ところで、上記のような型枠部材50を用いた場合には、以下に掲げる問題があった。すなわち、型枠部材50を下地層から剥離する場合、表層材が完全に硬化した状態で型枠部材50を剥離すると、表層材と型枠部材50とが固着してしまいスムーズに剥離できない事態が考え得る。そこで、表層材が完全に硬化する前の、柔らかい部分を残した所謂半硬化状態において、型枠部材50を剥離させることが一般的に行われている。この時、型枠部材50のうち碁盤目状を形成する所定の一方向の部材(以下、単に「縦部材52」とする)と、この縦部材に直交する方向に配設されている部材(以下、単に「横部材53」とする)とが同時に引っ張られて下地層より剥離される。これにより、縦部材52と横部材53との交差部Aでは、縦方向の引っ張り力と横方向の引っ張り力とが同時に加わる。このため、交差部Aに当接する表層材(四角形状の隅部)に型枠部材50が引っ掛かり、半硬化状態の表層材の隅部が欠けてしまうという剥離不良が発生する場合があった。
また、施工面の形状は一定であるとは限らず、傾斜していたり、湾曲していたりすることも多い。従って、規格化された型枠部材50を適用しただけでは、目地模様を俯瞰した状態において整然とした碁盤目状を表現できない場合、つまり、施工面の傾斜に沿って、目地模様が歪んで見える場合があり、各施工現場毎の施工面形状に合致するように、専用の型枠部材50を作成する必要があった。これにより、型枠部材50の作成に要するコストが高くなるという問題があった。
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、剥離不良による表層材の欠損を防止することができ、且つ経済性にも優れる舗装方法の提供を課題とする。
本発明に係る舗装方法は、「平滑な下地層を形成する下地層塗布工程と、発泡体より構成される棒状の複数の目地型枠部材を、前記下地層の表面に、所定の一方向及び該所定の一方向に直交する方向に向けて碁盤目状に夫々略平行に所定の間隔で貼着する目地型枠貼着工程と、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂を結合材に用い、骨材に雲母を含有する樹脂モルタルからなり、前記結合材よりも比重が軽いワックスを混入した表層材を配合する表層材配合工程と、前記下地層の表面に、前記目地型枠部材の厚みと同じになるように、前記表層材を塗布し、前記結合材が硬化する過程で表面に浮上した前記ワックスで膜を形成する表層材塗布工程と、前記表層材の前記目地型枠部材との接触部が半硬化し、表面が略硬化した状態で、前記所定の一方向及び前記所定の一方向に直交する方向の前記目地型枠部材を夫々別個独立に剥離する目地型枠剥離工程と、前記目地型枠部材が除去された後に、少なくとも前記表層材の表面に対して、透過性を有する液状の樹脂を保護膜として塗布する保護膜塗布工程とを主に具備する」ものである。
ここで、「平滑な」とは、施工面上に存在する比較的小さな凹凸を埋め合わせ、滑らかな表面形状を形成する状態を示す。また、「棒状」とは、適宜の厚みと幅を有し、且つ直線状を呈する物体の形状を示し、例えば、略2mmの厚みと10mmの幅を有する帯状の目地型枠部材などが挙げられる。また、「所定の間隔で」とは、碁盤目状の目地模様を形成するために必要とされる間隔を示し、例えば、縦方向に300mm毎の間隔で複数の目地型枠部材を配置し、この目地型枠部材に垂直な方向、すなわち横方向に300mm毎の間隔で別の目地型枠部材を複数本配置する状態等を示す。なお、間隔量はこの数値に限定されるものではなく、施工の仕様によって、適宜変更することは当然可能である。
さらに、「略硬化した状態」とは、表層材が完全に硬化した状態のみならず、硬化途中の過程(所謂半硬化状態)も含む状態である。また、「透過性を有する」とは、有色透明または無色透明のいずれであっても良いが、少なくとも表層材の表面に現れた模様等を一見して識別することが可能な色であることを示す。また、本発明の保護膜塗布工程における「表層材の表面」とは、目地模様によって碁盤目状に区画された表層材の表面(以下、単に「表面」と云う)を示すものであるが、目地部に位置する端面側の表面を覆うものであっても構わない。
また、「ワックス」とは、脂肪酸と一価又は二価アルコールのエステルを示し、例えば原油の減圧蒸留留出油部分から、結晶性の良い炭化水素を分離抽出したパラフィンワックスなどが例示できる。また、「発泡体」とは、内部に気泡を有する材質であれば特に限定されるものではないが、例えば発泡性ポリウレタン系樹脂や発泡性ポリエチレン系樹脂等が例示できる。
本発明の舗装方法によれば、目地型枠部材が棒状であるため、下地層から目地型枠部材を剥離する際に、所定の一方向の目地型枠部材(以下、縦部材という)と、所定の一方向に直交する方向の目地型枠部材(以下、横部材という)とを別個独立に剥離させることが可能である。これにより、目地型枠部材を下地層から剥離する際に、縦部材と横部材との交差部が、碁盤目状に区画された四角形状の表層材の隅部に引っ掛かることがなく、スムーズに剥離できるため、剥離不良の可能性を低減できる。また、目地型枠貼着工程において、施工面の湾曲や傾斜の状態に応じて、隣接する縦部材同士(または横部材同士)の間隔を容易に変更できるため、規格化された格子状の目地型枠部材を使用する場合に比べて、より簡単且つ安価に美しい碁盤目状の目地模様を実現できる。
さらに、本発明の舗装方法によれば、メチルメタクリレートモノマーを主成分とする樹脂(以下、単に「MMA樹脂」と云う)を結合材に用いた樹脂モルタルを表層材として適用するため、一般的なセメントコンクリートを適用する場合などに比べ、比較的硬化時間が短かく、迅速に施工作業を完了させることができる。また、表層材に用いられる当該樹脂モルタルは、骨材に雲母を含有しているため、高価で加工が難しい天然石を用いることなく、所謂御影石調の自然な風合いを容易に実現でき、経済的且つ高級感のある舗装を実現することが可能である。また、本発明の舗装方法においては、保護膜塗布工程が具備されていることにより、表面に汚れや傷をつき難くすることができる。さらに、保護膜が透明であることから、表層材中に含まれる雲母によって表現される光沢や質感を損なうことが無いばかりではなく、表面に奥行きのある高級な質感を付加することもでき、意匠性の高い舗装を提供できる。
ところで、MMA樹脂は、反応が常温で進行する常温硬化型であり、適量の硬化剤(重合開始剤)を加えると連鎖反応で硬化が進行する。しかし、硬化反応が進行している間に表面が空気に接触すると、空気中の酸素が硬化反応を鈍化させ、硬化時間が長期化する場合がある。
本発明の舗装方法によれば、表面塗布工程で表層材が塗布されて硬化する過程で、表層材中に配合されたワックスが表面に浮上し、ワックスの膜が形成される。従って、当該膜によって表層材の内部が空気から遮断されるため、表層材内部での硬化反応が阻害されることなく迅速に進行し、表層材塗布工程から目地型枠剥離工程へ移行するまでの時間を大幅に短縮することができる。
一方、目地型枠剥離工程において、表層材から目地型枠部材を剥離する際、表面及び目地部の双方が完全に硬化した状態では、目地型枠部材と表層材とが固着してしまい、スムーズに剥離できない恐れがある。しかし、表層材を塗布した直後、つまり表面が非常に柔らかく流動的な状態で目地型枠部材を剥離すると、目地型枠部材側に表層材の一部が付着して一緒に剥がれてしまい、碁盤目状に区分けされた表面形状が崩れて意匠性が低下する恐れもある。また、このように表面が柔らかい状態で目地型枠部材を剥離するためには、表面を傷つけないように当該型枠部材を剥離する作業スペース(足場)を確保する必要があり、極めて面倒であった。この問題に鑑み、本発明では、目地型枠部材が発泡材で構成されている。これにより、表層材の目地部、すなわち目地型枠部材との接触部においては、目地型枠部材内の気泡に含まれる酸素によってMMA樹脂の硬化反応が阻害され、表面に比べて硬化がゆっくりと進行する。従って、表面での硬化が略完了した状態でも、目地部の表層材は半硬化、つまり柔らかい状態となっているため、目地型枠部材をスムーズに剥離することができる。さらに、表面の硬化が迅速に進行することにより、足場を組む必要がなく、作業者が直接表層材塗布工程後の表層材の表面上に侵入し、目地型枠剥離工程を行うことができる。従って、作業者の負担を軽減できるばかりではなく、目地型枠剥離工程に要する作業時間を大幅に短縮することができる。
このように、本発明の舗装方法によれば、規格化された格子状の目地型枠部材を使用する場合に比べて、縦部材と横部材とを別個独立に剥離させることが可能であることから、剥離の際に生じ得る表層材の欠損を低減し、意匠性の高い舗装を提供できる。また、棒状の目地型枠部材を施工面の形状に沿って配置する構成のため、規格化された格子状の目地型枠部材を使用する場合に比べて、より簡単且つ安価に美しい碁盤目状の目地模様を実現できる。さらに、MMA樹脂を結合材とした樹脂モルタルを表層材に適用するため、表層材塗布工程から目地型枠剥離工程へと移行する時間を大幅に短縮でき、施工に要する時間、すなわち作業にかかる人件費を削減できるため、経済的である。
以下、本発明の一実施形態である舗装方法について、図1乃至図5に基づき説明する。図1は本発明の舗装方法によって形成された舗装面を示す斜視図であり、図2は舗装面の断面を模式的に表した断面模式図であり、図3は目地型枠部材の断面図であり、図4は目地型枠部材の貼着工程を示す説明図であり、図5は目地型枠部材の剥離工程を示す説明図である。
本実施形態の舗装方法によって作成された舗装面1は、図1及び図2に示すように、地面などの施工面2上に碁盤目状に区画形成された複数のタイル模様部3と、縦目地4a及び横目地4bで碁盤目模様を呈し、複数のタイル模様部3を互いに区分けしている目地部4とを具備している。タイル模様部3は、より詳細には図2に示すように、下地層5と、目地層6と、表層材7と、保護膜8とを備えている。
下地層5は、施工面2の凹凸を埋め合わせて平滑にするものであり、アスファルトコンクリートやセメントコンクリート等公知のコンクリートが選択可能であるが、本実施形態においては、樹脂モルタルが適用されている。なお、コンクリートとは、セメント、結合材、及び骨材を主に配合させたものである。また、樹脂モルタルとは、結合材に樹脂を用い、且つ粒径が5mm以下の骨材のみを用いたものであり、水を結合剤とする一般的なセメントコンクリートに比べて、機械的強度、耐水性、耐磨耗性、電気絶縁性、及び耐薬品性などに優れる。下地層5に用いられる樹脂モルタルの結合材としては、不飽和ポリエステル、エポキシ、フラン、ポリウレタン、及びメチルメタクリレートモノマー(以下、単に「MMA樹脂」と云う)等を主成分とする樹脂が例示できる。骨材としては、粒径が5mm以下であれば特に限定されるものではないが、例えば、粉末状のセルベン、珪岩、炭酸カルシウム、チタン、寒水石、パーライト、バーミキュライト、スチレン樹脂発泡体、クレー、カオリン、タルク、炭酸バリウムが例示できる。
目地層6は、目地部4の色を表現する層に該当し、本実施形態においては樹脂モルタルが適用されている。目地層6に配合されている骨材及び結合材としては、下地層5に例示したものが適用できるが、さらに、目地部4の色を表現するための顔料が配合されている。
表層材7は、タイル模様部3を主に構成する層であり、本実施形態においては、下地層5及び目地層6と同様に樹脂モルタルが適用されている。なお、表層材7に配合されている結合材としては、特にMMA樹脂が適用されている。MMA樹脂とは、メチルメタクリレートモノマーを主成分とするアクリル樹脂であり、速硬性・低温硬化性に優れ、硬化後の経時変化が少ない等の特長を有するものである。また、本実施形態の表層材7には、さらに、表層材7の表面に膜を形成することで大気中の酸素を遮断し、当該MMA樹脂の重合反応を阻害しないよう防護する機能を有するワックスが配合されている。ワックスとしては、特に限定されるものではないが、例えばパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸が例示できる。また、表層材7に配合されている骨材としては、前述で例示したものに加え、さらに雲母が配合されている。ここで、本実施形態における雲母とは、白雲母、金雲母、黒雲母などの天然雲母を破砕したもの(所謂非人工着色雲母)のみならず、これらに顔料を配合させて着色したもの(人工着色雲母)も含まれる。また、表層材7には、MMA樹脂の硬化反応を触発させるための硬化剤(ベンゾイルパーオキサイド等)や、硬化促進剤(アミン系硬化促進剤等)がさらに添加されている。
保護膜8は、表面材7の表面及び目地部4を被覆する層であり、透過性を有する樹脂であれば如何なるものであっても良いが、例えばアクリル系樹脂エマルジョンを主成分とする公知のスキン系樹脂が例示できる。
一方、本発明の舗装方法では、目地部4を形成する方法として、図3乃至図5に示すような目地型枠部材9が用いられる。目地型枠部材9は、縦目地4aを形成するための縦目地部材9aと、縦目地部材9aに対して略垂直に配置されて横目地4bを形成する横目地部材9bとから構成されている。目地型枠部材9は、具体的には図3に示すように、剥離テープ10と、粘着層11と、発泡体12と、保護テープ13とを具備するものである。剥離テープ10は、ゴミなどが粘着層11に付着して粘着力が低下することを防止するものであり、切断・折り曲げ・剥離作業などを阻害しない程度の柔らかさを持つシート状物質であれば、材質は特に限定されるものではない。粘着層11は、発泡体12を目地層6に対して貼着させて固定するものであり、発泡体12の裏面側に形成されている。材質としては、ゴム系粘着剤や、アクリル酸エステル等のアクリル系粘着剤等、公知の粘着手段が適用される。
発泡体12は、内部に多数の空隙Kを有し、粘着層11を介して目地層6上に貼着され、表層材7を区画する部材である。材質としては、多数の空隙Kを有するものであれば如何なるものであっても良く、発泡性ポリウレタン系樹脂、発泡性ポリエチレン系樹脂、グラスウール等が例示できる。保護テープ13は、発泡体12の表層側(保護テープ13が貼着されている側)から表層材7などが空隙K内へと浸透し、固着することを防止するものであり、発泡体12の表層側に形成されている。材質としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレンテレフタレート(所謂PET)など、比較的薄手で透湿性の低いものが適用される。
なお、剥離テープ10、粘着層11、発泡体12、及び保護テープ13はほぼ等しい表面形状を有している。そして、目地型枠部材9は、厚みが約2mm、幅が約10mmの帯状の物体であり、適宜の長さ(例えば数十メートル程度)のものが環状に巻回された状態で施工現場へと搬送され、所定の長さに切断され、目地層6上に貼着されることで縦目地部材9a、及び横目地部材9bとして機能するものである(詳細は後述する)。
続いて、本発明の舗装方法について説明する。本発明の舗装方法は、六つの工程、すなわち、「下地層塗布工程」、「目地型枠貼着工程」、「表層材配合工程」、「表層材塗布工程」、「目地型枠剥離工程」、及び「保護膜塗布工程」に大別することができる。
まず、「下地層塗布工程」では、図2に示すように、道路、広場、駅のコンコースまたはプラットフォームのような施工面2に対して、下地層5及び目地層6を形成する。具体的には、施工面2上の塵やゴミ、埃などを除去し、塗料等の飛散を防止するため施工面2の周囲をビニールシートで覆う(所謂「養生」をする)。そして、結合材である樹脂及び骨材を配合して樹脂モルタルを作成し、当該樹脂モルタルを施工面2上に塗布する。これにより、施工面2上に存在する細かな凹凸が埋め合わされ、平滑な表面形状を有する下地層5が形成される。なお、樹脂モルタルを施工面2上に塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばローラーや刷毛、鏝など適宜の工具を用いる。
続いて、下地層5の表面に、目地層6を形成する。すなわち、結合材である樹脂、顔料、及び骨材を配合して、着色された樹脂モルタルを作成し、この樹脂モルタルを下地層5の表面に一様に塗布する。この際、公知の測量器やレーザー墨出し装置等を用いて、レベリング(施工する面の水平出し)をすると、より好ましい。目地層6は、後述する「目地型枠剥離工程」において目地型枠部材9が剥離された後に、舗装面1を俯瞰した状態で複数のタイル模様部3間から見える層であり、表層材7の色とは対照的な色を着色することが望ましい。また、顔料を配合せず、自然な色合いをそのまま利用する構成とすることも当然可能である。
次に、「目地型枠貼着工程」では、目地層6の表面に目地型枠部材9を貼着する。具体的には、まず、公知の測量器やレーザー墨出し装置を用いて、所定の目地模様を形成するための位置だしをする。そして、糸車に収められた細くて丈夫な糸を、墨汁に浸し(所謂「墨壷」)、前述の位置だしに沿って当該目地模様の上に糸を配置する。この状態で、糸を爪先で弾くと、目地層6上に糸が衝突して付着していた墨が落ち、目地層6上に目地模様の下書き14(図4参照)が出来上がる。
そして、前述した目地模様の下書き14に沿って、目地型枠部材9を配置する。詳細には図4に示すように、下書き14で示される碁盤目状の目地模様のうち、所定の一方向(以下、縦方向とする)に目地型枠部材9を配置し、当該目地型枠部材9を構成する発泡体12に貼着されている剥離テープ10を剥がして、粘着層11を下書き14上に押し付け、目地層6上に貼着させていく。そして、所定の長さ(例えば、施工面2の表面積が5m×3mであれば、約5m等)で切断する。こうして、縦目地部材9aが形成される。続いて、下書き14で示される碁盤目状の目地模様のうち、縦方向に直交する方向(以下、横方向とする)に目地型枠部材9を配置し、同様にして剥離テープ10を剥がし、発泡体12を目地層6上に貼着させて、所定の長さ(前述の例では、約3m)で切断する。こうして、横目地部材9bが形成される。この際、横目地部材9bは、カッター等を用いて縦目地部材9aと交差する部位を切除し、隣接する縦目地部材9aの所定の間隔(例えば、300mm角のタイル模様部3を作成する場合であれば、300mm)に切り出しておくと、縦目地部材9aと横目地部材9bとの交差部に隙間ができ難くなるため、より好適である。このようにして、目地層6上に、縦目地部材9aと横目地部材9bとで碁盤目状の目地模様の枠型が配置される。なお、目地型枠部材9から剥離テープ10を剥がす工程と、所定の長さに切断して縦目地部材9aまたは横目地部材9bを取り出す工程との順番は、これに限られるものではなく、逆であっても良いし、同時進行であっても良い。
続いて、「表層材配合工程」では、MMA樹脂、ワックス、雲母入りの骨材とを配合し、MMA樹脂モルタルを作成する。これらの構成材料の配合比率としては、特に限定されるものではないが、例えば、地面温度が10℃の時、MMA樹脂が5kg、骨材が約10kg等の配合比率を用いることが例示できる。より詳細には、MMA樹脂5kgに対して硬化剤を200g添加し、セルベン4kg、顔料4kg、雲母2kg、ケミベスト10g、及びチタン10gからなる骨材約10kgを配合する。
そして、「表層材塗布工程」では、作成された当該樹脂モルタルを、目地層6上に塗布していき、縦目地部材9a及び横目地部材9bで区切られた四角形状の領域内に充填させていく。さらに、充填された樹脂モルタルの表面を、鏝などで撫でて平らにしていき、縦目地部材9a及び横目地部材9bの厚みと同じ高さになるように均す。こうして、タイル模様部3(図2参照)を有する表層材7が形成される。ここで、表層材7にはワックスが配合されていることにより、樹脂等に比べて比較的比重の軽いワックスが表層材7の表面付近に浮上し、膜を形成する。このため、表層材7の内部が大気の酸素から遮断され、MMA樹脂の重合反応が阻害されず、硬化が迅速に進行する。
そして、表層材7の表面H(図5参照)が乾燥するまで待機する。なお、施工時間を短縮するために、公知の乾燥手段、例えばドライヤーなどを用いて表面Hを乾燥させても良いが、本実施形態の表層材7には結合材としてMMA樹脂が配合され、さらにMMA樹脂の硬化を促進させる硬化促進剤が添加されている。さらに、前述のワックスの膜が形成されていることにより、特段の手段を用いずとも、比較的迅速に硬化反応が進行する。
表面Hが乾燥した段階で、縦目地部材9a及び横目地部材9bを目地層6上より剥離する(「目地型枠剥離工程」)。より詳細には、図5に示すように、まず、複数の縦目地部材9aを剥離し、次に横目地部材9bを剥離していく。ここで、発泡体12の内部には、多数の空隙Kが存在している。また、表層材7に配合されているワックスは、比較的比重が軽いため主に表層材7の表面H付近へと集中的に浮上し、発泡体12と表層材7との接触部(目地部4、図2参照)付近には膜を形成し難い。このため、空隙Kと表層材7とがワックスの膜を介することなく直接的に接触しやすく、空隙K中の酸素によってMMA樹脂の重合反応が阻害され、目地部4の表層材7が硬化し難い状態となっている。従って、表面Hが十分に硬化した状態でも、目地部4に位置する表面材7の端面部は比較的柔らかいため、縦目地部材9a及び横目地部材9bをスムーズに剥離することができる。なお、このような、表層材8の表面Hのみが硬化し、目地部4に位置する端面部は柔らかい状態が、本発明の「略硬化した状態」に該当する。
ここで、仮に図6に示されるような格子枠上の目地型枠部材50を適用した場合は、縦目地部材9aと横目地部材9bとが同時に目地層6上より剥離されるため、縦方向の力Xと横方向の力Y(図5参照)とが同時に表層材7に加わる。従って、縦方向の力Xと横方向の力Yとの合成力Z、すなわち四角形状に区切られた表層材7(タイル模様部3)の内側に向かう力Zが加えられ、タイル模様部3の隅部がひっかかって欠けてしまう恐れがあった。しかし、本例によれば、縦目地部材9aと横目地部材9bとを別個独立に剥離することができるため、縦方向の力Xと横方向の力Yとが合成されることなく、別々に表層材7に加えられる。従って、タイル模様部3の隅部にひっかかることなくスムーズに剥離することができる。
次に、「保護膜塗布工程」では、表層材7の表面H及び目地部4(図2参照)に保護膜8が塗布される。保護膜8は、ローラー、刷毛、鏝、スプレーガンなど適宜の工具を用いて塗布される。こうして、図1に示すような複数のタイル模様部3を有する舗装面1が完成する。
以上のように、本例の舗装方法によれば、縦目地部材9aと横目地部材9bとを、目地層6上より互いに別個独立に剥離することができるため、タイル模様部3の隅部にひっかかって剥離不良を起すことが無い。従って、比較的簡単な方法で意匠性の高い舗装面1を提供できることに加え、剥離不良に起因する施工のやり直しをする可能性が少なく、経済的な舗装方法を提供することができる。
また、本例の舗装方法によれば、棒状の目地型枠部材9を施工面2の形状に沿って貼着させる構成である。このため、施工面2が湾曲していたり、傾斜していたり、また、施工現場に壁、柱、及び障害物(灰皿、ベンチ、自動販売機等)が存在する場合であっても、専用の目地型枠部材を作成することなく、施工現場の状況に応じた目地模様を迅速かつ経済的に形成することができる。
さらに、本例の舗装方法によれば、MMA樹脂を結合材とし、ワックスが配合されている表層材7を適用するため、水を結合材とするセメントコンクリート等を用いる場合に比べて、表層材塗布工程の後、表層材7が極めて迅速に硬化する。また、この時、目地型枠部材9が発泡体12を具備していることにより、目地部4に位置する表層材7の端部は比較的柔らかい状態に保たれる。さらに、本例によれば、目地型枠部材9の上面に保護テープ13が備えられているため、表層材塗布工程で、仮に目地型枠部材9の上面に表層材7が塗込められることがあっても、当該目地型枠部材9の内部に表層材7が浸透してしまうことが防止される。従って、極めてスムーズに目地型枠部材9を剥離することができ、好適である。
また、本例の舗装方法によれば、表層材7に雲母が配合されていることにより、天然石調の高級感ある舗装面1を提供できる。また、保護膜8が透明であることから、表層材7の表面に傷や汚れをつき難くする効果に加えて、雲母によって醸し出される高級感を損なわないという効果も有しており、意匠性に優れる舗装面1を安価に提供できる。
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
上記実施形態では、表層材7にはMMA樹脂、ワックス、及び雲母入りの骨材を配合するものを例示したが、この構成に限定されるものではなく、ワックスを配合しない構成としても良い。また、上述の配合に加え、さらに公知の揺変剤を配合しても良い。この構成によれば、表層材7を塗布し、目地型枠剥離工程において目地型枠部材9を剥離した状態において、表層材7が垂れ難く、比較的安定してタイル模様部3の形状を保持する。従って、迅速に保護膜塗布工程に移行することができ、好適である。
また、上記実施形態では、下地層塗布工程において、下地層5及び目地層6を一度のみ形成するものを例示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、下地層5や目地層6の塗布作業を複数回行うものであっても良いし、下地層5のみ、または目地層6のみを塗布するものであっても良い。