JP4336886B2 - テトラゾリウム化合物の保存方法、それに用いる安定化剤、および前記方法を用いたテトラゾリウム化合物試薬溶液 - Google Patents
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Description
本発明は、テトラゾリウム化合物を安定に保存する方法、それに用いる安定化剤、および前記方法を用いたテトラゾリウム化合物試薬に関する。
背景技術
テトラゾリウム化合物は、一般に、酸化還元色素(発色基質)や還元剤等として使用されている。このような場合、通常、テトラゾリウム化合物を水に溶解して、液体試薬として用いている。
しかし、前記テトラゾリウム化合物溶液を長時間保存すると、前記溶液のpHが中性付近の場合、テトラゾリウム化合物の安定性が低く、例えば、テトラゾリウム化合物の自然発色によって前記溶液が着色したり、還元剤として作用しなくなる等の問題があった。このため、テトラゾリウム化合物溶液を使用する場合は、そのつど調製するか、溶液状態でもテトラゾリウム化合物の安定化を図ることができる酸性領域で保存された溶液を用いるしかなかった。
発明の開示
しかし、テトラゾリウム化合物を酵素反応系に使用する場合、その反応によって種々の条件を設定する必要がある。特に酵素は、個々の至適pHやpH安定性を有しており、それが酸性付近にあるものには限られず、アルカリ性付近のもの、特に中性付近のものが多く存在する。このため、中性付近で酵素反応を行う場合、酸性のテトラゾリウム化合物溶液では、使用時に反応系のpHを調整する必要があり、操作が煩雑となる。
そこで、本発明の目的は、酸性領域に限られず、テトラゾリウム化合物を安定に保存する方法の提供である。
前記目的を達成するために、本発明のテトラゾリウム化合物の保存方法は、テトラゾリウム化合物を安定に保存する方法であって、アジ化ナトリウムと共存させることを特徴とする。このように、テトラゾリウム化合物をアジ化ナトリウムと共存させれば、例えば、酸性領域に限らず、テトラゾリウム化合物の自然発色を抑制し、かつその機能を維持して安定化を図った状態での、保存が可能になる。
なお、本発明において、保存の形態としては、溶液状態でもよいし、乾燥状態であってもよい。乾燥状態で保存する場合は、例えば、テトラゾリウム化合物を含む溶液に、さらにアジ化ナトリウムを添加し、この混合液をそのまま乾燥させたり、ろ紙等の多孔質材等に含浸後、乾燥させてから保存してもよい。
通常、前記アジ化ナトリウムは、防腐剤として使用されている。しかし、本発明においては、アジ化ナトリウムを防腐の目的で添加するのではなく、テトラゾリウム化合物の自然発色を抑制し、かつ、機能を維持して安定化した状態で保存するために添加している。このように、アジ化ナトリウムがテトラゾリウム化合物を安定化することは、本発明者らが初めて見出したものである。
本発明の保存方法において、テトラゾリウム化合物(A)とアジ化ナトリウム(B)との添加割合(モル比A:B)は、1:0.02〜1:6.2の範囲であることが好ましい。
本発明の保存方法において、溶液中でテトラゾリウム化合物とアジ化ナトリウムとを共存させ、前記テトラゾリウム化合物を安定に保存する場合、アジ化ナトリウムの濃度を0.08〜3.2mmol/Lの範囲にすることが好ましく、より好ましくは0.08〜0.8mmol/Lの範囲である。前記濃度であれば、より一層テトラゾリウム化合物を安定に保存できるからである。一方、アジ化ナトリウムを前述のように防腐剤として使用する場合、防腐効果を示すためには約0.05〜0.2重量%(7.7〜31mol/L)の濃度になるように添加する必要がある。しかし、本発明においてはアジ化ナトリウムの濃度が0.08〜3.2mmol/Lの場合に、特に優れたテトラゾリウム化合物の安定化を示し、反対に、この濃度では防腐剤としての効果はほとんど見られない。つまり、アジ化ナトリウムの防腐効果によって、テトラゾリウム化合物の安定化が達成されているとはいえず、前記防腐効果と、テトラゾリウム化合物の安定化効果は、全く異なる作用効果であるといえる。
一方、本発明の保存方法において、テトラゾリウム化合物の濃度は、0.5〜8mmol/Lの範囲であることが好ましい。
また、本発明の保存方法において、テトラゾリウム化合物1mmol/Lに対して、アジ化ナトリウムを0.02〜6.2mmol/Lの範囲で添加することが好ましい。
本発明の保存方法において、前記溶液のpHは、特に制限されないが、例えば、5.0〜7.5の範囲であり、好ましくは5.0〜7.0の範囲であり、より好ましくは5.5〜6.5の範囲である。
本発明の保存方法において、テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフィドフェニル)−2H−テトラゾリウム塩であることが好ましい。
つぎに、本発明の安定化剤は、テトラゾリウム化合物を安定に保存するための安定化剤であって、アジ化ナトリウムを含む。前述のように、アジ化ナトリウムは、テトラゾリウム化合物の安定化を図ることができるからである。
つぎに、本発明のテトラゾリウム化合物試薬は、テトラゾリウム化合物を水性溶媒に溶解させた試薬溶液であって、さらにアジ化ナトリウムを溶解させた試薬溶液である。このような試薬は、溶液であっても、保存によりテトラゾリウム化合物が自然発色したり、その機能を喪失することが抑制される。このため、使用の度に溶液試薬を調製する必要なく、テトラゾリウム化合物を使用する様々な測定反応等の操作が簡便になる。
また、本発明の乾燥試薬は、テトラゾリウム化合物を含有する試薬であって。テトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを溶解した水性溶媒を乾燥させた乾燥試薬である。テトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを溶解した前記水性溶媒は、そのまま乾燥させてもよいし、ろ紙等に含浸させて乾燥してもよい。
発明を実施するための最良の形態
本発明の保存方法において、前記テトラゾリウム化合物としては、例えば、テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有する構造であることが好ましく、より好ましくは、3箇所に環構造置換基を有する構造である。
前記テトラゾリウム化合物が、前述のように、前記テトラゾール環の少なくとも2箇所に環構造置換基を有する場合、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位および3位に有することが好ましい。また、テトラゾリウム化合物が3箇所に環構造置換基を有する場合は、前記置換基を、前記テトラゾール環の2位、3位および5位に有することが好ましい。
また、テトラゾリウム化合物は、少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。前記ベンゼン環以外の環構造置換基としては、例えば、環骨格にSまたはOを含み、かつ共鳴構造である置換基があげられ、例えば、チエニル基、チアゾイル基等である。
また、前記テトラゾリウム化合物は、テトラゾール環の少なくとも3箇所に環構造置換基を有し、前記環構造置換基のうち少なくとも2つの環構造置換基の環構造がベンゼン環であることが好ましい。
また、少なくとも1つの環構造置換基が官能基を有することが好ましく、前記官能基の数が多いことがより好ましい。
前記官能基としては、電子吸引性の官能基が好ましく、例えば、ハロゲン基、エーテル基、エステル基、カルボキシ基、アシル基、ニトロソ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基等があげられる。この他にも、例えば、ヒドロペルオキシ基、オキシ基、エポキシ基、エピジオキシ基、オキソ基等の酸素を含む特性基や、メルカプト基、アルキルチオ基、メチルチオメチル基、チオキソ基、スルフィノ基、ベンゼンスルホニル基、フェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基、p−トリルスルホニル基、トシル基、スルファモイル基、イソチオシアネート基等の硫黄を含む特性基等があげられる。これらの電子吸引性官能基の中でも、好ましくは、ニトロ基、スルホ基、ハロゲン基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基である。また、前記電子吸引性の官能基の他に、例えば、フェニル基(C6H5−)、スチリル基(C6H5CH=CH−)等の不飽和炭化水素基等もあげられる。なお、前記官能基は、解離によりイオン化していてもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、テトラゾール環の2位および3位にベンゼン環を有し、前記ベンゼン環のうち少なくとも一方が、ハロゲン基、カルボキシ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、スルホ基、メトキシ基およびエトキシ基からなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有することが好ましい。なお、前記両方のベンゼン環が、前記官能基を有してもよい。前記ベンゼン環において、いずれの箇所(ortho−、meta−、pra−)に前記官能基を有してもよい。また、官能基の数も特に制限されず、同じ官能基を有しても、異なる官能基を有してもよい。
前記テトラゾリウム化合物は、例えば、前記テトラゾール環の2位、3位および5位にベンゼン環構造置換基を有する化合物として、例えば、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(2−メトキシ−4−ニトロフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、2−(4−ヨードフェニル)−3−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−(1,1’−ビフェニル−4,4’−ジル)−ビス(2,5−ジフェニル)−2H−テトラゾリウム塩、3,3’−[3,3’−ジメトキシ−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジル]−ビス[2−(4−ニトロフェニル)−5−フェニル−2H−テトラゾリウム塩]、2,3−ジフェニル−5−(4−クロロフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−(p−ジフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(4−スチリルフェニル)テトラゾリウム塩、2,5−ジフェニル−3−(m−トリル)テトラゾリウム塩および2,5−ジフェニル−3−(p−トリル)テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾリウム化合物は、前述のような化合物には制限されず、この他に、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所にその他の環構造置換基を有する化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−(2−チエニル)テトラゾリウム塩、2−ベンゾチアゾイル−3−(4−カルボキシ−2−メトキシフェニル)−5−[4−(2−スルホエチル カルバモイル)フェニル]−2H−テトラゾリウム塩、2,2’−ジベンゾチアゾイル−5,5’−ビス[4−ジ(2−スルホエチル)カルバモイルフェニル]−3,3’−(3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレン)ジテトラゾリウム塩および3−(4,5−ジメチル−2−チアゾイル)−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム塩等があげられる。
また、前記テトラゾール環の2箇所にベンゼン環構造置換基および1箇所に環構造でない置換基を有するテトラゾリウム化合物も使用でき、例えば、2,3−ジフェニル−5−シアノテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−カルボキシテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−メチルテトラゾリウム塩、2,3−ジフェニル−5−エチルテトラゾリウム塩等があげられる。
前述のテトラゾリウム化合物の中でも、前述のように、環構造置換基を3つ有する化合物が好ましく、より好ましくは、環構造がベンゼン環である置換基を3つ有し、かつ電子吸引性官能基を多く有するものであり、特に好ましくは、2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルホフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である。なお、このようなテトラゾリウム化合物は、例えば、塩でもよいし、イオン化された状態等であってもよい。
本発明によるテトラゾリウム化合物の保存は、例えば、前記テトラゾリウム化合物と安定化剤であるアジ化ナトリウムとを水系の溶媒に溶解してテトラゾリウム化合物水溶液を調製し、これを保存すればよい。前記水溶液におけるテトラゾリウム化合物の濃度は、特に制限されないが、テトラゾリウム化合物の水に対する溶解度等から、前述のように、例えば、0.5〜8mmol/Lの範囲である。
一方、アジ化ナトリウムの濃度は、前述のように、例えば、0.08〜3.2mmol/Lの範囲であり、好ましくは0.08〜0.8mmol/Lの範囲である。
テトラゾリウム化合物に対するアジ化ナトリウムの添加割合は、テトラゾリウム化合物1mmol/Lに対して、例えば、0.02〜6.2mmol/Lの範囲が好ましい。
前記水系の溶媒としては、例えば、水、各種緩衝液等が使用できる。前記緩衝液としては、例えば、リン酸緩衝液、グッドの緩衝液(MES、MOPSO、MOPS、DIPSO、TES、POPSO、HEPES)等が使用でき、好ましくはMES、MOPSであり、より好ましくはMESである。前記緩衝液のpHとしては、例えば、pH5.0〜7.5の範囲であり、好ましくは、5.0〜7.0の範囲であり、より好ましくは5.5〜6.5の範囲である。
前記テトラゾリウム化合物は、アジ化ナトリウムを共存させれば、従来のように水溶液のpHを酸性領域に設定しなくとも安定に保存できることから、調製した水溶液のpHは、特に制限されないが、例えば、pH5.0〜7.5の範囲であり、好ましくは、5.0〜7.0の範囲であり、より好ましくは5.5〜6.5の範囲である。
前記テトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを共存させた水溶液の保存温度は、特に制限されないが、例えば、4〜60℃の範囲が好ましい。
前記水溶液を4℃で保存した場合、例えば、少なくとも90日以上の間、自然発色が抑制され、またテトラゾリウム化合物の機能を維持したままで保存できる。
このような方法で保存したテトラゾリウム化合物は、長期間溶液状態で保存しても、前述のように自然発色が抑制され、かつその機能が維持されるため、液体のテトラゾリウム化合物試薬として有用である。前記テトラゾリウム化合物試薬の用途は、特に制限されず、例えば、前述のような発色基質や還元剤等として使用できる。
また、前記水溶液を、前述のように、そのまま乾燥したり、ろ紙等に含浸させて乾燥し、乾燥試薬としても使用できる。
実施例
(実施例1および比較例1)
この実施例は、アジ化ナトリウム存在下、テトラゾリウム化合物を水溶液の状態で保存し、前記水溶液の着色の変化を調べた例である。なお、前記テトラゾリウム化合物としては、商品名WST−3(同仁化学社製、以下同じ)を使用した。
アジ化ナトリウムを所定の濃度(0.01、0.03、0.05、0.07、0.1、0.20g/L)になるように添加して下記組成のサンプルを調製し、これらを40℃で8日間保存した。そして、これらのサンプルの450nmにおける吸光度を、分光光度計((商品名Lambda20:パーキンエルマー社製、以下同じ)で測定した。これらの結果を下記表1に示す。なお、アジ化ナトリウム無添加(0g/L)を比較例1とした。
前記表1に示すように、アジ化ナトリウム存在下であれば、水溶液の状態でもWST−3の発色を抑制して安定に保存でき、さらに、従来のように、酸性条件下に限られず、中性付近であっても十分安定に保存できた。また、アジ化ナトリウムの添加量は、0.5mmol/LのWST−3に対して0.01〜0.2g/Lの割合が好ましいといえる。
(実施例2、実施例3および比較例2)
この実施例は、アジ化ナトリウム存在下、テトラゾリウム化合物およびメタロプロテアーゼを溶液状態で保存し、前記溶液の着色の有無と、テトラゾリウム化合物の機能の維持を調べた例である。
(保存方法)
以下の組成になるように、テトラゾリウム化合物を含有する酵素試薬を調製した。これらの試薬を所定の温度(4℃、25℃)で保存して、経時的にサンプリングを行った。そして、サンプリングした各保存時間毎の酵素試薬について、以下に示すようにして試薬の着色の確認し、さらに、前記試薬を用いた糖化ヘモグロビンの測定を行った。なお、比較例2は、アジ化ナトリウムが無添加である以外は、前記実施例2および3と同様に酵素試薬を調製して保存し、着色の確認および糖化ヘモグロビンの測定を行った。下記メタロプロテアーゼとしては、商品名メタロプロテアーゼ(TOYOBO社製)を使用した。
A.着色の確認方法
前記サンプリングした酵素試薬(保存日数33日)について、前記分光光度計を用いて吸光度(波長450nm)を測定した。下記表2にこれらの結果を示す。
B.糖化ヘモグロビンの測定
酸化還元反応を用いた測定方法において、試料中にアスコルビン酸やヘモグロビンなどの還元物質が存在する場合、前記還元物質によって、例えば、測定対象物である酸化物が還元されたり、発色基質が発色したり、反対に前記発色が消失するため、測定を正確に行うことができない場合がある。このような場合に、テトラゾリウム化合物は、前述のような還元物質による反応阻害や誤発色等の影響を排除する機能を有し、これによって測定精度が向上するという効果を奏する。したがって、アジ化ナトリウムの存在下、溶液状態で保存したテトラゾリウム化合物を用いて、前記酸化還元反応を利用する糖化ヘモグロビンの測定を行うことにより、前記保存によってもテトラゾリウム化合物の機能が維持されているか否かを調べることができる。
この糖化ヘモグロビンの測定方法は、糖化ヘモグロビンをプロテアーゼで分解し、この分解物におけるアミノ酸残基の糖化された側鎖基に、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(以下、「FAOD」という)を作用させ、発生する過酸化水素を発色基質と酸化還元反応させて、前記基質の発色量を測定することにより、糖化ヘモグロビンの量を測定する方法である。以下に測定方法を示す。
まず、下記測定試料を水で2倍希釈(体積)した希釈液25μL、サンプリングした前記保存後の酵素試薬60μLおよび下記発色試薬25μLを混合した。そして、この混合液(110μL)を、生化学自動分析機(商品名JCA−BM8:日本電子社製)で、37℃、15分間反応させ、主波長751nm、副波長805nmにおける吸光度を測定した。
この結果を下記表3、4および図1、2に示す。下記表3および図1は、前記テトラゾリウム化合物含有酵素試薬を4℃で保存した場合の吸光度の結果であり、下記表4および図2は、前記酵素試薬を25℃で保存した場合の吸光度の結果である。
(測定試料の調製)
下記組成となるように測定試料を調製した。なお、下記溶血試料は、血液を凍結保存後、溶解することによって血球を溶血させて調製した。
前記FAODとしては、商品名フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(アークレイ社製)を、前記発色基質としては、商品名DA−64(和光純薬工業社製)を使用した。
まず、テトラゾリウム化合物を溶液状態で保存した場合の自然発色については、前記表2に示すように、実施例は、比較例に比べて発色が格段に抑制され、安定に保存できた。また、糖化ヘモグロビンの測定についても、比較例においては、保存日数に応じて吸光度の減少が見られ、テトラゾリウム化合物の還元物質の影響を排除する機能が徐々に消失したのに対して、実施例においては、保存後30日を経過しても、0日と略同様の吸光度を示し、テトラゾリウム化合物の機能が安定に保持されたことがわかる。また、保存条件は、pH5.5よりも中性付近のpH6.5の方が、より安定性に優れるといえる。さらに、図1および図2に示すように、実施例2および3においては、吸光度の増加が見られ、保存開始後10日から26日の間においては、特に高い吸光度が維持されている。このことから、テトラゾリウム化合物をアジ化ナトリウムと溶液中で共存させて保存することにより、安定化が図れるだけでなく、さらに測定感度も向上するといえる。
(実施例4、比較例3)
この実施例は、アジ化ナトリウム存在下、テトラゾリウム化合物を所定pHの水溶液で保存し、前記水溶液の吸光度変化を調べた例である。
以下の組成になるようにサンプル(A1〜A3、B1〜B3)を調製し、これらを40℃で保存した。そして、保存開始から3日後および8日後における、これらのサンプルの450nmの吸光度を、前記分光光度計によって測定し、5日間の吸光度変化を求めた。
また、比較例3としては、アジ化ナトリウム無添加である以外は、前記実施例4と同様にサンプルを調製し、これを実施例の各サンプル(A1〜A3、B1〜B3)に対応する比較例のサンプルとした(a1〜a3、b1〜B3)。そして同様の条件で保存し、その吸光度変化を求めた。これらの結果を下記表5および図3に示す。同図において、(A)は、サンプルA1〜A3およびa1〜a3の結果であり、(B)は、サンプルB1〜B3およびb1〜b3の結果である。
前記表5に示すように、実施例4の各サンプル(A1〜A3、B1〜B3)は、対応する比較例3のサンプル(a1〜a3、b1〜b3)に比べて、吸光度変化が抑制された。したがって、アジ化ナトリウムを共存させることにより、テトラゾリウム化合物を安定に保存できるといえる。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明の保存方法によれば、酸性領域に限定されず、テトラゾリウム化合物を安定に保存することができる。このため、例えば、テトラゾリウム化合物の液体試薬が必要な場合でも、使用の度に試薬を調製する必要がないため、試薬の低コスト化が可能となり、操作も簡便なものとなる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の保存方法の一実施例における、糖化ヘモグロビン量に相当する吸光度の経時変化を示したグラフである。
図2は、前記実施例における、糖化ヘモグロビン量に相当する吸光度の経時変化を示したグラフである。
図3は、本発明の保存方法のその他の実施例における、吸光度変化を示すグラフであり、(A)はWST−3濃度0.5mmol/L、アジ化ナトリウム0.05g/L、(B)はWST−3濃度2.0mmol/L、アジ化ナトリウム0.1g/Lの結果を示す。
Claims (9)
- テトラゾリウム化合物を安定に保存する方法であって、アジ化ナトリウムと共存させることを特徴とし、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフィドフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である、保存方法。
- テトラゾリウム化合物(A)とアジ化ナトリウム(B)との添加割合(モル比A:B)が、1:0.02〜1:6.2の範囲である請求の範囲1記載の保存方法。
- 溶液中でテトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを共存させ、テトラゾリウム化合物の濃度を0.5〜8mmol/Lの範囲とする請求の範囲1または2記載の方法。
- 溶液中でテトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを共存させ、アジ化ナトリウムの濃度を0.08〜3.2mmol/Lの範囲とする請求の範囲1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 溶液のpHが5.0〜7.5の範囲である請求の範囲3または4記載の方法。
- 保存温度が、4℃〜60℃の範囲である請求の範囲1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- テトラゾリウム化合物を安定に保存するための安定化剤であって、アジ化ナトリウムを含み、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフィドフェニル)−2H−テトラゾリウム塩である、安定化剤。
- テトラゾリウム化合物を水性溶媒に溶解させた試薬溶液であって、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフィドフェニル)−2H−テトラゾリウム塩であり、さらにアジ化ナトリウムを溶解させた試薬溶液。
- テトラゾリウム化合物を含有する乾燥試薬であって、前記テトラゾリウム化合物が2−(4−ヨードフェニル)−3−(2,4−ジニトロフェニル)−5−(2,4−ジスルフィドフェニル)−2H−テトラゾリウム塩であり、前記テトラゾリウム化合物およびアジ化ナトリウムを溶解した水性溶媒を乾燥させた乾燥試薬。
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