JP4547979B2 - 制振間柱 - Google Patents

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本発明は、建物の躯体に生じる幅広い振幅範囲の振動に対して、効果的に制振機能を発揮しうる制振間柱に関するものである。
従来より、地震時等における建物の水平方向の振動を低減化させる制振手段として、躯体を構成する上下階の梁間に制振間柱を設置する構造が知られている。
例えば、下記特許文献1には、柱と梁で構成される建物構造物の制振間柱であって、上階の梁および下階の梁に、それぞれH形鋼製の上制振間柱および下制振間柱の各端部を固定し、当該上下の制振間柱間に、一方に固定された内鋼板と他方に固定された外鋼板とが交互に積層して配置されるとともに、これらの間に粘弾性体を挟持してなる粘弾性ダンパーを設け、さらに上下の制振間柱と上下の梁との間に斜材である方杖を設けたものが提案されている。
上記従来の制振間柱によれば、地震発生時に、構造躯体の上下部の梁に作用する水平力が、上下の制振間柱を介して粘弾性体にせん断力として伝達されてこれが変形するとともに、この変形時に粘弾性体が発揮する速度に比例した粘性抵抗力によって、建物の振動を減衰することができる。
この際に、上下の制振間柱と上下の梁との結合部が、座屈耐力の大きな方杖によって補強されているために、地震規模が大きくて過大な水平力が建物に作用した場合においても、粘弾性体が減衰作用を発揮する前に上記接合部が破壊されることを防止することができるという利点がある。
特開2003−49558公報
ところで、上記粘弾性ダンパーは、その減衰力が振幅に比例して増大するという特徴がある。このため、上記従来の制振間柱のように、規模が大きな地震発生時を想定して、上記粘弾性ダンパーから作用する反力に耐え得るように、その接合部に方杖等の補強を行っておく必要がある。
また、上下梁間に生じる大きな変位にも追従するように、粘弾性体の厚さ(d)を5mm以上確保する必要がある。
また、制振ダンパーの容量(S/d)(S:粘弾性体の貼付面積S)を小さくしないためには、必然的に上記粘弾性体の貼付面積Sも大きくしなければならず、よって制振間柱自体が大型化して経済性に劣るという問題点がある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、小型化を図ることができ、しかも建物の躯体に作用する強風等による小さな振幅の振動から、大地震時における大きな振幅の振動に至るまで、効果的に制振機能を発揮することができる制振間柱を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、上下階の梁間に立設される制振間柱であって、地震時に上記梁間の相対変位によって塑性変形し、その履歴減衰効果によって制振機能を発揮する履歴ダンパーと、この履歴ダンパーよりも剛性が小さく、かつ上端部が上階側の上記梁と一体化されて下端部が自由端となる複数枚の上部平板部材と、下端部が下階側の上記梁と一体化されて上端部が自由端となる下部平板部材とが粘弾性体を間に介して積層状に配設された粘弾性ダンパーとが上下方向に直列的に介装されるとともに、外側の2枚の上記下部平板部材の両側部間にスペーサが介装され、かつ上記上部平板部材は、側部間に側部スペーサが介装されて上記下部平板部材のスペーサ間に挿入され、当該スペーサと上記側部スペーサとの間に一定値のクリアランスが形成されて、上記梁間の相対変位量が上記一定値に至った際に、上記粘弾性ダンパーのそれ以上の上記作動を阻止するストッパーが構成されていることを特徴とするものである。
ここで、一定値とは、躯体の剛性や制振ダンパーの特性等によって適宜選択し得る値であり、例えば日常の強風等によって生じる上下梁間の最大相対変位量等が挙げられる。
請求項1または2に記載の制振間柱における最も重要な特徴は、強風等の小さな水平力に起因する上下梁間の小さな相対変位に対しては、粘弾性ダンパーが制振効果を発揮し、規模の大きな地震時に生じる上下梁間の大きな相対変位に対しては、ストッパーによって粘弾性ダンパーの作動が阻止されて履歴ダンパーのみが制振効果を発揮する点にある。
すなわち、上記制振間柱によれば、上下階の梁間において、履歴ダンパーとこの履歴ダンパーよりも剛性が小さい粘弾性ダンパーとが直列的に設けられているので、建物の躯体に、強風やごく小さな規模の地震等に起因する小さな水平力が作用すると、これによって生じる上下梁間の相対変位に対して、履歴ダンパーは機能せずに、粘弾性ダンパーが機能することにより、当該相対変位が減衰される。
また、地震によって上記躯体に大きな水平力が作用することにより、上下の梁間に大きな相対変位が生じると、上記梁間の相対変位量が一定値に至った際に、ストッパーにより粘弾性ダンパーへのそれ以上の相対変位の伝達が阻止される。これにより、粘弾性ダンパーにおける制振機能は発揮されなくなる。そして、上記梁間の相対変位が、履歴ダンパーに伝達されることにより、当該履歴ダンパーが塑性変形して、その履歴減衰効果により制振機能を発揮する。
したがって、上記制振間柱によれば、従来のものと比較してその小型化を図ることが可能になるとともに、さらに建物の躯体に作用する強風等による小さな振幅の振動から、大地震時における大きな振幅の振動に至るまで、効果的に制振機能を発揮することができる。
ここで、上記粘弾性ダンパーにおいては、上方から垂下された上部平板部材と、下方から立設された下部平板部材とが粘弾性体を間に介して積層状に配設されているために、床の振動等によって梁に作用する僅かな上下方向の振動に対しても、効果的に制振機能を発揮することができる
この際に、粘弾性ダンパーを小型化するには、貼付面積Sと厚さdを小さくする必要があるが、これら貼付面積Sと厚さdを小さくすると、終局歪みとせん断耐力とが小さくなり、この結果地震時に当該粘弾性ダンパーが損傷してしまう。
この点、本発明においては、粘弾性ダンパーは、もっぱら小さな上下梁間の相対変位に対して機能するものであって、ストッパーにより一定量以上の変形を受けないために、上記粘弾性体が介装される上下部平板部材の間隔を、2mm以下に設定することができる。この結果、粘弾性ダンパーとしての減衰性能を低下させることなく、貼付面積を小さくすることができ、よって全体の一層の小型化を達成することが可能となる。
図1〜図7は、本発明に係る制振間柱の一実施形態を示すものである。
図1に模式的に示すように、この制振間柱1は、柱2および梁3a、3bによって構成される架構内において、上下階の梁3a、3bの中央部間に設けられたものである。
この制振間柱1は、上階の梁3aに上端部が一体的に接合された上部間柱4と、下階の梁3bに下端部が一体的に接合された下部間柱5と、これら上下部間柱4、5間に上下方向に直列に配置された履歴ダンパー6および粘弾性ダンパー7と、梁3a、3b間の相対変位量が一定値に至った際に、粘弾性ダンパー7へのそれ以上の上記相対変位の伝達を阻止するストッパー8とから構成されている。
ここで、上下部間柱4、5は、いずれもH形鋼からなるもので、上部間柱4の下端部に、履歴ダンパー6が設けられている。この履歴ダンパー6は、H形鋼のウエブ部分に低降伏点鋼が接合・一体化されたもので、この履歴ダンパー6と下部間柱5との間に、履歴ダンパー6よりも剛性が小さい粘弾性ダンパー7が組み込まれている。
すなわち、図2〜図5に示すように、下部間柱5の上端部にはスチフナー5aが接合され、このスチフナー5a上に複数枚(図では3枚)の下部平板部材9a、9bがボルト10およびナット11によって立設されている。ここで、外側の2枚の下部平板部材9aは、下部間柱5の幅と同一の幅寸法に形成されており、両側部間に介装されたスペーサ12によって一定間隔に保持されている。そして、スペーサ12間であって両下部平板部材9a間の中央に、平板部材9bが配置されている。
他方、履歴ダンパー6の下端部にはスチフナー6aが接合され、このスチフナー6aの下面に、2枚の上部平板部材14の上端部が、ボルト15およびナット16によって固定されている。これら上部平板部材14は、上部間および側部間に介装されたスペーサ13a、13bにより、それぞれ下部平板部材9a、9bとの間に2mm以下の隙間を保持した状態で積層状に、かつ相対移動自在に挿入されている。そして、上部平板部材9a、9bと下部平板部材14と間に、それぞれ粘弾性体17が貼設されることにより、この粘弾性ダンパー7が構成されている。
なお、上記粘弾性ダンパー7において、上部平板部材14の下端部の下方には、図4に示すように、上下方向の相対変位を許容する間隙部18が形成されている。また、図5に示すように、上部平板部材14の側部スペーサ13bと下部平板部材9a間のスペーサ12との間には、一定のクリアランスCが形成されている。このクリアランスCは、梁3a、3b間の相対変位量が、一定値、例えば日常の強風等によって生じる梁3a、3b間の相対変位量を超えた際に、上部平板部材14のそれ以上の相対移動を阻止する寸法に設定されている。この結果、これらスペーサ12、13bによって、粘弾性ダンパー7における上記ストッパー8が構成されている。
以上の構成からなる制振間柱1によれば、図1に示す平常状態において、建物の躯体に、強風やごく小さな規模の地震等に起因する小さな水平力が作用すると、上下階の梁3a、3b間に履歴ダンパー6とこの履歴ダンパー6よりも剛性が小さい粘弾性ダンパー7とが直列的に設けられているので、図6に示すように、上下梁3a、3b間の相対変位に対して、履歴ダンパー6は機能せずに、粘弾性ダンパー7が機能する。
すなわち、躯体に作用する小さな水平力によって上下部の梁3a、3b間に相対変位が生じると、この変形が上下部間柱4、5および履歴ダンパー6を介して、粘弾性ダンパー7の上部平板部材14と下部平板部材9a、9bとの間における相対変位に伝達される。この結果、上下部平板部材14、9a、9b間の粘弾性体17がせん断変形し、この際粘弾性体17が発揮する変位速度に比例した粘性抵抗力によって、上記躯体の振動が減衰されることになる。
また、この粘弾性ダンパー7によれば、上方から垂下された上部平板部材14の下方に、その上下方向の相対変位を許容する間隙部18が形成されているので、床の振動等によって梁3aに作用する僅かな上下方向の振動に対しても、上記粘弾性体17によって効果的に制振機能を発揮することができる。
これに対して、図7に示すように、地震によって上記躯体に大きな水平力が作用することにより、上下の梁3a、3b間に、図5に示したストッパ8におけるクリアランスCを超えるような大きな相対変位が生じると、梁3a、3b間の相対変位量が上記クリアランスCに至った際に、スペーサ13bがスペーサ12に当接することによりそれ以上の相対変位の伝達が阻止される。これにより、粘弾性ダンパー7における制振機能は発揮されなくなる。そして、梁3a、3b間の相対変位が、履歴ダンパー6に伝達されることにより、この履歴ダンパー6が塑性変形して、その履歴減衰効果により制振機能を発揮する。
このように、この制振間柱1においては、粘弾性ダンパー7が、もっぱら上下梁3a、3b間に生じる小さな相対変位に対して機能するものであるために、粘弾性体17が介装される上下部平板部材14、9a、9bの間隔を、2mm以下に設定することができる。この結果、粘弾性ダンパー7としての減衰性能を低下させることなく、貼付面積を小さくすることができ、よって全体の一層の小型化を達成することができる。
したがって、上記制振間柱1によれば、従来のものと比較してその小型化を図ることができるとともに、さらに建物の躯体に作用する強風等による小さな振幅の振動から、大地震時における大きな振幅の振動に至るまで、効果的に制振機能を発揮することができる。
なお、上記実施の形態においては、上部間柱4の下端部に履歴ダンパー6を設け、この履歴ダンパー6と下部間柱5との間に粘弾性ダンパー7を配置した場合についてのみ説明したが、これに限るものではなく、上部間柱4の下端部に粘弾性ダンパー7を設け、当該粘弾性ダンパー7と下部間柱5との間に履歴ダンパー6を設けてもよく、さらには上部間柱4および下部間柱5のいずれか一方を省略して、履歴ダンパー6あるいは粘弾性ダンパー7の一方を直接梁3a、3bに取り付けるようにしてもよい。
本発明の制振間柱の一実施形態を模式的に示す正面図である。 図1の要部の詳細図である。 図2のIII−III線視断面図である。 図2のIV−IV線視断面図である。 図3のA部拡大図である。 図1の強風時の作動状態を示す正面図である。 図1の地震時の作動状態を示す正面図である。
符号の説明
1 制振間柱
3a 上階の梁
3b 下階の梁
6 履歴ダンパー
7 粘弾性ダンパー(制振ダンパー)
8 ストッパー
9a、9b 下部平板部材
12、13a、13b スペーサ
14 上部平板部材
17 粘弾性体
20 流体ダンパー(制振ダンパー)
C クリアランス

Claims (1)

  1. 上下階の梁間に立設される制振間柱であって、
    地震時に上記梁間の相対変位によって塑性変形し、その履歴減衰効果によって制振機能を発揮する履歴ダンパーと、
    この履歴ダンパーよりも剛性が小さく、かつ上端部が上階側の上記梁と一体化されて下端部が自由端となる複数枚の上部平板部材と、下端部が下階側の上記梁と一体化されて上端部が自由端となる下部平板部材とが粘弾性体を間に介して積層状に配設された粘弾性ダンパーとが上下方向に直列的に介装されるとともに、
    外側の2枚の上記下部平板部材の両側部間にスペーサが介装され、かつ上記上部平板部材は、側部間に側部スペーサが介装されて上記下部平板部材のスペーサ間に挿入され、当該スペーサと上記側部スペーサとの間に一定値のクリアランスが形成されて、上記梁間の相対変位量が上記一定値に至った際に、上記粘弾性ダンパーのそれ以上の上記作動を阻止するストッパーが構成されていることを特徴とする制振間柱。
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