グレッツェルらが提唱した新しいタイプの色素増感太陽電池は、従来の色素増感太陽電池に比べて、飛躍的に高い変換効率(7%台)を示し注目を浴びてきた。色素増感太陽電池は、光を捕集した色素が生成する励起電子を半導体内に注入することによって光電変換を実現している。したがって、光捕集力を高めるために増感色素を半導体に多量に担持させること、さらに増感色素からできるだけ早く半導体へ電子を注入させることが重要である。グレッツェル・セルとも言われるこの新しい色素増感太陽電池は、超微粒子の酸化チタンからなる多孔質膜に増感色素であるルテニウム錯体を担持させることで、この課題を解決している(例えば、非特許文献1参照)。
グレッツェル(Gratzel)、外1名、「ネイチャー(Nature)」、(英国)、1991年10月24日、第353巻、p.737−740
このグレッツェル・セルは、酸化チタンの超微粒子を分散したペーストを透明電極に塗布し、増感色素を担持させ、対電極との間に電解質を充填するだけで組み立てることができる。したがって、従来の太陽電池と比べて、簡便な装置で製造が可能であり、次世代太陽電池の一つとして注目されている。
このグレッツェル・セルの大きな特徴として光電変換素子自身に透光性を有していることが挙げられる。このことはグレッツェル・セルの大きな特徴の一つとして広く認知され、発電する窓や発電する遮蔽板などの透光性を有する発電デバイスへの応用が期待されている。グレッツェル・セル以外のタイプの太陽電池は、結晶シリコン、アモルファスシリコン、CdTe、CuInSeなどの材料から構成されているため、光電変換素子が透光性を有さず、したがって、透光性を有する発電デバイスに応用することが困難である。
ところで、現状のグレッツェル・セルは、単体で1V以下の開放端電圧であり、実用的な電気機器をグレッツェル・セルで駆動させるには、複数のセルを直列接続して出力電圧を大きくすることが必須であり、既にグレッツェル・セルを直列接続したモジュール構造はいくつか提案されている(特許文献1〜5参照)。
特表平11−514787号公報
特表2002−540559号公報
特表2002−535808号公報
特開2001−357897号公報
EP0855726号明細書
すなわち、特許文献1(特表平11−514787号公報)には、1枚の基板上に直列接続したモジュールを構成する構造並びにその製造方法が提案されている。通常のグレッツェル・セルは光電極と対電極との間に電解質を挟んだサンドイッチ構造であり、2枚の基板を必要とする。これに対して、特許文献1に記載の構造であれば、基板を1枚にすることができ、軽量化や低コスト化などの利点がある。
しかしながら、特許文献1のように、基板を1枚にする構造では、ドライプロセスで作製するシリコン系太陽電池には適したモジュール構造であるが、ウェットプロセスでグレッツェル・セルを作製する場合、隣接する素子を接続するための電極を塗布するのが非常に難しいという問題があった。また、これに用いられる対電極はカーボンを成分とする材料を塗布して形成したものであるため光電変換素子自身の透光性を得ることが困難であった。
特許文献2(特表2002−540559号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電極と対電極とを、導電性粒子を含む電気的通電材料によって、電解質の保持と電気的接続を両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。この方法は、電解質の保持と電気的接続を同時に行うことが可能でモジュール全体に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層の移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、高出力できる利点がある。
しかしながら、特許文献2の構造では、電気的通電材料中に含まれる導電性粒子の含有量が多いため、導電性粒子が視認できるようになり、透明な光電変換素子モジュールとなり得ない。また、特許文献2には、透光性を発現させる具体的な方法が明記されていないため、透光性を有する光電変換素子モジュールとするには不充分である。しかも、電気的通電材料中に含まれる導電性粒子の含有量が大きいため、隣り合う光電変換素子間での短絡が懸念され、その結果、出力低下が懸念されるという問題があった。
また、特許文献3(特表2002−535808号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の光電極と他方の光電変換素子の対電極とを、金属ワイヤの周囲を絶縁性物質で覆った導電性ワイヤによって、電解質の保持と電気的接続とを両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。この方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、光電変換素子モジュール全体中で占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層での移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、高出力できる利点がある。
しかしながら、導電性材料として用いられている金属ワイヤは線として見えることとなり透明な光電変換素子モジュールとはなり得ない。しかも、上記導電性ワイヤは、金属ワイヤを絶縁性物質でコーティングするプロセスを必要とし、さらに均一に絶縁性物質を金属ワイヤにコーティングするには高度な技術が必要であるため、コストアップと生産性の低下が懸念される。また、この導電性ワイヤでモジュール化するには、製造時に所望の場所にこの導電性ワイヤを、場合によっては複数本を、精度良く配置する高度な技術が必要であることから、生産性の低下が懸念されるという問題があった。
特許文献4(特開2001−357897号公報)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の光電極と他方の光電変換素子の対電極とを異方導電性材料によって、電解質の保持と電気的接続とを両立させ、3次元的に直列接続する方法が提案されている。この方法は、電解質の保持と電気的接続とを同時に行うことが可能であって、モジュール全体中に占める電極面積を大きくでき、かつ電子の透明導電層での移動距離を短く抵抗損失ロスを最小限にすることが可能であることから、低コスト、高電圧化できる利点がある。
しかしながら、この特許文献4に記載の方法では、必ずしも透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができず、不充分である。例えば、導電性材料にITO、ATO,FTOなどの透明導電酸化物の粒子を含む場合、ITOなどの粒子はそれ自身の体積抵抗率が高いことから、ITO粒子の含率を高くしないと導電性が悪くなるため良好な異方導電性材料とはなり得ない。ITO粒子は、体積抵抗が10-4〜10-3Ω・cmであり、金属の10-6〜10-4Ω・cmに対して数10〜100倍抵抗が高いため、金属粒子を用いた場合に比べて数10〜100倍の含有率が必要となってくる。一般に異方導電性を示すためには体積含率で15%以下にすることが必要であるが、ITO粒子の含率を大きくすることが必要であるため異方導電性が得られない。また、ITO粒子の含率を大きくするため、それによって、隣り合う光電変換素子間での短絡が懸念され、その結果、出力低下が懸念されるという問題があった。
また、特許文献4に記載の方法では、導電性材料に金属材料を含む場合、導電性材料の含率が多くなると、基板に対して水平に連続した線状になり線と視認されてしてしまうため透明な光電変換素子モジュールとはなり得ない。また、線として視認できない程度の含有量であっても、粒子状導電体が凝集していたり、大きな粒子を使用していれば粒子として視認されてしまう。これらのことから目立たない程度の粒径の粒子状導電体を均一に分散させることが必須になる。また、特許文献4には、透光性を発現させる具体的な方法が明記されていないため、透光性を有する光電変換素子モジュールとするには不充分である。さらに、特許文献4には絶縁性材料の透光性について具体的に明記されていない。これらより特許文献4では透光性を有する導電性材料とすることが困難であり、透光性を有する光電変換素子モジュールとするには不充分である。また、カーボン材料を含む場合も同様であり、導電性の高い金、銀、銅などを用いた場合には電解質中のヨウ素と反応し変質してしまうため導電性を悪くしてしまう。特に絶縁性材料がエポキシ樹脂、シリコーン樹脂などの有機材料である場合には、電解質の浸透のためにヨウ素とより反応しやすくなり実使用が可能な光電変換素子モジュールとはなり得ない。絶縁性材料がガラスフリットなどの無機材料である場合、ガラスフリットが透光性を有していないことから透光性を有する光電変換素子モジュールとはなり得ない。
また、通常用いられる異方導電フィルム、異方導電ゴム、異方導電接着剤の場合、異方導電フィルムのフィルムや異方導電接着剤のバインダなどの絶縁材料に透明な素材を用いておらず、したがって、特許文献4に記載の方法では、透光性を有する光電変換素子モジュールになり得ない。また、一般に異方導電フィルムは金メッキした樹脂粒子をエポキシ樹脂中に分散したものが多用されているが、エポキシ樹脂は電解質溶媒として多用されているニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒に溶解しやすいこと、金はヨウ素と反応しやすいことなどから電解質の保持と電気的接続とを行うことは困難である。
以上のことから、特許文献4に記載の方法では、異方導電性材料による電解質の保持と電気的接続と透光性とを両立させたモジュールにはなり得ない。
さらに、特許文献6(EP0855726号明細書)には、サンドイッチ構造のセルで、隣接する2つの光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の光電極と他方の光電変換素子の対電極とを、隣接する光電変換素子間以外の部分で3次元的に直列接続する方法が提案されている。この方法は、シート抵抗の比較的大きな透明導電膜層を伝達する電子の距離が長くなり、ITO、 FTO、ATOなどの酸化物からなる透明導電膜層が金属の数10〜100倍の比抵抗を有するため、抵抗損失が大きくなり電力をロスしてしまう問題があるものの、特許文献1〜4に比べて複雑な構造でないため高度な試作技術を必要とせず容易に出力電圧を大きくできるという利点がある。
しかしながら、この特許文献5には、透光性を発現させる具体的な方法が明記されていないため、透光性を有する光電変換素子モジュールを作製するには不充分である。
以上のように、特許文献1〜5のいずれに記載のモジュール構造も電気的接続のための導電性接続材料の透光性が得られないため、透光性を有する光電変換素子モジュールを製造することは困難である。
一方、現在実用化されているシリコン系などの光電変換素子(太陽電池)モジュールは、光電変換部分で発電した電力を、ITOなどの透明導電膜を経由し、その上部に金属ペーストなどから形成された櫛形収集電極やその外周部に配されたAg,Cu,Ni,Moおよびそれらの合金、カーボンブラックなどからなる配線電極を経由させることで集電しているが、特開平11−340490号公報、特開2001−44474などでは、電子機器に搭載する場合にそれらの集電極に使われている電気的接続材料が導電性粒子を主成分としているために透光性の付与や色調の調整が困難であり、そのため光電変換部分と集電極での色調が異なりデザイン面での制約を受けてしまうことや、それによって、光電変換素子モジュールを搭載した電子機器などのデザイン上の調和などを保つことができないことを問題としている。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の光電変換素子モジュールは、前記のように、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極の前記の透光性導電性材料によって接続されていることを特徴としているが、前記透光性導電性材料としては、550nmにおける透過率が0.1%以上であることが好ましく、1%以上であることがより好ましく、5%以上であることがさらに好ましく、また、60%以下であることが好ましい。
本発明の光電変換素子モジュールの第1実施形態は、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールにおいて、前記透光性導電性材料が、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とを電気的に接続するとともに、隣接する光電変換素子間の電解質を分離している。
この第1実施形態の構造は、隣接する光電変換素子間の分離と隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極との電気的接続とを同時に行うことによって光電変換素子モジュール内において占める透光性導電性材料の面積割合を下げ、光電変換素子の面積割合を高くすることができるので、光電変換素子モジュールの面積あたりの出力を高くすることができる。この光電変換素子モジュールにおいては、光電変換素子間の電気的接続が透光性導電性材料によって行われているので、透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができる。また、光電変換素子間の分離と電極間の電気的接続とを同時に行うために高度な作製技術が必要になるものの、工程数を少なくすることができ、大量生産しやすい。また、熱硬化性の透明絶縁性材料に導電性粒子を分散させた透光性導電性材料を用いれば、スクリーン印刷やディスペンサー塗布が可能となるので、さらに工程数を少なくすることができ、大量生産しやすくなる。
本発明の光電変換素子モジュールの第2実施形態は、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、前記透光性導電性材料が隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とを電気的に接続するとともに、光電変換素子モジュールの端部の光電変換素子の第1の電極または第2の電極が電気的接続部を備え、それと接続させようとする光電変換素子または光電変換素子モジュールの端部の光電変換素子の第2の電極または第1の電極の電気的接続部とを前記透光性導電性材料によって接続していることを特徴とする。ただし、この第2実施形態においても、光電変換素子モジュールに他の光電変換素子または光電変換素子モジュールを直列に接続するため、基本となる光電変換素子モジュールの電気的接続部が第1の電極の場合はこれに接続する光電変換素子または光電変換素子モジュールの電気的接続部は第2の電極の電気的接続部となり、基本となる光電変換素子モジュールの電気的接続部が第2の電極の電気的接続部の場合は接続しようとする光電変換素子または光電変換素子モジュールの電気的接続部は第1の電極の電気的接続部となる。
この第2実施形態の構造は、光電変換素子モジュールにさらに他の光電変換素子または光電変換素子モジュールを電気的に接続する場合に適用される。光電変換素子モジュールの実使用時には、それにさらに他の光電変換素子または光電変換素子モジュールを任意に電気的に接続することで任意の出力とすることができる。その際の接続には、通常、異方導電性材料、はんだ付け、導電箔、導線、導電テープ、導電性塗料などが用いられるが、いずれも不透光な材料であることから、電気的接続部分の透光性が得られなかった。しかしながら、この本発明の第2実施形態の光電変換素子モジュールでは、各光電変換素子の電気的接続部は、透光性導電性材料によって電気的に直列に接続されているため、透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができる。
本発明の光電変換素子モジュールの第3実施形態は、増感色素を担持した半導体層が被着された第1の電極と、前記第1の電極の半導体層と対峙する第2の電極と、前記第1の電極の半導体層と前記第2の電極との間に配置された電解質とを備えた光電変換素子を複数含む光電変換素子モジュールであって、隣接する光電変換素子の間には封止材が配置され、光電変換素子の第1の電極の端部および第2の電極の端部にはそれぞれ電気的接続部が備えられ、電気的接続部は前記光電変換素子の間に配置された封止材とは接触せずに配置され、隣接する光電変換素子のうち一方の光電変換素子の第1の電極の電気的接続部と、他方の光電変換素子の第2の電極の電気的接続部とが前記透光性導電性材料によって接続されている。この第3実施形態の光電変換素子モジュールでは、隣接する光電変換素子のうちの一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とを直列に接続することに関しては、前記第1実施形態の光電変換素子モジュールと同じであるが、前記第1実施形態の光電変換素子モジュールではモジュール内部で隣接する光電変換素子間を直列に接続していたのに対して、この第3実施形態の光電変換素子モジュールでは、光電変換素子の封止材より外側の部分を利用して直列に接続することになる。
この第3実施形態の構造は、隣接する光電変換素子間の電気的接続を、光電変換素子の封止材より外側の部分を利用して行うため、必然的に抵抗の比較的大きな透明導電膜を伝達する電子の距離が長くなる。一般にITO、 FTO、ATOなどからなる酸化物透明導電膜は金属の数10〜100倍の比抵抗を有するため、抵抗損失が大きくなり電力をロスしてしまうが、隣接する光電変換素子間の電気的接続をモジュール内で行う場合に比べて複雑な構造でないため高度な試作技術を必要とせず容易に出力電圧を大きくできる。この場合においても、各光電変換素子の電気的接続は、透光性導電性材料によって直列に接続されているので、透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができる。
前記透光性導電性材料は導電性粒子を透明絶縁性材料に分散させることによって構成されるが、この導電性粒子としては、少なくとも金属導体を含む微粒子であることが好ましい。これは金属粒子または金属メッキした樹脂粒子などの体積抵抗率の低い金属導体の微粒子によって確実な電気的接続を行うことができるからである。
また、前記導電性粒子としては、少なくともAu、Pt、Ag、Cu、Al、Ni、Zn、Ti、W、Cr、Moのいずれかを含む微粒子であることがより好ましく、これらの金属微粒子はそれぞれ単独で用いてもよいし、また、任意の種類、任意の粒径の導電性粒子と混合して用いてもよい。
また、透光性導電性材料が、光電変換素子間の分離と電極間の電気的接続とを同時に行う場合、前記導電性粒子としては、少なくともPt、Ni、Ti、Wのいずれかを含む微粒子であることが好ましい。これはそれらの金属が電解質中に多用されているヨウ素と反応しにくく、電気的接続の信頼性を向上させることができるからである。そして、上記の金属微粒子はそれぞれ単独で用いてもよいし、また、任意の種類、任意の粒径の導電性粒子と混合して用いてもよい。
透明絶縁性材料としては、後述する封止材と同じものを使用できるが、少なくともシリコーン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ブチルゴム、熱硬化性オレフィン樹脂、フッ素を含む樹脂からなることが好ましい。これはそれらの樹脂が透明性と被着体との良好な接着力を有していて、確実に電気的接続を行うことができるからである。
また、透光性導電性材料が光電変換素子間の分離と電極間の電気的接続とを同時に行う場合、前記透明絶縁性材料としては、少なくともシリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン樹脂、熱硬化性オレフィン樹脂からなることが好ましい。これはそれらの樹脂が電解質溶媒として多用されていれるニトリル系溶媒やカーボネート系溶媒などの極性の高い溶媒と相溶性が低い、すなわち、電解質に溶けにくく長期間に亘り構造の保持が可能であって、光電変換モジュールの長期信頼性を向上させることができるからである。
導電性粒子としては、前記のように、金属粒子、金属メッキ処理した樹脂粒子、ガラスビーズ、ガラスファイバー、ゴム粒子などを用いることができるが、別種類の金属が多重メッキされていてもよい。
本発明においては、透光性導電性材料中における導電性粒子の含有量を1〜15体積%とするが、これは、導電性粒子の含有量が1体積%より少ない場合は透光性は良くなるものの導電性が悪くなり、導電性粒子の含有量が15体積%より多い場合は導電性は良くなるものの透光性が悪くなるからである。そして、透光性導電性材料中における導電性粒子の含有量としては、1〜10体積%が好ましく、3〜10体積%がより好ましく、3〜8体積%がさらに好ましい。
透明絶縁性材料中への導電性粒子の混合方法としては、透明絶縁性材料が熱硬化性の場合、硬化する前であれば任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ透明絶縁性材料に導電性粒子を混入し、混錬、真空脱泡を所定回数繰り返し分散、脱泡して透光性導電性材料を調製しておくことが好ましく、そのようにして調製した透光性導電性材料はディスペンサーやスクリーン印刷などの既知の手法によって用いることができる。また、透明絶縁性材料が熱可塑性の場合は、任意のタイミングで混入することが可能であるが、あらかじめ透明絶縁性材料に導電性粒子を混入し混錬、真空脱泡を所定回数繰り返し分散、脱泡して透光性導電性材料を調製しておくことが好ましく、そのようにして調製した透光性導電性材料はシート状に成形し、パターニングして環状など所望の形状にして用いることができる。
前記導電性粒子は、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、CVD処理、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理などを行い粒子表面の洗浄や酸化膜の除去を行うことによって導電性を向上させることができる。また、導電性粒子と第1の電極(透明電極)と第2の電極(対電極)との密着性を高めるために粒子表面をシランカップリング剤やチタネートカップリング剤の表面処理剤で処理してもよい。
前記導電性粒子としては、粒径が平均粒径で0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。この導電性粒子としては、粒度分布が狭く粒径が均一に揃ったものが好ましいが、それらは非常に高価あるため、粒度分布の広く粒径が均一でないものを用いてもよい。
また、透明絶縁性樹脂には、被着面との接着力を高めるるために、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加しても良い。また、あらかじめ被着面にウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理など行い被着面の洗浄や活性化を行ってもよい。
また、透明絶縁性樹脂は、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合して使用することができる。
透光性導電性材料は、導電性粒子の存在が気にならず、透光性を有していることから任意の色調に調整することが容易である。このような色調の調整は顔料や染料などの色素や色素によって着色された微粒子などを混入したり有色フィルムなどを張り合わせることによって実現することができる。また、顔料や着色微粒子などを用いる場合、その粒径は、導電性粒子とほぼ同サイズあるか、導電性粒子よりも小さいことが好ましい。
次に、本発明の光電変換素子モジュールの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明する。
第1実施形態
図1は本発明の光電変換素子モジュールの第1実施形態を示す断面図である。この第1実施形態の光電変換素子モジュールは、5個の光電変換素子を直列に接続したものであるが、図1に示すように、この第1実施形態の光電変換素子モジュール1を構成する各光電変換素子2.1〜2.5は、基板3の一方の面には第1の電極(透明電極)5.1〜5.5が形成され、その第1の電極5.1〜5.5の一方の面には増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5が被着されている。そして、この増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5に対峙して第2の電極(対電極)11.1〜11.5が別の基板21の一方の面に形成され、第1の電極5.1〜5.5の半導体層7.1〜7.5と第2の電極11.1〜11. 5との間にはそれぞれ電解質9.1〜9.5が配置されている。なお、複数設けられている部材に関する参照符号は、その複数設けられている部材を総称的に示す場合は、単に整数位の数字だけで示し、それらの部材を個別に示す必要があるときは、その整数位の数字の後にその部材間における識別のための数字をピリオドを介して付記した状態で示す。例えば、第1の電極を総称的に示す場合は「5」のみで示し、それらの第1の電極について個別に示す必要があるときは、「5.1」、「5.2」、「5.3」、「5.4」、「5.5」のように示す。そして、これは他の複数設けられている部材に関しても同様である。
各光電変換素子2.1〜2.5の第1の電極5.1〜5.5間は、基板3上のギャップ15. 2〜15. 5によって分離され、同様に、第2の電極11.1〜11. 5間は、基板21上のギャップ17. 1〜17. 4によって分離されている。そして、隣接する光電変換素子間では、一方の光電変換素子の第1の電極と他方の光電変換素子の第2の電極とは透明絶縁性材料に導電性粒子を分散させた透光性導電性材料13によって直列に接続されている。これを具体的に説明すると、光電変換素子2.1と光電変換素子2.2との間では、光電変換素子2.1の第1の電極5.1と光電変換素子2.2の第2の電極11.2とは前記透光性導電性材料13によって接続され、光電変換素子2.2と光電変換素子2.3との間では、光電変換素子2.2の第1の電極5.2と光電変換素子2.3の第2の電極11.3とが前記透光性導電性材料13によって接続され、光電変換素子2.3と光電変換素子2.4との間では、光電変換素子2.3の第1の電極5.3と光電変換素子2.4の第2の電極11.4とが前記透光性導電性材料13によって接続され、光電変換素子2.4と光電変換素子2.5との間では、光電変換素子2.4の第1の電極5.4と光電変換素子2.5の第2の電極11.5とが前記透光性導電性材料13によって接続されている。なお、前記ギャップ15.1〜15.6に関してその位置を基板3上とし、ギャップ17.1〜17.6に関してもその位置を基板21上としているが、これは光電変換素子ないし光電変換素子モジュールの内部側を「上」と表現しているからである。
また、この第1実施形態の光電変換素子モジュール1では、上記のように、透光性導電性材料13が上記のように隣接する光電変換素子間の電気的接続をするとともに、電解質の分離も行っている。これを具体的に説明すると、光電変換素子2.1の電解質9.1と光電変換素子2.2の電解質9.2とは透光性導電性材料13によって分離され、光電変換素子2.2の電解質9.2と光電変換素子2.3の電解質9.3とは透光性導電性材料13によって分離され、光電変換素子2.3の電解質9.3と光電変換素子2.4の電解質9.4とは透光性導電性材料によって分離され、光電変換素子2.4の電解質9.4と光電変換素子2.5の電解質9.5とは透光性導電性材料13によって分離されている。ただし、そのように、電解質間の分離をすべて透光性導電性材料13によって行わなくても、その一部を透明絶縁性材料で行ってもよい。
これらの光電変換素子2.1〜2.5のうち、左端に位置する光電変換素子2.1では、その左側端部において、基板3と基板21との間が封止材19によって封止され、右端に位置する光電変換素子2.5では、その右側端部において、基板3と基板21との間が封止材19によって封止されている。
そして、光電変換素子2.5の右端部では封止材19の外側、すなわち、図1では、封止材19の右側に第1の電極5.5側の電気的接続部5.5aが設けられており、光電変換素子2.1の左端部では封止材19の外側、すなわち、図1では、封止材19の左側に第2の電極11.5の電気的接続部11.5aが設けられている。この第1実施形態の光電変換素子モジュール1で、基板3が透明性ガラス板などの透明基板で構成されているので、基板3から入射光27を受ける。
第2実施形態
図2は、本発明の光電変換素子モジュールの第2実施形態を示す断面図である。この図2に示す第2実施形態の光電変換素子モジュールは、前記の図1に示す第1実施形態の光電変換素子モジュールが5個の光電変換素子で構成されていたのに対して、2個の光電変換素子でモジュールを構成した以外は、基本的に第1実施形態の光電変換素子モジュールと同様である。
すなわち、この図2に示す第2実施形態の光電変換素子モジュール1においても、それを構成する各光電変換素子2.1〜2.2は、基板3の一方の面に第1の電極(透明電極)5.1〜5.2が形成され、その第1の電極5.1〜5.2の一方の面には増感色素が担持された半導体層7.1〜7.2が被着されている。そして、この増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5に対峙して第2の電極(対電極)11.1〜11.5が別の基板21の一方の面に形成され、第1の電極5.1〜5.2の半導体層7.1〜7.2と第2の電極11.1〜11. 2との間にはそれぞれ電解質9.1〜9.2が配置されている。
各光電変換素子2.1〜2.2の第1の電極5.1〜5.2間は、基板3上のギャップ15. 2によって分離され、同様に、第2の電極11.1〜11. 2間は、基板21上のギャップ17. 1によって分離されている。そして、隣接する光電変換素子間では、光電変換素子2.1の第1の電極5.1と光電変換素子5.2の第2の電極11.2とは透明絶縁性材料に導電性粒子を分散させた透光性導電性材料13によって直列に接続されている。また、この第2実施形態の光電変換素子モジュール1では、透光性導電性材料13が上記のように隣接する光電変換素子の電極間の電気的接続をするとともに、隣接する光電変換素子間の電解質の分離も行っている。これを具体的に説明すると、光電変換素子2.1の電解質9.1と光電変換素子2.2の電解質9.2とは透光性導電性材料13によって分離されている。
これらの光電変換素子2.1〜2.2のうち、左側に位置する光電変換素子2.1では、その左側端部において、基板3と基板21との間が封止材19によって封止され、右端に位置する光電変換素子2.5では、その右側端部において、基板3と基板21との間が封止材19によって封止されている。
そして、光電変換素子2.2の右端部では封止材19の外側、すなわち、図2では、封止材19の右側に第1の電極5.2側の電気的接続部5.2aが設けられており、光電変換素子2.1の左端部では封止材19の外側、すなわち、図2では、封止材19の左側に第2の電極11.2の電気的接続部11.2aが設けられている。この第2実施形態の光電変換素子モジュール1でも、基板3が透明性ガラス板などの透明基板で構成されているので、基板3から入射光27を受ける。
これら第1実施形態の光電変換素子モジュールや第2実施形態の光電変換素子モジュールでは、透光性導電性材料13が隣接する光電変換素子間の第1の電極と第2の電極との電気的な直列接続と電解質の分離とを同時に行っているので、光電変換素子モジュール内で光電変換素子以外の部材が占める面積割合を下げることができ、その結果、光電変換素子のモジュール内で占める面積割合を高めることができるため、光電変換素子モジュールの面積あたりの出力を高くすることができる。しかも、各光電変換素子の電気的接続を透光性導電性材料によって電気的に直列に接続しているので、高出力で透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができる。また、この第1実施形態や第2実施形態の光電変換素子モジュールでは、隣接する光電変換素子間の電気的接続と電解質の分離を同時に行うために高度な作製技術が必要になるものの、工程数を少なくすることができ、大量生産しやすい。また、熱硬化性の透明絶縁性材料に導電性粒子を分散させた透光性導電性材料を用いれば、スクリーン印刷やディスペンサー塗布が可能となるので、さらに工程数を少なくすることができ、大量生産しやすくなる。
第3実施形態
図3は本発明の光電変換素子モジュールの第3実施形態の断面図であり、この第3実施形態の光電変換素子モジュールは、前記第2実施形態の光電変換素子モジュールの電気的接続部5.2aと同様に第2実施形態の光電変換素子モジュールの電気的接続部11.1aとを透明絶縁性材料に導電性粒子を分散させた透光性導電性材料13によって電気的に接続したものである。従って、その接続部以外の構成は、前記第2実施形態の光電変換素子モジュールで説明したのと同様である。
この第3実施形態の光電変換素子モジュールを構成する2個の光電変換素子モジュールは、前記第2実施形態の光電変換素子モジュールで説明したのと同様に構成されている。
この第3実施形態の構造は、基本となる光電変換素子モジュールに他の光電変換素子または光電変換素子モジュールを電気的に接続する場合に用いることができる。光電変換素子モジュールの実使用時には、さらに他の光電変換素子または光電変換素子モジュールを電気的に接続することで出力を高めることができる。その際、接続には、通常、異方導電性材料、はんだ付け、導電箔、導線、導電テープ、導電塗料などが用いられるが、いずれも不透光な材料であることから、電気的接続部分の透光性が得られなかった。しかしながら、この第3実施形態の光電変換素子モジュールでは、各光電変換素子の電気的接続部が透光性導電性材料によって電気的に直列に接続されているので、透光性を有するモジュールとすることができる。光電変換素子や光電変換素子モジュールとの組み合わせは任意に接続可能であるが、接続する光電変換素子や光電変換素子モジュールも透光性を有することが好ましい。
第4実施形態
図4は本発明の光電変換素子モジュールの第4実施形態を示す断面図であり、この第4実施形態の光電変換素子モジュールは5個の光電変換素子で構成されている。図4において、本実施形態の光電変換素子モジュール1を構成する各光電変換素子2.1〜2.5は、基板3の一方の面に第1の電極(透明電極)5.1〜5.5を形成し、その第1の電極5.1〜5.5の一方の面には増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5が被着されている。そして、この増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5に対峙して第2の電極(対電極)11.1〜11.5が別の基板21の一方の面に形成され、半導体層7.1〜7.5と第2の電極11.1〜11.5との間には電解質9.1〜9.5が配置されている。
各光電変換素子2.1〜2.5の第1の電極5.1〜5.5は、基板3上のギャップ15.2〜15.5によって分離され、同様に、第2の電極11.1〜11.5は、基板21上のギャップ17.2〜17.5によって分離されている。そして、基板3上のギャップ15.1〜15.6と基板21上のギャップ17.1〜17.6との間には封止材19が配置され、各光電変換素子2.1〜2.5は封止材19によって分離されている。
図5は、上記第4実施形態の光電変換素子モジュールの平面図であり、図4の入射光27が入射する方向の反対側から見た平面図である。光電変換素子2.1〜2.5の第1の電極5.1〜5.5は、その端部に電気的接続部5.1a〜5.5aを備えている。ただし、それらの方向は奇数位のものと偶数位のものとでは反対側に配置していて、奇数位の電気的接続部5.1aと5.3aと5.5aは図5における上部側に配置し、偶数位の電気的接続部5.2aと5.4aは図5における下部側に配置している。そして、第2の電極11.1〜11.5も同様にその端部に電気的接続部11.1a〜11.5aを備えている。ただし、それらの方向は奇数位のものと偶数位のものとは反対方向に配置していて、前記第1の電極の電気的接続部5.1a〜5.5aと直列に接続しやすくなるようになされている。具体的には、奇数位の電気的接続部11.1aと11.3aと11.5aは図5における下部側に配置し、偶数位の電気的接続部11.2aと11.4aは図5における上部側に配置している。また、この電気的接続部5.1a〜5.5aや電気的接続部11.1a〜11.5aは、光電変換素子間に配置された封止材19とは接触しないように、光電変換素子モジュールの端部に配置されている。これにより、電気的接続部を広く確保できるので、電気的接続部の強度を増加させることができる。また、光電変換素子間での電気的接続と封止とを両立させる必要がなくなるため、光電変換素子間の封止強度を高めることができる。
そして、電気的接続部11.1aと電気的接続部5.2a、電気的接続部11.2aと電気的接続部5.3a、電気的接続部11.3aと電気的接続部5.4a、電気的接続部11.4aと電気的接続部5.5aとが、それぞれ透光性導電性材料13によって直列に接続されている。電解質注入孔23.1〜23.5は、第2の電極11.1〜11.5の部分に基板21側から穿孔されて形成されている。電解質注入孔23.1〜23.5の封止材25.1〜25.5は、基板21の第2の電極11.1〜11.5が形成されていない側から、電解質注入孔23.1〜23.5を封止する位置に配置されている。なお、図5において、28は外部端子である。
この第4実施形態の構造では、隣接する光電変換素子の相互間の電気的接続を、光電変換素子の封止材より外側の部分で、透光性導電性材料によって行うので、光電変換素子モジュールの内部で電気的接続を行う場合に比べて複雑な構造でないため高度な作製技術を必要とせず容易に透光性を有する光電変換素子モジュールとすることができる。このとき、電気的接続部は、面積を任意に設定することができ、面積を広くすることによって信頼性の高いモジュールとすることができるが、モジュール全体の面積に占める光電変換素子の面積が小さくなるので、できる限り小さいほうが好ましい。
本発明の光電変換素子モジュールにおいて、基板3は透光性を有する材料で構成され、通常、この基板3にはガラスやフィルムが使用されるが、透光性を有する樹脂板の使用も可能である。基板3の光透過率は高いほどよく、好ましい光透過率は50%以上であり、より好ましくは80%以上である。また、可撓性のある透明フィルムを基板に用いると、電極の大量生産が容易となり、製造コストの低減を図ることができる。
基板3に用いる透明フィルムや透明樹脂板としては、例えば、再生セルロースフィルム、ジアセテートセルロースフィルム、トリアセテートセルロースフィルム、テトラアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、塩酸ゴムフィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリフッ化ビニルフィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルムなどが挙げられる。これらの中でも、特にポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルムなどは、強靭でかつ耐熱性に優れていることから好ましい。
基板3の一方の面に形成される第1の電極5.1〜5.5は、各光電変換素子の負極として機能し、基板3上に導電材層を積層することによって形成される。好ましい導電材としては、透明導電性の金属酸化物、例えば、インジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫などが挙げられる。この第1の電極5.1〜5.5は、基板3の一方の面に形成されていて、パターニングされたギャップ15.1〜15.6によって仕切られている。このギャップ15.1〜15.6の形成は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、前記透明導電膜を取り除くことによって行われるが、特にエッチングを採用することが好ましい。このエッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、特にレーザーエッチングが好ましい。レーザーエッチングはドライでエッチングすることが可能で、ウエットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することが可能である。さらに、レーザーエッチングは前記半導体層7.1〜7.5の形成前でも、形成後でも行うことができ、任意のタイミングでエッチングすることが可能である。
第1の電極5.1〜5.5は、表面抵抗が低いほど好ましく、好ましい表面抵抗値は、50Ω/□以下であり、より好ましくは30Ω/□以下である。下限値に特に制限はないが、通常0.1Ω/□以上である。
また、第1の電極5.1〜5.5は、光透過率が高いほど好ましく、好ましい光透過率値は、50%以上であり、より好ましくは80%以上である。第1の電極5.1〜5.5の厚みは、0.1〜10μmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内の厚みであれば、均一な厚みの電極を形成することが容易となり、また、光透過性が低下せず、充分な光を半導体層7.1〜7.5に入射させることができるからである。第1の電極5.1〜5.5が透明な場合は、基板3側から光を入射させることが好ましい。
前記第1の電極5.1〜5.5の対電極となる第2の電極11.1〜11.5は、光電変換素子モジュール1の正極として機能し、前記増感色素が担持された半導体層7.1〜7.5が形成される側の第1の電極5.1〜5.5と同様に形成することができる。この第2の電極11.1〜11.5を光電変換素子モジュール1の正極として効率よく作用させるためには、第2の電極11.1〜11.5の形成にあたって、電解質の還元体に電子を与える触媒作用を有する素材を使用することが好ましい。このような素材としては、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウムなどの金属、またはグラファイト、白金を担持したカーボン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーンなどのカーボン材料、またはポリチオフェン誘導体(PEDOT)、N、 N−ジ(ナフタレン−1−ニル)−N、 N−ジフェニル−ベンジデン誘導体(NPB)、ポリ[ 2−メトキシ−5−(2' −エチルヘキシルオキシ)−1、 4−フェニレンビニレン] (MEH−PPV)などの導電性高分子材料、またはインジウム−錫複合酸化物、アンチモンをドープした酸化錫、フッ素をドープした酸化錫などの導電性の金属酸化物などが挙げられるが、これらの中でも、白金やポリチオフェン誘導体などが特に好ましい。この第2の電極11.1〜11.5が形成される基板21は、第2の電極11.1〜11.5の形成面側に透明導電膜(図示せず。)を有することもできる。この透明導電膜は、例えば、第1の電極5.1〜5.5の場合と同じ材料から形成することができる。このとき、第2の電極11.1〜11.5は、光電変換素子モジュールの透光性を失わないようできるかぎり薄層化し、透明にすることが好ましい。
この第2の電極11.1〜11.5間を分離するギャップ17.1〜17.6は、パターンに沿って、表面掘削、レーザスクライビング、エッチングなどにより、前記透明導電膜を取り除くことによって形成することができるが、特にエッチングを採用することが好ましい。このエッチングとしては、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング、電解エッチング、レーザーエッチング、フォトエッチングなどが挙げられるが、特にレーザーエッチングが好ましい。レーザーエッチングはドライエッチングすることが可能で、ウェットエッチングの場合に必要な、パターンのマスク形成、薬液処理、洗浄、乾燥などの工程を簡素化することが可能である。また、レーザーエッチングはパターン化されていない第2の電極と透明導電膜とを同時にエッチングすることが可能であり、さらなる工程の簡素化が可能である。例えば、ウェットエッチングは、パターニングされた透明導電膜上に、第2の電極11.1〜11.5として白金を被着するには、前記透明導電膜と同一のパターンのマスクを用いて真空成膜により白金を堆積させたり、塩化白金酸の熱処理で白金粒子を被着したり、めっきしたりする方法を用いることになる。これに対し、レーザーエッチングは前記透明導電膜の一面に白金を被着したのち、これを同時にエッチングしてパターンを形成するとともに第2の電極11.1〜11.5とすることが可能である。
第2の電極11.1〜11.5を形成する基板21には、基板3と同じ材料を使用することができる。原理的には、不透明な金属などを使用することができるが、光電変換モジュールの透光性が失われてしまうため、透明フィルムや透明ガラスを用いることが好ましい。
半導体層7.1〜7.5の形成にあたっては、半導体粒子の分散塗料を公知慣用の方法、例えば、ドクターブレードやバーコータなどを使う塗布方法、スプレー法、ディップコーティング法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、電着法などにより、第1の電極5.1〜5.5の表面に成膜し、その後、必要に応じて半導体層の固定化処理を行うことが好ましい。その固定化処理法としては、加熱処理や加圧処理などが挙げられる。加熱処理条件としては、電気炉やホットプレート、マイクロ波などによる加熱方式が好ましく、ガラス基板の場合400〜600℃程度、フィルム基板の場合80℃〜250℃程度が好ましい。また、また、加圧処理としては、プレス機やカレンダなどが挙げられ、圧力としては1MPa〜200MPa程度が好ましい。また、半導体層7.1〜7.5のパターンは、半導体層7.1〜7.5が第1の電極5.1〜5.5の表面に形成されるパターンであればよい。
半導体層7.1〜7.5の厚みは0.1〜100μmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、充分な光電変換効果が得られ、また、可視光および近赤外光に対する透過性が悪化することもないからである。半導体層7.1〜7.5の厚みのより好ましい範囲は1〜50μmであり、さらに好ましい範囲は5〜30μmであり、最も好ましい範囲は10〜20μmである。
上記半導体層7.1〜7.5の形成にあたって使用する半導体材料としては、例えば、Cd、Zn、In、Pb、Mo、W、Sb、Bi、Cu、Hg、Ti、Ag、Mn、Fe、V、Sn、Zr、Sr、Ga、Si、Crなどの金属元素の酸化物、SrTiO3 、CaTiO3 などのペロブスカイト、またはCdS、ZnS、In2 S3 、PbS、Mo2 S、WS2 、Sb2 S3 、Bi2 S3 、ZnCdS2 、Cu2 Sなどの硫化物、CdSe、In2 Se3 、WSe2 、HgS、PbSe、CdTeなどの金属カルコゲナイド、その他GaAs、Si、Se、Cd2 P3 、Zn2 P3 、InP、AgBr、PbI2 、HgI2 、BiI3 など、または前記半導体材料から選ばれる少なくとも1種類以上を含む複合体、例えば、CdS/TiO2 、CdS/AgI、Ag2 S/AgI、CdS/ZnO、CdS/HgS、CdS/PbS、ZnO/ZnS、ZnO/ZnSe、CdS/HgS、CdSx /CdSe1-x 、CdSx /Te1-x 、CdSex /Te1-x 、ZnS/CdSe、ZnSe/CdSe、CdS/ZnS、TiO2 /Cd3 P2 、CdS/CdSeCdy Zn1-y S、CdS/HgS/CdSなどが挙げられる。それらの中でも、TiO2 が、グレッツェル・セルにおいて、電解質中への光溶解の回避と高い光電変換特性を実現できる点で好ましい。
上記半導体材料は通常粒子形状で用いるが、その際の半導体粒子の粒径は、一般的に5〜1000nmの範囲内であることが好ましい。この範囲内であれば、半導体層7.1〜7.5の細孔径が適切な孔径になり、電解質が半導体層7.1〜7.5の中に充分に浸透して、優れた光電変換特性を得ることができるからである。特に好ましい半導体粒子の粒径の範囲は、10〜100nmである。
半導体層7の厚みまたは半導体粒子の粒径を制御することにより、半導体層7のラフネスファクター(基板面積に対する半導体層内部の実面積の割合)を決定することができる。ラフネスファクターは20以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましい。この範囲内であれば、増感色素の担持量が充分となり、光電変換特性を向上させることができる。ラフネスファクターの上限値は一般に5000程度である。ラフネスファクターは半導体層7の厚みを厚くすると大きくなって、半導体層7の表面積が広がり、増感色素の担持量の増加が期待できる。しかし、厚みが厚くなりすぎると、半導体層7の光透過率および抵抗損失への影響が現れ始める。
また、半導体層7の形成に界面活性剤やポリエチレングリコール、セルロース系材料などを添加し、半導体層7の加熱処理時にそれらを燃焼することによって半導体層7を多孔質にしたり、半導体粒子の粒径を変更したりすることで半導体層7のポロシティーを高くすれば、厚みを厚くしなくてもラフネスファクターを大きくすることは可能である。しかし、ポロシティーが高くなりすぎると、半導体粒子間の接触面積が減少して抵抗損失への影響を考慮しなくてはならなくなる。このようなことから、半導体層7のポロシティーは50%以上が好ましく、その上限値は一般的に約80%程度である。半導体層7のポロシティーは液体窒素温度下で窒素ガスまたはクリプトンガスの吸着−脱離等温曲線の測定結果から算出することができる。
増感色素としては、従来からも色素増感性光電変換素子に常用されている色素であればいずれも使用することができる。そのような色素としては、例えば、RuL2 (H2 O)2 タイプのルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体またはルテニウム−トリス(RuL3 )、ルテニウム−ビス(RuL2 )、オスニウム−トリス(OsL3 )、オスニウム−ビス(OsL2 )タイプの遷移金属錯体、または亜鉛−テトラ(4−カルボキシフェニル)ポルフィリン、鉄−ヘキサシアニド錯体、フタロシアニンなどが挙げられる。また、有機色素としては、9−フェニルキサンテン系色素、クマリン系色素、アクリジン系色素、トリフェニルメタン系色素、テトラフェニルメタン系色素、キノン系色素、アゾ系色素、インジゴ系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、キサンテン系色素などが挙げられる。それらの増感色素の中でも、ルテニウム−ビス(RuL2 )誘導体は、可視光域で広い吸収スペクトルを有するので、特に好ましい。
半導体層7.1〜7.5に増感色素を担持させる方法としては、例えば、増感色素を溶解させた溶液に、半導体層7.1〜7.5を形成した第1の電極5.1〜5.5を備えた基板3を浸漬する方法が挙げられる。この溶液の溶媒としては、水、アルコール、トルエン、ジメチルホルムアミドなどの増感色素を溶解可能なものであればいずれも使用できる。また、浸漬方法として、増感色素溶液に半導体層7.1〜7.5を形成した第1の電極5.1〜5.5を有する基板3を一定時間浸漬している時に、加熱還流や超音波を印加することもできる。半導体層7.1〜7.5への増感色素の担持後、担持せずに半導体層7.1〜7.5に残ってしまった増感色素を取り除くために、アルコールで洗浄するかまたは加熱還流することが好ましい。さらに、増感色素が担持されてない半導体粒子の表面を被覆するために、アルコール中にt−ブチルピリジンを溶かしておいてもよい。アルコール中にt−ブチルピリジンが存在すると、半導体粒子と電解質との界面では、増感色素およびt−ブチルピリジンによって半導体粒子の表面と電解質とをセパレートすることができ、漏れ電流を抑制することが可能なので、光電変換素子の特性を著しく向上させることができる。
半導体層への増感色素の担持量としては、1×10-8〜1×10-6mol/cm2 の範囲内が好ましく、特に0.1×10-7〜9.0×10-7mol/cm2 が好ましい。この範囲内であれば、経済的かつ充分に光電変換効率の向上効果を得ることができるからである。
本発明の光電変換素子モジュールにおける電解質9.1〜9.5を構成するために使用される電解物質としては、酸化体と還元体からなる一対の酸化還元系構成物質が含まれていれば特にその種類は限定されないが、酸化体と還元体が同一電荷を持つ酸化還元系構成物質が好ましい。この明細書における酸化還元系構成物質とは、酸化還元反応において可逆的に酸化体および還元体の形で存在する一対の物質を意味する。このような酸化還元系構成物質としては、例えば、塩素化合物−塩素、ヨウ素化合物−ヨウ素、臭素化合物−臭素、タリウムイオン(III) −タリウムイオン(I)、水銀イオン(II)−水銀イオン(I)、ルテニウムイオン(III) −ルテニウムイオン(II)、銅イオン(II)−銅イオン(I)、鉄イオン(III) −鉄イオン(II)、バナジウムイオン(III) −バナジウムイオン(II)、マンガン酸イオン−過マンガン酸イオン、フェリシアン化物−フェロシアン化物、キノン−ヒドロキノン、フマル酸−コハク酸などが挙げられるが、それら中でも、ヨウ素化合物−ヨウ素が好ましい。上記ヨウ素化合物としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化カリウムなどの金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨージド、ピリジニウムヨージドなどのヨウ化4級アンモニウム塩化合物、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムなどのヨウ化イミダゾリウム化合物が特に好ましい。
電解質は、通常、電解物質を溶媒中に溶解させることによって調製されるが、その電解物質を溶解するための溶媒としては、水性溶媒、有機溶媒のいずれも使用できるが、酸化還元系構成物質などの電解物質をより安定化させるため、有機溶媒が好ましい。この有機溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル化合物、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソシラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−テトラヒドラフランなどのエーテル化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物、スルフォラン、ジジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミドなどの非プロトン性極性化合物などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いることもできるし、また、2種類以上を混合して併用することもできるが、それらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネ−ト化合物、3−メチル−2−オキサゾジリノン、2−メチルピロリドンなどの複素環化合物、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル化合物が特に好ましい。電解質は、液状のものに限られることなく、他の形態のものも用いることができるが、例えば、液状の電解質を高分子マトリックスに保持させてゲル状にした状態で用いてもよい。そのような高分子マトリックスとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフロロプロピレン、テトラフロロエチレン、トリフロロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレンなどの重合性モノマーを単独で重合させた単独重合体またはそれらのモノマーを2種以上共重合させた共重合体などを用いることができる。
封止材19を構成する基材物質としては、例えば、シリコーン樹脂、ポリオレフィン、ブチルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどから選ばれる少なくとも1種を用いることができるが、それらの中でも、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、ブチルゴム、フッ素を含む樹脂などが好ましい。また、電解質溶媒としてニトリル系溶媒、カーボネート系溶媒を使用する場合には、それらの溶媒と相溶性の低い、シリコーン樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン樹脂、熱硬化性オレフィン樹脂が好ましい。これは光電変換素子モジュールの最終形態を考慮し本部位に透光性が必要であるかどうかを適宜判断し選定される。
また、封止材19には、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合することができる。
さらに、封止材19には、基板3、基板21、第1の電極(透明電極)5.1〜5.5および第2の電極(対電極)11.1〜11.5との接着力を高めるためにシランカップリング剤やチタネートカップリング剤などを添加してもよい。また、あらかじめ基板3、基板21、第1の電極(透明電極)5.1〜5.5および第2の電極(対電極)11.1〜11.5に、ウエット洗浄、ケミカル洗浄、プラズマ処理、オゾン処理、紫外線照射処理、超音波処理、表面研磨処理など行い、その表面の洗浄や表面の活性化を行ってもよい。
また、封止材19には、耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤などを適宜混合することができる。
また、封止材19中には、第1の電極(透明電極)5.1〜5.5と第2の電極(対電極)11.1〜11.5の電極間距離を規制するためのスペーサーを存在させることが好ましい。そのような目的で用いられるスペーサーとしては、一般にスペーサーとして用いられている公知の絶縁性樹脂ボール、ガラスビーズ、ガラスファイバーなどから適宜選択することができる。また、その粒径は、0.1〜300μmであることが好ましく、1〜100μmであることがより好ましい。
封止材19のパターンは、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂を使用する場合、ディスペンサーやスクリーン印刷などの既知の手法によって形成することができる。また、ホットメルト樹脂を使用する場合は、シート状のホットメルト樹脂にパターニングした孔を穿けて、封止パターンを形成することができる。
さらに、封止材19の周囲を、樹脂、金属、ガラスなどで補強することによって、二重封止とすることで、光電変換素子モジュールの強度と長期信頼性とを向上させることが可能である。そのような樹脂としては、アクリレートスチレンアクリロニトリル共重合体(AAS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)塩素化ポリエチレンアクリロニトリルスチレン共重合体(ACS)アクリル酸エステル共重合体、オレフィンビニルアルコール共重合体、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT)、セルロース、塩素化ポリエーテル、クマロン樹脂、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢ビ−塩ビ共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、ケトン樹脂、メタクリル酸ブタジエンスチレン共重合体(MBS)、メタクリル−スチレン共重合体(MS)、ニトリル樹脂、オキシベンイルポリエステル、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂(PF)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(ナイロン)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアリレート(PAR)、ポリアリルスルホン(PASF)、ポリブタジエン、ポリブチレン、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン(PESF)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリナフタレンテレフタレート(PEN)、アイオノマー樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミノビスマレイミド(PABM)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルホン、ポリスルホン(PSF)、ポリスチレン(PS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン共重合体、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリウレタン(PUR)、ビニルアセテート系樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、シリコーン樹脂(SI)、熱硬化オレフィン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、キシレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン、アラミドアラミド系強化繊維、ポリアミノアミド系樹脂、フッ素を含む樹脂、またはそれらの変成物やガラス強化物など、その他にポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、それらの中から被着面の材質に応じて適宜選択して使用することができる。これは光電変換素子モジュールの最終形態を考慮し本部位に透光性が必要であるかどうかを適宜判断し選定される。特に、経済性、強度、耐衝撃性、被着面との接着力、取り扱いの容易さから、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン樹脂、フッ素を含む樹脂などを用いることが好ましい。
電解質注入孔23.1〜23.5は、第2の電極11.1〜11.5の部分に基板21側から穿孔されて形成されている。電解質注入孔23.1〜23.5は、電解質を半導体層7.1〜7.5と対電極11.1〜11.5との間に注入するために設けられる。電解質注入孔23.1〜23.5は、少なくとも1つの空孔が基板21から穿孔されていればよいが、注入量が多い場合などは、適宜注入孔の数を増やしてもよい。ここで電解質注入孔23.1〜23.5は基板21の垂直方向となっているが、封止材19を穿孔するなどして水平方向に設けることも可能である。
電解質注入孔23.1〜23.5の封止材25.1〜25.5は、基板21の外側から電解質注入孔23.1〜23.5を封止する位置に配置されている。このような封止材25.1〜25.5としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂、ガラスなどを用いることが好ましい。電解質注入孔23.1〜23.5は電解質の注入後に封止しなければならないので、短時間で封止できるようなシリコーン粘着テープやアイオノマー樹脂の熱融着による封止が好ましい。さらに、電解質注入孔23.1〜23.5の封止強度を高めるために、シリコーン粘着テープや熱融着されたアイオノマー樹脂を覆うように、エポキシ樹脂や紫外線硬化樹脂、ガラスを配置することがより好ましい。これは光電変換素子モジュールの最終形態を考慮し本部位に透光性が必要であるかどうかを適宜判断し選定される。
外部端子28は光電変換素子から電力を取り出すために設置される。外部端子28は任意に接続可能であり、光電変換素子や光電変換素子モジュール同士の直列または並列接続や外部回路と接続する。これは、導電箔、導線、導電テープ、導電メッシュ、導電塗料などから選択された少なくとも1種で形成されていることが好ましく、第1の電極5.1〜5.5および対電極11.1〜11.5との接続は金属導体とそれらをカバーする異方導電性材料、導電塗料、真空成膜、はんだ付けなどから構成される。これは光電変換素子モジュールの最終形態を考慮し本部位に透光性が必要であるかどうかを適宜判断し選定される。
本発明の光電変換素子モジュールはフッ素を含む樹脂で覆うことができる(図示せず)。これにより、光電変換素子モジュールの強度を向上させたり耐衝撃性を向上させることができる。このフッ素を含む樹脂は、モジュールの最外層に使用することから、水蒸気などのガスバリヤー性、透明性、強度、耐候性に優れていることが好ましい。
前記フッ素を含む樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)などが挙げられる。これらは通常フィルムにして用いられる。その際、いずれかの樹脂からなる単独フィルムとして用いてもよく、また、2種以上を積層した積層フィルムとして用いてもよい。また、2種以上を積層した積層フィルムは、耐候性透明フィルムにフッ素樹脂塗料を塗布することによって積層されたフィルムであってもよい。また、それらの耐候性を向上させるために、架橋剤、紫外線吸収剤、カップリング剤などを前記樹脂に適宜混合して使用することもできる。
前記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、セルロースアセテートフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐候性ポリエチレンテレフタレートフィルム、耐候性ポリプロピレンフィルム、ガラス繊維強化ポリエステルフィルム、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネートフィルムなどを使用することができる。
前記2種以上を積層した積層フィルムに用いられる耐候性透明フィルムとしては、接着性、透明性、耐候性などのほか、充填材としての機能も備えたアクリル系接着剤、エポキシ樹脂、ホットメルト樹脂などの接着剤をフィルム状にして用いることも可能である。中でも、熱流動性に優れたホットメルト樹脂を必要な厚さで用いることが、性能、生産性、経済性などの点で好ましい。
このようなホットメルト樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体、線状低密度ポリエチレン、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、アイオノマー樹脂のほか、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、フッ素樹脂系、ポリアミド系のエラストマーなどを使用することができ、それらの中から、被着面の材質に応じて適宜選択して使用することができる。
また、前記フッ素を含む樹脂の耐候性をさらに向上させるために、光酸化安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤を添加することができる。例えば、紫外線吸収剤としては無機微粒子が好適であり、例えばTiO2などの微粒子を用いることができる。さらに、水蒸気その他のガスバリヤー性を向上させたい場合は、それらの樹脂からなるフィルムに酸化珪素、酸化アルミニウムなどの無機酸化物の蒸着層を設けることもできる。このとき、透光性を損なわないよう注意することが必要である。
光電変換素子をフッ素を含む樹脂で覆う方法としては、性能、生産性、経済性などの観点から真空ラミネート法が好ましい。真空ラミネート法の採用によって太陽電池モジュール内に空気を含ませることなく樹脂で覆うことができる。
前記フッ素を含む樹脂フィルムは、その表面またはその内面側に、光反射防止のための微細な凹凸加工、あるいは、金属化合物または金属の薄膜形成加工をすることができる。これによりフィルムで反射される光を少なくすることができるので、外部から入射する光を有効に利用することができ、太陽電池モジュールの発電効率のアップに寄与できる。前記微細な凹凸加工は、エンボス加工や紫外線硬化性樹脂によるコーティングなどによって行うことが好ましい。また、金属化合物の薄膜形成加工は、MgF2 、ZnS、SnO2 、Cr2 O3 などの微粒子を用いた薄膜コートによって行うことが好ましい。さらに、金属を用いる場合は、Alなどを透明性を損なわない程度に薄く蒸着することによって加工できる。
なお、前記第1の電極および前記第2の電極から選ばれる少なくとも1つは、合成樹脂フィルムからなる基板上に形成されていてもよい。これは基板を合成樹脂フィルムで構成しておくと、基板が可撓性を有するため電極の大量生産が容易となり、製造コストの低減を図ることができるからである。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例に先立ち、以下の実施例や比較例において隣接する光電変換素子の電極間を接続するのに使用する導電性材料の550nmの透過性および異方導電性を調べた結果を参考例1として示す。
参考例1
透明絶縁性材料に導電性粒子を後記の表1に示す添加量となるように添加し、混練と真空脱法を繰り返し行い均一分散と気泡の除去を行って透光性導電性材料を調製した。上記導電性粒子としては東邦チタニウム社製のTi粒子" TC450" (商品名、平均粒径45μm)を用い、透明絶縁性材料としては、コニシ社製の熱硬化型エポキシ樹脂" Eセット" (二液混合型)と、スリーボンド社製の熱硬化性オレフィン樹脂" Three Bond1152" (商品名、一液加熱硬化性オレフィン樹脂)をそれぞれ別々に用いた。また、比較用に不透光な絶縁性材料である、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製のシリコーン接着剤" SE737" (商品名、水分硬化型)を用い、この不透光性絶縁性材料に前記導電性粒子を後記の表1に示す添加量となるように添加し、前記と同様に均一分散と気泡の除去を行って導電性材料を調製した。
次に、旭硝子社製の導電性ガラス板" F−SnO2"(商品名、フッ素がドープされたSnO2 を表面にコーティングして導電性を付与した透明導電膜付きガラス板、表面抵抗10Ω/□、厚さ1mm)を2枚用い、それらの透明導電膜を有する面が内側になるようにして上記導電性材料を挟み、加圧した後、それぞれの樹脂材料のメーカー推奨条件で硬化することによって透過率と異方導電性測定用のサンプルを作製した。2枚の導電性ガラス間の間隔は導電性粒子であるTi粒子" TC450" で規制した。
上記サンプルの透過率の測定には、日本分光株式会社製の“V570”(紫外可視分光光度計)を使用した。
異方導電性の測定にあたっては、導電性ガラスの透明導電膜を直線状に除去して透明導電膜を分割した。その除去にあたっては、除去する以外の部分を除いてマスキングテープによりマスクした後、酸化亜鉛粉末と10質量%の塩酸水溶液とを作用させてマスクされていない透明導電膜をエッチング処理して除去した。直線状に除去した部分に対して直角に前記導電性材料を塗布しスライドガラスを押し当て、加圧し、それぞれの樹脂材料のメーカー推奨条件で硬化させた。導電性ガラスとスライドガラスとの間隔は前記のTi粒子" TC450" で規制した。そして、異方導電性の測定は、分割された透明導電膜の両端をテスターで測定することによって行った。
上記のように測定した550nmの透過率、異方導電性を、導電性粒子としてのTi粒子の添加量(導電性材料中における導電性粒子としてのTi粒子の含有量)、用いた絶縁性材料の種別とともに表1に示す。ただし、表1への絶縁性材料の表示にあたっては、その商品名で示す。
表1に示すように、導電性材料としてTi粒子を添加することにより異方導電性が発現する。しかし、透光性評価の基準となる550nmの透過率は、透明絶縁性材料に対してTi粒子の添加量が多くなると低下するが、それでも、Tiの添加量が6体積%では、33.5%と高い透過率を有している。これに対して、不透明絶縁性材料であるSE737(商品名)に対してはTi粒子の添加量が少ない場合でも、当然のことながら、光の透過がなく、透光性は得られなかった。
実施例1
縦41mm、横67mmに切り出した前記参考例1の場合と同様の導電性ガラス板の横側片端から11. 75mm間隔、1. 75mm幅で透明導電膜を除去しパターンニングした。上記透明導電膜の部分的除去にあたっては、除去する部分を除いてマスキングテープによりマスクした後、酸化亜鉛粉末と10質量%の塩酸水溶液とを作用させてマスクされていない透明導電膜をエッチング処理して除去した。これを図1にあわせて説明すると、導電性ガラス板で構成される基板3上に透明導電膜で構成される第1の電極5.1〜5.5を形成したことになる。
また、平均1次粒子径が20nmの高純度酸化チタン粉末をエチルセルロース中に分散させ、スクリーン印刷用のペーストを調製した。続いて、スクリーン印刷用のペーストをパターンニング済導電性ガラス上に塗布し、乾燥し、得られた乾燥物を500℃で30分間空気中で焼成して、基板上に厚さ10μmの多孔質酸化チタン膜を形成した。得られた酸化チタン膜は、基板上で除去されていない透明導電膜上に37mm×8mmのサイズで5箇所設置した。次に、この酸化チタン膜を備えた導電性ガラスをRu(4,4' −ジカルボキシル−2,2' −ビピリジン)2 (NCS)2 で表される増感色素溶液中に浸漬し、25℃で2日間色間素担持処理を行った。これを図1をあわせて説明すると、基板3上の第1の電極5.1〜5.5に酸化チタン膜からなる半導体層7.1〜7.5が被着され、その半導体層7.1〜7.5に増感色素が担持されたことになる。
次に、前記と同様の導電性ガラス板に第1の電極の場合と同様のパターンを形成し、除去面をマスキングテープでマスクし5%−塩化白金酸/エタノール溶液を塗布、乾燥した後、400℃で15分間加熱処理して透明導電膜を部分的に除去することによって、導電性ガラス板で構成される基板21上に透明導電膜で構成される透光性を有する第2の電極11.1〜11.5を作製した。電解質注入孔は、光電変換素子モジュールを組立てたとき、第2の電極11.1〜11.5と向かい合う半導体層7.1〜7.5の角近傍の位置に設置した。
次に得られた第1の電極の半導体層7.1〜7.5の全体の周囲を、積水化学工業社製の樹脂ボール" ミクロパール" (商品名、30μm)を1質量%添加した" Three Bond1152" (商品名、前出)を封止材19として用いて塗布した。次に第1の電極5.1〜5.5の半導体層(酸化チタン膜)7.1〜7.5間の第2の電極11.1〜11.5との電気的接続部分に、" Three Bond1152" (商品名、前出)にTi粒子を4.3質量%添加した透光性導電性材料13を自動ディスペンサーで塗布した。この透光性導電性材料は前記参考例1で表1に示したように、550nmの透過率が24.9%で、異方導電性を有するものである。
そして、上記塗布の際、各第1の電極間にはギャップ15.2、15.3、15.4、15.5が残るようにした。次にこの第1の電極5.1〜5.5を有する基板3と第2の電極11.1〜11.5を有する基板21とを図1の構造となるように張り合わせて封止と直列接続とを行った。この際、基板21には第2の電極間にギャップ17.1、17.2、17.3、17.4が残るようにし、かつ基板3側のギャップ15.2〜15.5も維持されるように注意した。
透光性導電性材料や封止材に使用されている" Three Bond1152" の硬化は、100℃で60分間加熱することによって行い、この間、第1の電極5と第2の電極11とがずれないようにバチ型クリップを使い加圧静置した。透光性導電性材料13と封止材19に同じ樹脂を用いるので、同一条件で同時に硬化することができた。また、封止材の周囲をバリアン社製のエポキシ樹脂" トールシール" (商品名)で覆うことによって光電変換素子モジュールの強度を高めた。
硬化後、各光電変換素子の電解質注入孔から電解質を減圧注入法により酸化チタン膜で構成される半導体層7と第2の電極11との間に注入した。電解質としては、0.5mol/Lのテトラプロピルアンモニウムアイオダイド、0.01mol/Lのヨウ化リチウム、0.01mol/Lのヨウ素、0.9mol/Lの4−tert−ブチルピリジンを含むγ−ブチロラクトン溶液を用いた。電解質注入後、電解質注入孔の周囲に付着した電解質をアルコールでよく拭いた。シリコーン粘着付きイミドテープで電解質注入孔を封止した後、厚さ0.3mmのカバーガラスを" Eセット" (商品名、前出)を用いてシリコーン粘着テープ上を被覆接着した。以上のようにして、本実施例の5直列光電変換素子モジュールを作製した。
このように作製した5光電変換素子モジュールにソーラーシミュレータで擬似太陽光(10mW/cm2 、AM1.5)を照射し、光電流−電圧特性を測定した。その結果、開放端電圧3017mV、短絡電流1.077mA、形状因子0.588、最大出力1.91mWの特性を得た。そして、この光電変換素子モジュールは、電極間の接続部も含め透光性を有していた。
実施例2
実施例1と同様の手順で2直列光電変換素子モジュールを2個作製した。ただし、封止材19の周囲は "トールシール" (商品名、前出)で覆うことはしなかった。得られた2個の2直列光電変換素子モジュールについて、実施例1と同様に光電流−電圧特性を測定したところ、開放端電圧1249mV、短絡電流1.12mA、形状因子0.573、最大出力0.80mWの光電変換素子モジュールと開放端電圧1253mV、短絡電流1.13mA、形状因子0.591、最大出力0.84mWの光電変換素子モジュールとであった。
これらの光電変換素子モジュールのうちの一方の光電変換素子モジュールの電気的接続部5.2aと他方の光電変換素子モジュールの電気的接続部11.1aとを図3の構造となるように透光性導電性材料13で接続して4直列光電変換素子モジュールを得た。上記透光性導電性材料は" Eセット" (商品名、前出)にTi粒子を6.0体積%添加したものであり、この透光性導電性材料は、前記参考例1で表1に示したように、550nmの透過率が33.5%であり、異方導電性を有していた。
この4直列光電変換素子モジュールについて、実施例1と同様に光電流−電圧特性を測定したところ、開放端電圧2409mV、短絡電流1.12mA、形状因子0.601、最大出力1.62mWであった。そして、この実施例2の光電変換素子モジュールも、電極間の接続部を含み透光性を有していた。
実施例3
王子トービ社製のインジウム−錫複合酸化物(ITO)が被着されたポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(厚さ125μm、表面抵抗10Ω/□のITO/PENフィルム)を50mm角に切り出し、塩酸主体のエッチング液で図6に示すようなITOパターンからなる第1の電極5.1〜5.5を上記フィルムからなる基板3上に形成した。図6において、15.1〜15.6は基板3上に形成された第1の電極5.1〜5.5を分離するためのギャップである。次に、ハーキュレス社製のエチルセルロース" N300" (商品名)1質量%をエタノールに溶かしたバインダー溶液を調製した。このバインダー溶液24gに日本アエロジル社製の酸化チタン" P25" (商品名)6gを投入し、遊星型ボールミルにかけて、酸化チタンの分散液を調製した。この分散液中の酸化チタンの含有量は20質量%になるように調製した。この酸化チタンの分散液を電極5.1〜5.5の上にマスクを用いて図7に示すように摺り切りで塗布し、乾燥させて縦40mm、横8mmの酸化チタン膜からなる半導体層7.1〜7.5を形成した。次に、プレス機で半導体層7.1〜7.5に1枚あたり60MPaの圧力を加えて、半導体層を構成する酸化チタン膜の厚みを10μmに圧縮した。圧力を加えるとき、プレス機のプレス面にフッ素樹脂コートを施し、酸化チタン膜とプレス面との離型性を良くした。
この酸化チタン膜を備えたITO/PENフィルムを、[Ru(4,4'−ジカルボキシル−2,2'−ビピリジン)2(NCS)2]ビス−テトラブチルアンモニウムで表される増感色素を3×10-4mol/dm3含むアセトニトリル/t−ブチルアルコール混合溶液(混合体積比=50/50)に10時間浸漬 して半導体層7.1〜7.5への色素担持処理を行なった。
次に、前記と同様の王子トービ社製ITO/PENフィルムを50mm角に切り出し、塩酸主体のエッチング液で図8に示すようなITOパターンを形成した。このITOパターン上にマスクを用いて膜厚5nmの白金を成膜して、基板21上に第2の電極11.1〜11.5を形成した。なお、図8において、17.1〜17.6は基板21上に形成された第2の電極11.1〜11.5を分離するためのギャップである。
また、光電変換素子モジュールを構成する光電変換素子の数だけ(本実施例では5つ)の電解質注入孔23.1〜23.5(直径0.5mmの円形)を第2の電極11.1〜11.5を形成したITO/PENフィルムに設けた。この電解質注入孔23.1〜23.5は、光電変換素子モジュールを組立てたとき、第2の電極11.1〜11.5と向かい合う半導体層7.1〜7.5の角近傍の位置に配置するように設けておいた。また、外部端子も所定の位置に取り付けた(図示せず。)。
次に、図7に示すように半導体層(酸化チタン膜)7.1〜7.5が形成されたITO/PENフィルムに、封止材19として "Three Bond1152" (商品名、前出)を自動ディスペンサーで図9に示すように半導体層7.1〜7.5を取り囲んで塗布した。次に、基板3となるITO/PENフィルムの可撓性のために半導体層7.1〜7.5が第2の電極11.1〜11.5の白金と接触して部分的に短絡することを防ぐため、半導体層7.1〜7.5と第2の電極11.1〜11.5との間にポリブチレンテレフタレート製の不織布を配置した(図示せず)。続いて、各光電変換素子を電気的に直列接続するために、図10に示す部分に、" Three Bond1152" (商品名、前出)にTi粒子を4.3%添加した透光性導電性材料13.1〜13.4を塗布した。そして、これらの第1の電極5.1〜5.5および半導体層7.1〜7.5が形成された基板3に図8に示すパターニングされた第2の電極を有する基板21を、その第2の電極11.1〜11.5と基板3の半導体層7.1〜7.5とが向かい合うように張り合わせて封止と直列接続とを行った。このとき、外部端子としてニッケル箔を所定の位置に配置した(図示せず)。透光性導電性材料13と封止材19の樹脂成分の硬化は、100℃で60分間加熱することで行い、この間、第1の電極と第2の電極とがずれないように、2枚の厚板ガラスで挟み、バチ型クリップを使い加圧静置した。透光性導電性材料13.1〜13.4は、前記表1に示すように、550nmの透過率が24.9%であり、異方導電性を有していることから、必ずしも図10に示す部分にのみに塗布されている必要は無く、透光性導電性材料13.1と13.3および13.2と13.4は連続していてもよい。
シリコーン接着剤の硬化後、各光電変換素子の電解質注入孔から電解質を減圧注入法により第1の電極5.1〜5.5の半導体層7.1〜7.5と第2の電極11.1〜11.5との間に注入した。電解質としては、0.5mol/dm3 のヨウ化リチウムと0.05mol/dm3 のヨウ素、0.5mol/dm3 の4−tert−ブチルピリジンを含む3−メトキシプロピオニトリル溶液を用いた。電解質注入後、電解質注入孔の周囲に付着した電解質をアルコールで拭き取った。シリコーン粘着テープで電解質注入孔を封止した後、積水化学工業社製の一液性紫外線硬化型樹脂" フォトレックA―780" (商品名)でシリコーン粘着テープを被覆した。このようにして作製した光電変換素子モジュールをハネウェル社製のポリクロロ三フッ化エチレンフィルム" アクラー" (商品名)で外部端子を取り出せるようにした状態でラミネート加工を施した。以上のようにして、本実施例の光電変換素子モジュールを作製した。
この実施例3の光電変換素子モジュールについて、実施例1と同様に光電流−電圧特性を測定したところ、開放端電圧3200mV、短絡電流0.577mA、形状因子0.540、最大出力1.00mWであった。また、この実施例3の光電変換素子モジュールも、その接続部を含め透光性を有していた。