JP3865299B2 - 内燃機関始動用のリコイルスタータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリールに巻回されたリコイルロープを引っ張ることによりリールを回転させて、該リールの回転をエンジン側に連結された回転部材に遠心ラチェット等を介して伝達し、該回転部材の回転によりエンジンをスタートさせる内燃機関始動用のリコイルスタータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のリコイルスタータとして実公平6−16964号公報に示すように、リコイルロープを牽引することにより回転されるリールに対して回転可能なカムを設け、かつ該カムとリールの間をダンパスプリングで連結させて形成したものが知られている。この技術によれば、始動時の急激な負荷をダンパスプリングの変形によって吸収させて衝撃的な負荷を柔らげると同時に、リール側の回転力をダンパスプリングに蓄力させ、圧縮行程を越えて負荷が小さくなったときにダンパスプリングに蓄力された回転力を放出して、プーリを加速回転させエンジンを始動し易くさせようにしたものである。またエンジンの停止時もエンジンの逆転による遠心クラッチの噛合の衝撃をダンパスプリングにより吸収するため、スタータに無理が掛らないようになるという利点がある。
【0003】
また、特開2001−132591号公報には、カムとリール間に緩衝蓄力手段を配置し、緩衝蓄力手段を収容しているゼンマイケースとリール間にラチェット機構を設けるとともに蓄力手段を収容しているゼンマイケースにワンウェイクラッチを設けたリコイルスタータが開示されている。この従来技術は、緩衝蓄力手段にリール側の回転力を蓄力させ、この緩衝蓄力手段に蓄力した回転力によりエンジン側のプーリを回転させてエンジンの始動を容易にしたものであり、ゼンマイケースに設けたワンウェイクラッチにより緩衝蓄力手段の弾力による逆方向の回転が阻止されるので、リール側に緩衝蓄力手段の弾力が伝達されず始動操作を容易にするものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記前者の従来技術では、構造が比較的簡単でエンジン始動の際、圧縮時のショックをある程度緩和することができるが、ダンパスプリングに蓄力された弾力が常にリール側に伝達されているため、この弾力がロープを介して手に伝達されるため始動がやりにくいことは否めない。また、後者の技術ではワンウェイクラッチとラチェット機構を設けることにより上記問題点を解決するものであるが、ラチェット機構とワンウェイクラッチ等を構成する為の部品点数が多くなり複雑な構造となるという問題がある。本発明は、上記従来技術の問題点を解決して、部品点数を削減して簡単な構造で始動性を改良した蓄力式の内燃機関始動用のリコイルスタータを提供しようとするものである。
【0005】
【課題を達成するための手段】
本発明は上記課題を解決するため、リコイル用のロープが巻回されるとともにケース内に形成された支軸に対して回動可能に支持されたリールと、該リールを前記ロープを巻き取る方向に回転付勢するリコイルゼンマイと、支軸に回転可能に設けたカムと、エンジン側のクランクシャフトと一体に回転される回転部材と、前記回転部材とカムとの間に設けられカムと回転部材間の回転を係合離脱させるクラッチ機構とからなるリコイルスタータにおいて、前記リールとカムとの間に一端がリールに他端がカムにそれぞれ係止された蓄力ゼンマイである緩衝蓄力手段を介在し、前記蓄力ゼンマイの蓄力状態に応じた外径の変位を検知して該蓄力によるリールの逆方向回転を阻止するとともに、該蓄力の放出によりリールの逆方向回転を許容する制御を行うストップ機構をリールとケース間に設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、前記回転部材とカムとの間に設けられたクラッチ機構が、回転部材上に設けた遠心ラチェットによるワンウェイクラッチであることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、前記回転部材とカムとの間に設けられたクラッチ機構が、カム上に設けたラチェットによるワンウェイクラッチであることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、前記ストップ機構が、ケースの内周面に周方向に沿って形成された鈎状突起と、リール上に揺動自在に設けられるとともに一端側に前記鈎状突起と係合される係止端が形成され他端側には前記蓄力ゼンマイと当接される制御端とを有するストッパと、前記係止端を鈎状突起に係合させる方向にストッパを付勢させる付勢手段とから構成されており、前記ストッパの制御端を前記蓄力ゼンマイの外周面に接触させるように配置して、蓄力ゼンマイ径の変位により係止端が鈎状突起と係脱するようにストッパを揺動させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下図に示す実施例に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本発明のリコイルスタータは図1乃至図3に示すように、ケース1と一体に内側に突出形成されている支軸2にリール3が回転自在に支持されており、該リール3には一端側がリール3に固定されたリコイルロープ4が巻回されており、リコイルロープ4の他端がケース1の外側に引き出されてその先端部にはリコイルロープ4を手動で引っ張るためのハンドル5が連結されている。前記ハンドル5を引っ張ることによりリコイルロープ4がリール3から引き出されてリール3が支軸2を中心として回転駆動される。リコイルロープ4により回転されたリール3を逆方向に回転させて、引き出されたリコイルロープ4をリール3に巻き戻すためのリコイルゼンマイ6がリール3とケース1との間に配置されている。図3に示すように、リコイルゼンマイ6の一端側6aは前記支軸2に形成された係止部2aに、そして他端側6bが前記リール3に固定されており、リコイルロープ4を引っ張ってリール3が回転される際に前記リコイルゼンマイ6に回転力が蓄力されて、リコイルロープ4を離すことにより蓄力された回転力でリール3を逆方向に回転させてリコイルロープ4をリール3に巻き戻す。
【0010】
前記支軸2の先端側にはカム7が回転自在に取り付けられており、支軸2の先端に螺合されたネジ8によりリール3とカム7が支軸2から逸脱するのを防止している。前記リール3の側面にはケース1の内方に向いた環状の凹部9が形成されており、この凹部9内にゼンマイケース10に収容された緩衝蓄力手段11が収容されており、ゼンマイケース10が前記凹部9を覆うように配置されている。この実施例では緩衝蓄力手段11は蓄力ゼンマイで構成されており、蓄力ゼンマイ11の内端11aは前記カム7のボス部に形成された凹部7aに係止され外端11bがリール3の外周壁3aに係止されている。
【0011】
前記リール3の外周のフランジ部側面には前記ゼンマイケース10の方へ突出された連係軸12がリール3と一体に形成されており、この連係軸12が前記ゼンマイケース10の外周縁に形成されている開口13内に貫通して係合されており、ゼンマイケース10がリール3と一体に回転されるように連係されている。即ち、リコイルロープ4の牽引によりリール3が回転され、蓄力ゼンマイ11を介してカム7を回転させることになる。
【0012】
前記連係軸12とケース1の内周面との間には、リール3の逆方向回転を阻止するためのストップ機構14が形成されている。ストップ機構14は、前記連係軸12に回動自在に装着されているストッパ15と、前記ケース3の内周面に形成されている鈎状突起16とにより構成されている。ストッパ15は中央部において前記連係軸12に回動自在に軸支されており、一端側には前記鈎状突起16と係合する係止端17が形成され、他端側にはゼンマイケース10内の蓄力ゼンマイ11の外周面と当接してストッパ15を揺動作動させる制御端18が形成されている。ストッパ15は付勢バネ19により前記係止部17が鈎状突起16と係合する方向に付勢されており、制御端18はゼンマイケース10及びリール3の側壁に形成された切り欠きからゼンマイケース10内に進入してゼンマイケース10内の蓄力ゼンマイ11の外周面と当接できるようにされている。
【0013】
エンジンのクランクシャフトと一体に回転される回転部材20としてこの実施例では、エンジンのクランクシャフトに連結されるプーリ20が前記カム7と対向して配置されており、該プーリ20とカム7との間には、前記カム7とプーリ間の回転断続を行うクラッチ機構21が形成されている。クラッチ機構21は、通常時にはバネ22により内側に付勢されて前記カム7と当接させられており、エンジンが始動してクランクシャフトが回転することにより遠心力の作用で前記バネ22に抗して外側に作動してカム7と離反されるプーリに設けられた遠心ラチェット23により構成されている。前記カム7が回転されることにより遠心ラチェット23を介してプーリ20が回転されてクランクシャフトを回転させてエンジンを始動させる。エンジンが始動した後は、プーリ20とカム7との連係が遮断される。
【0014】
次に、上記実施例のリコイルスタータの動作を説明する。図4に示すエンジンの始動前の状態では、エンジンのクランクシャフトに接続されているプーリ20に形成された遠心ラチェット23はバネ22の作用で内側に移動されてリコイルスタータ側のカム7と係合している。また、ゼンマイケース10内の蓄力ゼンマイ11はケース10の周壁の内面に密着した最大外径の状態になっており、連係軸12に支持されているストッパ15の制御端18がゼンマイケース10内の蓄力ゼンマイ11の外周面に当接して係止端17が鈎状突起15から離反されている。従ってこの状態では、リール3は両方向に回転が可能である。
【0015】
リコイルロープ4を引張るとリール3が回転されて、蓄力ゼンマイ11を介してプーリ20を回転させてプーリ20に連結されているクランクシャフトが回転されるが、この際、エンジンの始動抵抗により回転負荷が急激に増大してプーリ20の回転負荷が大きくなるが、蓄力ゼンマイ11がこの負荷を吸収するためリール3とリコイルロープ4側には衝撃的な負荷の変動が直接伝わらない。またこのとき蓄カゼンマイ11が巻き込まれてリール3側の回転力が蓄力ゼンマイ11に蓄力される。
【0016】
蓄力ゼンマイ11がリール3の回転により巻き上げられると、蓄力ゼンマイ11はカム7のボス部の外周面に巻き込まれて蓄力ゼンマイ11の外径が縮径される。蓄力ゼンマイ11に接触しているストッパ15の制御端18が内側に移動してストッパ15が付勢バネ19の作用により揺動し、係止端17がケース1の鈎状突起16と係合するようになる。このストッパ15の作用によりリール3がエンジンの始動方向には回転できるが逆回転方向には回転できないようになる。従って、エンジンの始動抵抗が強く作用して蓄力ゼンマイ11を介して逆方向への回転力が発生してもリール3が逆転しないために、衝撃等がロープ4を牽引している手に伝わらない。
【0017】
更に、リール3が回転されてリール側の回転力がエンジンの始動抵抗を越えたとき、リール3の回転力と蓄力ゼンマイ11に蓄力された回転力が放出されてカム7を介してプーリ20に伝達されるため、クランクシャフトが一気に回転されてエンジンが始動される。エンジンが始動してクランクシャフトが回転するとクラッチ機構21を構成している遠心ラチェット23が遠心力の作用で外側に回動してカム7と当接しなくなる。従ってこの時点ではカム7はフリーとなって蓄力ゼンマイ11に蓄力された回転力は完全に放出され、蓄力ゼンマイ11はゼンマイケース10内で最大の外形となる状態に復元する。ストッパ15の制御端18が蓄力ゼンマイ11と当接して外側に移動され、ストッパ15が揺動されて係止部17と鈎状突起16との係合が離脱される。これにより、リール3は逆転方向にも回動出来るようになり、巻き込まれたリコイルゼンマイ6の戻し力により、リール3が逆回転しロープ4を巻回し収納する。
【0018】
次に、図6に示す本発明の第2の実施例について説明する。前述の実施例では、エンジン側の回転部材20にカム7と係合する遠心ラチェット23を形成してカム7の回転をエンジン側に伝達するようにしたクラッチ機構21を形成しているが、図6に示す実施例のリコイルスタータでは、クラッチ機構が、カム7側にラチェット25を設けてエンジンに連結される回転部材20の内周面に形成した凹部26と係合、離脱させることによりカム7の回転をエンジン側に伝達させるワンウェイクラッチ24により構成されているものであり、それ以外の構成は前述の実施例と同一である。
【0019】
上記ワンウェイクラッチ24は、上面に突起27を形成したラチェット25がカム7上に一端部において回転自在に保持されており、このラチェット25の上面と対向した面にガイド溝28が形成されたラチェットガイド29が支軸2に軸支されて設けられている。ラチェットガイド29は支軸2に止着されているネジ8の円筒部に弾力的に装着されており、ネジ8に対して所定の回転抵抗が付与されている。前記ラチェット25の突起27がラチェットガイド29のガイド溝28内に遊嵌されており、カム7が回転される際にカム7と一体にラチェット25が回転される際に、ラチェット25の突起27が回転抵抗が付与されているラチェットガイド29のガイド溝28と係合しているため、ラチェット25が前記一端部を中心として回転されて先端部が外周方向に突出して回転部材20の凹部26と係合することによりカム7側の回転を回転部材20側に伝達させる。カム7が逆方向に回転する際には、ラチェット25の突起27がガイド溝28と係合してラチェット25の先端が内周方向に退避作動されて伝達は遮断される。
【0020】
以上説明した何れの実施例でも、回転部材20としてエンジンのクランクシャフトに連結されるプーリとカム7にクラッチ機構21又はワンウェイクラッチ24を形成したものであるが、エンジンのクランクシャフトと一体に回転される回転部材20として、エンジンに備えられているフライホイールマグネットとカム7とを対向させて配置させてもよい。更に、上記実施例では、蓄力ゼンマイ11の外端11bをリール3の凹部内周面に係止させるように構成して、蓄力ゼンマイ11を収容した凹部9をゼンマイケース10で覆うように構成しているが、蓄力ゼンマイ11の外端11bをゼンマイケース10の外周縁に係止させるように構成してもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、リール3とケース1間にストップ機構14を形成し、このストップ機構14のストッパ15を蓄力ゼンマイ11の外周面により制御させるように構成しているので、蓄力ゼンマイ11に回転力が蓄力されていないときにはリール3が逆方向に回転できてロープ4をリール3に巻き戻すことが可能であり、蓄力ゼンマイ11に回転力が蓄力されている時にはストップ機構14のストッパ15により蓄力の反動によるリール3の逆回転を阻止させるようにしているので、簡単な構造で緩衝蓄力手段11の蓄力の維持が可能となりエンジンの始動性を良いものとして更に、エンジンの始動抵抗や圧縮時の衝撃又は反動をロープ4を牽引している手に感じさせることのないリコイルスタータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例によるリコイルスタータの正面図
【図2】 図1と同じリコイルスタータの縦断側面図
【図3】 図2におけるA−A線での断面図
【図4】 蓄力ゼンマイに回転力が蓄力されていない状態を示す図2におけるB−B線での断面図
【図5】 蓄力ゼンマイに回転力が蓄力されている状態を示す図4と同じ断面図
【図6】 本発明の第2の実施例によるリコイルスタータを示す縦断側面図
【符号の説明】
1 ケース
2 支軸
3 リール
4 リコイルロープ
5 ハンドル
6 リコイルゼンマイ
7 カム
7a 凹部
8 ネジ
9 凹部
10 ゼンマイケース
11 緩衝蓄力手段(蓄力ゼンマイ)
12 連係軸
13 開口
14 ストップ機構
15 ストッパ
16 鈎状突起
17 係止部
18 制御端
19 付勢バネ
20 回転部材(プーリ)
21 クラッチ機構
22 バネ
23 遠心ラチェット
24 ワンウェイクラッチ
25 ラチェット
26 凹部
27 突起
28 ガイド溝
29 ラチェットガイド
Claims (4)
- リコイル用のロープが巻回されるとともにケース内に形成された支軸に対して回動可能に支持されたリールと、該リールを前記ロープを巻き取る方向に回転付勢するリコイルゼンマイと、支軸に回転可能に設けたカムと、エンジン側のクランクシャフトと一体に回転される回転部材と、前記回転部材とカムとの間に設けられカムと回転部材間の回転を係合離脱させるクラッチ機構とからなるリコイルスタータにおいて、
前記リールとカムとの間に一端がリールに他端がカムにそれぞれ係止された蓄力ゼンマイである緩衝蓄力手段を介在し、前記蓄力ゼンマイの蓄力状態に応じた外径の変位を検知して該蓄力によるリールの逆方向回転を阻止し、又は該蓄力の放出によりリールの逆方向回転を許容する制御を行うストップ機構をリールとケース間に設けたことを特徴とする内燃機関始動用のリコイルスタータ。 - 前記回転部材とカムとの間に設けられたクラッチ機構が、回転部材上に設けた遠心ラチェットによるワンウェイクラッチであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関始動用のリコイルスタータ。
- 前記回転部材とカムとの間に設けられたクラッチ機構が、カム上に設けたラチェットによるワンウェイクラッチであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関始動用のリコイルスタータ。
- 前記ストップ機構が、ケースの内周面に周方向に沿って形成された鈎状突起と、リール上に揺動自在に設けられるとともに一端側に前記鈎状突起と係合される係止端が形成され他端側には前記蓄力ゼンマイと当接される制御端とを有するストッパと、前記係止端を鈎状突起に係合させる方向にストッパを付勢させる付勢手段とから構成されており、前記ストッパの制御端を前記蓄力ゼンマイの外周面に接触させるように配置して、蓄力ゼンマイ径の変化により係止端が鈎状突起と係脱するようにストッパを揺動させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関始動用のリコイルスタータ。
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