しかし、上記の舗装方法によれば、表層材が硬化した後に、型枠部材50を表面Jから剥離する場合において、目地部に下書きGの墨が残存するという問題があった。つまり、型枠部材50を剥離すると、墨出し工程において描画された下書きGが表面J上に露出し、下書きGに用いられた墨が目地部に残存する。特に、安定して貼着させるために、型枠部材50の裏面に粘着テープなどを設けて下書きG上に(下書きGを完全に被覆するように)貼着させた場合などは、下書きGに用いられた墨が粘着テープに付着して一部だけ剥ぎ取られ、大部分の墨がマダラ状になって目地部に残存する可能性があった。このため、目地部の色合いに統一感が失われ、舗装面の意匠性が損なわれるという問題があった。
また、上述の問題を回避するために、着色したモルタルなどを目地部に流し込んで充填する方法等も考え得るが、この方法は極めて手間と時間がかかり、現実的ではなかった。
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、目地部に下書きの墨が残存し難く、比較的簡単な方法を用いて意匠性の高い舗装面が実現できる舗装方法の提供を課題とする。
本発明に係る舗装方法は、「平滑な下地層を形成する下地層塗布工程と、目地型枠部材を貼着させる前記下地層の表面上の位置を計測し、前記下地層の表面に配置ラインとして描画する墨出し工程と、前記配置ラインが略露出した状態となるように、前記配置ラインに沿って前記目地型枠部材を貼着する目地型枠貼着工程と、前記下地層の表面に、前記目地型枠部材の厚みと同じになるように、前記表層材を塗布する表層材塗布工程と、前記表層材の表面が略硬化した状態で、前記目地型枠部材を剥離する目地型枠剥離工程とを具備する」ものである。
ここで、「平滑な」とは、施工面上に存在する比較的小さな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面形状を形成する状態を示す。また、「目地型枠部材」とは、舗装面上に実現される当該模様とほぼ同様の形態を再現できるものであれば如何なるものであっても良く、予め工場等において格子枠状に作成された型枠部材であっても良いし、帯状の型枠部材を施工現場において碁盤目状に組み合わせ、当該模様を表現するものであっても良い。また、「表面上の位置を計測し」とは、舗装面を俯瞰した状態において整然とした当該模様が表現できるように(つまり各施工現場毎の施工面形状に合致するように)、目地模様を描画するべき場所を決定する作業を示し、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いる場合が例示できる。さらに、「描画する」とは、墨汁や黒鉛に浸した糸や白色の石灰粉等、適宜の描画手段を用いて線引きする作業を示す。また、「略露出した状態」とは、完全に露出した状態だけではなく、配置ラインの一部が目地型枠部材によって被覆され、その他の大部分が露出しているも含む。さらに、「略硬化した状態」とは、表層材が完全に硬化した状態のみならず、硬化途中の過程(所謂半硬化状態)も含む状態である。
従って、本発明の舗装方法によれば、墨出し工程において描画された配置ラインに沿って目地型枠部材(以下、単に「型枠部材」と云う)が配置され、且つ、型枠部材によって配置ラインが被覆されないように、つまり下地層上に配置ラインが略露出した状態で貼着される。ここで、表層材塗布工程において下地層の表面に表層材が塗布されると、型枠部材がマスキングの役割を果たし、当該表層材は型枠部材が貼着されていない部位の下地層上に塗布される。これにより、表層材は、配置ラインが露出している部位の下地層上に塗布され、表層材塗布工程後には当該配置ラインを被覆して隠蔽する。
ところで、上述の舗装方法において、施工面が湾曲していたり傾斜している場合には、比較的柔軟で変形が容易な材質(例えば発泡性ポリウレタン系樹脂や発泡性ポリエチレン系樹脂等)を用いた型枠部材が適用される場合が多い。これは、施工面の形状に沿って、型枠部材を柔軟に変形させる必要が生じ得るからであり、また、目地型枠剥離工程において、より簡単且つ円滑に剥離する必要性からも、合理的であると思われる。一方、目地型枠貼着工程において、格子枠状の型枠部材を用いた場合に、前述のような柔軟な材質が適用されていると、型枠部材を所定の一方向(仮に「縦方向」とする)に引っ張ると、これに直交する方向(「横方向」)に配置された部位も引っ張られてしまい、型枠部材全体が歪んでしまう可能性があった。これにより、目標の位置に型枠部材が貼着されず、配置ラインの一部を被覆してしまう場合があった。そして、このような状態で表層材を塗布すると、表層材で配置ラインを隠蔽できない場合があり、目地型枠剥離工程後に、目地部に配置ラインが目立った状態で残存する恐れが有った。
この問題に鑑み、本発明では、「前記目地型枠貼着工程は、棒状の目地型枠部材を適用する」ものであっても良い。ここで、「棒状」とは、適宜の厚みと幅を有し、且つ直線状を呈する物体の形状を示し、例えば、略2mmの厚みと10mmの幅を有する帯状の目地型枠部材などが挙げられる。本発明によれば、棒状の型枠部材を縦方向に所定の間隔、例えば300mm毎の間隔で複数本配置し、横方向に300mm毎の間隔で別の型枠部材を複数本配置することで、当該模様を形成できる。なお、間隔量はこの数値に限定されるものではなく、施工の仕様によって、適宜変更することは当然可能である。
このように、棒状の型枠部材を用いると、一本ごとに縦方向(または横方向)の張力を均等に且つ簡単に加えることができ、位置決めが比較的容易である。従って、配置ラインの上面に型枠部材が貼着される恐れが少なく、配置ラインを略露出した状態に維持して下地層の表面に貼着することができる。これにより、目地型枠剥離工程後に目地部に残存する配置ラインを減少させ、目立たなくすることができ、より簡単な方法で意匠性の高い舗装面を提供できる。
一方、本発明の舗装方法では、墨出し工程において、型枠部材を貼着させるガイドラインとして、碁盤目状の目地模様を呈する配置ラインを下地層上に描画する。そして、この配置ラインに沿って目地型枠部材が貼着され、表層材を塗布して硬化した後に、目地型枠剥離工程において型枠部材を下地層より剥離するのであるが、この際、当該碁盤目状の交差部に位置する目地部には、不可避的に配置ラインが残存することとなる。これは、縦方向(または横方向)に配置した型枠部材が、横方向(または縦方向)に描画された配置ラインを横切るため、この横切った部位の型枠部材によって配置ラインがマスキングされ、表層材が塗布されないからである。従って、目地型枠部材を剥離した後に、目地部に配置ラインが露出するという問題があった。
そこで、本発明では、上記の構成に加え、「前記目地型枠部材には、前記下地層に対して貼着される面に粘着層が備えられ、前記目地型枠剥離工程の後に、前記表層材の表面及び目地部に対して、液状の樹脂を保護膜として塗布する保護膜塗布工程をさらに具備する」ものとしても良い。
本発明の舗装方法によれば、型枠部材の裏面(下地層に貼着される面)には粘着層が備えられている。従って、目地型枠剥離工程において、型枠部材が下地層より剥離される際に、前述の交差部のような、配置ラインの上面に貼着されている粘着層が、配置ラインの一部を剥がし取る。これにより、配置ラインの一部が消去され、目地部上に残存した配置ラインの存在が目立たなくなる。なお、当該交差部の配置ラインの全てを消去することは困難であるが、交差部の面積は一般的に、目地模様の全面積中、比較的占有面積が小さいことが多いので、一部を消去するだけでも十分目立たなくなるものと考え得る。さらに、本発明によれば、保護膜塗布工程が具備されていることにより、目地部上に保護膜が形成される。これにより、仮に目地部上に配置ラインが残存している場合であっても、保護膜によって当該配置ラインが被覆されるため、より一層目立たなくなり好適である。なお、極めて強力な粘着力を有する特殊な粘着層を型枠部材の裏面に貼着し重複する配置ラインを剥離しやすくする、あるいは、比較的消去しやすい配置ラインを描画する、という方法も考え得るが、これによれば、目地型枠部材剥離工程において、スムーズに型枠部材を剥離することができない、または、目地型枠貼着工程に移行する前に配置ラインが消えてしまう、といった不具合が生じやすくなり、好適ではない。これに対し、本発明では、汎用の粘着層(例えば、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等)及び従来より墨出し工程で使用されてきた描画手段を適用することで、目地部に残存した配置ラインを比較的容易に目立たなくすることができ、好適である。
このように、本発明の舗装方法によれば、下地層の表面に描画された目地型枠部材の配置ラインに対して、当該配置ラインの大部分を被覆しないように、すなわち配置ラインに沿って型枠部材を貼着するという目地型枠貼着工程を具備していることにより、比較的簡単な方法を用いて、表層材で配置ラインを隠蔽することができ、目地部に配置ラインを残存させ難くすることができる。これにより、意匠性の高い舗装面を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図6に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって形成された舗装面を示す斜視図であり、図2は舗装面の断面を模式的に表した断面模式図であり、図3は目地型枠部材の断面図であり、図4は墨出し工程の要部を示す説明図であり、図5は目地型枠部材の貼着工程を示す説明図であり、図6は目地型枠部材の剥離工程を示す説明図である。
本実施形態の舗装方法によって作成された舗装面1は、図1及び図2に示すように、地面などの施工面2上に碁盤目状に区画形成された複数のタイル模様部3と、縦目地4a及び横目地4bで碁盤目模様を形成し、複数のタイル模様部3を互いに区分けしている目地部4とを具備している。タイル模様部3は、より詳細には図2に示すように、下地層5と、目地層6と、表層材7と、保護膜8とを備えている。
下地層5は、施工面2の凹凸を埋め合わせて平滑にするものであり、アスファルトコンクリートやセメントコンクリート等公知のコンクリートが選択可能であるが、本実施形態においては、樹脂モルタルが適用されている。なお、コンクリートとは、セメント、結合材、及び骨材を主に配合させたものである。また、樹脂モルタルとは、結合材に樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたコンクリートの一種であり、水を結合剤とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。下地層5に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン、及びメチルメタクリレートモノマーの重合体(以下、単に「MMA樹脂」と云う)等を主成分とする樹脂が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。
目地層6は、目地部4の色を表現する層に該当し、本実施形態においては樹脂モルタルが適用されている。目地層6に配合されている骨材及び結合材としては、下地層5に例示したものが適用できるが、さらに、目地部4の色を表現するための顔料が配合されている。
表層材7は、タイル模様部3を主に構成する層であり、本実施形態においては、下地層5及び目地層6と同様に樹脂モルタルが適用されている。なお、表層材7に配合されている結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル系樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材7には、さらに、表層材7の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、当該MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
保護膜8は、表面材7の表面及び目地部4を被覆する層であり、例えばアクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂が例示でき、本例においては透過性を有するものが適用されている。
一方、本発明の舗装方法では、目地部4を形成する方法として、図3、図5、及び図6に主に示すような目地型枠部材9が用いられる。目地型枠部材9は、縦目地4aを形成するための縦目地部材9aと、縦目地部材9aに対して略垂直に配置されて横目地4bを形成する横目地部材9bとから構成されている(図5及び図6参照)。目地型枠部材9は、具体的には図3に示すように、剥離テープ10と、粘着層11と、発泡体12と、保護テープ13とを具備している。剥離テープ10は、ゴミなどが粘着層11に付着して粘着力が低下することを防止するものであり、切断・折り曲げ・剥離作業などを阻害しない程度の柔らかさを持つシート状物質であれば、材質は特に限定されるものではない。粘着層11は、発泡体12を目地層6に対して貼着させて固定するものであり、発泡体12の裏面側に形成されている。材質としては、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等、公知の粘着手段が適用される。
発泡体12は、内部に多数の空隙Kを有し、粘着層11を介して目地層6上に貼着され、表層材7を区画する部材である。材質としては、多数の空隙Kを有するものであれば如何なるものであっても良く、発泡性ポリウレタン系樹脂、発泡性ポリエチレン系樹脂、グラスウール等が例示できる。保護テープ13は、発泡体12の表層側(保護テープ13が貼着されている側)から表層材7などが空隙K内へと浸透し、固着することを防止するものであり、発泡体12の表層側に形成されている。材質としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレートなど、比較的薄手で透湿性の低いものが適用される。
なお、剥離テープ10、粘着層11、発泡体12、及び保護テープ13はほぼ等しい表面形状を有している。そして、目地型枠部材9は、厚みが約2mm、幅が約10mmの帯状の物体であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送され、所定の長さに切断され、目地層6上に貼着されることで縦目地部材9a、及び横目地部材9bとして機能するものである(詳細は後述する)。
また、本発明の舗装方法では、後述の墨出し工程において、目地層6の表面Hに、下書きSが描画される。下書きSは、目地型枠部材9を貼着させる際の目地層6上の位置決めをするものであり、例えば黒炭や黒鉛の粉末、墨汁(墨)、顔料、及び石灰紛など適宜の描画手段を用いて、表面H上に描画される。なお、本例では「墨」を用いるものを例示している。また、描画手段はこれに限定されるものではなく、鋲やワッシャー等の一部を目地層6に埋設させ、頭部を目地層6上に露出させることで当該位置決めをするもの等であっても良く、要するに、目地層6上に、作業者が視認し易いように下書きSを描画できるものであれば、如何なるものであっても良い。ここで、下書きSが本発明の「配置ライン」に配当し、表面Hが「下地層の表面」に該当する。
続いて、本発明の舗装方法について説明する。本発明の舗装方法は、五つの工程、すなわち、「下地層塗布工程」、「墨出し工程」、「目地型枠貼着工程」、「表層材塗布工程」、及び「目地型枠剥離工程」に大別することができる。
まず、「下地層塗布工程」では、図2に示すように、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォームのような施工面2に対して、下地層5及び目地層6を形成する。具体的には、施工面2上の塵やゴミ、埃などを除去し、塗料等の飛散を防止するため施工面2の周囲をビニールシートで覆う(所謂「養生」をする)。そして、結合材である樹脂、及び骨材を配合して樹脂モルタルを作成し、当該樹脂モルタルを施工面2上に塗布する。これにより、施工面2上に存在する細かな凹凸が埋め合わされ、平滑な表面形状を有する下地層5が形成される。なお、樹脂モルタルを施工面2上に塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばローラーや刷毛、鏝など適宜の工具を用いる。
続いて、下地層5の表面に、目地層6を形成する。すなわち、結合材である樹脂、顔料、及び骨材を配合して、着色された樹脂モルタルを作成し、この樹脂モルタルを下地層5の表面に一様に塗布する。この際、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いて、レベリング(施工する面の水平出し)をすると、より好ましい。目地層6は、後述する「目地型枠剥離工程」において目地型枠部材9が剥離された後に、舗装面1を俯瞰した状態で複数のタイル模様部3間から見える層であり、表層材7の色とは対照的な色を着色することが望ましい。また、顔料を配合せず、自然な色合いをそのまま利用する構成とすることも当然可能である。
次に、「墨出し工程」では、公知の測量器やレーザー墨出し装置を用いて、所定の目地模様を形成するための位置だしをする。そして、糸車に収められた細くて丈夫な糸15を、墨汁に浸し、前述の位置だしに従って糸15を配置する。この状態で、糸15を爪先で弾くと、目地層6上に糸15が衝突して付着していた墨が落ち、目地層6上に目地模様の下書きS(図4参照)が出来上がる。
続いて、「目地型枠貼着工程」では、下書きSに沿って、目地型枠部材9を表面H上に貼着する。より詳細には図5に示すように、まず、下書きSで示される碁盤目状の目地模様のうち、所定の一方向(以下、縦ラインTとする)に沿って、縦目地部材9aを配置する。この時、縦ラインTの大部分が露出した状態に維持されるように、すなわち、縦ラインTを被覆しないよう避けて目地型枠部材9を配置する。そして、目地型枠部材9を構成する発泡体12に貼着されている剥離テープ10を剥がして、粘着層11を表面Hに押し付け、目地層6上に貼着させていき、所定の長さ(例えば、施工面2の表面積が5m×3mであれば、約5m等)で切断する。こうして、縦目地部材9aが形成される。続いて、下書きSで示される碁盤目状の目地模様のうち、縦ラインTに直交する方向に描画された配置ライン(以下、横ラインYとする)に沿って、目地型枠部材9を配置する。この時、縦目地部材9aを配置したときと同様に、横ラインYの大部分を被覆しないように、横ラインYの近傍に配置する。そして、剥離テープ10を剥がし、発泡体12を目地層6上に貼着させて、所定の長さ(前述の例では、約3m)で切断する。こうして、横目地部材9bが形成される。この際、横目地部材9bは、カッター等を用いて縦目地部材9aと交差する部位を切除し、隣接する縦目地部材9aの所定の間隔(例えば、300mm角のタイル模様部3を作成する場合であれば、300mm)に切り出しておくと、縦目地部材9aと横目地部材9bとの交差部に隙間ができ難くなるため、より好適である。このようにして、目地層6上に、縦目地部材9aと横目地部材9bとで碁盤目状の目地模様の枠型が配置される。
なお、目地型枠部材9から剥離テープ10を剥がす工程と、所定の長さに切断して縦目地部材9aまたは横目地部材9bを取り出す工程との順番は、これに限られるものではなく、逆であっても良いし、同時進行であっても良い。また、目地型枠部材9を下書きSに沿って配置する際の、「縦ラインTを被覆しないよう避けて目地型枠部材9を配置する」及び「近傍に配置し」とは、目地型枠部材9を表面Hに貼着した際に、下書きSの大部分(碁盤目状の目地模様の交差部16を除く)が完全に露出した状態、及び一部が被覆された略露出状態を含み、具体的には、下書きSの端部側と目地型枠部材9の端部とが略一致する状態(所謂、面一の状態)を示す。
ここで、目地型枠部材9に換えて、図7に示されるような格子枠状の型枠部材50を適用した場合は、型枠部材50を下書きSに対して略面一の状態で貼着させることが、困難な場合がある。例えば、施工面2が駅のプラットフォームのように湾曲した形状を呈していた場合(仮に、プラットフォームの長手方向に沿って縦ラインTが配置され、これに略直交する横ラインYの方向に沿って施工面2が湾曲していたとする)は、横ラインYに沿って配置する横部材53を、施工面2の形状に合せて湾曲させ変形させる必要が生じる。この時、型枠部材50を構成する縦部材52と横部材53とは交差部Xにおいて互いに連結されているため、横部材53を変形させると同時に、縦部材52の配置位置も変化し(つまり型枠部材50の格子形状が歪み)、縦ラインTの大部分が縦部材52によって被覆されてしまう可能性が考え得る。従って、本例のように、棒状の目地型枠部材9を適用すると、縦目地部材9aと横目地部材9bとを別個独立に表面H上に貼着することができるため、比較的容易に下書きSに対して面一の位置に貼着することができ、好適である。
次に、「表層材塗布工程」では、MMA樹脂、ワックス、及び骨材を配合し、MMA樹脂モルタルを作成する。これらの構成材料の配合比率としては、特に限定されるものではないが、例えば、地面温度が10℃の時、MMA樹脂が5kg、骨材が約10kg等の配合比率を用いることが例示できる。
そして、作成された当該樹脂モルタルを、目地層6上に塗布していき、縦目地部材9a及び横目地部材9bで区切られた四角形状の領域内に充填させていく。ここで、前述の「目地型枠貼着工程」では、下書きSを略露出させた状態で、縦目地部材9aと横目地部材9bとを表面H上に貼着したため、表層材7は、露出した部位の下書きS上に流し込まれ、当該下書きSを隠蔽する。そして、充填された樹脂モルタルの表面を、鏝などで撫でて平らにしていき、縦目地部材9a及び横目地部材9bの厚みと同じ高さになるように均すことで、タイル模様部3(図2参照)を構成する表層材7が形成される。なお、本例の表層材7にはワックスが配合されていることにより、樹脂等に比べて比較的比重の軽いワックスが表層材7の表面付近に浮上し、膜を形成する。このため、表層材7の内部が大気の酸素から遮断され、MMA樹脂の重合反応が阻害されず、硬化が迅速に進行する。
そして、表層材7の表面I(図6参照)が乾燥するまで待機する。なお、施工時間を短縮するために、公知の乾燥手段、例えばドライヤーなどを用いて表面Iを乾燥させても良いが、本実施形態の表層材7には結合材としてMMA樹脂が配合され、さらにMMA樹脂の硬化を促進させる硬化促進剤が添加されている。さらに、前述のワックスの膜が形成されていることにより、特段の手段を用いずとも、比較的迅速に硬化反応が進行する。ここで、表面Iが、本発明の「表層材の表面」に該当する。
表面Iが乾燥した段階で、縦目地部材9a及び横目地部材9bを目地層6上より剥離する(「目地型枠剥離工程」)。より詳細には、図6に示すように、まず、複数の縦目地部材9aを剥離し、次に横目地部材9bを剥離していく。ここで、目地型枠部材9を構成する発泡体12の裏面側には粘着層11が具備されているため、貼着している部位の表面H上の組成物が、一部剥がれ落ちることが予想される。この時、粘着層11が、下書きSの上面に貼着されていた場合(主に、縦ラインSと横ラインYとの交差部16)などは、下書きSに用いられている墨が剥がれ落ち、下書きSの一部が表面H上より消去される場合がある。これにより、目地部4に下書きSの墨が残存し難いため好適である。
そして、表層材7の表面H及び目地部4(図2参照)に保護膜8を塗布する。保護膜8は、ローラー、刷毛、鏝、スプレーガンなど適宜の工具を用いて塗布される。こうして、図1に示すような複数のタイル模様部3を有する舗装面1が完成する。
以上のように、本例の舗装方法によれば、下書きSの大部分が略露出した状態となるように目地型枠部材9を貼着させる目地型枠貼着工程が具備されている。これにより、表層材塗布工程において、表層材7が下書きSの大部分を隠蔽するため、舗装面1の目地部4に残存する下書きSの墨を少なくすることができ、目立たなくなるため効果的である。また、目地型枠部材9が棒状であることにより、施工面2の状況(例えば、湾曲や傾斜等)に応じた目地模様を迅速に形成できるばかりではなく、当該状況に応じた専用の型枠部材を作成することなく、比較的簡単な方法を用いて縦目地部材9aと横目地部材9bとを別個独立に表面H上に配置することができる。これにより、下書きSを略露出した状態に維持して貼着させることができるため、目地部4に下書きSの墨がより一層残存し難く、経済的且つ意匠性の高い舗装面1を提供できる。
さらに、本例の舗装方法によれば、表層材7の表面I及び目地部4に保護膜8が塗布される。このため、保護膜8が有する色、または、光の屈折率の変化などによって、目地部4上に残存する墨(主に、縦ラインTと横ラインYとの交差部16)を一層目立たなくすることができ、さらに、表面I上に傷や汚れをつき難くすることもできるため、好適である。
また、本例の舗装方法によれば、目地型枠部材9の裏面(表面Hに貼着する面)に粘着層11が具備されていることにより、縦ラインTと横ラインYとの交差部16のように、目地型枠部材9が不可避的に下書きSの上面に貼着される部位があった場合でも、当該貼着された部位に存在する墨の一部が粘着層11によって剥がれ落ちる。従って、目地型枠剥離工程後に、目地部4上に残存する墨を少なくして、目立たなくすることができ、より意匠性の高い舗装面1を提供できる。また、粘着層11が具備されているため、発泡体12を比較的安定して目地層6上に固定することができ、表層材塗布工程において目地型枠部材9がずれ難いため好適である。
さらに、本例の舗装方法によれば、目地型枠部材9には発泡体12が備えられている。ここで、発泡体12の内部には、多数の空隙Kが存在しており、また、表層材7に配合されているワックスは、比較的比重が軽いため主に表層材7の表面H付近へと集中的に浮上する。よって、発泡体12と表層材7との接触部(目地部4、図2参照)付近にはワックスの膜を形成し難く、空隙Kと表層材7とがワックスの膜を介することなく直接的に接触する。そして、空隙K中の酸素によってMMA樹脂の重合反応が阻害され、目地部4の表層材7が硬化し難い状態となり、表面Iが十分に硬化した状態でも、目地部4に位置する表面材7の端面部は比較的柔らかい状態が維持される。このため、縦目地部材9a及び横目地部材9bをスムーズに剥離することができ、発泡体12の一部が千切れて目地部4内に残存する恐れが少ないため、より意匠性の高い舗装面1を提供しやすく、効果的である。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、表層材7にはMMA樹脂、ワックス、及び雲母入りの骨材を配合するものを例示したが、この構成に限定されるものではなく、ワックスを配合しない構成としても良い。また、上述の配合に加え、さらに公知の揺変剤を配合しても良い。この構成によれば、表層材7を塗布し、目地型枠剥離工程において目地型枠部材9を剥離した状態において、表層材7が垂れ難く、比較的安定してタイル模様部3の形状を保持する。従って、迅速に保護膜塗布工程に移行することができ、好適である。
また、上記実施形態では、下地層塗布工程において、下地層5及び目地層6を一度のみ形成するものを例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、下地層5や目地層6の塗布作業を複数回行うものであっても良いし、下地層5のみ、または目地層6のみを塗布するものであっても良い。
また、上記実施形態では、棒状の目地型枠部材9を用いるものを例示したが、この構成に限定されるものではなく、格子枠状の目地型枠部材を用いても良い。ただし、本例のように、棒状の目地型枠部材9を適用すると、比較的容易に下書きSに沿って目地型枠部材9を配置・貼着することができるため、好適である。さらに、目地型枠部材9は、発泡体12を具備するものを例示したが、非発泡体であっても構わない。ただし、少なくとも可撓性を有する材質を適用すると、目地型枠剥離工程において剥離しやすく、また、施工面2の形状(湾曲等)に沿って貼着させやすいため、好適である。