JP4370731B2 - 複合制振ブレース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨構造などの骨組を補強するとともに、併せて構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動を低減することが可能になる複合制振ブレースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の構造物において、その居住性を向上させ、かつ地震時における安全性を確保するために、柱・梁からなる骨組自体の耐震安全性を確保するとともに、当該骨組内に特殊な装置や部品を付加することにより、地震や強風等に起因する構造物の揺れを低減させる様々な制振構造が開発されている。
【0003】
このような制振構造の一種として、上記骨組内に、粘弾性体の剪断変形によりエネルギーを吸収する粘弾性ダンパーや、金属材料の塑性変形によるエネルギー吸収能力を利用した履歴型ダンパーを組み込む構造が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記粘弾性ダンパーによれば、上記粘弾性体が小さな変形に対しても応答性に優れるため、強風等によって構造物に生じる小さな揺れを低減して居住性をより高めることができるという利点がある。
しかしながら、大地震時のように、大きな速度や大きな変形が加わると、過大な剪断力が発生し、その反力が上記骨組側に伝達されて当該骨組の破壊を招来するとともに、過大な変形によって破断し、ダンパーとしての機能が失われる虞があるという問題点があった。また、粘弾性体は、温度依存性が存在するために、減衰性能にバラ付きを生じるという問題点もあり、特に低温時には、大きな減衰力を発揮するために、骨組の破壊を招くという上記問題点が顕著になる。
【0005】
これに対して、履歴型ダンパーにおいては、大地震時に部材の履歴減衰によって効果的にエネルギーを吸収し、揺れの低減化を図ることはできるものの、逆に強風等に起因する小さな揺れに対しては有効に機能することができず、よって居住性の改善効果を期待することはできないという問題点があった。
【0006】
そこで、特開平11−153194号公報に見られるように、これら粘弾性ダンパーと履歴型ダンパーとを組み合わせた制振ブレースが提案されている。
この制振ブレースは、履歴ダンパーとなる鋼製中心軸力部材の両側面に、一端部と他端部とから交互に鋼製座屈防止部材を積層状に配設し、これら部材間に粘弾性体を用いた減衰材を充填することにより粘弾性ダンパーとして機能させたものであり、いわば粘弾性ダンパーと履歴型ダンパーとを並列的に連結したものである。
【0007】
しかしながら、上記従来の制振ブレースにあっては、鋼製中心軸力部材の両面に、2〜3層にわたって鋼製座屈防止部材が積層したものであるために、構造が複雑で重量も嵩むとともに、コスト的にも不利であるという欠点がある。
また、粘弾性ダンパーと履歴型ダンパーとを並列的に連結している結果、小さな揺れに対する減衰性を得ることが困難であり、結局小振幅から大振幅に至るまでの広範囲の揺れを有効に抑えることが難しいという問題点もある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、簡易軽量な構造にも拘わらず、構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動を低減することができる複合制振ブレースを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明に係る複合制振ブレースは、両端部が構造物の骨組に接続される平板状鋼材または十字型鋼材からなる軸部材に、軸面積が大きい弾性部分と軸面積が小さい降伏部分とを形成し、この軸部材の表面に、当該表面と対向する表面を有する鋼管部材を相対変位自在に配設して、これら鋼管部材を互いに連結した複合制振ブレースにおいて、上記弾性部分における軸部材と鋼管部材との間に粘弾性体を介装するとともに、上記軸部材に、上記複合制振ブレースの伸縮を吸収可能な間隙が形成された不連続部を設け、この不連続部を境にした上記粘弾性体が介装されていない側の上記軸部材に、上記鋼管部材を固定したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記不連続部を境にした上記軸部材の他方と、上記鋼管部材との間に、所定以上の相対変位を阻止する係合部を形成したことを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3に記載の本発明に係る複合制振ブレースは、両端部が構造物の骨組に接続される平板状鋼材または十字型鋼材からなる軸部材に、軸面積が大きい弾性部分と軸面積が小さい降伏部分とを形成し、この軸部材の表面に、当該表面と対向する表面を有する鋼管部材を相対変位自在に配設して、これら鋼管部材を互いに連結した複合制振ブレースにおいて、上記弾性部分における上記軸部材と鋼管部材との間に粘弾性体を介装するとともに、上記軸部材の上記弾性部分に、上記複合制振ブレースの伸縮を吸収可能な間隙が形成された不連続部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
ここで、軸部材における弾性部分については、想定される大地震時においても、主として弾性変形によって追従する軸面積に設定することが好ましく、降伏部分については、過大な変形が生じた際に、粘弾性体が破断する前に降伏点に達して塑性変形する軸面積に設定することが好ましい。
【0013】
また、上記粘弾性体としては、アクリル系、シリコン系、ジエン系、アスファルト系等の高分子材料を使用することが好適であり、軸部材と鋼管部材との間に介装する方法としては、組み立て時に予め軸部材の表面に接着する方法や、軸部材に沿って鋼管部材を配設した後に、両者間に充填する方法などが適用可能である。さらに、鋼管部材としては、汎用であって、かつ効果的に座屈防止機能を発揮し得る断面形状を有する角型鋼管を用いることが好適である。
【0014】
請求項1〜3のいずれかに記載の複合制振ブレースによれば、軸部材に弾性部分と降伏部分とを形成し、弾性部分における軸部材と鋼管部材との間に粘弾性体を介装するとともに、上記軸部材に間隙を有する不連続部を設けているので、上記粘弾性体を利用した粘弾性ダンパーと軸部材の降伏部分が奏する履歴型ダンパーとが直列に配置された構成になっている。この結果、構造物に、強風等に起因する振幅の小さな揺れが生じた場合には、先ず軸部材と鋼管部材との間に介装された粘弾性体の剪断変形によって、これを吸収することができる。
【0015】
この際に、図6に示すように、粘弾性体Aの減衰力は、軸部材Bと鋼管部材Cとの間の剪断面積Sと剪断厚さdとの比(S/d:形状係数)に比例することが知られている。したがって、剪断厚さdを小さくすれば、同一の剪断面積Sによっても大きな減衰力を得ることができ、換言すれば小さい剪断面積Sによっても、同等の減衰効果を得ることができる。
ところが、このように剪断厚さdを小さくすると、粘弾性体の許容剪断歪、すなわち許容軸変形が小さくなるという問題点を生じる。
【0016】
この点、本発明においては、上述したように粘弾性ダンパーと履歴型ダンパーとが直列に配置された構成であるため、大地震が発生して構造物に作用する揺れの振幅が大きくなった場合には、粘弾性体の剪断変形が増加する過程で、軸部材における降伏部分が降伏し、ブレース全体としての軸変形が、主として降伏部分における変形に移行するために、上記粘弾性体の剪断変形を抑えることができる。
しかも、粘弾性体が過大な減衰力にならない結果、骨組に悪影響を及ぼす虞もなく、かつ粘弾性ダンパーと履歴型ダンパーとの協働によって、粘弾性体の過大な変形による剥離や破断を防止することができるとともに、粘弾性体の温度依存による減衰効果の変動も吸収することができる。
【0017】
このように、本発明に係る複合制振ブレースによれば、小振幅の揺れに対しては、弾性部分と鋼管部材との間に介装した粘弾性体による粘弾性ダンパーが機能し、大振幅の揺れに対しては、降伏部分における履歴型ダンパーによって、エネルギーを効果的に吸収してその低減化を図ることができるために、簡易軽量な構造にも拘わらず、構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動を低減することができる。
【0018】
加えて、大きな揺れによりこの複合制振ブレースが圧縮力を受けた際には、降伏部分に沿って設けられた鋼管部材によって、軸部材の面外への変形が抑えられるために、当該軸部材の座屈が防止される。この結果ブレース全体としての座屈強度を高めることもできる。
【0019】
ところで、構造物に大きな振幅の揺れが作用した際における降伏部分による変形と、これによる粘弾性体の剪断変形の抑制効果は、粘弾性体の粘性や剪断厚さ等の諸元並びに軸部材の剛性等の諸元を適宜設定することによって調整可能であるが、万一粘弾性体に過大な剪断変形が加わると、当該粘弾性体が破断し、ひいてはダンパーとしての機能が失われる虞がある。
そこで、請求項2に記載の発明のように、不連続部を境にした軸部材の他方と鋼管部材との間に、所定以上の相対変位を阻止する係合部を形成すれば、粘弾性体の過大な変形による剥離や破断を確実に防止することが可能になる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
図1〜図3は、本発明の複合制振ブレースの第1の実施形態を示すものである。
図1および図2において、符号1は、両端部1a、1bが構造物の骨組に接続される十字型鋼材からなる軸部材を示すものであり、この軸部材1の端部1a側には、軸面積が大きい弾性部分2が形成されている。そして、この弾性部分2と端部1bとの間には、傾斜状の移行部分4を介して弾性部分2よりも軸面積が小さい降伏部分3が形成されている。また、端部1aと弾性部分2との間には、軸部材1の伸縮と後述する粘弾性体7の剪断変形等により生じる複合制振ブレース全体の伸縮を吸収可能な間隙5が形成された不連続部が形成されている。
【0021】
そして、十字型鋼材によって形成される軸部材1の四隅には、それぞれ両端部1a、1b間にわたって角型鋼管(鋼管部材)6が相対変位自在に配設されており、これら角型鋼管6は、互いの隣接部に沿って接合されたフラットバー9により一体的に連結されている。
また、角型鋼管6と軸部材1の弾性部分2との間には、当該弾性部分2と角型鋼管6との双方に接着された粘弾性体7が介装されている。さらに、軸部材1の端部1aには、ボルト挿入孔8が形成されており、これと対向する角型鋼管6の端部には、それぞれボルト挿入孔(図示を略す。)が形成されている。そして、角型鋼管6は、両挿入孔8に挿入された高力ボルト6aが締め付けられることにより、当該端部において、軸部材1に固定されている。
【0022】
ここで、軸部材1における弾性部分2は、想定される大地震時においても、主として弾性変形によって追従する軸面積に設定され、他方降伏部分3は、過大な変形が生じた際に、粘弾性体7が破断する前に降伏点に達して塑性変形する軸面積に設定されている。
また、粘弾性体7としては、アクリル系、シリコン系、ジエン系、アスファルト系等の高分子材料が使用されている。
【0023】
このような複合制振ブレースを組み立てるには、先ず図1(a)に示すように、軸部材1における弾性部分2の表面に、粘弾性体7を接着し、次いで図1(b)に示すように、軸部材1の四隅に、それぞれ角型鋼管6を配設することにより、上記粘弾性体7を角型鋼管6にも接着させた後に、図1(c)に示すように、角型鋼管6と軸部材1の端部1aに形成されたボルト挿入孔8に高力ボルト6aを挿入して締めつけるとともに、隣接する角型鋼管6の隣接部に添設したフラットバー9を両角型鋼管6に溶接することにより、これら角型鋼管6を一体的に連結する。以上により、上記複合制振ブレースの組立が完了する。
【0024】
以上の構成からなる複合制振ブレースによれば、図3(a)、(b)に示すように、軸部材1に弾性部分2と降伏部分3とを形成し、弾性部分2における軸部材1と角型鋼管6との間に粘弾性体7を介装するとともに、軸部材1に間隙5を有する不連続部を設けているので、粘弾性体7を利用した粘弾性ダンパーと軸部材の降伏部分3が奏する履歴型ダンパーとが直列に配置された構成になっている。
【0025】
この結果、構造物に、強風等に起因する振幅の小さな揺れが生じて、この複合制振ブレースに圧縮力および引張力が作用した場合には、先ず軸部材1の一端部1aに固定された角型鋼管6と、軸部材1の他端部1bから降伏部分3および弾性部分2との間に相対変位が生じ、弾性部分2と角型鋼管6との間の粘弾性体7が剪断変形する。これにより、上記揺れのエネルギーを吸収して、当該揺れを低減し、居住性を高めることができる。
ちなみに、この際の複合制振ブレースにおける軸力の伝達は、軸部材1の一端部1a→高力ボルト6a→角型鋼管6→粘弾性体7→軸部材1の弾性部分2→降伏部分3→軸部材1の他端部1bになる。
【0026】
次いで、大地震が発生して構造物に作用する揺れの振幅が大きくなった場合には、上述した粘弾性体7の剪断変形が増加する過程で、軸部材1の降伏部分3が降伏し、その履歴減衰によって上記揺れを低減する。この際のブレース全体としての軸変形は、主として降伏部分3における変形となるため、粘弾性体7の剪断変形を抑えることができ、よって粘弾性体7が過大な減衰力にならないために、骨組に悪影響を及ぼす虞もない。また、粘弾性体7による粘弾性ダンパーと降伏部分3による履歴型ダンパーとの協働によって、粘弾性体7の過大な変形による剥離や破断を防止することができるとともに、粘弾性体7の温度依存による減衰効果の変動も吸収することができる。
【0027】
このように、上記複合制振ブレースによれば、小振幅の揺れに対しては、弾性部分2と角型鋼管6との間に介装した粘弾性体7による粘弾性ダンパーが機能し、大振幅の揺れに対しては、降伏部分3における履歴型ダンパーによってエネルギーを効果的に吸収してその低減化を図ることができるために、簡易軽量な構造にも拘わらず、構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動を低減することができる。
【0028】
加えて、大きな揺れによりこの複合制振ブレースが圧縮力を受けた際には、降伏部分3に沿って設けられ、かつフラットバー9によって互いに連結・一体化された角型鋼管6によって、軸部材1の面外への変形が抑えられるために、当該軸部材1の座屈を防止することができ、この結果ブレース全体としての座屈強度を高めることもできる。
【0029】
(実施の形態2〜4)
次いで、図4(a)〜(c)は、それぞれ本発明の第2〜第4の実施形態を示すもので、図1および図2と同一構成部分に付いては、同一符号を付してその説明を簡略化する。
図4(a)に示す第2の実施形態における複合制振ブレースは、軸部材1を弾性部分2と移行部分4との間で切断して、軸部材1の伸縮および粘弾性体7の剪断変形等によって生じる複合制振ブレースの伸縮を吸収可能な間隙10を有する不連続部を形成したものであり、図中斜線で示す弾性部分2の表面および図示されない角型鋼管6の表面に、同様に粘弾性体7が接着されている。そして、図示されない角型鋼管6は、移行部分4側に形成されたボルト挿入孔8との間に挿通された高力ボルトが締め付けられることにより、上記不連続部を境にした軸部材1の上方側に固定されている。
【0030】
また、図4(b)に示す第3の実施形態における複合制振ブレースは、軸部材1の中央部に弾性部分2を形成し、この弾性部分2と両端部1a、1bとの間に、それぞれ移行部分4を介して降伏部分3を形成するとともに、軸部材1を弾性部分2の中央部において切断して、軸部材1の伸縮と粘弾性体7の剪断変形とを吸収可能な間隙11を有する不連続部を形成したものである。そして、この複合制振ブレースにおいては、図示されない角型鋼管6が、上述した高力ボルト等によって軸部材1に固定されることなく、当該軸部材1の両端部1a、1b間にわたり相対変位自在に配設されるとともに、角型鋼管6と軸部材1の弾性部分2との間に、当該弾性部分2および角型鋼管6の双方に接着された粘弾性体7が介装されている。
【0031】
さらに、図4(c)に示す第4の実施形態における複合制振ブレースは、図4(b)に示したものと同様に、軸部材1の中央部に弾性部分2を形成し、この弾性部分2と両端部1a、1bとの間に、それぞれ移行部分4を介して降伏部分3を形成するとともに、弾性部分2と移行部分4との間で切断し、軸部材1の伸縮と粘弾性体7の剪断変形とを吸収可能な間隙12を有する不連続部を形成したものである。そして、図示されない角型鋼管6は、移行部分4側に形成されたボルト挿入孔8との間に挿通された高力ボルトによって、上記不連続部を境にした軸部材1の上方側に固定されている。
なお、上記第2〜第4の実施形態において図示を省略した角型鋼管6およびこれらを連結するフラットバー9の構成に付いては、図1に示したものと同様である。
【0032】
図4(a)、(b)、(c)に示す複合制振ブレースによっても、図1に示したものと同様の作用効果を得ることができる。
ちなみに、図4(a)に示す複合制振ブレースにおける軸力の伝達は、軸部材1の一端部1a→軸部材1の弾性部分2→粘弾性体7→角型鋼管6→高力ボルト6a→降伏部分3→軸部材1の他端部1bになる。
【0033】
また、図4(b)に示す複合制振ブレ−スにおいては、軸部材の端部1a→降伏部分3→弾性部分2の下部→粘弾性体7→角型鋼管6→粘弾性体7→弾性部分2の上部→降伏部分3→軸部材1の他端部1bになる。
さらに、図4(c)に示す複合制振ブレースにおいては、軸部材1の一端部1a→降伏部分3→弾性部分2→粘弾性体7→角型鋼管6→→高力ボルト6a→降伏部分3→軸部材1の他端部1bになる。
【0034】
(実施の形態5)
図5は、本発明の第5の実施形態を示すもので、同様に図1に示したものと同一構成部分に付いては、同一符号を付してある。
この複合制振ブレースにおいては、図1に示したものと同様に、角型鋼管6が高力ボルト6aによって軸部材1の端部1a側に固定されるとともに、不連続部を境にした軸部材1の他方に、表面から突出する平板状の凸部20が接合されている。他方、この凸部20と対向する角型鋼管6には、長手方向に所定の長さ寸法切り欠かれてなる凹部21が形成されている。そして、角型鋼管6は、各々の凹部21内に凸部20を係合させた状態で、軸部材1の4隅部に配設されている。なお、その他の構成に付いては、図1に示したものと同様である。
【0035】
本実施形態に係る複合制震ブレースによれば、図1〜図4に示したものと同様の作用効果が得られる他、さらに、相対変位する軸部材1と角型鋼管6との間に、所定以上の相対変位を阻止する凹凸部(係合部)20、21を形成しているので、大地震時に万一粘弾性体7に過大な剪断変形が加わった場合においても、凸部20が凹部21内の端部に係止されて、それ以上の相対変位が阻止される。この結果、粘弾性体7の過大な変形による剥離や破断を確実に防止することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態においては、いずれも軸部材1として十字型鋼材からなるものを用いた場合に付いてのみ説明したが、これに限定されるものではなく、当該軸部材として平板状鋼材を用い、その両面に一対の角型鋼管6を相対変位自在に配設するとともに、角型鋼管6同士を隣接部において互いに連結してもよく、また、必ずしも移行部分4を弾性部分2と降伏部分3との間に形成する必要も無い。
【0037】
また、角型鋼管6と軸部材1との固定についても、上述した高力ボルト6aに限るものではなく、溶接等の各種の固定構造を採用することができる。
さらに、軸部材1と角型鋼管6との過度の相対変位を阻止する係合部も、第2の実施形態に示した形状の凹凸部20、21に限定されるものではなく、例えばボルトと当該ボルトが係合するルーズホール等の種々の形態の係合部を適用することが可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1〜3のいずれかに記載の複合制振ブレースによれば、軸部材の周囲に座屈補剛材として機能する鋼管部材を相対変位自在に配設し、かつ上記軸部材に間隙を有する不連続部を設けるとともに、粘弾性体を利用した粘弾性ダンパーと軸部材の降伏部分が奏する履歴型ダンパーとを直列に配置した構成にしているため、小振幅の揺れに対しては、弾性部分と鋼管部材との間に介装した粘弾性体による粘弾性ダンパーが機能し、大振幅の揺れに対しては、降伏部分における履歴型ダンパーによって、エネルギーを効果的に吸収してその低減化を図ることができるために、簡易軽量な構造にも拘わらず、構造物に生じる小振幅から大振幅に至る様々な振動を低減することができる。
【0039】
また、特に請求項2に記載の発明によれば、不連続部を境にした軸部材の他方と鋼管部材との間に、所定以上の相対変位を阻止する係合部を形成しているので、万一粘弾性体に過大な剪断変形が加わった場合においても、上記係合部によって粘弾性体の剥離や破断を確実に防止することが可能になるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る複合制振ブレースの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の要部の縦断面図である。
【図3】図1の複合制振ブレースの作用を説明するための模式図で、(a)は引張力が作用した状態、(b)は圧縮力が作用した状態を示すものである。
【図4】(a)は第2の実施形態における軸部材等の形状を示す斜視図、(b)は第3の実施形態における軸部材等の形状を示す斜視図、(c)は第4の実施形態における軸部材等の形状を示す斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施形態を示す分解斜視図である。
【図6】粘弾性ダンパーの特性を説明するための一部切り欠いた斜視図である。
【符号の説明】
1 軸部材
1a、1b 端部
2 弾性部分
3 降伏部分
5、10、11、12 間隙
6 角型鋼管(鋼管部材)
6a 高力ボルト
7 粘弾性体
9 フラットバー
20 凸部
21 凹部
Claims (3)
- 両端部が構造物の骨組に接続される平板状鋼材または十字型鋼材からなる軸部材に、軸面積が大きい弾性部分と軸面積が小さい降伏部分とを形成し、この軸部材の表面に、当該表面と対向する表面を有する鋼管部材を相対変位自在に配設して、これら鋼管部材を互いに連結した複合制振ブレースにおいて、
上記弾性部分における上記軸部材と鋼管部材との間に粘弾性体を介装するとともに、上記軸部材に、上記複合制振ブレースの伸縮を吸収可能な間隙が形成された不連続部を設け、この不連続部を境にした上記粘弾性体が介装されていない側の上記軸部材に、上記鋼管部材を固定したことを特徴とする複合制振ブレース。 - 上記不連続部を境にした上記軸部材の他方と、上記鋼管部材との間に、所定以上の相対変位を阻止する係合部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の複合制振ブレース。
- 両端部が構造物の骨組に接続される平板状鋼材または十字型鋼材からなる軸部材に、軸面積が大きい弾性部分と軸面積が小さい降伏部分とを形成し、この軸部材の表面に、当該表面と対向する表面を有する鋼管部材を相対変位自在に配設して、これら鋼管部材を互いに連結した複合制振ブレースにおいて、
上記弾性部分における上記軸部材と鋼管部材との間に粘弾性体を介装するとともに、上記軸部材の上記弾性部分に、上記複合制振ブレースの伸縮を吸収可能な間隙が形成された不連続部を設けたことを特徴とする複合制振ブレース。
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