては樹脂モルタルが適用されている。目地層6に配合されている骨材及び結合材としては、平滑層5に例示したものが適用可能であり、さらに、目地部4の色を表現するための顔料が配合されている。なお、平滑層5及び目地層6が、本発明の「下地層」に該当する。
表層材7は、タイル模様部3を主に構成する層であり、本例においては、平滑層5及び目地層6と同様に樹脂モルタルが適用されている。なお、表層材7に配合されている結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル系樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有する。また、本実施形態の表層材7には、さらに、表層材7の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、当該MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスの種類としては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
保護層8は、表層材7の表面及び目地部4を被覆する層であり、例えばアクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂が例示できる。なお、本例においては、特に透過性を有する保護層8が適用されており、表層材7の表面を傷や汚れから保護する機能に加え、当該表面に奥行きのある高級な質感を付与している。
一方、本例の舗装方法では、目地部4を形成する方法として、図3に主に示すような目地型枠部材9が用いられる。目地型枠部材9は、縦目地4a(図1参照)を形成するための縦目地型枠部材9a(以下、単に「縦部材9a」と云う)と、横目地4b(図1参照)を形成するための横目地型枠部材9b(以下、単に「横部材9b」と云う)とから構成されている。目地型枠部材9は、具体的には、粘着保護テープ10、粘着層11、発泡層12、及び保護テープ13を具備するものである。粘着保護テープ10は、ゴミなどが粘着層11に付着して粘着力が低下することを防止するものであり、切断・折り曲げ・剥離作業などを阻害しない程度の柔らかさを持つシート状物質であれば、材質は特に限定されるものではない。粘着層11は、発泡層12を目地層6に対して貼着させ仮固定するものであり、発泡層12の裏面側に形成されている。材質としては、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等、公知の粘着手段が適用される。
発泡層12は、内部に多数の空隙Kを有し、粘着層11を介して目地層6上に貼着され、表層材7を主に区画する部材である。材質としては、多数の空隙Kを有するものであれば如何なるものであっても良く、発泡性ポリウレタン樹脂、発泡性ポリエチレン系樹脂、グラスウールなどが例示できるが、特に可撓性を有し、カッター等で簡単に切断できる程度の柔らかい材質を適用すると、後述する目地型枠剥離工程における作業性が向上するため、より好ましい。保護テープ13は、目地型枠部材9の表面H側から表層材7などが発泡層12の空隙K内へと浸透し、発泡層12と表層材7とが固着することを防止するものであり、目地型枠部材9の表面H側に備えられている。材質としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレートなど、比較的薄手で透湿性の低いものが適用される。
なお、粘着保護テープ10、粘着層11、発泡層12、及び保護テープ13はほぼ等しい表面形状を呈している。そして、目地型枠部材9は、全体として厚みが約2mm、幅が約10mmの棒状の部材であり、適宜の長さ(数十メートル等)のものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送される。そして、所定の長さに切断され、目地層6上に貼着されることで、縦部材9aまたは横部材9bとして機能する。
また、本例の舗装方法では、縦部材9aの上面に貼着された横部材9bと目地層6との間に生じる隙間S(図11(b)参照。以下同じ)を充填する方法として、図4(a)に示すスロープ部材14が用いられる。スロープ部材14は、介装部材15と充填部材16とを具備している。介装部材15は、縦部材9aと横部材9bとの交差部に略等しい形状、すなわち10mm×10mmの略正方形の表面形状を有し、比較的薄手(例えば0.5mm程度)のシート状を呈している。充填部材16は、縦部材9aの表面と目地層6の表面との間に生じる段差を埋め合わせて緩やかにする傾斜面17を形成し、目地層6との間に生じる隙間Sを充填する部材である。形状としては、隙間Sを充填することのできる形状であれば如何なるものであっても良いが、本例では、目地型枠部材9の厚みと略等しい長さの二辺を有する二等辺三角形を断面形状に持つ、三角柱の形状を呈する充填部材16が適用されている。介装部材15及び充填部材16の材質としては、特に限定されるものではなく、比較的安価で加工が容易な材質、例えば公知の合成樹脂材などを用いることができる。
続いて、本発明の舗装方法について説明する。本発明の舗装方法は、八つの工程、すなわち、「下地層塗布工程」、「下書きライン描画工程」、「縦目地型枠貼着工程」、「スロープ部材取り付け工程」、「横目地型枠貼着工程」、「表層材塗布工程」、「横目地型枠剥離工程」、及び「縦目地型枠剥離工程」に大別することができる。
まず、「下地層塗布工程」では、図2に示すように、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォームのような基盤層2に対して、平滑層5及び目地層6を形成する。具体的には、基盤層2上の塵やゴミ、埃などを除去し、塗料等の飛散を防止するためのビニールシートを、基盤層2上の施工領域の周囲に敷き詰める(所謂「養生」をする)。そして、結合材である樹脂と骨材とを配合して樹脂モルタルを作成し、当該樹脂モルタルを基盤層2上に塗布する。これにより、基盤層2上に存在する細かな凹凸が埋め合わされ、平滑な表面形状を有する平滑層5が形成される。ここで、樹脂モルタルを基盤層2上に塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばローラーや刷毛、鏝など適宜の工具を用いる。
続いて、平滑層5の表面に、目地層6を形成する。すなわち、樹脂、顔料、及び骨材を配合して、着色された樹脂モルタルを作成し、この樹脂モルタルを平滑層5の表面に一様に塗布する。この際、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いて、レベリング(施工する面の水平出し)をすると、より好ましい。目地層6は、後述する「横目地型枠剥離工程」及び「縦目地型枠剥離工程」において目地型枠部材9が剥離された後に、複数のタイル模様部3の隙間から目地部4として見える層であり、表層材7の色とは対照的な色を着色することが望ましい。また、顔料を配合せず、自然な色合いをそのまま利用することも当然可能である。
そして、「下書きライン描画工程」では、所定の目地模様を形成するための位置だしをする。具体的には、図5に示すように、公知の測量器やレーザー墨出し装置を用いて、目地層6の形状(湾曲や傾斜の有無等)に沿った目地模様としての縦目地下書きライン18及び横目地下書きライン19の描画位置を決定し、当該下書きラインの描画原点となる位置に目印をつける。一般的には、施工領域の端部側と、これに対向する他端部側とに、墨や塗料などで目印を描画する。次に、当該目印に沿って顔料や墨汁などに浸した糸20を配置し、両端部側から糸20を軽く引っ張って緊張させた状態で、一部を爪先で弾くと、目地層6上に糸20が衝突し、付着していた顔料等が目地層6上に落ち、所定の目地模様の下書きとなる縦目地下書きライン18及び横目地下書きライン19が描画される。
続いて、「縦目地型枠貼着工程」では、図6に示すように、縦部材9aを、目地層6上に貼着する。具体的には、縦目地下書きライン18に沿って縦部材9aを配置し、縦部材9aを構成する発泡層12に貼着されている粘着保護テープ10(図3参照)を剥がして、粘着層11を縦目地下書きライン18上(または近辺。図6一点鎖線部参照)に押し付け、目地層6上に貼着させていく。そして、所定の長さ、例えば施工領域が5m×3mであれば約5mの長さで、切断する。こうして、縦部材9aが目地層6上に配設される。
次に、「スロープ部材取り付け工程」では、図7に示すように、縦部材9aのうち、縦目地下書きライン18と横目地下書きライン19との交差部X(図6参照)の上面に位置する部位X´に、スロープ部材14を取り付ける。具体的には、一対の充填部材16を、縦部材9aの左右両端側に配置し、介装部材15を部位X´の上面に配置する。この時、介装部材15の裏面に粘着層が具備されていると、スロープ部材14の配設位置がずれ難いため好適である。
そして、「横目地型枠貼着工程」では、横目地下書きライン19に沿って、目地層6及びスロープ部材14の表面に横部材9bを貼着する。部位X´の表面は、目地層6の表面に対して、縦部材9aの厚みと介装部材15の厚みが重畳された分だけ段差が生じているが、充填部材16によって傾斜面17(図4(a)参照)が形成されていることにより、横部材9bが緩やかに当該段差を乗り越えられるため、目地層6と横部材9bとの間に隙間Sを生じさせること無く貼着することができる。また、充填部材16が、目地層6と横部材9bとの間の空間を隙間無く充填する部材であることにより、後述する液状の表層材7が充填部材16の内部(または隙間)に入り込んで固着することを防止できる。
次に、「表層材塗布工程」では、図8に示すように、MMA樹脂を結合材とする樹脂モルタルを作成し、目地型枠部材9が貼着された目地層6上に塗布していく。当該樹脂モルタルの配合比率としては、特に限定されるものではないが、例えば、地面温度が10℃の時にMMA樹脂が約5kgとし、骨材約10kgを配合するものが例示できる。そして、縦部材9a及び横部材9bで区切られた略四画形状の閉領域R内に、作成した樹脂モルタルを充填し、その表面を鏝23などで撫でて平らにする。この時、目地型枠部材9の厚みと略等しい高さになるように均すことで、均一な厚みを有する表層材7が形成される。なお、本例の表層材7にはワックスが配合されていることにより、樹脂等に比べて比較的比重の軽いワックスが表層材7の表面付近に浮上し、膜を形成する。このため、表層材7の内部が大気中の酸素から遮断され、MMA樹脂の重合反応が阻害されず、硬化が迅速に進行する。
そして、「横目地型枠剥離工程」では、図9に示すように、横部材9bを目地層6上より剥離していく。具体的には、横部材9bの一端部側に、公知の工具、例えば鉄串や錐などを突き刺して目地部4より抉り出し、抉り出された横部材9bの端部を上方に引き上げていくことで、横部材9bの他端部側まで一気に目地層6上より剥離していく。ここで、横部材9bが、隣接する縦部材9aの内寸に合わせて分断されること無く、施工領域の一端側から他端側までが連続した一本の形状を呈していることにより、施工領域の内側に作業者が侵入して、横部材9bを剥離していく必要が無く、施工領域の外側から剥離することが可能である。また、横部材9bが複数本に分断されている場合は、分断されている本数分だけ目地部4より穿り出していく作業が必要となるが、本例の舗装方法によれば、横部材9bが連続した一本の形状であるため、穿り出しに必要とされる時間が不要となり、迅速に剥離していくことが可能となる。
なお、目地型枠部材9の裏面側に粘着層11が具備されているため、横部材9bの裏面側がスロープ部材14の表面に対して粘着し、横部材9bを目地層6上より剥離する際に、スロープ部材14も一緒に剥離する場合が考え得る。ここで、スロープ部材14の表面側に粘着層を具備させたり、または介装部材15の裏面側の粘着層よりも強い粘着力を有する他の粘着層を具備させることにより、横部材9bとスロープ部材14との接着力を高め、横部材9bの剥離時に、スロープ部材14を積極的に剥離させることも可能である。スロープ部材14は、横部材9bの配置方向に沿って配設されているため、上記のように剥離することで、より効率的にスロープ部材14を剥離することが可能となり、一層効果的である。
次に、「縦目地型枠剥離工程」では、図10に示すように、複数の縦部材9aを目地層6上より剥離していく。なお、図10(a)は、縦部材9aを剥離する工程を正面(図7における矢印Aの方向)から模式的に表した説明図、図10(b)は横(図7における矢印Bの方向)から模式的に表した説明図である。基本的には、横部材9bを剥離する手順と同様であり、縦部材9aの端部側に、公知の工具、例えば鉄串や錐などを突き刺して目地部4より抉り出し、抉り出された縦部材9aの端部を上方に引き上げていくことで目地層6上より剥離していく。ここで、本例のスロープ部材14は、図4(a)に示すように、充填部材16の上端部が介装部材15によって連結されている構成であるため、縦部材9aの表面側に介装部材15が配置されている。従って、「横目地型枠剥離工程」において、剥離できなかったスロープ部材があった場合でも、縦部材9aを上方に引き上げて目地層6上より剥離すると、スロープ部材14も縦部材9aと一緒に目地層6上より剥離される。これにより、複数のスロープ部材14を一つ一つ剥離していくといった手間を要することなく、縦部材9aを剥離するだけでスロープ部材14を剥離することが可能となり、簡便である。
また、縦部材9a及び横部材9bを構成する発泡層12の内部には、多数の空隙K(図3参照)が存在している。また、表層材7に配合されているワックスは、比較的比重が軽いため主に表層材7の表面H付近へと集中的に浮上し、発泡層12と表層材7との接触部付近には膜を形成し難い。このため、空隙Kと表層材7とがワックスの膜を介することなく直接的に接触しやすく、空隙K中の酸素によってMMA樹脂の重合反応が阻害され、目地部4の表層材7が硬化し難い状態となっている。従って、例えば、施工領域が比較的広く、目地型枠部材9の剥離作業中に表層材7の硬化がある程度進行することがあった場合でも、目地部4に位置する表層材7の端面部は比較的柔らかい状態に保たれ、縦部材9a及び横部材9bをスムーズに剥離することができる。
そして、目地型枠部材9が剥離された表層材7の表面や目地部4(図2参照)に保護層8を塗布する。保護層8は、ローラー、刷毛、鏝、スプレーガンなど適宜の工具を用いて塗布される。こうして、図1に示すような複数のタイル模様部3を有する舗装層1が完成する。
以上のように、本例の舗装方法によれば、横部材9bを、隣接する縦部材9aの内寸に合わせて分断することなく、施工領域の一方の端部側から他端側までが連続している一本の横部材9bとして形成することができる。これにより、作業者が施工領域の外側から横部材9bを剥離することができるため、足場を組んで剥離作業を行う必要が無く、極めて効率的且つ経済的な舗装方法が提供できる。また、横部材9bを迅速に剥離できることにより、表層材7が完全に硬化する前、すなわち柔らかい状態で横部材9bを剥離できることから、横部材9bと表層材7とが固着し難い。従って、横部材9bが千切れて目地部4に残存したり、表層材7に引っ掛かってしまうことでタイル模様部3を変形させてしまうなどの恐れが少なく、簡易に意匠性の高い舗装層1を提供できる。
さらに、本例の舗装方法によれば、一対の充填部材16を具備するスロープ部材14を適用するため、一度の取り付け作業で、縦部材9aの左右両端側に傾斜面17を形成することができ、簡便である。また。部位X´において発生する横部材9bと目地層6との隙間を、充填部材16によって隙間無く埋めることができるため、表層材7とスロープ部材14とが固着し難い。さらに、充填部材16の上端部が介装部材15によって連結されていることにより、縦部材9aの剥離と同時にスロープ部材14を目地層6上より剥離することができ、効率的である。また、介装部材15がシート状であるため、縦部材9aと横部材9bとの交差部Y(図8参照)における段差を比較的小さくすることができる。これにより、表層材塗布工程において、鏝23が表層材7の表面を平滑にする作業を阻害する恐れが軽減するため、より円滑且つ迅速な舗装方法を提供できる。
また、本例の舗装方法によれば、表層材7にMMA樹脂を結合材とする樹脂モルタルを適用していることにより、極めて迅速に硬化し、施工時間を短縮することができる。さらに、MMA樹脂は、耐候性や耐磨耗性に優れることから、長期間補修することなく利用することができ、極めて経済的である。また、本例の舗装方法によれば、発泡層12を具備する目地型枠部材9を適用している。このため、表層材7と目地型枠部材9とが固着し難く、円滑に剥離することが可能となる。さらに、本例の表層材7にはワックスが配合されているため、表層材7の表面が空気に触れ難く、素早く硬化する。このため、施工時間を短縮することができ効果的である。また、本例の舗装方法によれば、目地型枠部材9は可撓性を有するシート状の物体から構成されているため、施工現場への搬入・保管が比較的容易であり、且つ、目地層6上から剥離する際も、自由に撓ませることができ作業性に優れるから効果的である。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、表層材7にはMMA樹脂、ワックス、及び骨材を配合するものを例示したが、この構成に限定されるものではなく、ワックスを配合しない構成としても良い。また、上述の配合に加え、さらに公知の揺変剤を配合しても良い。これによれば、表層材7を塗布し、縦(横)目地型枠剥離工程において目地型枠部材9を剥離した場合に、表層材7が垂れ難く、比較的安定してタイル模様部3の形状が保持される。従って、迅速に施工を完了することができ、好適である。
また、上記実施形態では、下地層塗布工程において、平滑層5及び目地層6を一度のみ形成するものを例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、平滑層5や目地層6の塗布作業を複数回行うものであっても良いし、平滑層5のみ、または目地層6のみを塗布するものであっても良い。
上記実施形態においては、複数の縦部材9aを貼着した後にスロープ部材14を取り付けるものを例示したが、この順番に限定されるものではなく、横部材9bを貼着する前であれば如何なる順番であっても良い。すなわち、縦目地型枠貼着工程より前であっても良く、当該工程と同時進行であっても構わない。なお、縦目地型枠貼着工程の前であれば、図4(b)に示すように、充填部材21の下端側が介装部材22によって連結されているスロープ部材23を用いる場合等が例示できる。また、当該工程が縦目地型枠貼着工程と同時進行である場合は、事前にスロープ部材14(またはスロープ部材23)が取り付けられている縦部材9aを、目地層6上に貼着させていく工程が例示できる。