JP4320231B2 - 紡績糸 - Google Patents

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本発明は、衣料用等の織編物に好適な多層構造紡績糸、芯層が中空である多層構造中空紡績糸及びその製造方法に関する。
従来から、軽量で保温性の高い織編物が要望されており、中空紡績糸を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、芯部にPVA等の溶解繊維を用いた多層構造撚糸及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。さらに、芯層部分に溶解性繊維と熱収縮率10〜40%の収縮性繊維をランダムに混紡してなる2層構造紡績糸及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。
また、より積極的に人体を暖めることを意図して、アクリル酸系の吸湿発熱性繊維を用いた衣料(例えば、特許文献6参照)、セルロースに水溶性ビニル重合化合物を導入した吸湿発熱性セルロース繊維を用いた衣料(例えば、特許文献7参照)、吸湿発熱性繊維と疎水性合成繊維を含む紡績糸(例えば、特許文献8参照)等が知られている。
しかし、PVA等の溶解繊維を用いた多層構造撚糸は、加工段階で中空部を形成すると、中空部を形成した後の染色整理仕上げ等の加工段階で、芯部の中空形状が損なわれやすく、中空部を製品段階まで維持することは困難であり、中空部の形成による軽量性、保温性、ソフト性などの性能が十分に発揮されにくい場合があった。
また、芯層部分に溶解性繊維と熱収縮率10〜40%の収縮性繊維をランダムに混紡してなる2層構造紡績糸は、加工段階で形成した中空部が収縮性繊維の作用により、製品段階まで維持でき、中空部の形成による軽量性、保温性、ソフト性などの性能が発揮されやすい。しかし、鞘層部分に用いられる繊維に限定がなく、用いる繊維によっては充分な保温性等が発揮できない場合があった。
例えば、鞘層部分に、最も一般的な綿を用いた場合、冬期に着用しようとした際、手で触れた瞬間あるいは着用した直後に接触冷感があり、保温感を損なう場合もあった。アクリル酸系の吸湿発熱繊維および吸湿発熱性セルロース繊維は、吸湿発熱性を有するものの、これらの繊維を用いた衣料は着用した瞬間には吸湿発熱が起こらないため、保温感が不足したり、一時的には保温能力を発揮するが、着用時間の経過による皮膚温度の低下が大きく、持続的に人体からの熱の逃散を阻止する能力に欠ける場合もあった。吸湿発熱性繊維と疎水性合成繊維を含む紡績糸は、総合保温性に優れるが、手で触れた瞬間、着用した直後に接触冷感がある場合があった。したがって、一層軽量で保温性の向上した紡績糸が求められている。
特開平7−18535号公報 特開平9−31781号公報 特開平9−59839号公報 特開平9−302545号公報 特開2002−138336号公報 特公平7−59762号公報 特許第2898623号明細書 特開2003−227043号公報
本発明は、軽量で、保温性、ソフト性に優れ、特に接触冷感が低減され、かつ、体温を長時間にわたって一定に保持し、体から熱を逃がし難く、総合保温性に優れ、衣料用等の織編物に好適な多層構造紡績糸、芯層が中空である多層構造中空紡績糸及びその製造方法、及びそれを用いた織編物およびその繊維製品を提供することを目的とする。
本発明は、下記の通りである。
1.芯層と鞘層の多層構造を有する紡績糸であって、芯層部分は少なくとも溶解性繊維を含み、鞘層部分は単糸繊度が0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる、多層構造紡績糸。
2.多層構造を有する中空紡績糸であって、実質的に中空部分が紡績糸の芯層部分に形成されており、実質的に中実部分が鞘層部分であり、該鞘層部分が単糸繊度0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる、多層構造中空紡績糸。
3.芯層と鞘層の多層構造を有し、芯層部分が少なくとも溶解性繊維を含み、鞘層部分は単糸繊度が0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる多層構造紡績糸を、溶解処理して溶解性繊維を除去し、芯層に中空部分を形成する工程を有する、芯層部に中空部分を有する多層構造中空紡績糸の製造方法。
4.上記1または2に記載の紡績糸を用いてなる織編物。
5.上記1または2に記載の紡績糸を用いてなる織編物の繊維製品。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の紡績糸は、吸湿発熱性のみならず、人体からの熱の逃散阻止能力に優れた衣料用素材である。従来、保温性衣料用として知られている繊維は、吸湿発熱性の向上又は保温性の向上のいずれか一方のみを目的としたものであり、このような繊維を用いた衣料は、依然として吸湿発熱性能に乏しいか、吸湿発熱性能が改善されてはいても、衣料として用いた場合、人体からの熱の逃散阻止能力に乏しいため、持続的な人体からの熱の逃散阻止能力に欠けていた。
本発明は、衣料に、人体からの熱の逃散阻止性能を付与することに着目したものであって、吸湿発熱性と人体からの熱の逃散阻止能力(以下、この二つを合わせて、総合保温性、という)が共に優れた衣料等の素材として好適な紡績糸である。
ここで、総合保温性とは、人間が衣料を着用時に感じる総合的な暖かさ及び体温維持力を示す指標であり、後述するように、繊維の置かれた環境が温度22℃、相対湿度52%RHから、温度22℃、相対湿度90%RHに変化した場合の体温の維持能力を測定して得られる。相対湿度52%RHは、2月の東京の平均湿度(1961〜1990年)であり、相対湿度90%RHは人が運動により汗ばんだ状況を想定している。総合保温性能は、モデル実験として、衣類を着用した状態での皮膚温度を想定した32℃の熱板の温度を維持するために必要なエネルギー量で表される。
本発明の多層構造中空紡績糸は、図2に示すように、多層構造紡績糸の芯層部分が実質的に中空であり、実質的に鞘層部分が中実である。鞘層部分は、単糸繊度0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維が複合されてなる。
中空率は、好ましくは25〜80%、さらに好ましくは30〜70%である。中空率が上記の範囲であると、嵩高性、ソフト性、保温性、接触冷感の低減等の効果が十分となり、また、中空部の形態安定性が良好である。特に、接触冷感の低減は、中空紡績糸の構造と鞘層部分の構成が相俟って初めて発現する機能であり、中空構造とすることにより、鞘層部分の構成のみでは達成できない機能が発現する。また、接触冷感の指標であるQmaxは、100W/m・℃以下が好ましい。
なお、紡績糸の中空率は、次式で表される。
中空率(%)=(S/S)×100
式中、Sは、中空紡績糸の断面積(即ち、繊維部分及び中空部分の合計面積)であり、Sは、中空紡績糸の断面における単繊維間の中空部(単繊維内に形成された中空部は除く)の合計面積である。
従って、一般に云われている、中空繊維の中空率(単繊維の断面に占める中空部の面積割合)とは明確に区別されるものである。以上のような観点から、本発明においては、「実質的に中空部分が紡績糸の芯層部分に形成されており、実質的に中実部分が鞘層部分であり・・・・」のように、「実質的」という表現が用いられている。
本発明の多層構造中空紡績糸は、芯層部分に溶解性繊維を含む多層構造紡績糸から、溶解性繊維を溶解除去することによって得られる。
多層構造紡績糸において、芯層部分に用いる溶解性繊維としては、例えば、水溶性ポリビニルアルコ−ル系繊維や易アルカリ溶解性ポリエステル系繊維等が挙げられ、該溶解性繊維は、熱湯、水又はアルカリ水溶液等により芯層から溶解除去することができる。水溶性繊維としては、特に水溶性ポリビニルアルコ−ル系繊維が好ましい。溶解性繊維は、ステープル状繊維、フィラメント状繊維等いずれを用いてもよい。
本発明において、鞘層部分は疎水性合成繊維及び吸湿発熱性繊維を混紡して構成される。
疎水性合成繊維としては、単糸繊度が0.1〜1.6dtexであり、好ましくは0.5〜1.3dtex、より好ましくは0.5〜1.1dtexである。単糸繊度がこの範囲であると、単繊維間の空隙の径が小さくなるため、通気抵抗が高くなり、デッドエアーが多くなって、熱の逃散阻止能力が向上すると共に、吸湿発熱性繊維の吸湿発熱の効果を長期間持続させることができる。単糸繊度が1.6dtexを越えると、単繊維間の空隙の径が大きくなりすぎて、総合保温性が低下する。また、肌触りがチクチクして着用中に不快感を与える。単糸繊度が0.1dtex未満であると、単繊維の曲げ剛性が低いために、着用中に着圧が付加されることにより実質的な単繊維間空隙量が減少するため、総合保温性が低下する。
総合保温性を更に高めるうえから、疎水性合成繊維として、嵩高加工された疎水性合成繊維を、疎水性合成繊維全量に対して50wt%以上用いることが好ましい。
本発明に用いられる疎水性合成繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリオレフィン系繊維、フッ素系繊維等が挙げられる。なかでも、収縮率が大きく嵩高性に優れるポリアクリル系繊維が総合保温性を高める目的から好ましい。これらの疎水性合成繊維は、ステープル状繊維、フィラメント状繊維等いずれを用いてもよいが、単繊維間の空隙率を高くするためには、ステープル状繊維が好ましい。
本発明に用いられる吸湿発熱性繊維は、環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上であり、好ましくは15J/g以上である。吸湿発熱性繊維は、この繊維を含む紡績糸を用いた繊維製品等において、着用者の皮膚表面から不感蒸泄により出される気体状の汗や、液体状の汗を吸着して発熱する。吸湿発熱量が10J/g以上であれば、総合保温性能向上に有効に寄与することが可能である。
本発明に用いられる吸湿発熱性繊維としては、例えば、再生セルロース繊維(ポリノジックレーヨン、ビスコースレーヨン、銅アンモニア法レーヨン)、精製セルロース繊維(有機溶剤紡糸系セルロース繊維)、カルボキシル基又はアミノ基を有する水溶性ビニル化合物が導入されたセルロースからなる繊維、特公平7−59762号公報に開示されているアクリル酸系吸湿発熱性繊維等が好ましい。ウール等の動物性繊維は、吸湿発熱性能を有するが、一般に後述する単糸繊度が大きいため、本発明に用いられる吸湿発熱性繊維としては好ましくない。
再生セルロース繊維は、他の化学修飾によって吸湿発熱性能を付与した繊維と比較して、機能が永久的に継続するため好ましく、また、ウール等と比較して吸湿発熱のレスポンスが高いため、本発明に用いられる吸湿発熱性繊維として特に好ましい。
本発明の紡績糸に用いられる吸湿発熱性繊維は、単糸繊度が細い方が表面積は増すため、吸湿発熱のレスポンスが速くなると共に、実用上、吸湿発熱温度が高くなる。即ち、吸湿発熱性繊維の能力が充分に発揮できる。単糸繊度は、好ましくは0.6〜2.2dtex、より好ましくは0.8〜1.6dtexである。単糸繊度が上記の範囲であると、肌触りが良好で、吸湿発熱のレスポンス、生産効率が高い。単糸繊度が大きすぎると、吸湿発熱のレスポンスが低下するだけでなく、肌に触れたときにチクチクした感触となる傾向がある。吸湿発熱性繊維は、フィラメント状繊維であってもステープル状繊維であってもよい。
本発明において、鞘層部分における疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合は、質量比で4:1〜1:4であり、好ましくは2:1〜1:2、さらに好ましくは2:1〜1:1である。上記の割合が4:1〜1:4であれば、吸湿により発生した熱量を、疎水性合成繊維が構成する空隙及び芯層部分に形成された中空部に充分に蓄えることができるので、総合保温性能を高度化することが可能である。上記の割合が4:1〜1:4の範囲外では、体温の保持性が不充分となったり、充分な吸湿発熱量が得られない。さらに、疎水性合成繊維を一定割合で混紡することによって、吸湿発熱性繊維単独では、中空構造紡績糸でも達成が困難であった手で触れた瞬間、着用直後の接触冷感が大幅に改善され、総合保温性及び保温感が大幅に向上する。
本発明の紡績糸は、十分な発熱量を得る為に、吸湿発熱性繊維を含有することが必要であるが、吸湿発熱性繊維の種類によって、好ましい含有割合が異なる。例えば、吸湿発熱量16J/gの繊維を用いた場合、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合は2:1〜1:2が好ましく、より好ましくは2:1〜1:1である。吸湿発熱量32J/gの繊維を用いた場合、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合は4:1〜1:2が好ましい。
本発明は、紡績糸を構成要件とするという点も重要である。紡績糸の形態とすることによって、紡績糸を構成する単繊維間に多数の空隙が形成され、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の特性とが相俟って、本発明の紡績糸を用いた織編物および繊維製品の総合保温性が、一層大きく向上する。
本発明において、鞘層部分に、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維以外の他の繊維を50wt%未満の範囲で用いることができる。他の繊維としては、特に制限がなく、繊維製品等に用いられる各種の繊維を用いることができる。
本発明の紡績糸における鞘層部分は、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維が複合されているものであるが、複合形態は限定されるものではなく、例えば、ステープル状繊維同士を混打綿工程、梳綿工程を通過させて混繊したランダムな混紡糸、ステープル状繊維同士を別々にスライバーとし、外層に疎水性合成繊維、内層に吸湿発熱性繊維となるよう配置した鞘層部分が2層構造の紡績糸、ステープル状繊維とフィラメント状繊維による2層構造糸、サイロフィル糸等が挙げられる。
本発明の紡績糸において、撚り係数は、低い方が単繊維間の空隙率が高くなり、総合保温性を高めるために好ましい。また、単糸、双糸、3本撚り糸等であってもよい。
本発明の中空紡績糸は、芯鞘構造を有する多層構造紡績糸の芯成分に存在する溶解性繊維を溶解除去することにより製造することができる。多層構造紡績糸は、通常の方法により製造することができる。例えば、芯鞘成分を別々に供給して混打綿工程、梳綿工程を通過させ、所定の芯鞘比率となるように、芯成分を中央、鞘成分をその両側に配した後に供給・ドラフトし、得られたスライバ−をそのまま紡出して精紡することにより得ることができる。また、芯鞘成分を別々に供給してそれぞれスライバ−となし、所望の芯・鞘比率に合わせて紡出量目を設定した後、芯成分を中央、鞘成分をその周囲に配した後に供給して(又は、芯成分の粗糸と鞘成分の粗糸を1本づつ供給して)精紡することによっても製造することができ、また、芯成分の粗糸を予め精紡し、鞘成分を精紡するとき芯成分の紡績糸をフロントロ−ラ−から供給してもよい。芯成分がフィラメント状繊維であっても同様に精紡することができる。
このようにして得られた多層構造紡績糸を用いて編織された布帛は、布帛形成後、加工段階で溶解繊維を溶解し、中空部を発現させることができる。
本発明の多層構造紡績糸または多層構造中空紡績糸の吸湿発熱量は、3.0J/g以上が好ましく、特に4.5J/g以上が好ましい。このような紡績糸を用いた織編物は、8.0W/m・℃以下という、優れた総合保温性を発揮することができる。
本発明は、軽量で保温性、ソフト性に優れ、特に接触冷感が低減され、かつ、体温を長時間にわたって一定に保持し、体から熱を逃がし難く、総合保温性に優れ、衣料用等の織編物に好適な多層構造紡績糸、芯層が中空である多層構造中空紡績糸、及びそれを用いた織編物を提供することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき、さらに説明するが、本発明はこれにより何等限定されるものではない。
なお、本発明における測定方法、評価方法等は下記の通りである。
(1)繊維及び紡績糸の吸湿発熱量
試料を90℃の乾燥機中に3時間静置して乾燥する。乾燥された試料の質量をW(g)とする。なお、多層構造紡績糸は、芯層部分の水溶性ポリビニルアルコール系繊維を溶解処理した後に、測定に供する。
次いで、十分に乾燥させた試料を用い、示差走査熱量計(DSC)を用いて試料室に窒素ガス(20℃、0%RH)を流し、試料を熱的平衡状態にした後、20℃、相対湿度A(%RH)(但し、A>10)の窒素ガスを流し、発熱開始から熱的平衡に達するまでの総発熱量Q(J)を測定する。
(a)20℃、相対湿度A(%RH)における試料の水分率H(%)を求める。
(%)={(W−W)/W}×100
但し、W(g)は、90℃で3時間乾燥された試料を、20℃、相対湿度A(%RH)の恒温恒湿漕に24時間以上静置後、測定した試料の質量である。
(b)20℃、相対湿度40%RHにおける試料の水分率H40(%)を求める。
40(%)={(W40−W)/W}×100
但し、W40(g)は、90℃で3時間乾燥された試料を、20℃、相対湿度40%RHの恒温恒湿漕に24時間以上静置後、測定した試料の質量である。
(c)20℃、相対湿度90%RHにおける試料の水分率H90(%)を求める。
90(%)={(W90−W)/W}×100
但し、W90(g)は、90℃で3時間乾燥された試料を、20℃、相対湿度90%RHの恒温恒湿漕に24時間以上静置後、測定した試料の質量である。
以上の測定値より、吸湿発熱量は下記式にて求められる。
吸湿発熱量(J/g)=Q×(H90−H40)/(W×H
(2)総合保温性能
下記のようにして試料を調整する。
紡績糸を用い、丸編機(20G21インチ径:福原精機(株)製)によりフライス編地を作成し、ウインス染色機にて、界面活性剤(スコアロール(登録商標):花王(株)製)2g/lを入れて97℃で30分間ボイル処理後、充分に水洗する。これを遠心脱水機で1分間脱水し、しわを手でのばした後、乾燥機に入る大きさに裁断し、60℃の乾燥機内で平干し状態で乾燥させる。得られた編地を15cm角に裁断し、試料とする。
試料を、22℃、52%RHの環境試験室内に1昼夜静置後、下記の方法で総合保温性能を測定する。
22℃、52%RHに設定した恒温恒湿装置内において、試料を32℃の一定温を保つ熱板(サーモラボII(登録商標):カトーテック(株)製)の上にのせ、15分間静置する。この時、試料には15cm/secの整流された空気を真上より流し、一方向に排出させておく。続いて、恒温恒湿装置内の環境を15分間で22℃、90%RHまで変化させ、その後、15分間静置する。
湿度を変化させ始めた時点から30分間にわたり、試料をのせた熱板の温度を32℃に保つのに必要な電力を計測し、1分あたりの平均値をもって、保温性能を表す。単位はW/m・℃である。この数値が小さいほど、総合保温性能が優れていることを表す。
(3)接触冷感
上記(2)で調整した測定試料を7cm角に裁断し、20℃、65%RHの環境に1昼夜放置後に測定する。サーモラボII(登録商標):カトーテック(株)製を用いて、20℃、65%RH環境下で、所定の方法によりQmaxを測定する。Qmaxの値が小さいほど、接触冷感が小さいことを表す。
(4)生地の厚み及び目付け
JIS−L−1018に準じて測定する。
(5)剛軟度
JIS−L−1096Eに準じて測定する。
(6)紡績糸の中空率(%)
紡績糸の断面を電子顕微鏡で撮影した写真の上に、トレース紙をセットして紡績糸断面の全体及び中空部分(単繊維内の中空部を除く)を写しとり、鋏でトレース紙における紡績糸断面全体の部分を切り取って、その質量S(g)を測定し、さらに中空部分を切り取ってその質量S(g)を測定する。サンプル数n=5の平均値を求め、紡績糸の中空率を算出する。
中空率(%)=(S/S)×100
〔実施例1〕
芯層部分として、水溶性ポリビニルアルコール系繊維(溶剤系PVA繊維、水溶解温度60℃、単繊維繊度1.7dtex、繊維長38mm:(株)クラレ製、)の原綿を用いた。鞘層部分は、疎水性合成繊維として、単繊維繊度1.0dtex、繊維長38mmの抗ピリング性アクリル繊維(カシミロン(登録商標):旭化成(株)製)を用い、吸湿発熱性繊維として、単繊維繊度1.4dtex、繊維長38mm、吸湿発熱量16J/gの銅アンモニア法レーヨン(ベンベルグ(登録商標):旭化成(株)製)を用い、前者と後者を質量比で2:1の割合で複合して、鞘層部分とした。
次いで、芯層部分20wt%、鞘層部分80wt%で混紡し、40/1の2層構造紡績糸を製造した。
〔実施例2及び3〕
疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合を3:1(実施例2)、1:3(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして、40/1の2層構造紡績糸を製造した。
〔実施例4〕
吸湿発熱性繊維として、吸湿発熱量16J/g、56dtex30フィラメントの銅アンモニア法レーヨン(ベンベルグ(登録商標):旭化成(株)製)を用い、疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維を7:3の割合で、サイロフィル法により、複合した以外は、実施例1と同様にして、40/1の2層構造紡績糸を製造した。
〔比較例1及び2〕
疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合を5:1(比較例1)、1:5(比較例2)とした以外は、実施例1と同様にして、40/1の2層構造紡績糸を製造した。
〔比較例3〕
疎水性合成繊維として、単繊維繊度1.0dtex、繊維長38mmの抗ピリング性アクリル繊維(カシミロン(登録商標):旭化成(株)製)を用い、吸湿発熱性繊維として、単繊維繊度1.4dtex、繊維長38mm、吸湿発熱量16J/gの銅アンモニア法レーヨン(ベンベルグ(登録商標):旭化成(株)製)を用いて、前者と後者を2:1の割合で混紡して、綿番40/1の紡績糸を製造した。
以上の実施例1〜4及び比較例1〜3で得た紡績糸の構成、及びそれらの紡績糸からなる丸編地の編地特性(総合保温性、接触冷感、厚み、目付け、剛軟度)を評価した結果を表1に示す。
Figure 0004320231
表1から判るように、本発明によれば、保温性に優れ、軽量、ソフトな編み地が得られる。実施例1〜3と比較例1、2の結果より、鞘層部分の疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合を最適にすることにより、総合保温性と接触冷感共に良好にすることが可能である。
比較例1の如く、疎水性合成繊維が過剰であると、吸湿発熱の寄与がないため、総合保温性が劣る。また、比較例2の如く、吸湿発熱性繊維が過剰であると、体温の逃散阻止能力が低いため、総合保温性に劣り、かつ、接触冷感が大きくなる。
また、実施例1と比較例3の結果より、鞘層部分の疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合を最適にしただけでは、総合保温性は優れるものの、接触冷感が大きく、着用直後のひんやり感があり、着用感に劣る。従って、総合保温性と接触冷感を共に良好にするためには、鞘層部分の疎水性合成繊維と吸湿発熱性繊維の割合を最適にするだけでなく、中空構造とすることが重要であることが判る。
本発明の紡績糸は、編物、織物等の布帛に好適に用いることができる。得られた布帛は、縫製品として、例えば、肌着、パジャマ等の衣料、毛布、スカーフ、マフラー、帽子、手袋、靴下、座布団等に使用することにより、人の体温を積極的に維持し守るために有効に働く。また、本発明の紡績糸を、布帛及び縫製品の一部に用いてもよい。
本発明の多層構造紡績糸の断面を模式的に示す図である。 本発明の多層構造中空紡績糸の断面を模式的に示す図である。
符号の説明
1…溶解性繊維
2…疎水性合成繊維
3…吸湿発熱性繊維

Claims (5)

  1. 芯層と鞘層の多層構造を有する紡績糸であって、芯層部分は少なくとも溶解性繊維を含み、鞘層部分は単糸繊度が0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる、多層構造紡績糸。
  2. 多層構造を有する中空紡績糸であって、実質的に中空部分が紡績糸の芯層部分に形成されており、実質的に中実部分が鞘層部分であり、該鞘層部分が単糸繊度0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる、多層構造中空紡績糸。
  3. 芯層と鞘層の多層構造を有し、芯層部分が少なくとも溶解性繊維を含み、鞘層部分は単糸繊度が0.1〜1.6dtexの疎水性合成繊維及び環境を20℃、40%RHから20℃、90%RHに変化させた時の吸湿発熱量が10J/g以上である吸湿発熱性繊維を4:1〜1:4の割合で複合してなる多層構造紡績糸を、溶解処理して溶解性繊維を除去し、芯層に中空部分を形成する工程を有する、芯層部に中空部分を有する多層構造中空紡績糸の製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の紡績糸を用いてなる織編物。
  5. 請求項1または2に記載の紡績糸を用いてなる織編物の繊維製品。
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