しかし、特許文献1の方法によれば、プライマーや下塗り組成物を塗布する工程が必要であるため、塗布に必要とされる時間、つまり施工面上の凹凸を取り除いて平滑にする不陸調整処理の時間や、その塗布作業に要する時間が必要であった。また、塗布後、表面がある程度乾燥するまで待機する時間も必要であり、充分に施工時間を短縮することができないという問題があった。さらに、不陸調整処理やプライマー等の塗布作業には熟練した技術が必要とされており、あまりに作業を急ぎすぎると模様層の表面にひび割れや段差が生じ、完成度が低下する虞もあった。
一方、特許文献2の方法によれば、樹脂を含浸させた不織布が施工面の凹凸になじむことで、丹念な下地処理を行わなくても模様層の表面にひび割れや段差を起こし難くすることができる。これにより、施工に要する時間や手間を削減することが可能となるかに思われるが、比較的薄手の素材である布(不織布)に樹脂を染み込ませただけの基材を使用する構成であるため、搬入の途中で、基材(不織布)がひび割れたり、また、その亀裂が模様層まで及ぶ可能性が払拭できないという問題があった。これにより、舗装面の意匠性が低下し、完成度を高めることが難しい虞があった。特に、特許文献2の方法によれば、2層構造の化粧シートを施工現場へと搬入し、施工面の大きさに合わせて切断する必要があるので、施工面が拡大すると搬入させる化粧シートも大型化した。つまり、搬入の途中で折れ曲がって亀裂が生じてしまう虞が増大し、大きな施工面での施工に向いていないという問題があった。
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、広い施工面での施工に適し、熟練した技術を要することなく迅速且つ仕上がり完成度の高い舗装面を形成可能な舗装方法の提供を課題とする。
本発明に係る舗装方法は、「メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂を含浸させた不織布からなる所定形状の不陸調整層を作製する不陸調整層作製工程と、前記樹脂及び骨材からなる樹脂モルタルより構成される部材であって、前記不陸調整層の表面に貼着される目地層と、該目地層の表面に形成され該目地層の一部が視認可能に露出されることで形成される所定の目地模様を有して構成される表層材と、を備える模様層を作製する模様層作製工程と、前記不陸調整層及び前記模様層を施工現場へと搬入する搬入工程と、該搬入工程により搬入された所定形状の前記不陸調整層を、施工面の表面に連続的に敷き詰めて貼着する不陸調整層貼着工程と、該不陸調整層貼着工程において貼着された前記不陸調整層の表面に、前記搬入工程により搬入された前記模様層を連続的に敷き詰める工程であって、前記連続的に敷き詰められた隣接する不陸調整層同士の継ぎ目と、前記模様層同士の継ぎ目とが互いに重なり合わないように貼着させる模様層貼着工程とを具備する」ものである。
ここで、「含浸」とは、繊維の内部全体に樹脂が浸透している状態だけではなく、繊維の表層付近にのみ樹脂が浸透している状態も含む。
また、「不織布」とは、編み・織りなどの方法によらないで、繊維のままで布状にしたものを示し、例えば、ガラス繊維等の無機質繊維、綿等の天然繊維、及びレーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド等の合成樹脂繊維を機械的・化学的・加熱もしくは溶媒を用いるなどして結合させ、布状に形成したものが例示できる。
また、「骨材」としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。
さらに、「目地模様」としては、碁盤目模様や幾何学模様などが例示でき、舗装面に形成されるものであれば、表面の一部であってもよく、また全面であっても良いが、碁盤目状の目地模様が全面に形成され、且つ、連続して敷き詰められる複数の模様層の継ぎ目に碁盤目状の目地部が位置するようなパターンとして形成されていると、継ぎ目が目立たず、自然な仕上がりとなるためより好適である。
また、「不陸調整層」とは、施工面の基盤上に存在する凹凸を吸収し、滑らかな表面を形成することのできる層である。また、「所定形状」とは、連続して敷き詰めた場合に、隣接する不陸調整層同士の間に隙間が生じないような形状、つまり幾何学的な形状が好ましく、長方形や正方形などの形状が特に好ましい。
さらに、「不陸調整層同士の継ぎ目と、模様層同士の継ぎ目とが互いに重なり合わないように」とは、不陸調整層同士の継ぎ目のほぼ真上、もしくはごく近辺に、連続的に模様層同士の継ぎ目が配置される状態を示し、不陸調整層同士の継ぎ目と模様層同士の継ぎ目とが一部だけ重なり合っている状態、例えば交差している状態などは含まない。
従って、本発明の舗装方法によれば、大判の不織布に、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と称す)を含浸させる。そして、樹脂が略硬化した状態で、例えば所望の単位形状に切断し、不陸調整層を作製する。一方、MMA樹脂を一様に塗布して所望の単位形状の目地層を作成し、その表面に目地模様を有する表層材を形成することで、模様層を作製する。なお、目地模様は、適宜の形状に区切られた表層材の隙間から、その下地となる目地層が視認可能に露出することで形成されるものである。そして、作製された不陸調整層及び模様層を、施工現場へと搬入する。
施工現場では、施工面の基盤となる層(土、アスファルト、コンクリート等)に、搬入された不陸調整層が連続的に敷き詰められる。これにより、基盤となる層の表面に存在する細かな凹凸が埋め合わされ、滑らかな表面形状が形成される。そして、その表面上に、さらに模様層が連続的に敷き詰められ、貼着され、舗装面が完成する。ここで、連続する模様層同士の継ぎ目は、不陸調整層の継ぎ目に重ならない様に敷き詰められる。
つまり、不陸調整層が予め工場等で作製され、硬化した状態で施工現場へと搬入されて配置されるため、不陸調整層の塗布及び硬化に要する時間が大幅に減縮される。また、工場等のように、気温や湿度、仕上がり完成度などがコントロール容易な場所において予め不陸調整層を作製できることにより、施工現場での気候条件等に左右されることがなく、また、連続的に敷き詰めていくという比較的簡単な方法を用いて、迅速に且つ高い完成度で不陸調整層を形成できる。
また、模様層は、目地模様として露出する目地層と、表層を形成する表層材との2層構造になっている。従って、その下地を形成する不陸調整層が、薄手の不織布から構成されていることにより搬入工程においてひび割れなどを生じることがあった場合でも、目地層及び表層材とでひび割れた不陸調整層を被覆することができるので、舗装面の意匠性を低下させる虞が無い。これにより、極めて迅速且つ簡単に意匠性の高い舗装面を形成できる。また、所定形状の不陸調整層を敷き詰めることで不陸調整層の全体を構成できることから、大判の不陸調整層を作製して施工面の形状に合わせて切断するような工程が必要なく、広い施工面にも好適に適用される。
さらに、本発明によれば、連続して敷き詰められる下地層と、その表面に敷き詰められる模様層との継ぎ目が互いに重なり合わないように配置されるので、熱等によって不陸調整層が膨張した場合でも、模様層に押さえつけられていることによってその継ぎ目が広がり難く、ひび割れし難い構成とすることができる。また、不陸調整層がひび割れし難いことにより、その表面に貼着された模様層もひび割れにしくく、耐久性の高い舗装面が提供できる。
また、本発明によれば、不陸調整層、目地層、及び表層材にMMA樹脂を使用しているため、常温で重合反応が進行し、比較的迅速に硬化する。これにより、不陸調整層及び模様層を作製する時間を短縮することができ、効果的である。また、互いに同じ樹脂(MMA樹脂)を使用していることから、密着性に優れ、施工後の剥離を起こしにくい。これにより、長寿命で経済的な舗装面を提供できる。
なお、模様層に現れる目地模様としては、特に限定されるものではないが、隣接する模様層との境界部に目地部が直線状に配置されるような目地模様として形成すると、模様層同士の継ぎ目に目地模様が位置するので、継ぎ目が分かり難くなり、より自然な仕上がり舗装面とすることができ、好適である。
また、本発明の舗装方法において、「前記不陸調整層作製工程の後且つ前記搬入工程の前に、前記不陸調整層の表面に、前記模様層の貼着位置を示すガイドラインを描画するガイドライン描画工程をさらに具備し、前記模様層貼着工程は、前記ガイドラインに沿って、前記模様層を貼着する」ものとすることができる。
ここで、「ガイドライン」とは、模様層を貼着させる位置が判るものであれば良く、模様層の貼着位置に沿って直線状に線引きをするものであっても良いし、模様層の角部を示す適宜のマーカーを付しておくものであっても構わない。
ところで、模様層に規則正しい幾何学模様(例えば、碁盤目状の目地模様等)が現れている場合は、模様層の貼着位置が歪んでしまうと、舗装面全体の目地模様も歪んでしまうという問題がある。特に、駅のプラットホームのような、直線的で長尺状の施工面に碁盤目状の目地模様を表現したい場合は、隣接する模様層同士の目地模様が曲っていないことが必要とされることに加え、ホームの形状と目地模様とが、相対的に曲っていない(ホームの伸びてゆく方向と、目地模様とが略平行に配置されている)必要もあり、複数の模様層を、極めて正確に敷き詰めていく必要がある。
このような場合には、不陸調整層の表面に、模様層を貼着する位置を示すガイドラインを描画する工程(所謂「墨出し工程」)が必要であった。墨出し工程とは、施工面(この場合、駅のプラットホーム)の基準線に沿って、所望の目地模様が描けるように、模様層の貼着位置を不陸調整層の表面に直線状に描画していく工程であり、作業者が、目視で確認しながら一本一本描画していく必要があった。このため、施工面が比較的広く、大量の模様層を貼着させる必要が生じると、墨出し工程に要する作業時間と手間も増大し、工期短縮の足枷となっていた。
これに対し、本発明の舗装方法によれば、不陸調整層作製工程の後且つ搬入工程の前に、不陸調整層の表面に、ガイドラインを描画するガイドライン描画工程をさらに有している。これにより、不陸調整層を連続的に規則正しく敷き詰めていくだけで、その表面に描画されたガイドラインも規則的に配置される。従って、作業者は、ガイドラインを目印にして模様層を貼着させていくことができ、墨出し工程に要する手間と時間を大幅に削減することが可能となる。
なお、施工面の形状や、不陸調整層の敷き詰め方によっては、連続するガイドラインが歪んでしまう場合も考え得る。このような場合には、施工現場にてガイドラインに修正を施す必要が生じるが、最初から全てのガイドラインを施工現場で描画する従来の墨出し工程に比べれば、予め目印となるガイドラインが描画されていることにより、極めて少ない時間と手間でガイドラインを完成させることができ、墨出し工程に係る作業量を低減することが可能となる。
また、従来の湿式工法においては、目地層の表面にガイドラインを描画し、当該ガイドラインに沿って目地部材を貼着させ、表層材を塗布し、硬化後に目地部材を剥離することで直線状の目地模様を実現していた。この場合、ガイドラインの真上に目地部材を貼着させると、目地部材を剥離した後に目地部にガイドラインが露出する結果となり、目地部の色合いが損なわれて意匠性を低下させる場合もあった。
これに対し、本発明の本発明の舗装方法によれば、ガイドラインは不陸調整層の表面に描画されるため、模様層で被覆され、目地部には現れない構成となる。従って、目地部の色合いを損なわせる虞が無く、より意匠性の高い舗装面が簡易に提供できる。
また、本発明の舗装方法において、「前記模様層作製工程は、内部に前記樹脂モルタルを充填させることが可能な型枠内に、前記目地層となる前記樹脂モルタルを塗布して充填させる目地層形成工程と、前記型枠に設けられた目地固定部に棒状の目地部材を固定し、前記目地層形成工程によって形成された前記目地層の表面に、前記所定の目地模様と略同形状となるように前記目地部材を貼着させる目地部材貼着工程と、該目地型枠貼着工程によって前記目地部材が貼着された前記目地層の表面に、前記樹脂モルタルを、前記目地部材の高さと略等しくなるように塗布し、前記型枠内に充填する表層材塗布工程と、該表層材塗布工程によって塗布された前記樹脂モルタルが略硬化した状態で、前記目地部材を剥離する目地部材剥離工程とをさらに有する」ものとすることができる。
ここで、「棒状」とは、適宜の厚みと幅を有し、且つ直線状である形状を示し、例えば、略2mmの厚みと10mmの幅を有する帯状の目地部材などが挙げられる。
従って、本発明の舗装方法によれば、模様層作製工程は、目地層形成工程と、目地型枠貼着工程と、表層材塗布工程と、目地部材剥離工程とを有して構成されている。
まず、目地層形成工程において、内部に樹脂モルタルを充填することが可能な中空状の型枠内に、目地層となる樹脂モルタルを充填させていく。そして、表面が略硬化した状態で、型枠に設けられた目地固定部に棒状の目地部材を固定させ、所望の目地模様状に目地部材を貼着していく。そして、目地部材の厚みと略等しくなるように、表層材となる樹脂モルタルを塗布し、硬化後、目地部材を剥離する。このようにすることで、目地部材の厚みと略等しい厚みを有する表層材が形成される。また、貼着させた目地部材と略等しい形状の目地層が視認可能に露出され、目地模様を形成する。
これにより、型枠内に樹脂モルタルを充填させるだけで、模様層の外形サイズを決めることができるので、均一なサイズの模様層を簡単に大量生産することができる。また、型枠に目地固定部が備えられているので、目地部材の貼着位置が判りやすく、ずれ難い。これにより、迅速に且つ確実に意匠性の高い模様層を作製できる。
なお、搬入工程においては、「型枠から剥離した状態の模様層を搬入する」方法としてもよく、「型枠と模様層とを一体化した状態で施工現場へと搬入する」方法であってもよい。「型枠から剥離した状態の模様層を搬入する」場合は、施工現場において型枠と模様層とを剥離する手間と時間が削減できるため、現場での施工期間をより短縮することが可能となる。一方、「型枠と模様層とを一体化した状態で施工現場へと搬入する」方法によれば、型枠が補強材として機能することにより、搬入までの工程で模様層が欠けたり、曲ったりする虞が軽減すると共に、大量に積み重ねて運搬することができるから、運搬に係るコストや時間を削減できるという作用効果を奏する。
このように、本発明の舗装方法によれば、不陸調整層と模様層とが別体として予め作製され、施工現場へと搬入される。これにより、施工現場における不陸調整処理と、模様層形成工程とに要する時間を大幅に削減することができ、施工期間を短縮することが可能となる。また、不陸調整層と模様層とが別体にて構成されているので、不陸調整層がひび割れても、模様層に影響を与え難く、意匠性の高い舗装面を簡易に提供できる。また、連続して貼り付けられた不陸調整層の継ぎ目と模様層の継ぎ目とをずらして施工することにより、継ぎ目からのひび割れを起こし難く、耐久性の高い舗装面を提供できる。
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図7に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって作製された舗装面の断面を模式的に表した断面模式図であり、図2は不陸調整層の斜視図であり、図3は模様層の斜視図であり、図4は型枠の斜視図であり、図5は模様層の作製工程を説明する説明図であり、図6は舗装中の施工面を示す平面図であり、図7は不陸調整層と模様層との接合部を示す断面模式図である。
本実施形態の舗装方法によって作製された舗装面1は、図1に示すように、駅のプラットホームなどの施工面2の表面に配置された不陸調整層3と、不陸調整層3の表面に配置された模様層4とを有して構成されている。また、模様層4の表面には、保護層5が形成されている。
不陸調整層3は、施工面2の表面にある細かな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面を形成する層であり、公知の不織布にメチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を含浸させることで形成される。ここで、公知の不織布としては、例えばガラス繊維、綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド等の各種の繊維を編み・織りなどの方法によらないで繊維のままで結合させ布状にしたものを示し、材質及び結合の方法は特に限定されるものではない。また、本例の不陸調整層3に使用されるMMA樹脂には、軟質のものが選択されている。これにより、施工面2の表面に存在する凹凸に対する追従性がよく、好適に不陸調整処理が可能であると共に、運搬時にひび割れなどを起こし難いという作用効果を有している。
不陸調整層3の形状としては、連続して隙間無く敷き詰めることが容易な幾何学的形状であれば良く、本実施形態においては、約600mm四方の正方形状のものが使用されている(図2参照)。厚みとしては、使用される不織布の材質や、施工面2の表面状態によって適宜に選択され得るものであり特に限定されるものではない。なお、図1に示す断面模式図では、舗装面1の断面状態を説明するために各層の厚みを模式的に示しており、縮尺等は図面の状態に特定されるものではなく任意に選択される。
また、不陸調整層3の表面には、図2に示すように、模様層4を貼着させる位置の目安となるガイドライン8が描画されている。ガイドライン8の描画方法としては、例えば墨汁、油性ペン、チョーク、ペンキ、その他公知の筆記用具で描画する方法や、彫刻、焼き入れ、適宜の目印部材を埋設する、等の方法が例示できる。要するに、模様層4を貼着させる位置の目印として視認容易なものであれば、如何なるものであっても良い。
模様層4は、図1及び図3に示すように、目地層6と表層材7からなる層とを有して構成されている。目地層6は、表層材7の下層に位置する層であり、タイル状に形成された複数の表層材7の隙間から視認可能に露出することで、目地部9の色合いを表現する層としての機能を有している。目地層6に用いられる材質としては樹脂モルタルが適用されている。樹脂モルタルとは、結合材に樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたものであり、水を結合剤とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。本実施形態の目地層6に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。さらに、目地層6には、目地部9の色を表現するための顔料が配合されている。
表層材7は、模様層4を主に構成する層であり、目地層6と同様のMMA樹脂モルタルが適用されている。なお、MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材7には、表層材7の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
保護層5(図1参照)は、表層材7の表面及び目地部9を被覆する層であり、透過性を有する樹脂であれば如何なるものであっても良い。例えば、アクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂や、アクリル系樹脂(表層材7等に使用されている本実施形態のMMA樹脂であっても良い)などが適用される。
ところで、本実施形態の舗装方法によれば、模様層4を作製するために、図4に示すような型枠10が用いられている。型枠10は、内部にMMA樹脂モルタルを充填させて模様層4を作製する際の型枠材として機能するものであり、材質としては、ステンレス等の適宜の金属、木材、セラミックスなどが例示できる。形状としては、底面が目地層6と略等しい形状の平板状を呈し、その周辺の三方向は底面から垂設された板状の支持部材11によって囲まれている。上面は開放されており、支持部材11には、後述する目地部材13を係止することが可能な目地固定部12が設けられている。本例の型枠10の支持部材11は、高さが約10mm、幅が約600mmであり、目地固定部12は、支持部材11の上端側から高さ約2mm、幅10mm(目地部材13の形状と略等しい形状)の切れ込みが設けられることで形成されている。
また、本実施形態の舗装方法によれば、模様層4を作製するために、図5に示すような目地部材13が用いられている。目地部材13は、目地部9を形成するための部材であり、詳細は図略しているが、ポリウレタンからなる発泡樹脂体の裏面側に、ゴム系粘着剤による粘着層が備えられ、表面側には、水分や樹脂モルタルが浸透し難いようにポリエチレンテレフタレートからなる保護シートが備えられている。形状は、厚みが約2mm、幅が約10mmの帯状の物体であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが所定の長さに切断され、目地層6上に貼着されることで目地部材13として機能するものである。
次に、本発明の舗装方法について説明する。まず、不陸調整層作製工程では、図2に示すように、工場等の作製現場において、公知の不織布にMMA樹脂を含浸させ、硬化するまで待機する。そして、所定形状(本実施形態では約600mm角の略正方形)に切断する。さらに、表面側に、模様層4の貼着位置を示すガイドライン8を描画する。ガイドライン8の位置としては、不陸調整層3の端部でなければいずれの位置であっても良いが、本例では、左右略中央付近に十字形に(左右端部側から約300mm程度の位置)描画している。このような位置に描画することにより、隣接する不陸調整層3同士の継ぎ目を一枚の模様層4の略中央付近に位置させることができる。
続いて、模様層作製工程では、図5(a)に示すように、型枠10に本例のMMA樹脂モルタルを充填させ、表面が滑らかで均一な厚みとなるようにコテなどで表面を均していく。本例の型枠10の支持部材11には、その上端部に、厚さ約2mmの切れ込み部として設けられた目地固定部12を有している。従って、目地固定部12の底辺付近を目印としてMMA樹脂モルタルを充填させていくことで、全体として約8mmの厚みを有する目地層6が形成される。なお、目地固定部12及び目地層6の厚みとしては、この値に限定されるものではなく、施工面2の状態や運搬事情によって適宜に変更可能である。例えば、目地層6や後述する表層材7の厚みを薄くすれば、一枚あたりの模様層4の重量が軽くなるため、一度に大量の模様層4を運搬できるため好適である。また、目地層6や後述する表層材7の厚みを厚くすれば、運搬途中にこれらの層がひび割れたり欠けたりする虞が軽減するという作用効果を奏する。
次に、図5(b)に示すように、略硬化した状態(少なくとも表面が変形しない程度に硬化した状態)の目地層6の表面に、目地部材13を貼着させていく(目地部材貼着工程)。具体的には、棒状の目地部材13を目地固定部12に係止し、粘着層を目地層6の表面に押し付け、直線状に目地部材13を配置していく。
なお、目地部材13の形状、または貼り付け方としては、これに限定されるものではなく、所望の目地模様に沿って自由に選択することが可能であるが、本例では、碁盤目状の目地模様を採用している。また、略正方形状の目地層6のうち、周辺の2辺に目地部材13を貼着させ、他の2辺は開放した(目地部材13を貼り付けない)状態で形成することで、目地部9を有する周辺と、目地部9を有さない周辺とが存在するよう構成している。このように構成すると、連続的に複数の模様層4を敷き詰めていく際に、目地部9を有する周辺と有さない他の模様層4の周辺とを隣接させて配置し、目地部9の継ぎ目を分かり難くすることができ、自然で連続的なものとして構成することができる。
次に、図5(c)に示すように、目地部材13が貼着された状態で、目地層6の表面に、表層材7となるMMA樹脂モルタルを塗布していく。そして、目地部材13の厚みと略等しくなるように、表面を滑らかに均していく。このように形成することで、目地部材13の厚み(本例では約2mm)と略等しい表層材7が形成できる。この時、支持部材11の厚みは目地層6及び表層材7の厚みを重畳したものと略等しく形成されているので、支持部材11の上端部に沿ってコテなどを滑らせていくことにより、より簡易に平滑な表層材7が形成できる。
そして、図5(d)に示すように、塗布したMMA樹脂モルタルが略硬化した状態で、目地部材13を目地層6上より剥がしていく。これにより、貼着させた目地部材13の形状と略等しい目地部9を有する模様層4が完成する(図5(e)参照)。
続いて、搬入工程では、不陸調整層3及び模様層4を別体として施工現場へと搬入する。なお、模様層4は、型枠10から離型させて施工現場へと搬入しても良いし、型枠10から離型させない状態(図5(e))状態で施工現場へと搬入しても良い。型枠10から離型させて施工現場へと搬入すると、施工段階で離型させる手間が省けるので、現場での施工に要する時間を短くすることができる。一方、離型させずに施工現場へと搬入すると、運搬途中で模様層4が折れ曲がったり欠けたりして意匠性が低下するのを防止することができる。
そして、施工現場では、施工面2上に、図6に示すように不陸調整層3を連続的に敷き詰めていく。ここで、施工面2としては、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォームなど特に限定されるものではないが、不陸調整層3を貼着させていくにあたって、予めゴミ等を取り除き、大きな段差やひび割れなどを補修して滑らかに研磨しておくと、より平滑な舗装面が形成できるため一層好適である。
不陸調整層3を施工面2に貼着させる方法としては、工場での作製段階において不陸調整層3の裏面側に適宜の粘着層を設けたり、施工現場で接着剤を塗布したり、若しくは施工面2上に樹脂モルタルなどを塗布して不陸調整層3を載置させ貼着させる等の方法が挙げられる(不陸調整層貼着工程)。また、施工面2上に、不陸調整層3の貼着位置を描画すると、その上にさらに配置される模様層4の目地部9(図5参照。以下同じ)の配列を整えることができるので、より効果的である。不陸調整層3の貼着位置を描画する方法としては、施工面2の基準位置に沿って、墨などを用いて貼着位置を描画していく方法(不陸調整層墨出し工程)などが挙げられる。例えば、施工面2が駅のプラットホームであれば、ホームの端面に沿って略平行となるように整然としたラインを引き、当該ラインに沿って不陸調整層3を貼着させていく。このように形成することで、その上に貼着される模様層4の貼着方向も一定となり、模様層4に形成された碁盤目状の目地模様がホームの端面に沿って略平行に配置される。なお、不陸調整層4の貼着位置を示すために引いたラインは、不陸調整層3を貼着させていくことによって隠蔽されるため、舗装面1上に現れない。従って、模様層4の意匠性を損なうことが無いばかりか、目地部9の配列方向も整えられることにより舗装面1の意匠性を向上させることができ、一層効果的である。
次に、模様層貼着工程では、不陸調整層3の表面に描画されたガイドライン8に沿って、模様層4を貼着させていく。不陸調整層3と模様層4との接着方法としては、不陸調整層3と施工面2との接着方法で述べた方法と同じ方法を適用することができる。つまり、模様層4の裏面側に公知の粘着層を設けても良く、施工現場で模様層4の裏面側に樹脂モルタル等を塗りつけても良く、不陸調整層3の表面に樹脂モルタル等を塗布しても良い。但し、不陸調整層3の表面に描画されたガイドライン8を完全に視認不可能に遮蔽しない色や塗布方法であることが好ましい。この時、ガイドライン8は、不陸調整層3の略中央付近に描画されているので、図7に示すように、不陸調整層3の継ぎ目14と模様層4の継ぎ目15とが連続して重なり合わないよう配置される。また、模様層4の周辺の一辺側に目地部9が設けられ、これに対向する他辺側には目地部9が配置されないよう構成されていることにより、隣接する模様層4同士の継ぎ目14を目地部9の境界部に配置することができる。従って、継ぎ目14を目立ち難くすることができ効果的である。なお、「継ぎ目14」が本発明の「不陸調整層同士の継ぎ目」に、「継ぎ目15」が「模様層同士の継ぎ目」に、夫々相当する。
続いて、保護層塗布工程に移行する。保護層塗布工程では、不陸調整層3上に貼着された模様層4の表面に、透明な樹脂を塗布していき、硬化させる。これにより、模様層4の表面に保護層5が形成され、舗装面1が完成する(図1参照)。このように、模様層4の表面に保護層5を形成することで、模様層4に奥行きのある透明感を付加させ意匠性を向上させることができると共に、傷や汚れ、紫外線による変色から模様層4を保護することができ、経済的な舗装面1を提供できる。
以上のように、本発明の舗装方法によれば、プライマーや下塗り組成物を塗布する工程が必要無く、不陸調整層3を貼着させるだけで、滑らかな表面を形成できる。これにより、施工現場で液状の樹脂モルタル等を塗布して不陸調整層を形成する場合に比べて、硬化に要する時間を削減することができる。また、気温や湿度が制御しやすい工場等において不陸調整層3を作製する方法であるため、比較的熟練した技術を要することなく均一な品質の不陸調整層3を形成することができる。
また、目地部9を通して目地層6が視認可能に露出することで模様層4が形成されていることにより、目地部9から不陸調整層3が露出しない。これにより、仮に施工面2や不陸調整層3にひび割れや欠陥などが生じていても、舗装面1上には現れないため、意匠性の高い舗装面1を提供できる。
さらに、本例によれば、不陸調整層3に軟性の樹脂モルタルが適用されていることにより、不陸調整層3を折り曲げて搬入することが容易となっている。これにより、必要に応じて折畳んだり、ロール上に折り曲げて搬入することも可能となり、運搬が楽になるため効果的である。また、不陸調整層3が600mm四方の単位部材として構成されている場合は、連続的に敷き詰めるだけで施工面2の形状や大きさに対応することができ、より複雑な地形の施工面2や広い施工面2の舗装に好適に適用される。
また、不陸調整層3の表面に、模様層4の貼着位置の目印となるガイドライン8が描画されているから、不陸調整層3を貼着させるだけで模様層4の貼着位置が分かる。そして、ガイドライン8に沿って模様層4を貼着させていくだけで、模様層4に表現された目地部9が整然とした状態で配列されるので、極めて簡易に美しい碁盤目状の目地模様を有する舗装面1を提供できる。
さらに、本例の舗装方法によれば、模様層4を作製する型枠10に目地固定部12が設けられているから、目地部材13を貼着する位置が判りやすく、且つ貼着後にずれ難い構成とすることができる。これにより、模様層作製工程にかかる時間を削減できると共に、模様層4の完成度を向上させることができる。また、比較的熟練の技術を要することなく意匠性の高い模様層4を作製できることにより、経済的な舗装方法を提供できる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、大判の不織布にMMA樹脂を含浸させ、硬化した後に所定の単位形状に切断する場合を例示したが、この方法に限定されるものではない。例えば、所定の単位形状に切断した不織布に樹脂を含浸させ、不陸調整層3を得る方法であってもよい。この方法によれば、樹脂が染み込んで硬化した不織布を切断する際に、切断の衝撃で不陸調整層3にひび割れ等が生じる虞がない。また、柔らかい布(不織布)の段階で切断できることにより、切断に要する手間を削減することができる。但し、本例のように、MMA樹脂を染み込ませた後に切断する方法を採用すると、樹脂が硬化する段階で不織布が縮んでしまったり、反って形状が変形してしまう虞が少ないため、より好適である。
また、上記実施形態では、ライン状に線引きされたガイドライン8を有する不陸調整層3を例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、貼着位置を示すマーカーを埋設する構成であっても良いし、不陸調整層3の表面の一部を削り取り、貼着位置を彫り込むものであっても良い。要するに、その表面に貼着する模様層4の貼着位置が判るものであれば、如何なるものであっても良い。
また、上記実施形態に加え、さらに、不陸調整層貼着工程と模様層貼着工程との間に、「墨出し補正工程」を有するものとしても良い。すなわち、連続して敷き詰めた不陸調整層3の表面のガイドライン8を目視で確認し、仮にガイドライン8がずれていたり曲っているような場合には、ガイドライン8を再描画する工程を付加しても構わない。このような場合は、ガイドライン8を再描画する墨出し補正工程(ガイドライン8を貼着する位置を決め、新たに線引きする工程)を行うことが必要となるが、模様層4に描かれた目地部9をより厳密に整列させることができ、一層完成度の高い舗装面1を提供できる。なお、この方法によれば、墨出し修正工程を追加する必要は生じるものの、ガイドライン8が全く描画されていない不陸調整層3の表面に、施工現場において新規に墨出しする場合に比べて、予め目安となるガイドライン8が描画されていることにより、線引きに要する手間と時間を削減できるという作用効果を奏している。
さらに、上記実施形態では、型枠10に目地層6となるMMA樹脂モルタルを充填させる方法を例示したが、この工程において、型枠10に公知の離型紙を敷き詰めてから樹脂モルタルを充填させる方法としても良い。また、離型紙に替えて、液状若しくは固形の離型剤を型枠10に塗布する方法であっても良い。このような方法を採用することで、模様層4を型枠10から剥離させる際に、模様層4の型枠10に対する癒着やそれに伴う変形等を防止することができ、スムーズに剥離できるため好適である。