JP3832171B2 - ポリエステル系エラストマー組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱老化性が良好なポリエステル系エラストマー組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリブチレンテレフタレート単位等の結晶性芳香族ポリエステル単位をハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール単位等の脂肪族ポリエーテル単位をソフトセグメントとするポリエーテルエステルブロック共重合体は、押出成形性、射出成形性に優れ、機械的強度が高く、耐衝撃性、弾性回復性、柔軟性などのゴム的性質、低温および高温特性、常温での耐油性などに優れ、更に熱可塑性を有していて成形加工が容易であるため、自動車部品、電気・電子部品、繊維及びフィルム等に広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエーテルエステルブロック共重合体は、上記のような優れた特性を有する反面、高温での耐油性が不十分で、強度や伸びの経時的な劣化が著しいため、高温の油と長時間接触する用途への適用は困難であった。
また、ポリエーテルエステルブロック共重合体は、酸化劣化を受けやすいため、耐熱老化性が劣り、高温雰囲気で使用した場合に、比較的短時間で強度や伸びが低下したり、成形品の表面に亀裂が発生して外観が悪化したりするという欠点があり、高温や酸化雰囲気下では使用に制限を受けていた。
【0004】
このようなポリエーテルエステルブロック共重合体の耐油性や耐熱老化性の欠点を、酸化防止剤の選択や併用によって改良する試みが、従来から数多くなされている。(例えば、特公昭46−38911号公報、特開昭48−89955号公報、特開昭58−23848号公報、特開平2−173059号公報など。)特に、特開平11−323109号公報には、ポリエーテルエステルブロック共重合体に芳香族アミン系酸化防止剤と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤とを配合した、ポリエーテルエステルブロック共重合体の耐油性、耐グリース性及び耐熱エージング性を改良した樹脂組成物が提案されている。
しかしながら、高温用のCVJブーツの材料、特にエンジン側のCVJブーツの材料として、140℃の耐熱老化性を要求される場合には、上記の組成物では依然として性能が不十分な場合があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の従来技術を更に改良し、特に優れた耐熱老化性を有していて、CVJブーツ用として140℃での耐熱老化性を維持できるポリエステル系エラストマー組成物の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的を達成するために、ポリエステル系エラストマー組成物に配合すべき助剤を広く検討した結果、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤を他の数種の酸化防止剤と併用することにより、優れた効果が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明の要旨は、主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる重合体セグメント(b)とを主な構成成分とするポリエーテルエステルブロック共重合体(A)(以下、「共重合体(A)」と記す)と、該重合体(A)100重量部あたり、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)0.01〜5重量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)0.01〜5重量部とイオウ系酸化防止剤(D)0.01〜5重量部および/またはリン系酸化防止剤(E)0.01〜5重量部とを配合してなるポリエステル系エラストマー組成物、に存している。
【0008】
また本発明の要旨は、共重合体(A)100重量部あたり、更にスチレン系エラストマー(F)10〜100重量部を配合してなる前記のポリエステル系エラストマー組成物にも存している。
更に、本発明の要旨は、共重合体(A)の構成成分である結晶性重合体セグメント(a)がポリブチレンテレフタレート単位で構成される前記ポリエステル系エラストマー組成物、重合体セグメント(b)が主としてポリテトラメチレンエーテルグリコール単位で構成される前記ポリエステル系エラストマー組成物にも存している。
【0009】
本発明の別の要旨は、共重合体(A)の構成成分である重合体セグメント(b)の共重合体(A)中の含有量が10〜80重量%である上記のポリエステル系エラストマー組成物、及び共重合体(A)の融点が180℃以上である上記のポリエステル系エラストマー組成物にも存している。
本発明の他の要旨は、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)がジアルキルジチオカルバミン酸金属塩である上述のポリエステル系エラストマー組成物にも存している。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にを詳しく説明する。
(1)ポリエーテルエステルブロック共重合体(A)
本発明に用いられるポリエーテルエステルブロック共重合体(A)の結晶性重合体セグメント(a)は、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成される結晶性芳香族ポリエステルからなる単位であり、好ましくはテレフタル酸およびまたはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールとから誘導されるポリブチレンテレフタレート単位であるが、この他にテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−トリフェニルベンゼンなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル単位、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステル単位であっても良い。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
【0011】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体(A)の重合体セグメント(b)は、脂肪族ポリエーテルを主な構成成分とする単位である。脂肪族ポリエーテルの具体例としては、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリプロピレンエーテルグリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などが挙げられる。
【0012】
これらの脂肪族ポリエーテルの中でも、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性が良好であるので好ましい。
また、この重合体セグメント(b)の数平均分子量は、共重合された状態において300〜6000程度であることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる共重合体(A)中の重合体セグメント(b)の含有量は、10〜80重量%であるのが好ましく、15〜75重量%であるのが特に好ましい。この含有量が10重量%未満では、得られる組成物が硬くなる傾向となり、一方80重量%を超えて含まれると、組成物が柔軟になり過ぎて物性が発現しないことがある。
【0014】
本発明に用いられるポリエーテルエステルブロック共重合体(A)は特に限定されることなく、通常用いられる方法で製造することができる。
例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子量グリコール及び重合体セグメント(b)を構成する成分を、触媒の存在下でエステル交換反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグリコール及び重合体セグメント(b)を構成する成分を触媒の存在下でエステル化反応させ、得られる反応生成物を重縮合する方法、及び予め調製された結晶性セグメント(a)に重合体セグメント成分(b)を添加してエステル交換反応させてランダム化する方法など、いずれの方法も用いられる。
【0015】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物に用いられる成分の一つであるジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)としては、ジアルキルジチオカルバミン酸の金属塩が好ましく、中でもジアルキルジチオカルバミン酸ニッケルが好ましく、特にジブチルジチオカルバミン酸ニッケルが、耐熱老化性の改良効果が大きいので好ましい。
【0016】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物に用いられる成分の一つであるヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)の具体例としては、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ヒドロキシメチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,5−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−4−メチル−6−t−ブチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレン−ビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)スルフィド、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ジエチルエステル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、α−オクタデシル−3(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、6−(ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス−オクチル−チオ−1,3,5−トリアジン、ヘキサメチレングリコール−ビス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレン−ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ桂皮酸アミド)、2,2−チオ[ジエチル−ビス−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゼンホスホン酸ジオクタデシルエステル、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ジ−t−ブチルフェニル)ブタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス[β−(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル]イソシアヌレート等が挙げられる。
【0017】
これらの中でも特にテトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンのような分子量が500以上のものの使用が好ましい。
本発明のポリエステル系エラストマー組成物に用いられる成分の一つのイオウ系酸化防止剤(D)とは、チオエーテル系、ジチオ酸塩系、メルカプトベンズイミダゾール系、チオカルバニリド系、およびチオジプロピオンエステル系などのイオウを含む化合物である。但し、上記のジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)に相当するものは含まない。
【0018】
これらの中でも、特にチオジプロピオンエステル系化合物が好ましい。
本発明のポリエステル系エラストマー組成物に用いられる成分の一つのリン系酸化防止剤(E)とは、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸誘導体、フェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、およびジアルキルビスフェノールAジホスファイトなどのリンを含む化合物である。
【0019】
これらの中でも、分子中にリン原子とともにイオウ原子も有する化合物、あるいは分子中に2つ以上のリン原子を有する化合物の使用が好ましい。
本発明のポリエステル系エラストマー組成物への酸化防止剤(B)〜(E)の配合量は、いずれもポリエーテルエステルブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.01〜5重量部である。この含有量が0.01重量部未満では、耐熱老化性の改良効果が不十分であり、一方5重量部を超えて使用しても、添加量の増加に見合う効果は得られず経済的でないだけでなく、ブリード等の問題を起こしたり、組成物の機械的強度が低下したりすることがあり、好ましくない。
【0020】
より好ましい含有量は0.05〜3重量部、特に好ましくは0.1〜1.5重量部である。
なお、上記の酸化防止剤(B)〜(E)は、(B)〜(E)の4種類、又は(B)、(C)、(D)もしくは(B)、(C)、(E)の各3種類を組み合わせて配合することが必要であり、これらの組合わせから1成分でも欠いた場合には、目的の改良効果を得ることができない。
【0021】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物に、スチレン系エラストマー(F)をポリエーテルエステルブロック共重合体(A)100重量部あたり、5〜100重量部配合すると、柔軟性・弾性が改良されるので好ましい。この配合量が5重量部未満では、添加による効果が不十分であり、一方100重量部を超えると耐熱性が不足する傾向となる。
【0022】
ここで言うスチレン系エラストマー(F)とは、ポリスチレンからなるブロックとブタジエン、イソプレン、イソブテン等の炭素原子数3〜8のモノオレフィン、ジオレフィンの少なくとも一種を構成単位とする重合体ブロックからなる、ブロック重合体及びその水素添加物を言い、いわゆるSEBS系ブロック重合体、SIBS系ブロック共重合体、SEEPS系ブロック共重合体やその水素添加物等が例示できる。
【0023】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物には、上記び酸化防止剤(B)〜(E)及びスチレン系エラストマー(F)に加えて、本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤を添加することができる。
例えば結晶核剤や滑剤などの成形助剤、紫外線吸収剤やヒンダードアミン系化合物である光安定剤、耐加水分解改良剤、顔料や染料などの着色剤、帯電防止剤、導電剤、難燃剤、補強剤、充填剤、可塑剤、離型剤などを含有することができる。
【0024】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエーテルエステルブロック共重合体に所定の酸化防止剤を配合した原料、あるいはポリエーテルエステルブロック共重合体に所定の酸化防止剤とスチレン系エラストマーを配合した原料を、スクリュー型押出機に供給し溶融混練する方法、またスクリュー型押出機に、まずポリエーテルエステルブロック共重合体を供給して溶融し、さらに他の供給口より酸化防止剤や他の配合物を供給して混練し、さらに他の供給口よりスチレン系エラストマーを供給混練する方法などを、配合剤の量やその種類に応じて適宜採用することができる。
【0025】
このようにして得られる本発明のポリエステル系エラストマー組成物は、初期の物性が優れているだけでなく、高温(140℃)雰囲気下での機械物性の保持率も良好で、優れた耐熱老化性を示す。
このような特徴を活かして、本発明のポリエステル系エラストマー組成物は、自動車部品、電気・電子部品、繊維およびフィルムなどの分野に好適に使用でき、特に高温用(140℃耐熱)CVJブーツ用として極めて有用である。
【0026】
【実施例】
以下、実施例を用いて、本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
<構成成分>
ポリエーテルエステルブロック共重合体(“A”を付した記号で示す)
A−1;ポリブチレンテレフタレートを結晶性重合体セグメント(a)とし、重量平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを重合体セグメント(b)とするポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量が20重量%のポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率:410MPa、密度:1.24g/cm3 、示差走査熱量計による融解ピーク温度:217℃、JIS−D硬度:65、MFR(230℃、2.16kg荷重):22g/10分)。
【0027】
A−2;ポリブチレンテレフタレートを結晶性重合体セグメント(a)とし、重量平均分子量1500のポリテトラメチレンエーテルグリコールを重合体セグメント(b)とするポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、該ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量が45重量%のポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率:150MPa、密度:1.17g/cm3 、示差走査熱量計による融解ピーク温度:202℃、JIS−D硬度:49、MFR(230℃、2.16kg荷重):10g/10分)。
【0028】
A−3;ポリブチレンテレフタレートを結晶性重合体セグメント(a)とし、重量平均分子量2000のポリテトラメチレンエーテルグリコールを重合体セグメント(b)とするポリエステルポリエーテルブロック共重合体であって、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの含有量が65重量%のポリエステル系熱可塑性エラストマー(曲げ弾性率:35MPa、密度:1.09g/cm3 、示差走査熱量計による融解ピーク温度:184℃、JIS−D硬度:33、MFR(230℃、2.16kg荷重):25g/10分)。
ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(“B”を付した記号で示す)
B−1;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル
【0029】
【化1】
Figure 0003832171
【0030】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(“C”を付した記号で示す)
C−1;テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン
【0031】
【化2】
Figure 0003832171
【0032】
Cー2;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【0033】
【化3】
Figure 0003832171
【0034】
イオウ系酸化防止剤(“D”を付した記号で示す)
D−1;ペンタエリスリチル−テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)
(H2512-S-CH2CH2COOCH24
リン系酸化防止剤(“E”を付した記号で示す)
E−1;トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト
【0035】
【化4】
Figure 0003832171
【0036】
スチレン系エラストマー(“F”を付した記号で示す)
F−1;スチレンーブタジエンースチレンブロック共重合体の水素添加物(スチレン含有量:32重量%、重量平均分子量:246,000、ブタジエンブロックの1,2−ビニル結合含有量:37重量%、水素添加率:98%以上、シェルジャパン株式会社製「クレイトンG1651」)100重量部に対して、パラフィン系オイル(40℃動粘度:381.6cSt、重量平均分子量:746、出光興産株式会社製「ダイアナプロセスオイルPW380」)50重量部、及びポリプロピレン樹脂(曲げ弾性率:1,400MPa、密度:0.90〜0.91g/cm3、日本ポリケム株式会社製「ノバテックPP MA2P」)15重量部を添加した上、この配合物の合計量100重量部として、これにフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製「イルガノックス1010」)を0.05重量部添加して、ヘンシェルミキサーを用いて2分間常温にて均一混合した。この混合物を、圧縮比L/D=30、シリンダー径:44mmの二軸押出機を用いて設定温度220℃の条件で溶融混練してスチレン系エラストマー(JIS−A硬度:60)を得た。
芳香族アミン系酸化防止剤(“G”を付した記号で示す)
G−1;4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
【0037】
【化5】
Figure 0003832171
【0038】
<実施例1〜9及び比較例1〜10>
表1に示す組成比にて各成分を配合し、ヘンシェルミキサーを用いて2分間常温にて均一混合した。この混合物に、混合物100重量部あたりヒンダードアミン系光安定剤(ビス−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルセバケート、三共株式会社製「サノールLS770」)0.2重量部を添加した上で、シリンダー径:44mm、圧縮比L/D=30の二軸押出機を用いて220℃で溶融混練してポリエステル系エラストマー組成物のペレットを製造した。
得られたペレットを100℃で3時間乾燥した後、インラインスクリュータイプ射出成型機(東芝機械株式会社製「IS130GN−5A」)を用いて、射出圧力600kg/cm2、射出温度220℃、金型温度30℃にて、幅120mm×長さ80mm×厚み2mmのシートを作成した。
以下の方法に従って、ペレット及び射出成形シートの評価を実施した。結果は表1及び表2にまとめて示す。
【0039】
メルトフローレート(MFR)
JIS−K−7210に準拠してMFR(230℃、2.16kg荷重)を測定した。
柔軟性
JIS−K−6301に準拠してJIS−A硬度を、JIS−K−7215に準拠してD硬度を測定した。
【0040】
引張強さ、引張伸び
得られたシートから引張試験片を作成し、JIS−K−6301に準拠して引張強さと引張伸びを測定した。
140℃耐熱老化性
得られたシートから引張試験片を作成し、140℃のギアー・オーブン中で500時間暴露した後に、JIS−K−6301に準拠して引張強さと引張伸びを測定し、引張強さと引張伸びの保持率を計算した。
【0041】
【表1】
Figure 0003832171
【0042】
【表2】
Figure 0003832171
【0043】
<結果の評価>
表1、2に示す結果から以下の諸点が判明する。
(1)ポリエーテルエステルブロック共重合体を単独で用いた比較例1、7、9は、140℃での熱老化試験後は、著しく劣化が進んでいる。
(2)(B)成分を加えない比較例では、対応する実施例(例えば比較例2→実施例1、比較例8→実施例7、比較例10→実施例9)と比べて、140℃での熱老化試験後の引張強さ、引張伸びの保持率が大きく劣っている。
(3)(C)成分、(D)成分を含まない比較例4、5では、やはり対応する実施例1〜3と比べて、同様に熱老化試験後の物性の低下が見られる。
(4)(B)成分に代えて、(G)成分を用いた比較例6でも、対応する実施例1と比べて、20%程物性の保持率が劣っている。
【0044】
【発明の効果】
本発明のポリエステル系エラストマー組成物は、ポリエーテルエステルブロック共重合体に、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤とを組み合わせて配合したことにより、140℃における耐熱老化試験後の物性の保持率が極めて良好である。

Claims (8)

  1. 主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなる結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位からなる重合体セグメント(b)とを主な構成成分とするポリエーテルエステルブロック共重合体(A)(以下、「共重合体(A)」と記す)と、該重合体(A)100重量部あたり、ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)0.01〜5重量部と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C)0.01〜5重量部とイオウ系酸化防止剤(D)0.01〜5重量部および/またはリン系酸化防止剤(E)0.01〜5重量部とを配合してなるポリエステル系エラストマー組成物。
  2. 共重合体(A)100重量部あたり、更にスチレン系エラストマー(F)10〜100重量部を配合してなる請求項1に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  3. 共重合体(A)の構成成分である結晶性重合体セグメント(a)がポリブチレンテレフタレート単位で構成される請求項1又は2に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  4. 共重合体(A)の構成成分である重合体セグメント(b)が主としてポリテトラメチレンエーテルグリコール単位で構成される請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  5. 共重合体(A)の構成成分である重合体セグメント(b)の共重合体(A)中の含有量が10〜80重量%である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  6. 共重合体(A)の融点が180℃以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  7. ジチオカルバミン酸塩系酸化防止剤(B)がジアルキルジチオカルバミン酸金属塩である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
  8. ジアルキルジチオカルバミン酸金属塩がジアルキルジチオカルバミン酸ニッケルである請求項7に記載のポリエステル系エラストマー組成物。
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