JP2004300584A - 保温品 - Google Patents
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Abstract
【課題】吸汗性、速乾性を向上させると共に、発汗によって濡れた時の冷え感を抑えた動物性繊維による保温品を提供する。
【解決手段】動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品で、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が肌側に含まれた生地からなる。具体例としてアクリル酸系繊維の短繊維を30重量%、ポリエステル短繊維を70重量%で混綿工程時に混紡した混紡糸を34重量%、メリノウール紡績糸を32重量%、ポリエステル紡績糸を34重量%からなり、これにアクリル酸系繊維の短繊維とポリエステル短繊維からなる混紡糸を肌面に配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地からなる保温品が挙げられている。
【選択図】 図2
【解決手段】動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品で、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が肌側に含まれた生地からなる。具体例としてアクリル酸系繊維の短繊維を30重量%、ポリエステル短繊維を70重量%で混綿工程時に混紡した混紡糸を34重量%、メリノウール紡績糸を32重量%、ポリエステル紡績糸を34重量%からなり、これにアクリル酸系繊維の短繊維とポリエステル短繊維からなる混紡糸を肌面に配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地からなる保温品が挙げられている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物性繊維の吸汗性、速乾性を向上させると共に、発汗によって濡れた時の冷え感を抑えた保温品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウール、カシミヤ、アンゴラ等の動物性繊維からなる保温品は防寒用として古くから着用されてきた。しかし、動物性繊維は繊維自体に吸水性が少ないために、直接肌に着用して運動等で発汗した場合に、肌に汗が残り不快に感じることがあった。そこで、動物性繊維自身に吸水性を付与し、吸汗性を改善しようとする試みがなされている。さらに、湿潤時に冷感を感じないように、動物性繊維に発熱性を付与しようとする試みもなされている。
動物性繊維に吸水性を付与する方法としては、ポリエステル、アクリル等の合成繊維に吸水性を付与する場合と同様に、染色後の後処理工程で吸汗剤を含んだ薬剤に生地を浸漬した後に乾燥する方法が一般的であり、この方法が多く用いられている。
【0003】
(特許文献1)には、羊毛繊維を親水化する方法として、羊毛の最外殻のスケールを形成するクチクルに紫外線を照射して変質させ、スケール間の隙間を大きくし、親水性樹脂の羊毛繊維への浸透を容易にし、羊毛繊維を親水化する方法が開示されている。
また、(特許文献2)には、獣毛蛋白質系繊維表面を、酸化剤による酸化反応によりアニオン化し、次いでカチオン性樹脂化合物を含有する水溶液に浸漬し、搾液、乾燥を行った後、アニオン系高吸湿性化合物を含有する水溶液に浸漬、搾液、乾燥を行うことにより発熱性を高めた獣毛蛋白質系繊維の製造方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−101168号公報
【特許文献2】
特開平2002−13075号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(特許文献1)に記載の吸水性を付与した羊毛は、発汗が少ない状態では問題は無いものの、一般に吸水性を付与した動物性繊維は吸水性を付与したポリエステルに比べ速乾性に劣っているため、発汗が多くなると処理しきれない汗が液滴の状態で生地上に残ってしまい、それが肌に触れた時に冷え(汗冷え)を感じるという問題点があった。
また、(特許文献2)に記載の発熱性を高めた獣毛蛋白質系繊維では、吸湿することにより発熱するため、汗の気化熱による冷えを感じることはないものの、吸水性がほとんどないため、汗は液滴の状態で生地上に残り、汗冷えによる不快感を感じるという問題点があった。
そこで本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、吸汗性、速乾性を向上させると共に、発汗によって濡れた時の冷え感を抑えた動物性繊維による保温品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段を以下に述べる。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維、又はアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維及び疎水性合成繊維が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、動物性繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が少なくとも肌側に含まれる生地で構成される。こうすることで、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が人体から発生する汗を吸水して発熱するので汗冷えを防ぎ、疎水性合成繊維が汗を吸水拡散するため生地上に汗が残りにくくなり、快適な着用感が得られる。
この場合の生地中の混率は動物性繊維が15〜80重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が5〜30重量%、疎水性合成繊維が15〜80重量%であることが好ましい。
【0008】
アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を生地の少なくとも肌側に含ませる方法としては、疎水性合成繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との混紡糸、又は動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との混紡糸を使用することも可能である。混紡糸における混率は、前者の場合は、疎水性合成繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。また後者の場合は、動物性繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
【0009】
或いは、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸を使用することも可能である。この場合の混率は、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%になることが好ましい。動物性繊維及び疎水性合成繊維の重量%については、両者の重量%の合計が60〜90重量%の範囲内にあればよい。
【0010】
さらに、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を生地の少なくとも肌側に含ませる方法として、疎水性合成繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との中空混紡糸、又は動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との中空混紡糸を使用することも可能である。中空混紡糸は、糸中に多くの空気を保持できる構造であるため、吸水によってアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維から発生した熱を中空混紡糸中に保持できるので、保温性を高めることができる。中空混紡糸における混率は、前者の場合は、疎水性合成繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。また後者の場合は、動物性繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
【0011】
或いは、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる中空混紡糸を使用することも可能である。この場合の混率は、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%になることが好ましい。動物性繊維及び疎水性合成繊維の重量%については、両者の重量%の合計が60〜90重量%の範囲内にあればよい。
【0012】
動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸を用いることで、他の糸を入れなくても生地を作成することが可能である。
【0013】
前記の生地及び混紡糸の説明では、重量%を用いて各繊維の混率を表したが、それぞれの重量%の値は各上限値と下限値の範囲内にあり、且つそれぞれの値の合計が100(重量%)となるように設定される。
【0014】
以上説明した各種の生地は、染色中もしくは染色後の仕上げ加工の段階で吸水加工を施して生地の吸水性を向上させることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維について説明する。アクリロニトリル(以下、ANという)を40重量%以上、好ましくは50重量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維を出発繊維として、ニトリル基をアルカリ又は酸で加水分解し、カルボキシル基等の親水性の官能基に置換するのと同時に、ヒドラジン等で架橋してつくられている。ここで、AN重合体は、AN単重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い。
【0016】
AN共重合体に用いられる他の単量体としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体及びその塩、メタアクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体及びその塩、アクリルイミド、スチレン、酢酸ビニルなどの単量体をあげることができるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
以上のアクリル酸系繊維に、ヒドラジン系化合物を架橋剤として導入する方法が適用される。この方法においては、窒素含有量の増加を1.0〜10.0重量%に調整し、ヒドラジン系化合物の濃度を5〜60重量%、温度を50〜120℃、5時間以内の条件で処理する。この方法は工業的に好ましい。
【0017】
ここで、窒素含有量の増加とは、原料のアクリル酸系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物を架橋剤として導入された状態のアクリル酸系繊維の窒素含有量との差をいう。この窒素含有量の増加が、上記の下限(1.0重量%)に満たない場合は、最終的に満足し得る物性の繊維を得ることができず、さらに難燃性、抗菌性などの特性を得ることができない。また、窒素含有量の増加が上記の上限(10.0重量%)を超えた場合には、高吸湿性は得られない。
【0018】
したがって、ここで使用するヒドラジン系化合物としては、窒素含有量の増加が上記の範囲となるような化合物であればとくに限定されない。このようなヒドラジン系化合物としては、例えば、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイト等や、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン酸のアミン基を複数個含有する化合物を挙げることができる。
【0019】
なお、この架橋工程においては、ヒドラジン系化合物が加水分解反応により架橋されずに残存した状態のニトリル基を実質的に消失させるとともに、1.0〜4.5meq/gの塩型カルボキシル基と残部にアミド基を導入する方法が適用される。その方法としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸の水溶液を含浸させるか、又はその水溶液中に原料繊維を浸漬した状態で加熱処理する方法、或いは、上記した架橋剤の導入と同時に加水分解を起す方法を用いることができる。
【0020】
このアクリル酸系繊維で繊維自体が高架橋構造になっており非晶領域が小さく、隙間の少ない繊維構造となっており、吸湿時に膨潤しにくく、吸放湿性が大きい特徴を有している。架橋度の強弱、親水性官能基の多寡で吸放湿性、繊維強度をある程度制御することが可能である。親水性官能基が多ければ吸放湿性は高いが繊維強度は弱くなる。このアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維は、吸湿時に吸湿発熱するので、衣類にした時に常時汗をかいた場合でも吸放湿を繰り返し、発熱することにより暖かさを持続させることができる。この繊維そのものは、東洋紡績社製アクリル酸系繊維(商品名“N−38”)として販売されており、また、スポーツ衣類としては美津濃社製商品名“ブレスサーモ”として販売されている。
【0021】
本発明品で用いられる混紡糸及び中空混紡糸の製法について説明する。紡績工程については、上記アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を疎水性合成繊維、又は動物性繊維と混紡して混紡糸とするが、紡績工程、設備は一般的なものが用いられる。紡績工程は、混打綿、カード、コーマー、練条、粗紡、精紡の各工程がある。混打綿工程は繊維に物理的力を加えることで、繊維を解きほぐすのと同時に原綿に付着しているゴミ、カス等を除去する。また、異なる繊維を混紡する場合には、所定の混率になるようにこの工程で繊維を均一になるように混合する。カード工程は、解きほぐされた繊維をある程度平行状態にし、薄い繊維状の層をつくり、これをあつめてひも状のスライバーをつくる工程である。コーマー工程は、カード工程でできたスライバーをさらにくしけずることで繊維の長さを均一化し、繊維の平行度をさらに上げ、糸の品質をより向上させる工程で糸の品質によっては省略されることもある。練条工程は、複数本数のスライバーを併合して引伸し、均整にして繊維を平行にそろえる工程で、異なる繊維の混紡にも用いられる。粗紡工程は、練条工程でつくられた均整なスライバーを精紡工程で精紡機にかけられるようにさらに引伸ばし、取り扱い易いように少し撚りをかけてボビンに巻き取る工程である。精紡工程は、粗糸をドラフトして加撚し、糸にする最終工程である。
【0022】
中空混紡糸の製造方法として、混打綿工程でアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維からなる混合綿と水溶性ビニロンからなる綿を別々に作製する。次にカード、コーマー工程を経て、水溶性ビニロンが入っているスライバーと入っていないスライバーをそれぞれ作製する。その後、練条工程で前記2種類の異なるスライバーを用いて、水溶性ビニロンが含有していないスライバーが外側に、水溶性ビニロンからなるスライバーが内側に存在するように混合する。その後、粗紡、リング精紡工程を経て水溶性ビニロン繊維が芯部、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維が鞘部に配置された芯鞘構造混紡糸とすることができる。この芯鞘構造混紡糸を使用して編物、織物等所望の生地の一部として構成し、その生地を染色する際の染色浴中の熱で芯部の水溶性ビニロンが溶け出し鞘部だけが残り、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維からなる中空紡績糸とすることができる。
【0023】
同様の方法で、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と動物性繊維、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維と動物性繊維からなる中空紡績糸を製造できる。
【0024】
本発明に用いられる生地の組織について説明する。本発明に用いられる生地は織物又は編物等で特に組織は限定しない。織物の糸使いは、双糸又は引き揃えて経糸又緯糸として用いることも可能である。 織物の場合、経糸の配列として、前記発熱性を有する糸:その他の糸=1:1、1:2、1:3、1:4として用いることも可能であり、又は、緯糸としてその他の糸を用いても良い。更に、経糸に前記混紡糸又は中空混紡糸を用い、緯糸にその他の糸を用いてもよい。具体的には、平織、綾織、朱子織の基本組織とそれらから誘導された変化組織、片二重織、二重織等の重ね組織、コール天、ビロード等のパイル織組織等があげられる。編物の場合、丸編み、横編、トリコット経編、ラッセル経編などのいずれの編物であってもよい。
【0025】
上記織物及び編物からなる保温品としては、織物シャツ、ニットシャツ、スポーツ衣料、靴下、肌着、裏地、布団側地、座布団、椅子の側地、帽子、手袋、セーター、スラックス、スカート、アンダー類などが挙げられる。
【0026】
【実施例】
(実施例1)アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維(製品名:N−38)の短繊維を30%(以下%は重量%のことである)、ポリエステル短繊維を70%で混綿工程時に混紡した混紡糸(綿番手40番単糸)を34%、メリノウール紡績糸(毛番手72番双糸)を32%、ポリエステル紡績糸(綿番手40番単糸)を34%からなり、N−38短繊維とポリエステル短繊維からなる混紡糸を肌面に配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製した。生地染色後の仕上げ加工の際に吸水加工を施し生地に吸水性を付与した。生地の混率はウール32%、ポリエステル58%、N−38は10%である。
【0027】
(比較例1)メリノウールの紡績糸100%(毛番手72番双糸)からなる目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
(比較例2)メリノウールの紡績糸(毛番手72番双糸)50%、ポリエステル紡績糸50%からなり、2つの紡績糸を引き揃えて肌面にポリエステル紡績糸を配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
(比較例3)メリノウール短繊維を70%、N−38短繊維を30%からなる混紡糸(綿番手40番単糸)を33%、メリノウールの紡績糸を67%からなり、肌面にメリノウール短繊維とN−38短繊維からなる混紡糸を配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
【0028】
(実験1)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地からなる衣服の着用を想定した時の発汗における汗冷えをシミュレーションする実験を行なった。汗冷え感シミュレーション装置はKES−F7サーモラボIIを使用した。この装置は保温用電熱部、熱量計測用電熱部、試料台から構成され、測定していない時は保温用電熱部の上に熱量計測用電熱部を置いておく。試料生地を試料台に設置し、熱量計測用電熱部を試料生地の上に置くことで電熱部から奪われた熱量の最大値であるQmax(J/cm2*sec)を計測する。Qmax(J/cm2*sec)は試料生地の熱伝導性の指標である。Qmaxが大きい生地ほど熱伝導性が良く、人体皮膚に生地が触れたときに冷感を感じる。20℃、65%RHの環境のもとで乾燥状態の生地と湿潤状態(含水率20%)の生地のQmaxを測定した。
【0029】
湿潤状態の生地とは、人工汗液を噴霧器で均一に含水率20%になるように散布することで発汗して衣服が汗で湿潤した状態を再現したものである。
結果を図1、2に示す。乾燥状態では4種類の生地共にQmaxは低い値が計測された。これは熱伝導率と比熱の低さが特徴であるウールが電熱部に触れているからである。このことから乾燥時では4種類の生地共に冷えを感じることはないことを示している。
【0030】
湿潤状態(含水率20%)では実施例1は比較例1、比較例2、比較例3のQmaxよりも低くなっている。これは吸水性を付与したポリエステルが汗を吸水拡散したこと、及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸水し発熱したことがQmaxが低くなった原因と考えられる。比較例1では生地が処理しきれない汗が液滴の状態で生地上に残るので、汗の水分による冷えのためQmaxは大きくなった。比較例2は吸水性を付与したポリエステルによる汗の吸水拡散で水分による冷えは抑えられるが、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維による発熱がないためにQmaxは大きくなった。比較例3はアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸湿することにより発熱するが、ウールの吸水性の悪さによって、液滴の状態で汗が生地上に残り、汗の水分による冷えのためにQmaxは大きくなった。
すなわち、実施例1が湿潤時においては最もQmaxが低く、汗冷え感がないといえる。
【0031】
(実験2)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地の吸水性能試験を行った。実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の生地を10回洗濯した後、試料生地の裏側にそれぞれ水滴を落とし、滴下した水が生地上で拡散して、濡れた状態なるまでの時間を表1に示す。水が生地上で拡散して、濡れた状態なるまでの時間が短いほど、吸水性が良く、生地上に汗が残らないことを示している。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1では水滴が生地に落ちると同時に拡散するため、計測時間は0秒であった。比較例1は吸水加工をしているが、通常の吸水性が優れている生地では0秒であるので、比較例1は非常に吸水性が悪いことが分かる。比較例2はポリエステルが入っているため、比較例1に比べて吸水性が良いものの、ウールが吸水性を阻んでいるので、吸水性は実施例1ほど良くはない。ポリエステルの混率を高めると、吸水性は向上するが、実験1の汗冷え感は増大するため、ポリエステルと羊毛からなる生地は吸水性と汗冷え感を両立することができない。比較例3ではアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸水をするが、混率がウールに比べて低いためにほとんど水滴を拡散することがなかった。このことから、比較例1、比較例2、比較例3では生地上に汗が残りやすく、汗冷えを感じやすいといえる。実施例1では汗冷えが起こりにくいことが分かる。
【0034】
(実験3)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地からなるアンダーシャツを着用して25℃40%RH環境下で安静5分、トレッドミルによる軽いランニング20分、安静10分の着用試験をそれぞれのシャツに対して行った。被験者は健康な成年男子1名で、試験終了後にアンケートを行った。表2は着用テストの結果である。
【0035】
【表2】
【0036】
表2において、蒸れ感、べたつき感、冷え感は「かなりある」「ややある」「普通」「ややない」「全くない」の5段階で評価した。総合的な着用感は「不快」「やや不快」「普通」「やや快適」「快適」の5段階で評価した。
実施例1について蒸れ感、べたつき感、冷え感は全くないのに対して、比較例1、比較例2、比較例3では評価の低い項目があった。実施例1ではウール、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維、ポリエステルの短所をお互いが上手く作用することにより長所に変えているため、このような結果になったと思われる。比較例1、2は処理しきれないほどの汗のため、べたつき感や冷え感があったと考えられる。比較例3ではアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維は吸水をするが、混率がウールに比べて低いためにほとんど汗を吸水しなかったため、べたつき感や冷え感があった。総合的な着用感でも実施例1に優位性が見られた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の保温品によれば、動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維の混率を調節することにより、汗冷えによる人体の冷えを防ぎ、常に快適な温度を保つことのできる保温品とすることができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は乾燥状態の汗冷え測定試験結果である。
【図2】図2は湿潤状態の汗冷え測定試験結果である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、動物性繊維の吸汗性、速乾性を向上させると共に、発汗によって濡れた時の冷え感を抑えた保温品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ウール、カシミヤ、アンゴラ等の動物性繊維からなる保温品は防寒用として古くから着用されてきた。しかし、動物性繊維は繊維自体に吸水性が少ないために、直接肌に着用して運動等で発汗した場合に、肌に汗が残り不快に感じることがあった。そこで、動物性繊維自身に吸水性を付与し、吸汗性を改善しようとする試みがなされている。さらに、湿潤時に冷感を感じないように、動物性繊維に発熱性を付与しようとする試みもなされている。
動物性繊維に吸水性を付与する方法としては、ポリエステル、アクリル等の合成繊維に吸水性を付与する場合と同様に、染色後の後処理工程で吸汗剤を含んだ薬剤に生地を浸漬した後に乾燥する方法が一般的であり、この方法が多く用いられている。
【0003】
(特許文献1)には、羊毛繊維を親水化する方法として、羊毛の最外殻のスケールを形成するクチクルに紫外線を照射して変質させ、スケール間の隙間を大きくし、親水性樹脂の羊毛繊維への浸透を容易にし、羊毛繊維を親水化する方法が開示されている。
また、(特許文献2)には、獣毛蛋白質系繊維表面を、酸化剤による酸化反応によりアニオン化し、次いでカチオン性樹脂化合物を含有する水溶液に浸漬し、搾液、乾燥を行った後、アニオン系高吸湿性化合物を含有する水溶液に浸漬、搾液、乾燥を行うことにより発熱性を高めた獣毛蛋白質系繊維の製造方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−101168号公報
【特許文献2】
特開平2002−13075号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(特許文献1)に記載の吸水性を付与した羊毛は、発汗が少ない状態では問題は無いものの、一般に吸水性を付与した動物性繊維は吸水性を付与したポリエステルに比べ速乾性に劣っているため、発汗が多くなると処理しきれない汗が液滴の状態で生地上に残ってしまい、それが肌に触れた時に冷え(汗冷え)を感じるという問題点があった。
また、(特許文献2)に記載の発熱性を高めた獣毛蛋白質系繊維では、吸湿することにより発熱するため、汗の気化熱による冷えを感じることはないものの、吸水性がほとんどないため、汗は液滴の状態で生地上に残り、汗冷えによる不快感を感じるという問題点があった。
そこで本発明は、前記従来技術の問題点を解決し、吸汗性、速乾性を向上させると共に、発汗によって濡れた時の冷え感を抑えた動物性繊維による保温品を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための手段を以下に述べる。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維、又はアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維及び疎水性合成繊維が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、動物性繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明に係る保温品は、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が少なくとも肌側に含まれる生地で構成される。こうすることで、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が人体から発生する汗を吸水して発熱するので汗冷えを防ぎ、疎水性合成繊維が汗を吸水拡散するため生地上に汗が残りにくくなり、快適な着用感が得られる。
この場合の生地中の混率は動物性繊維が15〜80重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が5〜30重量%、疎水性合成繊維が15〜80重量%であることが好ましい。
【0008】
アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を生地の少なくとも肌側に含ませる方法としては、疎水性合成繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との混紡糸、又は動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との混紡糸を使用することも可能である。混紡糸における混率は、前者の場合は、疎水性合成繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。また後者の場合は、動物性繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
【0009】
或いは、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸を使用することも可能である。この場合の混率は、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%になることが好ましい。動物性繊維及び疎水性合成繊維の重量%については、両者の重量%の合計が60〜90重量%の範囲内にあればよい。
【0010】
さらに、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を生地の少なくとも肌側に含ませる方法として、疎水性合成繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との中空混紡糸、又は動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維との中空混紡糸を使用することも可能である。中空混紡糸は、糸中に多くの空気を保持できる構造であるため、吸水によってアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維から発生した熱を中空混紡糸中に保持できるので、保温性を高めることができる。中空混紡糸における混率は、前者の場合は、疎水性合成繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。また後者の場合は、動物性繊維が60〜90重量%、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%の範囲内であることが好ましい。
【0011】
或いは、動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる中空混紡糸を使用することも可能である。この場合の混率は、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が10〜40重量%になることが好ましい。動物性繊維及び疎水性合成繊維の重量%については、両者の重量%の合計が60〜90重量%の範囲内にあればよい。
【0012】
動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸又は中空混紡糸を用いることで、他の糸を入れなくても生地を作成することが可能である。
【0013】
前記の生地及び混紡糸の説明では、重量%を用いて各繊維の混率を表したが、それぞれの重量%の値は各上限値と下限値の範囲内にあり、且つそれぞれの値の合計が100(重量%)となるように設定される。
【0014】
以上説明した各種の生地は、染色中もしくは染色後の仕上げ加工の段階で吸水加工を施して生地の吸水性を向上させることが好ましい。
【0015】
本発明に用いられるアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維について説明する。アクリロニトリル(以下、ANという)を40重量%以上、好ましくは50重量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維を出発繊維として、ニトリル基をアルカリ又は酸で加水分解し、カルボキシル基等の親水性の官能基に置換するのと同時に、ヒドラジン等で架橋してつくられている。ここで、AN重合体は、AN単重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い。
【0016】
AN共重合体に用いられる他の単量体としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体及びその塩、メタアクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体及びその塩、アクリルイミド、スチレン、酢酸ビニルなどの単量体をあげることができるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
以上のアクリル酸系繊維に、ヒドラジン系化合物を架橋剤として導入する方法が適用される。この方法においては、窒素含有量の増加を1.0〜10.0重量%に調整し、ヒドラジン系化合物の濃度を5〜60重量%、温度を50〜120℃、5時間以内の条件で処理する。この方法は工業的に好ましい。
【0017】
ここで、窒素含有量の増加とは、原料のアクリル酸系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物を架橋剤として導入された状態のアクリル酸系繊維の窒素含有量との差をいう。この窒素含有量の増加が、上記の下限(1.0重量%)に満たない場合は、最終的に満足し得る物性の繊維を得ることができず、さらに難燃性、抗菌性などの特性を得ることができない。また、窒素含有量の増加が上記の上限(10.0重量%)を超えた場合には、高吸湿性は得られない。
【0018】
したがって、ここで使用するヒドラジン系化合物としては、窒素含有量の増加が上記の範囲となるような化合物であればとくに限定されない。このようなヒドラジン系化合物としては、例えば、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネイト等や、エチレンジアミン、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン酸のアミン基を複数個含有する化合物を挙げることができる。
【0019】
なお、この架橋工程においては、ヒドラジン系化合物が加水分解反応により架橋されずに残存した状態のニトリル基を実質的に消失させるとともに、1.0〜4.5meq/gの塩型カルボキシル基と残部にアミド基を導入する方法が適用される。その方法としては、アルカリ金属水酸化物、アンモニア等の塩基性水溶液、あるいは硝酸、硫酸、塩酸などの鉱酸の水溶液を含浸させるか、又はその水溶液中に原料繊維を浸漬した状態で加熱処理する方法、或いは、上記した架橋剤の導入と同時に加水分解を起す方法を用いることができる。
【0020】
このアクリル酸系繊維で繊維自体が高架橋構造になっており非晶領域が小さく、隙間の少ない繊維構造となっており、吸湿時に膨潤しにくく、吸放湿性が大きい特徴を有している。架橋度の強弱、親水性官能基の多寡で吸放湿性、繊維強度をある程度制御することが可能である。親水性官能基が多ければ吸放湿性は高いが繊維強度は弱くなる。このアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維は、吸湿時に吸湿発熱するので、衣類にした時に常時汗をかいた場合でも吸放湿を繰り返し、発熱することにより暖かさを持続させることができる。この繊維そのものは、東洋紡績社製アクリル酸系繊維(商品名“N−38”)として販売されており、また、スポーツ衣類としては美津濃社製商品名“ブレスサーモ”として販売されている。
【0021】
本発明品で用いられる混紡糸及び中空混紡糸の製法について説明する。紡績工程については、上記アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を疎水性合成繊維、又は動物性繊維と混紡して混紡糸とするが、紡績工程、設備は一般的なものが用いられる。紡績工程は、混打綿、カード、コーマー、練条、粗紡、精紡の各工程がある。混打綿工程は繊維に物理的力を加えることで、繊維を解きほぐすのと同時に原綿に付着しているゴミ、カス等を除去する。また、異なる繊維を混紡する場合には、所定の混率になるようにこの工程で繊維を均一になるように混合する。カード工程は、解きほぐされた繊維をある程度平行状態にし、薄い繊維状の層をつくり、これをあつめてひも状のスライバーをつくる工程である。コーマー工程は、カード工程でできたスライバーをさらにくしけずることで繊維の長さを均一化し、繊維の平行度をさらに上げ、糸の品質をより向上させる工程で糸の品質によっては省略されることもある。練条工程は、複数本数のスライバーを併合して引伸し、均整にして繊維を平行にそろえる工程で、異なる繊維の混紡にも用いられる。粗紡工程は、練条工程でつくられた均整なスライバーを精紡工程で精紡機にかけられるようにさらに引伸ばし、取り扱い易いように少し撚りをかけてボビンに巻き取る工程である。精紡工程は、粗糸をドラフトして加撚し、糸にする最終工程である。
【0022】
中空混紡糸の製造方法として、混打綿工程でアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維からなる混合綿と水溶性ビニロンからなる綿を別々に作製する。次にカード、コーマー工程を経て、水溶性ビニロンが入っているスライバーと入っていないスライバーをそれぞれ作製する。その後、練条工程で前記2種類の異なるスライバーを用いて、水溶性ビニロンが含有していないスライバーが外側に、水溶性ビニロンからなるスライバーが内側に存在するように混合する。その後、粗紡、リング精紡工程を経て水溶性ビニロン繊維が芯部、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維が鞘部に配置された芯鞘構造混紡糸とすることができる。この芯鞘構造混紡糸を使用して編物、織物等所望の生地の一部として構成し、その生地を染色する際の染色浴中の熱で芯部の水溶性ビニロンが溶け出し鞘部だけが残り、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維からなる中空紡績糸とすることができる。
【0023】
同様の方法で、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と動物性繊維、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維と疎水性合成繊維と動物性繊維からなる中空紡績糸を製造できる。
【0024】
本発明に用いられる生地の組織について説明する。本発明に用いられる生地は織物又は編物等で特に組織は限定しない。織物の糸使いは、双糸又は引き揃えて経糸又緯糸として用いることも可能である。 織物の場合、経糸の配列として、前記発熱性を有する糸:その他の糸=1:1、1:2、1:3、1:4として用いることも可能であり、又は、緯糸としてその他の糸を用いても良い。更に、経糸に前記混紡糸又は中空混紡糸を用い、緯糸にその他の糸を用いてもよい。具体的には、平織、綾織、朱子織の基本組織とそれらから誘導された変化組織、片二重織、二重織等の重ね組織、コール天、ビロード等のパイル織組織等があげられる。編物の場合、丸編み、横編、トリコット経編、ラッセル経編などのいずれの編物であってもよい。
【0025】
上記織物及び編物からなる保温品としては、織物シャツ、ニットシャツ、スポーツ衣料、靴下、肌着、裏地、布団側地、座布団、椅子の側地、帽子、手袋、セーター、スラックス、スカート、アンダー類などが挙げられる。
【0026】
【実施例】
(実施例1)アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維(製品名:N−38)の短繊維を30%(以下%は重量%のことである)、ポリエステル短繊維を70%で混綿工程時に混紡した混紡糸(綿番手40番単糸)を34%、メリノウール紡績糸(毛番手72番双糸)を32%、ポリエステル紡績糸(綿番手40番単糸)を34%からなり、N−38短繊維とポリエステル短繊維からなる混紡糸を肌面に配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製した。生地染色後の仕上げ加工の際に吸水加工を施し生地に吸水性を付与した。生地の混率はウール32%、ポリエステル58%、N−38は10%である。
【0027】
(比較例1)メリノウールの紡績糸100%(毛番手72番双糸)からなる目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
(比較例2)メリノウールの紡績糸(毛番手72番双糸)50%、ポリエステル紡績糸50%からなり、2つの紡績糸を引き揃えて肌面にポリエステル紡績糸を配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
(比較例3)メリノウール短繊維を70%、N−38短繊維を30%からなる混紡糸(綿番手40番単糸)を33%、メリノウールの紡績糸を67%からなり、肌面にメリノウール短繊維とN−38短繊維からなる混紡糸を配置した目付190g/m2の天竺組織のニット生地を作製し、実施例1と同様の加工で吸水性を付与させた。
【0028】
(実験1)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地からなる衣服の着用を想定した時の発汗における汗冷えをシミュレーションする実験を行なった。汗冷え感シミュレーション装置はKES−F7サーモラボIIを使用した。この装置は保温用電熱部、熱量計測用電熱部、試料台から構成され、測定していない時は保温用電熱部の上に熱量計測用電熱部を置いておく。試料生地を試料台に設置し、熱量計測用電熱部を試料生地の上に置くことで電熱部から奪われた熱量の最大値であるQmax(J/cm2*sec)を計測する。Qmax(J/cm2*sec)は試料生地の熱伝導性の指標である。Qmaxが大きい生地ほど熱伝導性が良く、人体皮膚に生地が触れたときに冷感を感じる。20℃、65%RHの環境のもとで乾燥状態の生地と湿潤状態(含水率20%)の生地のQmaxを測定した。
【0029】
湿潤状態の生地とは、人工汗液を噴霧器で均一に含水率20%になるように散布することで発汗して衣服が汗で湿潤した状態を再現したものである。
結果を図1、2に示す。乾燥状態では4種類の生地共にQmaxは低い値が計測された。これは熱伝導率と比熱の低さが特徴であるウールが電熱部に触れているからである。このことから乾燥時では4種類の生地共に冷えを感じることはないことを示している。
【0030】
湿潤状態(含水率20%)では実施例1は比較例1、比較例2、比較例3のQmaxよりも低くなっている。これは吸水性を付与したポリエステルが汗を吸水拡散したこと、及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸水し発熱したことがQmaxが低くなった原因と考えられる。比較例1では生地が処理しきれない汗が液滴の状態で生地上に残るので、汗の水分による冷えのためQmaxは大きくなった。比較例2は吸水性を付与したポリエステルによる汗の吸水拡散で水分による冷えは抑えられるが、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維による発熱がないためにQmaxは大きくなった。比較例3はアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸湿することにより発熱するが、ウールの吸水性の悪さによって、液滴の状態で汗が生地上に残り、汗の水分による冷えのためにQmaxは大きくなった。
すなわち、実施例1が湿潤時においては最もQmaxが低く、汗冷え感がないといえる。
【0031】
(実験2)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地の吸水性能試験を行った。実施例1、比較例1、比較例2、比較例3の生地を10回洗濯した後、試料生地の裏側にそれぞれ水滴を落とし、滴下した水が生地上で拡散して、濡れた状態なるまでの時間を表1に示す。水が生地上で拡散して、濡れた状態なるまでの時間が短いほど、吸水性が良く、生地上に汗が残らないことを示している。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1では水滴が生地に落ちると同時に拡散するため、計測時間は0秒であった。比較例1は吸水加工をしているが、通常の吸水性が優れている生地では0秒であるので、比較例1は非常に吸水性が悪いことが分かる。比較例2はポリエステルが入っているため、比較例1に比べて吸水性が良いものの、ウールが吸水性を阻んでいるので、吸水性は実施例1ほど良くはない。ポリエステルの混率を高めると、吸水性は向上するが、実験1の汗冷え感は増大するため、ポリエステルと羊毛からなる生地は吸水性と汗冷え感を両立することができない。比較例3ではアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が吸水をするが、混率がウールに比べて低いためにほとんど水滴を拡散することがなかった。このことから、比較例1、比較例2、比較例3では生地上に汗が残りやすく、汗冷えを感じやすいといえる。実施例1では汗冷えが起こりにくいことが分かる。
【0034】
(実験3)実施例1、比較例1、比較例2、比較例3のニット生地からなるアンダーシャツを着用して25℃40%RH環境下で安静5分、トレッドミルによる軽いランニング20分、安静10分の着用試験をそれぞれのシャツに対して行った。被験者は健康な成年男子1名で、試験終了後にアンケートを行った。表2は着用テストの結果である。
【0035】
【表2】
【0036】
表2において、蒸れ感、べたつき感、冷え感は「かなりある」「ややある」「普通」「ややない」「全くない」の5段階で評価した。総合的な着用感は「不快」「やや不快」「普通」「やや快適」「快適」の5段階で評価した。
実施例1について蒸れ感、べたつき感、冷え感は全くないのに対して、比較例1、比較例2、比較例3では評価の低い項目があった。実施例1ではウール、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維、ポリエステルの短所をお互いが上手く作用することにより長所に変えているため、このような結果になったと思われる。比較例1、2は処理しきれないほどの汗のため、べたつき感や冷え感があったと考えられる。比較例3ではアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維は吸水をするが、混率がウールに比べて低いためにほとんど汗を吸水しなかったため、べたつき感や冷え感があった。総合的な着用感でも実施例1に優位性が見られた。
【0037】
【発明の効果】
本発明の保温品によれば、動物性繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維の混率を調節することにより、汗冷えによる人体の冷えを防ぎ、常に快適な温度を保つことのできる保温品とすることができる。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は乾燥状態の汗冷え測定試験結果である。
【図2】図2は湿潤状態の汗冷え測定試験結果である。
Claims (8)
- 動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、アクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品。
- 動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維を含む保温品であり、疎水性合成繊維とアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする保温品。
- 疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温品。
- 動物性繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1に記載の保温品。
- 動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温品。
- 疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温品。
- 動物性繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1に記載の保温品。
- 動物性繊維、疎水性合成繊維及びアクリル酸系吸放湿吸水発熱性繊維からなる中空混紡糸が少なくとも肌側に含まれた生地からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の保温品。
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