JP4291609B2 - 色素増感型光電変換素子 - Google Patents

色素増感型光電変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光電変換のために用いられる色素増感型光電変換素子に関する。
【0002】
【従来技術】
【特許文献1】
特開平01−220380号公報
【特許文献2】
特開平13−156314号公報
【非特許文献1】
Nature Vol.261 (1976) p402
【非特許文献2】
Synthetic Metals 121(2001) 1549-1550
【非特許文献3】
Synthetic Metals 89(1997) 215-220
【0003】
従来より、色素で増感された酸化物半導体電極を含む湿式の太陽電池が知られている。例えば、非特許文献1には、酸化亜鉛粉末を圧縮成型し、1300℃で1時間焼成して形成した焼結体ディスク表面に増感用色素としてローズベンガルを吸着させた酸化物半導体電極を用いた太陽電池が提案されている。
【0004】
しかしながら、この提案された太陽電池の電流/電圧曲線によれば、0.2Vの起電圧時の電流値は約25μAと非常に小さいものである。
【0005】
このような不具合を解消するために、透明導電性膜上に多孔質の二酸化チタン膜を形成し、この表面に増感色素としてルテニウムピリジル錯体を吸着させ、ヨウ素を電子メディエーターとする色素増感型の湿式太陽電池が提案されている(特許文献1)。この提案によれば、光を吸収して励起した色素が電子を酸化チタンへ供給し、対向電極からヨウ素へ電子が移動、さらに還元されたヨウ素イオンが色素へ電子を与えて元に戻し、サイクルを完成させている。このような太陽電池は理論的に高い効率が期待でき、実際に7〜10%程度の効率が得られた旨の報告がなされている。さらにこのような太陽電池は、それに用いられる酸化物半導体および有機色素がいずれも比較的安価なために、シリコン半導体を用いた太陽電池に比較して、コスト的にも非常に有利であると考えられている。
【0006】
しかしながら、上記提案の素子は、対電極との電気的接続を電解質溶液によって行なう湿式電池であるために、長期間に亘って使用すると、電解液の枯渇により光電変換効率が著しく低下したり、素子として機能しなくなってしまう欠点を有している。
【0007】
このような欠点を解消するために、例えば、CuIやCuSCNなどの無機正孔輸送性材料を用いて完全に固体化した光電変換素子の提案(特許文献2)や、polythiophene 誘導体やtriphenylenediamine(TPD)誘導体など有機正孔輸送性材料を用いて完全に固体化させた光電変換素子(非特許文献2、非特許文献3)が提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの固体正孔輸送性材料を用いた光変換素子に対極電極を設ける場合、通常、白金や金などの貴金属をスパッタリング法や蒸着法等の真空成膜法によって対極電極を形成することが多く、導電性や信頼性の点では良好であるが、原材料費および製法に基づくコストが高いという問題が生じていた。
【0009】
また、カーボンを対向電極として用いる場合もあるが、この場合、原料料費の点では満足がいくものの、金属に比べると導電性が劣ってしまうため対向電極の抵抗成分が電池特性の悪化を招き、特にフィルファクターが非常に小さくなるという問題が生じてしまう。この現象は、セル面積が大きくなるほど顕著に現れてくる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような実状のもと、本願にかかる発明者らが、対向電極の製法も含めた電極構成について鋭意研究した結果、対向電極の構成を、少なくともカーボンペースト層と、金属ペースト層との積層体構造を含み、カーボンペースト層が固体電荷移動層と接するように配置されてなるように構成することによって、素子の低コスト化が図れるとともに、十分な光エネルギー変換効率が得られ、さらに、劣悪な環境下(例えば高温高湿条件下)における耐久性にも優れることを見出し本発明に想到したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、表面に有機色素を有する光電変換用酸化物半導体電極と、これと対をなす対向電極と、これらの電極にそれぞれ接触する固体電荷移動層とを有する色素増感型光電変換素子であって、前記対向電極が、カーボン粒子およびバインダー樹脂を含有するカーボンペースト層と、金属粒子およびバインダー樹脂を含有する金属ペースト層との積層体構造を含み、カーボンペースト層が固体電荷移動層と接するように配置されてなるように構成される。
【0012】
また、本発明の好ましい態様として、固体電荷移動層の上に、対向電極を構成するカーボンペースト層と金属ペースト層とが順次、塗設形成されてなるように構成される。
【0013】
また、本発明の好ましい態様として、前記金属ペースト層がAg、Ni、Cu、Au、Ptのいずれか1つの金属を含有してなるように構成される。
【0014】
また、本発明の好ましい態様として、前記カーボンペースト層の厚さが0.4〜100μmであり、前記金属ペースト層の厚さが0.2〜100μmである。
また、本発明の好ましい態様として、前記光電変換用酸化物半導体電極は、透明導電層を有する透明基板と、この透明導電層の表面に形成された緻密状の第1の金属酸化物半導体膜と、この緻密状の第1の金属酸化物半導体膜の上に形成された多孔質の第2の金属酸化物半導体膜と、この多孔質の第2の金属酸化物半導体膜の表面に吸着された有機色素を有してなるように構成される。
【0015】
また、本発明の好ましい態様として、前記緻密状の第1の金属酸化物半導体膜が、酸化対象となる金属薄膜形成後に、この金属薄膜を陽極酸化処理することにより形成されたものとして構成される。
【0016】
また、本発明の好ましい態様として、前記緻密状の第1の金属酸化物半導体膜が、Ti,Ta,Al,Mg,Nb,Zr,Zn,Siのグループから選択された少なくとも1つの金属の薄膜を形成した後に、この金属薄膜を陽極酸化処理することにより形成されたものとして構成される。
【0017】
また、本発明の好ましい態様として、前記固体電荷移動層が正孔輸送材料を含んでなるように構成される。
【0018】
本発明の色素増感型太陽電池は、上記光色素増感型光電変換素子を用いてなるように構成される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の色素増感型光電変換素子(色素増感型太陽電池)の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の色素増感型光電変換素子1の模式的構成例を示したものである。図1の紙面の右側には、左側に位置する全体構成図の四角で囲まれたエリアの部分拡大図が模式的に示されている。
【0020】
図1に示されるように、本発明の色素増感型光電変換素子1は、2つの電極70,80が例えば固体電荷移動層40を介して対向配置された構成をなしている。2つの電極のうち一方の電極である70は、有機色素を備える光電変換用酸化物半導体電極70であり、このものは、より好ましい態様の一例として、透明基板50と、この上に形成された透明導電層11と、この透明導電層11の表面に形成された第1の金属酸化物半導体膜30と、その第1の金属酸化物半導体膜30の上に形成された第2の金属酸化物半導体膜6と、この第2の金属酸化物半導体膜6の表面に吸着された有機色素7を有して構成されている。
【0021】
このような光電変換用酸化物半導体電極70の対極となる対向電極80の構成が本発明の主要部となっており、まず最初に、この対向電極80の構成について詳細に説明する。
【0022】
対向電極(対極)80の構成
本発明における対向電極80は、少なくともカーボンペースト層81と、金属ペースト層85との積層体構造を含み、カーボンペースト層81が固体電荷移動層40と接するように配置される。より具体的な好適例として、固体電荷移動層40の上に、対向電極としてのカーボンペースト層81と金属ペースト層85とが順次、塗設され形成される。
【0023】
本発明における「カーボンペースト層81」とは、カーボン粒子、バインダー樹脂、溶媒等を含有するカーボンペーストを、ディッピング法、スキージ法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法なでの塗布、印刷法によって固体電荷移動層40の片側面上に形成した後、当該形成物を乾燥させて形成させたものである。乾燥により溶媒は飛ばされ、カーボンペースト層81に実質的に残存している主固形分はカーボン粒子とバインダー樹脂である。
【0024】
カーボン粒子は、カーボンペースト層81中に10〜80体積%含有されることが望ましい。カーボンペースト層81の膜厚は、0.4〜100μm、好ましくは1.0〜85μm、さらに好ましくは1.0〜50μmとすることが望ましい。この値が0.4μm未満となると、固体電荷移動層40との電気的な接続が悪くなったり、この上に形成される金属ペースト層85からのマイグレーションを完全に防止することが困難となってしまう。また、この値が100μmを超えるとカーボンペースト層81の厚さ方向の電気抵抗成分が大きくなり電池特性を低下させてしまうという不都合が生じる。
【0025】
カーボンペースト層81の中に含有されるカーボン粒子としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。粒子形状も鱗片状、球状、無定形状等、どのような形態であっても良い。
【0026】
また、上述のごとくカーボンペースト層81には、機械的強度を増すためにバインダー樹脂を含有させることが望ましく、用いるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマー、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0027】
上記塗布法や印刷法によって塗布物を形成した後、その中に含有される溶媒を除去したり、固体電荷移動層40との密着性を向上させるために乾燥工程を設けることが望ましい。乾燥工程における乾燥温度は、用いる溶媒やバインダー樹脂等によって異なるが、通常25〜200℃程度に設定される。200℃を超えてあまり高温になり過ぎると、固体電荷移動層40や有機色素7の劣化を招くおそれがある。
【0028】
このように形成されたカーボンペースト層81の上に金属ペースト層85が形成される。本発明における「金属ペースト層85」とは、金属粒子、バインダー樹脂、溶媒等を含有する金属ペーストを、ディッピング法、スキージ法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スピンコート法なでの塗布、印刷法によってカーボンペースト層81の上に形成させた後、当該形成物を乾燥させて形成したものである。乾燥により溶媒は飛ばされ、金属ペースト層85に実質的に残存している主固形分は金属粒子とバインダー樹脂である。
【0029】
金属粒子は、金属ペースト層85中に30〜90体積%含有されることが望ましい。金属ペースト層85の膜厚は、0.2〜100μm、好ましくは1.0〜80μm、さらに好ましくは3.0〜50μmとすることが望ましい。
【0030】
この値が0.2μm未満となると、膜面方向での導電性が悪くなるために抵抗成分が増加し電池特性が低下してしまうという不都合が生じる。また、100μmを超えると、カーボンペースト層81からの剥離が生じるおそれがある。
【0031】
金属ペースト層85に用いられる金属粒子としては、Ag、Ni、Cu、Au、Ptが挙げられる。通常は、これらの中から選定された1種が用いられるが、2種類以上の金属を混在させてもよい。原料コストを考慮すれば、特に、Ag、Ni、Cuの中から選定するのがよい。
【0032】
金属ペースト層85の中に含有される金属粒子の粒子形状は、鱗片状、球状、無定形状等、どのような形態であっても良い。
【0033】
また、上述のごとく金属ペースト層85には、機械的強度を増すためにバインダー樹脂を含有させることが望ましく、用いるバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、メラミン樹脂、フロロエラストマー、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0034】
上記塗布法や印刷法によって塗布物を形成した後、その中に含有される溶媒を除去したり、カーボンペースト層81との密着性を向上させるために乾燥工程を設けることが望ましい。乾燥工程における乾燥温度は、用いる溶媒やバインダー樹脂等によって異なるが、通常25〜200℃程度に設定される。200℃を超えてあまり高温になり過ぎると、固体電荷移動層40や有機色素7の劣化を招くおそれがある。
【0035】
次に、上述してきた対向電極80と対となる、有機色素を備える光電変換用酸化物半導体電極70の好ましい態様について、各構成要件ごとに説明する。
【0036】
透明導電層11を有する透明基板50の構成
電極用の基板としては、少なくともその表面に導電性が付与(例えば、透明導電層11が形成)された透明基板50が用いられる。表面に導電性が付与された基板としては、例えば、ガラスなどの耐熱性基板上に、酸化インジウム、酸化錫の導電性金属酸化物薄膜、金、銀、白金などの金属薄膜、導電性高分子等を形成したものや、金属等の導電性材料からなる基板が用いられる。このような導電性基板は従来よく知られたものである。耐熱性を有する樹脂基板を用いることもできる。
基板の厚さは特に制限されないが、通常、0.05〜5mm程度である。
【0037】
図1において、導電性表面を有する基板の一例として、透明基板50と、この上に形成された透明導電層11との組み合わせ体が示されている。しかしながら、透明基板50そのものを導電性材質から形成することも可能であり、この場合には、導電性材質から形成された透明基板50そのものが、本発明で言う基板と導電層との組み合せ体に相当することになる。
【0038】
このような透明導電層11の上には金属酸化物半導体膜が形成される。金属酸化物半導体膜は、通常、公知の多孔質膜とすることができるが、好適には、下記に述べるような構造の異なる第1および第2の金属酸化物半導体膜の積層構造とすることが望ましい。好適例について説明する。
【0039】
第1の金属酸化物半導体膜の構成
透明導電層11の上に形成される第1の金属酸化物半導体膜30は、酸化対象となる金属薄膜を形成した後に、この金属薄膜を陽極酸化処理することにより形成されたものとすることが望ましい。以下、透明導電層11の上に第1の金属酸化物半導体膜30を形成するステップについて詳細に説明する。
【0040】
(1)金属薄膜の形成
透明導電層を有する基板上にスパッタリングまたは蒸着により金属薄膜を形成する。成膜対象となる金属は、Ti,Ta,Al,Mg,Nb,Zr,Zn,Siのグループから選択された少なくとも1つの金属とするのがよい。特に、Tiが好適に用いられる。このような金属薄膜の膜厚は10〜100nm、好ましくは20〜80nm、さらに好ましくは、20〜50nmとされる。この膜厚が10nm未満となると、成膜される金属薄膜が島状となりやすくなり、緻密な膜を得ることが困難となってしまう。また、この膜厚が100nmを超えると膜の抵抗が大きくなり過ぎてしまい電池特性が低下してしまうという不都合が生じる。
【0041】
(2)成膜した金属薄膜の陽極酸化処理
このような金属薄膜を形成した後に、当該金属薄膜の陽極酸化処理が行なわれる。
【0042】
すなわち、金属薄膜を有する基板を陽極とし、白金やカーボンなどを陰極として用い、リン酸、硫酸あるいはこれらの混酸、あるいはアジピン酸ニアンモニウムのような中性塩からなる電解質水溶液中で陽極酸化を行なう。
【0043】
Ti,Ta,Al,Mg,Nb,Zr,Zn,Siなどの弁金属を陽極酸化すると、数100Vの高電圧まで安定して陽極酸化処理することができ、その結果、数μmの比較的厚い陽極酸化被膜が形成される。本発明では膜厚が10〜100nm程度の緻密な膜を得ることが目的であるために、陽極酸化電圧は10〜80V程度の低い電圧に設定することが望ましい。このような低電圧範囲では、基板表面での火花放電による放電痕の発生は極めて少なく、緻密な膜を形成することができる。
【0044】
このようにして緻密な第1の金属酸化物半導体膜30が形成される。
なお、「緻密な膜」とはスパッタリングや蒸着で成膜された金属薄膜の緻密な状態を出来るだけ維持するようにとの配慮のもとに陽極酸化処理された膜をいう。
【0045】
第2の金属酸化物半導体膜の構成
緻密な第1の金属酸化物半導体膜30の上には、多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6を形成することが望ましい。第2の金属酸化物半導体膜6を形成する好適例を以下に例示する。
【0046】
通常の好ましい手法として、多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6を形成するには、まず、酸化物半導体微粒子を含む塗布液を調製する。用いる酸化物半導体微粒子は、その1次粒子径が微細なほど好ましく、その1次粒子径は、通常、1〜5000nm、好ましくは5〜50nmとされる。
【0047】
酸化物半導体微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化バナジウム、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。好ましくは、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブであり、最も好ましくは酸化チタンである。また、これら酸化物半導体微粒子を複合(混合、混晶、固溶体など)させて用いてもよく、例えば、酸化亜鉛と酸化スズ、酸化チタンと酸化ニオブ等の組み合わせ使用を例示することができる。
【0048】
材料選定に際しては、多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6の表面に吸着される有機色素(有機色素膜7)の励起準位から、酸化物半導体微粒子の伝導帯準位への電子注入が効率よく起こりうるように酸化物半導体微粒子の種類を選択すればよい。
【0049】
また、酸化物半導体粒子同士の結合性、および酸化物半導体微粒子と前記第1の金属酸化物半導体膜30間の結合性を強化させるために、酸化物半導体微粒子前駆体を添加するのも好ましい態様である。
【0050】
酸化物半導体微粒子前駆体を共存させることは、物質の拡散・供給や、微粒子間結合に必要なエネルギーの減少に効果的であり、酸化物半導体膜をより低温で形成するのに好ましい。
【0051】
酸化物半導体微粒子が金属酸化物である場合、用いられ得る酸化物半導体微粒子前駆体として、金属アルコキシド、金属ハロゲン化物、加水分解可能な基を有する金属化合物等が挙げられる。
【0052】
金属ハロゲン化物を用いた場合には、酸化物半導体微粒子内にハロゲン原子が取り込まれることが多く電池特性に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、特に、高温加熱が適用できない場合には金属アルコキシドを用いるのが好ましい。
【0053】
また、上記の金属化合物の一部または全部を加水分解したもの、その加水分解物を重合したもの、あるいはそれらの混合物も前駆体として有効である。特に、金属アルコキシドを、酸もしくはアルカリ条件下で部分的に加水分解し、さらに部分的に重合した混合物は、低温での反応性に富み、低温での結晶化も起こりやすいために本発明での使用に好都合である。この場合、好ましい酸としては、塩酸、硝酸等が挙げられるが、前記残留ハロゲンの影響を考慮すると硝酸を用いるのが好ましい。また、アルカリとしてはアンモニア、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0054】
添加され得る酸化物半導体微粒子前駆体の混合比(添加量)は、酸化物半導体微粒子に対し、2〜40wt%である。2wt%未満では添加した効果が現れにくい。また、酸化物半導体微粒子前駆体が粒子化、結晶化する過程においては体積収縮が起こる。そのため、40wt%を超えるような大量の添加では膜全体の体積収縮が大きくなり、クラックの発生、それに伴う導電性表面からの膜の剥離が起こり、電池特性が悪化するおそれがある。
【0055】
酸化物半導体微粒子を含む塗布液は、ゾルまたはスラリ−の形態で得ることができる。このような形態において、使用される溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液などが挙げられる。有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、テルピネオ−ル等のアルコ−ル、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ジメチルホルムアミド、ピリジン等の塩基性溶媒等が挙げられる。溶媒への酸化物半導体微粒子の分散性を高めるため、酸もしくはアルカリを添加させて、塗布液のpHを酸化物半導体微粒子の等電点近傍のpHからなるべく遠ざけるのが好ましい。この際に好適に使用される酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸、ベンゼンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。好適に使用されるアルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩基、アンモニア、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩基等が挙げられる。また、塗布液中には必要に応じ、界面活性剤や粘度調整剤を添加することができる。
【0056】
このようにして調製された塗布液は、緻密構造の第1の金属酸化物半導体膜30の上に塗布され、所定の処理がなされた後に、多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6が構成される。
【0057】
多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6は、その厚さが少なくとも10nm以上、好ましくは500〜30000nmとされる。さらに、多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6は、その見かけ表面積に対する実表面積の比を10以上、好ましくは100以上とすることが望ましい。この比の上限は特に規制されないが、通常、1000〜2000である。
【0058】
上記見かけの表面積とは、通常の表面積を意味し、例えば、その表面形状が長方形の場合には、(縦の長さ)×(横の長さ)で表される。前述した実表面積とは、クリプトンガスの吸着量により求めたBET表面積を意味する。具体的測定には、BET表面積測定装置(マイクロメリティクス社製、ASAP2000)を用い、見かけ表面積1cm2の酸化物半導体膜(基板の上に形成されている)に、液体窒素温度でクリプトンガスを吸着させる方法が用いられる。この測定方法により得られたクリプトンガス吸着量に基づいてBET表面積が算出される。
【0059】
このような多孔質構造の第2の金属酸化物半導体膜6は、その内部に微細な細孔とその表面に微細凹凸を有するものである。第2の金属酸化物半導体膜6の厚さおよび見かけ表面積に対する実表面積の比が前記範囲より小さくなると、その表面に有機色素を単分子膜として吸着させたときに、その有機色素単分子膜の表面積が小さくなり、光吸収効率の良い電極を得ることが困難となる。
【0060】
第1の金属酸化物半導体膜30の上に第2の金属酸化物半導体膜6を好適に形成させるには、酸化物半導体微粒子を含む塗布液を、スピンコ−ト法、スプレ−法、ディッピング法、スクリ−ン印刷法、ドクタ−ブレ−ド法等の塗布、印刷法により行うことができる。
【0061】
塗布液中の酸化物半導体微粒子の最適濃度は、塗布、印刷方法によって異なる。一般的には0.1〜70重量%、好ましくは0.5〜40重量%である。
【0062】
酸化物半導体微粒子を前記の塗布方法を用いて膜として形成した後、一般に、高温加熱処理が行われる。これにより、酸化物半導体粒子同士の結合性、および酸化物半導体微粒子と導電性表面との結合性を高めることができ、導電性を向上させ電池特性の向上を図ることができる。
【0063】
処理温度(焼成温度)は、1000℃より低く、通常、300〜800℃、より好ましくは400〜500℃とされる。
【0064】
第2の金属酸化物半導体膜の表面に吸着された有機色素7の構成
次いで、このようにして得られた多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6の表面には、有機色素が単分子として吸着させられる。有機色素としては、第2の金属酸化物半導体膜6と化学的に結合することができる色素が好ましく、分子内にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、もしくは水酸基を有するものが好ましい。
【0065】
具体的には、ビピリジルRu錯体、タ−ピリジルRu錯体、フェナントロリンRu錯体、ビシンコニン酸Ru錯体などのRu錯体、フタロシアニンRu錯体、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ロ−ダミンB、ピロガロ−ル、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB、フルオレシン、マ−キュロクロム、シアニン、メロシアニン等の有機色素が挙げられる。
【0066】
多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6の表面に、有機色素を単分子として吸着させるには、有機色素を有機溶媒に溶解させて形成した有機色素溶液中に、第2の金属酸化物半導体膜6を基板とともに浸漬させればよい。この場合、有機色素溶液が、多孔質構造の膜である第2の金属酸化物半導体膜6の内部深くに進入することができるように、第2の金属酸化物半導体膜6を有機色素への浸漬に先立ち、減圧処理したり、加熱処理して、第2の金属酸化物半導体膜6中に含まれる気泡をあらかじめ除去しておくことが好ましい。浸漬時間は30分〜24時間程度とすればよい。有機色素の吸着を効率よく行うため、還流処理を行っても良い。また、浸漬処理は、必要に応じ、複数回繰り返し行うこともできる。このような浸漬処理を行った後、有機色素を吸着した第2の金属酸化物半導体膜6は、通常、常温〜80℃の温度条件下で乾燥させられる。
【0067】
本発明においては、第2の金属酸化物半導体膜6に吸着される有機色素は、1種である必要はなく、必要によっては光吸収領域の異なる複数の有機色素を吸着させることが出来る。これによって、光を効率よく利用することが出来る。複数の有機色素を膜に吸着させるには、複数の有機色素を含む溶液中に第2の金属酸化物半導体膜6を浸漬する方法や、有機色素溶液を複数種類、用意し、これらの溶液に第2の金属酸化物半導体膜6を順次浸漬する方法等が挙げられる。
【0068】
有機色素を有機溶媒に溶解させた溶液において、その有機溶媒としては、有機色素を溶解しうるものであれば任意のものが使用可能である。このような溶媒としては、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。溶液中の有機色素の濃度は、溶液100ml中、1〜200mg、好ましくは10〜100mg程度とされる。
【0069】
本発明の色素増感型光電変換素子1(色素増感型太陽電池)は、前述したごとく表面に色素が吸着された光電変換用酸化物半導体電極70と、これと対をなす対向電極80と、それらの電極に接触する固体電荷移動層40とを有して構成される。
【0070】
固体電荷移動層40の構成
固体電荷移動層40の好適例としては、固体電解質が挙げられる。特に、固体中のキャリアー移動が電気伝導にかかわる材料、すなわち、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料、を用いることが好ましい。
【0071】
本発明に適用可能な有機正孔輸送材料としては、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類を好適に用いることができる。オリゴチオフェン化合物、ポリピロール、ポリアセチレンおよびその誘導体、ポリ(p-フェニレン)およびその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)およびその誘導体、ポリチエニレンビニレンおよびその誘導体、ポリチオフェンおよびその誘導体、ポリアニリンおよびその誘導体、ポリトルイジンおよびその誘導体等の導電性高分子を好適に使用することができる。
【0072】
無機正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。この目的のp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは色素の正孔を還元できる条件から、色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下であることが好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下であることが好ましい。
【0073】
好ましいp型無機化合物半導体は一価の銅を含む化合物半導体である。具体的に、一価の銅を含む化合物半導体の例としてはCuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2などが挙げられる。このほかのp型無機化合物半導体として、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23等を用いることができる。
【0074】
このような固体電荷移動層の形成方法に関しては、光電変換用酸化物半導体電極70の上に直接、固体電荷移動層40を形成する方法で、対向電極80はその後に形成付与することになる。
【0075】
有機正孔輸送材料は、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。無機固体化合物の場合も、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。
【0076】
このように形成される固体電荷移動層40(特に、正孔(ホール)輸送材料)のごく一部は、図1に示されるように多孔質構造の源である金属半導体膜粒子の隙間に固体正孔輸送性材料が部分的に浸透する形態となることがある。すなわち、粒子間を浸透した固体正孔輸送性材料41が第1の金属酸化物半導体膜30と直接的に接触することがある。
【0077】
このような固体電荷移動層40の上には上述した対向電極80が形成される。対向電極80を構成する上記金属ペースト層85の上には、さらにガラス等の基板51を貼り付けるように形成してもよい。
【0078】
本発明においては、前記光電変換用酸化物半導体電極70と対向電極80のいずれか一方または両方から光を照射してよいので、有機色素の層に光が到達するためには、光電変換用酸化物半導体電極70と対向電極80の少なくとも一方が実質的に透明であれば良い。このような構造の素子は、その光電変換用酸化物半導体電極70に太陽光または太陽光と同等な可視光を当てると、光電変換用酸化物半導体電極70とその対向電極80との間に電位差が生じ、両極70,80間に電流が流れるように作用する。上述したような色素増感型光電変換素子の構成例に基づく詳細な作用は以下のとおり。
【0079】
有機色素7を担持した多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6に入射した光は、有機色素7を励起する。励起された有機色素7の高エネルギーの電子が多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6および第1の金属酸化物半導体膜30の伝導帯に渡され、さらに透明導電層11に到達する。
【0080】
電子注入した後の有機色素7は、電子の欠損した酸化体ラジカル(正孔)となるが、固体正孔輸送層40などの固体電荷移動層(40)によって電子的に還元されて速やかに再生される。固体正孔輸送層40中に生じた正孔は陽極である対極80に移動し、陰極70から外部回路を経て移動してきた電子と再結合する。このようにして、陰極から陽極に外部電極を通って一方向の電子の流れが生じ、これが外部回路で光電流として観測される。
【0081】
本発明における対向電極80は、カーボンペースト層81と、金属ペースト層85との積層体構造からなり、真空プロセスを必要としないために、製造面で安価に陽極を形成することができる。さらに、導電性が向上して電池特性が向上する。初期特性、信頼性(耐久性)も良好となる。
【0082】
さらに上記好適な素子例における光電変換用酸化物半導体電極70は、金属薄膜を形成した後に陽極酸化処理することにより形成された緻密状の第1の金属酸化物半導体膜30が、透明導電層11と多孔質の第2の金属酸化物半導体膜6の間に介在されている。そのため、第2の金属酸化物半導体膜6を構成している金属酸化物半導体粒子の間の間隙に固体正孔輸送材料が流入(浸透)した構造であっても内部短絡、すなわち、光励起された有機色素から多孔質金属半導体膜を経て、透明導電層表面へ到達した電子が外部回路へと取り出される前に、固体正孔輸送性材料の方へ戻ってしまう現象を回避することができる。第1の金属酸化物半導体膜30は極めて緻密性に優れ、膜の安定性も極めてよい。
【0083】
上述してきた色素増感型光電変換素子をいわゆる色素増感型太陽電池に適用する場合、そのセル内部の構造は基本的に同じである。太陽電池は光電変換素子にリード等を配置し、外部回路で仕事をさせるようにしたものである。外部回路の構成は従来公知のものであってよい。
【0084】
また、本発明における色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的に同様のモジュール構造をとることができる。
【0085】
【実施例】
次に本発明の具体的な実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。
【0086】
〔実施例1〕
光電変換用酸化物半導体電極70の作製
以下の要領で光電変換用酸化物半導体電極70(酸化チタン電極)を作製した。
縦2.0cm、横1.5cm、厚さ1.0mmの導電性ガラス基板(F−SnO2、シート抵抗10Ω/□)の導電層側に膜厚60nmのチタン金属薄膜をスパッタリング法で形成した。
【0087】
電解液として7wt%の硫酸水溶液を用い、前記基板を陽極とし、白金メッシュを陰極として、前記チタン金属薄膜の電気化学的酸化処理を行なった。すなわち、陽極酸化電圧30Vで20分間の陽極酸化処理を行い、いわゆる緻密酸化チタン膜を形成した(第1の金属酸化物半導体膜30の形成)。酸化チタン膜の形成後、純水で洗浄し、150℃で30分乾燥させた。
【0088】
乾燥後、前記緻密な酸化チタン膜の形成された部分に、縦0.5cm、横0.5cmの四角穴を設けた厚さ70μmのマスキングテ−プを貼り、当該穴の端部に市販されている酸化チタンスラリー(TKS−201、テイカ製)3μlをピペットで添加した。この添加した酸化チタンスラリーを縁が平らなガラス板を用いて引き延ばすことにより基板の上に広げて平滑面とした。このようにして広げた膜を空気中で30分間乾燥し、乾燥後マスキングテープを剥がし取った。次に、電気炉を用いて500℃で30分間焼成し、多孔質チタン膜を作製した(第2の金属酸化物半導体膜6の形成)。昇温速度は10℃/minとした。
【0089】
焼成後、基板温度が80℃まで下がったところで、有機色素として、(4,4’−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)ジイソチアネ−トを3×10−4M濃度で添加した無水エタノ−ル溶液20mlに浸漬し、1時間還流した後、12時間放置した。放置後、酸化チタン電極を取り出し無水アセトニトリルで洗浄した。基板上の酸化チタン膜は吸着されたルテニウム色素により深紅色となった(有機色素7の吸着形成)。
【0090】
色素増感型光電変換素子の作製
上記の光電変換用酸化物半導体電極70(酸化チタン電極)を用いて、以下の要領で色素増感型光電変換素子1の作製を行った。
【0091】
すなわち、上記電極の有機色素を含む多孔質酸化チタン膜部分(0.5cm×0.5cm角)以外をマスキングテープで保護した後、100℃に加熱したホットプレートに載せて2分間放置した。その後、CuIのアセトニトリル溶液(3.2重量%)0.2mlを10分程度かけて、アセトニトリルを揮発させながらゆっくりと酸化チタン膜上に加えた。添加後2分間ホットプレート上に放置してCuI(正孔輸送)層を形成した。
【0092】
次いで、このCuI(正孔輸送)層の上に、カーボンペースト(田中貴金属製、TC-8260)をスピンコート法にて塗布した後、125℃で30分間乾燥させた(カーボンペースト層81の形成)。乾燥後の膜厚は0.4μmであった。
【0093】
次いで、このカーボンペースト層81の上に、Agペースト(田中貴金属製、TC-8205)をスピンコート法にて塗布した後、125℃で30分間乾燥させた(金属ペースト層85の形成)。膜厚は約20μmであった。乾燥後、マスキングテープを剥がし、コーニング7059ガラスを加圧しながら重ね合せた後、受光部である光電変換用酸化物半導体電極(酸化チタン電極)側を残して、全体をエポキシ樹脂接着剤でシールし、実施例1の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0094】
〔実施例2〕
上記実施例1におけるカーボンペースト層の厚さを、0.4μmから1.2μmに変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例2の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0095】
〔実施例3〕
上記実施例1におけるカーボンペースト層の厚さを、0.4μmから20μmに変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例3の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0096】
〔実施例4〕
上記実施例1におけるカーボンペースト層の厚さを、0.4μmから45μmに変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例4の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0097】
〔実施例5〕
上記実施例1におけるカーボンペースト層の厚さを、0.4μmから80μmに変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例5の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0098】
〔実施例6〕
上記実施例1におけるカーボンペースト層の厚さを、0.4μmから98μmに変えた。それ以外は、上記実施例1と同様にして実施例6の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0099】
〔実施例7〕
上記実施例3において用いたAg金属ペーストをNi金属ペースト(日本アチソン製、Electrodag442)に変えた。それ以外は、上記実施例3と同様にして実施例7の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0100】
〔実施例8〕
上記実施例3において用いたAg金属ペーストをCu金属ペースト(日本アチソン製、Electrodag437i)に変えた。それ以外は、上記実施例3と同様にして実施例8の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0101】
〔実施例9〕
上記実施例3において用いたAg金属ペーストをAu金属ペースト(田中貴金属製、TR-1532)に変えた。それ以外は、上記実施例3と同様にして実施例9の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0102】
〔比較例1〕
上記実施例3におけるカーボンペースト層を形成しなかった。それ以外は、上記実施例3と同様にして比較例1の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0103】
〔比較例2〕
上記実施例9におけるカーボンペースト層を形成しなかった。それ以外は、上記実施例9と同様にして比較例2の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0104】
〔比較例3〕
上記実施例3におけるAg金属ペースト層を形成しなかった。それ以外は、上記実施例3と同様にして比較例3の色素増感型光電変換素子サンプルを作製した。
【0105】
上記各サンプルについて、AM1.5(1000W/m2)のソ−ラ−シミュレ−タ−を用いて、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定を行い電池特性評価とした。また、信頼性試験として80℃80%RHの雰囲気下に1000時間放置後の特性についても評価した。
【0106】
なお、開放電圧(Voc)とは、太陽電池セル・モジュールの出力端子を開放したときの両端子間の電圧を表している。光電流密度(Jsc)とは、太陽電池セル・モジュールの出力端子を短絡させたときの両端子間に流れる電流(1cm2当たり)を表している。形状因子(FF)は、最大出力Pmaxを開放電圧(Voc)と光電流密度(Jsc)の積で除した値(FF=Pmax/Voc・Jsc)をいい、太陽電池としての電流電圧特性曲線の特性を表すパラメータである。
【0107】
これらの結果を下記表1に示した。
【0108】
【表1】
Figure 0004291609
【0109】
例えば、実施例3と比較例1の結果より、カーボンペースト層を設けた場合には、初期特性、および80℃80%RHの雰囲気下に1000時間放置後の特性も良好である。これに対して、カーボンペースト層を設けない場合には初期特性が低く、さらには80℃80%RHの雰囲気下に1000時間放置後の特性劣化も大きいことがわかる。これはカーボンペースト層を設けることにより固体電荷移動層との電気的な接合性が向上しているものと考えられる。さらに、高温高湿条件下での固体電荷移動層への金属(Ag)の拡散をカーボンペースト層が阻止するように機能しているものと考えられる。
【0110】
実施例9と比較例2との結果より、金属ペースト層にAuを用いた場合には、高温高湿条件下での特性低下は小さいものの、カーボンペースト層を設けない場合には初期特性そのものが低いことがわかる。これは、Auでは高温高湿条件下での固体電荷移動層への拡散はほとんど起こらないものの、カーボンペースト層を設けないと固体電荷移動層との電気的な接合性を取ることができないことを意味しているものと考えられる。
【0111】
また、カーボンペースト層の厚さは、0.4〜100μmが良く、好ましくは1.0〜85μmであることが分かる。厚さが薄くなりすぎると、高温高湿条件下での特性に悪影響がある。また厚さが厚くなりすぎると、電気抵抗が大きくなりFFが小さくなる傾向にある。
【0112】
なお、本願発明では、比較例1(または比較例2)と比較例3の総和以上の格段と優れた効果が発現していることもわかる。
【0113】
【発明の効果】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、表面に有機色素を有する光電変換用酸化物半導体電極と、これと対をなす対向電極と、これらの電極にそれぞれ接触する固体電荷移動層とを有する色素増感型光電変換素子であって、前記対向電極が、少なくともカーボンペースト層と、金属ペースト層との積層体構造を含み、カーボンペースト層が固体電荷移動層と接するように配置されてなるように構成されているので、真空プロセスを必要としないために、製造面で安価に陽極を形成することができる。さらに、導電性が向上して電池特性が向上する。初期特性、信頼性(耐久性)も良好となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の色素増感型光電変換素子の模式的構成例を示した図面である。
【符号の説明】
1…色素増感型光電変換素子
6…第2の金属酸化物半導体膜
7…有機色素
11…透明導電性層
30…第1の金属酸化物半導体膜
40…固体電荷移動層
50,51…基板
70…光電変換用酸化物半導体電極
80…対極(対向電極)
81…カーボンペースト層
85…金属ペースト層

Claims (10)

  1. 表面に有機色素を有する光電変換用酸化物半導体電極と、
    これと対をなす対向電極と、
    これらの電極にそれぞれ接触する固体電荷移動層とを有する色素増感型光電変換素子であって、
    前記対向電極が、カーボン粒子およびバインダー樹脂を含有するカーボンペースト層と、金属粒子およびバインダー樹脂を含有する金属ペースト層との積層体構造を含み、カーボンペースト層が固体電荷移動層と接するように配置されてなることを特徴とする色素増感型光電変換素子。
  2. 固体電荷移動層の上に、対向電極を構成するカーボンペースト層と金属ペースト層とが順次、塗設形成されてなる請求項1に記載の色素増感型光電変換素子。
  3. 前記金属ペースト層がAg、Ni、Cu、Au、Ptのいずれか1つの金属を含有してなる請求項1または請求項2に記載の色素増感型光電変換素子。
  4. 前記カーボンペースト層の厚さが0.4〜100μmであり、前記金属ペースト層の厚さが0.2〜100μmである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の色素増感型光電変換素子。
  5. 前記カーボンペースト層の中にカーボン粒子が10〜80体積%含有される請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の色素増感型光電変換素子
  6. 前記光電変換用酸化物半導体電極は、透明導電層を有する透明基板と、この透明導電層の表面に形成された緻密状の第1の金属酸化物半導体膜と、この緻密状の第1の金属酸化物半導体膜の上に形成された多孔質の第2の金属酸化物半導体膜と、この多孔質の第2の金属酸化物半導体膜の表面に吸着された有機色素を有してなる請求項1ないし請求項のいずれかに記載の色素増感型光電変換素子。
  7. 前記緻密状の第1の金属酸化物半導体膜が、酸化対象となる金属薄膜形成後に、この金属薄膜を陽極酸化処理することにより形成されたものである請求項に記載の色素増感型光電変換素子。
  8. 前記緻密状の第1の金属酸化物半導体膜が、Ti,Ta,Al,Mg,Nb,Zr,Zn,Siのグループから選択された少なくとも1つの金属の薄膜を形成した後に、この金属薄膜を陽極酸化処理することにより形成されたものである請求項に記載の色素増感型光電変換素子。
  9. 前記固体電荷移動層が正孔輸送材料を含んでなる請求項1ないし請求項のいずれかに記載の色素増感型光電変換素子。
  10. 請求項1ないし請求項のいずれかに記載された光色素増感型光電変換素子を用いてなる色素増感型太陽電池。
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