JP4323789B2 - 靴下 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は靴下に関し、特に履口の喰い込みによる苦痛を感じることなく快適に履くことのできるようにした靴下に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、靴下では平編み、メッシュ編み、パイル編み、あぜ編み又はこれらの組合せによって編成し、適度なフィット感を付与することが行われているが、一般的には図9に示されるように、レッグ部31、足甲部32、底部33、爪先部34及び踵部35についてはその裏糸のカバーリングヤーンやコアヤーン、例えばナイロン巻きポリウレタン糸の適度な伸縮弾性により、靴下を履いた人の脚や足にフィットさせる一方、履口部30については更にゴム糸を編み込み、ゴム糸の大きな伸縮弾性によって靴下のずり落ちを防止するようにしている。
【0003】
しかし、履口部30の伸縮弾性を大きくして靴下のずれを確実に防止しようとすると、靴下の履口が皮膚に喰い込むほど強く締め付けられて苦痛を感じることがあった。
【0004】
他方、履口部30の伸縮弾性を小さくし、レッグ部31の伸縮弾性を大きくして靴下のずれを確実に防止しようとすると、今度は足首より上方の部分が強く締め付けられ、窮屈さを感じることがあった。
【0005】
これに対し、靴下の足首部分にのみカバーリングヤーン等の弾性糸あるいはゴム糸を編み込み、足首より上方のレッグ部や履口部には弾性糸やゴム糸を編み込まず、足首部分で締付け、レッグ部及び履口部をフリーな状態とし、レッグ部及び履口部の生地特性によってずり落ちを防止するようにした靴下が提案されている(特許文献1、参照)
【0006】
【特許文献1】
実公平06−19521号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来公報記載の靴下ではレッグ部及び履口部に適度な締付け感がないので、履いた時に違和感を感じて履きにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑み、足首より上方部分にはピッタリとフィットしてずり落ちることがなく、履口の喰い込みによる苦痛を感じることなく快適に履くことのできるようにした靴下を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本件発明者は上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、添え糸編み又はパイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組合せて編成すると、編成組織によって適度な伸縮弾性が得られることを知見し、レッグ部及び履口部を上述の編成組織にするとゴム糸を用いることなく履口部のずり落ちを防止できることに着目し、本発明を完成するに至った。
【0010】
そこで、本発明に係る靴下は、編み糸と弾性糸とでもって爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部を編成してなる靴下において、レッグ部及び履口部が添え糸編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせて編み糸と弾性糸とによってかつ上記スパイラルメッシュ編みのあぜ目が2/1〜5/1となるように編成されることによって所望のフィット感が与えられる一方、上記履口部が少なくとも二重に折り返されることによってゴム糸を用いることなくずり落ちが阻止されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つはレッグ部及び履口部を添え糸編みにスパイラルメッシュ編みを組合せて編成するとともに、履口部を少なくとも二重に折り返すようにした点にある。
【0012】
これにより、足首より上方のレッグ部は添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組み合わせた編み目によって適度な伸びと適度な締付け力が得られ、レッグ部の全体が履いた人の脚ふくらはぎから足首にかけての部分にピッタリと抱きつき、皺ができたりずれ落ちたりすることがない。
【0013】
しかも、履口部は少なくとも二重に折り返しているので、履口部の締付け力はレッグ部よりも強くなり、履口部は履いた人の脚ふくらはぎにしっかりと抱きついて保持されるが、ゴム糸を用いた場合のように強い締付け感を感じることはなく、確実に履口部のずり落ちが阻止される。
【0014】
その結果、従来のように履口が皮膚に喰い込むといったことはなく、しかも適度な締付感があるので、違和感なく履くことができる。
【0015】
また、従来の靴下のように履口部にゴム糸を編み込んでおらず、添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組み合わせた編み目による適度な伸び特性により、小さな力でレッグ部及び履口部の全体が大きく伸びるので、手足の筋力が弱った老人や病人にも容易に履くことができ、又脱ぐ時にも靴下を簡単に脱ぐことができる。
【0016】
また、パイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせても上記の添え糸編みの場合と同様に適度な伸縮弾性が得られる。このパイル編みは編み目の特性に起因して添え糸編みに比して伸縮弾性が大きく、履口部を二重に折り返さなくとも履口部に必要な締付け力が得られることが判明した。
【0017】
そこで、本発明に係る靴下は、編み糸と弾性糸とでもって爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部を編成してなる靴下において、レッグ部及び履口部はパイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせて編み糸と弾性糸とによってかつ上記スパイラルメッシュ編みのあぜ目が2/1〜5/1となるように編成されることによって所望のフィット感が与えられるとともに、上記履口部は少なくとも二重に折り返されることによってゴム糸を用いることなくずり落ちが阻止されていることを特徴とする。
【0018】
なお、パイル編みとスパイラルメッシュ編みとの組合せの場合に、履口部の締付け力を強くしてより確実にずり落ちを防止する場合には履口部を二重に折り返すようにしてもよい。即ち、履口部は少なくとも二重に折り返されることによってずり落ちをさらに阻止するように構成することもできる。この場合、履口部は二重に大きく折り返し、レッグ部が実質的に履口部に隠れた形態を採用することもできる。
【0019】
ここで、添え糸編みとは通常プレーティング編みともいわれ、地編糸に他の編糸を添えて給糸し、図3に示されるように、そのうちの一方を表面に、他方を裏面に表すようにした編み方であり、片面だけを見るときには1種類の編糸のみによって編まれたように見える。
【0020】
スパイラルメッシュ編みとは2本糸編みにおいて1本の糸は1本おきの針及び1コースおきないし数コースおきにループを作らずにフロートしている編み組織で、メッシュと名付けられている通り、編み目が開いてメッシュとなる。ここで、図4は添え糸編みPとスパイラルメッシュ編みSMとを1/1で編成した場合の編み目組織の例を示す。
【0021】
また、パイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせた場合には図6に示される編み組織となる。図8において、PIの部分がパイル編みの編み組織であり、SMがスパイラルメッシュ編みの編み目組織である。
【0022】
パイル編みは芯糸Aとパイル糸Bを編み針に図7の(a)に示されるように掛けて編むことによって得られ、スパイラルメッシュ編みは芯糸Aとパイル糸Bを編み針に図7の(b)に示されるように掛けて編みことによって得られる。
【0023】
本発明に係る靴下の編み目はB式又はK式のシングルシリンダーによって編成することにより得られる。具体的には針数が50本ないし240本、シリンダー径が3インチ〜5インチであるB式又はK式のシングルシリンダーによって編成されることができる。
【0024】
スパイラルメッシュ編みのあぜ目は1/1〜8/1あるいは2/2〜8/2を採用できるが、2/1〜5/1のあぜ目の時にずれ落ちしない最も優れたフィット感が得られた。あぜ目が1/1とはあぜが1目おきに1目形成されていることを、8/1とは1目をあけて8目のあぜが設けられていることを、2/2とはあぜが2目おきに2目形成されていることを、8/2とは2目をあけて8目のあぜが設けられていることをいう。
【0025】
足甲部、爪先部、底部及び踵部については編み方は特に限定されず、平編み、メッシュ編み、パイル編み、あぜ編みあるいはこれらの組合せで編成することができるが、添え糸編み、添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せた編み方あるいはパイル編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せた編み方で編成するようにしてもよい。
【0026】
また、編み糸の材質については特に限定されず、表糸又はパイル糸には綿糸、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸、ナイロン糸等、靴下に採用される編み糸であって、綿番で2番ないし120番に相当する特性の糸を用いることができる。
【0027】
裏糸又は芯糸にはナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバーヤーン、コアヤーンであって、ナイロン糸で20デニールないし400デニールに相当する特性の糸を用いることができる。
【0028】
ここで、弾性糸とは一般の場合にはゴム糸を含む用語として用いられているが、本発明ではゴム糸を除くナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタンカバーヤーン、コアヤーンを意味する用語として用いている。
【0029】
本発明はレッグ部の短いソックス、レッグ部の長いハイソックスのいずれにも適用できる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る靴下の好ましい実施形態を示す。靴下は履口部10、レッグ部11、足甲部12、底部13、踵部15及び爪先部14から構成されている。
【0031】
履口部10、レッグ部11及び足甲部12は添え糸編み(図3参照)を基本としこれにスパイラルメッシュ編み(図4参照)を組み合わせた編み方によって編成され、底部13、踵部15及び爪先部14は添え糸編みによって編成されている。
【0032】
レッグ部11及び履口部10は幅9cm〜12cmの寸法で、高さ方向にほぼ均一な幅に編成され、履口部10は二重に折り返され、2cm〜12cm、好ましくは6cm〜7cmの長さに設定されている。なお、レッグ部11及び履口部10は上方になるに従って広幅となったラッパ形状でもよく、履口部が狭くなった形状としてもよい。
【0033】
編み糸には、表糸に64番手の2本の綿糸が用いられ、裏糸には30デニールの2本のナイロン糸が用いられ、針数220本、シリンダー径3.5インチでK式編立機のシングルシリンダーによって編成されている。また、スパイラルメッシュ編みのあぜ目は2/1〜5/1、例えば4/1に設定されている。
【0034】
以上のような本例の靴下では靴下のレッグ部11及び履口部10を添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せて編成したので、足首より上方の部分は添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組み合わせた編み目によって適度な伸びと適度な締付け力が得られ、レッグ部11の全体が履いた人の脚レッグ部分にピッタリと抱きつき、皺ができたりずれ落ちたりすることがない。
【0035】
しかも、履口部10は添え糸編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せて編成した編み組織を二重に折り返しているので、履口部10の締付け力はレッグ部11よりも強くなり、履口部10は履いた人の脚レッグ部分にしっかりと抱きついて保持されるが、ゴム糸を用いた場合のように強い締付け感を感じることはなく、確実に履口部のずり落ちが阻止される。
【0036】
その結果、従来のように履口が皮膚に喰い込むといったことはなく、しかも適度な締付感があるので、違和感なく履くことができ、又従来の靴下履口部10の不快な喰い込み感を解消できる。
【0037】
また、履口部10にゴム糸を編み込んでおらず、しかも編み組織の特性により小さな力で靴下の履口部10及びレッグ部11の全体が大きく伸びるので、手足の筋力が弱った老人や病人にも容易に履くことができ、又脱ぐ時にも靴下を簡単に脱ぐことができる。
【0038】
図5は第2の実施形態を示し、図において図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では履口部10及びレッグ部11はパイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせた編み方によって編成され(図6参照)、足甲部12、底部13、踵部15及び爪先部14はパイル編みによって編成されている。
【0039】
レッグ部11及び履口部10は幅8cm〜12cmの寸法で、高さ方向にほぼ均一な幅に編成され、履口部10は二重に大きく折り返され、4cm〜10cm、好ましくは6cm〜8cmの長さに設定されている。なお、本例の靴下においてもレッグ部11及び履口部10は上方になるに従って広幅となったラッパ形状でもよく、履口部が狭くなった形状としてもよい。
【0040】
また、本例ではレッグ部11は履口部10にほぼ隠れた形態となっているが、レック部11を長くした形態を採用することもできる。
【0041】
編み糸には、パイル糸に22番手の1本のアクリル毛混紡糸が用いられ、芯糸には40/75のポリエステル巻ポリウレタン糸が用いられ、針数144本、シリンダー径3・3/4 インチでK式編立機のシングルシリンダーによって編成されている。また、スパイラルメッシュ編みのあぜ目は2/1〜5/1、例えば3/1に設定されている。
【0042】
以上のような本例の靴下では靴下のレッグ部11及び履口部10をパイル編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せて編成したので、足首より上方の部分は適度な伸びと適度な締付け力が得られ、レッグ部11の全体が履いた人の脚レッグ部分にピッタリと抱きつき、皺ができたりずれ落ちたりすることがない。
【0043】
しかも、履口部10はパイル編みとスパイラルメッシュ編みとを組合せて編成した編み組織を二重に折り返しているので、履口部10は履いた人の脚レッグ部分にしっかりと抱きついて保持されるが、ゴム糸を用いた場合のように履口が皮膚に喰い込むといったことなく確実に履口部のずり落ちが阻止される。
【0044】
また、履口部10にゴム糸を編み込んでおらず、しかも編み組織の特性により小さな力で靴下の履口部10及びレッグ部11の全体が大きく伸びるので、手足の筋力が弱った老人や病人にも容易に履くことができ、又脱ぐ時にも靴下を簡単に脱ぐことができる。
【0045】
図8は第3の実施形態を示し、図において図5と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例の靴下では履口部10は二重に折り返すことなく、パイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせて編成した編み組織を一重のままで使用している。
【0046】
パイル編みを基本の編み組織とする場合には履口部10は一重のままとしても適度な締付け力がえられる。
【0047】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、例えばB形編立機のシングルシリンダーによって編成してもよく、又針数は50本ないし240本、シリンダー径は3インチ〜5インチから選ぶことができる。さらに、スパイラルメッシュ編みのあぜ目は1/1〜8/1、2/2〜8/2から選択することができ、又表糸又はパイル糸には綿糸以外に、綿アクリル混紡糸、毛糸、毛アクリル混紡糸、絹糸、絹アクリル混紡糸、麻糸、麻アクリル混紡糸、ナイロン糸を、綿番で2番ないし120番に相当する特性のものを用いることができる。さらに、裏糸又は芯糸にはナイロン糸以外に、ポリエステル糸、ポリウレタンカバーヤーン、コアヤーンを、ナイロン糸で20デニールないし400デニールに相当する特性のものを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る靴下の好ましい実施形態を示す図である。
【図2】 上記実施形態における履口部を示す断面図である。
【図3】 添え糸編みを説明するための図である。
【図4】 スパイラルメッシュ編みを説明するための図である。
【図5】 第2の実施形態を示す図である。
【図6】 パイル編みにスパイラルメッシュ編みを組み合わせた編み組織の例を模式的に示す図である。
【図7】 パイル編み及びスパイラルメッシュ編みの編み方を説明するための図である。
【図8】 第2の実施形態を示す図である。
【図9】 一般的な靴下を説明するための図である。
【符号の説明】
10 履口部
11 レッグ部
12 足甲部
13 底部
14 爪先部
15 踵部
Claims (3)
- 編み糸と弾性糸とでもって爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部を編成してなる靴下において、
レッグ部及び履口部は添え糸編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせて編み糸と弾性糸とによってかつ上記スパイラルメッシュ編みのあぜ目が2/1〜5/1となるように編成されることによって所望のフィット感が与えられる一方、上記履口部は少なくとも二重に折り返されることによってゴム糸を用いることなくずり落ちが阻止されていることを特徴とする靴下。 - 編み糸と弾性糸とでもって爪先部、足甲部、底部、踵部、レッグ部及び履口部を編成してなる靴下において、
レッグ部及び履口部はパイル編みを基本としこれにスパイラルメッシュ編みを組み合わせて編み糸と弾性糸とによってかつ上記スパイラルメッシュ編みのあぜ目が2/1〜5/1となるように編成されることによって所望のフィット感が与えられるとともに、上記履口部は少なくとも二重に折り返されることによってゴム糸を用いることなくずり落ちが阻止されていることを特徴とする靴下。 - 上記レッグ部及び履口部は針数が50本ないし240本、シリンダー径が3インチ〜5インチであるB式又はK式のシングルシリンダーによって編成されている請求項1又は2記載の靴下。
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