JP4337427B2 - 空気調和装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の吹出口を有する空気調和装置に関し、特に、空調対象空間の輻射温度を検知して吹出気流を制御する空気調和装置の制御技術に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば店舗、飲食店、あるいは事務所等の比較的広い室内空間(空調対象空間)をもつ建屋において該室内空間の空調を行う場合、空気調和装置の室内機は、一般に、複数の吹出口を持った天井埋込型あるいは天井吊下型のものが用いられている。
【0003】
ところで、このような広い室内空間に対して天井埋込型あるいは天井吊下型の室内機によって空調を行う場合、従来は室内空間内の熱負荷分布や人分布等の空調要求度を考慮することなく、室内機の各吹出口からそれぞれ均等に気流を吹き出すようにしていた。このため、例えば室内空間に温度ムラが生じ、ドラフト感を伴う快適性に劣る領域が発生したり、人の存在しない領域を人の存在する領域と同じように空調して省エネ性が損なわれるような問題があった。
【0004】
このような従来の問題点を改善するものとして、例えば室内空間の熱負荷分布や人分布等を室内空間の輻射温度から検出し、この検出情報に基づいて室内機の吹出口からの吹出気流の特性(例えば吹出風量、吹出温度、吹出速度あるいは吹出方向等)を適宜制御することにより、空調を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−203244号公報
【0006】
【特許文献2】
特開平5−306829号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記各特許文献に記載された空気調和装置は、輻射温度などを検知した後にPMV(Predicted Mean Vote)値を算出し、このPMV値が目標値になるように風向や風量を制御しているので、制御が複雑であり、装置を実際に製品化した場合において、室内空間の温度分布に応じた最適な気流を簡易な制御で得られるようにすることは困難であった。このため、上記各文献の装置では、現実的には常に十分な快適性を得ることは困難であった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、空調対象空間の輻射温度を検知して吹出気流を制御する空気調和装置において、室内空間の温度分布に応じた最適な気流を簡易な制御で得られるようにし、空調対象空間の快適性向上を図ることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、空調対象空間(W)の複数の吹出エリア(A)〜(D)の空調負荷と温度分布に応じて気流制御モードを変更するだけで、最適な気流が得られるようにしたものである。
【0010】
具体的に、請求項1〜6に記載の発明は、空調対象空間(W)内の輻射温度を検知する輻射温度検知手段(51)と、複数の吹出口(4)からの吹出気流の特性(風量や風向など)を変更する気流変更手段(10,52)と、上記輻射温度検知手段(51)により検知される検知情報と空調運転の運転情報とに基づいて上記気流変更手段(10,52)を制御する制御手段(53)とを備えた空気調和装置を前提としている。
【0011】
そして、請求項1に記載の発明は、気流変更手段(10,52)が、空調対象空間(W)の温度分布を均一化する温度均一化モードと、空調対象空間(W)の一部を集中的に空調するスポット空調モードとを切り換え可能に構成され、制御手段(53)は、吸込温度負荷が所定レベルよりも高いか、または各吹出口(4)に対応する複数の吹出エリア(A)〜(D)毎に人の存在する割合が所定値以上であることを検知すると、気流変更手段(10,52)を温度均一化モードに切り換える一方、吸込温度負荷が所定レベル以下で且つ人の存在する割合が所定値以下であることを検知すると、気流変更手段(10,52)をスポット空調モードに切り換えることを特徴としている。
【0012】
この請求項1の発明では、吸込温度負荷が所定レベルよりも高いか、または吹出エリア(A)〜(D)毎に人の存在する割合が所定値以上であると、気流変更手段(10,52)を温度均一化モードに切り換える操作が行われる。例えば冷房運転時に吸込空気温度が所定温度よりも高い場合か、複数のエリア(A)〜(D)のそれぞれに人が存在している場合などであり、このような場合は空調対象空間(W)に対して全体的に空調をする必要があるため、温度均一化モードにより空調対象空間(W)の温度分布が均一化される。一方、吸込温度負荷が所定レベル以下で且つ人の存在する割合が所定値以下であると、気流変更手段(10,52)をスポット空調モードに切り換える操作が行われる。例えば冷房運転時に吸込空気温度が所定温度以下になっていて、しかも人の存在するエリアと存在しないエリアとがあるような場合であり、このような場合は全体的に空調を行う必要がないため、スポット空調モードで人の存在するエリアを集中的に空調する。この場合でも、各エリア(A)〜(D)の温度分布に応じた最適な気流を簡単に得ることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気調和装置において、制御手段(53)が、冷房運転のスポット空調モード時に、人の存在する吹出エリアの風量比率を、人の存在しない吹出エリアの風量比率よりも高くするように気流変更手段(10,52)を制御することを特徴としている。
【0014】
この請求項2の発明では、冷房運転のスポット空調モード時には、人の存在する吹出エリアの風量比率が高くなり、人の存在しない吹出エリアの風量比率が低くなる。したがって、人の存在するエリアが集中的に空調されることになり、各エリア(A)〜(D)の温度分布に応じた最適な気流制御が可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の空気調和装置において、制御手段(53)が、暖房運転のスポット空調モード時に、人の存在しない吹出エリアの風量比率を人の存在する吹出エリアの風量比率よりも高くして気流を下方へ向けるとともに、人の存在する吹出エリアでは人を避けた方向に気流を向けるように気流変更手段(10,52)を制御することを特徴としている。
【0016】
この請求項3の発明では、暖房運転のスポット空調モード時には、人の存在しない吹出エリアの風量比率が高くなり、人の存在する吹出エリアの風量比率が低くなる。また、人の存在しない吹出エリアでは気流が下方へ向けられ、人の存在する吹出エリアでは人を避けた方向へ気流が向けられる。したがって、このときには、人の方向へは気流を吹き出さず、人の存在しない方向に吹出空気が流れる制御となり、この気流により空気が撹拌されることで空調対象空間(W)が暖房される。また、暖房運転時には暖気が天井付近に溜まりやすいが、人の存在しない吹出エリアの下向きの気流により暖気が撹拌され、上下の温度差が解消される。さらに、人に向かって温風が直接吹き出されることによるドラフトの不快感も防止される。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1に記載の空気調和装置において、制御手段(53)が、スポット空調モード時には、該スポット空調モードの開始前よりも能力を低下させる制御を行うことを特徴としている。
【0018】
この請求項4の発明では、スポット空調モードが実行されるときには、その実行前よりも空調の能力が低下する。例えば、冷房運転では設定温度を自動的に2℃ほど高くし、暖房運転では設定温度を自動的に2℃ほど低くして、いずれもその温度を推奨設定温度とする省エネ運転を行うことができる。このように設定温度を省エネ側に若干変更すると、室内空間の一部分に気流を集中させることで快適性の低下を防止しつつ、経済性も高められる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の空気調和装置において、制御手段(53)が、暖房運転のスポット空調モード時に、人の存在する吹出方向の輻射温度が全平均輻射温度よりも高いことを検知すると、該スポット空調モードの開始前よりも能力を低下させる制御を行うことを特徴としている。
【0020】
この請求項5の発明では、暖房運転のスポット空調モードにおいて、人の存在する箇所の輻射温度が高くなっている場合は暖房能力があまり要求されないので、設定温度を変更して能力を低下させる運転を行う。これにより、省エネ運転が可能となる。
【0021】
さらに、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか1に記載の空気調和装置において、制御手段(53)が、輻射温度検知手段(51)による輻射温度の走査頻度をスポット空調モードよりも温度均一化モードで少なくすることを特徴としている。
【0022】
この請求項6の発明では、輻射温度検知手段(51)による輻射温度の走査頻度をスポット空調モードよりも温度均一化モードで少なくする制御が行われる。これは、スポット空調モード時は各エリア(A)〜(D)の温度分布や人位置情報の重要度が大きいため、輻射温度検知手段(51)の走査頻度を多めに設定する必要があるのに対して、温度均一化モードでは、温度分布や人位置情報の重要度が小さいため、走査頻度を少なくできることによる。そして、こうすることにより、走査を必要最小限に抑えることが可能となる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1,図2は、本実施形態1に係る空気調和装置の室内機(Z)を示している。この室内機(Z)は、室内の天井(50)に埋設配置される天井埋込式の空気調和装置の室内機である。
【0025】
上記室内機(Z)は、天井(50)の上側に埋設配置される矩形箱状のケーシング(1)と、このケーシング(1)の下端開口部に室内側から装着される矩形平板状の室内パネル(2)とを備えている。この室内パネル(2)には、その中央部に位置するようにして矩形開口状の吸込口(3)が形成されている。また、この吸込口(3)の外周には、長矩形状の4つの吹出口(4)が形成されている。この吹出口(4)は、それぞれの吹出口(4)が、室内パネルの外縁に略平行で、上記吸込口(3)を囲繞するように室内パネル(2)に配置されている。
【0026】
また、ケーシング(1)内には、吸込口(3)の上部に遠心ファン(6)が設置されている。上記遠心ファン(6)の外周側には、この遠心ファン(6)を囲繞するようにして熱交換器(5)が設置されている。さらに、この遠心ファン(6)と吸込口(3)との間には、ベルマウス(7)が配置されている。また、吸込口(3)には、吸込グリル(8)とフィルタ(9)とが装着されている。
【0027】
一方、上記吹出口(4)の上部には、この吹出口(4)より上方へ延びる長矩形断面を有する吹出流路(14)が形成されている。この吹出流路(14)内には、詳細は後述する風量調整機構(10)と、風量調整機構(10)とともに気流変更手段を構成する風向調整機構(52)(垂直フラップ(12)及び水平フラップ(13))とが設けられている。
【0028】
上記吸込口(3)には、吸込空気の温度を測定する吸込温度センサ(16)が設置されている。一方、吹出口(4)には、室内空間へ給気される吹出空気の温度を測定するための吹出温度センサ(17)が設けられている。また、室内パネル(2)の表面側(室内露出部)の一角部には、室内空間(空調対象空間)の輻射温度を測定するための輻射温度検知手段(51)である赤外線センサ(15)が配置されている。
【0029】
上記吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報が入力される制御手段(53)である制御部(18)は、吸込口(3)の内周側面に設置されている。この制御部(18)は、上記検知情報に基づいて、風量調整機構(10)、垂直フラップ(12)、及び水平フラップ(13)を制御する。
【0030】
次に、上述した室内機(Z)の各構成要素について、それぞれ詳細に説明する。
【0031】
風量調整機構(10)は、吹出口(4)より室内空間へ給気される吹出空気の風量を調整するためのものである。この風量調整機構(10)は、図2〜図4に示すように、1対の分配シャッタ(11,11)を備えている。この一対の分配シャッタ(11,11)は、吹出流路(14)の水平断面の長辺に沿う形状に形成され、この長辺寄りにそれぞれ配置されている。この一対の分配シャッタ(11,11)は、図3に示すように、その一端が吹出流路(14)の側壁に沿って上下方向に形成されたガイド溝(25)に係入されている。一方、この分配シャッタ(11,11)の他端は、図3及び図4に示すように、モータ(29)により回転駆動されるギヤ(28)の径方向両側に噛合された一対のラック(27,27)の端部に連結されている。
【0032】
以上の構成により、風量調整機構(10)は、モータ(29)によって上記ギヤ(28)が正逆両方向に選択的に回転されると、これに噛合した上記一対のラック(27,27)が相互に逆方向へ移動する。この一対のラック(27,27)の移動に伴って、上記一対の分配シャッタ(11,11)は、ガイド溝(25)に沿って、その係入部が上下方向に移動すると共に、それぞれの傾斜角度を変化させる。そして、このシャッタ(11,11)の移動により、吹出流路(14)の中央側への延出量、即ち吹出流路(14)の開口面積を増減させることができる。
【0033】
以上の風量調整機構(10)の構成において、例えば最大風量設定時には、上記吹出流路(14)の一対の分配シャッタ(11,11)が共に直立に近い姿勢で吹出流路(14)の長辺側壁寄りに収納される状態となり、上記吹出流路(14)の開口面積が拡大される。したがって、遠心ファン(6)によって、吹出口(4)から室内空間へ給気される吹出空気量が多くなる。一方、例えば最小風量設定時には、上記吹出流路(14)の一対の分配シャッタ(11)が共に水平に近い姿勢となり、上記吹出流路(14)の開口面積が縮小される。したがって、遠心ファン(6)によって、吹出口(4)から室内空間へ給気される吹出空気量が少なくなる。このように、吹出流路(14)の分配シャッタ(11)の傾斜角度を変化させることで、吹出空気量を自由に調整することができる。
【0034】
なお、上記風量調整機構(10)は上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに設けられるものであり、これらの風量調整機構(10)は、独立して個別に動作が制御される。また、この風量調整機構(10)の動作の制御は、前述の吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
【0035】
垂直フラップ(12)は、吹出口(4)より室内空間へ給気される吹出空気の風向を左右方向に調整するためのものである。上記垂直フラップ(12)は、図2に示すように、吹出流路(14)の垂直断面に沿った形状の複数のプレート体(55)を有している。このプレート体(55)は、吹出口(4)の開口面と略直角な姿勢で、吹出流路(14)内に所定の間隔で並設されている。また、このプレート体(55)と吹出流路(14)の吸込口(3)寄りの壁面との間には、該プレート体(55)を支持するための第1支軸(23)が設けられている。この構成により、上記プレート体(55)は、第1支軸(23)を中心として左右方向に傾斜角度が可変な状態となっている。
【0036】
また、垂直フラップ(12)には、上記プレート体(55)を連結するためのリンクバー(24)が設けられている。このリンクバー(24)は、吹出口(4)の開口部における長辺と略平行に、上記複数のプレート体(55)を連結して設置されている。また、上記吹出流路(14)内の片側短辺寄りには、このリンクバー(24)の一端と連結する第1モータ(30)が設置されている。この構成により、第1モータ(30)を起動すると、上記リンクバー(24)が吹出流路(14)内で左右に揺動し、上記プレート体(55)は、第1支軸(23)を中心として左右方向に傾斜角度が変更される。したがって、吹出口(4)からの吹出空気を左右方向に調整することができる。また、第1モータ(30)の正転、逆転を繰り返すことで、プレート体(55)は、連続的に左右に揺動する。この場合、吹出口(4)より給気される吹出空気を左右方向にスイングして排出することができる。
【0037】
なお、上記垂直フラップ(12)は、上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに設けられるものであり、これらの垂直フラップ(12)は、吹出口(4,4,…)毎に独立して個別に制御される。また、この垂直フラップ(12)の動作の制御は、吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
【0038】
水平フラップ(13)は、吹出口(4)より給気される吹出空気の風向を上下方向に調整するためのものである。上記水平フラップ(13)は、図2に示すように、一対の両辺(短辺側の両辺)が湾曲した形状の帯板材で構成されている。そして、水平フラップ(13)は、この一対の湾曲した両辺が、吹出流路(14)の左右側面と近接するように、横方向に延びている。この水平フラップの一端部には、この水平フラップ(13)を支持するための第2支軸(56)が設けられている。そして、水平フラップ(13)は、この第2支軸(56)を中心として上下方向に傾斜角度が可変な状態となっている。また、上記第2支軸(56)の一方には、図7に示すような第2モータ(31)がケーシング(1)内に連結されている。この構成により、第2モータ(31)が駆動すると、水平フラップ(13)は、第2支軸(56)を中心として上下方向に傾斜角度が変更される。したがって、吹出口(4)からの吹出空気を上下方向に調整することができる。
【0039】
また、第2モータ(31)の正転、逆転を繰り返すことで、水平フラップ(13)は、連続的に上下に揺動する。この場合、吹出口(4)より給気される吹出空気を上下方向にスイングして排出することができる。
【0040】
なお、上記水平フラップ(13)は、図7に示すように、上記吹出口(4,4,…)のそれぞれに対応して設けられるものであり、これらの水平フラップ(13)は、連動して制御することを基本とする。このため、第2モータ(31)が所定量回転すると、水平フラップ(13,13,…)の傾斜角度は、それぞれ同じ角度に変更され、吹出口(4,4,…)の吹出空気も同じ風向に調整される。また、この水平フラップ(13)の動作の制御は、吸込温度センサ(16)、吹出温度センサ(17)、及び赤外線センサ(15)の検知情報に基づいて、上記制御手段(53)である制御部(18)によって行われる。
【0041】
吸込温度センサ(16)は、遠心ファン(6)によって室内空間より吸込口(3)へ吸引される吸込空気の温度を測定するためのものである。図2に示すように、この吸込温度センサ(16)は、上記制御部(18)のケーシング壁面に、吸込空気温度が測定可能に取り付けられている。
【0042】
吹出温度センサ(17)は、遠心ファン(6)によってケーシング(1)内より吹出口(4)を介して室内空間へ給気される吹出空気の温度を測定するためのものである。この吹出温度センサ(17)は、吹出流路(14)の壁面に、吹出空気温度が測定可能に取り付けられている。
【0043】
赤外線センサ(15)は、室内機(Z)が天井に設置された状態において、室内の壁面、床面あるいは人体等の躯体からの輻射熱を輻射温度として検知し、これを現在の室内温度に関する検知情報として、制御部(18)に出力するためのものである。
【0044】
この赤外線センサ(15)は、図1及び図2に示すように、室内パネル(2)の外周側の一角部近傍のセンサ取付穴(19)に配置されている。また、この赤外線センサ(15)には、走査機構(20)が備えられている。この走査機構(20)は、水平軸を有する第1走査モータ(21)と、鉛直軸を有する第2走査モータ(22)とを備えている。したがって、赤外線センサ(15)は、第1走査モータ(21)により水平軸を中心に所定の角度回動でき、第2走査モータ(22)により鉛直軸を中心として、360℃旋回可能となる。この構成により、上記赤外線センサ(15)は、室内空間のほとんどの領域における輻射熱を輻射温度として検知することができる。
【0045】
また、上記赤外線センサ(15)としては、例えば検知対象範囲の全域を一体的に検知する単素子型センサや、検知対象範囲を一方向に分割して分割領域毎に検知を行う一次元アレイ素子型センサを用いてもよいが、検知対象範囲を直交する二方向に分割して分割領域毎に検知を行う二次元アレイ素子型センサが特に好適である。
【0046】
さらに、上記赤外線センサ(15)は、図9に示すように、室内空間の輻射温度(人などの躯体温度や温度分布)を検知する際に、室内空間を室内機(Z)を中心として放射状に4つのエリア(A),(B),(C),(D)(これらのエリアは、4つの吹出口(4,)にそれぞれ対応している)に仮想分割し、それぞれのエリア(A)〜(D)における輻射温度と人体位置とを検知するように構成されている。したがって、上記赤外線センサ(15)によって検知されたそれぞれのエリア(A)〜(D)の輻射温度に関する検知情報が、上記気流変更手段(風量調整機構(10)と風向調整機構(52))を制御するための制御ファクタとして、それぞれ制御部(18)に出力される。
【0047】
−構成の変更例−
なお、上記実施形態において、室内パネル(2)は以下のように構成してもよい。
【0048】
上記実施形態において、風量調整機構(10)は、図3に示すように、吹出流路(4)の壁側寄りを支点として傾動する分配シャッタ(11)を備えている。そして、この分配シャッタ(11)の一端をガイド溝(25)に沿って、モータ(29)の駆動により、上下に揺動し、吹出口(4)の開口面積を拡大、縮小して吹出空気の風量調整を行っている。しかしながら、この風量調整機構(10)は、例えば以下の構造としてもよい。
【0049】
図5に示す風量調整機構(10)は、一対の分配シャッタ(11,11)を吹出流路(14)の上部において、それぞれその短辺方向へ進退可能に構成したものである。この一対の分配シャッタ(11,11)は、ラック(27,27)とこのラック(27,27)に噛合するギヤ(28)を介して、モータ(29)の回転により進退する。この際、分配シャッタ(11,11)は、吹出流路(14)の短辺方向に水平に形成されたガイド溝(26)に沿って水平に移動する。この風量調整機構(10)の構成においても、上記モータ(29)の回転により、吹出口(14)の開口面積を拡大、縮小することで、吹出空気の風量調整を行うことができる。
【0050】
図6に示す風量調整機構(10)は、一つの分配シャッタ(11)を備え、この分配シャッタ(11)の一端を吹出流路(14)の上部における一方の壁側寄りに支持し、分配シャッタ(11)を傾動可能に構成したものである。この分配シャッタ(11)は、ギヤ(28)を介してモータ(29)によって上下に傾動する。この風量調整機構(10)の構成においても、上記モータ(29)の回転により、吹出口(14)の開口面積を拡大、縮小することで、吹出空気の風量調整を行うことができる。
【0051】
また、実施形態1において、吹出口(4,4,…)にそれぞれ設けられた水平フラップ(13,13,…)は、図7に示すようにそれぞれ連結されており、一つの第2モータ(31)によって連動して傾斜角度を変更し、上下方向の風向を調整するように構成されている。しかしながら、この水平フラップ(13,13,…)は、図8に示すように、それぞれ個別に第2モータ(31,31,…)を設け、この第2モータ(31,31,…)により、水平フラップ(13,13,…)をそれぞれ独立して制御してもよい。この場合、吹出口(4,4,…)により室内空間へ給気される吹出空気の風向を、それぞれ最適な風向に調整して室内空間の気流制御を行うことができる。
【0052】
−運転制御−
次に、この空気調和装置における運転制御のうち、特に気流制御について詳細に説明する。
【0053】
この空気調和装置では、室内パネル(2)に設けられた制御部(18)が、吸込温度と吹出温度の温度差に基づいて、冷房、暖房、冷暖サーモオフ(温度調整を休止し、送風のみを行う状態)などの運転状態を検知し、それぞれの運転状態に応じた気流制御を室内機(Z)から独立して行う。また、上記制御部(18)は、空調対象空間である室内空間(W)の輻射温度を赤外線センサ(15)により検知し、検知した輻射温度も用いて気流制御を行う。
【0054】
<空調対象空間のエリア設定>
まず、具体的な制御の前に、室内空間(W)のエリア設定について説明する。
【0055】
この実施形態では、図9に示すように、室内空間(W)を、上記室内機(Z)の各吹出口(4)に対応して、仮想的に四つのエリア(A)〜(D)に分割している。そして、各エリア(A)〜(D)について赤外線センサ(15)で検出した測定温度に基づいて、室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)毎の平均輻射温度や、室内空間(W)の全体の平均輻射温度などを求めるようにしている。また、図9に黒丸(●)で示すように、上記室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)のそれぞれに存在する高温部を人体位置として検知し、これも制御に反映させるようにしている。
【0056】
尚、このエリア設定については、上述のように室内空間(W)を必ず四つのエリア(A)〜(D)に区画する必要はなく、例えば図10に示すように、上記各エリア(A)〜(D)をそれぞれさらに二分して8つのエリア(A)〜(H)に基づく制御を行ってもよい。このようにエリアの数を多くすると、それだけ緻密な制御が可能となる。
【0057】
<フラップの操作>
次に、風量調整機構(10)の操作について説明する。
【0058】
気流制御を行うとき、風量調整機構(10)は、最大負荷となる吹出口(4)の開度を100%、最小負荷となる吹出口(4)の開度を0%として、他の箇所は比例配分により開度を決定することができる。例えば、冷房時の例を示す図11においては、エリア(A)を100%、エリア(B)を67%、エリア(C)を33%、エリア(D)を0%とした例である。ただし、0%の設定でも風量調整機構(10)は全閉ではないため、全開のときの半分程度の風量は流れる。
【0059】
次に、垂直フラップ(12)の操作について、冷房時の例を示す図12(図中の多数の数値は輻射温度(℃)を示している)を用いて説明する。
【0060】
垂直フラップ(12)は、例えば、各エリア(A)〜(D)内を多数の小エリアに細分し、各小エリアの輻射温度を比較して、負荷の大きい方向(人体の位置)に気流を向けるようにセットされる。図12の例では、エリア(A)において輻射温度が30℃の方向に風向がセットされる。エリア(B)では、垂直フラップ(12)は28℃と29℃の小エリア間でスイングするようにセットされ、エリア(C)では中央で固定されている。さらに、エリア(D)では高負荷部がエリアの両端に存在するため、エリア全域にわたってスイング(全スイング)するように制御される。
【0061】
水平フラップ(13)は、基本的に4つの吹出口(4)において連動するが、4つを独立可動にした場合は個々に風向が制御される。
【0062】
<気流制御の2つのモード>
次に、気流制御の2つのモードについて説明する。一つは温度均一化モード、もう一つはスポット空調モードであり、これらの2つのモードは、空気調和装置の運転状態(冷房、暖房、冷暖サーモオフなど)に合わせ、制御部(18)によって自動的に切り換えられる。
【0063】
温度均一化モードは、室内空間(W)の温度を全域に亙って均一化するような気流制御モードであり、各エリア(A)〜(D)のそれぞれに人が存在するか、吸込温度負荷(吸込温度により判断される空調負荷)が大きい場合に実行される。
【0064】
図13は、冷房時の例であり、エリア(A)〜(D)のそれぞれに人が存在する場合を示している。この例では、エリア(A)に一人、エリア(B)に二人、エリア(C),(D)にそれぞれ一人が存在している。平均輻射温度は、エリア(A)が28℃、エリア(B)が27℃、エリア(C),(D)がそれぞれ26℃になっているが、各エリア(A)〜(D)にいずれも人が存在する場合は、熱負荷に拘わらず、室内空間(W)の温度を均一化するように気流が制御される。
【0065】
このモードでは、冷房中はエリア内の平均輻射温度が高いほど、そのエリアの風量を多くするように風量調整機構(10)の開度を決定する。また、垂直フラップ(12)は、エリア(A),(B),(C)では全スイング動作を行い、エリア(D)のように高負荷部がある場合は高負荷部を中心として部分的にスイング動作を行う。水平フラップ(13)は、水平吹き出しを基本とする。以上の設定により、温度均一化モードでは、各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じた風量を広い範囲に吹き出すことで、室内空間(W)全体の温度を均一化する。
【0066】
図14は、人がすべてのエリア(A)〜(D)には存在しないが室内空間(W)が高負荷である(吸込温度が高い)場合の例を示している。この場合も、風量調整機構(10)は各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じて風量設定され、垂直フラップ(12)は、エリア(A),(B),(C)において全スイングし、エリア(D)のように高負荷部がある場合は高負荷部に対してスイング動作を行う。そして、各エリア(A)〜(D)の平均輻射温度に応じた風量を広い範囲に吹き出すことで、室内空間(W)全体の温度を均一化する。
【0067】
なお、冷暖サーモオフ時にも温度均一化モードでの運転を行う。このときには室内を温度調整しないため、各吹出口(4)の風量調整機構(10)はすべて100%の開度にセットし、上下風向を水平吹き出しあるいはスイングに、左右風向を全スイングにセットする。
【0068】
次に、スポット空調モードは、室内空間(W)の一部分を集中的に空調する気流制御モードであり、人の存在しないエリアが有り、しかも吸込温度負荷が小さい場合に実行される。
【0069】
図15に示す冷房運転のスポット空調モードでは、空気を人の方向へ向けて吹き出すように気流を制御する。具体的には、風量調整機構(10)は、エリア(B),(D)における人の存在する吹出エリアの開度が100%、エリア(A),(C)における人の存在しない吹出エリアの開度が0%にセットされる。また、複数の人が存在するエリア(B)では垂直フラップ(12)が全スイングし、一人だけ存在するエリア(D)では、垂直フラップ(12)は人の存在する方向を中心として部分的にスイングする。人の存在しないエリア(A),(C)では、垂直フラップ(12)は中央で固定される。さらに、水平フラップ(13)は水平吹出方向にセットされる。この冷房運転のスポット空調モードでは、人の存在する方向へ気流を集中させるようにして、冷風を人の周囲に直接的に供給するようにしている。
【0070】
図16に示す暖房運転のスポット空調モードでは、冷房運転時とは逆に空気を人の存在しない方向へ向けて吹き出すように気流を制御する。具体的に、風量調整機構(10)は、エリア(B),(D)における人の存在する吹出方向の開度が0%、エリア(A),(C)における人の存在しない吹出方向の開度が100%にセットされる。また、垂直フラップ(12)は、人が存在するエリア(B),(D)では人を避けた方向にセットされ、人が存在しないエリア(A),(C)では中央で固定される。水平フラップ(13)は、4つが連動の場合は下吹き出しを基本とする。ただし、4つの水平フラップ(13)が独立して可動である場合は、人の存在する方向は水平吹き出しとする。
【0071】
この暖房運転のスポット空調モードでは、人の存在しない方向に気流を集中させることにより室内空気を撹拌し、温風を人の周囲に間接的に供給できる。これは、暖房運転時にはドラフトによる不快感を在室者に与えないようにするためである。
【0072】
なお、スポット空調モード時は、冷房運転では設定温度を自動的に2℃高くし、暖房運転では設定温度を自動的に2℃低くして、いずれもその温度を推奨設定温度とする省エネ運転を能力自動制御運転として行う。これは、室内空間(W)の一部分に気流を集中させると、温度を省エネ側に2℃程度変更しても、特に人の存在する吹出方向の快適性はさほど低下しないと考えられるため、このような操作を採用したものである。なお、この場合、人の存在しない吹出方向の快適性は若干低下するが、室内空間の全体の快適性にはほとんど影響しない。
【0073】
<制御内容>
次に、具体的な制御の内容について、図17〜図19に示すフローチャートに沿って説明する。
【0074】
図17のステップST1では、この空気調和装置の運転開始に伴って自動運転が実行される。自動運転は、装置の電源をオンにしただけのときは前回運転時の設定温度に基づいて行われ、電源オンと同時に新たな温度設定をしたときにはその設定温度に基づいて行われる。
【0075】
運転中は、空気調和装置の運転状態に応じた気流制御を行うために、ステップST2において、吸込温度センサにより検出した吸込温度と、吹出温度センサにより検出した吹出温度との温度差を判別する。そして、吸込温度と吹出温度の温度差が5℃よりも高いときはステップST3〜ステップST5(冷房気流制御)を実行し、吸込温度と吹出温度の温度差が−5℃よりも低いときはステップST6〜ステップST8(暖房気流制御)を実行する。また、上記温度差がその間(−5℃以上で5℃以下)のときは、ステップST9(サーモオフ気流制御)を実行する。
【0076】
つまり、吸込温度が吹出温度に比べて5℃より高い温度になっているときは、ステップST3で赤外線センサ(15)により室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)を走査して輻射温度を検知した後、ステップST4で冷房気流制御のサブルーチンを実行する。ステップST5では吸込温度と吹出温度の温度差が3℃以下になったかどうかを判別し、温度差が3℃よりも大きければステップST3〜ステップST5を繰り返す一方、温度差が3℃以下になっているとサーモオフと判断し、ステップST9へ進んでサーモオフ時の気流制御を実行する。
【0077】
また、ステップST2の判別の結果、吸込温度が吹出温度に比べて−5℃より低い温度になっているときは、ステップST6で赤外線センサ(15)により室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)を走査して輻射温度を検知した後、ステップST7で暖房気流制御のサブルーチンを実行する。ステップST8では吸込温度と吹出温度の温度差が−3℃以上になったかどうかを判別し、温度差が−3℃よりも小さければステップST6からステップST8を繰り返す一方、温度差が−3℃以上になっているとサーモオフと判断し、ステップST9へ進んでサーモオフ時の気流制御を実行する。
【0078】
ステップST9で行うサーモオフ時の気流制御は、温度均一化モードの気流制御である。具体的には、全ての吹出口(4)について風量比率(開度)を「大(100%)」に設定し、上下風向を「水平」または「スイング」に設定し、左右風向を「全スイング」に設定する。こうすることにより、室内空間(W)を全域にわたって均一な温度にすることが可能となる。
【0079】
その後、図20の表にも記載しているように、ステップST10において赤外線センサ(15)による輻射温度の検知を停止し、ステップST2へ戻る。サーモオフ時は温度調整をせずに送風のみを行う状態であり、輻射温度を検知する必要がないため、赤外線センサ(15)の走査をしないことにしている。その後、ステップST2へ戻って吸込温度と吹出温度の温度差を再度検出し、その温度差に応じた気流制御を繰り返す。
【0080】
(冷房気流制御)
次に、図17のステップST4に示した冷房気流制御のサブルーチンについて、図18に従って説明する。
【0081】
このフローでは、まずステップST11において、吸込温度負荷判定として、吸込温度が26℃よりも高いか、26℃以下であるかを判別する。26℃以下である場合は、ステップST12で各エリア(A)〜(D)に人が存在するかどうかの判定を行う。そして、人が偏在しているとき(室内空間(W)に人の存在するエリアと存在しないエリアがあるとき)は、ステップST13〜ステップST20でスポット空調モードの気流制御を行う。また、ステップST11で吸込温度が26℃よりも高いと判別されたときと、ステップST12で人が室内空間(W)に散在している(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)と判別されたときは、ステップST21〜ステップST28で温度均一化モードの気流制御を行う。
【0082】
つまり、制御部(18)は、吹出エリアの吸込温度負荷が所定レベル(26℃)以下で、しかも人の存在する割合が所定値以下である場合は、気流制御モードをスポット空調モードに切り換える一方、吹出エリアの吸込温度負荷が所定レベル(26℃)より高いか、または人の存在する割合が所定値以上である(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)ことを検知すると、気流制御モードを温度均一化モードに切り換える制御を行う。このように、制御部(18)は、室内空間(W)の各エリア(A)〜(D)における人の存在の割合や吸込温度負荷の大きさに応じて温度均一化モードとスポット空調モードを切り換える制御を行う。
【0083】
スポット空調モードでは、まずステップST13で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST14で、その吹出口(4)に対応するエリア内の人の有無を判定し、人が存在しない場合はステップST15へ、人が存在する場合はステップST16へ進む。ステップST15では、人が存在しないエリアについて風量比率を「小(0%)」にセットし、上下風向を「水平」に、左右風向を「中央」にセットする。一方、ステップST16では、人が存在するエリアについて、風量比率を「大(100%)」にセットし、上下風向を「水平」にする。左右風向については、エリア内に存在する人が一人の場合は「人の方向」にセットし、エリア内に複数の人が存在する場合は「全スイング」にセットする。
【0084】
その後、ステップST17では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST18では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST14〜ステップST17の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図15の状態となる。
【0085】
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST19へ進んで推奨設定温度による能力自動制御を行う。この制御は、上述したように、設定温度を自動的に2℃高くして行う省エネ運転制御である。冷房運転のスポット空調モードでは人の存在する方向へ気流を集中させるため、吹出温度を若干高めに設定しても快適性がさほど低下しないと考えられることから、このような操作を採用して省エネ運転を可能にしている。
【0086】
その後、図20の表にも記載しているように、ステップST20において赤外線センサ(15)による輻射温度の検知を連続して行うようにセットし、図17のフローへ戻る。スポット空調モード時は各エリア(A)〜(D)の温度分布や人位置情報の重要度が大きいため、赤外線センサ(15)の走査を連続的に行うようにしている。
【0087】
一方、温度均一化モードでは、まず、ステップST21で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST22で風量比率をエリア(A)〜(D)毎の輻射温度に比例してセットし、上下風向を水平にセットする。ステップST23では吹出エリア内の輻射温度の差が大きいか小さいかを判別し、小さい場合はステップST24で左右風向を全スイングにセットする。また、吹出エリア内の輻射温度の差が大きい(高負荷部が存在する)場合はステップST25へ進み、左右風向を高負荷部を中心として所定範囲でスイングにセットする。
【0088】
その後、ステップST26では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST27では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST22〜ステップST26の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図13,図14の状態となる。
【0089】
4つの吹出口(4)のすべてについて気流制御が終了すると、図20の表にも示しているように、ステップST28へ進んで赤外線センサ(15)の走査を15分毎に間欠的に行うようにセットした後、図1のフローチャートへ戻る。この温度均一化モードで走査を間欠的に行うようにしているのは、このモードでは垂直フラップ(12)をスイングに設定して空気を撹拌することにしており、温度分布や人位置情報の重要度が小さいからである。
【0090】
(暖房気流制御)
次に、図17のステップST7に示した暖房気流制御のサブルーチンについて、図19に従って説明する。
【0091】
このフローでは、まずステップST31において、各エリア(A)〜(D)に人が存在するかどうかの判定を行う。そして、人が偏在しているとき(室内空間(W)に人の存在するエリアと存在しないエリアがあるとき)は、ステップST32〜ステップST41でスポット空調モードの気流制御を行う。また、ステップST31で室内空間(W)に人が散在している(各エリア(A)〜(D)に人が存在している)と判別されたときは、ステップST42〜ステップST49で温度均一化モードの気流制御を行う。
【0092】
スポット空調モードでは、まずステップST32で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST33で各吹出口(4)に対応するエリア内の人の有無を判定し、人が存在しない場合はステップST34へ、人が存在する場合はステップST35へ進む。ステップST34では、人が存在しないエリアについて、風量比率を「大(100%)」にセットし、上下風向を「下」に、左右風向を「中央」にセットする。一方、ステップST35では、人が存在するエリアについて、風量比率を「小(0%)」にセットし、上下風向を「水平」または「下」にセットする。左右風向については、「人を避けた方向」にセットする。
【0093】
その後、ステップST36では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST37では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST33〜ステップST36の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図16の状態となる。
【0094】
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST38へ進む。ステップST38では、人が存在する吹出方向の輻射温度が全平均輻射温度よりも低いかどうかを判別する。判別結果が「NO」のときは、人の周囲が相対的に高温になっている。そして、このときはステップST39で吸込温度の負荷判定を行い、負荷が小さいとき(吸込温度が23℃より高いとき)はステップST40へ進んで推奨設定温度による能力自動制御を行い、ステップST41へ進む。なお、ステップST40の能力自動制御は、上述したように、設定温度を自動的に2℃低くして行う省エネ運転制御である。
【0095】
一方、ステップST38の判別結果が「YES」のとき(人の周囲に窓があるような場合)は、人の周囲が冷えているので、ステップST40をスキップすることで能力を低下させずにステップST41に進む。また、ステップST39で吸込温度負荷が大きい(吸込温度が23℃以下である)と判断したときも、ステップST40をスキップすることで能力を低下させずにステップST41に進む。
【0096】
そして、ステップST41では、図20の表にも示すように、赤外線センサ(15)の走査を連続して行うようにセットして、輻射温度分布を認識しながら制御を行えるようにし、図17のフローチャートに戻る。
【0097】
以上のスポット空調モードでは、人の存在しない方向へ気流を集中させ、空気を撹拌して室内空間(W)を全体的に暖めることで、ドラフトによる不快感を人に与えないようにしている。
【0098】
一方、温度均一化モードでは、まず、ステップST42で吹出口(4)の番号を「1」にセットし、第1の吹出口(4)について制御を行う。具体的には、ステップST43で風量比率を吹出口(4)毎の輻射温度に比例してセットし、上下風向を水平にセットする。ステップST44では、吹出エリア内の輻射温度の差が大きいか小さいかを判別し、小さい場合はステップST45で左右風向を全スイングにセットする。また、吹出エリア内の輻射温度の差が大きい場合はステップST46へ進み、左右風向を、低温部を中心とするスイング動作にセットする。
【0099】
その後、ステップST47では吹出口(4)の番号に「1」を加算し、ステップST48では吹出口(4)の番号が「4」になるまでステップST43〜ステップST47の動作を繰り返す。以上により、気流制御は例えば図13,図14の状態となる。
【0100】
4つの吹出口(4)のすべてについて制御が終了すると、ステップST49へ進む。そして、赤外線センサ(15)の走査を15分毎に間欠的に行うようにセットして、図17のフローチャートへ戻る。
【0101】
−実施形態1の効果−
本実施形態1によれば、空調対象空間(W)における複数の吹出エリア(A)〜(D)毎の平均輻射温度を比較し、各エリア(A)〜(D)の温度差に応じて各吹出口(4)の風量を決定するとともに、空調対象空間(W)における複数の吹出エリア(A)〜(D)内の輻射温度を比較し、負荷の高い方向に気流を向けるように各吹出口(4)の風向を決定しているので、各エリア(A)〜(D)の温度分布に応じた最適な気流を得ることが可能となる。また、各吹出口(4)に対応する空調対象空間(W)内の複数の吹出エリア(A)〜(D)毎の輻射温度情報で風量や風向を決定できるので、気流制御が容易である。さらに、輻射温度の相対差で判断を行っているので、例えば他のセンサ(サーミスタなど)を用いる場合と比較して、誤差を小さくして気流制御の精度を高められる。
【0102】
また、冷房気流制御において、吸込温度負荷が所定レベルよりも高い(26℃より高い)か、または吹出エリア(A)〜(D)毎に人の存在する割合が所定値以上であると、空調対象空間(W)を全体的に空調する必要があると判断し、気流変更手段(10,52)を温度均一化モードに切り換える操作を行う一方、吸込温度負荷が所定レベル以下(26℃以下)で且つ人の存在する割合が所定値以下であると、空調を全体的に行う必要がないと判断し、気流変更手段(10,52)をスポット空調モードに切り換える操作を行うようにしているので、室内空間の空調要求度に合わせた運転制御が可能となり、快適性、省エネ性を向上できる。また、輻射温度の測定値は、赤外線センサ(15)の構造によっては誤差が生じることがあるため、輻射温度から負荷レベルを判断すると判定の精度が低くなることが考えられるが、この実施形態では負荷レベルを吸込温度から判断するようにしているため、高精度の負荷判定が可能となり、運転制御の信頼性を高められる。
【0103】
さらに、冷房運転のスポット空調モード時には、人の存在する吹出エリアの風量比率を高くし、人の存在しない吹出エリアの風量比率を低くして、人の存在するエリアを集中的に空調しているので、冷房時に人が存在するエリアを有効に空調でき、快適性を向上させることができる。
【0104】
また、一般に、暖房運転時は暖気が天井付近に停滞し、居住域の温度が低くなりがちであるが、この実施形態では、暖房運転のスポット空調モード時に、人の存在しない吹出方向に風量大で下吹きすることで、上下温度差を緩和できる。また、人の存在する吹出エリアにおいては風量比率を小さくし、人を避けた方向へ気流を向けるようにしているので、人に対してドラフトによる不快感を与えることがない。
【0105】
また、スポット空調モードが実行されるときに、その実行前よりも空調能力を低下させて運転を行うようにしているので、人の存在する吹出方向の快適性は実質的に低下せず、人の存在しない吹出方向の快適性のみが若干低下する。このため、全体の能力を少し下げて省エネ運転が可能となる。
【0106】
一方、暖房運転時は暖気が天井付近に停滞しやすいために居住域の温度が低くなる傾向にあり、吸込温度が居住域の温度と異なる場合がある。これに対して、暖房運転のスポット空調モードにおいて、人の存在する吹出方向平均輻射温度と全平均輻射温度を比較し、人の存在する箇所の輻射温度が高くなっている場合は、設定温度を変更して能力を低下させる運転を行うようにしている。このように、人の存在する吹出方向の温度が高ければ、能力を少し下げても人の存在しない吹出方向の下吹き気流により快適性を確保でき、省エネ運転も可能となる。
【0107】
また、この実施形態では、輻射温度の走査頻度をスポット空調モードよりも温度均一化モードで少なくするようにしている。このように、スポット空調モードに比べて温度分布や人位置情報の重要度の小さい温度均一化モードで走査頻度を低減することで、赤外線センサ(15)の耐久性を高められる。特に、サーモオフ中の温度均一化モードにおいては走査を停止しているので、赤外線センサ(15)の耐久性向上に効果的である。
【0108】
【発明のその他の実施の形態】
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0109】
例えば、上記実施形態では、吸込温度センサ(16)により検知した吸込温度と吹出温度センサ(17)により検知した吹出温度とから、室内パネル(2)の制御部(18)が独自に冷房、暖房、冷暖サーモオフを検知し、室内機(Z)から独立して気流制御を行うようにしているが、室内機(Z)の情報を用いて気流制御を行うようにしてもよい。
【0110】
また、本発明は天井埋込型の空気調和装置のみに適用できるものではなく、複数の吹出口を備えた空気調和装置であれば適用可能である。つまり、複数の吹出口を備えた空気調和装置において、各吹出口に対応した複数の吹出エリア毎に風量や風向を定め、あるいは吸込温度負荷と温度分布に基づいてスポット空調モードや温度均一化モードを切り換えることにより、運転状態に応じた最適な気流を得ることが可能となる。
【0111】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、吸込温度負荷が所定レベルよりも高いか、または吹出エリア(A)〜(D)毎に人の存在する割合が所定値以上であると、空調対象空間(W)を全体的に空調する必要があると判断し、気流変更手段(10,52)を温度均一化モードに切り換える操作を行う一方、吸込温度負荷が所定レベル以下で且つ人の存在する割合が所定値以下であると、空調を全体的に行う必要がないと判断し、気流変更手段(10,52)をスポット空調モードに切り換える操作を行うようにしているので、室内空間の空調要求度に合わせた運転制御が可能となり、快適性、省エネ性を向上できる。また、負荷レベルを吸込温度から判断することにより高精度の負荷判定が可能となり、運転制御の信頼性を高められる。
【0112】
請求項2に記載の発明によれば、冷房運転のスポット空調モード時には、人の存在する吹出エリアの風量比率が高くなり、人の存在しない吹出エリアの風量比率が低くなって、人の存在するエリアが集中的に空調されることになるので、各エリア(A)〜(D)の温度分布に応じた最適な気流制御が可能となる。特に、冷房時に人が存在するエリアを有効に空調でき、快適性を向上させることができる。
【0113】
請求項3に記載の発明によれば、暖房運転のスポット空調モード時には、人の存在しない吹出エリアの風量比率が人の存在する吹出エリアの風量比率よりも高くなり、人の存在する吹出エリアでは人を避けた方向へ気流が向けられる。したがって、暖房運転時は暖気が天井付近に停滞し、居住域の温度が低くなりがちであるが、人の存在しない吹出方向に風量大で下吹きすることで、上下温度差を緩和できるうえ、人に対してはドラフトによる不快感がない。
【0114】
請求項4に記載の発明によれば、スポット空調モードが実行されるときには、その実行前よりも空調能力を低下させて運転を行うようにしているので、人の存在する吹出方向の快適性を実質的に低下させずに、人の存在しない吹出方向の快適性を少し低下させることで、全体の能力を少し下げて省エネ運転が可能となる。
【0115】
請求項5に記載の発明によれば、暖房運転のスポット空調モードにおいて、人の存在する箇所の輻射温度が高くなっている場合は、設定温度を変更して能力を低下させる運転を行うようにしている。ここで、暖房時は暖気が天井付近に停滞しやすいために居住域の温度が低い傾向にあり、吸込温度が居住域の温度と異なる場合がある。そこで、人の存在する吹出方向の平均輻射温度と、全平均輻射温度を比較することで、人の存在する居住域の温度を相対的に判断し、人の存在する吹出方向の温度が高ければ、能力を少し下げても人の存在しない吹出方向の下吹き気流により快適性を確保でき、省エネ運転も可能となる。
【0116】
請求項6に記載の発明によれば、輻射温度検知手段(51)による輻射温度の走査頻度をスポット空調モードよりも温度均一化モードで少なくするようにしている。このように、スポット空調モードに比べて温度分布や人位置情報の重要度の小さい温度均一化モードで走査頻度を低減することで、輻射温度検知手段(51)の運転耐久性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る空気調和装置の室内機の概略斜視図である。
【図2】 図1の室内機の要部拡大断面図である。
【図3】 風量調整機構の要部拡大断面図である。
【図4】 図1の室内機の部分下面図である。
【図5】 風量調整機構の第1の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図6】 風量調整機構の第2の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図7】 図1の室内機の水平フラップ構造を示す概略下面図である。
【図8】 図7の変形例を示す概略下面図である。
【図9】 室内空間を4つの空調エリアに分割した状態の平面図である。
【図10】 室内空間を8つの空調エリアに分割した状態の平面図である。
【図11】 4つのエリアにおける風量制御の一例を示す図である。
【図12】 4つのエリアにおける風向制御の一例を示す図である。
【図13】 温度均一化モードにおける気流制御の第1の例を示す図である。
【図14】 温度均一化モードにおける気流制御の第2の例を示す図である。
【図15】 スポット空調モードにおける気流制御の第1の例を示す図である。
【図16】 スポット空調モードにおける気流制御の第2の例を示す図である。
【図17】 気流制御モードの切り換えを示すフローチャートである。
【図18】 冷房気流制御を示すフローチャートである。
【図19】 暖房気流制御を示すフローチャートである。
【図20】 気流制御モード毎の赤外線センサ走査頻度を示す表である。
【符号の説明】
(1) ケーシング
(2) 室内パネル
(3) 吸込口
(4) 吹出口
(10) 風量調整機構(気流変更手段)
(12) 垂直フラップ
(13) 及び水平フラップ
(15) 赤外線センサ
(16) 吸込温度センサ
(17) 吹出温度センサ
(18) 制御部
(51) 輻射温度検知手段
(52) 風向調整機構(気流変更手段)
(53) 制御手段
(A) 吹出エリア
(B) 吹出エリア
(C) 吹出エリア
(D) 吹出エリア
(W) 空調対象空間
(Z) 室内機
Claims (6)
- 空調対象空間(W)内の輻射温度を検知する輻射温度検知手段(51)と、複数の吹出口(4)からの吹出気流の特性を変更する気流変更手段(10,52)と、上記輻射温度検知手段(51)により検知される検知情報と空調運転の運転情報とに基づいて上記気流変更手段(10,52)を制御する制御手段(53)とを備えた空気調和装置であって、
気流変更手段(10,52)は、空調対象空間(W)の温度分布を均一化する温度均一化モードと、空調対象空間(W)の一部を集中的に空調するスポット空調モードとを切り換え可能に構成され、
制御手段(53)は、吸込温度負荷が所定レベルよりも高いか、または各吹出口(4)に対応する複数の吹出エリア(A)〜(D)毎に人の存在する割合が所定値以上であることを検知すると、気流変更手段(10,52)を温度均一化モードに切り換える一方、吸込温度負荷が所定レベル以下で且つ人の存在する割合が所定値以下であることを検知すると、気流変更手段(10,52)をスポット空調モードに切り換えることを特徴とする空気調和装置。 - 請求項1に記載の空気調和装置において、
制御手段(53)は、冷房運転のスポット空調モード時に、人の存在する吹出エリアの風量比率を、人の存在しない吹出エリアの風量比率よりも高くするように気流変更手段(10,52)を制御することを特徴とする空気調和装置。 - 請求項1または2に記載の空気調和装置において、
制御手段(53)は、暖房運転のスポット空調モード時に、人の存在しない吹出エリアの風量比率を人の存在する吹出エリアの風量比率よりも高くして気流を下方へ向けるとともに、人の存在する吹出エリアでは人を避けた方向に気流を向けるように気流変更手段(10,52)を制御することを特徴とする空気調和装置。 - 請求項1から3のいずれか1に記載の空気調和装置において、
制御手段(53)は、スポット空調モード時には、該スポット空調モードの開始前よりも能力を低下させる制御を行うことを特徴とする空気調和装置。 - 請求項4に記載の空気調和装置において、
制御手段(53)は、暖房運転のスポット空調モード時に、人の存在する吹出方向の輻射温度が全平均輻射温度よりも高いことを検知すると、該スポット空調モードの開始前よりも能力を低下させる制御を行うことを特徴とする空気調和装置。 - 請求項1から5のいずれか1に記載の空気調和装置において、
制御手段(53)は、輻射温度検知手段(51)による輻射温度の走査頻度をスポット空調モードよりも温度均一化モードで少なくすることを特徴とする空気調和装置。
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