JP3657253B2 - 吸放湿性繊維とその製造方法およびこれを用いた繊維製品 - Google Patents

吸放湿性繊維とその製造方法およびこれを用いた繊維製品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、人間が身につける衣服、帽子、靴、寝具、手袋、その他各種物品に係り、特に吸湿および放湿によって人体に乾燥感を与える吸放湿性繊維とその製造方法およびこれを用いた繊維製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、人間が身につける夏場の衣料には、汗などを素早く吸収する吸水性と、吸収した汗などを素早く逃がす発散性とが求められる。従来から、このような夏場の衣料としては、例えば、麻やレーヨン、アセテートなどのセルロース系繊維からなる吸水性の高い素材を使用することが行われていた。また、その他の夏場の衣料としては、例えば、ポリエステル繊維に親水基を結合させた吸汗加工のものが知られている。この種の素材は、汗を素早く吸収し、生地上に拡散蒸発させることで、セルロース系繊維を主体とした素材に比べ発散性が優れていることから多量発汗のスポーツウェアに用いられていた(例えば下記に示す非特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】
「繊維の百科事典」、丸善株式会社、平成14年3月15日発行、469頁右欄〜476頁左欄
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のセルロース系繊維などの吸水吸湿素材を用いた衣料は、吸湿速度に対して放湿速度が非常に遅い遅放湿性吸放湿繊維によって構成されているため、水分を繊維内部に取り込んでしまう。セルロース系繊維は本質的に親水性繊維だからである。したがって、多量発汗の場合は、発汗後いつまでも汗が残り、まとわりついたり、べたついたりして人体に冷え感を与えたりしてしまう不快感と不都合を生じる。
【0005】
また、前記従来の吸汗加工したポリエステル繊維の場合は、液相の汗を吸い上げるが、常時人体から発生している水蒸気(不感蒸散)を吸湿する能力がほとんど無い。ポリエステルは本質的に疎水性繊維だからである。その結果、前記吸汗加工したポリエステル繊維を使用した夏場の衣料は、ムレ感が生じ、肌面のベタツキなどが発生するといった不快感と不都合を生じる。
【0006】
そのため、常時人体から発生している水蒸気(不感蒸散)を吸放湿することができる吸放湿性繊維を使用した衣料が提案されているが(例えば、特開平6−294006号公報)、この吸放湿性繊維は、放湿速度が吸湿速度よりも遅く、水分を繊維内に保持しやすく、この吸放湿性繊維を用いた夏場の衣料は、発汗時にベタツキを感じるといった不快感と不都合を生じる。
【0007】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、液相の汗のみならず、人体から発生している水蒸気による不感蒸散(不感蒸泄)に対しても吸放湿性が高く、かつ、速乾性があり、乾燥感を得ることができる吸放湿性繊維とその製造方法およびこれを用いた繊維製品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため本発明の吸放湿性繊維は、少なくとも表面がアクリレート系繊維であり、前記繊維は染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄することにより繊維表面にカルボキシル基を有し、かつ吸汗剤を前記繊維に吸着させた吸放湿性を有する繊維であって、温度20℃、相対湿度0%の雰囲気から、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気に移して60分経過後、重さが16質量%以上45質量%以下の範囲増加し、かつ温度20℃において、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた場合の放湿速度を比較した場合、前記吸湿速度よりも前記放湿速度が速いことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の吸放湿性を有する繊維の製造方法は、繊維の少なくとも表面がアクリロニトリル系樹脂である繊維に多官能アミンを架橋剤として導入し、その後、加水分解させてカルボキシル基を生成し、前記繊維を染色し、染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄を行い、かつ前記染色から前記還元洗浄までの工程中で吸汗剤を前記繊維に吸着させたことを特徴とする。
【0010】
また本発明の吸放湿性繊維製品は、吸放湿性繊維を3〜50質量%と、他の繊維または中綿材料を50〜97質量%混合した繊維製品であって、前記吸放湿性繊維は、少なくとも表面がアクリレート系繊維であり、前記繊維は染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄することにより繊維表面にカルボキシル基を有し、かつ吸汗剤を前記繊維に吸着させており、温度20℃、相対湿度0%の雰囲気から、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気に移して60分経過後、重さが16質量%以上45質量%以下の範囲増加し、かつ温度20℃において、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた場合の放湿速度を比較した場合、前記吸湿速度よりも前記放湿速度が速いことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の吸放湿性繊維は、温度20℃、相対湿度0%の雰囲気から、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気に移して60分経過後、重さが16質量%以上45質量%以下の範囲増加する性質を有する。すなわち、絶乾状態から標準状態(温度20℃、相対湿度65%の雰囲気状態)に移して60分経過後、水分率が16質量%以上45質量%以下の範囲となる性質を有する。前記において、標準状態(温度20℃、相対湿度が65%)における水分率を「公定水分率」という。したがって、本発明の繊維の公定水分率は、16%以上45%以下の範囲である。これは、親水性繊維の公定水分率、例えば綿:8.5%、絹:11.0%、ビスコースレーヨン:11.0%、キュプラ:11.0%、麻(亜麻、ラミー):12.0%、羊毛:15.0%等よりも高い。したがって、超親水性繊維ということができる。
【0012】
本発明において、公定水分率を16質量%以上45質量%以下の範囲とするには、ヒドラジンの導入量を変えることでできる。すなわち、ヒドラジンの導入量を多くすればニトリル基部分は架橋される割合が多くなり、少なくすれば加水分解される割合が多くなる。架橋されると吸湿性は生じないが、加水分解されれば水酸基、カルボキシル基、アミド基等親水性の官能基に変わるので吸湿性が増える。
【0013】
しかし、単に親水性が高いだけでは発汗したときに繊維に水分が保持されてしまい、べたつき等の不快感が高くなってしまう。重要なことは、人体に着用した状態で吸放湿性が高く、かつ、速乾性が高いことである。
【0014】
そこで、人体の着用条件を加味して、温度20℃において、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた場合の放湿速度を比較したのである。この比較において、本発明の繊維は、吸湿速度よりも放湿速度が速いことに特徴がある。
【0015】
本発明の吸放湿性繊維またはこれを混合した繊維を用いた布帛は、肌着として着用したときに、吸湿速度よりも放湿速度が速い特性を有する。これにより、汗のみならず、人体から発生している水蒸気による不感蒸散(不感蒸泄)に対しても吸放湿性が優れ、かつ、速乾性があり、乾燥感を得ることができる。
【0016】
本発明の前記吸放湿性繊維は、少なくとも表面がアクリレート系繊維であり、かつ繊維表面にカルボキシル基を有する。すなわち、繊維はアクリレート系繊維で構成されていてもよいし、芯が例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンなどで構成され、鞘がアクリレート系樹脂で構成されていてもよい。また、繊維表面にカルボキシル基を有すると、吸湿速度よりも放湿速度が速い特性を効率よく発揮できる。
【0017】
前記吸放湿性繊維を3〜50質量%と、他の繊維または中綿材料を50〜97質量%混合してもよい。この範囲であれば、吸湿速度よりも放湿速度が速い特性を維持できる。
【0018】
前記他の繊維は、ポリエステル繊維であることが好ましい。なお、必要によりコットン、ウール、絹、麻、カシミヤ、アンゴラ、再生セルロース、精製セルロース、ポリ乳酸系、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアクリル系、ポリオレフィンおよびポリウレタンから選ばれる少なくとも一つの合成繊維をさらに加えても良い。また、中綿材料として、羽毛を加えても良い。
【0019】
次に本発明の製造方法においては、少なくとも表面がアクリロニトリル系樹脂である繊維にヒドラジンなどの多官能アミンを架橋剤として導入し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を使用せずに加水分解させてカルボキシル基を生成し、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を使用せずに染色後の還元洗浄を行う。これにより、カルボキシル基はアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などに置換されず、カルボキシル基のまま残存できる。これが吸湿速度よりも放湿速度が速い特性を発揮する。なお、本発明においては、アクリロニトリル系樹脂繊維をヒドラジン架橋し、加水分解させた繊維をアクリレート系繊維という。
【0020】
前記多官能アミンはアクリレート系繊維に対して5.0〜15.0質量%導入するのが好ましい。また、前記多官能アミンはヒドラジン化合物であることが好ましい。架橋剤として反応性に富むからである。また、前記ヒドラジンを架橋剤として導入する際の条件は、ヒドラジン濃度5〜60質量%、温度50〜120℃であることが好ましい。
【0021】
前記染色後の還元洗浄は、酸性サイドで機能する還元剤を用いて行う。カルボキシル基を残存させるためである。還元洗浄をアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて行うと、カルボキシル基はカルボン酸塩になり、本発明のような吸湿速度よりも放湿速度が速い特性は発揮できなくなる。また、カルボン酸塩にすると、温度20℃、相対湿度0%から85%に移行させる際に、清涼感を発揮することができる。
【0022】
本発明の吸放湿性繊維製品においては、前記吸放湿性繊維の好ましい例の他、形態としては、例えば糸、織物、編み物、不織布、シート、ネットまたは詰め物体であることが好ましい。さらには前記吸放湿性繊維製品が衣類であることが好ましい。
【0023】
前記において、吸湿速度よりも放湿速度の方が速い速放湿性吸放湿繊維としては、吸湿時に膨潤し難く、かつ、吸湿時の発熱量ができるだけ小さいものが好ましい。このような速放湿性吸放湿繊維としては、例えば、繊維自体が高架橋構造を形成したアクリレート系吸放湿繊維を用いることができる。
【0024】
この種のアクリレート系吸放湿繊維は、架橋度(架橋可能な分子の部分に対してどのくらいの割合で架橋しているかの度合)を色々変化させることで吸放湿速度を制御することが可能で、架橋度を上げるほど放湿速度が早くなる傾向になるが、吸湿性が下がる傾向になる。アクリレート系吸放湿繊維の架橋度の程度は、窒素含有量の増加を適正な方法で計測することで求められる。本発明においては、架橋度を吸湿性が落ちない最大程度まで上げて放湿速度の方が吸湿速度よりも速いアクリレート系吸放湿繊維を用いることができる。また、アクリレート系吸放湿繊維に限らず、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維を前記したような方法で高架橋構造にするのと同時に繊維表面にカルボキシル基、水酸基、アミド基等の官能基を有する構造にすると、アクリレート系吸放湿繊維と同様の吸放湿性を有するので本発明として用いることも可能である。ただし、この吸湿性については、少なくとも綿程度の吸湿率を確保しておくことが望ましく、そうでなければ放湿速度が速くても乾燥感は得られ難くなる。
【0025】
前記アクリレート系吸放湿繊維は、出発繊維として、アクリロニトリル(以下、ANという)を40質量%以上、好ましくは50質量%以上含有するAN系重合体により形成された繊維が用いられる。ここで、AN重合体は、AN単重合体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い。
【0026】
AN共重合体に用いられる他の単量体としては、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、メタクリルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸などのスルホン酸含有単量体およびその塩、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボン酸含有単量体およびその塩、アクリルイミド、スチレン、酢酸ビニルなどの単量体をあげることができるが、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
【0027】
以上のアクリレート系繊維に、例えばヒドラジン系化合物を架橋剤として導入する。この方法においては、窒素化合物含有量の増加を5.0〜15.0質量%に調整し、ヒドラジン系化合物の濃度を5〜60質量%、温度を50〜120℃とした状態で5時間以内で処理するのが好ましい。ここで、窒素含有量の増加とは、原料のアクリレート系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物を架橋剤として導入された状態のアクリレート系繊維の窒素含有量との差をいう。この窒素含有量の増加を適正な方法で計測することで架橋度の程度を求めることができる。この窒素含有量の増加が、上記の下限(5.0質量%)に満たない場合は、吸湿速度の方が放湿速度よりも速くなり、本発明の目的とする繊維を得ることが困難となる傾向になる。また、窒素含有量の増加が上記の上限(15.0質量%)を超えた場合には、高吸湿性は困難となる傾向になる。したがって、ここで使用するヒドラジン系化合物としては、窒素含有量の増加が上記の範囲となるような化合物であればとくに限定されない。
【0028】
本発明で使用できる多官能アミン(poly functional amine)としては、ヒドラジン(NH2NH2)のほか、例えば、ヒドラジン水和物(NH2NH2・H2O)、硫酸ヒドラジン((N2H5)2SO4)、塩化ヒドラジン(N2H5SCl)、臭素酸ヒドラジン((N2H5)2BrO3)、ヒドラジンカルボキサミド(NH2NHCONH2)、セミカルバジド塩酸塩(NH2NHCONH2・HCl)等や、エチレンジアミン(NH2CH2CH2NH2)、グアニジン(NH2)2-C=NH、硫酸グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラミン等のアミン基を複数個含有する化合物を挙げることができる。
【0029】
なお、この架橋工程においては、ヒドラジン系化合物が加水分解反応により架橋されなかった部分に、残存ニトリル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基、その他の官能基が導入された部分を生じる。これらの親水性の官能基が繊維の吸湿性に大きく関与しているが、カルボキシル基がカルボン酸ナトリウム等の塩型になると吸湿性が大きくなるのと同時に放湿速度も遅くなる傾向があるので塩型カルボキシル基の割合はなるべく少なくすることが望ましい。その方法として、ナトリウム、カルシムウを含まないか、含んでいてもなるべく少ない溶液中で加水分解反応を行うことが望ましい。
【0030】
このようにして構成される速放湿性吸放湿繊維は、不織布に加工したり、糸に紡績した後、織物や編物に加工して生地を構成したり、染色した後、この生地から各種製品に製造される。染色時には好ましくは100℃以上140℃以下、さらに好ましくは120℃以上130℃以下の温度で高圧染色する。
【0031】
染色工程においては、吸汗剤を繊維に吸着させても良い。一般的には、吸汗加工は仕上げセットの前にフラットテンターで行なう。これらの吸汗剤には日華化学社製商品名“ナイスポールPR99”や“ナイスポールTRK60”、高松油脂社製商品名“SR1000”や“SR1800”等がある。これらは、ポリエステル乳化型と呼ばれ、ポリエステルと相性が良く、パディングの後に繊維に熱固着されるが、生地表面にのみ固着されるタイプの吸汗剤であるためにシャツ等の製品に縫製加工された後、家庭用洗濯機で繰り返し洗濯されると表面に固着された吸汗加工剤が脱落し、吸汗性が悪くなり、新品当時の吸汗性を維持できなくなるという問題がある。そこで、染色工程で染料系の吸汗剤を加え、染色と同時に吸汗加工を行う工程を加えることが速放湿を維持するためには望ましい。染料系の吸汗剤は分散染料と同様に繊維表面に存在することはもちろん、繊維内部まで浸透し洗濯で脱落することはほとんど無く耐洗濯性が非常に高い。この染料系の吸汗加工剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製商品名“ウルトラフィールHSD”がある。もちろん染料系の吸汗剤と上記従来の吸汗剤との併用も可能である。前記処理により、さらに耐久性のある速放湿性を維持できる。
【0032】
速放湿性吸放湿繊維は、染色の後、通常は、水酸化ナトリウム、ハイドロサルファイト、界面活性剤等の水溶液でアルカリサイドで未固着染料を洗浄する還元洗浄を行う。しかし、この還元洗浄によって、速放湿性吸放湿繊維中に含まれるカルボキシル基は、水素部分が還元洗浄液中のナトリウムイオンと置換されてカルボン酸ナトリウムとなってしまい、速放湿性吸放湿繊維は、吸湿発熱量が大きくなってしまうことが懸念される。したがって、この還元洗浄は、ナトリムウイオン等のアルカリ金属イオンまたはカルシウム等のアルカリ土類金属イオンを含有しない水溶液で行う必要がある。具体的には、酢酸などで水溶液を酸性サイドにし、二酸化チオ尿素、ロガリットC(住友精化社製 商品名:レドールCパウダー、日華化学社製 商品名:MC2000)などの酸性サイドで機能する還元剤を用いて行う。
【0033】
この速放湿性吸放湿繊維を糸に紡績する場合、速放湿性吸放湿繊維のみから紡績された糸であってもよいし、いわゆる混紡糸や複合糸であってもよい。
【0034】
速放湿性吸放湿繊維のみからなる紡績糸の場合、織物、編物に加工する段階で、疎水性繊維、遅放湿性吸放湿繊維、またはその両者と組み合わされる。
【0035】
速放湿性吸放湿繊維の混紡糸や複合糸を用いる場合、以下の構成を有するものが好ましい。すなわち 速放湿性吸放湿繊維と疎水性繊維との混紡糸や複合糸、速放湿性吸放湿繊維と遅放湿性吸放湿繊維との混紡糸や複合糸、疎水性繊維と、遅放湿性吸放湿繊維と、速放湿性吸放湿繊維との三成分の混紡糸や複合糸などが挙げられる。
【0036】
また、この混紡糸や複合糸としては、いわゆる芯鞘構造糸であってもよい。この場合、鞘に用いられる繊維としては、速放湿性吸放湿繊維と疎水性合成繊維との混合繊維、あるいは速放湿性吸放湿繊維と遅放湿性吸放湿繊維との混合繊維が挙げられる。芯に用いられる糸としては、疎水性合成繊維の長繊維糸もしくは短繊維糸が挙げられる。
【0037】
疎水性繊維としては、公定水分率が5%以下の繊維を表す。疎水性繊維としては、このような定義に相当する繊維であれば、特に限定されるものではなく、具体的なものとしては、例えば、アクリル、ポリエステル、ナイロンなどが挙げられる。
【0038】
遅放湿性吸放湿繊維としては、公定水分率が5%以上の天然繊維を表す。遅放湿性吸放湿繊維としては、このような定義に相当する繊維であれば、特に限定されるものではなく、具体的なものとしては、例えば、ウール、絹、セルロース系繊維などが挙げられる。
【0039】
上記不織布、織物、編物における速放湿性吸放湿繊維の割合は、20℃、相対湿度65%環境下で、速放湿性吸放湿繊維を3質量%以上50質量%以下の割合で含有することが好ましく、かつ速放湿性吸放湿繊維の公定水分率が5%以上であることが好ましい。上記不織布、織物、編物は、速放湿性吸放湿繊維が5質量%未満になると、この速放湿性吸放湿繊維による効果が低下する傾向となる。また、上記不織布、織物、編物は、速放湿性吸放湿繊維が50質量%を越えると、染色性が悪くなるとともに、充分な強度が得られない傾向となる。
【0040】
また、速放湿性吸放湿繊維の含有率を20℃、相対湿度65%環境下と条件設定しているのは、速放湿性吸放湿繊維は、20℃、0%RH環境下から20℃、65%RH環境下へと移すと、約60分間で自重が16%〜45%増加し、羊毛繊維の約1.1〜1.2倍、疎水性繊維の約1.2〜1.4倍、セルロース系繊維の約1.1〜1.3倍になり、この質量変化によって加工工程で生地の性質が大きく変化してしまうからである。
【0041】
上記不織布や中綿からなる製品としては、夏用スーツの芯地、靴の中敷き、布団、帽子の芯地、椅子の内包材、クッション材、寝袋などが挙げられる。
【0042】
不織布は、短繊維の積層体(ウェブ)で、通常20g/m2〜100g/m2のシート状のものが使用される。
【0043】
上記織物および編物からなる製品としては、織物シャツ、ニットシャツ、スポーツ衣料、ユニフォーム、中敷き、靴下、靴の裏地、シューズ側地、肌着、下着、中着、上着、夏用衣服の表地、裏地、布団側地、座布団、椅子の側地、帽子、手袋、セーター、スラックス、スカートなどが挙げられる。
【0044】
また、織物および編物は、生地表面および生地裏面の少なくとも一部が速放湿性吸放湿繊維を含む糸で構成されており、これら生地表面および生地裏面を構成する速放湿性吸放湿繊維を含む糸同士が、生地内部で接触するように構成したものであることが好ましい。これにより、織物および編物は、湿度の高い生地の裏面で吸湿した水分が生地中の速放湿性吸放湿繊維を通り道として、湿度の低い生地の表面に移行し放湿し易くなる。また、同様の理由から、生地表面に露出している前記速放湿性吸放湿繊維を含む糸の少なくとも一部が、生地中央(生地断面方向)を経て生地裏面も構成するように形成してもよい。
【0045】
この織物および編物における糸使いは、双糸または引き揃えて経糸又緯糸として用いることも可能である。例えば、織物の場合、経糸の配列として、速放湿性吸放湿繊維を有する糸:その他の糸=1:1,1:2,1:3,1:4として用いることも可能であり、または、緯糸としてその他の糸を用いても良い。
【0046】
さらに、経糸に速放湿性吸放湿繊維を有する糸を用い、緯糸にその他の糸を用いてもよい。
【0047】
具体的には、平織、綾織、朱子織の基本組織とそれらから誘導された変化組織、片二重織、二重織等の重ね組織、コール天、ビロード等のパイル織組織等があげられる。
【0048】
これら織組織の経糸または緯糸として、速放湿性吸放湿繊維を含む糸どうしを隣り合う糸として複数本数入れたグループと、その他の糸どうしを隣り合う糸として複数本数入れたグループが交互になるように入れ、緯糸または経糸として前記の他の糸を入れた速放湿性吸放湿繊維を含む糸がストライプまたはボーダー調に生地表面、裏面に現れるよう織ることも可能である。
【0049】
また、経緯糸とも、速放湿性吸放湿繊維を含む糸どうしを隣り合う糸として複数本数入れたグループと、その他の糸どうしを隣り合う糸として複数本数入れたグループが交互になるように入れ、速放湿性吸放湿繊維を含む糸が格子状に生地表面、裏面に現れるよう織ることも可能である。
【0050】
このようにして構成される製品のうち、疎水性繊維と速放湿性吸放湿繊維との生地による製品の場合、人体から発生している気相の汗や水蒸気(不感蒸散)は、速放湿性吸放湿繊維によって吸湿され、外部に放湿される。また、多量発汗による液相の汗は、疎水性繊維同士によってつくられる微細な空隙によって吸い上げられ外部に排出されるとともに、速放湿性吸放湿繊維によっても吸水され、外部に放湿される。したがって、製品は、ムレ感などを感じることもなく、快適に着用することができる。
【0051】
また、この製品には、速放湿性吸放湿繊維を使用しているため、製品を構成する生地の裏側(人体側)の湿度が、生地の表側の湿度よりも大きい状況、すなわち、気相の汗などによって衣服内湿度が上昇してきたような状況では、生地裏面で吸湿する吸湿量と、生地表面で放湿する放湿量とが略同等となり、製品による吸放湿は、継続し続ける。吸湿速度よりも放湿速度の方が速くなるようにしているので、吸湿した水分の気化効果が高く、高い乾燥感が得られる。
【0052】
また、遅放湿性吸放湿繊維糸と速放湿性吸放湿繊維糸とで構成された生地による製品の場合、人体から発生している気相の汗や水蒸気(不感蒸散)は、遅放湿性吸放湿繊維と速放湿性吸放湿繊維とによって吸湿され、外部に放湿される。また、多量発汗による液相の汗も、遅放湿性吸放湿繊維と速放湿性吸放湿繊維とによって吸湿され、外部に放湿される。この際、この製品には、速放湿性吸放湿繊維を使用しているため、この速放湿性吸放湿繊維は、遅放湿性吸放湿繊維が吸湿した水分を積極的に放湿する。したがって、製品は、吸湿した水分をいつまでも保持して人体にまとわりついたり、べたついたりすることがない。また、この製品は、上記疎水性繊維と速放湿性吸放湿繊維との生地による製品と同様に、速放湿性吸放湿繊維を使用しているため、清涼感が得られる。
【0053】
本発明においては、上記速放湿性吸放湿繊維を含有する生地を製品の少なくとも一部に用いていればよい。とくに、発汗によるまとわりつきとべたつきを感じやすい身頃部に用いるのが好ましい。
【0054】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。下記の実施例において、単に%と示してあるのは質量%を意味する。
【0055】
(実施例1)
アクリル性繊維にヒドラジンを導入し、加水分解して水酸基、カルボキシル基、アミド基等親水性の官能基を導入した東洋紡績社アクリル性繊維(製品名はN−38)を用いて、下記の手順で染色した。
(1)連続リサクサーと呼ばれる装置を用いて、リラックスソーピングと乾燥をした。リラックスソーピングは約90℃の熱水に界面活性剤を投入し、生機についているオイルや汚れ等を落とした。
(2)乾燥後、プレセット機を用いて、約180℃で60秒間のプレセットを行った。
(3)次に染色工程において、通常のポリエステルの染色に使用される染色機に水、染料と均染剤、緩洗剤などの助剤と酢酸で浴液を酸性サイドにし染色をした。
(4)次に還元洗浄の工程において、通常は水酸化ナトリウム、ハイドロサルファイトと界面活性剤の水溶液により、アルカリサイドで未固着染料を洗浄するが、速放湿性吸放湿繊維中に含まれるカルボシキル基は、水素部分が還元洗浄浴中のナトリウムイオンと置換されカルボン酸ナトリウムになってしまい、速放湿性吸放湿繊維は吸湿発熱量が大きくなってしまうことが懸念される。したがって、薄色はこの還元洗浄の工程はなし、中色は水と界面活性剤のみのソーピングのみを行い、染色堅牢度の低下が懸念される一部の中色と濃色の生地に関しては、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンまたはカルシウム等のアルカリ土類金属イオンを含有しない水溶液中で行なう必要がある。具体的には酢酸で水溶液を酸性サイドにし、二酸化チオ尿素、ロガリットCなどの酸性サイドで機能する還元剤を用いて行った。この還元洗浄、ソーピングの工程も染色と同じく染色機中で行った。
(5)次にローラージェットと呼ばれる機械にて遠心分離脱水を行った。
(6)次にシュリンクサーファーやショートループドライヤと呼ばれる乾燥機で乾燥させた。
(7)次にフラットテンターで地糸切れ防止剤、帯電防止剤、吸汗加工剤等の樹脂をパディング(いわゆる樹脂加工)したのち、140℃前後の熱をかけ、仕上げ加工を行った。ここで生地の伸び、やわらかさなどの風合、吸汗性等さらには生地巾を好みに調整することができる。
(8)以上の工程を経た生地は、検反機にかけられ、検反されたのち梱包出荷される。
【0056】
以上のようにして、繊維の少なくとも表面がアクリレート系樹脂である繊維に多官能アミンを架橋剤として導入し、その後、加水分解させてカルボキシル基を生成し、このカルボキシル基を残すように染色後の還元洗浄をして本発明の吸放湿性繊維を得た。
【0057】
(測定装置)
図1に示すように、上皿天秤1の測定部11上に試料装着部2を載置し、この試料装着部2に触れないように、この試料装着部2を、透明アクリル樹脂製ボックス(以下「アクリルボックス」という。)3の中に設けた。このアクリルボックス3は、温湿度発生装置4から給気し、排気管5から排気するようになされたものを使用した。試料装着部2は、図2Aに示すように、ポリエステル樹脂製の枠体21に、ポリエステルモノフィラメント22を格子状に取り付けて構成した。試料繊維Sは、図2Bに示すように、この試料装着部2のポリエステルモノフィラメント22上に、ほぐした状態で、薄いシート状となるようにして装着した。試料繊維Sを装着した試料装着部2の質量変化は、上皿天秤1に接続したデータ収録機6を介して、経時的にパソコン7で記録できるようにした。アクリルボックス3内の温度および湿度の変化についても、アクリルボックス3内の温湿度計8からデータ収録機6を介して、経時的にパソコン7で記録できるようにした。試料装着部2は、アクリルボックス3の上面の窓部31を開けて上皿天秤1の測定部11上から取り外し可能となされている。
【0058】
以下、この実験装置を二台用いて実施した測定実験について述べる。
【0059】
(測定実験1)
一方の実験装置はアクリルボックス3内を20℃、40%RHの条件に保ち、他方の実験装置はアクリルボックス3内を20℃、80%RHの条件に保った。
【0060】
アクリルボックス3内を20℃、40%RHの条件に保った一方の実験装置において、アクリルボックス3内に、試料繊維Sを装着した試料装着部2を、この試料装着部2の重さが安定するまで置き、このときの吸湿率をR1、実験開始からの時間をT1として測定した。
【0061】
ただし、試料繊維Sは、実験に先立って、105℃に調温した乾燥機中で24時間乾燥させ、この乾燥機中で質量を測定し、この質量測定した試料繊維Sを全て試料装着部2に装着して実験に用いた。この試料繊維Sの乾燥繊維質量は、実験開始時にデータ収録機6を介してパソコン7に入力しておく。
【0062】
したがって、吸湿率R1は、経時的に繊維質量を測定し、パソコン7で以下のようにして算出することによって求められる。
吸湿率R1(%)=[(W−W0)/W0]×100
ここで、W:吸湿後の繊維質量、W0:乾燥繊維質量である。
【0063】
次に、前記一方の実験装置のアクリルボックス3の窓部31を開け、試料繊維Sとともに試料装着部2を取り出し、他方の実験装置へと瞬時に移動し、この他方の実験装置のアクリルボックス3内の上皿天秤1の測定部11上に、移動した試料装着部2を装着した。
【0064】
20℃、80%RHの条件に保った他方の実験装置において、試料繊維Sを装着した試料装着部2の質量が安定するまで置き、このときの吸湿率をR2、実験開始からの時間をT2として測定した。この吸湿率R2の測定は、上記したようにパソコン7にあらかじめ入力しておいた試料繊維Sの乾燥繊維質量を基に求められる。
【0065】
その後、この他方の実験装置のアクリルボックス3の窓部31を開け、試料繊維Sとともに試料装着部2を取り出し、一方の実験装置へと瞬時に移動し、この一方の実験装置のアクリルボックス3内の上皿天秤1の測定部11上に、移動した試料装着部2を再度装着した。
【0066】
20℃、40%RHの条件に保った一方の実験装置において、試料繊維Sを装着した試料装着部2の質量が安定するまで置き、このときの吸湿率をR3、実験開始からの時間をT3として測定した。この吸湿率R3の測定も、上記したようにパソコン7にあらかじめ入力しておいた試料繊維Sの乾燥繊維質量を基に求められる。
【0067】
これらの測定結果から、吸湿速度および放湿速度を、以下のようにして求めた。
吸湿速度=(R2−R1)/(T2−T1)
放湿速度=(R2−R3)/(T3−T2)
使用した試料繊維Sの組成を表1に示し、各試料繊維S1〜S6についての測定結果を表2に示す。また、各試料繊維S1〜S6について、吸湿速度および放湿速度の実験開始からの経時的変化を図3のグラフに示す。
【0068】
図3のグラフから、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた放湿速度を比較した場合、吸湿速度よりも放湿速度が速いことが確認できた。
【0069】
【表1】
Figure 0003657253
【0070】
【表2】
Figure 0003657253
【0071】
その結果、出発繊維がアクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合体で窒素増加量が10質量%のアクリレート系繊維S2と、出発繊維がアクリロニトリルとアクリル酸メチルの共重合体で窒素増加量が20質量%のアクリレート系繊維S3は、放湿速度の方が吸湿速度よりも速かった。
【0072】
(測定実験2)
測定実験1で使用した試料繊維Sを使用し、40s/2スパン糸を試料糸Yとして作製した。その試料糸Yで天竺組織を編成して生地(目付:160g/m2)を作製し、その生地を用いて半袖Tシャツを作製した。6種類用意した各試料糸Y1〜Y6ごとに作製した半袖Tシャツについて、それぞれ実着用試験を行い吸湿量、吸放湿速度の違いによる着用感の違いを検証した。ただし、試料糸Yに用いられている試料繊維Sによっては、繊維強度が弱く、単体で糸にするのが困難である。したがって、各試料糸Y1〜Y6は、試料繊維Sの性質を反映させるため、水分率がほぼ0であるポリエステルとの混紡にした。各試料糸Y1〜Y6の組成は、表3に示す。
【0073】
【表3】
Figure 0003657253
【0074】
(着用試験1)
10人の健康な男子に上記試料糸Yからなる半袖Tシャツを着用させ、25℃、40%RH環境下の人工気象室でエルゴメーターで20分間のやや軽い運動となるような負荷を与えて運動終了後に着用アンケートを行った。アンケートは5段階評価で各評価に良い方から+2、+1、0、−1、−2の得点がついていて、10人の被験者全員が一番良い評価を付けると+2×10=+20点満点になり、悪い評価であると−20点になり、点数が高い方がそれぞれの官能において快適である。蒸れ感、べたつき感、涼感、総合的な快適感について、それぞれ運動中および運動後に官能評価した結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
Figure 0003657253
【0076】
その結果、綿以上の吸湿性がないと蒸れ感を感じる傾向にある。また、吸湿性が高くても、吸湿速度より放湿速度の方が遅ければ涼感を感じない。よって、吸湿速度より放湿速度の方が早くても綿以上の吸湿性がないと蒸れ感を感じ、総合的な快適性がよくないことがわかった。
【0077】
(着用試験2)
この着用試験ではスポーツウェアへの適用を確かめる試験をした。(1)前記S3のシャツと、(2)市販の綿100%使いのシャツ、(3)綿70%/ポリエステル30%のシャツ、(4)綿50%/ポリエステル50%のシャツ、(5)綿30%/ポリエステル70%のシャツ、(6)ポリエステル100%のシャツをそれぞれ用意した。糸使いおよび編み組織はほぼ同一とし、40s/2スパン糸を天竺組織(目付:160g/m2)とし、半袖Tシャツとした。
【0078】
スポーツ愛好家10名にまず前記(2)〜(6)の5種類のシャツの素材名を隠して着てもらい、27℃、相対湿度70%RHの条件下、スポーツジムで、30分に約200Kcalを消費する自転車こぎまたは競歩をしてもらった。30分間経過後、全員が背中、胸部、および頭部に発汗しており、背中と胸部は汗で濡れた状態であった。そして全員に感想を求めたところ、肌が汗で冷たく、肌にシャツがベタベタとくっついて気持ち悪く、早く脱ぎたいとのことであった。
【0079】
次に30分間休憩を取った後、前記同様、シャツの素材名を隠して全員に前記(1)のシャツを着てもらい、前記と同じ消費カロリーのスポーツを30分間してもらった。発汗の状態は前記と同様であった。その後、全員に感想を求めたところ、全員とも、汗をかいてシャツが濡れても冷たさは感じず、空気を着ているような快適感があり、スポーツが終わっても脱ぎたいという人はいなかった。そして、20〜30分後には全員のシャツは着たままの状態で自然乾燥していた。
【0080】
以上の試験から、発汗の多いスポーツ衣料としても着心地が良く、速乾性と乾燥感があることが確認できた。
【0081】
なお、実施例1の染色工程(3)では、染料系の吸汗剤を加え、染色と同時に吸汗加工を行なう工程を加えることが速放湿を維持するためには望ましい。染料系の吸汗剤は分散染料と同様に繊維表面に存在することはもちろん、繊維内部まで浸透し洗濯で脱落することはほとんど無く耐洗濯性が高い。この染料系の吸汗加工剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製商品名“ウルトラフィールHSD”を染料液の中に添加した。これにより、吸汗性をさらに上げることが可能である。
【0082】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によると、液相の汗のみならず、人体から発生している水蒸気(不感蒸散)に対しても優れた吸放湿性繊維およびこれを用いた繊維製品が得られる。また、吸湿速度よりも放湿速度の方が速いので、速乾性があり、乾燥感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における実験装置の全体構成の概略を示す斜視図である。
【図2】Aは同、実験装置に装着される試料装着部の全体構成の概略を示す斜視図、Bは同、試料装着部に試料を装着した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例における各試料繊維について行った吸湿速度および放湿速度の実験開始からの経時的変化を示すグラフである。
【符号の説明】
S 試料繊維
1 上皿天秤
2 試料装着部
3 透明アクリル樹脂製ボックス(アクリルボックス)
4 温湿度発生装置
5 排気管
6 データ収録機
7 パソコン
8 温湿度計
11 測定部
21 枠体
22 ポリエステルモノフィラメント
31 窓部

Claims (13)

  1. 少なくとも表面がアクリレート系繊維であり、前記繊維は染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄することにより繊維表面にカルボキシル基を有し、かつ吸汗剤を前記繊維に吸着させた吸放湿性を有する繊維であって、
    温度20℃、相対湿度0%の雰囲気から、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気に移して60分経過後、重さが16質量%以上45質量%以下の範囲増加し、
    かつ温度20℃において、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた場合の放湿速度を比較した場合、前記吸湿速度よりも前記放湿速度が速いことを特徴とする吸放湿性繊維。
  2. 前記吸放湿性繊維を3〜50質量%と、他の繊維または中綿材料を50〜97質量%混合した請求項に記載の吸放湿性繊維。
  3. 前記他の繊維が、ポリエステル繊維である請求項に記載の吸放湿性繊維。
  4. 吸放湿性を有する繊維の製造方法であって、
    繊維の少なくとも表面がアクリロニトリル系樹脂である繊維に多官能アミンを架橋剤として導入し、その後、加水分解させてカルボキシル基を生成し、
    前記繊維を染色し、
    染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄を行い、かつ前記染色から前記還元洗浄までの工程中で吸汗剤を前記繊維に吸着させたことを特徴とする吸放湿性繊維の製造方法。
  5. 前記多官能アミンをアクリロニトリル系繊維に対して5.0〜15.0質量%導入する請求項に記載の吸放湿性繊維の製造方法。
  6. 前記多官能アミンがヒドラジン化合物である請求項4または5に記載の吸放湿性繊維の製造方法。
  7. 前記ヒドラジンを架橋剤として導入する際の条件が、ヒドラジン濃度5〜60質量%、温度50〜120℃である請求項に記載の吸放湿性繊維の製造方法。
  8. 前記吸放湿性繊維を3〜50質量%と、ポリエステル繊維を50〜97質量%混合した請求項に記載の吸放湿性繊維の製造方法。
  9. 前記吸汗剤の吸着は、染色工程において、染色液に染料系の吸汗剤を加えることにより、繊維に吸着させる請求項に記載の吸放湿性繊維の製造方法。
  10. 吸放湿性繊維を3〜50質量%と、他の繊維または中綿材料を50〜97質量%混合した繊維製品であって、
    前記吸放湿性繊維は、少なくとも表面がアクリレート系繊維であり、前記繊維は染色後、酸性サイドで機能する還元剤を用いて還元洗浄することにより繊維表面にカルボキシル基を有し、かつ吸汗剤を前記繊維に吸着させており、温度20℃、相対湿度0%の雰囲気から、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気に移して60分経過後、重さが16質量%以上45質量%以下の範囲増加し、かつ温度20℃において、相対湿度を40%から80%に変化させた場合の吸湿速度と、相対湿度を80%から40%に変化させた場合の放湿速度を比較した場合、前記吸湿速度よりも前記放湿速度が速いことを特徴とする吸放湿性繊維製品。
  11. 前記他の繊維が、ポリエステル繊維である請求項10に記載の吸放湿性繊維製品。
  12. 前記吸放湿性繊維製品が、糸、織物、編み物、不織布、シート、ネットまたは詰め物体である請求項10に記載の吸放湿性繊維製品。
  13. 前記吸放湿性繊維製品が衣類である請求項10に記載の吸放湿性繊維製品。
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