JP4340404B2 - 不飽和6員環の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和6員環の製造方法に関し、より詳しくはベンゼン誘導体及びピリジン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、ベンゼンやピリジンの合成法として、3分子のアセチレンや2分子のアセチレンと1分子のニトリル等を用いた限られた手法の中で、様々な合成法が開発されてきた。しかしながら、基本となる手法に進歩がないため、合成できるベンゼンやピリジンの種類がほぼ飽和状態にある。そこで、この基本となる手法を開発して、新規な合成技術を開拓することが望まれていた。
【0003】
また、従来、ベンゼンやピリジンといった不飽和6員環に置換基を導入する際には、置換基による配向性の相違を利用して、目標化合物ごとに最適な合成スキームを検討することが求められていた。たとえば、オルト、パラ配向性、又は、メタ配向性という置換基に依存する配向性の相違を考慮し、二置換ベンゼン、三置換ベンゼン等を合成していた。
【0004】
しかし、このような伝統的な有機合成の手法では、不飽和6員環に導入する置換基が多くなればなるほど、合成経路が長くなり、収率が低下した。
【0005】
従って、多置換ベンゼン誘導体や多置換ピリジン誘導体を選択的、かつ、一段階の反応で得ることが所望された。
【0006】
そこで、本発明は、シクロペンタジエニル基の誘導体を配位子として持つ遷移金属メタラシクロペンタジエンを用いて、その配位子であるシクロペンタジエニル基をちぎって、そのうちの炭素2個分を利用してベンゼン誘導体を合成する手法、あるいはシクロペンタジエニル基の炭素3個分を利用してピリジン誘導体を合成する手法といった、従来にない基本的かつ革新的な手法により、選択的かつ一段階の反応で多置換ベンゼン誘導体や多置換ピリジン誘導体を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、下記式(1a)で示されるベンゼン誘導体の製造方法であって、
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基であり、ただし、R2及びR3は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよい。)、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
【化8】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、上記の意味を有する。R7、R8及びR9は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基であり、Mは、遷移金属を示し、Lは、アニオン性配位子を示す。)、下記式(3)で示されるニトリルと
【化9】
(式中、Aは、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。)を反応させることを特徴とするベンゼン誘導体の製造方法が提供される。
【0008】
また、本発明では、下記式(1b)で示されるピリジン誘導体の製造方法であって、
【化10】
(式中、R7、R8及びR9は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基であり、Aは、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。)、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
【化11】
(式中、R7、R8及びR9は、上記の意味を有する。R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基であり、ただし、R2及びR3は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子又は式−N(B)−で示される基(式中、Bは水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよく、Mは、遷移金属を示し、Lは、アニオン性配位子を示す。)、下記式(3)で示されるニトリルと
【化12】
(式中、Aは上記の意味を有する。)を反応させることを特徴とするピリジン誘導体の製造方法が提供される。
【0009】
本発明のベンゼン誘導体の製造方法およびピリジン誘導体の製造方法において、R5、R6、R7、R8及びR9が水素原子であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のベンゼン誘導体の製造方法およびピリジン誘導体の製造方法において、前記反応は、周期表第4から15族の金属を含む金属化合物存在下で行ってもよい。また、前記金属化合物を用いる場合は、前記金属化合物が、リチウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、チタンイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、クロムイオンを含む金属ハロゲン化物であることが好ましい。
【0011】
また、本発明のベンゼン誘導体の製造方法およびピリジン誘導体の製造方法において、Mが、周期表第4族から第6族の遷移金属であることが好ましく、Mが、チタンであることが更に好ましい。
【0012】
また、本発明のベンゼン誘導体の製造方法およびピリジン誘導体の製造方法において、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、下記式(3)で示されるニトリルとを反応させることを特徴とする、下記式(1a)で示されるベンゼン誘導体及び下記式(1b)で示されるピリジン誘導体の製造方法が提供される。
【0014】
【化13】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、L、M及びAは、上記の意味を有する。)
【0015】
上記式(1a)及び上記式(1b)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。
【0016】
本明細書では、C1〜C20炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。C1〜C20炭化水素基には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C3〜C20アリル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C4〜C20ポリエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0017】
C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C3〜C20アリル基、C4〜C20アルキルジエニル基、及び、C4〜C20ポリエニル基は、それぞれ、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基、C2〜C10アルキニル基、C3〜C10アリル基、C4〜C10アルキルジエニル基、及び、C4〜C10ポリエニル基であることが好ましい。
【0018】
C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、及び、C4〜C20シクロアルケニル基は、それぞれ、C6〜C10アリール基、C6〜C12アルキルアリール基、C6〜C12アリールアルキル基、C4〜C10シクロアルキル基、及び、C4〜C10シクロアルケニル基であってもよい。
【0019】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいアルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ベンジル、2−フェノキシエチル等がある。
【0020】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいアリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、ナフチル、ビフェニル、4−フェノキシフェニル、4−フルオロフェニル、3−カルボメトキシフェニル、4−カルボメトキシフェニル等がある。
【0021】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいアルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、t−ブトキシ等がある。
【0022】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいアリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェノキシ、ナフトキシ、フェニルフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−トリルオキシ、3−トリルオキシ、4−トリルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ、4−フェノキシフェニルオキシ、4−フルオロフェニルオキシ、3−カルボメトキシフェニルオキシ、4−カルボメトキシフェニルオキシ等がある。
【0023】
C1〜C20炭化水素基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基、アミノ基、シリル基には、置換基が導入されていてもよく、この置換基としては、例えば、C1〜C10炭化水素基、C1〜C10アルコキシ基、C6〜C10アリールオキシ基、アミノ基、水酸基又はシリル基などが挙げられる。
【0024】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいアミノ基の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0025】
本明細書において有用な、置換基を有していてもよいシリル基としては、制限するわけではないが、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0026】
ただし、R2及びR3は、互いに架橋してC4〜C20飽和環又は不飽和環を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、4員環〜16員環であることが好ましく、4員環〜12員環であることが更に好ましい。この環は、ベンゼン環等の芳香族環あってもよいし、脂肪族環であってもよい。また、これらの置換基が形成する環に、更に単数又は複数の環が形成されていてもよい。
【0027】
前記飽和環または不飽和環は、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、スズ原子、ゲルマニウム原子または式―N(B)―で示される基(式中、Bは水素原子またはC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。即ち、前記飽和環または不飽和環はヘテロ環であってもよい。かつ、置換基を有していてもよい。不飽和環は、ベンゼン環等の芳香族環であってもよい。
【0028】
Bは,水素原子またはC1〜C10炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1〜C7炭化水素基であることが更に好ましく、R6は水素原子、C1〜C3アルキル基、フェニル基またはベンジル基であることが更になお好ましい。
【0029】
この飽和環又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、たとえば、C1〜C20炭化水素基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基、アミノ基、水酸基又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0030】
上記式(1b)中、Aは、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;置換基を有していてもよいアミノ基;置換基を有していてもよいシリル基、又は水酸基である。
【0031】
本発明のベンゼン誘導体の製造方法、及びピリジン誘導体の製造方法では、下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンが用いられる。
【0032】
【化14】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は、上記の意味を有する。)
【0033】
Mは、遷移金属を示す。Mとしては、周期表第4族〜第6族の遷移金属であることが好ましく、周期表第4族の金属、即ち、チタン、ジルコニウム及びハフニウムであることが更に好ましい。
【0034】
Lは、アニオン配位子を示す。Lは、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基、ハロゲン化物イオン又はジアルキルアミド基であることが好ましく、非局在化環状η5−配位系配位子であることが更に好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子の例は、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換シクロペンタジエニル基である。
【0035】
この置換シクロペンタジエニル基は、例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、オクタヒドロフルオレニル基及びアズレニル基である。
【0036】
非局在化環状η5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0037】
非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C4H9)C(CH3)2、C(CH3)2、(CH3)2Si、(CH3)2Ge、(CH3)2Sn、(C6H5)2Si、(C6H5)(CH3)Si、(C6H5)2Ge、(C6H5)2Sn、(CH2)4Si、CH2Si(CH3)2、o−C6H4又は2、2'−(C6H4)2が挙げられる。
【0038】
上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンは、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核メタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0039】
本発明のベンゼン誘導体の製造方法、及びピリジン誘導体の製造方法では、下記式(3)で示されるニトリルが用いられる。
【0040】
【化15】
(式中、Aは、上記の意味を有する。)
【0041】
上記式(3)で示されるニトリルの量は、それぞれ、メタラシクロペンタジエン(2)1モルに対し、0.1モル〜100モルであり、好ましくは1モル〜5モルであり、更に好ましくは2モル〜4モルであり、特に好ましくは約2〜3モルである。
【0042】
本発明ベンゼン誘導体の製造方法、及びピリジン誘導体の製造方法において、前記反応は、周期表第4から15族の金属を含む金属化合物の存在下で行ってもよい。
【0043】
金属化合物は、塩であることが好ましく、錯体であってもよい。前記金属化合物は、リチウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、チタンイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン又はクロムイオンを含む塩であることが好ましい。前記金属化合物は、LiX、MgX2、CuX、TiX4、ZnX2 、NiX2又はCrX3(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示す。)等で表される金属ハロゲン化物であることが好ましく、より好ましくはCuX、TiX4又はZnX2であり、さらに好ましくはCuCl、TiCl4又はZnCl2である。
【0044】
金属化合物は、ニッケル錯体であってもよく、この場合、前記ニッケル錯体には、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C40アルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子を含む置換基を有していてもよいC1〜C40アリールカルボニルオキシ基、ホスフィン若しくはハロゲン原子の少なくとも一つが配位子として、それぞれ、ニッケル金属及びパラジウム金属に結合していてもよい。
【0045】
ニッケル錯体は、NiX2P1P2(式中、Xは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を示し、P1及びP2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、ホスフィン配位子を示し、ただし、P1及びP2は、互いに架橋していてもよい。)であってもよい。ホスフィンは、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィン)アルキレン等であってもよい。塩化ニッケル等のニッケル塩でもよいのだが、ホスフィン存在下では、ニッケル錯体を形成し、有機溶媒に対する溶解度を上げるため、好ましい。
【0046】
金属化合物の量は、メタラシクロペンタジエン(2)1モルに対し、0.0001モル〜20モルであり、好ましくは0.1モル〜10モルであり、更に好ましくは、0.9モル〜5モルであり、特に好ましくは約2〜4モルである。
【0047】
本発明において、ベンゼン誘導体およびピリジン誘導体は、典型的には、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンの溶液に、ニトリル(3)と必要に応じて金属化合物を添加し、攪拌して製造する。メタラシクロペンタジエン(2)は単離されたものを用いる必要はなく、溶液中で調製されたメタラシクロペンタジエンをそのまま用いても良い。金属化合物を添加する場合は、ニトリル(3)及び金属化合物を添加する順序には、制限がない。ニトリル(3)及び金属化合物を同時に添加してもよいし、ニトリル(3)を添加した後に金属化合物を添加してもよいし、金属化合物を添加した後にニトリル(3)を添加してもよい。
【0048】
本発明において、ニトリル(3)の存在により、メタラシクロペンタジエン(2)の1つの配位子であるシクロペンタジエニル基の炭素−炭素結合が開裂することにより得られた炭素2個分が、メタラシクロペンタジエン(2)骨格と結合することによってベンゼン誘導体(1a)が得られ、また、残りの炭素3個分がニトリル(3)と結合することによりピリジン誘導体(1b)が得られるものと考えられる。ベンゼン誘導体(1a)を構成する2つの炭素、及び、ピリジン誘導体(1b)を構成する3つの炭素が上記式(2)のシクロペンタジエニル基由来であることは、シクロペンタジエニル基に重水素を付加したメタラシクロペンタジエンを用いて同様の反応を進行させ、2つの重水素がベンゼン誘導体に導入され、3つの重水素がピリジン誘導体に導入されたことからも検証された。
【0049】
なお、上記反応機構は仮説に過ぎず、本発明はこれらの反応機構に限定されるものではない。
【0050】
反応は、好ましくは−100℃〜300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃〜200℃の温度範囲、更に好ましくは−80℃〜60℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール〜2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール〜10バールの範囲内である。
【0051】
溶媒としては、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンを溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0052】
上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンは、ビスシクロペンタジエニル金属ジアルキルのようなメタロセン1モルに、2モルのアルキン、または1モルのジインを作用させることにより得ることができる。本発明において、上記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンとしてチタナシクロペンタジエンを用いる場合には、例えば、下記のチタノセンを用いて合成することができる。
【0053】
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン。
【0054】
なお、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジエチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジイソプロピルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタン;
ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジクロロチタンなどのジクロロ体については、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム等のアルカリ土類金属のような強塩基で還元するか、又は、ジアルキル体に変換してから、チタナシクロペンタジエンを生成させる。
【0055】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0056】
すべての反応は、特に言及しない限り、やや正の圧力下で、窒素雰囲気下のもとで行われた。溶媒として用いたテトラヒドロフラン(THF)は窒素気流下、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。ジインを除いて、アルキン、ニトリル等の試薬は、市販品を購入し、そのまま用いた。
【0057】
1H-NMRは、室温の溶液(CDCl3)を用いて、300MHzにて、JEOL JNM-AL 300 FT NMR スペクトロメター上で測定した。化学シフトは、テトラメチルシラン(δ=0 ppm)からのずれ、または、内部基準としての残渣CHCl3 (δ= 7.24 ppm) に基づいて記述した。また、13C-NMRスペクトルは、CDCl3を用いて、溶液の中心線(δ= 77.0 ppm)を参照して、75.4MHzにて、JEOL-300スペクトロメター上で測定した。質量分析及び高分解能質量分析は、VG ZAB-HS上で測定した。また、ガスクロマトグラフ分析は、SHIMADZU GC-14B ガスクロマトグラフで測定した。
【0058】
実施例1
1,2,3,4-テトラ-n-プロピルベンゼン
Cp2TiCl2 (2 mmol)のTHF (20 ml)溶液に、−78℃にて、n-ブチルリチウム (4 mmol, 1.6 Mペンタン溶液)を加え、−78℃にて1時間攪拌した後、4-オクチン (4 mmol)を加えた。混合物を3時間、−10℃にて攪拌した。次いで、ブチロニトリル (6 mmol)を加え、混合物を50℃まで昇温させ、50℃にて24時間攪拌した。反応混合物を0℃まで冷却し、3N HClで反応を終了させ、エーテルで抽出した。抽出物を飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた暗赤色油状の残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。無色液体。単離収率 56% (276 mg), GC収率 78%。
【0059】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ1.00 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.04 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.45-1.67 (m, 8H), 2.51-2.59 (m, 8H), 6.94 (m, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.51, 15.00, 24.68, 24.72, 31.51, 35.26, 126.63, 138.24, 138.65; 高分解能質量分析計 計算値C18H30, 246.2348, 実測値 246.2347。
【0060】
実施例2
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、3−ヘキシンを用いた。無色液体、単離収率53% (202 mg)、 GC収率 77%。
【0061】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ 0.70 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 0.76 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 2.14-2.25 (m, 8H), 6.53 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ15.54, 15.60, 21.71, 25.65, 126.12, 139.55, 139.61; 高分解能質量分析計 計算値C14H22, 190.1722, 実測値 190.1717。
【0062】
実施例3
1,2,3,4-テトラメチルベンゼン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、2−ブチンを用いた。無色液体、単離収率20% (55 mg)、 GC収率 54%。
【0063】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ 2.19 (s, 6H), 2.26 (s, 6H), 6.90 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ 15.81, 20.68, 126.89, 133.86, 134.86; 高分解能質量分析計 計算値C10H14, 134.1096, 実測値 134.1085。
【0064】
実施例4
5,8-ジ-n-プロピル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、テトラデカ−4,10−ジインを用いた。無色液体、単離収率65% (281 mg)、 GC収率85%。
【0065】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ0.99 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.53-1.65 (m, 4H), 1.72-1.84 (m, 4H), 2.50 (t, J = 7.9 Hz, 4H), 2.63-2.79 (m, 4H), 6.94 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.41, 23.01, 23.27, 26.71, 34.93, 125.79, 134.99, 138.26; 高分解能質量分析計 計算値C16H24, 216.1878, 実測値 216.1894。
【0066】
実施例5
5,8-ジエチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、ドデカ−3,9−ジインを用いた。無色液体、単離収率68% (256 mg)、GC収率 87%。
【0067】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ1.21 (t, J = 7.5 Hz, 6H), 1.78-1.82 (m, 4H), 2.58 (q, J = 7.5 Hz, 4H), 2.68-2.76 (m, 4H), 7.00 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.27, 22.99, 25.46, 26.59, 124.97, 134.87, 139.62; 高分解能質量分析計 計算値C14H20, 188.1565, 実測値 188.1561。
【0068】
実施例6
5,8-ジメチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、デカ−2,8−ジインを用いた。無色液体、単離収率45% (144 mg)、GC収率67%。
【0069】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ1.78-1.82 (m, 4H), 2.19 (s, 6H), 2.57-2.67 (m, 4H), 6.90 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ19.42, 22.94, 27.27, 126.57, 133.96, 135.49; 高分解能質量分析計 計算値C12H16, 160.1252, 実測値 160.1248。
【0070】
実施例7
5-フェニル-8-n-ブチル-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、1−フェニル−ドデカ−1,7−ジインを用いた。淡黄色液体、単離収率51% (269 mg)、GC収率 71%。
【0071】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ0.97 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 1.26-1.86 (m, 8H), 2.60 (t, J = 7.1 Hz, 4H), 2.78 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 6.99 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 7.22-7.40 (m, 5H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4)δ14.08, 22.94, 23.01, 23.10, 26.59, 29.02, 32.34, 32.58, 125.81, 126.47, 126.81, 127.90, 129.37, 134.80, 135.15, 139.80, 140.21, 142.39; 高分解能質量分析計 計算値C20H24, 264.1878, 実測値 264.1879。
【0072】
実施例8
4,7-ジプロピルインダン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、トリデカ−4,9−ジインを用いた。無色液体、単離収率55% (222 mg)、GC収率 76%。
【0073】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ1.00 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.64 (q, J = 7.6 Hz, 4H), 2.04-2.13 (m, 2H), 2.55 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 2.90 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 6.95 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.18, 23.37, 24.56, 31.37, 35.51, 126.20, 135.68, 142.31; 高分解能質量分析計 計算値C15H22, 202.1722, 実測値 202.1720。
【0074】
実施例9
4,7-ジエチルインダン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、ウンデカ−3,8−ジインを用いた。無色液体、単離収率51% (179 mg)、GC収率 72%。
【0075】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ1.21 (t, J = 7.6 Hz, 6H), 2.03-2.13 (m, 2H), 2.59 (q, J = 7.6 Hz, 4H), 2.89 (t, J = 7.4 Hz, 4H), 6.97 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.39, 24.51, 26.23, 31.19, 125.48, 137.16, 142.13; 高分解能質量分析計 計算値C13H18, 174.1409, 実測値 174.1411。
【0076】
実施例10
4,7-ジメチルインダン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、ノナ−2,7−ジインを用いた。無色液体、単離収率37% (107 mg)、GC収率 56%。
【0077】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ2.05-2.15 (m, 2H), 2.25 (s, 6H), 2.87 (t, J = 7.5 Hz, 4H), 6.91 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ18.90, 24.19, 31.63, 127.00, 130.88, 142.58; 高分解能質量分析計 計算値C11H14, 146.1096, 実測値 146.1095。
【0078】
実施例11
1,4-ジプロピル-5,6,8,9-テトラヒドロベンゾシクロヘプテン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4−オクチンの代わりに、ペンタデカ−4,11−ジインを用いた。無色液体、単離収率16% (74 mg)、 GC収率 39%。
【0079】
1H NMR (CDCl3, SiMe4) δ0.96 (t, J = 7.3 Hz, 6H), 1.47-1.64 (m, 8H), 1.76-1.84 (m, 2H), 2.56 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 2.82 (t, J = 5.4 Hz, 4H), 6.88 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, SiMe4) δ14.28, 24.73, 27.61, 29.22, 32.03, 36.68, 127.05, 137.41, 141.76; 高分解能質量分析計 計算値C17H26, 230.2035, 実測値 230.2038。
【0080】
実施例4〜11までの出発物質および生成物、収率を表1に示す。表中、収率はGC収率を示し、括弧内は単離収率を示す。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例12
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン及び2,6-ジフェニルピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (298.72mg, 1.2 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 1.51 ml, 2.4 mmol) を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (227μl, 2.0 mmol) を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。ベンゾニトリル (2.0 mmol, 204 μl)添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0083】
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。85.5mg (単離収率45%、GC収率62%)。
【0084】
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ1.16(t, 7.52Hz, 6H), 1.23 (t, 7.52Hz, 6H), 2.60-2.72 (m, 8H), 7.00(s, 2H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ15.56, 15.62, 21.73, 25.66, 126.15, 139.57, 139.63 高分解能質量分析計 計算値C14H22,190.1721 実測値.190.1690。
【0085】
2.6-ジフェニルピリジン
ヘキサンとCHCl3 (40%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、白色固体の表題化合物を得た。103.2 mg (単離収率45%、GC収率46%)。
【0086】
実施例13
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン及び 2.6-ジフェニルピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (298.72mg, 1.2 mmol)のTHF (2.5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 1.51 ml, 2.4 mmol) を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (227μl, 2.0 mmol) を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。ベンゾニトリル (2.0 mmol, 204 μl)添加後、混合物を、50℃にて12時間保持した。その後、反応をガスクロマトグラフィーによって検証した。
【0087】
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン (GC収率60%)。
【0088】
2,6-ジフェニルピリジン (GC収率52%)。
【0089】
実施例14
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン及び2,6-ジ(4'-メトキシフェニル)ピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (597.44mg, 2.4 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 3.02 ml, 4.8 mmol) を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (454μl, 4.0 mmol)を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。アニソニトリル (4.0 mmol, 543.47mg)添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0090】
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。184.8mg (単離収率49%、GC収率65%)。
【0091】
2,6-ジ(4'-メトキシフェニル)ピリジン
ヘキサンと酢酸エチル (20%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、黄色固体の表題化合物を得た。38.95 mg (単離収率7%、GC収率9%)。
【0092】
実施例15
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン及び2,6-ジ(4'-フルオロフェニル)ピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (597.44mg, 2.4 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 3.02 ml, 4.8 mmol)を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (454μl, 4.0 mmol)を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。p-フルオロベンゾニトリル (4.0 mmol, 484.44 mg)添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0093】
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。193.8mg (単離収率51%、GC収率66%)。
【0094】
2,6-ジ(4'-フルオロフェニル)ピリジン
ヘキサンと酢酸エチル(10%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、茶色固体の表題化合物を得た。231.3 mg (単離収率43%、GC収率47%)。
【0095】
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ7.13-7.23(m, 4H), 7.60(d, J=7.82 Hz), 7.74-7.78 (m, 1H)8.08-8.12 (m,4H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ115.49, 115.70, 118.19, 128.69, 128.78, 135.45, 135.48, 137.66, 155.80, 162.35, 164.82. 高分解能質量分析計 計算値C17H11F2N 267.0860, 実測値267.0836。
【0096】
実施例16
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン 及び 2,6-ジ(4'-メチルフェニル)ピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (597.44mg, 2.4 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 3.02 ml, 4.8 mmol)を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (454μl, 4.0 mmol)を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。p-トルニトリル (4.0 mmol, 468.6 mg)を添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0097】
1,2,3,4-テトラエチルベンゼン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。192.1mg (単離収率50%、GC収率68%)。
【0098】
2,6-ジ(4'-メチルフェニル)ピリジン
ヘキサンとCHCl3 (50%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、白色固体の表題化合物を得た。231.3 mg (単離収率45%、GC収率55%)。
【0099】
参考例1
ビス(ペンタデューテロシクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド
ヘキサデューテロシクロペンタジエンを、Lambert, J. B.; Finzel, R. B. J. Am. Chem. Soc. 1983, 105, 1954.に従って合成した。ヘキサデューテロシクロペンタジエン(2.8ml, 35.0 mmol)のエーテル溶液 (10ml)を0℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム(2.46 Mヘキサン溶液、14.2 ml, 35.0 mmol)を滴下した。このd10-CpLi溶液を、TiCl4 (1.86 ml, 17 mmol)のベンゼン溶液 (10 ml)に0℃にて徐々に加えた。反応混合物を50℃にて3時間攪拌した。CHCl3にて抽出した後、錯体をCHCl3によって再結晶させ、赤色結晶の表題化合物を得た(3075.58 mg、単離収率68%、d=97%)。
【0100】
実施例17
1,2-ジデューテロ-3,4,5,6-テトラエチルベンゼン及び3,4,5-トリデューテロ-2,6-ジフェニルピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。d10-Cp2TiCl2 (310.82mg, 1.2 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 1.51 ml, 2.4 mmol) を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3-ヘキシン (227μl, 2.0 mmol) を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。ベンゾニトリル (2.0 mmol, 204μl) 添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0101】
1,2-ジデューテロ-3,4,5,6-テトラエチルベンゼン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。110.9mg (d=97%、単離収率58%、GC収率59%)。
【0102】
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ1.16(t, J=7.57Hz, 6H), 1.23 (t, J=7.54Hz, 6H), 2.61-2.71 (m, 8H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ15.56, 15.59, 21.70, 25.59, 125.68 (t, J=23.7), 139.46, 139.61. 高分解能質量分析計 計算値C14H20D2 192.1845, 実測値192.1849。
【0103】
3,4,5-トリデューテロ-2,6-ジフェニルピリジン
ヘキサンとCHCl3 (50%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、白色固体の表題化合物を得た。112.2 mg (d=97%、単離収率48%、GC収率49%)。
【0104】
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ7.40-7.50(m, 3H), 8.13-8.16 (m,2H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ118.16(t, J=24.8), 126.93, 128.65, 128.93, 136.92 (t, J=24.7), 139.41,156.70 高分解能質量分析計 計算値C17H10D3N 234.1233, 実測値234.1229。
【0105】
実施例18
1,2,3,4-テトラヒドロ-5,8-ジエチルナフタレン及び2,6-ジフェニルピリジン
反応はアルゴン雰囲気下で行った。Cp2TiCl2 (597.55 mg, 2.4 mmol)のTHF (5ml)溶液を、−78℃まで冷却した。この溶液に、n-ブチルリチウム (1.59 Mのヘキサン溶液, 3.02 ml, 4.8 mmol)を滴下した。1時間、−78℃にて攪拌し、3,9-ドデカジイン(391μl, 2.0 mmol)を加えた。3時間、−10℃にて攪拌したところ、反応混合物を色が暗緑色になった。ベンゾニトリル (2.0mmol, 204μl)添加後、この混合物を1時間還流した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加して反応を終了させ、酢酸エチルで抽出した。抽出物を水及び食塩水で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下、溶媒を留去した後、得られた残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、表題化合物を得た。
【0106】
1,2,3,4-テトラヒドロ-5,8-ジエチルナフタレン
ヘキサンのみを用いたカラムクロマトグラフィーによって、無色液体の表題化合物を得た。178.7mg (単離収率47%、GC収率50%)。
【0107】
1H NMR (CDCl3, Me4Si) δ1.20(t, J=7.57Hz, 6H), 1.77-1.81 (m, 4H), 2.57 (q, J=7.54, 4H), 2.69-2.72 (m, 4H), 6.98 (s, 2H); 13C NMR (CDCl3, Me4Si) δ14.29, 23.03, 25.49, 26.62, 124.99, 134.87, 139.64. 元素分析. 計算値C14H20: C, 89.29; H, 10.71. 実測値C, 89.13; H, 10.77。
【0108】
2,6-ジフェニルピリジン
ヘキサンと酢酸エチル(10%)の混合物を用いたカラムクロマトグラフィーによって、白色固体の表題化合物を得た。196.4 mg (単離収率43%、GC収率56%)。
【0109】
実施例12、13、15、16及び18の出発物質および生成物、反応条件、収率を表2に示す。表中、収率はGC収率を示し、括弧内は単離収率を示す。また、項目「ベンゼン」の「2a」は、「1,2,3,4-テトラエチルベンゼン」を指し、項目「ピリジン」の「3a」は、「2,6-ジフェニルピリジン」を指す。
【0110】
【表2】
【0111】
【発明の効果】
本発明の方法により、ベンゼン誘導体およびピリジン誘導体を簡便に、かつ選択的に得ることができる。
Claims (11)
- 下記式(1a)で示されるベンゼン誘導体の製造方法であって、
下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
下記式(3)で示されるニトリルと
- 前記反応は、周期表第4から15族の金属を含む金属化合物存在下で行われる、請求項1に記載のベンゼン誘導体の製造方法。
- 前記金属化合物が、リチウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、チタンイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、クロムイオンを含む金属ハロゲン化物である、請求項2に記載のベンゼン誘導体の製造方法。
- Mが、チタン、ハフニウム又はジルコニウムである、請求項1〜3のいずれかに記載のベンゼン誘導体の製造方法。
- Mが、チタンである、請求項1〜4のいずれかに記載のベンゼン誘導体の製造方法。
- 前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項1〜5のいずれかに記載のベンゼン誘導体の製造方法。
- 下記式(1b)で示されるピリジン誘導体の製造方法であって、
下記式(2)で示されるメタラシクロペンタジエンと、
下記式(3)で示されるニトリルと
- 前記反応は、周期表第4から15族の金属を含む金属化合物存在下で行われる、請求項7に記載のピリジン誘導体の製造方法。
- 前記金属化合物が、リチウムイオン、マグネシウムイオン、銅イオン、チタンイオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン、クロムイオンを含む金属ハロゲン化物である、請求項8に記載のピリジン誘導体の製造方法。
- Mが、チタンである、請求項7〜9のいずれかに記載のピリジン誘導体の製造方法。
- 前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であって、置換されていてもよいシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である、請求項7〜10のいずれかに記載のピリジン誘導体の製造方法。
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