JP4343387B2 - 空気入りタイヤのトレッド構造とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は空気入りタイヤのトレッド構造の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤトレッドに転がり抵抗とWET性能を併有させるためにシリカ充填度の高いゴムが用いられている。このようなトレッドは電気抵抗が大となりタイヤの帯電性が大きくなる。これに対する対策として、トレッド下部とトレッド表面との間に導電経路を形成するようにしている。特開平10−81110号公報は、このような公知のトレッドとその問題点を紹介している。
【0003】
特開平10−81110号公報は、タイヤトレッドの外表面とトレッド下層ゴムとの間にトレッドの厚み方向にしてタイヤ周方向に延びる導電ゴム層を有するトレッドを提案している。
【0004】
また、特開平8−34204号公報においては、導電性を有するタイヤサブトレッド領域の上に非導電性の主要タイヤトレッド領域が設けられ、主要タイヤトレッド領域の中央部または両側部において導電ゴム層が上下方向かつ周方向に延びている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
いずれの公知技術においても、トレッドの耐摩耗性と好ましい電気抵抗との双方をバランスよく達成することが難しく、また、導電層がトレッド表面に露出する個所において陥没摩耗が生じやすく見栄えがよくない。また、トレッドの内部においてその厚み方向に延びるとともに周方向に延びる導電ゴム層を埋設することは容易ではなかった。この発明はこのような欠点を持たないタイヤのトレッド構造とその容易な製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は次の方法を採用した。
【0008】
本発明の空気入りタイヤのトレッド構造の製造方法は、(1) キャップゴムの下側にベースゴムを積層してなる未加硫のトレッドをその長手方向に進行させながら、トレッド表面から少なくともベースゴムの上面に到達するとともにトレッドの長手方向に延びる切れ目を形成する工程、(2) 前記トレッドをトレッド側に膨出する治具の上を摺動させることにより、前記トレッドを前記治具の形状に相応して弯曲させて、前記切れ目をV字状に拡開する工程、(3) 前記のように拡開された切れ目にゴムのりを注入する工程、および(4) 前記トレッドを平坦な表面を有する治具の上を摺動させることにより、前記トレッドを前記治具の形状に相応して平坦な状態に復元し、これにより前記の切れ目を閉塞する工程とからなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1において、10はあらかじめ押出成形されたトレッドであって、キャップゴム12とその下側に重ね合せたベースゴム14とからなる。
【0010】
トレッド10は図示しない搬送装置によりその長手方向に送られ、図2に示すように、その幅方向の中央部16がドラムdの形態の治具の周面上を圧接摺動する。ドラムdの周面は太鼓状に膨出しているので、トレッド中央部16は円弧状に屈曲する。
【0011】
図3に示すように、トレッド10の先端11がドラムdの周面に乗って弯曲した状態で、不図示の手段により吊持されたローラカッターrが下降して、トレッド10の中央部16の表面にトレッド10の長手方向に延びる切れ目18を形成する。
【0012】
このとき、切れ目18が入るトレッド中央部16は円弧状に弯曲しているので、図4に示すように、切れ目18はただちにV字状に拡開する。
【0013】
図5に示すように、トレッドが少し前進した位置において、不図示のゴム注入手段によりV字状に拡開した切れ目18に導電ゴム層を形成するゴムのりが注入される。ゴムのりの注入量は、V字状に拡開した切れ目18が後述のように閉塞したときにゴムがトレッド表面に溢れ出さないように調整する。
【0014】
このあと、図6に示すように、トレッド10は不図示の搬送手段により移動して、平坦な治具fの上面を摺動し、その形状に相応して平坦となる。これにより、V字状に拡開した切れ目18が閉塞して、ゴムのりがトレッド上面まで到達する。この結果、ベースゴム14の上面15からキャップゴム12の上面13に至る導電ゴム層20が形成される。
【0015】
トレッド10が継続して移動することにより、導電ゴム層20がトレッド10の全長にわたって形成される。
【0016】
以上の諸工程は、押し出されたトレッドゴムが高温状態にある間に完了することが好ましい。
【0017】
ベースゴムの導電性が低い場合、すなわちカーボン含有量(カーボンブラックの含有量を意味する。以下、カーボン含有量のほか、カーボン量という場合もある。)が少ない場合には、導電ゴム層20すなわち切れ目18はトレッド10の全体を貫通するように設けることが有利である(図7)。また、ベースゴムの導電性が高い場合、すなわちカーボン含有量が多い場合には、キャップゴム12の上面13からベースゴムの厚み中央まで設け、ベースゴムを通過しなくてもよい(図8)。この後者の場合には、ベースゴム14からトレッド表面13までの導電経路を形成するためには、前記の図1〜6の実施例に示すように、少なくともベースゴム14の上面15まで到達するものでなければならない。
【0018】
また、導電ゴム層20はトレッドの幅方向中央部において1つを設けてもよく(図1〜7)、両側において2つを設けてもよく(図8)、その他、適当な数の導電ゴム層を適宜の位置に設けることができる。
【0019】
また、導電ゴム層はトレッドの長手方向すなわちタイヤの周方向全長にわたって連続して設けてもよく、断続して設けてもよい。
【0020】
キャップゴム、ベースゴム、導電ゴム層は下記の表1に示す配合処方に従い調製した。
【0021】
【表1】
表1中、Si69はシランカップリング剤(デグサ社製)である。
【0022】
なお、表1においては、ベースゴムについては(1)と(2)との2例を示した。
【0023】
また、キャップゴム、ベースゴム、導電ゴム層のカーボン含有量を種々変更した6例につき、電気抵抗、転がり抵抗、WETピークμを評価した。この結果を下記の表2に示す。
【0024】
【表2】
上記のイとロの例の対比から、キャップゴムのカーボン量が30phrから35phrになると転がり抵抗とWETピークμとが悪化することがわかる。相対的にシリカの量が減少するためである。
【0025】
また、イとハの例の対比から、ベースゴムのカーボン量が45phrから40phrになると電気抵抗が悪化することがわかる。これはベースゴムが絶縁性となるためである。
【0026】
また、逆に、ヘの例に示すように、ベースゴムのカーボン量が65phrになると、転がり抵抗が大幅に悪化し、望ましくない。
【0027】
しかし、前記の場合において、ニの例のように、ゴムのりをキャップゴムとベースゴムとに貫通させると、好ましい電気抵抗を維持することができる。これは、ゴムのりがキャップゴムとベースゴムとの全厚にわたって通電するためである。
【0028】
さらに、イとホの例の対比から、ゴムのりのカーボン量が60phrから55phrになると、電気抵抗が悪化することを知ることができる。これは、ゴムのりの通電性が低下するためである。
【0029】
以上のところからして、キャップゴム、ベースゴム、導電ゴム層はつぎの範囲において最大の効果を達成することがわかる。
【0030】
キャップゴム: 30phr以下
ベースゴム: 45phr〜65phr未満
導電ゴム層: 60phr以上
さらに、導電ゴム層がトレッドの全厚にわたって貫通している場合には、各層がつぎのようなカーボン含有量を示せば、好ましい結果を得ることができる。
【0031】
キャップゴム: 30phr以下
ベースゴム: 40phr以下
導電ゴム層: 60phr以上(ただし貫通していること)
このように本発明の方法により製造するタイヤのトレッドは上記のような3つの異なったゴムをもった構造でなければならない。理由はつぎのとおりである。
【0032】
(1) キャップゴムは高いWETμと低い転がり抵抗を確保するようにシリカ含有量を多く(すなわちカーボンを少なく)する必要がある。
【0033】
(2) ベースゴムは低コストと低い転がり抵抗を確保するように、カーボンゴム(ノンシリカ)で、その含有量を少なく(発熱を抑える)する必要がある。
【0034】
(3) 導電ゴム層は静電気を逃がす性能だけを確保するために、カーボン含有量を多くする必要がある。
【0035】
上記の(1) 〜(3) の特徴を組合せることにより、低燃費化とWETμを維持した状態で電気抵抗対策構造となり得る。
【0036】
また、導電ゴム層の厚みについては、以下のように、狭いほど段差摩耗が生じにくく有利である。導電ゴム層の厚みを種々変化させて段差摩耗の影響を確認した結果を下記の表3に示す。
【0037】
【表3】
上記の表において、段差摩耗の有無は目視で確認した。
【0038】
表3に示すように、厚みが小さいほど段差摩耗には有利であり、その意味では1.0mm以下が好ましい。ただし、導電ゴム層の厚みはその機能上薄い方が好ましく、したがって0.5mm以下が最も好ましい。
【0039】
【発明の効果】
本発明の製造方法により得られる空気入りタイヤのトレッド構造によれば、トレッドの耐摩耗性と好ましい電気抵抗との双方をバランスよく達成することが可能であり、また、導電ゴム層はトレッドに設けた切れ目にゴムのりを流し込んで形成したものであるので、導電ゴム層の幅を薄くすることが可能であり、したがって、導電ゴム層がトレッド表面に露出する個所において陥没摩耗が生じにくく、見栄えがよい。
【0040】
本発明の空気入りタイヤのトレッド構造の製造方法によれば、トレッドの内部においてその厚み方向に延びるとともに周方向に延びる導電ゴム層をきわめて容易に埋設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係る空気入りタイヤのトレッド構造の製造過程における第1の工程を示す概略図
【図2】上記の製造過程における第2の工程を示す概略図
【図3】第3の工程を示す概略図
【図4】第4の工程を示す概略図
【図5】第5の工程を示す概略図
【図6】第6の工程を示す概略図
【図7】他の実施例に係るトレッドの概略正面図である。
【図8】さらに他の実施例に係るトレッドの概略正面図である。
【符号の説明】
10 トレッド
11 トレッドの先端
12 キャップゴム
13 キャップゴムの上面
14 ベースゴム
15 ベースゴムの上面
16 トレッドの中央部
18 切れ目
20 導電ゴム層
d 治具
r ローラカッター
f 治具
Claims (1)
- つぎの工程よりなる空気入りタイヤのトレッド構造の製造方法。
(1) キャップゴムの下側にベースゴムを積層してなる未加硫のトレッドをその長手方向に進行させながら、トレッド表面から少なくともベースゴムの上面に到達するとともにトレッドの長手方向に延びる切れ目を形成する工程。
(2) 前記トレッドをトレッド側に膨出する治具の上を摺動させることにより、前記トレッドを前記治具の形状に相応して彎曲させて、前記切れ目をV字状に拡開する工程。
(3) 前記のように拡開された切れ目にゴムのりを注入する工程。
(4) 前記トレッドを平坦な表面を有する治具の上を摺動させることにより、前記トレッドをこの治具の形状に相応して平坦な状態に復元し、これにより前記の切れ目を閉塞する工程。
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