JP4304644B2 - 熱可塑性コポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性に優れ、高い機械的強度と、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を有し、耐光劣化性と耐熱エージング性に優れる熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレートのような結晶性芳香族ポリエステルにダイマー酸を共重合した熱可塑性コポリエステル樹脂は、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を有し、しかも耐熱エージング性に優れたポリエステル樹脂として知られている。たとえば、特開昭50−90697号公報には、テレフタル酸の他にダイマー酸を含む酸成分と、主として脂肪族ジオールからなるグリコール成分から構成される熱可塑性コポリエステル樹脂および、その重合時に芳香族アミン系安定剤を使用すること、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系とリン系酸化防止剤の混合物が加熱老化性の安定化に有用であること、さらに紫外線に対して安定化させるには種々の紫外線吸収剤を配合すればよいことが開示されている。
【0003】
しかしながら、上記特開昭50−90697号公報に開示された熱可塑性コポリエステル樹脂は、ある程度、耐光劣化性と耐熱エージング性に優れたポリエステル樹脂であるが、長期にわたる耐光劣化性や耐熱エージング性は十分ではなく、比較的短時間で強度や伸びが低下して使用できなくなったり、成形品の表面に亀裂が発生して外観が悪くなったりするという問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0005】
したがって、本発明の目的は、成形性に優れ、高い機械的強度と、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を有し、耐光劣化性と耐熱エージング性に優れた熱可塑性コポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物は、
(1)芳香族ジカルボン酸(a−1)と、水素添加したダイマー酸(a−2)とを主成分とし、水素添加したダイマー酸(a−2)が、全ジカルボン酸成分の1〜60モル%であるジカルボン酸成分(a)と、1,4−ブタンジオール(b)とから得られる結晶性の熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤(B)0.01〜5重量部を単独で、またはヒンダードアミン系光安定剤(B)0.01〜5重量部と紫外線吸収剤(C)0.01〜5重量部とを組合せて配合し、さらに芳香族アミン系酸化防止剤(D)を0.01〜5重量部を配合したものであり、
さらに、さらに、ポリアミド樹脂(E)0.1〜20重量部を配合したものであり、
さらに、(1)の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に、さらに、熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)0.01〜5重量部を単独で、またはヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)0.01〜5重量部とリン系酸化防止剤(G)0.01〜5重量部とを組合せて配合したものであり、
さらに、その熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に、さらに、ポリアミド樹脂(E)0.1〜20重量部を配合したものである。
【0007】
また、前記芳香族ジカルボン酸(a−1)がテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸であること、
前記水素添加したダイマー酸(a−2)の純度が94%以上であること、
前記水素添加したダイマー酸(a−2)の純度が98%以上であること、
前記芳香族アミン系酸化防止剤(D)がジフェニルアミン系化合物であること、
前記ポリアミド樹脂(E)が共重合ポリアミド樹脂であること、
前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)が分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物であること、
前記リン系酸化防止剤(G)が分子中に2つ以上のリン原子を有する化合物であること、
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を適用することにより、一層優れた効果の取得を期待することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
【0009】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物を形成する結晶性の熱可塑性コポリエステル樹脂(A)のジカルボン酸成分(a)は、芳香族ジカルボン酸(a−1)と、水素添加したダイマー酸(a−2)とを主成分とする。芳香族ジカルボン酸(a−1)の具体例としては、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、またはそのエステル形成性誘導体が好ましく、この他にイソフタル酸、フタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。本発明に用いられる水素添加したダイマー酸(a−2)は、精製した植物性不飽和脂肪酸の二量化物の水素添加によって得られたもの、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。水素添加したダイマー酸(a−2)は、蒸留精製によって単量体や3量体を除去した高純度化したダイマー酸を水素添加したものを用いることが好ましい。重合反応性および共重合体の物性が優れていることから、水素添加したダイマー酸(a−2)の純度が94%以上であるものが好ましく、98%以上であるものが特に好ましい。
【0010】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物を形成する熱可塑性コポリエステル樹脂(A)においては、水素添加したダイマー酸(a−2)が、全ジカルボン酸成分の1〜60モル%、好ましくは5〜55モル%、さらに好ましくは10〜50モル%である。水素添加したダイマー酸(a−2)が、1モル%未満では得られる共重合ポリエステル樹脂組成物の耐衝撃性などのゴム的弾性が十分ではない。また60モル%を越えると、剛性の低下が大きい上、融点が低く、また結晶化速度が遅くなり、成形性に劣る熱可塑性コポリエステル樹脂組成物しか得られない。
【0011】
本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物を形成する熱可塑性コポリエステル樹脂(A)の低分子量グリコール成分(b)は、1,4−ブタンジオールである。
【0013】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物を形成する熱可塑性コポリエステル樹脂(A)の好ましい製造方法としては、例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルコールジエステルと、水素添加したダイマー酸と、過剰量の低分子量グリコールを、チタン化合物、およびヒンダードフェノール化合物の存在下にエステル交換反応およびエステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、あるいは芳香族ジカルボン酸と、水素添加したダイマー酸と、過剰量のグリコールを、チタン化合物、スズ化合物、およびヒンダードフェノール化合物の存在下にエステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法などが挙げられる。また、ヒンダードフェノール化合物は重縮合時に添加してもよいし、その一部を重縮合終了後に配合してもよい。
【0014】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つであるヒンダードアミン系光安定剤(B)の具体例としては、ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジニル)エステル、ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトニメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物などが挙げられる。これらの中でも、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)やポリ[{6−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトニメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]などの使用が好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つである紫外線吸収剤(C)の具体例としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス−(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、および2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォン酸、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。これらの中でも、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどの使用が好ましい。
【0016】
これらの光安定剤(B)、(C)の配合量は、いずれも熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。配合量が0.01重量部未満では目的とする改良効果の得られる度合いが小さく、また5重量部を越えるとブルーミングを生じたり、熱可塑性コポリエステル樹脂組成物の機械的強度が低下したりするため好ましくない。
【0017】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つである芳香族アミン系酸化防止剤(D)の具体例としては、フェニルナフチルアミン、4,4’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、および4−イソプロポキシジフェニルアミンなどが挙げられるが、これらの中でもジフェニルアミン系化合物の使用が好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つであるポリアミド樹脂(E)とは、分子鎖中にアミド結合を有する高分子化合物であり、ラクタムからの重合体や、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などと、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどとの反応により得られる塩の重合体、または、ω−アミノカルボン酸からの重合体などが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は共重合体でも良いし、異なる重合体を2種類以上組み合わせて使用してもよい。これらのポリアミド樹脂の中でも、2元あるいは3元以上の共重合ポリアミド樹脂を用いた場合に、さらに高い効果が得られる。
【0019】
ポリアミド樹脂(E)の配合量は、熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。ポリアミド樹脂(E)の配合量が0.1重量部未満では目的とする改良効果の得られる度合いが小さく、また20重量部をこえると熱可塑性コポリエステル樹脂の本来有している柔軟性やゴム的性質が損なわれることになるため好ましくない。
【0020】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つであるヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)の具体例としては、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸のジエチルエステル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、α−オクタデシル−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6−(ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン、ヘキサメチレングリコール−ビス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド)、2,2−チオ[ジエチル−ビス−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンホスホン酸のジオクタデシルエステル、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ジ−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、およびトリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも特にテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンのような分子量が500以上のものの使用が好ましい。
【0021】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に用いられる成分の一つであるリン系酸化防止剤(G)とは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、およびジアルキルビスフェノールAジホスファイトなどのリンを含む化合物である。これらの中でも、分子中にリン原子とともにイオウ原子も有する化合物、あるいは分子中に2つ以上のリン原子を有する化合物の使用が好ましい。
【0022】
これらの酸化防止剤(D)、(F)、(G)の配合量は、いずれも熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部である。酸化防止剤(E)、(F)、(G)の配合量が0.01重量部未満では目的とする改良効果の得られる度合いが小さく、また5重量部を越えるとブルーミングを生じたり、熱可塑性コポリエステル樹脂組成物の機械的強度が低下したりするため好ましくない。
【0023】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性コポリエステル樹脂にポリアミド樹脂や所定の光安定剤や酸化防止剤を配合した原料を、スクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法、またスクリュー型押出機に、まず熱可塑性コポリエステル樹脂を供給して溶融し、さらに他の供給口よりポリアミド樹脂や光安定剤や酸化防止剤を供給して混練する方法など、適宜採用することができる。
【0024】
このように構成される本発明の共重合ポリエステル樹脂組成物は、耐光劣化性と耐熱エージング性に優れる。
【0025】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤を添加することができる。例えば公知の結晶核剤や滑剤などの成形助剤、顔料や染料などの着色剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、可塑剤、離型剤などを任意に含有することができる。
【0026】
本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物は、成形性に優れ、高い機械的強度と、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質を有し、耐光劣化性と耐熱エージング性に優れる。このため、自動車、電子・電気機器、精密機器用途の成形品、各種シート、各種フィルムなどに有用である。
【0027】
【実施例】
以下に実施例によって本発明の効果を説明する。なお、実施例中の%および部とは、ことわりのない場合すべて重量基準である。また、実施例中に示される物性は次のように測定した。
[相対粘度]
o−クロロフェノールを溶媒とした0.5%のポリマ溶液を25℃で測定した。
[融点]
差動走査熱量計(Du Pont社製DSC−910型)を使用して、窒素ガス雰囲気下、10℃/分の昇温速度で加熱した時の融解ピークの頂上温度を測定した。
[硬度(ショアDスケール)]
JIS K−7215に準じて測定した。
[耐光劣化性]
射出成形して作ったJIS 2号型ダンベル試験片を、ブラックパネル温度83℃のウェザー・オー・メーター中で紫外線照射し、引張破断伸びが初期の半分に低下する時間を測定した。
[耐熱エージング性]
射出成形して作ったJIS 2号型ダンベル試験片を、150℃の熱風オーブン中でエージングし、引張破断伸びが初期の半分に低下する時間を測定した。
[参考例1〜3]
テレフタル酸145部、純度98%の水素添加したダイマー酸である”プリポール”1009(ユニケマ社製)117部および1,4−ブタンジオール160部を、テトラ−n−ブチルチタネート0.15部、モノ−n−ブチル−モノヒドロキシスズオキサイド0.03部とともに、ヘリカルリボン型撹拌翼を備えた反応容器に仕込み、190〜225℃で反応水を系外に留出しながらエステル化反応を行なった。反応混合物にテトラ−n−ブチルチタネート0.45部を追添加し、さらに”イルガノックス”1098(チバガイギー社製アミド基含有ヒンダ−ドフェノ−ル系酸化防止剤、分子量637)0.15部を添加した後、245℃に昇温し、次いで50分かけて系内の圧力を0.2mmHgの減圧とし、その条件下で2時間45分重合を行わせた。得られたポリマを水中にストランド状で吐出し、カッティングを行ってペレット化して、水素添加したダイマー酸が全ジカルボン酸成分の19モル%である共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。これと同様に、表1に示す共重合ポリエステル樹脂(A−2)と(A−3)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂の物性を表1に示す。
【0028】
【表1】
[光安定剤]
下記実施例において使用した光安定剤は以下の通りである。
B−1:チバガイギー社製ヒンダードアミン系光安定剤"チヌビン"144
C−1:チバガイギー社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤"チヌビン"327
[酸化防止剤]
下記実施例において使用した酸化防止剤は以下の通りである。
D−1:ユニロイヤル社製ジフェニルアミン系酸化防止剤"ナウガード"445
F−1:チバガイギー社製ヒンダードフェノール系酸化防止剤"イルガノックス"
1010(分子量:1177.7)
G−1:旭電化工業社製リン系酸化防止剤"アデカスタブ"PEP−4C
(分子中に2個のリン原子を含有)
[ポリアミド樹脂の製造]
ポリカプロラクタムとポリヘキサメチレンアジパミドの組成比が約65/35からなる共重合体(ポリアミド樹脂(E−1))、およびポリカプロラクタムとポリヘキサメチレンアジパミドおよびポリヘキサメチレンセバカミドの組成比が約45/35/20からなる3元共重合体(ポリアミド樹脂(E−2))を製造した。
[実施例1〜5]
参考例で得られた共重合ポリエステル樹脂(A−1)、(A−2)、(A−3)に、光安定剤、酸化防止剤、ポリアミド樹脂をいずれも表2に示すような配合比率でドライブレンドし、45mmφのスクリューを有する2軸押出機を用いて、240℃で溶融混練したのちペレット化した。このペレットを80℃で5時間乾燥後、成形温度240℃、金型温度60℃で、JIS 2号型ダンベルに射出成形した。この射出成形したダンベルを用いて耐光劣化性と耐熱エージング性を評価した。耐光劣化性は、ブラックパネル温度83℃のサンシャイン−ウェザー−オー−メーター中で、120分間に18分間の水スプレーを行いつつ処理し、引張破断伸度の保持率が50%に低下する照射時間を調べた。耐熱エージング性は、150℃のギアーオーブン中で熱処理し、引張破断伸度の保持率が50%に低下する時間を調べた。これらの結果を表3に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
【表3】
[比較例1〜10]
樹脂組成物の原料を表2に示した各配合比率でドライブレンドし、実施例1〜5と同様にペレット化を行った。これらのペレットと、参考例で得られたポリエステルブロック共重合体(A−1)〜(A−3)そのものから、実施例1〜5と同様に射出成形してダンベルを作り、同様に耐光劣化性と耐熱エージング性を評価した。これらの結果を表3に併せて示す。
【0031】
表3の結果から明らかなように、本発明の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物は、耐光劣化性と耐熱エージング性のどちらにも優れている。一方、比較例に示したように、光安定剤として紫外線吸収剤のみを添加した熱可塑性コポリエステル樹脂組成物や、芳香族アミン系酸化防止剤を添加していない熱可塑性コポリエステル樹脂、全く安定化されてない熱可塑性コポリエステルは、耐光劣化性と耐熱エージング性が十分ではない。
【0032】
【発明の効果】
本発明の、熱可塑性コポリエステル樹脂に、ヒンダードアミン系光安定剤を配合した熱可塑性コポリエステル樹脂組成物は、優れた耐光劣化性と耐熱エージング性を有する成形品を与えることができる。
Claims (11)
- 芳香族ジカルボン酸(a−1)と、水素添加したダイマー酸(a−2)とを主成分とし、水素添加したダイマー酸(a−2)が、全ジカルボン酸成分の1〜60モル%であるジカルボン酸成分(a)と、1,4−ブタンジオール(b)とから得られる結晶性の熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対して、ヒンダードアミン系光安定剤(B)0.01〜5重量部を単独で、またはヒンダードアミン系光安定剤(B)0.01〜5重量部と紫外線吸収剤(C)0.01〜5重量部とを組合せて配合し、さらに芳香族アミン系酸化防止剤(D)を、0.01〜5重量部を配合した熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- さらに、ポリアミド樹脂(E)0.1〜20重量部を配合した請求項1記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 請求項1記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に、さらに、熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)0.01〜5重量部を単独で、またはヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)0.01〜5重量部とリン系酸化防止剤(G)0.01〜5重量部とを組合せて配合した熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 請求項3記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物に、さらに、熱可塑性コポリエステル樹脂(A)100重量部に対し、ポリアミド樹脂(E)0.1〜20重量部を配合した熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記芳香族ジカルボン酸(a−1)がテレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記水素添加したダイマー酸(a−2)の純度が94%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記水素添加したダイマー酸(a−2)の純度が98%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記芳香族アミン系酸化防止剤(D)がジフェニルアミン系化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記ポリアミド樹脂(E)が共重合ポリアミド樹脂である請求項2または請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤(F)が分子量500以上のヒンダードフェノール系化合物である請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
- 前記リン系酸化防止剤(G)が分子中に2つ以上のリン原子を有する化合物である請求項3または請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性コポリエステル樹脂組成物。
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