JP4368519B2 - 抽出ココアパウダー及びそれを含有する飲食物 - Google Patents

抽出ココアパウダー及びそれを含有する飲食物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はざらつき及び沈殿がなく、且つ風味の良い抽出ココアパウダー及びそれを含有する飲食物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のココアパウダーは焙焼又は未焙焼のカカオ豆又はカカオニブをアンモニア、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ溶液に浸漬処理し、乾燥、ロースト後、磨砕し、以後搾油、粉砕をし、通常のココアパウダーを得ている。該従来製法によって得られるココアパウダーは微粒化しても人間がざらつきとして感じるとされる粒径25μm以上の粒子を3重量%以上含有し、且つ温水に不溶性の粒子が多く、ココア飲料は一般的に他の飲料にはない粉っぽさ、ざらつき、重さ、くどさを感じている。
【0003】
これらの欠点を取り除くべく、カカオ豆の水溶性成分を抽出する方法について特公昭63−9824号公報にはカカオ豆を焙煎、粗砕、脱皮処理して得られるココア砕豆(ニブス)に常法によりアルカリ処理を施した後又は施さないまま直ちにこれを脱油処理しココアバターを抽出処理後のココアケーキを粉砕し得られる粗粒のココア粉を必要に応じアルカリ処理した後、加熱容器に入れ熱湯によりココア粉の加熱溶解抽出処理を行ない、必要に応じこれにアルカリを添加してアルカリ処理を併行して行ない得られるココア溶解抽出液を濾過を行ない不溶物残滓を除去し得られるココア濾液に乳化剤、安定剤を添加混合し、ココア中の脂肪を均一に分散せしめることを特徴とする飲料用ココアの製造法が開示されている。
【0004】
また特公平1−42657号公報にはアンモニア、マグネシア、ソーダ、カリ等の炭酸塩、重炭酸塩、水酸化物等のアルカリ剤を用いてアルカリ処理したカカオマス又は該カカオマスより一部搾油して得たココアパウダーを70〜130℃のエタノールを含有又は非含有の熱水中に均一に混合せしめて該熱水中に水可溶性物を溶解させ、その混合物中より水可溶性部と微粒子部とを含有する成分を抽出分離することを特徴とするカカオ豆の処理方法が開示されている。
【0005】
また更に特開平9−75003号公報にはカカオ豆の全粒を選別後、焙炒せずに破砕ロールにかけて粗砕した外皮や胚芽が混入したカカオ豆全粒粗砕物をアルカリ処理後水を加えて加熱抽出し、遠心分離、濾過して、カカオ抽出液を製造する工程において(a)カカオ豆全粒破砕物を原料として用いること、(b)アルカリ剤を、アルカリ処理後に得られるカカオ抽出液のpHが6.5〜8.0となるよう添加すること、(c)カカオ豆全粒破砕物に水を加え85〜120℃の条件下で加熱抽出すること、を特徴とするカカオ抽出液の製造法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の如く、該製造方法によって得られる製品は、喫食した時にココア飲料に一般的に感じられる温水に不溶性の粒子によるざらつき、沈殿の発生等を防止する面では成功しているが、ココア抽出液から粉末化する際に大量の水を蒸散させる必要があり、従来製法によるココアパウダー特有の風味とはかけ離れ、苦み、渋み、えぐみなどが強くなり、風味のバランスが崩れた製品となる欠点を有していた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記従来製法の課題を解決すべく鋭意研究の結果、前記の如くアルカリ処理をした原料ココアパウダー1に対して60〜90℃の温水を重量比で5〜15倍添加、混合後、アルカリ剤を加えて再度のアルカリ処理をしながら攪拌し、次に不溶性部分を除去し、乾燥して得た乾燥物を加熱処理することによって得られる抽出ココアパウダー及びそれを含有する飲食物を完成するに至った。
【0008】
本発明に供する原料ココアパウダーとは、カカオ豆を剥皮し、粗砕したカカオニブを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を含むアルカリ溶液に浸漬処理した後、焙焼し、磨砕し、ココアプレス機で搾油し、油分含量10〜24重量%のココアケーキを得、粉砕して製造する方法、またはカカオ豆を弱焙焼後、剥皮し、粗砕したカカオニブを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を含むアルカリ溶液に浸漬処理した後、焙焼し、磨砕し、ココアプレス機で搾油し、油分含量10〜24重量%のココアケーキを得、粉砕して製造する方法によって得られる。
【0009】
上記の如く通常のアルカリ処理した原料ココアパウダーに添加する温水の量は抽出効率をよく行うために、最低でも該ココアパウダー1に対して60〜90℃の温水を重量比で5〜15倍添加することが好ましく、該ココアパウダー1に対して重量比で15を超える加水では以降の濃縮-乾燥時の風味成分のロスが大きくなり好ましくない。また重量比5未満では抽出効率が悪い。
【0010】
本発明の再度のアルカリ処理に使用するアルカリ剤としては炭酸カリウム、炭酸ナトリウムを使用して行う。かくして撹拌終了時の溶液のpHを7.0〜8.5になるよう調整することが好ましく、pHが8.5を越える場合には独特のアルカリ臭や、苦みが発生し好ましくない。一方pH7.0未満の場合には、えぐみ、渋みが強く、好ましい本発明の特徴とする抽出ココア粉末が得られない。
【0011】
次に本発明による抽出時間は、60〜90℃の温水温度で1時間以上3時間以下攪拌しながら抽出することが好ましい。60℃未満で3時間を超える時間の抽出では抽出効率が悪く、90℃を超える温度でも抽出可能であるが独特の不快臭が生成され好ましくない。
【0012】
かくして得た再度のアルカリ処理された不溶性成分が混在する攪拌液を、遠心分離により固液分離を行い、粒径25μm以上の不溶性成分を取り除く。この際使用する遠心分離機としては連続式、バッチ式のいずれの遠心分離機をも使用することが可能である。
【0013】
該不溶性成分を分離した抽出液を粉末化するために、濃縮、及び乾燥工程に移るが、濃縮、乾燥方法としては通常の真空乾燥法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法等を採用することが出来る。直接乾燥法又は凍結乾燥法で得た乾燥物はピンミル、カッターミル等で粉砕する。上記乾燥法により得られた乾燥物の水分を5重量%以下、1重量%以上とし、更に通風型オーブン、流動層乾燥機等により、加熱処理を行う。加熱処理としては該乾燥物の品温を110〜140℃、好ましくは品温125〜135℃の特定温度条件で加熱処理することであって、該加熱処理により、香ばしく、ココアらしい香気を引き出す本発明の特徴とする該加熱処理効果の現われた抽出ココアパウダーが得られる。
【0014】
加熱処理する際の該乾燥物の水分は1〜5重量%が好ましく、該乾燥物の水分が5重量%超える場合には以降の加熱処理時に固結が起こり、後工程の微粒化が困難となり好ましくない。一方、該乾燥物の水分が1重量%未満の場合には加熱処理が急激に起こり均一な処理がし難く、焦げ臭が強く、好ましい風味でなくなる。好ましい加熱処理時の乾燥物の水分は2〜3重量%であることがより好ましい。
【0015】
乾燥物の加熱処理に対する加熱時間は30分を越えると著しく美味しさが低下をし、又20分未満では美味しさが発現しない。
【実施例】
次に実施例を挙げて,本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
実施例1
カカオ豆を剥皮し、粗砕したカカオニブに対し炭酸カリウム2重量%、水25重量%を加え、90℃で1時間混合しながらアルカリ処理し、焙焼し、磨砕して得たカカオマスをカカオプレス機で搾油してpH7.4の油分12重量%の原料ココアパウダーを得た。
上記ののアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を140重量部の熱水に溶解させ、80℃に加温しながら、炭酸カリウム0.4重量部を添加し、1時間攪拌と同時に再度のアルカリ処理を行う。当該アルカリ処理した溶液を31000Nで遠心分離機にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除いた。該抽出溶液を、ブリックス計による測定濃度Bx:25まで真空濃縮し、しかる後噴霧乾燥にて水分5重量%に乾燥後、135℃、30分間、通風型オーブン(ADVATEC FV−430 FORCED CONVENCTION OVEN)を使用して加熱処理し、PH7.9、水分1.0重量%の抽出ココアパウダーを得た。
当該品はココア風味の優れた抽出ココアパウダーであった。
【0017】
実施例2
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を140重量部の熱水に溶解させ、80℃に加温しながら、炭酸ナトリウム0.3重量部を添加し、1時間攪拌と同時に再度のアルカリ処理を行う。該アルカリ処理した溶液を31000Nで遠心分離機にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除いた。該抽出溶液を、ブリックス計による測定濃度Bx:25まで真空濃縮し、しかる後噴霧乾燥にて水分5重量%に乾燥後、135℃、30分間、通風型オーブン(ADVATEC FV−430 FORCED CONVENCTION OVEN)を使用して加熱処理し、pH7.8、水分1.0重量%の抽出ココアパウダーを得た。
当該品はココア風味の優れた抽出ココアパウダーであった。
【0018】
実施例3
実施例1に記載の製造方法で得られた抽出ココアパウダー20重量部、グラニュー糖49.9重量部、脱脂粉乳10重量部、クリームパウダー20重量部、食塩0.10重量部を混合し、調整ココアパウダーを得た。該調整ココアパウダー13gを100mlの温水に溶かして抽出ココアパウダー含有飲食物を調製した。
【0019】
実施例4
実施例2記載の方法で得た抽出ココアパウダー7.5重量部、牛乳200重量部、生クリーム200重量部、卵50重量部、卵黄70重量部、グラニュー糖50重量部を準備し、卵50重量部と卵黄70重量部をほぐし、該抽出ココアパウダー7.5重量部とグラニュー糖50重量部の中に分散、溶解させ、ペースト状にした後、牛乳200重量部と生クリーム200重量部を添加し、アイスクリームフリーザー(SIMAC社製 GELATAIO MAGUNM PLUS)にて処理し、アイスクリームを得た。該アイスクリームは口溶けが非常に良く、なめらかな食感で、色調が均一であった。
【0020】
実施例5
実施例1の抽出ココアパウダー10重量部、砂糖150重量部、水分25重量%含有酸糖化水飴150重量部、仕込水50重量部を準備する。該抽出ココアココアパウダー以外の原料を蒸気ケットルに計り入れ、攪拌しながら150℃まで煮詰める。さらに抽出ココアパウダーを少量づつ添加し、均一になるまで攪拌し、成形、冷却し、キャンディーを得た。該キャンディーはざらつきが全くなく、なめらかであった。
【0021】
実施例6
砂糖27.8重量部、粉末ソルビトール6重量部及び水分25重量%含有酸糖化水飴50重量部に3分の1量の水を加え、125℃迄煮詰めた糖液を得た。一方ゼラチン6重量部を1.5倍量の水にて膨潤させた。次に上記糖液及び膨潤したゼラチンを混合し、
実施例1の抽出ココアパウダー3.3重量部を加えてグミ生地を得た。最後にスターチモールドにこのグミ生地を流し込み、一昼夜放置した後、抽出ココアパウダー入りグミを得た。該グミはざらつきが全くなく、なめらかであった。
【0022】
試験例1
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を45,50、100、150、180重量部の80℃温水に分散溶解させ、炭酸カリウム0.4重量部を添加し、1時間攪拌しながら再度のアルカリ処理を行った。該アルカリ処理した溶液を実施例1の通り遠心分離にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除き、抽出液の乾燥後の抽出乾燥物収量%の結果を表1に示した。
また,温水量150重量部と180重量部で抽出した乾燥物を実施例1の通りに加熱処理をして実施例3に示す方法で調整ココア飲料を調製し、40人のパネルにより美味しさの二者択一選択率により評価をした。その結果、有意水準95%において28対12で温水量150重量部による抽出で得られた調整ココア飲料が好まれた。
【表1】
Figure 0004368519
【0023】
試験例2
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を140重量部の温水に溶解させ、80℃に加温しながら、炭酸カリウムを必要に応じて添加し、pH6.8,7.0,7.5,8.5,8.7で再度のアルカリ処理を行った。ここに於いて搾油後のココアパウダーのpHは高く、加水して撹拌することによりカカオパウダーの粒子が膨潤して粒子内より溶出する有機酸類、ミネラル類の作用により緩衝作用が働き当初のカカオパウダーのpHより低下すのが一般的である。該アルカリ処理した溶液を実施例1の通り遠心分離にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除き、抽出液の乾燥後、実施例1の通りに加熱処理をして抽出ココアパウダーを得、上記5水準のpHで再度のアルカリ処理した抽出ココアパウダー3gと砂糖6gを温水100mlに溶解し、以下の評価基準(5段階評価)により嗜好調査を40人のパネルで実施し、その評価値の平均点を示すと共に有意水準95%による検定を行った。その結果を表2に示す。
評価用語:苦み、渋み、臭み、えぐみ、酸味について
評価値 :+2を「好ましい」、+1を「やや好ましい」、 0を「どちらともいえない」、 −1を「やや好ましくない」、 −2を「好ましくない」
【表2】
Figure 0004368519
上記結果より
苦みについてはpH6.8と7.0の間に於いて差があり、pH7.0以上が好ましい。
臭みについてはpH8.5と8.7の間に於いて差があり、pH8.5以下が好ましい。
えぐみについてはpH6.8と7.0の間に於いて差があり、pH7.0以上が好ましい。
渋み・酸味についてはpH6.8と7.0の間に於いて差があり、pH7.0以上が好ましい。
総合的にpH7.0〜8.5が好ましい。
【0024】
試験例3
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を140重量部の温水に溶解させ、80℃に加温しながら、炭酸カリウムを添加し、pH7.5で再度アルカリ処理を行った。該アルカリ処理した溶液を実施例1の通り遠心分離にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除き、抽出液の乾燥後、実施例1の通りに加熱処理をして抽出ココアパウダーを得、pH7.5で再度アルカリ処理した抽出ココアパウダー3gと砂糖6gを温水100mlに溶解した。
一方、特公平1−42657号公報に則り従来のココアパウダーを下記の通り調製した。カカオマスを剥皮し、粗砕したカカオニブに対して炭酸カリウム1.6重量%、水25重量%を加え、90℃で一時間混合しながらアルカリ処理し、焙焼し、磨砕して得たpH7.0のカカオマス100kgに対し70℃の温水500kgを加え、70℃を保ちながら混合撹拌をする。次に遠心分離をして水可溶成分を得、70℃にて減圧乾燥して従来のココアパウダーを調製し、該ココアパウダー3gと砂糖6gを温水100mlに溶解した。
上記本発明品と従来品の抽出ココアパウターより得た調整ココア飲料を40人のパネルにより美味しさの二者択一選択率により評価をした。その結果、有意水準95%において30対10で本発明によって得られた調整ココア飲料が好まれた。こくの有る苦み、渋みを有し、臭み、えぐみが感じられないと言う評価であった。
【0025】
試験例4
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部に150重量部の55℃,60℃、80℃、90℃、98℃の各温水に分散溶解させ、炭酸カリウムを0.4重量部を添加し、40分、60分、120分、180分、200分間攪拌しながら再度アルカリ処理を行った。該アルカリ処理した溶液を実施例1の通り遠心分離にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除き、抽出液の乾燥後の抽出乾燥物収量%の結果を表3に示した。
【表3】
Figure 0004368519
次に、80℃、180分抽出の乾燥物と同じく200分抽出の乾燥物をそれぞれ試験例3に示す通りにココア飲料を調製し、試験例3同様の嗜好調査を行なった結果、180分抽出より得たココア飲料が有意に好まれた。その主たる理由は200分抽出より得たココア飲料は不快臭が有る事であった。
また、90℃、180分抽出の乾燥物と同じく200分抽出の乾燥物をそれぞれ試験例3に示す通りにココア飲料を調製し、試験例3同様の嗜好調査を行なった結果、180分抽出より得たココア飲料が有意に好まれた。その主たる理由は200分抽出より得たココア飲料は不快臭がやや強く有る事であった。
更にまた、90℃、180分抽出の乾燥物と同じく98℃、180分抽出の乾燥物をそれぞれ試験例3に示す通りにココア飲料を調製し、試験例3同様の嗜好調査を行なった結果、90℃、180分抽出より得たココア飲料が有意に好まれた。その主たる理由は98℃、180分抽出より得たココア飲料は香味が弱い事であった。
【0026】
試験例5
実施例1に示すpH7.4のアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダー10重量部を140重量部の温水に溶解させ、80℃に加温した後、炭酸カリウムを添加し、pH8.5で再度アルカリ処理を行った。該アルカリ処理した溶液を実施例1の通り遠心分離にかけ、固液分離を行い不溶性成分を取り除き、抽出液の乾燥後、実施例1の装置で、105℃、110℃、120℃、125℃、130℃、135℃、140℃、145℃の各温度で10分、20分、30分、40分間加熱処理をして抽出ココアパウダーを得、上記8水準で加熱温度処理し、4水準での加熱時間で得た抽出ココアパウダー3gと砂糖6gを温水100mlに溶解し、以下の評価基準(5段階評価)により嗜好調査を40人のパネルで実施し、その美味しさの評価値の平均点を示すと共に有意水準95%による検定を行った。その結果を表4に示した。
評価値 :+2を「好ましい」、+1を「やや好ましい」、 0を「どちらともいえない」、 −1を「やや好ましくない」、 −2を「好ましくない」
【表4】
Figure 0004368519
その結果、30分間の加熱処理では105℃と110℃の間では有意差があり、105℃はココア感に乏しく、110℃は淡いココア感と言う評価。
30分間の加熱処理では120℃と125℃の間では有意差があり、120℃は淡いココア感と言う評価で、125℃はパンチのあるココアと言う評価。
30分間の加熱処理では135℃と140℃の間では有意差があり、135℃は香りの良いココアと言う評価。
30分間の加熱処理では140℃と145℃の間では有意差があり、140℃は深いココア感であり、145℃は焦げ臭を感じると言う評価。
40分間の加熱処理では110〜140℃の全ての範囲に於いて30分間の加熱処理との間に有意差が有り、美味しくないと言う評価。
20分間の加熱処理では125〜135℃の間では30分間の加熱処理と有意差が無く、美味しいという評価。
20分間の加熱処理では110℃,120℃及び140℃では30分間の加熱処理と有意差が有り、110℃,120℃及び140℃はまずくココアらしくないという評価。
10分間の加熱処理では125〜135℃の間では20分間の加熱処理と有意差が有り、10分間の加熱処理は極めて不評。
【0027】
試験例6
実施例1に示す通りに処理して得た加熱処理前の乾燥物は原料として用いる実施例1に示すアルカリ処理をした油分12重量%の原料ココアパウダーと比べて遊離アミノ酸、及び還元糖が増加する。その結果を表5に示した。
【表5】
Figure 0004368519
表5に示す結果より、アルカリ処理することにより、遊離アミノ酸、還元糖量が増加し、次行程の加熱処理により、香味成分であるピラジン類が増加する事を下記試験例7で示す。
【0028】
試験例7
実施例1に示す原料ココアパウダーと実施例1の抽出ココアパウダーのピラジン成分を分析した結果は表6に示す通り、実施例1に示す原料ココアパウダーに比して、ピラジン類の含量が5倍量以上の含量であり、ココア風味の優れた抽出ココアパウダーを得た。
【表6】
Figure 0004368519
上記表6の結果から、本発明に則り処理して得た抽出ココアパウダーはピラジン類の総量が実施例1に示す原料ココアパウダーと比較して5倍量以上増加しており、特徴的にはdimethyl disulfide、dimethyl trisulfide、2、5−dimethylpyrazineが5倍量以上の含量である。
【0029】
本香気成分のGC/MS(ガスマス)による香気成分分析は下記の条件で実施した。
また、試料の抽出にSPME法を用いているが、その条件を下記に示す。
ここで云うSPME法とはSolid Phase Microextractionの略称を云い、異種相間の分配係数と移動の原理による化合物の分離手法を意味し、詳しくは化合物濃度ゼロのSPMEのファイバー構造体上の液相に、化合物を含有する試料液相より化合物のそれぞれの分配係数に則った濃度比に成るまで、化合物は試料液相からSPMEのファイバー構造体上の液相へと移動する。一定時間内で分配平衡に至る化合物の移動量がSPMEでの抽出効率となり、その一定時間が抽出時間となる。
条件
・機種名 Hewlett-Packard , Ltd.製 GC:HP6890、 MS:HP5973
・カラム HP−5MS:内径0.25mm×30m、膜厚0.25μm
微極性、Polysiloxane、脂肪酸エステル等の分析用
・キャリアガス流量 定圧モード:95kPa=1.7ml/min(オーブン40℃)ヘリウム使用
・スプリットレス法 インジェクト時の加圧はなし
・オーブン温度 40℃(5min hold)→(5℃/min)85℃→(10℃/min)→220℃(5.5min)
分析時間合計:33min
・注入口温度 250℃
・MSインーターフェース 230℃
・MS四重極 150℃
SPMEトラップ条件
・サンプル調製 10mlバイアル、試料1g秤量 加水3g
・トラップ条件 60℃、20分
【0030】
上記方法により分析したクロマトグラムの結果を図1,図2に示す。該クロマトグラムの結果からも、リテンションタイムが8分から20分の間に、pyrazine類の化合物が検出され、本発明に則り処理して得た抽出ココアパウダーは原料として用いる実施例1に示す原料ココアパウダーに比して、該pyrazine類の化合物成分が5倍量以上多く含まれいる事が判明した。
【0031】
【発明の効果】
かくして得られる本発明による抽出ココアパウダーは、従来のココアパウダー中の粒径25μm以上の不溶性成分に由来する、沈殿やざらつきが無く、且つ従来製法によるココアパウダーはもとより、特公平1−42657号公報より得た抽出ココアパウダーにも感じられる特有の渋み、えぐみが無い。更に本発明による抽出ココアパウダーはココア特有の好ましい風味とロースト感のあるものである。特にGC/MSによる香気成分にて検出された香気成分中のピラジン類が上記従来法と比べ、5倍量以上であり優れた製品である。本発明による抽出ココアパウダーはキャンディー、ゼリー類、アイスクリーム、焼成菓子類等の飲食物に利用することができる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1に示す原料ココアパウダーのガスマス分析結果を示すチャートを示し、横軸は分の時間を示し、縦軸は化合物のイオン存在量を示す相対値である。
【図2】実施例1に則り処理して得た抽出ココアパウダーのガスマス分析結果を示すチャートを示し、横軸は分の時間を示し、縦軸は化合物のイオン存在量を示す相対値である。

Claims (7)

  1. カカオ豆を剥皮し、粗砕したカカオニブを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を含むアルカリ溶液に浸漬処理した後、焙焼し、磨砕し、ココアプレス機で搾油し、油分含量10〜24重量%のココアケーキを得、粉砕して製造する方法、またはカカオ豆を弱焙焼後、剥皮し、粗砕したカカオニブを炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩を含むアルカリ溶液に浸漬処理した後、焙焼し、磨砕し、ココアプレス機で搾油し、油分含量10〜24重量%のココアケーキを得、粉砕して製造する方法によって得られる原料ココアパウダー1に対して60〜90℃の温水を重量比で5〜15倍添加、混合後、溶液のpHが7.0〜8.5になるようアルカリ剤を加えて再度のアルカリ処理をしながら攪拌し、次に不溶性部分を除去し、乾燥して得た乾燥物を125〜135℃において20〜30分間加熱処理することによって得られる抽出ココアパウダー。
  2. 再度のアルカリ処理のアルカリ剤がナトリウム、カリウムの炭酸塩である請求項1記載の抽出ココアパウダー。
  3. 請求項1または2記載の抽出ココアパウダーを含有する飲食物。
  4. 請求項1または2記載の抽出ココアパウダーと糖類、粉乳とより成る調整ココアパウダー。
  5. 請求項1または2記載の抽出ココアパウダーと糖類、乳製品、乳化剤より成る冷菓。
  6. 請求項1または2記載の抽出ココアパウダーと砂糖、水飴、乳製品より成る飴菓子。
  7. 請求項1または2記載の抽出ココアパウダーと砂糖、水飴、糊料または膠質より成るゼリー菓子。
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