JP3544888B2 - 光増感型太陽光発電セル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、長期信頼性を有し、かつ高い変換効率を有する光増感型太陽光発電セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、太陽光発電セルはSiなどの半導体を用いたものと、特開平1−220380号に記載してあるような光増感型の太陽光発電セルがある。光増感型セルの構造は、図1に示したようにガラスやポリマーなどの基板1が上下に用いられそれぞれの基板1にはフッ素をドープしたSnOが透明電極3として形成されている。その一方の透明電極にナノポーラス構造を持ったTiOがn型半導体電極4として用いられている。このn型半導体電極4には、Ruなどを中心金属に持った錯体色素5が吸着してある。また、もう一方の基板と色素が吸着してあるTiOなどのn型半導体電極8の間にはよう素などの酸化還元イオンを含んだ電解液(電荷輸送層)6が用いられている。この場合は湿式増感型太陽光発電セルである。7は電解液6を漏洩させないための封止部分である。
【0003】
このようなセルに太陽光があたった場合に、まず最初に光の中の短波長部分は受光側の基板として用いているガラス基板やポリマープラスチック基板に一部は吸収される。従って、セル内部のTiOや錯体色素には受光側の基板にカットされた短波長の光は照射されないことになる。ただし、300nm以上の光は、ガラス基板、ポリマー基板およびSnOなどの透明導電膜も透過するためにTiOや色素に照射される。
【0004】
一方、n型半導体電極を形成するTiOなどの化合物は、水や空気中有機汚染物質を分解することが多数報告されている。また、社団法人日本セラミック協会が発行するセラミックス.31.No.10.815−820(1996)に橋本・藤嶋等は特開平1−220380号に記載されている内容の太陽光発電セルは「年オーダーでの安定性はまったく報告されていない」。また、「色素の安定性を得るためには、紫外線をカットして利用する必要があるが、これによりエネルギー変換効率は更に低下する」とある。つまり、紫外線がn型半導体電極のTiO等の化合物にあたるとTiOは光触媒作用が発現し吸着している錯体色素(金属有機物、有機物色素でも同様))を分解してしまう。その結果、長期的な安定した発電効果がなくなってしまう結果となる。
【0005】
したがって、工業的には、長期信頼性を有し、かつ高効率な光増感型太陽光発電セルは完成されたというにはまったく不十分であり、達成されていない。
また、この光増感型セルの電解質部分をU.Bach等はNature.395.583−585(1998)に記載されているようにOMeTADのホール伝導性材料でセルを形成している。これは、液体である電荷輸送層を固体化しようとする試みである。この場合、n型半導体電極にはTiOを用いており、電荷輸送層部分と透明導電膜部分が電気的にショートしないようにコンパクトな層を設けている。しかしながら、Electrochim.Acta40,643−652を参照すると、この膜は表面に凹凸が100nmから300nmあり厚さの基点をどこにするかで幅があるが610nmから760nmの厚さの膜を形成している。この膜は、透明電極と電荷輸送層の短絡回路防止に役立つと記してあるが、TiOは薄く緻密性も不十分であると考えられ、更には異種材料の接合がなされているにもかかわらず応力緩和の構造が加味されていない。この様な膜を形成すると、本来の目的では全く無いし、この膜厚ではほとんど機能しないが、副次効果として、極めて一部だけ、受光側の基板や透明電極を通過した紫外線光を吸収しているとも思える面があるが、全く紫外線吸収には役立っていない。
したがって、長期使用した場合、透明電極のTiO2は光触媒機能を発揮し、電荷を分離する錯体色素や、電荷輸送層成分(OMeTAD等)を順次分解し始める。その結果、中期的には初期の変換効率値が得られなくなるという不具合を生じる。長期的には、発電機能はほとんど無くなり、最終的には発電をしなくなる。
この点でも長期信頼性を有した高効率な光増感型太陽光発電セルは完成されたというにはまったく不十分である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、長期信頼性を有し高効率の太陽光発電セルであって、透明導電膜とn型半導体電極の剥離、受光側の基板と透明導電膜の剥離を長期的に防ぎ、紫外線により(錯体)色素が光触媒反応による分解等で電荷分離を行なわなくなることを防止し、太陽光や室内等からの光が受光材からセル内部にいたるときにほとんど反射されること無しにセル内で吸収し、さらには電荷輸送層部分を有機液体材料や有機固体材料にした場合にも光触媒効果により分解し機能しなくなるのを防ぐ全く新規な構造や構成する材料の物性を発明して上記課題を総合的にすべて解決した。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、長期信頼性を有し高効率の太陽光発電セルであって、n型半導体電極の構造および物性を従来に無い物とすることで、受光材である基板、透明導電膜およびn型半導体電極に生じる熱膨張率に起因する応力を極限に低減し基板、透明導電膜およびn型半導体電極間の剥離を長期的に防ぎ、紫外線により錯体色素が光触媒反応による分解等により電荷分離や発電を行なわなくなることを防止し、太陽光や室内等からの光が受光材からセル内部にいたるときにほとんど反射されること無しにセル内で吸収し、さらには電解質部分を有機固体材料にした場合にも光触媒効果により分解し機能しなくなるのを防ぐ。
【0008】
具体的には受光側の基板、基板のセル内部の側に透明導電膜があり、その透明導電膜に色素の吸着したn型半導体電極があり、その対向する側に導電膜が付いた基板があり対向基板とn型半導体電極の間に電荷を輸送する材料(電荷輸送層)からなる光増感型太陽光発電セルにおいて、n型半導体電極が厚さ0.8μm以上20μm以下の緻密な紫外線カット層部分と多孔部分からなる新規な電極構造とした。これにより、色素が吸着しないn型半導体部分が形成され吸着していない部分での紫外線がカットできる光触媒反応遮断が実現した全く新規な構造となった。
【0009】
また、受光板の短波長側の吸収端をJv(nm)とし、透明電極の短波長側の吸収端をTv(nm)とし、n型半導体電極の緻密な紫外線カット層部分の短波長吸収端をN1v(nm)とし、n型半導体電極の多孔部分の短波長吸収端をN2v(nm)とするとき、これら吸収端のJv、Tv、N1v、N2vに、Jv≦N1vかつTv≦N1vの関係があり、さらにJv≦N2vかつTv≦N2vの関係も持たせた。これにより、色素の吸着させたn型半導体つまり多孔部分のn型半導体には、光触媒反応を引き起こす紫外線よりも長波長の光しか照射されないことになり長期信頼性が全く新しい構造で達成された。
【0010】
さらに、受光側基板の屈折率をJnとし、透明電極の屈折率をTnとし、n型半導体電極の緻密な紫外線カット層部分の屈折率をN1nとし、n型半導体電極の多孔部分の屈折率をN2nとするとき、Jn≦Tn≦N1nかつJn≦Tn≦N2nの関係がある時、表面や中間の部材による光の反射損失がほとんどなくなり、効率的に色素への光照射が行われ、光電変換が行われるようになり高効率セルが全く新しい構造で達成された。
【0011】
また更には、光増感型セルは、受光する基板、透明電極、n型半導体電極といった異種材料を多層にしセルを形成している。n型半導体電極の製造プロセスにもよるが、形成には数百度の熱処理を用いるのが普通であり、また、セルは真冬の最低気温から、真夏の直射日光を浴びた最高温度まで変化する。このような過酷な温度条件に発生する熱膨張率の差に起因する応力をできるだけ緩和することが必要であり、n型半導体電極の緻密な部分に非晶質相(アモルファス相)が含有されることで緩和されることを見出した。
【0012】
以上述べた如く、従来に無い全く新規なn型半導体電極の構造および物性にすること、および、光触媒反応が起こらない波長の吸収をあて、反射の起こらない構造にすることで、課題を解決し長期信頼性を有する高効率の光増感型太陽光発電セルを全く新規に達成したのである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、長期信頼性を有し高効率の太陽光発電セルの発明であって、その実施の形態について詳述する。
【0014】
n型半導体電極が厚さ0.8μm以上20μm以下の緻密な紫外線カット層部分と多孔部分4からなる新規な電極構造とした。これにより、色素が吸着しないn型半導体部分が形成され吸着していない部分での紫外線がカットできる光触媒反応遮断が実現した全く新規な構造(図2)となった。図1と同一部分は同一番号を付しその詳細説明を省略した。
【0015】
受光板(受光側基板)1は、ガラス基板を用いても有機ポリマー基板を用いても構わないが、透明性の高い基板を用いた場合には、ほぼ280nmよりも長波長の光は透過する。具体的な数字あげると、ホウケイ酸ガラスの場合、280nm以下の短波長紫外光は吸収するが、それよりも長波長は透過する(図3)。ソーダライムガラスの場合、290nm以下の短波長紫外光は吸収するが、それよりも長波長は透過する(図4)。ガラスを使用する場合、アルカリ性分のセル内部への拡散を防止するためにシリカコーティングを行うのが好ましいが、このコーティング膜の吸収はここに挙げたガラス材料よりも短波長光を透過する。
【0016】
一方有機ポリマー材料として、透明性の高いアクリル樹脂基板の場合には、種類にもよるが280から340nm以下の短波長紫外光は吸収するが、それよりも長波長は透過する(図5)。さらに、無色透明ポリイミドの場合には、280nm以下の短波長紫外光は吸収するが、それよりも長波長は透過する(図6)。以上のように受光板は種類により異なるものの280nm以上の波長光は透過する。
【0017】
また別に、受光材には透明電極3が形成される。この透明電極は受光材と異なった光の吸収特性を持つ。低抵抗で、熱的にも安定で透明性の高いSnO(フッ素ドープ)を用いたときの光の吸収を図7に示す。薄膜単独での吸収は測定が難しいので図4に示したソーダライムガラスにSnO(フッ素ドープ)を形成した場合の吸収を示している。この透明導電膜3は290nmよりも短波長の光を吸収している。しかしながら290nmよりも長波長の光は透過することになる。
【0018】
以上のことから、用いる材質により異なりはするものの290nmから360nmの紫外線は、受光板や透明電極に吸収されること無しに錯体色素が吸着されたn型半導体電極(TiO)に到達し光触媒反応が起こり有機物を分解することになる。この透過を無くすのがn型半導体電極の緻密な部分であり、光の透過の様子を図8に示す。
【0019】
一方光触媒反応について記載する。
【0020】
紫外線の照射によりTiOの価電子帯の電子が励起されて伝導帯に上がり自由電子eと、価電子帯に正孔pのペアを生じる。
TiO+hv→p+e
この正孔は酸化チタン表面の吸着水のOHに補足されて、・OHフリーラジカルとなり、その強力な酸化力により有機成分を分解する。
O→H+OH
OH+p→・OH
一方の電子eは結晶内のTi4+をTi3+に還元する。
[Ti4+]+e→[Ti3+
微量に存在するOがTi3+上に吸着され、O2−となるこれがHと反応しHO・ラジカルとなり、n型半導体電極周辺の樹脂を・OH同様に酸化分解する。
[Ti3+]+O→[Ti4+]+O2−(吸着)
2−(吸着)+H→HO
これらの反応はいずれもTiOの触媒作用による自らのフリーラジカル生成である。このようなフリーラジカル発生のサイクルはTiOの存在下で、紫外線とわずかな水と酸素の供給がある限り継続し、TiO(n型半導体電極)周辺の有機物材料が酸化分解し消失し、本来の材料機能を果たさなくなる。この反応が光触媒反応である。
【0021】
以上述べたように光触媒反応は水と酸素が必要であるが、以下に記すようにTiOへの色素の吸着はTiOに吸着した水を必要としており、完璧な雰囲気制御でもできない限り酸素が微量であれど混入する。
【0022】
n型半導体電極への水の吸着を記すと以下の通りになる。
【0023】
n型半導体電極(TiO)結晶表面では、原子の規則的結合が切断されているために、結晶内部の原子に比べ不安定であり、結晶表面のTi4+イオンは不飽和になり、この不飽和手は雰囲気中の水分と化学結合しOH基となる。このOH基上に水分子が水素結合により吸着し、さらにその外側に水分子が物理吸着され、水分子層で幾重にも被覆された状態になる。
【0024】
水分子は外側になるほど吸着エネルギーが弱くなる。したがって、加熱処理によりTiO表面の吸着水は脱離し、結合OH基も高温では縮合や脱水する。100℃の加熱で弱く吸着している水分子は脱離し、100℃以上の熱処理により物理吸着水が吸着エネルギーの弱いものから順次脱離する。150℃以下の減圧脱気では吸着水分子が残り、これの除去には150から250℃の脱気が必要である。300℃で大部分のOH基は除去されるが、結晶表面上に孤立したOH基は500℃以上でも残留すると考えられる。
【0025】
TiOに吸着したOH基を利用して色素の吸着を行う原理を述べる。
n型半導体電極と色素は吸着によりつながっている。この吸着が存在することで、色素が電荷分離をしたときの電子eがn型半導体電極に伝達される。つまり、この吸着が存在しないと電子は伝達されないことになる。この吸着は、TiOに吸着したOH基と色素のリガンドに存在する官能基(COOH基が一般的)で保たれる。したがって、TiOには水が吸着していないと色素は吸着しづらくなることになる。その一方で、水が吸着することで、光触媒反応が起こりやすくなるという相いれない状態が共存していることになる。
【0026】
この問題を解決するためには、n型半導体電極に290nmから360nmの光を照射しない全く新規なセル構造が達成できれば長期信頼性の光増感型太陽光発電セルが実現できることになり、そのセルを実現するのが、本発明の骨子となる受光板に形成した長期信頼性保護膜という機能を持つn型半導体電極の緻密な部分である。
【0027】
長期信頼性保護膜は以下の光吸収特性を有すればよい。
つまり、受光板の短波長側の吸収端をJv(nm)とし、透明電極の短波長側の吸収端をTv(nm)とし、n型半導体電極の短波長吸収端をNv(nm)とする。これら吸収端のJv、Tv、Nvに、Jv≦Nv かつ Tv≦Nvの関係がある時長期信頼性保護膜を形成すると効果的であり、長期信頼性保護膜の短波長側の吸収端をHv(nm)とするとNv≦Hvの関係を満たす特性を持った長期信頼性保護膜を選択し、受光板に形成すれば光触媒反応が起こらず長期信頼性を有した光増感型太陽光発電セルが実現できることを全く新規に見出した。この関係を満たさないときには、長期信頼性は保証されない。
【0028】
このn型半導体電極の緻密な部分の厚さに関して詳述する。次のランベルトの式により
I=I−αl
:入射光の強度
I:透過光の強度
l:結晶体の厚さ
α:見かけの吸収係数
結晶体の厚さと透過光の強度の関係が存在する。
【0029】
n型半導体電極の緻密な部分の厚さは、透過する紫外線の強度に直結する。本発明では、必要異常に光が吸収されることによる効率低下が起こらずに、また、光触媒反応は起こらず、更には真冬の最低温度と真夏の炎天下の最高温度の温度サイクルに対しても剥離等でセル内部が機能しなくならない最適の厚さを全く新規に見出した。
【0030】
n型半導体電極の厚さが0.8μm以上20μm以下のときに達成されることを見出した。0.8μmよりも薄いと、紫外線の透過が起こり光触媒反応が起こり、長期的にはセルが機能しなくなる。また、20μmよりも厚いと基板、イオン拡散防止膜、透明導電膜およびn型半導体電極の緻密な部分の間に、熱膨張率差に起因する応力が集中し始め、各界面で剥離やクラックが発生し長期的にはセルが機能しなくなる。より好ましくは0.8μm以上10μm以下である。更に好ましくは1.0μm以上5μm以下である。最も好適なのは1.0μm以上2μm以下である。
【0031】
次にn型半導体電極の密度、あるいは密度に起因する微構造に関しても諸課題を解決する本発明で新規に見出したものである。低密度であると、色素の吸着が避けられず結果的に紫外線に起因する光触媒反応が起こってしまう。したがって、n型半導体電極の緻密な部分は高密度の方が好ましい。気孔が存在する場合でも開気孔では色素の吸着が起こる。したがって、気孔は閉気孔であることが好ましい。n型半導体電極の相対密度は90%以上100%以下が好ましい。より好ましくは、相対密度93%以上100%以下である。更に好ましくは相対密度95%以上100%以下である。
【0032】
さらに、ポアが存在する場合でもポアサイズは100nm以下のサイズ、また1μm以上サイズが好ましい。100nm以上1μm以下では、光の散乱が起こり結果として変換効率の低下につながり好ましくない。
【0033】
つぎに、紫外線を吸収する光触媒反応防止膜は、設置位置が非常に重要となる。一般にn型半導体電極に用いることのできる材料は、大きな屈折率を持つ。従って、光増感型の太陽光発電セルでは反射防止する膜の形成は極めて困難であった。本発明では、それを初めて可能にした。
【0034】
受光側基板の屈折率をJnとし、透明電極の屈折率をTnとし、n型半導体電極の緻密な紫外線カット層部分の屈折率をN1nとし、n型半導体電極の多孔部分の屈折率をN2nとするとき、
Jn≦Tn≦N1n
かつJn≦Tn≦N2n
の関係があると最大限に光を反射すること無しに吸収することがわかり、高変換効率光増感型太陽光発電セルを得るにいたった。
【0035】
イオン拡散防止膜に関しては、イオン拡散防止膜の短波長側の吸収端をIv(nm)とするとき、これら吸収端のIvに、
Iv≦N1v
の関係があり、さらに
Iv≦N2v
の関係があり、
イオン拡散防止膜の屈折率をInとするとき、
In≦Tn≦N1n
かつIn≦Tn≦N2n
の関係があると最大限に光を反射すること無しに吸収することがわかり、高変換効率光増感型太陽光発電セルを得るにいたった。
【0036】
また同時に、熱サイクルから生じる応力を緩和するには、n型半導体電極のヤング率を小さくすれば、剥離やクラックが生じなくなることを新規に突き止めた。ヤング率を小さくするためには、 n型半導体電極の緻密な部分に非晶質相(アモルファス相)が含有されているとき達成されることがわかった。一般に結晶相が多い場合には、電極の電気伝導が上昇し、アモルファス相が多い場合には電極の電気伝導が低下する。電気伝導が大きく抵抗が小さいことがn型半導体電極には求められるが、一方でヤング率を小さくする必要も出る。本発明はこの両者を解決する組成としてn型半導体電極の緻密な部分に含まれるアモルファス相の体積割合が5%以上70%以下の範囲の値であるという全く新たな材料を発明した。この時長期に亘り剥離やクラックが生じない信頼性の高い高効率な光増感型セルが達成される。
【0037】
一方、n型半導体電極の緻密な部分の表面の凹凸が大きいと光の散乱が起こり効率的に色素に光が到達しないために抵抗率となってしまう。n型半導体電極の緻密な部分の表面の凹凸が90nm以下であると効率低下につながらず、高変換効率の光増感型太陽光発電するが得られることがわかった。
【0038】
n型半導体電極の、緻密な部分と多孔部分は同一化合物が好ましいが伝導帯のつながりが、電子が伝導できる構造に保たれていればよい。
【0039】
更に本発明のセルを構成する他の部分についての実施の形態を記しておく。
本発明の長期信頼性の高効率太陽光発電セルは、(1)ガラスやポリマーなどの太陽光のほぼ全波長領域に対して透明な受光板の片面に、イオンの拡散を防止する膜が必要に応じて形成され、また金属や透明導電膜も形成された受光材料が形成された受光板と、(2)受光材料の片面にある透明導電膜に連結された熱応力を緩和すると同時に紫外線を吸収し、電子を伝導する機能を持つ緻密な層と錯体色素を吸着する多孔体部分からなるn型半導体電極、(3)n型半導体電極に吸着した色素と、(4)(1)に記した金属や透明導電膜の対向電極を形成した基板と、(5)色素を吸着させたn型半導体電極と対向電極の間に形成される、イオン伝導性あるいはホール伝導性物質からなる電荷輸送層と、(5)(1)に形成された電極に電気的に対向した電極の形成された基板から構成されていることを特徴とする。
(1)及び(4)のアノードおよびカソードからなる電極群が形成される非導電性基板は、良好な絶縁性があればいかなるものであってもよい。具体的には例えば、ソーダライムガラス等のガラス基板、ポリカーボネートやアクリル樹脂などの有機ポリマー基板、アルミナ、窒化アルミニウムなどのセラミック基板、シリコン基板等が挙げられる。
【0040】
また非導電性材料でない場合でも、電極群を形成する面をポリマー、ガラス、セラミックなどの絶縁性物質でコーティングすれば良く、ステンレス、アルミニウム、チタン等の金属基板やカーボン基板などを用いることが出来る。ただし、少なくとも一方の基板は太陽光を透過する透明性が要求される。また、受光側の基板と透明導電膜の間にイオン拡散防止膜があることが好ましい。イオン拡散防止膜はシリカ膜等を用いることができる。
【0041】
一般的にn型半導体電極に用いる材料は、特にチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、亜鉛、インジウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの酸化物やペロブスカイト類が挙げられる。特に最適なのはTiOのアナターゼ相である。錯体色素を吸着させる多孔部分は、単位面積当たり大きな表面積を有している方が好ましく、100以上がよい。好ましくは500以上であり、更に好ましくは1000以上である。また多孔部分の厚さは、薄いと色素が吸着する表面積が小さくなり好ましくない。また、厚すぎると内部抵抗が大きくなり変換効率の低下につながる。好ましくは2μmから15μmであり、更に好ましくは5μmから10μmである。また、多孔部分の気孔サイズは、100nm以下、1μm以上が好ましい。100nm以上1μm以下の気孔は光を散乱し変換効率の低下につながるために好ましくない。n型半導体電極の緻密な部分と多孔な部分は、同一の化合物から構成されていることが好ましいが、電子が錯体色素からn型半導体色素の多孔部分に注入され、緻密な部分に連続的に注入される伝導帯の連結構造が保たれている場合には、n型半導体電極が異なる2種類の化合物から構成されていても動作には何ら問題ない。
(1)と(4)の電極群を形成する材料は、導電性物質であればいかなるものでも良い。アノードおよびカソードを構成する材料は、同じでも異なっていても良い。電荷輸送層が電解質層である場合は電気化学的に安定である材料を用いることが好ましく、具体的には白金、金、カーボン等を用いることが望ましい。また、SnO(フッ素ドープ)、ITO(In−Sn酸化物)やZnO(Alドープ)などの酸化物系の導電膜で形成することが望ましい。この他の材料、例えばアルミニウム、銅、鉄、ステンレス、チタン、銀、ドープしたポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどの導電性高分子などであっても、電解質に接する表面のみ白金や金、カーボン等で被覆すれば同等の安定性を得ることができる。こうした被覆は、例えば所望のパターンに電極を形成した後に(全面電極でも可能)、電解あるいは無電解めっきによって白金、金などをコーティングすることによって行われる。電極表面は微細構造によって表面積が増大された状態が良く、例えば白金であれば白金黒状態に、カーボンであれば多孔質状態になっていることが好ましい。熱サイクルから生じる応力を緩和するために、電極の厚さは薄いことが望まれる。1μm以下が好ましく、より好ましくは0.7μm以下である。しかし抵抗率が大きい場合には変換効率が低下しない厚さにすべきである。
【0042】
(3)のn型半導体に担持させる色素は可視光領域に吸収を有し、光励起反応によって半導体層に電子を注入できるものであればいかなるものでもよく、遷移金属錯体などが用いられる。具体的にはルテニウム、オスミウム、鉄などの金属錯体が挙げられる。特に配位子が二座や三座あるいは全座ポリピリジル化合物であり、カルボキシル基などの二酸化チタン表面の水酸基と結合可能な置換基を有するものがよい。
(5)の電荷輸送層としては、イオン伝導性物質としてはヨウ化物、臭化物、ハイドロキノンなどの可逆的酸化還元対を含む電解質溶液、架橋ポリアクリル樹脂誘導体や架橋ポリアクリロニトリル誘導体などをマトリックスとして電解質溶液を含浸させた高分子ゲル電解質、ポリアルキレンオキシドやシリコーン樹脂類などに電解質を溶解した高分子電解質、高分子アンモニウム塩などの溶融塩電解質が用いられる。
【0043】
電解質溶液の場合、十分な空孔率を有する多孔質のシリカ、アルミナ、ルチル相の二酸化チタンといった無機多孔質体や、ポリ(弗化ビニリデン)などの有機物質の多孔質体に含浸させた状態で用いてもよい。
ホール伝導性物質としては、トリアリルアミン類などのアモルファス材料、ポリビニルカルバゾールなどの高分子型ホール輸送性材料、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリシロール、ポリシランなどの共役性高分子、またはこれらの誘導体などが用いられる。
【0044】
本発明の長期信頼性を有し、高い変換効率を有する光増感型太陽光発電セルは、例えば次のような方法で作製される。まず可視域の波長で光透過性が良好なガラスあるいは有機ポリマー基板にスパッタ法、CVD法あるいはゾルゲル法などでSnO、ITOやZnOなどを主成分とする透明導電膜を形成する。次に、この透明導電膜上にスパッタ法、CVD法あるいはゾルゲル法のような種々の方法でn型半導体電極の緻密な部分を形成する。必要に応じて、n型半導体電極のアモルファス相の含有割合を所望の割合にするための熱処理等を行う。ひきつづき、n型半導体部部の多孔部分を原料化合物粉末を使用したペーストをスクリーン印刷やスキージ印刷で形成する。別の方法としてスパッタ法、CVD法あるいはゾルゲル法などを用いることができる。プロセスにもよるが、その後熱処理が必要ならば行う。比表面積を増大させるためのエッチングなどを行うことも許容される。
【0045】
引き続き、前記錯体色素をアルコールなどの有機溶剤に溶解した溶液に、n型酸化物半導体が表面に形成されたガラス基板を浸し所定の時間保持する。この工程は、溶液にガラス基板を浸したものを還流装置に入れ、還流処理を施すことでも達成できる。還流処理を行うことによりただ単に溶液に浸すのに比べると短時間で十分な色素を吸着できる。
【0046】
十分色素を吸着させたn型酸化物半導体電極つき基板を溶液から引き上げ乾燥した後、対向電極のついたガラスあるいは有機物基板と向かい合わせて配置し、周囲を一部を除いてエポキシ系などの樹脂で封止する。封止する場合、n型酸化物半導体電極と対極の間にスペースを調整するためにガラスあるいはポリマーのビーズを配置することも許容する。
【0047】
次にこの2枚の透明導電基板間に電荷輸送層を含浸する。電荷輸送層として溶液を使用する場合は電解液をあらかじめ調整しておき、これを容器に入れ、周囲を封止した前記透明基板とともに脱気できる容器内に設置した後、一度十分脱気を行い、次に容器内のガラス基板の未封止の部分を電解液に接触させ、引き続き脱気容器の真空を破って電解液を透明基板間に注入する。十分に電解液の注入が完了した後未封止の部分をエポキシ樹脂で封止して太陽光発電セルとする。
【0048】
電荷輸送層が固体、あるいは擬似固体の場合は、n型酸化物半導体を形成した透明基板と対極が形成された透明基板の封止を行う前に、n型酸化物半導体電極上に粉末状,粒状あるいは板状の固体あるいは擬似固体の電解質を適量配置し、さらにその上に対極を形成した透明基板を配置した後脱気容器内で加熱しながら電荷輸送層を溶融し、n型酸化物半導体電極内部に電荷輸送層を含浸させたあと大気に戻し冷却して所望の接合を完成する。なお、脱気容器中で加熱し電荷輸送層を溶融している間、適当な荷重をかけることも許容される。最後に2枚の透明基板の周囲をエポキシ樹脂等で封止して目的の太陽光発電セルとする。
(実施例)
以下、具体的に実施例を用いて本発明を説明するが、実施例は本発明の趣旨をわかりやすくする目的で記述するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
(実施例1)
チタンイソプロポキシドを、脱水した2−プロパノールに溶解し、それを還流装置を用いて加熱しながら1時間還流を行い、均一な溶液となるよう混合した。次にドライボックス中で、激しく攪拌しながら0.1M硝酸溶液を還流後の溶液に滴下し透明なゾル溶液を作製した。
【0049】
得られた溶液にSiOのイオン拡散防止膜と0.9μmの厚さの酸化スズにフッ素がドープされ、そのシート抵抗が5Ω/□の透明導電膜が形成されたほう珪酸ガラス基板を浸漬し、およそ5cm/minのスピードで引き上げた。これを最高温度600℃で空気中で熱処理を行った。この溶液への浸漬から600℃での焼成までの行程を複数回行い、厚さ2.0mmの相対密度が98%でアモルファス相を含有しない酸化チタン薄膜を形成した。このn型半導体電極の緻密な部分の表面の凹凸は40nmであった。 相の決定はX線回折法により構成相を測定した。アナターゼに対応するピークが観察され、より高温で熱処理した別の試料と粉末X線回折のピーク強度を比較し、さらに化学分析を併用して薄膜内に残存する非晶質相の割合を測定したが、0%であった。また、気孔率を微構造観察を行うことで求めたところ2%(相対密度98%)であった。
【0050】
次に、平均一次粒径が30nmの高純度酸化チタン(アナターゼ)粉末に硝酸を添加した後純水とともに混練し、さらに界面活性剤で安定化させたペーストを作製した。これをn型半導体電極に緻密な部分の上にガラス基板上にスクリーン印刷法で印刷し、温度450℃で熱処理を行って厚さ2μmの酸化チタン(アナターゼ)からなるn型半導体電極を形成した。このスキージ印刷、熱処理を複数回繰り返し、最終的に酸化すず導電膜上に厚さ7μmのアナターゼ相からなる酸化チタンn型半導体電極を形成した。このn型半導体電極のラフネスファクターは1400であった。ラフネスファクターは、基板の投影面積に対する、窒素吸着量から求めた。
【0051】
この2層構造の酸化チタン薄膜が形成されたガラス基板を、シス−ビス(シオシアナト)−N,N−ビス(2,2’−ジピリジル−4,4’−ジカルボン酸)−ルテニウム(2)二水和物)の錯体色素(錯体色素A)をエタノールに溶かした3.7×10−4M溶液に浸漬して7時間放置し酸化チタン薄膜に色素を十分吸着させた。色素吸着量を検量線より計算しところおよそ5.5×10−7mol/cmであった。
【0052】
対向電極としてフッ素をドープ下酸化すずに白金を薄くコートした電極を形成したガラス基板を、直径が20μmのスペーサーを利用して前述の二層構造の酸化チタンn型半導体電極を作製した基板上に配置し、周囲を電解液注入口を残してエポキシ系樹脂で固めて固定した。注入孔からよう化テトラプロピルアンモニウム0.4M,よう化カリウム0.02M,ヨウ素0.03Mのアセトニトリル/炭酸エチレン混合溶媒電解質溶液を注入した。注入後、エポキシ樹脂を封孔して光電変換素子を作製した。
【0053】
作製した直後に太陽電池セルに擬似太陽光を15mW/cmの強度で照射してその変換効率(初期)を求めたところエネルギー変換効率10.0%が得られた。
【0054】
その後、太陽電池セルに擬似太陽光を15mW/cmの強度で照射しながら、サーマルサイクルテスト(TCT)を行った。25℃の空気雰囲気中に30分放置した後、100℃まで30分間で温度上昇させた。100℃で30分間放置し、その後−10℃まで40分で降温し、−10℃で30分間放置した。その後100℃まで40分で昇温し30分放置した。このような−10℃から100℃間の温度サイクルを1000回行った。太陽電池セルに擬似太陽光を15mW/cmの強度で照射してその変換効率(TCT後)を求めたところエネルギー変換効率9.9%が得られ、効率の低下はほとんど無く良好であった。
【0055】
セルを分解し、走査型電子顕微鏡と透過型電子顕微鏡でイオン拡散防止膜/透明導電膜/n型半導体電極の緻密な部分の界面付近を観察を行った、剥離は観察されなかった。
(実施例2)
n型半導体電極の緻密な部分の成膜をスパッタ法で作製した。チタンをターゲットとして酸素0.1 Pa,アルゴン0.2 Paの雰囲気中で出力2kWでスパッタを行った。得られた薄膜の構成相を粉末X線回折法により同定したところアモルファスの酸化チタンであることが判明した。引き続き、このガラス基板を500℃で4時間熱処理を行い、構成相の調整を行った。得られた薄膜の構成相を粉末X線回折装置で確認したところ、アナターゼ相に対応するピークが確認された。高温で熱処理を行い完全に結晶化した試料の回折パターンとピーク強度を比較したところ、同一でありアモルファス相は含有していなかった。
【0056】
実施例2の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1と同一である。
【表1】
Figure 0003544888
(実施例3)
実施例2から実施例12までの条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1または実施例2と同様である。
(実施例4〜6)
色素は図8の構造のものを用いた(錯体色素B)。
【0057】
実施例4から実施例6までの条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1や2と同様である。
(実施例7)
n型半導体電極の緻密な部分を作製するとき、このガラス基板を450℃で3時間熱処理を行なった。
【0058】
実施例7の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1や2と同様である。
(実施例8)
n型半導体電極の緻密な部分を作製するとき、このガラス基板を430℃で3時間熱処理を行なった。
【0059】
実施例8の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1や2と同様である。
(実施例9)
n型半導体電極の緻密な部分を作製するとき、このガラス基板を410℃で3時間熱処理を行なった。
実施例9の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1や2と同様である。
(実施例10)
n型半導体電極の緻密な部分を作製するとき、このガラス基板を400℃で3時間熱処理を行なった。
【0060】
実施例10の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1や2と同様である。
(実施例11)
電荷輸送材料にホール輸送性の固体材料を用いた。Ru錯体を吸着したn型半導体電極と対極を形成したガラス基板で図9に示す固体キャリア輸送材料、直径8mmの球状ガラススペーサー、封止材をはさんで真空加熱装置内部に配置し、減圧しながら固体キャリア輸送材料の融点以上にまで過熱してキャリア輸送材料をとかし、圧着して酸化チタン電極との良好な接合を実現したあと冷却し、太陽光発電セルを作製した。
【0061】
実施例11の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1と同様である。
(実施例12)
電荷輸送材料にイオン伝達性の疑似固体材料を用いた。室温で液状の1−メチル−3−エチルイミダゾリウムトリフレート溶融塩に対アニオンとしてヨウ素イオン(I)をもつセチルピリニジウム塩をヨウ素(I)とともに溶解し、さらにポリエチレングリコール−ジアクリレートを溶解して電荷輸送層とした。この電荷輸送層を前述の色素を吸着した酸化チタン上に直径が7mmのポリエチレンスペーサーとともに配置し、対極とガラス基板を重ね、真空容器中で脱気しながら加熱して溶融塩の粘度を下げ酸化チタン電極に含浸した。含浸後、紫外線を照射して溶融塩をゲル化させ、太陽光発電セルとした。
実施例12の条件及び評価結果を第1表に示す。表に記していない部分は実施例1と同様である。
(比較例1〜3)
比較例1から比較例3までの条件及び評価結果を第2表に示す。表に記していない部分は実施例と同様である。
【表2】
Figure 0003544888
(比較例4)
平均一次粒径が30nmの高純度酸化チタン(アナターゼ)粉末に硝酸を添加した後純水とともに混練し、さらに界面活性剤で安定化させたペーストを作製した。これをn型半導体電極に緻密な部分の上にガラス基板上にスクリーン印刷法で印刷し、温度390℃で熱処理を行って厚さ2μmの酸化チタン(アナターゼ)からなるn型半導体電極を形成した。このスキージ印刷、熱処理を複数回繰り返し、最終的に酸化すず導電膜上に厚さ7μmのアナターゼ相からなる酸化チタンn型半導体電極を形成した。
【0062】
比較例4までの条件及び評価結果を第2表に示す。表に記していない部分は実施例と同様である。
【0063】
(比較例5)
n型半導体電極の緻密な部分を作製するとき、このガラス基板を150℃で3時間熱処理を行なった。
【0064】
比較例5までの条件及び評価結果を第2表に示す。表に記していない部分は実施例と同様である。
【0065】
【発明の効果】
本発明の効果は、長期信頼性を有し高効率の太陽光発電セルの発明であって、n型半導体電極の構造および物性を従来に無い物とすることで、透明導電膜とn型半導体電極に生じる熱膨張率に起因する応力を極限に低減し透明導電膜とn型半導体電極間の剥離、受光側の基板と透明導電膜の剥離を温度変化のある長期的な使用から防ぐと共に、n型半導体が吸着した色素を光触媒反応により分解するのを防止し、電気ロスを非常に少なくし、更にはn型半導体電極内での電気的抵抗を極端に小さくする。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光増感型太陽光発電セルの断面を示す模式図。
【図2】本発明の光増感型太陽光発電セルの断面を示す模式図。
【図3】ホウケイ酸ガラスの光透過率。
【図4】ソーダライムガラスの光透過率。
【図5】アクリル樹脂の光透過率。
【図6】無色透明ポリイミドの光透過率。
【図7】ソーダライムガラスにSnO2膜をつけたときの光透過率。
【図8】図7の部材にTiO2緻密な膜をつけたときの光透過率。
【図9】実施例5、6、7で用いた色素の構造図。
【図10】実施例12で用いたホール輸送性固体材料の構造図。
【符号の説明】
1.基板
2.イオン拡散防止膜
3.透明導電膜
4.n型半導体電極(多孔部分)
5.錯体色素
6.電荷輸送層
7.封止部分
8.n型半導体電極(緻密な部分)

Claims (9)

  1. 受光側の基板、この受光基板のセル内部の側に透明導電膜があり、その透明導電膜に色素の吸着したn型半導体電極があり、その対向する側に導電膜が付いた基板があり、この対向基板とn型半導体電極の間に電荷を輸送する材料(電荷輸送層)からなる光増感型太陽光発電セルにおいて、前記n型半導体電極が、前記透明導電膜上に形成した厚さ0.8μm以上20μm以下の緻密な紫外線カット層部分と、この緻密な紫外線カット層部分上に形成した多孔部分からなり、前記受光基板の短波長側の吸収端をJv(nm)とし、前記透明導電膜の短波長側の吸収端をTv(nm)とし、前記n型半導体電極の緻密な紫外線カット層部分の短波長吸収端をN1v(nm)とし、前記n型半導体電極の多孔部分の短波長吸収端をN2v(nm)とするとき、これら吸収端のJv、Tv、N1v、N2vに、Jv≦N1vかつTv≦N1vの関係があり、さらにJv≦N2vかつTv≦N2vの関係があり、またN2v≦N1vの関係があり、前記受光基板の屈折率をJnとし、前記透明導電膜の屈折率をTnとし、前記n型半導体電極の緻密な紫外線カット層部分の屈折率をN1nとし、前記n型半導体電極の多孔部分の屈折率をN2nとするとき、Jn≦Tn≦N1nかつJn≦Tn≦N2nの関係があることを特徴とする光増感型太陽光発電セル。
  2. 前記受光基板のセル内部の側にイオン拡散防止膜があり、前記イオン拡散防止膜の短波長側の吸収端をIv(nm)とするとき、これら吸収端のIvに、Iv≦N1vの関係があり、さらにIv≦N2vの関係があり、前記イオン拡散防止膜の屈折率をInとするとき、In≦Tn≦N1nかつIn≦Tn≦N2nの関係があることを特徴とする請求項1に記載の光増感型太陽光発電セル。
  3. N1n≦N2nの関係があることを特徴とする請求項1および2に記載の光増感型太陽光発電セル。
  4. 前記イオン拡散防止膜がシリカ膜であることを特徴とする請求項2に記載の光増感型太陽光発電セル。
  5. 前記n型半導体電極の緻密な部分の相対密度が90以上100%以下であることを特徴とする請求項1および2に記載の光増感型太陽光発電セル。
  6. 前記n型半導体電極の緻密な部分と多孔部分の主成分が同一の化合物種であることを特徴とする請求項1に記載の光増感型太陽光発電セル。
  7. 前記n型半導体電極の緻密な部分に非晶質相(アモルファス相)が含有されていることを特徴とする請求項1に記載の光増感型太陽光発電セル。
  8. 前記n型半導体電極の緻密な部分に含まれるアモルファス相の体積割合が5%以上70%以下の範囲の値であることを特徴とする請求項7に記載の光増感型太陽光発電セル。
  9. 前記n型半導体電極の緻密な部分の表面の凹凸が90nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光増感型太陽光発電セル。
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