JP5135737B2 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Description

本発明は、電極基板上に色素が担持された酸化物半導体層が形成されている負電極構造体を備えた色素増感型太陽電池に関するものである。
現在、地球規模の環境問題や化石エネルギー資源枯渇問題などの観点から太陽光発電に対する期待が大きく、単結晶及び多結晶シリコン光電変換素子が太陽電池として実用化されている。しかし、この種の太陽電池は、高価格であること、シリコン原料の供給問題などを有しており、シリコン以外の材料を用いた太陽電池の実用化が望まれている。
上記のような見地から、最近では、シリコン以外の材料を用いた太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。この色素増感型太陽電池は、図2に示すように、透明ガラスや透明樹脂フィルムなどの透明基板1a上に透明導電膜1b(例えばITO膜)を電極基板1として使用し、この電極基板1の透明導電膜1b上に二酸化チタンなどの金属酸化物半導体の多孔質層3を設け、この多孔質層3の表面に増感色素(例えばRu色素)5を吸着させたものを負電極構造体7として有しており、このような負電極構造体7を、電解質8を間に挟んで正極10に対峙させた構造を有している。
このような構造の色素増感型太陽電池では、負電極構造体7側から可視光を照射すると、色素5が励起され、基底状態から励起状態へと遷移し、励起された色素5の電子は、半導体の多孔質層3の伝導帯へ注入され、外部回路12を通って正電極10に移動する。正電極10に移動した電子は、電解質中のイオンによって運ばれ、色素5に戻る。このような過程の繰り返しにより電気エネルギーが取り出されるわけである。このような色素増感型太陽電池の発電メカニズムは、pn接合型光電変換素子と異なり、光の捕捉と電子伝導が別々の場所で行われ、植物の光電変換プロセスに非常に似たものとなっている。
ところで、上記のように負電極構造体7側からの光照射を行った場合には、透明導電膜1bでの抵抗が大きく、セル(電池として機能する発電最小単位)を大型化すると、内部抵抗(曲率因子、Fill Factor;FF)や変換効率が大きく低下するという問題がある。
このような問題を解決するために、特許文献1には、負電極の対向電極側(正電極側)から光を照射して発電を行う色素増感型太陽電池が開示されている。この構造の太陽電池では、負電極側から光を照射するものではないため、色素を担持している半導体多孔質層を、直接、低抵抗金属板上に設けることができ、セルの大型化によるFFや変換効率の低下を有効に回避することができる。
特開2001−273937
しかしながら、負電極側或いは対向電極側の何れから光を照射して発電を行った場合にも、その変換効率は未だ満足し得るものではなく、さらに変換効率を高めることが求められている。
従って、本発明の目的は、変換効率が向上した色素増感型太陽電池を提供することにある。
本発明者等は、色素が担持される酸化物半導体層を相対的に緻密な層と相対的に多孔質の層とに分割することにより、変換効率が大きく向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明によれば、ゾルゲル法によって形成され且つ色素が担持された酸化物半導体層を備えた負電極構造体と、対向電極構造体と、前記負電極構造体と対向電極との間に設けられた電解質層とからなる色素増感型太陽電池において、
前記酸化物半導体層が、相対的に緻密な層と相対的に多孔質の層とを有していると共に、該酸化物半導体層の相対的に多孔質の層が、電解質層側に位置しており、且つ1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、面積が10000nm 以上の大きさの大きな細孔が、全細孔数当り、5〜80%の個数で存在している層であり、該酸化物半導体層の相対的に緻密な層が、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、前記大きな細孔が、全細孔数当り、5%未満の個数で存在している層であり、
前記対向電極構造体が、透明導電性基板と、該透明導電性基板上に形成された導電層とから形成されており、該対向電極構造体側からの光照射により発電が行われること、
を特徴とする色素増感型太陽電池が提供される。
本発明の色素増感型太陽電池においては、
(1)前記酸化物半導体層の相対的に緻密な層が、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、面積が2500nm以下の大きさの小さな細孔が、全細孔数当り、50%以上の個数で存在している層であること、
(2)前記相対的に多孔質の層が電解質層側に位置していること、
(3)前記相対的に多孔質の層の厚みが1乃至15μmであり、前記相対的に緻密な層の厚みが1nm乃至3μmであること、
が好ましい。
従来公知の色素増感型太陽電池においては、光の散乱を抑制して光透過性を確保するために酸化物半導体層は比較的緻密に形成されていた。この結果、色素吸着量が少なくなってしまい、電子発生量を増大させることができず、変換効率に限界があったものと思われる。しかるに、本発明の色素増感型太陽電池では、光増感剤として機能する色素が担持された酸化物半導体層が相対的に緻密に形成されている層と相対的に多孔質に形成されている層とを有しているため、高変換率を確保することが可能となる。即ち、相対的に緻密な層では、色素吸着量は少ないものの、光の散乱が有効に回避されており、光の透過率が高い。一方、相対的に多孔質の層では、光の透過率は低いものの色素吸着量が増大している。従って、このような2つの層が共存することにより、全体として電子発生量が増大し、かくして高変換効率を確保することが可能となるものである。
例えば、後述する実施例の実験結果から明らかなように、酸化物半導体層が相対的に多孔質の層のみから形成されている場合には、得られる太陽電池の変換効率は2.79%であり(比較例1)、酸化物半導体層が相対的に緻密な層のみから形成されている場合には、その変換効率はさらに低く2.04%である(比較例2)。一方、本発明に従って、酸化物半導体層が相対的に緻密な層と相対的に多孔質の層とを有している場合には、その変換効率は3.57%及び3.56%であり(実施例1及び2)、高変換効率を得ることができるのである。
本発明の色素増感型太陽電池は、対向電極構造体を、透明導電性基板と、該透明導電性基板上に形成された導電層とから形成し、該対向電極構造体側からの光照射により発電が行われる構造としている。このため、色素が担持された酸化物半導体層は、透明導電膜のような高抵抗膜を介することなく、電極基板(負電極)上に設けられ、この結果、セルを大面積化した場合にも、小面積時と殆ど変わらないFF(曲率因子)や変換効率を得ることができる。
本発明を、以下、添付図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の最も好適例の概略断面図を示すものであり、かかる太陽電池は、全体として20で示す負電極構造体と、全体として21で示す対向電極(正電極)構造体とを備え、これら電極構造体20,21の間に電解質23が配置されたものであり、可視光を対向電極構造体21側から照射して負電極構造体20に入射させることにより発電が行われる。
電解質23としては、公知の太陽電池と同様、リチウムイオン等の陽イオンや塩素イオン等の陰イオンを含む種々の電解質溶液を使用することができる。また、この電解質23中には、酸化型構造及び還元型構造を可逆的にとり得るような酸化還元対を存在させることが好ましく、このような酸化還元対としては、例えばヨウ素−ヨウ素化合物、臭素−臭素化合物、キノン−ヒドロキノンなどを挙げることができる。このような電解質23は、一般に、電気絶縁性の樹脂等により封止され、電極構造体20,21間から漏洩しないように構成されている。
また、液体の電解質以外に、ゲル電解質、固体電解質を使用することができる。ゲル電解質は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレートのような、物理的な相互作用で室温付近でゲル化している物理ゲルや、アクリル酸エステル系、メタクリル酸エステル系の架橋反応等により化学結合でゲルを形成している化学ゲルが挙げられる。
また、固体電解質としては、ポリピロール、CuIなどが挙げられる。ゲル電解質、固体電解質を使用する場合、低粘度の前駆体を酸化物半導体膜に含浸させ、加熱、紫外線照射、電子線照射などの手段で二次元または三次元の架橋反応を起こさせることにより、ゲル化または固体化することができる。しかしながら、発電効率を考えると電解液を使用することが好ましい。
負電極構造体20は、負電極として機能する金属基板25を備えており、この金属基板25上には、通常、耐腐食性導電層27を介して酸化物半導体層29が形成され、この酸化物半導体層29には、増感剤である色素30が担持されている。図1に示されているように、色素30を担持している酸化物半導体層29が対向電極構造体21に対面しており、電解質23に接触している。
一方、対極構造体21は、透明基板37上に透明導電膜39を形成した構造を有しており、透明導電膜39上には、電子還元性の導電層40が形成されており、この導電層40が電解質23に接触する構造となっている。
即ち、図1に示す構造の本発明の太陽電池においては、対向電極構造体21側からの可視光の照射によって、色素30が励起され、励起された色素30の電子は、酸化物半導体層29の伝導帯へ注入され、金属基板25から外部負荷31を通って対向電極(正電極)構造体21に移動し、透明導電膜39から導電層40を通って電解質23中のイオンによって運ばれ、色素30に戻る。この繰り返しにより、外部負荷31により電気エネルギーが取り出されるわけであり、このような発電のメカニズムは、対向電極構造体21側から光照射する点を除けば、負電極構造体20側から光照射するものと基本的には同じである。
このように、対向電極構造体21側から光照射を行う場合には、負電極構造体20側に透明性を持たせる必要が無く、このため、負電極構造体20側に低抵抗の金属基板25が設けられており、透明導電膜を形成する必要がなく、大きな利点をもたらす。
即ち、負電極構造体20側から光照射をして色素30を励起するためには、酸化物半導体層29は、ITO等の透明導電膜上に形成する必要があり、光不透過性の金属基板25上に設けることができない。しかるに、ITO等の透明導電膜は電気抵抗が高いため、セルが小面積の場合には、高い変換効率や高い内部抵抗(FF)を確保できるものの、セルを大面積化した場合には、変換効率及びFFの大きな低下をもたらしてしまう。しかるに、対向電極構造体21側から光照射する構造を採用する場合には、酸化物半導体層29がITO等の透明導電膜を介することなく、必要により耐腐食性導電層27を介して金属基板25上に設けられるため、負電極構造体20側の高抵抗化が回避されており、セルを大面積化した場合にも、FFや変換効率の低下を有効に防止することが可能となるわけである。
本発明において、上述した負極構造体20に設けられる金属基板25は、低電気抵抗の金属材料から形成されたものであれば特に制限されないが、一般的には、6×10−6Ω・m以下の比抵抗を有する金属乃至合金、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、鉄(スチール)、鉄合金、銅、銅合金などが使用される。また、金属基板25の厚みは特に制限されず、適度な機械的強度が保持される程度の厚みを有していればよい。また、生産性を考慮しないのであれば、金属基板25は、例えば蒸着等により、樹脂フィルム等に形成されていてもよい。勿論、この樹脂フィルム等の基材は透明である必要はない。
また、本発明において、上記の金属基板25の表面には、図示されている如く、耐腐食性導電層27が形成されており、この耐腐食性導電層27を介して酸化物半導体層29が設けられていることが好ましい。このような耐腐食性導電層27を設けることは、整流障壁や耐久性の点で顕著な効果をもたらす。即ち、この耐腐食性導電層27は、例えばニッケルやチタンなどの電解質23に対して耐腐食性を有する金属から形成されるものであり、かかる層27を設けることにより、金属基板25の電解質23による腐食を防止することができ、このような腐食による性能低下を回避し、耐久性を向上させることができる。また、このような耐腐食性を有する金属は、金属基板25と比較すると抵抗が高く、このため、逆電流(逆電子移動量)を阻止し、有効な整流障壁となり、この結果、変換効率を高め、変換効率のバラツキを回避し、安定性した電池性能を確保することもできる。このような耐腐食性導電層27は、メッキ法により容易に形成することができるが、クラッド法により、金属基板25と圧延一体化して形成することもできる。
また、上記の耐腐食性導電層27は、化成処理によって形成することもできる。化成処理は、基本的には、水溶液から化学反応によって金属表面に皮膜を析出させるものであるが、このような反応型に対して、最近では、所定の組成のコーティング液を塗布し、加熱乾燥することにより不溶化した皮膜を形成する塗布型と呼ばれる方法も開発されており、本発明においては、何れの化成処理によっても耐腐食性導電層27を形成することができる。
例えば、反応型及び塗布型の何れの方法も、形成される皮膜はクロム系とノンクロム系に大別されるが、クロム系皮膜は、一般に耐腐食性が高く、ノンクロム系皮膜は、耐腐食性は劣るが、環境に与える負荷が少なく、また金属基板25との密着性が高いという利点がある。
反応型のクロム系皮膜としては、アルカリ−クロム酸塩法、クロム酸塩法、リン酸−クロム酸塩法などによるものが代表的である。
アルカリ−クロム酸塩法には、炭酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどを主成分とする水溶液で高温処理して化学的に皮膜を形成させるMBV法、炭酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム(水ガラス)などを含む水溶液で高温処理して皮膜を形成させるEW法、炭酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、塩基性炭酸クロム、過マンガン酸カリなどを含む水溶液で高温処理して化学的に皮膜を形成させるPylimin法などがあり、何れも皮膜組成は、金属基板25としてアルミニウム製のものを用いた場合を例に取ると、Al、Crなどを主体とする。
また、クロム酸塩法は、クロム酸塩や重クロム酸塩を主成分とし、必要によりフッ化物が添加された水溶液中に金属基板を浸漬して化学的に皮膜を形成させる方法であり、促進系では、さらにCNイオンが水溶液中に添加される。このような皮膜の組成は、一般に、アルミニウムを例にとると
Cr(OH)・HCrO、Al(OH)・2H
を主体としており、促進系では、さらにCrFe(CN)を膜中に含んでいる。
さらに、リン酸−クロム酸塩法は、リン酸を含むクロム酸又は重クロム酸水溶液を用いて皮膜を形成させる方法であり、必要により水溶液中には、フッ化物が添加されている。このような方法により形成される皮膜は、アルミニウムを例に取ると、CrPO、AlPO、AlO(OH)を主体としている。
また、反応型のノンクロム系皮膜としては、ベーマイト法、リン酸亜鉛法、ノンクロメート化成処理などが代表的である。ベーマイト法は、アルミニウムの処理に使用される方法であり、高温の純水または飽和水蒸気(皮膜促進剤として、少量のトリエタノールアミンやアンモニア水が添加されることもある)で処理して表面に皮膜を生成する方法であり、処理温度等によって、皮膜組成は、Al・3HO(バイヤライト)或いはAl・HO(ベーマイト)を主体とする。また、リン酸亜鉛法は、リン酸亜鉛、硝酸塩及びフッ化物を含む水溶液で金属基板25の表面を低温で処理して皮膜を形成するものであり、皮膜組成は、アルミニウムを例に取ると、Zn(PO・4HOやAlPOを主体とするものである。さらに、ノンクロメート化成処理法は、TiやZrのメチル化物などの有機金属、リン酸、硝酸或いはタンニン酸などを含む水溶液で金属基板の表面を処理して皮膜を形成するものであり、皮膜組成は、アルミニウムの場合、Me(OH)PO・AlやAl(Me−キレート)を主体とするものである。
一方、塗布型は、ポリアクリル酸などのアクリル樹脂にクロム、ジルコニア、チタンなどの金属酸化物、コロイダルシリカなどを分散させたコーティング液或いはシランカップリング剤などのカップリング剤の溶液(コーティング液)をローラなどにより塗布し、乾燥することにより不溶化した皮膜を形成するものである。かかる方法により耐腐食性導電層27を形成する場合には、樹脂を含有しないコーティング液を使用し、樹脂分を含まない皮膜を形成することが好適である。即ち、耐腐食性導電層27が樹脂分を含有している場合、後述する酸化物半導体層29を形成する際の焼成に際して、樹脂分が揮散してしまい、この結果、逆電流防止効果、電解質に対する耐性などが損なわれてしまいからである。
上記のように化成処理によって耐腐食性導電層27を形成する場合には、処理液中への浸漬、スプレー、或いはローラ塗布などにより連続的に形成させることができ、蒸着などのように格別の高価な装置を必要とせず、生産性の点で特に有利である。特に塗布型の化成処理によって耐腐食性導電層27を形成する場合には、皮膜形成後の水洗などの洗浄処理が不要であり、生産性の点で特に好適である。
上述した耐腐食性導電層27の厚みは、適度な耐腐食性や整流障壁性(逆電流防止性)が確保される限り、可及的に薄いことが望ましく、その種類によっても異なるが、一般的には、1,000nm以下、特に5〜500nm、最も好ましくは5乃至100nmの範囲にあることが好適である。
本発明において、耐腐食性導電層27の上に形成される酸化物半導体層29は、色素増感型太陽電池において従来から使用されている酸化物半導体微粒子を用いて形成される。具体的には、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、タンタル、クロム、モリブデン、タングステンなどの金属の酸化物、或いはこれら金属を含有する複合酸化物、例えばSrTiO、CaTiOなどのペロブスカイト型酸化物などを用いて形成される。本発明において、最も好適には酸化チタンにより酸化物半導体層29が形成されていることが好ましい。
本発明においては、このような酸化物半導体層29は、上部に位置している相対的に多孔質の層29aと、その下側(即ち金属基板25側)に位置している相対的に緻密な層29bとを有している。
多孔質の層29aは、具体的には、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、面積が10000nm2以上の大きさの大きな細孔が、全細孔数当り5〜80%の個数、好ましくは20〜60%の個数で存在している。即ち、この多孔質層29aは、上記のような大きな細孔を多数有しているため、大きな表面積が確保され、多量の色素を吸着することができ、この結果、発電量を増大させ、大きな変換効率を確保することができる。
このような酸化物半導体層29中の多孔質の層29aは、一般に、その厚みが1乃至15μm、特に3乃至10μmの範囲にあることが好適である。即ち、この厚みがあまり薄いと、十分な量の色素30を吸着させることができず、高い変換効率を得ることが困難となるおそれがある。また、この厚みが必要以上に厚くなると、光の散乱の度合いが高くなり、光透過性が低下し、十分な量の光が酸化物半導体層29内に侵入せず、この結果、色素吸着量が多いにもかかわらず、変換効率が低下する傾向にあるからである。
また、上記の多孔質の層29aの下側に形成されている相対的に緻密な層29bは、具体的には、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、前述した大きな細孔が、全細孔数当り5%未満の層であり、好適には、面積が2500nm2以下の大きさの小さな細孔が、全細孔数当り50%以上の個数で存在している層である。即ち、この緻密な層29bは、上記のような大きな細孔が少なく且つ小さな細孔を多数有しているため、表面積が小さく、色素担持量は少ないものの、光の散乱が抑制され、光の透過率が高く、電子発生層として機能する。この結果、前述した多孔質層29aと組み合わせることにより、多孔質層29aの光透過性を補い、大きな変換効率を確保することが可能となるのである。また、このような緻密な層29bの形成は、金属基板25と電解質23との接触を回避する上でも有利であり、金属基板25の電解質23による腐食を防止し、長期にわたって安定に高変換率を確保することができるという利点もある。
本発明において、上記のような酸化物半導体層29中の緻密な層29bは、一般に、その厚みが1nm乃至3μm、特に10乃至300nmの範囲にあることが好適である。即ち、この厚みがあまり薄いと、電子発生層として十分に機能せず、高い変換効率を得ることが困難となるおそれがある。また、この厚みが必要以上に厚くなると、色素の吸着が有効に行われず、変換効率が低下する傾向にあるからである。
また、図1の例では、緻密な層29bが金属基板25側に形成され、緻密な層29bの上に多孔質の層29aが形成されているが、このような層状構造に限定されるものではなく、例えば多孔質の層29aを金属基板25側に形成し、緻密な層29bを多孔質の層29a上に形成することも可能である。但し、十分な量の色素を多孔質な層29a及び緻密な層29bに担持させるという観点からは、緻密な層29bを金属基板25側に形成することが好適である。また、本発明においては、多孔質な層29aと緻密な層29bとを交互に形成することにより、これらの層29a及び29bをそれぞれ、酸化物多孔質層29中に複数存在させることもできるが、この場合においても、層29a及び層29bのトータル厚みが前述した範囲内にあることが高変換率を実現させる上で好適である。
<多孔質層29aの形成>
本発明において、上述した多孔質の層29aは、例えば前述した酸化物半導体微粒子に、バインダー剤及び多孔質化促進剤を有機溶媒中に分散させたペーストを使用してのゾルゲル法により形成することができる。即ち、かかるペーストを塗布し、焼成することにより形成される。
上記のペーストの形成に用いる酸化物半導体微粒子は、多孔質化の点で、その粒径が5〜500nm、特に5〜350nmの範囲にあるのがよい。
また、バインダー剤は、酸化物半導体を構成する金属のアルコキシドからなり、焼成に際して、酸化物半導体微粒子と共にゲル化を生じせしめ、半導体微粒子同士を結合させて多孔質化せしめるものである。かかるバインダー剤において、金属アルコキシドとしては、容易にゲル化を生じることから炭素数が4以下の低級アルコールのアルコキシドであることが好ましく、特にイソプロポキシドであることが好適であり、最も好適には、チタンイソプロポキシド(テトラチタンイソプロポキシド)が使用される。
かかるバインダーは、一般に、金属アルコキシド換算で、酸化物半導体微粒子100重量部当り5乃至60重量部、特に10乃至50重量部の量で使用するのがよい。この量が少ないと、ゲル化が有効に行われず、有効な酸化物半導体層を形成することが困難となり、また、上記範囲よりも多量に使用した場合には、多孔質化が困難となる傾向がある。
また、上記のバインダーは、その少なくとも一部が変性化剤によって変性されていてもよく、このような変性化のために、前述したペースト中には、変性化剤が添加されていてよい。かかる変性化剤としては、グリコールエーテルや、アセチルアセトンなどのβ−ジケトンを例示することができ、これらは、1種単独でも組み合わせで添加されていてもよい。
即ち、グリコールエーテルは、バインダーのアルコキシル基の一部と置換することにより変性せしめ、β−ジケトンは、バインダー中の一部の金属原子とキレート結合を形成することにより、変性せしめるものであり、このような変性化により焼成時におけるゲル化を促進させ、高強度の層を形成する上で有利となる。また、これらの変性化剤は、その分子サイズが比較的大きく、このため、焼成時に揮散するときに後述する多孔質化促進剤とともに大きな細孔の形成に寄与し、多孔質化を促進させる作用も示す。本発明において、最も好適に使用される変性剤は、β−ジケトンである。
本発明において、上記の変性化剤は、チタンイソプロポキシド100重量部当り、 0.01乃至30重量部、特に0.05乃至10重量部の量で使用するのが好ましく、このような量で変性化剤を用いたときに、最も効果的に多孔質化を実現し且つ強度の高い多孔質層29aを形成することができる。
また、多孔質化促進剤としては、炭素数が5以上のアルコール、例えばペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ドデカノールであり、これらは、単独或いは2種以上の組み合わせで使用することができる。特に好適に使用されるものは、デカノール及びドデカノールである。即ち、これらの多孔質化促進剤は、適度な揮発性を有していると同時に、分子が比較的大きい。このため、ペーストの焼成によって揮散するときに、ゲル化体中に大きな細孔を形成し、これにより、前述したサイズの大きな細孔を多数有する多孔質の層29aを形成することが可能となる。例えば、このような多孔質化剤を使用しない場合には、大きな細孔を有する多孔質の層29aを形成することができない。
本発明において、上記のような多孔質化促進剤は、酸化物半導体微粒子100重量部当り、0.01乃至50重量部、特に0.5乃至10重量部の量で使用するのが好ましい。この量が少ないと、有効量の大きな細孔を形成することが困難となり、従って、多孔質の層29aを得ることが困難となる。また、この量が多すぎると、多孔質化が促進しすぎてしまい、形成される酸化物半導体層が脆くなってしまい、実用化が困難となってしまうおそれがある。
上述した酸化物半導体微粒子、バインダー、多孔質化促進剤及び必要により使用される変性化剤を分散させる有機溶媒としては、易揮発性であれば特に制限なく使用することができるが、一般的には、各種のエーテル、セロソルブ、炭素数が4以下の低級アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノールなどが好適であり、これらの有機溶媒は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせた混合溶媒の形で使用することもできる。特に好適には、炭素数が4以下のアルコールが使用される。尚、炭素数が4以下の低級アルコールを有機溶媒として使用したときには、その種類がバインダー中のアルコキシドを形成しているアルコールと異なっているときには、バインダー中のアルコキシル基の一部が有機溶媒として使用されている低級アルコールと置換され(即ち、変性)、ゲル化が促進されることが判っている。
本発明において、有機溶媒量は、ペーストが適度なコーティング性を示す程度の量で使用すればよく、一般的には、ペーストの固形分濃度が、10乃至50重量%、特に15乃至40重量%の範囲となる程度の量で使用するのがよい。溶媒量が多すぎると、ペーストが低粘性となり、垂れ等により安定な厚みのコーティング層を形成することが困難となり、また、溶媒量が少ないと、高粘性となり作業性が低下してしまうからである。
ペーストの塗布は、ナイフコーティング、ロールコーティング等の公知の手段によって行うことができ、その塗布量は、焼成後に前述した所定厚みの多孔質層29aが形成される程度の量とする。また、塗布後の焼成は、通常、600℃以下、特に250乃至500℃の温度で、5分乃至1時間程度行われる。この温度が必要以上に高く、或いは必要以上に長時間行うと、形成される層29が緻密になってしまうので注意を要する。かかる焼成により、上記バインダー成分のゲル化(脱水縮合)により形成された酸化物半導体のゲル(例えばTiOゲル)が半導体微粒子同士を接合し、且つ多孔質化促進剤の揮散により、多孔質化された層29aが形成されることとなる。
<緻密な層29bの形成>
また、前述した緻密な層29bは、それ自体公知の方法で形成され、具体的には、多孔質化促進剤である高級アルコールが配合されていない点を除き、前述した多孔質層形成用と同様のペーストを使用してのゾルゲル法により形成することができる。即ち、この緻密な層29bを形成するためのペーストは、酸化物半導体微粒子及びバインダーを有機溶媒中に分散させることにより調製されるものであり、かかるペースト中にも、変性化剤を添加しておくことが高強度の層を形成する上で好適である。また、各剤の種類や使用量などは多孔質形成用のペーストと同一であってよい。
多孔質層29aを形成する場合と同様、多孔質化促進剤が配合されていない上記のペーストを塗布し、焼成することにより緻密な層29bが形成されるが、この場合、焼成温度は、通常、500℃以下、特に100乃至450℃の温度で、5分乃至1時間程度行われる。
また、緻密な層29bは、ゾルゲル法によらず、例えば酸化チタン等の酸化物半導体をターゲットとしての蒸着により形成することも可能であり、蒸着条件は、従来公知の条件を採用すればよい。尚、前述した多孔質の層29aは、蒸着によっては形成することができない。
上記のようにして形成される多孔質層29a及び緻密な層29bを含む酸化物半導体層29には、色素溶液を接触させることにより、増感色素30を吸着させる。色素溶液の接触は、通常は、ディッピングにより行われ、吸着処理時間(浸漬時間)は、通常、30分〜24時間程度であり、吸着後、乾燥して色素溶液の溶媒を除去することにより、表面に増感色素30が形成された酸化物半導体層29を有する負電極構造体20を得ることができる。
用いる増感色素は、カルボキシレート基、シアノ基、ホスフェート基、オキシム基、ジオキシム基、ヒドロキシキノリン基、サリチレート基、α−ケト−エノール基などの結合基を有するそれ自体公知のものが使用され、前述した特許文献等に記載されているもの、例えばルテニウム錯体、オスミウム錯体、鉄錯体などを何ら制限なく使用することができる。特に幅広い吸収帯を有するなどの点で、ルテニウム−トリス(2,2’−ビスピリジル−4,4’−ジカルボキシラート)、ルテニウム−シス−ジアクア−ビス(2,2’−ビスピリジル−4,4’−ジカルボキシラート)などのルテニウム系錯体が好適である。このような増感色素の色素溶液は、溶媒としてエタノールやブタノールなどのアルコール系有機溶媒を用いて調製され、その色素濃度は、通常、3×10−4乃至5×10−4mol/l程度とするのがよい。
また、先に述べたように、図1の色素増感型太陽電池では、対向電極(正電極)21側から光を照射して色素30を励起させるため、この対向電極20は透明であることが必要であり、透明基板37上に透明導電膜39を形成した構造を有している。
透明基板37としては、透明なガラス板や透明樹脂フィルム乃至シートが使用される。透明樹脂フィルム乃至シートとしては、透明である限り任意のものが使用されるが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、或いはエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン同士のランダム乃至ブロック共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のエチレン−ビニル化合物共重合体樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS、α−メチルスチレン−スチレン共重合体等のスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6−6、ナイロン6−10、ナイロン11、ナイロン12等のポリアミド樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキサイド;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;酸化澱粉、エーテル化澱粉、デキストリンなどの澱粉;及びこれらの混合物からなる樹脂;などからなるものを用いることができる。一般的には、強度や耐熱性等の見地から、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に使用される。また、透明基板37の厚みや大きさは、特に制限されず、最終的に使用される色素増感型太陽電池の用途に応じて適宜決定される。
透明導電膜39としては、酸化インジウム−酸化錫合金からなる膜(ITO膜)、酸化錫にフッ素をドープした膜(FTO膜)などが代表的であるが、電子還元性が高く、特にカソードとして望ましい特性を有していることから、ITO膜が好適である。これらは蒸着により上記の透明基板37上に形成され、その厚みは、通常、5乃至7μm程度である。
また、上記の透明導電膜39上には電子還元性の導電層40が形成される。即ち、この導電層40は、高い電子還元性を有するものであり、透明導電膜39に流れ込んだ電子を電解質23に速やかに移行せしめる。かかる導電層40としては、通常、白金により形成される。また、かかる導電層40は、その厚みが6nm以下と薄いことが好適であり、これにより、高い可視光透過率を確保することができる。このような厚みの薄い導電層40は、例えば白金の蒸着により容易に形成することができ、また、その厚みは1nm以上であればよい。この厚みが1nmよりも薄いと、厚みのバラツキを生じ易く、安定した電子還元性を得ることが困難となるおそれがある。
上記のような構造の負電極構造体20及び対向電極構造体21を有する本発明の色素増感型太陽電池は、図1に示すように、これら電極構造体20,21を、電解質23を間に挟んで対峙させ、電解質を樹脂等により封止することにより、使用に供される。
上述した本発明の色素増感型太陽電池は、負極構造体20中に設けられる酸化物半導体層29が極めて大きな細孔を有する多孔質な層29aと大きな細孔をほとんど有していない緻密な層29bとを有しているため、従来公知のものに比して高い変換効率を有している。
また、図1に示す構造の色素増感型太陽電池は、負電極構造体20の対向電極構造体21側からの光照射により発電を行うため、半導体多孔質膜29の支持基板として低抵抗の金属基板25を用いることができ、この結果、変換効率や曲率因子(FF)を低下させることなく、セルの大面積化を計ることができ、極めて実用性が高い。さらには、低抵抗の金属基板25を介して集電が行われるため、グリッド等の格別の集電部材を用いることなくセルの接続を行うことができ、生産性やコストの点でも極めて有利である。
(実施例1)
バインダー剤であるテトラチタンイソプロポキシドを有機溶媒(ブタノール)で希釈したチタンアルコキシド溶液を調製した(チタンイソプロポキシド濃度;2mol/L)。このチタンアルコキシド溶液に、二酸化チタン粒子(構成粒子径は、15〜350nmの汎用チタニア粒子)、アセチルアセトン(変性化剤)及びデカノール(多孔質化促進剤)を加えて多孔質層形成用のペーストを調製した。このペーストの組成は、以下の通りである。
多孔質層形成用ペースト組成
固形分濃度:20重量%
バインダー剤:テトラチタンイソプロポキシド
二酸化チタン微粒子100重量部当り20重量部
変性化剤:アセチルアセトン
二酸化チタン微粒子100重量部当り1重量部
多孔質化促進剤:デカノール
二酸化チタン微粒子100重量部当り3重量部
また、テトラチタンイソプロポキシドを、ブチルセロソルブ/エタノール混合溶媒(混合比50/50)に分散させ、テトラチタンイソプロポキシド含量が
2重量%の緻密層形成用のゾル溶液を調製した。
次いで、金属基板として、リン酸クロメート処理(処理層約50nm)されたアルミニウム板(厚み0.3mm)を用意し、このアルミニウム板上に、上記で調製した緻密層形成用のゾル溶液を、約200nmの厚みとなるように塗布し、約300℃で0.5時間焼成し、酸化チタンからなる緻密な層を形成した。この層の表面を電子顕微鏡で観察を行い、その写真を図3に示した。この写真から、1μm×1μm面積当たり、面積が10000nm2以上の大きさの大きな細孔はゼロであり、面積が2500nm2以下の小さな細孔は、全細孔数当り100%であった。
また、前述した多孔質層形成用のペーストを、上記で形成された酸化チタンからなる緻密な層の上に塗布し、450℃で0.5時間焼成し、酸化チタンからなる多孔質の層(厚み;約8μm)を形成した。この層の表面を電子顕微鏡で観察を行い、その写真を図4に示した。この写真から、1μm×1μm面積当たり、面積が10000nm2以上の大きさの大きな細孔は、全細孔数当り40%であった。
さらに、純度99.5%のエタノールに分散させたルテニウム錯体色素からなる色素溶液中に、上記の緻密な層と多孔質の層とからなる酸化物半導体層を18時間漬浸させ、次いで乾燥することにより、負極構造体を得た。尚、用いたルテニウム錯体色素は、下記式で表される。
[Ru(dcbpy)(NCS)]・2H
一方、白金を蒸着したITO/PETフィルムで構成される対向電極(正極)構造体を用意した。
この対向電極構造体と上記で作製した負電極構造体との間に電解質を挟みこんで周縁部を樹脂でシールした図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。尚、電解質としては、LiI/I(0.5mol/0.05mol)をメトキシプロピオニトリルに溶かしたものに4−tert−ブチルピリジンを添加したものを用いた。
得られた電池の変換効率を測定したところ、測定面積1cmで、以下の通りであり、高い変換効率が得られた。
変換効率:3.57%
FF(内部抵抗):0.53
SC(短絡電流密度):9.56mA/cm
OC(開放電圧):0.72V
(実施例2)
リン酸クロメート処理(処理層約50nm)されたアルミニウム板(厚み0.3mm)の表面に、TiOをターゲットに用い、圧力(Pr−W)50W、真空度2×10−3Paの条件でスパッタリングし、厚み約40nmの酸化チタンの緻密な層を形成した。この層の表面を電子顕微鏡で観察を行い、その写真から、この層では、1μm×1μm面積当たり、面積が10000nm2以上の大きさの大きな細孔はゼロであり、面積が2500nm2以下の小さな細孔は、全細孔数当り100%であった。
次いで、実施例1で調製された多孔質層用ペーストを使用し、実施例1と全く同様にして、上記の緻密な酸化チタンの薄層の上に、多孔質の酸化チタンの層(厚み;8μm)を形成し、実施例1と全く同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。
得られた電池の変換効率を測定したところ、測定面積1cmで、以下の通りであり、高い変換効率が得られた。
変換効率:3.56%
FF(内部抵抗):0.56
SC(短絡電流密度):9.42mA/cm
OC(開放電圧):0.70V
(比較例1)
酸化チタンの緻密な層を形成せず、アルミニウム板の表面に直接酸化チタンの多孔質の層(厚み;約8μm)を形成した以外は、実施例1と全く同様にして、図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。
得られた電池の変換効率を測定したところ、測定面積1cmで、以下の通りであり、実施例1及び2と比較すると、その変換効率は低かった。
変換効率:2.79%
FF(内部抵抗):0.61
SC(短絡電流密度):6.18mA/cm
OC(開放電圧):0.74V
(比較例2)
デカノール及びアセチルアセトンを使用せずに、下記組成の酸化チタンペーストを調製した。
酸化チタンペースト組成
固形分濃度:20重量%
バインダー剤:テトラチタンイソプロポキシド
二酸化チタン微粒子100重量部当り20重量部
上記の酸化チタンペーストを、実施例1で形成された緻密な酸化チタン層の上に塗布し、450℃で0.5時間焼成し、さらに酸化チタン層を形成した。この酸化チタン層の表面を電子顕微鏡で観察を行い、その写真から、この層では、1μm×1μm面積当たり、面積が10000nm2以上の大きさの大きな細孔はゼロであり、面積が2500nm2以下の小さな細孔は、全細孔数当り2%であった。
上記のような酸化チタン層を有する負極構造体を使用し、実施例1と全く同様にして図1に示す構造の色素増感型太陽電池を作製した。
得られた電池の変換効率を測定したところ、測定面積1cmで、以下の通りであり、実施例1及び2と比較すると、その変換効率は最も低かった。
変換効率:2.04%
FF(内部抵抗):0.56
SC(短絡電流密度):4.32mA/cm
OC(開放電圧):0.76V
本発明の色素増感型太陽電池の好適例の概略構造を示す図。 従来公知の色素増感型太陽電池の概略構造を示す図。 実施例1で作製された相対的に緻密な酸化チタン層の表面の電子顕微鏡写真(倍率:8万倍)。 実施例1で作製された相対的に多孔質の層の表面の電子顕微鏡写真(倍率:8万倍)。
符号の説明
20:負電極構造体
21:対向電極(正電極)構造体
23:電解質
25:金属基板
27:耐腐食性導電層
29:酸化物半導体多孔質層
29a:相対的に多孔質の層
29b:相対的に緻密な層
30:色素
37:透明基板
39:透明導電膜
40:導電層

Claims (4)

  1. ゾルゲル法によって形成され且つ色素が担持された酸化物半導体層を備えた負電極構造体と、対向電極構造体と、前記負電極構造体と対向電極との間に設けられた電解質層とからなる色素増感型太陽電池において、
    前記酸化物半導体層が、相対的に緻密な層と相対的に多孔質の層とを有していると共に、該酸化物半導体層の相対的に多孔質の層が、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、面積が10000nm 以上の大きさの大きな細孔が、全細孔数当り、5〜80%の個数で存在している層であり、該酸化物半導体層の相対的に緻密な層が、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、前記大きな細孔が、全細孔数当り、5%未満の個数で存在している層であり、
    前記対向電極構造体が、透明導電性基板と、該透明導電性基板上に形成された導電層とから形成されており、該対向電極構造体側からの光照射により発電が行われること、
    を特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 前記酸化物半導体層の相対的に緻密な層が、1μm×1μm面積の大きさの水平断面でみて、面積が2500nm以下の大きさの小さな細孔が、全細孔数当り、50%以上の個数で存在している層である請求項1記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記相対的に多孔質の層が電解質層側に位置している請求項1または2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記相対的に多孔質の層の厚みが1乃至15μmであり、前記相対的に緻密な層の厚みが1nm乃至3μmである請求項1〜3の何れかに記載の色素増感型太陽電池。
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