JP4312552B2 - ポリエステル複合仮撚捲縮糸及びその製造方法、並びに同仮撚捲縮糸を含む織編物 - Google Patents

Description

本発明は、ドライ感、フクラミ感、ソフト感並びに高級感を併せ持つスパンライクな風合いを織編物に付与することが可能なポリエステル複合仮撚捲縮糸、その製造方法及び同仮撚捲縮糸を含む織編物に関する。

一般にポリエステル繊維で構成された織編物は、外観が単調で、かつ、ヌメリ調の風合いがあるため、木綿、麻の如き天然繊維のような外観や風合いを織編物に付与しようとする多数の提案がなされている。
例えば、スパンライクな複合加工糸として、適量の無機微粒子を含む複数本のポリエステル未延伸糸を合糸して交絡処理を施した後、延伸同時仮撚加工と起毛加工を行なうことで得られるスパンライク加工糸が提案されている（例えば、特許文献１参照）。しかしながら、特許文献１に開示されているスパンライク加工糸は、交絡処理に伴う三次元的に絡み合った交絡部が多く存在するために糸が硬くなり、織編物としたときにソフト感が十分でなく、いわゆるインターレースマークが織編物表面に目立ち、粗野なものとなるきらいがある。
そこで、織編物としたときに、優れたドライ感及びフクラミ感を与え、また、織編物表面に白筋を発生させないスパンライクな複合加工糸が提案されている（例えば、特許文献２参照）。しかし、構成フィラメント糸の混繊状態が不均一性のため織編物表面に斑が発生し易く、高級感という点では不十分なものであった。

特開昭６３−１９６７３５号公報 特開平１０−２３７７３３号公報

本発明は、上記背景技術における問題点を解決し、ドライ感、フクラミ感、ソフト感、並びに高級感を併せ持つスパンライクな風合いを織編物に付与することが可能なポリエステル複合仮撚捲縮糸及びその製造方法、並びに同仮撚捲縮糸を含む織編物を提供しようとすることを課題とするものである。

本発明は、二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％であるポリエステル高配向未延伸糸とポリエステル延伸糸で構成され、ポリエステル高配向未延伸糸の繊度Ｄ１とポリエステル延伸糸の繊度Ｄ２との繊度比Ｄ１／Ｄ２が、１．５〜５の範囲であるポリエステル複合仮撚捲縮糸であり、該仮撚捲縮糸の熱水収縮率が５〜１５％、交絡部の数が５ケ／ｍ未満であって、かつ、実質的に糸条が分離していないことを特徴とするポリエステル複合仮撚捲縮糸にある。
また本発明は、複屈折率が０．０３以上０．０８以下で、かつ、二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％であるポリエステル高配向未延伸糸を２本以上引き揃えて、１．１倍以上１．５倍以下の延伸倍率で加熱することなく延伸し、次いで、熱水収縮率が１０〜３０％のポリエステル延伸糸と合糸した後、糸条同士が融着しない温度下で、オーバーフィード仮撚加工を行うことを特徴とする上記ポリエステル複合仮撚捲縮糸の製造方法にある。
さらに本発明は、上記のポリエステル複合仮撚捲縮糸を含む織編物にある。

本発明は、従来のポリエステル仮撚捲縮糸では得られない、ドライ感、フクラミ感、ソフト感、並びに高級感を併せ持つスパンライクな風合いをポリエステル繊維または該繊維を含む織編物に付与することを可能にしたもので、衣装分野に与える価値は大である。

以下、本発明の好適な実施の形態について具体的に説明する。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％好ましくは１．７〜２．５質量％であるポリエステル高配向未延伸糸と、ポリエステル延伸糸で構成されていることが必要である。すなわち、本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、織編物とした後に織編物組織の拘束下で染色工程等の加熱処理を施されることにより、複合仮撚捲縮糸の一方の構成糸であるポリエステル延伸糸が相対的に大きく収縮する。その結果、ポリエステル高配向未延伸糸が織編物の表面に配置され、ドライな風合いを発揮することが可能となる。なお、ポリエステル高配向未延伸糸内の二酸化チタン含有量が１．５質量％未満では、目的とするドライ感を織編物に付与することができず、３．０質量％を超えると強伸度等の糸質が低く、実用に耐えられない。また、ポリエステル高配向未延伸糸の繊度Ｄ１とポリエステル延伸糸Ｄ２との繊度比Ｄ１／Ｄ２は特に限定するものではないが、熱処理後にポリエステル高配向未延伸糸が織編物表面に効果的に配置されることを考慮すると、繊度比Ｄ１／Ｄ２は１．５〜５が好ましく、２〜４がより好ましい。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、該仮撚捲縮糸の熱水収縮率が５〜１５％であることが必要であり、ポリエステル延伸糸が相対的に大きく熱収縮することで、ポリエステル高配向未延伸糸を織編物表面に効果的に配置し、ドライ感、フクラミ感、ソフト感を織編物に付与することが可能になるもので、熱水収縮率が５％未満では、目的とするドライ感、フクラミ感、ソフト感を得ることができない。また、熱水収縮率が１５％を超えると鞘糸の浮きが多くなり、布帛の風合いがフカツク。

更に、本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、交絡部の数が５ケ／ｍ未満であって、かつ、糸条同士が実質的に分離していないことが重要であり、交絡部が５ヶ／ｍを超えると３次元的な絡みが多くなるために糸が硬くなり、織編物としたときにソフト感が低下する。また、糸条が実質的に分離していないことによって、製編織等の後工程通過性が良好になると共に、織編物としたときに製品欠点となるような光沢斑や染色斑の発生を防止することが可能となり、織編物に高級感を与えることができる。

なお、交絡数の測定は次のようにして行った。すなわち、０．８８ＣＮ／ｄｔｅｘの荷重で試長１ｍを準備し、糸条を、水を張った容器に浮かべたとき、交絡のない部分は元の太さ以上に開繊し、一方交絡部は開繊しないという性質を利用して交絡部の数を目視で読みとる。
また、「実質的に分離していない」とは、適当な長さの加工糸の両端を保持して弛ませた状態で、ポリエステル複合仮撚捲縮糸を構成する糸条が分離することなく、混然一体化して区別できない状態のことを意味する。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸を構成するポリエステル高配向未延伸糸並びにポリエステル延伸糸は、その構成繊維断面形状、繊度、構成フィラメント数は特に限定されない。また、本発明の目的の範囲内で、必要に応じて油剤、添加剤、共重合物質等を含有及び／又は付着させることが可能である。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、そのまま織編物等に用いてもよく、また、該加工糸を撚糸、他繊維との合撚糸、複合糸として用いてもよいことは勿論である。

次に、本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸の製造方法を説明する。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸は、複屈折率が０．０３以上０．０８以下で、かつ、二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％であるポリエステル高配向未延伸糸を２本以上引き揃えて、１．１倍以上１．５倍以下の延伸倍率で加熱することなく延伸し、次いで、熱水収縮率が１０〜３０％のポリエステル延伸糸と合糸した後、糸条同士が融着しない温度下で、オーバーフィード仮撚加工を行なうことにより製造される。

複屈折率が０．０３以上０．０８以下で、かつ、二酸化チタン含有量が１．５質量％以上であるポリエステル高配向未延伸糸を２本以上引き揃えて、１．１倍以上１．５倍以下の延伸倍率で加熱することなく延伸することによって、ポリエステル高配向未延伸糸に極めて自然な斑延伸部分が形成さる。次いで、熱水収縮率が１２％以上のポリエステル延伸糸と合糸した後、糸条同士が融着しない温度下で、オーバーフィード仮撚加工を行なうことにより、ポリエステル高配向未延伸糸の斑延伸形態、及び、ポリエステル高配向未延伸糸とポリエステル延伸糸の伸度差により、仮撚捲縮が付与されるとともに、糸条を形成しているフィラメント間でいわゆるマイグレーションが発生し、フィラメントが相互に絡まり、実質的に分離していない本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸が得られる。

なお、ポリエステル高配向未延伸糸の複屈折率が０．０３未満の場合、繊維内部構造が不安定であるため、糸質の経時変化や染色斑等が発生するという問題が起こる。また、該複屈折率が０．０８を超えると、加熱することなく延伸した場合に自然な斑延伸が困難となる。ポリエステル延伸糸の熱水収縮率が１０％未満であると、仮撚時の熱固定により糸条の熱収縮率が大きく低下して、本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸に必要な熱水収縮率が得られなくなる。また、３０％を超えると加工後でも、熱水収縮率が残り、本発明の糸が得られない。更に融着する仮撚温度下では、得られるポリエステル複合仮撚捲縮糸に融着部分が形成され、織編物にしたときに、いわゆるガリ感のある粗野な織編物となる。

本発明のポリエステル高配向未延伸糸は、たとえば紡糸速度２０００〜３５００ｍ／分で延伸することなく巻き取ることによって得られる。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸の製造方法において、仮撚方法は特に限定されず、ピン方式、摩擦方式、エア旋回流方式等の公知の方法を採用することができる。また、仮撚トルクの低減による後工程通過性等の目的に応じて、仮撚後に第２ヒーターを用いて熱セットを行なうことも可能である。

本発明のポリエステル複合仮撚捲縮糸を含む織編物は、その混率並びに織編物組織を、目的の風合いや製品外観が得られる範囲で決定すればよい。また、本発明の複合仮撚捲縮糸単独からなる織編物、または該捲縮糸と他繊維との合撚糸からなる織編物、該捲縮糸を織編物の一部に用いた織編物でもよく、本発明の複合仮撚捲縮糸の効果が得られる範囲内で種々の織編物を得ることが可能である。

以下に本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、上述に記載の無い各物性は次の方法で求めた。
（１）熱水収縮率
ＪＩＳ−Ｌ−１０１３Ａ法に準拠して測定した。
（２）風合い評価
得られた加工糸を用い、２０ゲージの一口通編機で製編し、この編地を常法により精練（７０℃、１５分）し、次いで、分散染料を用いて染色（１３０℃、３０分）を行った。その後、ハンドリングならびに目視判定による評価を行なった。

エチレンテレフタレートを主体とする樹脂から通常の溶融紡糸法によって得たポリエステル高配向未延伸糸（９０ｄｔｅｘ／４８Ｆ、複屈折率：０．０４２、二酸化チタン含有量：２質量％）を２本引き揃えて、加熱することなく原長の１．３倍に延伸した後、引き続いてポリエステル延伸糸（５６ｄｔｅｘ／１２Ｆ、熱水収縮率１８％）と合糸して、仮撚加撚域に供給し、加工速度９０ｍ／分、仮撚オーバーフィード率（ＯＦ）３％、仮撚１ｓｔヒーター温度１５０℃、仮撚数１５００Ｔ／ｍ、巻取り速度８５ｍ／分の仮撚条件で加工を行い、ポリエステル複合仮撚捲縮糸を得た。
得られたポリエステル複合仮撚捲縮糸は、熱水収縮率が５．９％、交絡部の数が０．２ヶ／ｍであり、糸条は実質的に分離していないものであった。
かくして得られた仮撚加工糸を用いて、上述の方法で編物となし、上述の条件で精練（精練剤にスコアロール７００（花王（株）製））し、次いで分散染料（Terasil Navy Blue（日本チバガイギー製））を用いて染色を行った後、風合いを評価した結果、製編時に特に問題なく、また、編地はドライ感、フクラミ感、ソフト感並びに高級感を併せ持つスパンライクな風合いを有するものであった。

（比較例１）
実施例１で用いたと同様のポリエステル高配向未延伸糸を２本引き揃えて、１．３倍の延伸倍率で加熱することなく延伸した後、引き続いてポリエステル延伸糸（５６ｄｔｅｘ／２４Ｆ、熱水収縮率７％）と合糸して（以下、実施例１同様、但し、仮撚ＯＦ１％。）ポリエステル複合仮撚捲縮糸を得た。
得られたポリエステル複合仮撚捲縮糸は、熱水収縮率が１．５％、交絡部の数が０．３ヶ／ｍであり、糸条は実質的に分離していないものであった。
得られた仮撚加工糸を用いて風合いを評価した結果、本例で得た編み地はドライ感があるものの、フクラミ感、ソフト感が不十分なものであった。
（比較例２）

実施例１で用いたものと同様のポリエステル高配向未延伸糸を２本引き揃えて、１．３倍の延伸倍率で加熱することなく延伸した後、通常のインターレースノズルを用いてエア交絡処理（エア圧：０．４ＭＰａ）を施し、引き続いてポリエステル延伸糸（５６ｄｔｅｘ／１２Ｆ、熱水収縮率：１８％）と合糸して、仮撚加撚域に供給し、加工速度９０ｍ／分、仮撚ＯＦ１％、仮撚１ｓｔヒーター温度１５０℃、仮撚数１５００Ｔ／ｍ、巻き取り速度８５ｍ／分の仮撚条件で加工を行い、ポリエステル複合仮撚捲縮糸を得た。
得られたポリエステル複合仮撚捲縮糸は、熱水収縮率が７．２％、交絡部の数が５６ヶ／ｍであり、糸条は実質的に分離していないものであった。
本例で得た仮撚加工糸を用いて実施例１と同様にして風合いを評価した結果、製編時に特に問題なく、また、編み地はドライ感、フクラミ感は得られていたが、交絡部形成に伴い、風合いは若干ソフト感に欠け、また編物表面にインターレースマークの目立つものであった。

Claims (3)

1. 二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％であるポリエステル高配向未延伸糸とポリエステル延伸糸で構成され、ポリエステル高配向未延伸糸の繊度Ｄ１とポリエステル延伸糸の繊度Ｄ２との繊度比Ｄ１／Ｄ２が、１．５〜５の範囲であるポリエステル複合仮撚捲縮糸であり、該仮撚捲縮糸の熱水収縮率が５〜１５％、交絡部の数が５ケ／ｍ未満であって、かつ、実質的に糸条が分離していないことを特徴とするポリエステル複合仮撚捲縮糸。
2. 複屈折率が０．０３以上０．０８以下で、かつ、二酸化チタン含有量が１．５〜３．０質量％であるポリエステル高配向未延伸糸を２本以上引き揃えて、１．１倍以上１．５倍以下の延伸倍率で加熱することなく延伸し、次いで、熱水収縮率が１０〜３０％のポリエステル延伸糸と合糸した後、糸条同士が融着しない温度下で、オーバーフィード仮撚加工を行うことを特徴とする請求項１に記載のポリエステル複合仮撚捲縮糸の製造方法。
3. 請求項１に記載のポリエステル複合仮撚捲縮糸を含む織編物。