JP4255603B2 - シクロペンテノン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロペンテノン誘導体の製造方法に関し、特に、開放系で合成が可能であるシクロペンテノン誘導体を製造することに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
シクロペンテノン誘導体は、様々な重合反応で用いられるリガンドである。そして、これらの用途では、シクロペンテノン環に様々な置換基を導入することが求められている。
【0003】
たとえば、シクロペンテノンは、NaBH4等の還元剤で還元することにより、容易にシクロペンテニルアルコールに変換することができ、シクロペンテニルアルコールから脱水反応により、シクロペンタジエニル環を合成することができる。そして、シクロペンタジエニル環は、メタロセン等、シクロペンタジエニル基を有する有機金属化合物の原料となる。シクロペンタジエニル基を有する有機金属化合物、特に、周期表第4族の有機金属化合物は、ポリオレフィン等のポリマー合成の触媒となり、シクロペンタジエニル基に導入された置換基がポリマー合成の際の反応性、ひいては得られるポリマーの物性を左右する。従って、シクロペンタジエニル環に様々な置換基を導入することが求められる。
【0004】
従来、シクロペンテノンに置換基を導入する際には、目標化合物ごとに最適な合成スキームを検討することが求められていた。しかし、このような伝統的な有機合成の手法では、シクロペンテノンに導入する置換基が多くなればなるほど、合成経路が長くなり、収率が低下した。
【0005】
一方で、多置換シクロペンテノンを選択的に、一段階の反応で得る方法として、一酸化炭素を使用する方法が知られている。しかし、この方法によると、有害なガスを使用するため、原料の扱いが煩雑であり、かつ、密閉系でガスを原料として使用できる反応装置を使用する必要があった。
【0006】
そこで、多置換シクロペンテノンを、選択的、かつ、簡易に、しかもガスを使用する必要のない方法で得ることが所望された。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明では、下記式(I)で示されるシクロペンテノン誘導体の製造方法であって、
【0008】
【化4】
【0009】
(式中、R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;又はシリル基であり、
ただし、R1及びR2は互いに、架橋して、C4〜C10飽和又は不飽和環を形成してもよく、前記環は、酸素原子又は式−N(R4)−で示される基(式中、R4は、水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよく、かつ、置換基を有していてもよい。)
下記式(II)で示されるチタン化合物と、
【0010】
【化5】
【0011】
(式中、Mは、チタンを示し、
L1及びL2は、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示し、ただし、L1及びL2は、架橋されていてもよく、
Z1及びZ2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C20炭化水素基である。)
下記式(III)に示されるアルキンと、
【0012】
【化6】
【0013】
(式中、R1及びR2は、上記意味を有する。)
式Y1−C(=O)OR3で示されるエステル(IV)と
(式中、R3は、水素原子又はC1〜C20炭化水素基であり、
Y1は脱離基である。)
を反応させることを特徴とする、シクロペンテノン誘導体の製造方法が提供される。
【0014】
本発明において、前記R1及びR2が、同一の基であることが好ましい。
【0015】
また、前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子であることが好ましい。また、前記非局在化環状η5−配位系配位子が、置換されていてもよい、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基であることが更に好ましい。
【0016】
また、前記Z1及びZ2が、エチル基であることが好ましい。
【0017】
本発明において、上記式(II)で示される前記チタン化合物と、上記式(III)に示される前記アルキンとを混合し、次いで、この混合物に式Y1−C(=O)OR3で示される前記エステル(IV)を添加する方法であってもよい。
【0018】
また、本発明において、上記式(II)で示される前記チタン化合物と、上記式(III)に示される前記アルキンと、式Y1−C(=O)OR3で示される前記エステル(IV)との混合物に、プロトン酸を添加する方法であってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明では、下記式(II)で示されるチタン化合物と、下記式(III)に示されるアルキンと、下記式(IV)で示されるエステルとを反応させることを特徴とする、下記式(I)で示されるシクロペンテノン誘導体の製造方法が提供される。
【0020】
【化7】
【0021】
(式中、R1、R2、R3、M、Y1、L1、L2、Z1及びZ2は、上記意味を有する。)
R1及びR2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、水素原子;置換基を有していてもよいC1〜C20炭化水素基;置換基を有していてもよいC1〜C20アルコキシ基;置換基を有していてもよいC6〜C20アリールオキシ基;又はシリル基である。
【0022】
本明細書では、C1〜C20炭化水素基は、飽和若しくは不飽和の非環式であってもよいし、飽和若しくは不飽和の環式であってもよい。C1〜C20炭化水素基が非環式の場合には、線状でもよいし、枝分かれでもよい。C1〜C20炭化水素基には、C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C3〜C20アリル基、C4〜C20アルキルジエニル基、C4〜C20ポリエニル基、C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、C4〜C20シクロアルケニル基、(C3〜C10シクロアルキル)C1〜C10アルキル基などが含まれる。
【0023】
C1〜C20アルキル基、C2〜C20アルケニル基、C2〜C20アルキニル基、C3〜C20アリル基、C4〜C20アルキルジエニル基、及び、C4〜C20ポリエニル基は、それぞれ、C1〜C10アルキル基、C2〜C10アルケニル基、C2〜C10アルキニル基、C3〜C10アリル基、C4〜C10アルキルジエニル基、及び、C4〜C10ポリエニル基であることが好ましい。
【0024】
C6〜C18アリール基、C6〜C20アルキルアリール基、C6〜C20アリールアルキル基、C4〜C20シクロアルキル基、及び、C4〜C20シクロアルケニル基は、それぞれ、C6〜C10アリール基、C6〜C12アルキルアリール基、C6〜C12アリールアルキル基、C4〜C10シクロアルキル基、及び、C4〜C10シクロアルケニル基が好ましい。
【0025】
本発明の実施において有用なアルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、n−ブチル、t−ブチル、ドデカニル、トリフルオロメチル、ペルフルオロ−n−ブチル、2,2,2−トリフルオロエチル、ベンジル、2−フェノキシエチル等がある。
【0026】
本発明の実施において有用なアリール基の例としては、制限するわけではないが、フェニル、2−トリル、3−トリル、4−トリル、ナフチル、ビフェニル、4−フェノキシフェニル、4−フルオロフェニル、3−カルボメトキシフェニル、4−カルボメトキシフェニル等がある。
【0027】
本発明の実施において有用なアルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、t−ブトキシ等がある。
【0028】
本発明の実施において有用なアリールオキシ基の例としては、制限するわけではないが、フェノキシ、ナフトキシ、フェニルフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−トリルオキシ、3−トリルオキシ、4−トリルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ、4−フェノキシフェニルオキシ、4−フルオロフェニルオキシ、3−カルボメトキシフェニルオキシ、4−カルボメトキシフェニルオキシ等がある。
【0029】
C1〜C20炭化水素基、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基には、置換基が導入されていてもよく、この置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0030】
本発明の実施において有用なアミノ基の例としては、制限するわけではないが、アミノ、ジメチルアミノ、メチルアミノ、メチルフェニルアミノ、フェニルアミノ等がある。
【0031】
本発明の実施において有用なシリル基としては、制限されるわけではないが、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリメトキシシリル、トリエトキシシリル、ジフェニルメチルシリル、トリフェニルシリル、トリフェノキシシリル、ジメチルメトキシシリル、ジメチルフェノキシシリル、メチルメトキシフェニル等がある。
【0032】
ただし、R1及びR2は互いに、架橋して、C4〜C10飽和又は不飽和環を形成してもよい。これらの置換基が形成する環は、4員環-10員環であることが好ましく、4員環-6員環であることが更に好ましい。この環は、ベンゼン環等の芳香族環であってもよいし、脂肪族環であってもよい。
【0033】
前記飽和または不飽和環は、酸素原子又は式−N(R4)−で示される基(式中、R4は、水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。)で中断されていてもよい。即ち、前記飽和または不飽和環はヘテロ環であってもよい。
【0034】
R4は、水素原子またはC1-C20炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはC1-C14炭化水素基であることが更に好ましく、R4は、水素原子、C1-C6アルキル基、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基、ナフチルメチル基であることが更になお好ましい。
【0035】
この飽和又は不飽和環は、置換基を有していてもよく、C1-C40炭化水素基、C1-C40アルコキシ基、C6-C40アリールオキシ基、アミン基、水酸基又はシリル基などの置換基が導入されていてもよい。
【0036】
本発明において、R1及びR2が、同一の基であることが好ましい。このような場合には、シクロペンテノン誘導体の合成が容易になり、収率が向上するからである。
【0037】
本発明では、下記式(III)に示されるアルキンが用いられる。
【0038】
【化8】
【0039】
(式中、R1及びR2は、上記意味を有する。)
また、本発明では、式Y1−C(=O)OR3で示されるエステル(IV)が用いられる。
【0040】
R3は、水素原子又はC1〜C20炭化水素基である。
【0041】
Y1は脱離基である。脱離基としては、例えば、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン原子、p−トルエンスルホニル基、トシラート基(―O−S(=O)2−C6H4−CH3)、トリフルオロメタンスルホン酸エステル(トリフラート)、C1〜C20アルコキシ基(好ましくは、C1〜C10アルコキシ基であり、更に好ましくは、C1〜C6アルコキシ基)、C6〜C20アリールオキシ基、トリ低級アルキルシリルオキシ基等が挙げられる。脱離基としては、Cl、Br、トシラート基、C1〜C20アルコキシ基、及びトリ低級アルキルシリルオキシ基が好ましい。
【0042】
本発明では、下記式(II)で示されるチタン化合物が用いられる。
【0043】
【化9】
【0044】
Mは、チタンを示す。
【0045】
本発明者らは、Mとして、ジルコニウム等を使用した有機金属化合物を使用した場合に、この有機金属化合物の存在下、上記式(III)と、上記式(IV)とを反応させることでエステル化有機金属化合物が合成されることを知見し、この知見に基づいて、特許出願をした(特願2000−060706)。
【0046】
しかし、上記有機金属化合物として、Mとしてチタンを用いた化合物を使用した場合、エステル化有機金属化合物ではなく、上記式(I)で示されるシクロペンテノンを合成できることを知見した。この反応経路の違いは以下の通りである。
【0047】
即ち、式(II)で表される化合物と式(III)で表されるアルキンとを反応させると、Mがジルコニウムである場合も、Mがチタンである場合も、アルキン類とエチレンとがカップリングして、メタラシクロペンテンを収率良く生成する。すなわち、Mがジルコニウムの場合にはジルコナシクロペンテンが生成し、Mがチタンの場合にはチタナシクロペンテンが生成する。このジルコナシクロペンテンを式(IV)で表されるエステルと反応させると、ジルコナシクロペンテンのエチレン部分が脱離し、アルキンがエステルと直接反応した化合物、すなわちアルキンのエステル化有機金属化合物が生成する。これに対して、Mがチタンである場合には、本発明の反応条件の下ではエチレンが脱離せず、チタナシクロペンテンのチタンに直接結合しているsp3炭素がエステルのカルボニル炭素を攻撃し、新しい炭素−炭素結合を生成する。さらにもう一つのチタンに結合しているsp2炭素が、同じカルボニル炭素を続いて攻撃し、OR基の脱離がおこり、シクロペンテノンの骨格が形成される。
【0048】
L1及びL2は、互いに独立し、同一又は異なって、アニオン性配位子を示す。前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子、C1〜C20アルコキシ基、C6〜C20アリールオキシ基又はジアルキルアミド基であることが好ましい。
【0049】
L1及びL2は、非局在化環状η5−配位系配位子であることが好ましい。非局在化環状η5−配位系配位子の例は、無置換のシクロペンタジエニル基、及び置換シクロペンタジエニル基である。この置換シクロペンタジエニル基は例えば、メチルシクロペンタジエニル、エチルシクロペンタジエニル、イソプロピルシクロペンタジエニル、n−ブチルシクロペンタジエニル、t−ブチルシクロペンタジエニル、ジメチルシクロペンタジエニル、ジエチルシクロペンタジエニル、ジイソプロピルシクロペンタジエニル、ジ−t−ブチルシクロペンタジエニル、テトラメチルシクロペンタジエニル、インデニル基、2−メチルインデニル基、2−メチル−4−フェニルインデニル基、テトラヒドロインデニル基、ベンゾインデニル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、テトラヒドロフルオレニル基、及びオクタヒドロフルオレニル基である。
【0050】
非局在化環状η5−配位系配位子は、非局在化環状π系の1個以上の原子がヘテロ原子に置換されていてもよい。水素の他に、周期表第14族の元素及び/又は周期表第15、16及び17族の元素のような1個以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0051】
非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、中心金属と、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋配位子により架橋されていてもよい。架橋配位子としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C4H9)C(CH3)2、C(CH3)2、(CH3)2Si、(CH3)2Ge、(CH3)2Sn、(C6H5)2Si、(C6H5)(CH3)Si、(C6H5)2Ge、(C6H5)2Sn、(CH2)4Si、CH2Si(CH3)2、o−C6H4又は2、2’−(C6H4)2が挙げられる。
【0052】
2以上の非局在化環状η5−配位系配位子、例えば、シクロペンタジエニル基は、互いに、環状であってもよい、一つの又は複数の架橋基により架橋されていてもよい。架橋基としては、例えば、CH2、CH2CH2、CH(CH3)CH2、CH(C4H9)C(CH3)2、C(CH3)2、(CH3)2Si、(CH3)2Ge、(CH3)2Sn、(C6H5)2Si、(C6H5)(CH3)Si、(C6H5)2Ge、(C6H5)2Sn、(CH2)4Si、CH2Si(CH3)2、o−C6H4又は2、2’−(C6H4)2が挙げられる。
【0053】
上記式(I)で示されるチタン化合物は、二つ以上のメタロセン部分 (moiety)を有する化合物も含む。このような化合物は多核メタロセンとして知られている。前記多核メタロセンは、いかなる置換様式及びいかなる架橋形態を有していてもよい。前記多核メタロセンの独立したメタロセン部分は、各々が同一種でも、異種でもよい。前記多核メタロセンの例は、例えばEP−A−632063、特開平4−80214号、特開平4−85310、EP−A−654476に記載されている。
【0054】
Z1及びZ2は、それぞれ、互いに独立し、同一または異なって、C1〜C20炭化水素基であり、好ましくは、C1〜C10炭化水素基であり、更に好ましくは、C1〜C5炭化水素基であり、エチル基であることが更になお好ましい。
【0055】
本発明にかかるシクロペンテノン誘導体の製造方法は、一酸化炭素などの有毒ガスを使用しないため、ガスを原料として使用するための特別な密閉系の装置を使用せずにシクロペンテノン誘導体を製造することが可能となる。
【0056】
典型的には、上記式(II)で示されるチタン化合物の溶液に、上記式(III)で示されるアルキン、上記式(IV)で示されるエステルを添加する。添加する順序には制限がないが、上記式(III)で示されるアルキンを添加して混合し、次いで、この混合物に上記式(IV)で示されるエステルを添加することが好ましい。添加順序は、その逆であってもよい。
【0057】
エチレンの存在下、アルキルリチウム等の強塩基を作用させることにより、上記式(II)で示されるチタン化合物と、上記式(III)で示されるアルキンとが反応し、メタラシクロペンテンを生成することができる。エチレンは、窒素ガス等の雰囲気に添加してもよいし、溶液中にバブリングさせてもよい。この際、上記式(II)で示されるチタン化合物のZ1及びZ2がエチル基の場合には、エチレンを共存させなくても、メタラシクロペンテンが生成する。
【0058】
このようにして生成したメタラシクロペンテンに、上記式(IV)で示されるエステルが作用することにより、上記式(I)で示されるシクロペンテノン誘導体が合成されると思われる。
【0059】
また、本発明にかかる製造方法において、上記式(II)で示されるチタン化合物と、上記式(III)に示されるアルキンと、上記(IV)で示されるエステルとの混合物に、プロトン酸を添加してもよい。プロトン酸の添加は、副生成物として系中に生成したチタンを含有する化合物を除く場合に有効である。プロトン酸を添加する場合の反応スキームを下記に示す。
【0060】
【化10】
【0061】
典型的には、上記式(II)で示されるチタン化合物の溶液に、上記式(III)で示されるアルキン、上記式(IV)で示されるエステルを添加し、次いでプロトン酸を添加する。添加の順序には制限はないが、上記式(III)で示されるアルキンを添加して混合し、次いで、この混合物に上記式(IV)で示されるエステルを添加し、次いでプロトン酸を添加することが好ましい。
【0062】
プロトン酸としては、水、アルコール、水素酸(塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等)、オキソ酸(硫酸、ホウ酸、過塩素酸、酢酸等のカルボン酸等)等を挙げることができる。
【0063】
上記式(III)で示されるアルキンの量、及び、上記式(IV)で示されるエステルの量は、それぞれ、上記式(II)で示されるチタン化合物1モルに対して、0.1モル〜10モルであることが好ましく、0.8モル〜5モルであることが更に好ましく、0.9モル〜3モルであることが更に好ましく、0.9モル〜2モルであることが更になお好ましい。
【0064】
プロトン酸の量は、上記式(II)で示されるチタン化合物1モルに対して、0.1モル〜10モルであることが好ましく、0.8モル〜5モルであることが更に好ましく、0.9モル〜3モルであることが更に好ましく、0.9モル〜2モルであることが更になお好ましい。
【0065】
反応は、好ましくは−100℃乃至300℃の温度範囲で行われ、特に好ましくは−80℃乃至100℃の温度範囲、更に好ましくはー50℃乃至50℃の温度範囲で行われる。圧力は、例えば、0.1バール乃至2500バールの範囲内で、好ましくは0.5バール乃至10バールの範囲内である。
【0066】
溶媒としては、上記式(I)で示されるシクロペンテノン誘導体を溶解することができる溶媒が好ましい。溶媒は、脂肪族又は芳香族の有機溶媒が用いられる。エーテル系溶媒、例えばテトラヒドロフラン又はジエチルエーテル;塩化メチレンのようなハロゲン化炭化水素;o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素;N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素が用いられる。
【0067】
本発明において、式(II)で示されるチタン化合物としては、例えば、下記のメタロセンを用いることができる。
【0068】
ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタン;(2−メチル−7−ナフチルインデニル)(2,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジエチルチタン;(インデニル)(2−ブテン−4−イルシクロペンタジエニル)ジエチルチタン;ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジエチルチタン;
ビス(シクロペンタジエニル)ジブチルチタン;(2−メチル−7−ナフチルインデニル)(2,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジブチルチタン;(インデニル)(2−ブテン−4−イルシクロペンタジエニル)ジブチルチタン;ジメチルシランジイルビス(インデニル)ジブチルチタン;
ビス(シクロペンタジエニル)エチルブチルチタン;(2−メチル−7−ナフチルインデニル)(2,6−ジ−tert−ブチルフルオレニル)エチルブチルチタン;(インデニル)(2−ブテン−4−イルシクロペンタジエニル)エチルブチルチタン;ジメチルシランジイルビス(インデニル)エチルブチルチタン。
【0069】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、下記の実施例に制限されるものではない。
【0070】
すべての反応は、標準的なシュレンク技術を用いて、乾燥したN2の正圧力下で行われた。窒素雰囲気下で、溶媒として用いたTHF、エーテル、ヘキサン、ベンゼンは窒素気流下、ナトリウム金属、ベンゾフェノンで蒸留して無水とした。ビスシクロペンタジエニルチタンは、日亜化学工業から購入したものを用い、その他の試薬は関東化学、東京化成工業、Aldrichから購入した。
【0071】
1H-NMRおよび13C-NMRスペクトルは、Bruker ARX-400またはJEOL JNM-LA300を用いて測定した。この時、1H-NMR:テトラメチルシラン; 13C-NMR : 重水素化クロロホルムを内部標準とした。ガスクロマトグラフィーはSHIMADZU CBP1-M25-025 fused silica capillary columnを備えたSHIMADZU GC-14A gas chromatographで測定し、記録はSHIMADZU CR6A-Chromatopac integratorを用いた。GCにより収率を求めたときはメシチレン、n-ドデカンを内部標準として用いた。カラムクロマトグラフィーのカラム充填剤として、関東化学シリカゲル60N(球状、中性)40-100マイクロメートル使用した。
【0072】
実施例1
2,3−ジプロピルシクロペンテン−1−オン
ビス(η5−シクロペンタジエニル)ジクロロチタン (1.25mmol, 311.2mg) 及び2当量のエチルグリニャール(EtMgBr) (2.5mmol, 2.6mL, 0.95Mテトラヒドロフラン溶液) のテトラヒドロフラン溶液から-78℃で得られたビス(η5−シクロペンタジエニル)ジエチルチタンの溶液に、4-オクチン(1mmol, 77.3(L)を-78℃にて加えた。反応混合物を-30℃まで昇温させ、3時間攪拌した。これに、クロロギ酸エチル( 1.2mmol, 114.2(L) を-30℃にて加えた。次いで、還流するまで昇温し、6時間還流した。表題化合物が、43%のGC収率、36%の単離収率で得られた。
【0073】
1H-NMR(CDCl3, Me4Si) δ 0.91(AT, J=8Hz, 3H),0.98(t,J=8Hz,3H),1.36-1.44(m,2H),1.52-1.63(m,2H),2.12-2.17(m,2H),2.31-2.43(m,4H),2.45-2.53(m,2H),13C-NMR(CDCl3,Me4S) δ 13.57, 13.57, 20.29, 21.31, 24.55, 28.36, 32.60, 33.64, 33.64, 139.77, 173.24, 209.07, IR(neat):2961, 2934, 2872, 1699, 1640 cm-1. HRMS 計算値 C11H18O 166.1358, 実験値 166.1359。
【0074】
実施例2
2,3−ジフェニルシクロベンテン−1−オン
実施例1と同様の手順で行った。ただし、4―オクチンの代わりに、1,2―ジフェニルアセチレンを用いた。表題化合物が、31%のGC収率、28%の単離収率で得られた。
【0075】
1H-NMR(CDCl3,Me4Si) δ 2.58-2.61 (m,2H), 7.16-7.31(m,10H). 13C-NMR(CDCl3,Me4Si) δ 29.42, 34.68, 127.67, 127.96, 128.32, 129.36, 129.70, 131.31, 135.60, 139.64, 167.94, 207.22. IR(neat):3083, 3056, 3032, 2972, 2924, 1694, 1352, 1159, 792,698 cm-1. HRMS 計算値 C17H14O 234.1045, 実験値 234.1041。
【0076】
実施例1及び2の反応スキームは、以下の通りである。
【0077】
【化11】
【0078】
【発明の効果】
一酸化炭素を用いることなく、開放系で、多置換シクロペンテノンを、選択的、かつ、簡易に製造することができる。
Claims (6)
- 下記式(I)で示されるシクロペンテノン誘導体の製造方法であって、
下記式(II)で示されるチタン化合物と、
下記式(III)に示されるアルキンと、
式Y1−C(=O)OR3で示されるエステル(IV)と
(式中、R3は、水素原子又はC1〜C20炭化水素基であり、Y1は脱離基である。)
を反応させることを特徴とする、シクロペンテノン誘導体の製造方法。 - 前記R1及びR2が、同一の基である、請求項1に記載のシクロペンテノン誘導体の製造方法。
- 前記アニオン性配位子が、非局在化環状η5−配位系配位子である、請求項1又は2に記載のシクロペンテノン誘導体の製造方法。
- 前記非局在化環状η5−配位系配位子が、置換されていてもよい、シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はアズレニル基である請求項3に記載のシクロペンテノン誘導体の製造方法。
- 上記式(II)で示される前記チタン化合物と、上記式(III)に示される前記アルキンとを混合し、次いで、この混合物に式Y1−C(=O)OR3で示される前記エステル(IV)を添加する請求項1〜4の何れかに記載のシクロペンテノン誘導体の製造方法。
- 上記式(II)で示される前記チタン化合物と、上記式(III)に示される前記アルキンと、式Y1−C(=O)OR3で示される前記エステル(IV)との混合物に、プロトン酸を添加する請求項1〜5の何れかに記載のシクロペンテノン誘導体の製造方法。
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