JP6749288B2 - 複合ダンパー、粘弾性ダンパー - Google Patents
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また、粘弾性ダンパーは、ゴムなどの高分子材料を主成分とする粘弾性材料がせん断変形することにより、減衰抵抗力が発生し、エネルギー吸収を行う制振装置である。
特許文献1に開示のものは、せん断降伏型(間柱型)の複合ダンパーであり、小振幅時に作用させる粘弾性ダンパーと、大振幅時に作用させる弾塑性ダンパーとを直列に配置しており、粘弾性ダンパーがある変形量に達した際にそれ以上の変形が生じないためのストッパー機能を付加したものである。
しかしながら、特許文献2に開示のものは、設置に広い空間が必要であり、また、大地震時の粘弾性ダンパーのエネルギー吸収量が小さいという課題がある。
また、既存の履歴ダンパーに取り付けられて上記のような複合ダンパーを構成できる粘弾性ダンパーを提供することを目的としている。
前記粘弾性ダンパーは、一端が上下のいずれかの梁に剛接合された鋼板と、該鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された第1粘弾性体と、該第1粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第1鋼板と、前記第1粘弾性体よりも他端寄りで、かつ前記第1粘弾性体に対して直列になるように前記鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された前記第1粘弾性体よりも厚さの厚い第2粘弾性体と、該第2粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第2鋼板とを有してなり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち上側に配置されたものが前記上側支持部材に接合され、下側に配置されたものが前記下側支持部材に接合されていることを特徴とするものである。
一端が上下のいずれかの梁に剛接合される鋼板と、取付状態において該鋼板における前記履歴ダンパー側になる面に配設された第1粘弾性体と、取付状態において該第1粘弾性体における前記履歴ダンパー側になる面に取り付けられた第1鋼板と、前記第1粘弾性体よりも他端寄りで、かつ前記第1粘弾性体に対して直列になるように前記鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された前記第1粘弾性体よりも厚さの厚い第2粘弾性体と、該第2粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第2鋼板とを有してなり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち上側に配置されたものが前記上側支持部材に接合され、下側に配置されたものが前記下側支持部材に接合されることを特徴とするものである。
また、履歴ダンパーの表裏両面に粘弾性ダンパーを取り付けるという構造であるため、特許文献2に開示のものに比較して設置のための空間が狭くてよい。さらに、複合ダンパーを横に連結することにより、建物規模あるいは必要性能に応じた設置台数、大きさを自由に選定することもできる。
以下、複合ダンパー1を構成する履歴ダンパー3と粘弾性ダンパー5について詳細に説明する。
なお、図1、図2は模式図であり、説明の容易化のために部材の省略や透視化をしている。具体的には、図1(a)、図2(a)において鋼板19を透視して鋼板19の背面が見えるようにしている。
また、履歴ダンパー3と粘弾性ダンパー5との紙面横方向のずれは説明のため、実際より大きく表現している。
履歴ダンパー3は、柱と梁に囲まれた架構部の上梁7と下梁9の間に設置された間柱型のものであり、上端が上梁7に固定された上側支持部材11と、下端が下梁9に固定された下側支持部材13と、上側支持部材11の下端と下側支持部材13の上端の間に取り付けられたエネルギー吸収部材15によって構成されている。
下側支持部材13は、上側支持部材11と同様にH形鋼によって形成され、上端には粘弾性ダンパー5と接合するための下接合部13aが設けられている。
上接合部11a及び下接合部13aは、粘弾性ダンパー5と接合する部位であり、出来るだけ変形が少ない方が好ましく、そのため本実施の形態ではフランジ間にリブ材17を設けて剛性を高めている。
エネルギー吸収部材15として、例えば極低降伏点鋼を用いることができる。
粘弾性ダンパー5は、図2に示した構造からなり、このような同一構造の粘弾性ダンパー5が、図1(b)に示すように、履歴ダンパー3の表裏両側に配設されている。
粘弾性ダンパー5は、図2に示すように、下端側が下梁9に剛接合された鋼板19と、鋼板19の内面(履歴ダンパー3側の面)に上下に並べて(直列に)取り付けられたゴムなどの高分子材料を主成分とする第1粘弾性体21及び第2粘弾性体23と、第1粘弾性体21の内面側に取り付けられた第1鋼板25、第2粘弾性体23の内面側に取り付けられた第2鋼板27を備えている。
第1鋼板25が下接合部13aに、第2鋼板27が上接合部11aにそれぞれ溶接接合されることで、粘弾性ダンパー5と履歴ダンパー3が連結されて応力伝達可能になっている。
鋼板19の下側、すなわち下梁9に近い側に取り付けられた第1粘弾性体21は、第2粘弾性体23よりも厚みが薄く設定されている。これとは逆に第1粘弾性体21に接合される第1鋼板25は第2粘弾性体23に接合される第2鋼板27よりも厚みが厚く設定され、第1粘弾性体21と第1鋼板25を合わせた厚みは、第2粘弾性体23と第2鋼板27を合わせた厚みと同じ厚みになっている。
風などの小振幅時は、低降伏点鋼が降伏するまでは、薄肉の第1粘弾性体21が主となってエネルギー吸収を行う。
もっとも、第2粘弾性体23についても、厚さと下梁9からの距離に応じて若干の変形を伴ってエネルギー吸収することができる。
図3は、履歴ダンパー3の変形量と各部剛性の関係を示す模式図である。間柱に水平荷重によるせん断力Qが加わると、シャフト部の剛性K1と変形量δ1、エネルギー吸収部位の剛性K2と変形量δ2の間には以下の関係がある。
Q=K1×δ1 ・・・(1)
Q=K2×δ2 ・・・(2)
第1粘弾性体21、第2粘弾性体23のせん断ひずみをそれぞれγ1、γ2とすると、γ1、γ2は、厚みt1、t2と変形量δ1、δ2の間に以下の関係がある。
γ1=δ1/t1 ・・・・・・・(3)
γ2=(δ1+δ2)/t2 ・・・(4)
そこで、γ1=γ2とすると、(3)式、(4)式からδ1/t1=(δ1+δ2)/t2となり、これに(1)式、(2)式の関係を代入することで、第2粘弾性体23と第1粘弾性体21の最適な板厚比t2/t1は、シャフト部とエネルギー吸収部位の剛性比K1/K2との関係で以下のように表される。
t2/t1=1+K1/K2 ・・・(5)
換言すれば、(5)式を満たすように、第2粘弾性体23と第1粘弾性体21の板厚比を設定することで、第1粘弾性体21及び第2粘弾性体23のいずれにおいても最も効率的にエネルギー吸収を行うことができ、かつ破断を防止することができる。
すなわち、第1粘弾性体21の剛性をKh1、第2粘弾性体23の剛性をKh2とすると、粘弾性ダンパー5が履歴ダンパー3に連結された状態では、剛性K1は剛性(K1+Kh1×2)に剛性K2は剛性(K2+Kh2×2)に変化する。
そのため、この剛性の変化が全体の応答特性や分担率、支持部材の応力照査等に悪影響を与えないようにするために、第1粘弾性体21及び第2粘弾性体23の厚さのみならず、これら第1粘弾性体21及び第2粘弾性体23の平面寸法、せん断弾性係数、等価減衰定数を変更するようにしてもよい。
また、履歴ダンパー3の表裏に粘弾性ダンパー5を取り付けるという構造であるため、特許文献2に開示のものに比較して設置のための空間が狭くてよい。さらに、複合ダンパー1を横に連結することにより、建物規模あるいは必要性能に応じた設置台数、大きさを自由に選定することもできる。
しかし、粘弾性ダンパー5の鋼板19は剛体に近い挙動にしなければならず、なるべく短い方が好ましいため、履歴ダンパー3の表裏に配設される粘弾性ダンパー5は、表裏両方のものを上下の同じ梁に剛接合するのが望ましい。仮に、図1(a)の裏側の粘弾性ダンパー5を上梁7に剛接合した場合、裏側の鋼板19を下梁9の近くまで長くする必要があり、剛体としての挙動になりにくくなる。
しかし、図5に示すように、履歴ダンパー3がエネルギー吸収する状態でもシャフト部(上側支持部材11、下側支持部材13)がほとんど変形しない場合には、上接合部11aや下接合部13aを設ける必要がない。
このように、本実施の形態に示した構造の複合ダンパー1であれば、既に建物に設置済みの履歴ダンパー3に対して、後から粘弾性ダンパー5部分のみを追加して配置することで構築が可能となり、想定地震の見直しなどによって、必要となるエネルギー吸収性能に応じた耐震補強も可能となる。
3 履歴ダンパー
5 粘弾性ダンパー
7 上梁
9 下梁
11 上側支持部材
11a 上接合部
13 下側支持部材
13a 下接合部
15 エネルギー吸収部材
17 リブ材
19 鋼板
21 第1粘弾性体
23 第2粘弾性体
25 第1鋼板
27 第2鋼板
29 リブ
Claims (2)
- 柱・梁を備えた建築構造物の上下の梁間に配置され、上側支持部材と下側支持部材の間にエネルギー吸収部材を設けた間柱型の履歴ダンパーと、該履歴ダンパーの表裏両面に並列に配置された粘弾性ダンパーとを備えた複合ダンパーであって、
前記粘弾性ダンパーは、一端が上下のいずれかの梁に剛接合された鋼板と、該鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された第1粘弾性体と、該第1粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第1鋼板と、前記第1粘弾性体よりも他端寄りで、かつ前記第1粘弾性体に対して直列になるように前記鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された前記第1粘弾性体よりも厚さの厚い第2粘弾性体と、該第2粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第2鋼板とを有してなり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち上側に配置されたものが前記上側支持部材に接合され、下側に配置されたものが前記下側支持部材に接合されていることを特徴とする複合ダンパー。 - 柱・梁を備えた建築構造物の上下の梁間に配置され、上側支持部材と下側支持部材の間にエネルギー吸収部材を設けた間柱型の履歴ダンパーに取り付けられて、複合化するための粘弾性ダンパーであって、
一端が上下のいずれかの梁に剛接合される鋼板と、取付状態において該鋼板における前記履歴ダンパー側になる面に配設された第1粘弾性体と、取付状態において該第1粘弾性体における前記履歴ダンパー側になる面に取り付けられた第1鋼板と、前記第1粘弾性体よりも他端寄りで、かつ前記第1粘弾性体に対して直列になるように前記鋼板における前記履歴ダンパー側の面に配設された前記第1粘弾性体よりも厚さの厚い第2粘弾性体と、該第2粘弾性体における前記履歴ダンパー側の面に取り付けられた第2鋼板とを有してなり、
前記第1鋼板及び前記第2鋼板のうち上側に配置されたものが前記上側支持部材に接合され、下側に配置されたものが前記下側支持部材に接合されることを特徴とする粘弾性ダンパー。
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