JP4301480B2 - リコイルスタータ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動装置として用いられるリコイルスタータに係り、特にエンジン始動時のピーク荷重を軽減させ手に与える影響をやわらげるリコイルスタータに関するものであり、同時に防塵にも効果を有するリコイルスタータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のリコイルスタータは引出し、巻取り自由なロープを備えると共にゼンマイによって巻き戻されるリールおよび抑止板等を介して出没自在のラチェットからなる一連の機構をケース内に収容し、エンジンに直結した起動プーリにラチェットを掛合させて駆動させる構成であるが、この種のリコイルスタータは一般に、エンジンの始動トルクをロープを介して直に感じるため手に衝撃を受ける欠点を有していた。また、シャフと周りからリコイルスタータ内に侵入する塵埃を防止する手段は構造上極めて少なかった。
しかし、本出願人はリコイルスタータのクラッチ機構およびゼンマイと、ロープおよびリールとの間をシャフトで連結し、このシャフトを支持する軸受をスタータケースに一体で構成し、このシャフト付近にシール手段を設けてエンジン側への塵埃の侵入を防止するようにしたリコイルスタータ(実開昭62−190862号公報参照)や、クランクシャフトの軸線上に対向して軸受部を持つスタータケースをクランクケース等に装着し、前記軸受部のクランクシャフト側にクラッチ機構を、他方のスタータケース外側にリールを設け、かつ軸受部回りの摺動部にシール手段を設けて、前記クラッチ機構およびエンジン側を密閉するようにしたリコイルスタータ(実開昭63−61575号公報、実開昭63−92078号公報等参照)等を先に提案し、エンジン側への塵埃の侵入については対策がなされていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来のリコイルスタータは、いずれもエンジンの始動トルクをロープを介して直に感じるため、エンジン始動操作時のピーク荷重(圧縮上死点を越える際の荷重)が大きく、その荷重による衝撃が直接手や腕に伝わり好ましくないという難点があった。また、リコイルスタータ内への塵埃の侵入防止対策はほとんどなされていなかった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点を解決すべくなされたもので、リコイルスタータのエンジン始動操作時のピーク荷重を低減させ、手や腕に対する衝撃をやわらげることが可能で、かつ砂やゴミ等の塵埃にも強いリコイルスタータを提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るリコイルスタータは、クランクシャフトの延長線上に設けられた一方の軸受部を有する一方のスタータケースと、同じくクランクシャフトの延長線上に設けられ、かつ、前記一方の軸受部に挿通された、回動するスタータシャフトと、該スタータシャフトとエンジンとの間に形成されたワンウエイクラッチ機構と、前記一方のスタータケースと一体になるように互いに嵌合する、該スタータシャフトの他端を支持する他方の軸受部を有する他方のスタータケースと、前記2つの軸受部の間にある該スタータシャフトに対して回動自在に装着されたリールとからなるリコイルスタータであって、ロープを巻き取る方向に付勢され、内端を前記一方のスタータケース側で外端をリール側で係して着された一方のゼンマイと、ロープを引出したときのリールの回転力を弾性作用を伴ってスタータシャフトに伝達する、内端をスタータシャフトに設けたスリット側で外端をリール側で係して着された他方のゼンマイとを、該リールの両側にそれぞれ配設し、かつ、ロープの引き荷重は、前記他方のゼンマイの作用で上死点付近の位置で吸収され、前記他方のゼンマイの作用で下死点付近の位置で放出される構成となしたことを特徴とし、また、前記一方の軸受部に、該スタータシャフトの外周面に接するごとくダストシールを取付けたことを好ましい態様とするものである。
【0006】
すなわち、本発明は従来のリコイルスタータの力の伝達ラインである、ロープ→リール→クラッチ機構→エンジンに対して、シャフトを回転可能とし、ロープ→リール→ゼンマイ→シャフト→エンジンとし、弾性作用を有するゼンマイをシャフトとリールの間に介在させてエンジン始動操作時のピーク荷重をこのゼンマイに吸収させるようにしたものである。さらにクランクシャフトの軸線上に対向して設けた前記軸受部にダストシールを設けて、ゼンマイ、ロープ、リール、シャフト回りへの塵埃の侵入を防止したものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係るリコイルスタータの一実施例を示す縦断側面図、図2は図1のイーイ矢視図、図3は図1のローロ線上の縦断面図、図4はリコイルスタータにおけるロープの引力(エンジンの始動トルク)とリールの回転数の関係を示す図で、(a)は本発明のリコイルスタータ、(b)は従来のリコイルスタータ、図5は本発明のリコイルスタータと従来のリコイルスタータのロープ引き荷重と時間の関係を示す図で、1−1、1−2はスタータケース、2はスタータシャフト、3−1、3−2は軸受部、4はリール、5はカムプレート、6は締付けナット、7はラチェット、8はロープ、9−1、9−2はゼンマイ、10はスリット、11は止め輪、12はダストシール、13はリターンスプリングである。
【0008】
図1、図2、図3において、スタータケース1−1、1−2は一体的に凹凸嵌合されてその中央部に挿通されたスタータシャフト2に軸受部3−1、3−2を介して支承され、このスタータシャフト2のクランクシャフト(図面省略)側にはカムプレート5が締付けナット6により固着され、スタータシャフト2と共に回転する。さらに前記軸受部3−1と軸受部3−2との間には、外周にロープ8を巻回するリール4がスタータシャフト2に回動自在に装着され、このリール4のクランクシャフト(図面省略)側には前記スタータケース1−1とリール4とに両端を懸装されロープ8を巻取る方向に付勢されたゼンマイ9−1が収納され、リール4のクランクシャフトと反対側にはリール4とスタータシャフト2とに両端を懸装されロープ8を引出したときのリール4の回転力を弾性作用を伴ってスタータシャフト2に伝達するゼンマイ9−2が収納されている。このゼンマイ9−1はその内端をスタータケース1−1に係止し、外端をリール4側に係止して装着し、他方のゼンマイ9−2はその内端をスタータシャフト2に設けたスリット10に係止し、外端をリール4側に係止して装着している。また、クランクシャフト(図面省略)に取付けられたフライホイール(図面省略)の側面には、エンジンを始動させるとき、前記カムプレート5のカム部5aに噛み合うラチェット7がリターンスプリング13によって内側に付勢されている。さらに、軸受部3−1には、ケース1−1側から、泥や塵埃等がリコイルスタータ内に侵入しないようにダストシール12が組込まれている。
【0009】
つぎに上記のように構成された本発明の動作について説明すると、始動前は図2に示すごとく、カムプレート5のカム部5aにラチェット7が噛み合った静止状態より、ロープ8を引くとリール4が回転し、ゼンマイ9−1、9−2も同時に回転を始めるが、エンジン回転負荷があるためシャフト2はゼンマイ9−2がある程度畜力されるまで回転できない状態にあるが、やがてゼンマイ9−2の畜力がエンジンの回転負荷を上まわるとシャフト2を回転させてカムプレート5と噛み合っているラチェット7を介してフライホイールおよびクランクシャフトが回転し、エンジンが始動される。この時、ゼンマイ9−2の畜力が開放される回転力に、連続的に引き出しているロープ8の回転力がプラスされるため、エンジンを回転させる回転スピードを上げることができる。
このように本発明ではリール4の回転力を弾性作用を伴ってスタータシャフト2に伝達するゼンマイ9−2にエンジン始動時のピーク荷重が吸収されるので、手や腕に伝わる衝撃がやわらげられる。エンジン始動後、ロープ8を放すとラチェット7が遠心力で外方に回動し、カムプレート5が開放されることによりゼンマイ9−1によってリール4は逆回転し、ロープ8もリール4に巻戻される。なお、エンジンを停止するとラチェット7はカムプレート5上を摺動して元の位置に復帰する。
【0010】
ここで、リコイルスタータのエンジン始動時のピーク荷重の低減作用を図4、図5に基づいて説明する。
まず、従来のリコイルスタータの場合は、エンジンの始動トルクを仮に50kg−cmとすると、ロープ8を引く手に感じる力は図4(b)に示す通りとなり、ノッキングのようなごつごつ感を受け衝撃が大きいのに対し、本発明のリコイルスタータの場合は、仮にゼンマイ9−2の畜力トルクを20kg−cmとし、リール4の回転数が2回転でゼンマイ9−2が最後まで巻き縮まると仮定した場合には図4(a)のようになり、ロープ8を引く力は従来のリコイルスタータより小さい約30kg−cmとなるばかりでなく、最大と最小のロープ引力差が小となり、ごつごつ感が少なくなる。
なお、本発明のリコイルスタータにおけるゼンマイ9−2の畜力トルクは、始動トルクの1/2にするのがより効果的であるが、ゼンマイ9−2やその他の部品の耐久性や経済性を考慮して設定するのが好ましい。
【0011】
次に従来のリコイルスタータと本発明のリコイルスタータのロープ引き荷重の違いを図5に基づいて説明する。
従来のリコイルスタータでは、最初の上死点を越える第1圧縮でロープ引き荷重Wが最大となり、以降慣性作用により上死点荷重が下がっていき、この途中で着火する。これに対し、本発明のリコイルスタータでは、ゼンマイ9−2の作用により上死点付近では荷重の一部が吸収され、下死点付近で放出される。これを順次圧縮ごとに繰返し、全体としてロープを引く手に感じる最大荷重を下げ、また荷重変動によるごつごつ感を軽減させる。
【0012】
【発明の効果】
以上説明したごとく、本発明によれば、リールとスタータシャフトとを分割構造とし、その間に弾性作用を有するゼンマイを介在させてエンジン始動時のピーク荷重をこのゼンマイに吸収させるように構成したことにより、リコイルスタータのエンジン始動操作時のピーク荷重を低減でき、手や腕に対する衝撃をやわらげることができるという効果を奏する。さらに、軸受部にダストシールを組込んだことにより、砂やゴミ等の塵埃にも強いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリコイルスタータの一実施例を示す縦断側面図である。
【図2】図1のイーイ矢視図である。
【図3】図1のローロ線上の縦断面図である。
【図4】リコイルスタータにおけるロープの引力(エンジンの始動トルク)とリールの回転数の関係を示す図で、(a)は本発明のリコイルスタータ、(b)は従来のリコイルスタータである。
【図5】 本発明のリコイルスタータと従来のリコイルスタータのロープ引き荷重と時間の関係を示す図である。
【符号の説明】
1−1、1−2 スタータケース
2 スタータシャフト
3−1、3−2 軸受部
4 リール
5 カムプレート
6 締付けナット
7 ラチェット
8 ロープ
9−1、9−2 ゼンマイ
10 スリット
11 止め輪
12 ダストシール
13 リターンスプリング

Claims (2)

  1. クランクシャフトの延長線上に設けられた一方の軸受部を有する一方のスタータケースと、同じくクランクシャフトの延長線上に設けられ、かつ、前記一方の軸受部に挿通された、回動するスタータシャフトと、該スタータシャフトとエンジンとの間に形成されたワンウエイクラッチ機構と、前記一方のスタータケースと一体になるように互いに嵌合する、該スタータシャフトの他端を支持する他方の軸受部を有する他方のスタータケースと、前記2つの軸受部の間にある該スタータシャフトに対して回動自在に装着されたリールとからなるリコイルスタータであって、ロープを巻き取る方向に付勢され、内端を前記一方のスタータケース側で外端をリール側で係して着された一方のゼンマイと、ロープを引出したときのリールの回転力を弾性作用を伴ってスタータシャフトに伝達する、内端をスタータシャフトに設けたスリット側で外端をリール側で係して着された他方のゼンマイとを、該リールの両側にそれぞれ配設し、かつ、ロープの引き荷重は、前記他方のゼンマイの作用で上死点付近の位置で吸収され、前記他方のゼンマイの作用で下死点付近の位置で放出される構成となしたことを特徴とするリコイルスタータ。
  2. 前記一方の軸受部に、該スタータシャフトの外周面に接するごとくダストシールを取付けたことを特徴とする請求項1記載のリコイルスタータ。
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